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(1)

教授・学習過程の実験的分析(2)

小学校児童における変形文法学習と文型指導1)

馬 場 道 夫*・羽 沢 淑 美**

(1982年9月30日受理)

Experimental Analyses of Teaching−Learning Processes H二

Grammatical Learning by Way of a Transformational−Grammar

Method and a Pattern Practice in Children

Michio BABA and Yoshimi HAzAwA

(Received September 30, 1982)

は じ め に

,  最近の認知心理学の進歩によって,言語の心理学的過程に関する研究も大幅に進歩して来た。

現在,言語理解過程について多くの研究が見られるようになったが,言語産出,特に文章産出過

程の研究は,それほど多くない。しかし,最近になってRosenberg(1977), Butterworth(1980)      ピ㌃

など言語産出を中心とする著作が公刊されるようになって来ている。しかしまた,それらの著作に 見られるように,文の産出に関す・るメカニズムは極めて複雑である。たとえば,Dodd and White

(1980)の認知過程の概説においても,発話の文脈と意図,それに関連する感覚・知覚過程,発 話のための語の意味・発音の検索,文法構造,それらの総合としての文の構成,そして最後に発 音など種々の過程があることが示されている。本研究は,これらのうち,文法規則の獲得とその

適用としての文の産出について検討しようとするものである。

従前の言語産出に関する心理学的考察として,Skinner(1957)の著書が知られている。彼は,

行動主義的学習理論の立場から,言語行動をオペラント反応の系列と考えた。しかし,現在では

彼の論は既に過去のものとなり,たとえば天野(1976)は,文産出モデルをマルコフ確率モデンレ,

直接構成モデル,生成変換モデル,思想内言モデルに分類している。しかし,それらは,むしろ 言語理論からの検討であり,産出の心理学的過程を丁寧に追ったものとは言えないようである。

その後,Schlesinger(1977)の理論が提出され,かなりこの過程の検討は進んで来ているが,ま だ,文法がどのようにして獲得され,文が産出できるようになるか明らかでない。特に,文の産 出は,聞き手又は読み手が前提となっていなければならず,それらの受け手が理解するという意

ユ)本論文は,羽沢の昭和55年卒業論文を馬場の理論的見解の下に整理,加筆したものである.

* 茨城大学教育学部教育心理学科

** 茨城県下館市川島小学校

(2)

図の下に発せられねばならず,受け手の能力・知識や現在の関心やその他の状態などをその都度 判断しなければならぬ高度に知的な行為である。現在までの研究の段階ではその様な高次の過程 まで達し得ないので,ここでは文法の比較的単純な適用についての学習を問題にする。

ところで,文の産出,文法の獲得についての心理学的研究に対しても,Chomsky(1963)の 変形文法の与えた影響は強烈なものであり,今日の言語心理学の隆盛のきっかけとなったことは 疑いのないところである。そこでは,彼の変形文法がr心理学的実在性」を持つか,即ち実際の 心理学的過程として存在するのかが問題にされたのである。Fodor(1974)らの総括では,実験 的証拠は,文法的構造の心理的実在性を支持する傾向があるとしたものの,スピーチの知覚,産 出において,心理的操作としての文法的変形の実在性は必ずしも支持されていないとした。ただ し,Bresnan(1978)は,そのことを認めるとしても,むしろ変形文法を積極的に現実に適用す ることによって,その理論がどの点で誤っているかを明らかにして,そのことによって文法理論

を改善すべきだとしている。

このような変形文法は,米国において発展したものであるから,我国の国語,日本語に適用す ることについては,かなり疑問もある。しかし,変形文法を日本語に適用する柴谷(1978)のよ うな例も見られるようになって来た。変形文法がそのままの形で日本語に適用できるとは思われ

ないが,適当な修正を行えば,日本語文法の新しい側面を明らかにできるかもしれない。また,

変形過程が,単なる理論として存在するのでなく,日常の言語運用にも利用できることを考える と,文章の教育に変形文法を適用しようとすることは,あながち冒険とは言えないであろう。

我国における文法獲得についての研究では,幼児について助詞の獲得の研究があり,学齢前に

蛯ネ助詞の使用は獲得されているようである(松本,1968.藤友,ユ979.小池,1982).児

童の文章産出については,茂呂(1982)の短作文の研究がある。しかしながら,文法獲得及び その利用についての具体的過程の研究は,まだ少ないようである。そこで,ここでは簡単かつ大

胆に文の産出について,次のような過程があると仮定しておく。

1.文の産出には文法が前提になっており,何らかの形での文法の獲得が必要である。

2.文法の獲得が幼児期から始まり,学齢までにかなり完成してしまうことを考えると,文法は

無意識的に習得され,利用される。

3。学齢後の文法習得には,意識的な規則性の学習が有効である。

4.文法は,本質的にいって単語の排列,単語間の関係を規定することによって,ある意味を表 現するものであるから,文法の獲得には,対人場面が一つの前提で,物的な対象であっても複

数のものが存在し,それらの関係が明示されることが重要である。

5.文法の獲得は,明らかに単なる模倣ではなく,広い意味での規則性を文章の意味と単語の排

列との関係から抽出する。

6.この場合,文法は単語の排列法を含めた単語間の関係を規定するものであるから,文中の大

多数の単語の意味は獲得されていなければ,文法規則の獲得は困難であろう。

7.このような関係性の抽出は,規則学習のタイプに含めることができる。従って文法学習は,

規則の提示及びその事例の提示が学習方法として有効であるだろう。

8.日常生活では,文は1文のみで提示されることは少なく,複数の文が相互に関係しあって文

脈を構成し,談話となるので,変形文法は文生成の原則と同様に文の運用の原則として利用さ

(3)

れうる。従って,変形文法を指導方法として利用すれば,効果的であろう。多少説明を加え

れば,特に対話のような場合は,変形の過程そのものであるだろう。「今日は雨ふるかな?」「い

や,今日はふらない。」「昨日は,かさを持って行かなかったので,雨にふられて,ぬれてし

まった。」「今日はかさを持って行ったら。」

以上の仮定の下に,本研究では,小学校児童における文産出の過程に注目し,これを改善す

ることと合わせて,その過程を分析,解明しようとする。特に,変形文法が文産出過程において,

心理学的実在性を有すると仮定して,変形文法を助詞,接続詞の使用法の教育に適用し,実験的 教育を行ったものである。もし,変形指導が学習効果をあげれば,変形過程の心理的実在性につ

いて一つの証拠を加えることになるであろう。

他方,文章の教育方法の一つに外国語教育から取り入れられた文型指導がある(中沢,1979.

上田,1979.)。文型指導では,文そのものは分析,説明されるよりも全体として把握されるべき

ものであると考え,文の構成単位や文法的な事実を指導するだけでは不十分であり,文を型とし てとらえ,全体として指導しようとする。心理学的に解すれば,文法という規則を示して,その 事例について練習する,規則学習の典型的な例になっている。説明的な指導法をとるときは,規 則についての言語的説明が与えられ,その後に事例が提示され,更にその規則の練習,規則の応 用がなされる。発見的方法の場合は,規則の事例がいくつか与えられ,それから規則を発見させ

る。文法の学習においては,学齢前では日常生活の中での会話などを通して,特に意識すること もなく文法規則を獲得しているものと推定されるが,学齢以後は文法性の自然な獲得は可能であ

るとしても,むしろ意識化した規則学習がより効果的であろう。

変形文法を利用した学習と文型指導では,どちらが教育的にいって有効であるかということは,

十分な根拠を持って仮説できるような単純な問題ではないであろう,ただ,先に文の産出におい て仮定された過程からすると,小学校児童についても文法的学習は意識的な規則学習になり得る が,文章の産出が単なる文法規則の適用といった単純な学習ではなく,ある規則から他の規則へ

の変換規則の適用であるとすれば,変形指導がより効果であることが示されるはずである。また,

もしそうであれば,変形文法の日本語における心理学的実在性が明らかになる。勿論,変形指導 の文型指導に対する優越性が認められたとしても,文型指導によって文法的学習に進歩が認めら

れたなら,その実在性を否定することはできないであろう。

なお,以上の学習を比較的厳密に行うためには,プログラム学習の形態を用いることが得策と 思われる。文法学習はは比較的明白な,文法規則の獲得・利用という目標を持っているためであ る。ただし,一斉授業における妥当性を確認するために,一斉授業形態でも変形文法に基づく指

導案を作り,プログラム学習との比較を行うこととした。

また,適性処遇交互作用として知られているように(Cronbach and Snow,1977),教授法の

効果は児童の適性によって異なることが期待される。本研究では,事前に与えられていた国語科

標準学力のテストを1種の適性尺度と解し,事前テストの成績と教授法との交互作用を見ること

にした。先にも考察したように,変型指導は現実の言語運用と密接に関係しているので,事前テ

ストの成績中程度以上の児童には,効果があがるが,文型指導は説明的に原理を導入し,適用させ

るので,学習転移の幅が狭く,事前テストの成績の良い児童によりよい効果が期待される。従っ

(4)

て,中程度の国語の学力の者は,文型学習よりも変型学習の効果がより高いだろう。

結局,実験仮説は次のように概括されるだろう。

1.変形文法を利用した指導は,文型指導より,児童の文法学習の成績を向上させる。

2.変形指導は,一斉授業の場合よりもプログラム学習で行われた方がよい成績を示す。

3 国語科標準学力テストで測られた国語学力水準の中程度の者は,文型学習よりも変型学習の

効果がよりあがる。

方   法

被験児:小学校4学年児童93名。1組男17名,女14名,計31名。2組男17名,女15名,計 32名。3組男15名,女15名,計30名。各組を1組から順に1群,H群,皿群とし,1群を変形

指導一斉授業群,II群を変形指導プログラム学習群,皿群を文型指導プログラム学習群として,

それぞれの条件の下で学習させる。

実験期日:1980年11月17日〜11月22日,H月ユ7日事前テスト,3群共通。11月18日

各群午前中のユ校時を実験授業にあてる。11月19日1,H群は午前中,皿群は午後の1校時に 行う。11月20日各群とも午前中の1校時に実験授業。11月22日事前テストと同一内容の事後

テスト3群共第2校時に行う。

実験用具:事前,事後テスト用紙(自作),付表1に示す。計50問からなり,問1〜21は,

文章完成法による助詞,接続助詞のテスト。問22〜33は,主語と述語を指摘させる。問34〜44 は,接続詞についての問題。問45〜50は,文章完成法と作文法による文章構成力のテストであ った。なお,採点は各問1点,ただし問50を除く。

H群用プログラム学習冊子:国語「文の勉強」一,二,三(自作)計3冊の小冊子。変形文法

に基づく文法的学習を行う。冊子「一」は,単語の説明,くっつき(助詞)「が,は,に,へ,

で,を」の使用法の学習,単語と助詞から文を作る,主語と述語の学習で,17ステップからなる。

文が生成される過程に沿った学習,単文における主語・述語の同定が行われる。冊子「二」は,

文のタイプの学習(平叙,命令,依頼,勧誘,疑問,推定,断定,義務)がなされ,異った機能 を持つ文が生成される。24ステップがある。冊子「三」は,重文が生成される。接続助詞の機 能と用法(並列,逆説,原因,理由)。重文における主語と述語の同定,接続詞を用いた文が生 成される過程,接続詞の機能と用法(順接,逆接,添加,並列選択),23ステップ。全体で63

ステップ,学習の初めの部分ではさし絵が多く入り,それを利用して回答させる。さし絵の数は,

ステップが進むに従い,少なくなっている。

皿群用プログラム冊子:やはり3冊の小冊子で,文型指導によるプログラム学習。冊子「一」

は,4っの基本文型,「なにがどうする」「なにがどんなだ」「なにがなんだ」「なにがある,

いる」。17ステップ。冊子「二」は,むすび文型,「らしい」「ようだ」「みたいだ」・…など 計12種の学習,24ステップ。冊子「三」は,つなぎ文型の学習。「〜し」「〜が,」「〜けれ

ども,」など,15の文型の学習,23ステップ。全体で63ステップ。E群と同様にさし絵を利 用する。さし絵の数は,ステップにつれて少なくなっている。

(5)

ここで用いられた「基本文型」は, 「小学校基本的文法事項の指導」 (中沢,1979)に基づ き, 「つなぎ文型」と「むすび文型」の指導用文型は, 「言語能力を高める指導用文型二百種」

(上田,1979)の第4学年配当のものから選んだものである。

1,豆,皿群の実際の指導に用いられた例文,および練習問題は,ほぼ同一の文を使用した。

それらとプログラムのさし絵は,「にっぽんご 3の上」,「にっぽんご 4の上」(明生学園・

国語部著)を参考にしたものである。なお,H,皿群は,プログラムの方法上の違いのほか,結 果的に,多くの違いを生じた。たとえば,H群は,単語の概念,助詞の用法を学習するのに対し て,皿群は,文型の学習が中心になる。さし絵の内容や位置も違っているなど,多くの違いがあ

る。この点,1群の教材とH群のプログラム内容は,むしろ同一のものが用いられて,教育内容 の等質性が保証されている。ただし,次に見る様に方法上の多くの違いがある。

授業手続き:前述のように,3日に分けて行われ,プログラム学習群は1日1冊ずつクラス単 位で個人学習させられた。H群,皿群の第1回の授業において,プログラム学習の進め方を説明,

各冊子の学習の直前に,学習内容の概要を口頭説明した。

1群は,H,1皿群に対応する日に,変形文法に基づく文法的学習が,一斉授業方式で行われた。

指導案の内容は,1群のプログラム学習冊子と同様である。第1日に,単語,くっつき(助詞),

主語と述語の学習,第2日に文のスタイル,伝える文,働きかける文,たずねる文,変型規則の 適用がなされた。第3日は,単文と重文,接続助詞の学習であった。方法としては,教科書,板

書,練習用プリント,OHP,カード,それに児童のノートが利用された。カードやOHPを用い

て,文の生成される過程を明確に示すようにした。児童の発表,練習等の児童の活動もできるだ けとり入れるようにした。1群の授業は,羽沢が行った。各群2日後に事後テストが行われた。

結   果

各群についての事前・事後テストの結果1)は,図1のようである。得点分布は,事前・事後 テストで異なり,分布も上・下にゆがんでいるので,代表値としては中央値(Mdn),検定には Hテストを用いた。事前テストでは3群間に有意差なく(H=3.386,dfニ2, P>.10)。 事後 テストでは有意差が見られた(H=21.150,df=2,P<.001)。 また,1群とH群の問には UテストでCR=4。592,P〈.01,皿群と皿群ではCR=2.324, P〈.05でそれぞれ有意差が検 出された。適性処遇交互作用を見るために,国語科標準学力テストの成績で各群を上・中・下に

3分し,処遇,つまり教授法との関係を図2に示した。図2の得点は,事後テストの得点で

あるが,1,豆群は,学力と共に得点が上昇するのに対し,皿群は低,中学力者間に差がない(U

=68.5,P>.10)。更に,低学力者については, H,皿群問に差がなく(U=79.5, P>.0.5),

また高学力者についても両群間に差がない(U=68.5,P>.10)。しかし,中学力者ではII群 が皿群に比べて明らかな優位を示している(U=98,P〈0.5)。この結果は,3の仮説に完全 に一致するものである。即ち,中学力者にとって,文型学習から事後テストへの転移は困難であ

1)事前・事後テストは,50項中最後の1項を除いて49項が採点された.

(6)

40

II群

得点中 30

將l

         ノ、皿1群         1        1       !

A___ツダ乙一詞1群

@  1

@ 1

7       30 @1

●一一・一一●1群

20 o−■一騨oH群

△一一一一△皿群

      20事前      事後      低     中    高

テスト      国語科標準学力テスト

図1 授業の効果       図2 適性処遇交互作用

ったが,変型文法による学習からではそれほど困難ではなかったと考えられる。なお,事前テス

トにおける各群の学力別成績は1,H,皿群とも有意ではなかった。 H値はそれぞれ2.73,3.11,

3.92であり,それぞれP>.20,P>.20, P>.10であった。なおまた,1, H,皿群それぞれ の事前・事後テストの差の中央値は,9.0,14.5,10.2,中央値テストによりκ2=17.696,df

=2,P<.001で有意であった。やはり,11群が最も高い学習効果を示した。

考   察

以上の結果は,実験仮説を全面的に支持している。仮説1については変型指導は文型指導に優 ることが示され,仮説2は変型指導の効果がプログラム学習において一斉授業よりも大きいこと を明らかにした。仮説3はH,皿群の事後テストの結果から証明されていると思われる。なお,

皿群の学力中と上の間にも有意に近い差が見られる(Uニ28,.05〈P〈.10)。なお,この効 果を厳密に検証するためには,事前テストと事後テストの差が,学力中位者より学力上位者の方 が大きくなければならないであろう。しかしながら,この点では,結果はむしろ否定的で,事前

・事後得点の差の中央値は,高学力群8.5,中学力群8.5,低学力群11.5で,低学力群の方が学 習効果の多い傾向を見せている。この結果にっいては,色々な解釈が可能であろうが,1群の人 数の少ないこともあり,人数を加えて研究を続けるべきものであろう。

三っの仮説がほぼ支持されたことから,文産出過程について多少の考察を加えておこう。まず,

変型文法を利用した文法学習の効果は,仮説されたものかどうかを確認しておく必要がある。変

型文法に心理的実在性があるなら,それは文型学習より有利に作用すると考えられたのであるが,

その根拠に,変換規則の習得はより広い転移をするであろうという点が指摘されていた。他方,

プログラム・テキストの内容は,H群と皿群で異なり,もし事後テストに近い,より類似した問

(7)

馬場・羽沢:教授学習過程の実験的分析(2)      125

題がII群のプログラム・テキストにあれば, II群の優越性は当然のことになってしまう。事後テ ストの各問の通過率を表1で細かく検討してみると,H群と皿群の差の大きい項目は,主語を

指摘する問に一つ,つなぎの言語の項に二q作文法で一っで,いずれも皿群の方が20%以上も 高い通過率を示している。作文法は,むすび,いわゆる助動詞の使用法である。n群については 特に助詞の学習をしているのであるから,この点でよりよい成績を示さねばならないのに,表1 ではこの点で皿,皿両群間に大きな違いは見られない。主語,述語の有利な点は,確かにH群 用冊子の内容に求められるが,「つなぎ」と「むすび」については,両群の取り扱いに大きな違 いはない。そこで,n群がよりよい効果を生じたのは,特定の教育内容の記憶というよりも,文 の変型・生成という,一般的指導法に求める可能性が残されているといえるであろう。

また,1群について検討すると,通し番号で17,40,42,45,46,47のように,他の2 群に比べ極端に低い正当率の項目が見られる。17は接続助詞,40〜47は接続詞,むすびであ

り,これらの点で一斉授業に欠点があったのではないかと考えられる。指導のあり方によっては,

あるいは,改善できた事項であるかもしれない。しかし,そのような欠点をプログラム学習は生 じさせなかったところに,プログラム学習の長所があるものと思われる。恐らく個人個人が確実

に反応する,能動的反応の原理や,即時確認の原理が有効に働いたのであろう。

詳細に検討すると,多少の問題点もあるが,全体としていえば,変形指導はかなり顕著な効果 があるようで,日本語における文生成過程に,文変形操作が含まれている可能性を認めることが できるように思われる。本研究では,学習指導場面という,複雑な要因の含まれる場面で実験が 行われたために,変形操作の心理的実在性について確言することは危険である。今後の更に精密 な研究が必要であろう。しかし,文法的学習の指導法としては,変形指導が有望であると言える

表1 事後テスト 各採点項目ごとの通過率(%) 1群31名,H群32名,皿群30名

問題番号 群1 皿  皿 問題番号 群I H  皿 問題番号

群1 豆  皿

一 1  1 100 100 100 4 18

100 100 100 三 2 35 94 97  90

2

97  97  97

5 19

65  59  43

屡336 87 91  80

3

97 100 100

20 87  84  90 続 4 37 74 91  87

2  4 97 100 100 21 100 ユ00  97

週538 71 94  87

充   5 93  97 100 二 1 22

97  97  90

四 1 39 65 84  57 当   6

100  91  93 主   23

94  91  93 ( 2 40 13 79  90 法   7

100 100 100

語 2 24 68  63  73 接 3 41 87 88 100

( 3  8 100 100 100

・   25

62  69  60

続4 42 19 88  97

助   9 83 100  90 述 3 26

55  66  77

詞 5 43 61 66  43

詞   10 97 100 100 語   27 13  34  53

) 6 44 68 84  87

の    11

61  75  77 の   28 55  50  37

五 1 45 35 78  87

テ   12

100  88 100 指  29 48  75  50 ( 2 46 39 72  80 ス 4 13

77  81  70 摘4 30

10  16  7 む 3 47 32 69  83

ト   14

100 100 100 31 10  19  10

す 4 48

74 81  60

)   15 87  97  97

32

55  47  47

 5 49) 48 63  33

16 73  94  97

33 13  16  7

六   50 採点せず

17 23  69  73

1 34 81 100  97

(8)

であろう。一部に適性処遇交互作が見られたが,能力水準の順位を入れ換える程のものではなく,

常に変形指導が優れていたことを考えると,この方法に一般性があるものと思われる。

要   約

本研究は,変形生成文法の心理学的過程としての実在性が日本語においてもあるかどうかを,

児童の国語教育の中に変形操作を含ませることによって,実証しようとした。また合わせて,変

形操作の文法教育における有効性を検証しようとした。3組93人の4年生児童が,変形文法に

基づく一斉授業,同じ内容を含むプログラム学習,文型学習を受けた。事後テストの結果から,

変形文法に基づくプログラム学習群が最も成績がよく,次いで文型学習によるプログラム学習,

一斉授業による変形文法指導は最も成績が悪かった。国語標準学力テストで上記各群を3群に分 けて分析したところ,文型指導プログラム学習群の低・中学力者には事後テストにおける差がな

く,高学力者のみが優れていた。他の2群(1,H群)は,ほぼ学力水準と共に事後テストの成 績が上昇した。事前・事後テストの差については,やはり変形指導プログラム群が最も大きな差 を示し,他の2群に比べ最も大きな学習効果を生じていたことが分った。一斉授業における変形 指導は,他の2群に比べ成績が劣り,必ずしも全面的に変形生成文法に基づく指導の効果が示さ れた訳ではないが,比較的同質なプログラム学習という事態で,文型指導よりも変形指導が有効 であったことは,変形指導の教育的有効性を示すと共に,変形操作の心理学的実在性を示唆する

ものであると解釈された。

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上田 保一1979.『言語能力を高める指導用文型200種』.(明治図書).

(10)

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参照

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