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 秋田地域留学生等交流推進会議

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2.3 留学生農家民泊活動報告 農家民泊 5 年間

―秋田県仙北市西木町にて―

牲川 波都季

要 旨

 本稿は,2009年度から実施してきた農家民泊事業について,目的・概要を詳細に示すとと もに,アンケート結果等に基づきその成果を検証しようとするものである。これにより本事 業の意義と現在の到達点,残る課題を示す。また,予算の出所などを含めた実際的な資料を 提供することで,他機関が同様の取り組みを始めようとする際にも役立つ内容とする。

【キーワード】

:農家民泊,グリーン・ツーリズム,留学生,地域交流,秋田県仙北市西木町

1 本稿の目的

 秋田地域留学生等交流推進会議

1)

は2009年から農家民泊事業を開始した。この事業は,秋 田県内の高等教育機関から留学生・日本人学生・引率教職員が集まり,1泊2日の農業体験ツ アーと1か月後の収穫感謝祭ツアーに参加するというものである。開始以来,秋田県仙北市 西木町を開催地とし,地場産業である農業と農家の暮らしを体験的に理解しながら,事業後 も再び農家を訪れるような継続的な関係作りを目標としてきた。

 本稿は,開始から5年という節目を迎え,本事業のこれまでの目的や概要を記録として残 そうとするものである。事業自体の今後の発展と,他教育機関で同様の取り組みを始める際 に役立つよう,予算の出所や規模も含めた実際的な資料の提供をめざす。

2 ツアー概要 2.1 農業体験ツアー

 本事業の核をなすのは,10月の1泊2日の農業体験ツアーと,11月の日帰り収穫感謝祭ツ アーである

2)

。まずはじめに2013年度を例に,これらのツアーの基本的な流れをまとめてお きたい。

 農業体験ツアーの1日目には,バスで秋田市内から仙北市西木町に移動する。車中では注 意事項やグループの確認を行うが,特にアルバム用の写真撮影を促す。この写真は1か月後 の収穫感謝祭ツアーで使うものである。

 グループごとに各農家付近の待ち合わせ場所で下車し,迎えの車に乗って農家に到着す

1) 秋田地域留学生等交流推進会議とは,行政団体や経済団体の長,高等教育機関等の長を構成委員とし,「秋田地域における留学 生等の受入れの促進及び交流活動の推進を図る」ことを目的に1989年に設立された組織である(秋田地域留学生等交流推進会議 2013a,pp.29-30)。同様の組織は全国各都道府県にもあり,文部省(現文部科学省)主導で設置が推進されてきた(文部省1992)。

2009年度から,それまで8年間続いていた文部科学省による地域留学生交流推進会議経費が廃止されることとなり(文部科学省 2009),秋田地域留学生等交流推進会議では,各大学による経費負担と外部資金の獲得(後述)を主な財源として(秋田地域留学生 等交流推進会議2013a,p.29),各種事業を継続している。

2) 2012年度のみ11月と12月に実施した。

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る。筆者の引率経験を振り返ると,大きな家構えや土間付の玄関,仏壇・ふすま・欄間など すべてが珍しく,携帯電話やデジタルカメラでの写真撮影がしばらくとまらない。

 自己紹介と昼食のあと農業体験を開始する。作業の内容は一律ではなく,作物や天候に合 わせ各農家によってもまた年度によっても違ってくる。2013年度の例で言えば,いんげんの 皮むき,精米後の米の袋詰め,栗の収穫・皮むきといった農作業もあれば,手打ち蕎麦屋で の給仕といった家業の手伝い,角館の武家屋敷見学や祭り参加など観光に行ったグループ もあった。

 夜にはそのまま農家に1泊するが,農家によっては地域の公営温泉等に連れて行く場合も ある。来日直後に参加する留学生も多く,農作業はもちろんのこと,大学の寮以外に宿泊す るのも温泉に入るのもはじめてという者も少なくない。それぞれの受け入れ農家が特色を 生かし,留学生に何とか楽しんでもらおうと工夫をしてくれていることがわかる。

 こうした特色や経験を参加者同士で分かち合うために,農業体験ツアーの2日目には,各 グループの体験内容をポスターにまとめ発表する活動を行っている。受け入れ農家も含め 参加者全員で地域のコミュニティセンター(「かたくり館」)に集まり,昼食をとりながら,

印象に残った体験三つをA3版のポスターにまとめる。それを学生がバイリンガルで発表し て,お互いの経験を紹介し合う。一つのグループには所属大学や出身の異なる学生を入れる ようにしているので,農家民泊を終え2日目に集まったこの時に,他グループの同じ大学の 友人に自分の経験を自慢するような様子も見られる。

 1か月後に同じメンバーで集まり収穫感謝祭ツアーを行うことになっているので,帰り際 には,また会いましょうという声が方々から聞こえ,手を振り合ってバスでの帰宅となる。

2.2 収穫感謝祭ツアー

 農業体験ツアーから約1か月後,再び同じ顔ぶれで収穫感謝祭ツアーに集う。このツアー は,自家製農産物を使った料理とアルバム作成の二本立てで行われる。

 農家によって料理の準備が進められているコミュニティセンターに到着すると,まず農 業体験ツアーと同じグループに分かれ,アルバム作成を開始する。グループリーダーが事前 に,農業体験ツアーで撮影した写真の中から30枚を選んでおき,収穫感謝祭ツアーの日には 全員でメッセージなどを加えながらプレゼント用アルバムを仕上げていく。

 それと同時に,手分けして餅つきや餅まるめ,漬け物の盛り付けなど,農家を手伝って料 理も作る。調理場の広さや料理に必要な手の数は限られているので,作業量としては,料理 作りとアルバム作成を並行して進めていく程度が適当である。

 昼になると,グループのメンバー同士,農家ともさまざまな話をしながら,自らも参加し て作った餅やきりたんぽ鍋を食べる。餅が苦手な学生やベジタリアン用におにぎりなども 用意され,また西木町特産の西明寺栗の甘露煮など,味にも彩にも心遣いの感じられるメ ニューが並ぶ。この1か月何をしていたか,秋田での生活に慣れたかなど,話は尽きないが,

昼食後農家が片付けをしている間に,学生はアルバムの最終仕上げをする。アルバムの作成

方法は,各グループに任せているので,得意の似顔絵を付け加えるグループや,ストーリー

性にこだわって写真やページを並べるグループもある。予定より作成時間が延びることも

しばしばで,事業運営の責任者として,筆者は,適宜終了時間を予告するとともに,必要で

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あればその後の活動を短縮するなど時間調整を行う。

 作成したアルバムは,まず机に置いて参加者全員で自由に見回り,農業体験ツアーの思い 出やアルバムの出来具合を共有する。その後,農家のから2回のツアーを振り返ってのコメ ントをもらいつつ,アルバムをプレゼントとして贈呈する。農業体験ツアーと収穫感謝祭ツ アーを合わせ3日間という短い出会いではあるが,アルバム作成を通してお互いに何をした かを確かめ形に残すことで,この事業が終わってからも訪問が続くような継続的な関係作 りをめざしている。最後に仙北市農山村デザイン室室長から講評をもらい,仙北市のグリー ン・ツーリズムのPRパンフレットなどを受けとって,コミュニティセンターでの活動は終 了となる。

 その後の帰りのバスに乗るまでの30分程度は,近くの川や田園を散歩する自由時間であ る。別れを惜しむ時間はすぐに切り上げられるものではないので,ここで少し余裕を持たせ ることにしている。

 2013年度は帰りに,前述の農山村デザイン室室長・泉谷衆氏の勧めで,仙北市の他地域で 行われていた「赤そば祭り」にも立ち寄ることができた。ピンクの花を咲かせる赤そばの見学 と,その場で手打ちされたそばの試食をさせてもらった。西木町の農家も同行してくれたの で,仙北市の農業と農家との交流を最後まで堪能できるツアーとなった。

3 年間スケジュール

 次に,これらの2つのツアー実施にあたっての作業を,2013年度の年間スケジュールを例 に簡単に紹介する(次頁,表1)。

 農業体験ツアーと収穫感謝祭ツアーは,例年10月と11月に行っている。参加高等教育機関 の夏期休暇を避けること,冬になる前で農作業ができることといった条件に加え,後述の中 島記念国際交流財団助成の選考結果が4月下旬ごろに通知されるので準備期間を考え,春で はなく秋の実施としている。

 秋田を代表する農産物は米でありもっとも典型的な農作業は田植えや稲刈りだろうが,

田植えは5月ごろで,助成の結果通知時期からすると準備期間が短すぎる。また稲刈りは9月 にほぼ終わってしまうが,大学等は9月まで夏期休暇中で,参加学生や引率者を集めにくい。

10月は毎週末,いずれかの高等教育機関が大学祭を開催している。2012年度はこれと重なら

ないようにするため,11月に農業体験ツアーを実施したが,秋田ではすでに初冬を迎えよう

としている時期で天候も悪く,できる農作業も少なくなってしまった。そのため2013年度に

は,それ以前と同様の10月実施に戻すこととした。農業体験ツアーは秋田工業高等専門学校

の大学祭と日程が重なってしまったが,県内の留学生・日本人学生が所属機関の違いを越

えて集まる機会は少なく,そのことに意義を見出してくれる同校の協力を得て,こちらの留

学生にも参加してもらうことができた。

(4)

表1 農家民泊事業実施のための年間スケジュール(2013年度)

4 実施団体・担当者

 この農家民泊事業は,2009年度に,秋田地域留学生等交流推進会議(以下「推進会議」)の主 催で開始された事業である。推進会議は,それ以前も3年間,町おこしをテーマとした地域住 民との交流事業を行っており,農家民泊はその後継事業に当たる。

 県内高等教育機関の留学生と地域住民とのこうした交流事業は,筆者の所属する秋田大 学国際交流センターが企画・運営を主担当してきた。秋田大学学長が推進会議の議長を務 めていること,国際交流センターの国際課が推進会議の事務局を担当していることからの 慣例であり,前述の町おこし事業までは国際課(当時は国際交流・社会貢献課)の職員が企画・

運営を一手に引き受けていた。筆者が秋田大学国際交流センターに着任したのは2008年6月 のことであり,同年の町おこし事業に引率者として参加した。その際,地域住民との交流事 業はさらに教育的意義の高い内容に変えられるのではないかと感じ, 2009年度の事業から は筆者が企画・運営の統括を担当することになった

3)

2月 ○中島記念国際交流財団助成・留学生地域交流事業の募集開始

○事業実施案の決定

○協賛・協力団体への協力依頼通知

3月 ○中島記念国際交流財団助成・留学生地域交流事業へ応募

4月 ○中島記念国際交流財団助成・留学生地域交流事業の選考結果通知 5月 ○協賛・協力団体への事業実施決定通知

○県内高等教育機関への事業実施決定通知

6月

○事業実施内容の確定

○旅行会社への発注等,実施準備開始

○県内高等教育機関に通知し,参加学生(グループリーダ含む)募集開始

○県内高等教育機関に通知し,引率者募集・決定 8月下旬 ○参加学生応募締切○参加学生(グループリーダー含む)決定

9月

○受け入れ農家別のグループ作り

○参加者用のしおり作成・配布

○引率者・グループリーダー用注意書きの作成・配布

○参加学生から写真公開許諾のサイン回収

10月

○参加学生に直前リマインダー送付

○農業体験ツアー実施(1泊2日)

○写真現像等,収穫感謝祭ツアーの準備

○グループリーダーに報告文の作成依頼

○公開用報告書作成開始

11月

○参加学生に直前リマインダー送付

○収穫感謝祭ツアー実施(日帰り)

○報告文の提出締切

○中島記念国際交流財団助成用報告書の作成開始 12月 ○公開用報告書の印刷・配布・ウェブサイトへの掲載

○中島記念国際交流財団助成用報告書の提出

3) 農家民泊事業開始の詳細な経緯については,牲川(2013a,pp.56-58,2013b)参照。

(5)

 実際の実施作業としては,外部資金への応募をはじめとしたさまざまな準備作業,また報 告書作成などのまとめ作業がある(表1)。筆者はこのうち,外部資金への応募書類一部を含 む事業実施案の作成,グループ作り,ツアー当日の参加者への指示などを担当している。年 間スケジュールの管理や各所への連絡,予算執行と決算といった多種多様な事務作業につ いては,国際課の職員が全面的に受け持っている。担当職員の顔ぶれは配置換えで多少変わ るが,数年続けての担当者がいると非常に心強く,筆者は事業内容の質を高めることに集中 することができた。

 また事業の開始・実施にあたっては,協賛・協力団体からも多大な支援を得てきた(表2)。

表2 農家民泊事業の実施団体および役割

 とりわけグリーン・ツーリズム西木研究会は,そのメンバーである各農家が,参加者の農 業体験と宿泊,全員で集まっての料理等のすべての段階で中心的役割を果たしてきた。8章 にて再度紹介する。

5 参加教育機関・参加者

 2013年10月1日現在,秋田県内の高等教育機関には,457人の留学生が在籍している(秋田 地域留学生等交流推進会議2013b)。本農家民泊事業では,留学生が在籍する機関のうち,秋 田県を除く大学・工業高等専門学校5校に留学生・日本人学生の参加希望者を募り,同時に 引率担当教職員の派遣も依頼している。

 年度別の参加者数および内訳は以下のとおりである(表3)。

参加形態 団体名 主な役割

主催 秋田地域留学生等交流推進会議 企画・運営統括,運営実施作業

協賛 グリーン・ツーリズム西木研究会 農家民泊受入,収穫感謝祭の世話役等 協賛 秋田花まるっグリーン・ツーズム推進協議会 グリーン・ツーリズムの指導,

事業の広報活動

協賛 秋田県国際交流協会 事業の広報活動

協賛 秋田地区日本中国友好協会 事業の広報活動

協賛 秋田モンゴル友好協会 支援金拠出,留学生とりまとめ補助

(2013年度~)協力 秋田県仙北市農林部総合産業研究所

農山村体験デザイン室 農家再訪問の申し込み方法の紹介

(6)

表3 教育機関別参加者数(農業体験ツアー4)

 参加者の合計数は,2009・2010年度は35人,2011年度以降は45人超でほぼ安定してきてい る。2011年度に参加者数を増やしたのは,2年間の実施から事業の意義が明確なものとなり,

事業後アンケートでの高評価も踏まえるならば,より多くの学生を参加させたいと考えたか らである。また,本事業の主要予算である中島記念国際交流財団助成の申請方法が前年度に 変わり,申請額を引き上げても採択される可能性が高まったという好機もあった(6.1参照)。

機関ごとの留学生の参加人数は,基本的に留学生の在籍数に応じて配分してきたが,2011年 度までは運営・実施の主担当者である秋田大学に傾斜配分していた。秋田大学が助成で不 足する分の経費と準備作業などの業務を主に負担してきたためである。ただし,秋田大学で 参加を希望する留学生の数が15人前後で落ち着いてきたことから,2012年度以降は傾斜配分 していない。

 留学生・日本人学生・引率者数の割合について,2009年度の開始当初は,各農家に宿泊し ての農業体験という事業内容がどれほどうまくいくかわからなかったため,留学生20人に 対して,日本人学生5人,引率者10人という手厚い支援態勢で臨んだ。1年目の事業が無事成 功したので,2年目には留学生の割合を増やし,留学生28人,日本人学生2人,引率者5人とし た。他大学教員から日本人学生にももっと参加させたいという意見があったこと,また助成 金の増額により参加者総数を増やせたことから,3年目より日本人学生数を増やし,4年目も ほぼ同じ体制とした。2013年度には留学生数を減らしさらに日本人学生数を増やしたが,こ れは日本人学生をグループリーダーとし,より学生主導で事業を進めていくよう改善を図っ

   年度

    内訳 2009 2010 2011 2012 2013 機関別

合計(人)

留学生

秋田大学 10 15 18 15 14 72

国際教養大学 6 6 13 15 12 52

秋田県立大学 2 3 2 3 3 13

秋田工業高等専門学校 2 2 3 3 3 13

ノースアジア大学 0 2 0 0 0 2

小計 20 28 36 36 32 152

日本人学生 秋田大学 2 1 3 2 4 12

国際教養大学 1 0 1 3 3 8

秋田県立大学 1 1 2 2 2 8

秋田工業高等専門学校 1 0 0 0 0 1

ノースアジア大学 0 0 0 0 0 0

小計 5 2 6 7 9 29

引率者

秋田大学 7 5 3 3 3 21

国際教養大学 1 0 0 0 0 1

秋田県立大学 1 0 1 1 1 4

秋田工業高等専門学校 1 0 1 1 1 4

ノースアジア大学 0 0 0 0 0 0

小計 10 5 5 5 5 30

年度別合計(人) 35 35 47 48 46 211

4) 本事業では,農業体験ツアーと収穫感謝祭ツアーの両方に出られることを条件に参加者を募集している。したがって両ツアーの 参加者の顔ぶれおよび人数は同じになるはずだが,病気や用事によりメンバーが交代したり欠席者が出ることもある。各ツアー の参加人数・内訳は毎年の実施報告書に記載しているので(秋田地域留学生等交流推進会議2009,p.3,2010,p.3,2011,p.3,

2012,p.3,2013c,p.3),ここでは代表的な数値として農業体験ツアーの参加者数のみを挙げる。

(7)

たためである。具体的には各グループに1から2人の日本人学生を配し,農家とのやりとり支 援やグループ活動のとりまとめなどで,リーダーとしての役割を果たしてもらった。

 最後に引率者について,2009年度の開始時は企画・運営を担う秋田大学が主となり7人(教 員2人,職員5人),他3機関から各1人の職員が参加した。2010年度には,前年度の経験から引 率者はそれほど必要でないこと,職員派遣は各大学の負担となるという印象を得たことか ら,秋田大学から5人(教員3人,職員2人)の参加とした。しかし本事業の主催は推進会議であ り,また留学生関係の行事としては,県内の各教育機関が連携して参加・実施しうる唯一の 機会である。他大学にも相応の人的負担を求めるとともに,異なる教育機関の教職員が顔を 合わせるよいチャンスとして捉えてもらいたいと考えるようになり,2011年度から再び他機 関にも引率者の派遣を依頼するようになった。2011年度には,グリーン・ツーリズムに関心 の高い秋田県立大学の教員1人,他教育機関への呼びかけに応じた秋田工業高等専門学校の 教員1人,秋田大学の教員1人・職員2人が引率者として参加した。この際,秋田工業高等専門 学校からの引率教員が本事業の意義を高く評価し,次年度以降の引率者の派遣に前向きで あったことから,2013年度まで,秋田県立大学1人,秋田工業高等専門学校1人,秋田大学3人 での引率体制が続いている。

6 予算 6.1 概要

 本事業の予算と使用内訳は以下のとおりである(表4)。他地域で同様の取り組みをする際 の参考になると思われるため,できるだけ詳細に掲載する。

表4 農家民泊事業年度別予算・内訳 支出者    年度

   内訳 2009 2010 2011 2012 2013

中島記念助成 講師謝金・旅費 0 0 0 35,200 0

報告書印刷代 189,000 189,000 84,000 74,400 0 バス借上代 315,000 315,000 315,000 0 199,500 保険料 35,000 35,000 47,000 32,900 0 民泊・体験料 385,000 385,000 521,000 517,000 500,000 感謝祭体験料 49,000 49,000 35,000 65,800 0

消耗品代 0 0 0 4,700 500

小計 973,000 973,000 1,002,000 730,000 700,000

秋田地域留学生等交流推進会

講師謝金・旅費 0 0 0 4,360 0

報告書印刷代 0 0 0 31,000 107,100

バス借上代 0 0 0 169,500 0

保険料 0 500 0 1,700 17,000

感謝祭体験料 0 0 86,800 0 82,800

工芸品体験料 0 52,500 0 0 0

昼食・飲料代 0 25,125 0 0 0

報告書郵送代 17,000 17,000 17,000 0 0

消耗品代 15,000 15,000 15,000 0 9,580 その他 94,3505) 6,750 9,000 18,164 7,680 小計 126,350 116,875 127,800 224,724 224,160

モンゴル友好協会 バス借上代 0 0 0 30,000 0

保険料 0 0 0 0 30,000

昼食代 30,000 30,000 0 0 0

消耗品代 0 0 30,0006) 0 0

小計 30,000 30,000 30,000 30,000 30,000 年度別合計(円) 1,129,350 1,119,875 1,159,800 984,724 954,160

(8)

6.2 支出者

 本農家民泊事業は,公益財団法人中島記念国際交流財団助成(以下「中島記念助成」)による 留学生地域交流事業(日本学生支援機構実施事業)として行われてきた。この助成は, 「地域 における外国人留学生と日本人等住民との相互理解促進に係る事業を助成することにより,

日本の諸地域における外国人留学生の適切な受入れ環境を整備し,留学生交流を推進する こと」(日本学生支援機構,2013)を目的としている。推進会議の事業は2006年度からこの助 成に採択されており,本農家民泊事業も助成金を主要予算とすることで,継続しての実施が かなってきた。

 本事業を開始した2009年度には申請金額が二つに区分されており,それぞれの採択予定件 数が異なっていた。すなわちA区分は50万円以上100万円以下で30件程度,B区分は100万円 超300万円以下で5件程度の採択予定であった。推進会議として実施できる事業の規模と採 択の可能性を考え,2009年度はA区分で申し込み95万円の助成を得ることができた。2010年 度も本事業の規模は変えなかったので申請は100万円以下で行ったが,この年中島記念助成 は申請金額による区分を止め,50万円以上300万円以下で35件程度の採択へと募集要項を変 更した。2年の経験を経て,参加者数が増えても問題なく実施できるという見通しを得,また もっと多くの学生に体験してほしいと考えるようになっていたため,2011年度からは参加者 数と申請額を増やして中島記念助成に応募することに決めた。その結果無事に採択され,10 人以上参加者数を増やして実施することができた。

 ただ,その後も助成の募集要項には変更があり,2012年度は50万円以上200万円以下で20 件程度,2013年度は100万円以下で20件程度の採択見込みとなった(実際の採択件数は2012年 度28件,2013年度29件)。変更の経緯を知ることはできないが,申請額の上限額が下がったこ と,採択予定の件数が減ったことからすれば,2012年度から助成事業全体の予算規模が縮小 されたのではないかと推測できる。2012年度も本農家民泊事業は採択されたが助成金額はそ れ以前に比べて減った。しかし筆者自身は,実施を重ねるごとに本事業には意義があるとい う確信を強めてきており,全体の参加者数を減らしたくなかった。国際課の担当職員にも助 言をもらいながら,バスにガイドを付けない,農業体験料金を抑えてもらうなどさまざまな 部分の支出削減を試みることで支出額全体を圧縮し,不足分はその他の予算で補てんする こととした。その結果,助成額は約30万円減ったが,補てん額は約12万円増にとどまった。

中島記念助成の不足分は,主に,主催団体の推進会議と協賛団体のモンゴル友好協会が予算 を支出している。ただし推進会議分は,実際には,主に秋田大学の年度計画推進経費から支 出している。年度計画推進経費は,文部科学省による国立大学法人運営費交付金を財源とし,

学長が特にその年度に推進すべきと考える事業に対し,戦略的に配分しようとする趣旨で 設けられている予算である。各部局が作成した事業実施計画案を学長が審査し,予算額を決 定・配分する。本事業に関しては筆者の所属する国際交流センターが事業実施計画案を作成・

提出しており,こうした大規模な課外活動の実現にあたっては,学内においても競争的に資 金を獲得することが求められていると言える。

5) 2009年度については詳細な会計記録が残っておらず,内訳不明なものは「その他」とした。実際にはここに「昼食・飲食代」「工芸 品体験料」等が含まれているものと思われる。

6) 翌2012年度の事業で使用予定のデジタル・カメラを購入したもの。したがって,2011年度実施事業のための支出合計金額は 1,129,800円。

(9)

6.3 支出内訳

 支出内訳の中で毎年もっとも大きな割合を占めているのは,民泊・体験料である。2013年 度の実績では感謝祭体験料を合わせると全支出の約6割になる。年度によって異なるが,基 本的には1泊2日4食付の農家民泊・農業体験

7)

と,日帰り収穫感謝祭ツアーでの料理作り体 験のために,グリーン・ツーリズム西木研究会に支払う料金である。これら体験料すべてを 合わせると,参加者ひとりあたり約12,000円となるが,計3日間5食付であることだけを考え ても相当廉価である。それに加えて,農家が一緒に行うさまざまな体験も含まれており,時 間も労働力もとるため,筆者は対価をしっかりと支払いたいと考えてきた。

 予算の大部分を助成に頼っているため,前述のように採択額が思いのほか減った年度に は支出をどう抑えるかが問題になった。その際には,グリーン・ツーリズム西木研究会に協 力を得て体験料を少し減額してもらったが,可能な限り別の部分での支出削減に努めた。あ る職員からは,農家にはボランティアで協力を求めたらどうか,あるいはボランティアでも やりたいというところに場所を変えたらどうかという助言もあった。しかしグリーン・ツー リズム西木研究会のメンバーの多くは,民宿営業許可をとって受け入れを行っている。本業 はあくまでも農業であるが,受け入れの長い歴史を持つ農家も多く,農家民泊・農業体験に おいてもプロである。プロに対してボランティアのような対価で受け入れてもらうことは できないと同時に,対価を支払う価値のある応対をしてもらえるからこそ,西木町での本事 業の実施は成功を収めてきた。この対価の支払いという論点は,参加学生と農家との互恵性 の問題とも関わっており,11章で再度触れたい。

7 開催地─仙北市西木町

 本事業は2009年度の開始以来,一貫して秋田県仙北市西木町を開催地としてきた。仙北市 は,秋田県の南北で言えば中央,東西では東に位置し岩手県と接している。旧仙北郡の田沢 湖町,角館町,西木村の三町村が合併することで,2005年9月20日に誕生した新しい市である。

日本で最深の田沢湖を中心として,周囲は田沢湖抱返り県立自然公園に指定されている。こ の公園には標高約1600メートルの秋田駒ケ岳,田沢湖スキー場,乳頭温泉などがあり,総面 積の83.8%を森林が占めていることからも,自然に恵まれた地域と言うことができる。それ に比して,田や畑などの耕地率は5%にすぎない

8)

 しかし農家数を見た場合,仙北市の全世帯数のうち18%が販売農家

9)

である。販売農家と は, 「経営耕地面積が30a以上又は調査期日前1年間における農産物販売金額が50万円以上の 農家」(農林水産省2011a)のことであり,耕地面積または農産物の販売額が一定のまとまっ た量をもつ農家を指している。全国平均は3.1%,秋田県内平均は11.9%であることからする

10)

と,18%の仙北市は農業の盛んな地域だと言うことができる。

7) 2009・2010年度は,農業体験ツアーの2日目の昼食を料理店でとったため,1泊2日で3食付だった。

8) 2010年2月1日時点での仙北市の総土地面積および林野面積(農林水産省2012a),2011年7月15日時点での仙北市の耕地面積(全国 農業会議所2013)に基づき算出した。なお,2011年7月15日時点での全国の耕地率は12.2%,秋田県内は12.9%である(農林水産省 2012b)。以下,パーセンテージの数値はすべて小数点以下2桁で四捨五入した概数。

9) 2010年2月1日時点での仙北市の世帯数(秋田県2010)および販売農家数(農林水産省2012c)に基づいて算出した。

10) 2010年2月1日時点での全国および秋田県における販売農家数(農林水産省2011b)と秋田県の世帯数(秋田県2010), 2010年10月1 日時点での全国の世帯数(総務省2010)に基づき算出した。

(10)

 その中でも西木町は, 全世帯数のうち30.7%が販売農家であり

11)

,特に農業が主要産業の 一つとなっている地域である。筆者が農家民泊事業やインタビュー調査で各所を訪れた際 にも,新興公営住宅地と林野部をのぞき,一面に田畑が広がっているという印象をもった。

また農家の話や地域の農産物直売所の様子から,主な農産物は,秋田こまちを中心とする米,

大きいことで全国に知られる西明寺栗,ハウスでのホウレンソウ,ダリヤなどの花卉類だと 推測される。

8 受け入れ農家─グリーン・ツーリズム西木研究会

 この西木町で1998年にはじまったのが,本事業で中心的な役割を果たしてきたグリーン・

ツーリズム西木研究会である。研究会設立の発端は,1980年頃に藤井けい子氏が中学校から の農業体験受け入れをはじめたことにある(川村2001,p.15,麻生2008,p.24)。こうした受 け入れにより個人的な訪問者も増えてきたことから,藤井氏は,遠慮なく泊められる場所を ということで離れを建築し,1996年に農家民宿・泰山堂を開業した(麻生2009,p.37)。

 その同じ1996年に,西木町(当時は西木村)は,農林水産省によるグリーン・ツーリズムモ デル整備構想策定地区の指定を受け,グリーン・ツーリズム構想策定検討会が作られた。翌 1997年に研究会設立準備会が開かれたのち,1998年に西木村グリーン・ツーリズム研究会(現 在のグリーン・ツーリズム西木研究会)が発足した(川村 2002,pp.15-16)。初代の研究会会 長は前述の藤井氏であり,現会長は1998年開業の農家民宿・星雪館のオーナー,門脇富士見 氏である。会員数は40人で,日帰りのみ可能な農家を含め,合計16軒が研究会に参加してい る(仙北市農山村体験デザイン室2013)。以下に,本事業における年度別受け入れ農家を示す

(次頁,表5)。

 5軒は事業開始時からの受け入れ農家であり,その後多少の入れ替わりはあったものの,

事業への参加者人数の増加にともない,受け入れ農家も増えてきたことがわかる。

 グリーン・ツーリズム西木研究会参加の農家は,国内の児童生徒等の農業体験受け入れに 長い歴史をもっている。こうした安定した実績があったため,県内他地域ではなく西木町を 留学生の農家民泊事業の最初の実施地とした。しかし外国人を団体で受け入れた経験は,グ リーン・ツーリズム西木研究会も本事業がはじめてであった。初年度の受け入れ前には成 功を心配していた農家もあったとのことだが,大きな問題は起こらず,むしろ農家・学生両 方が満足感を得て終えることができた(9章参照)。このことが,翌年以降の受け入れ継続と 新規農家の参加につながったと思われる。また,筆者も開始当初は,県内のさまざまなグリー ン・ツーリズム地域を回っていく事業にしようと考えていたが,参加者全員がまた来たい と思えるようなすばらしい受け入れであったために,グリーン・ツーリズム西木研究会に 継続して依頼することとした。

11) 2010年10月1日時点での西木町の世帯数および2010年2月1日時点での販売農家数に基づいて算出した。前者は,仙北市(2011)の

「西木地域」の世帯数であり,後者は,農林水産省(2012c)から,西木町をなす2村(西明寺村,桧木内村)の販売農家数を合計した 数値を用いた。

(11)

表5 年度別受け入れ農家民宿・代表者名および農家数

    

9 参加者の満足度 9.1 アンケートについて

 本事業では毎年,農業体験ツアーと収穫感謝祭ツアーそれぞれの終わりにアンケートを 行ってきた

12)

。実際のアンケートでは,各ツアーごとに,所属機関や事業を知ったきっかけ,

ツアー内の各活動の満足度なども質問項目に入れているが,集計結果の詳細は各年度の実 施報告書に掲載ずみであるため

13)

,ここでは農業体験ツアーでの交流に対する評価と,農業 体験ツアーおよび2回のツアーに対する総合的評価にしぼって紹介する。

9.2 留学生・日本人学生─交流

 まず,参加学生(留学生・日本人学生)が,他の学生・教職員との交流に関しどのように回 答したかについて考察する。

12) アンケートの回収率(回答枚数/参加者数)は,農業体験ツアー後のものについては,2009年度100%,2010年度100%,2011年度 97.6%,2012年度97.7%,2013年度100%。収穫感謝祭ツアー後のものについては,すべて100%。

13) 秋田地域留学生等交流推進会議(2009,pp.20-27,2010,pp.24-30,2011,pp.19-26,2012,pp.18-27,2013c,p.17-27)

    年度 農家民宿名

(代表者名)

2009 2010 2011 2012 2013

(門脇昭子・富士見)星雪館

(藤井けい子)泰山堂

(高橋佳子・由希子)のどか

(佐藤由井)里の灯

(佐々木弘子)くりの木

(佐藤郁子)一の重

(沢山節子)一助

(門脇砂絵美)門脇

(川井れいこ)川井

(藤枝千恵子)

農家数合計(軒) 5 6 7 8 8

(12)

図1 農業体験ツアーで他の学生および教職員と交流できたか(留学生・日本人学生)14)

 他の学生および教職員との交流については, 「とてもよく交流できた」と「交流できた」を合 せると,もっとも低い2009年度で85.1%,もっとも高い2011年度では97.6%となっている。「ど ちらでもない」という回答は毎年数件あるが, 「交流できなかった」「あまり交流できなかっ た」は,開始初年度の2009年度にそれぞれ1件,3件あったのみであり,他の留学生や日本人学 生,教職員との交流については,概ね高い満足感が得られてきたと言うことができる。

図2 農業体験ツアーで農家と交流できたか(留学生・日本人学生)

 農家との交流については, 「とてもよく交流できた」と「交流できた」を合せると,もっとも 低い2010年度で71.4%,もっとも高い2013年度では87.5%となる。また「交流できなかった」と いう回答はこれまで1件もなかった。一方で, 「どちらでもない」「あまり交流できなかった」

という回答は少ないながらも毎年見られる。留学生の中には来日して間もなく,ほとんど日 本語で話すことができない者もいる。またアンケート中で,交流できたかどうかを尋ねる質 問は, 「Could you communicate with farmers?」と英訳されており,農家との意思疎通が可 能であったか否かを回答した者もいたと思われる。

 本事業では,日本語での意思疎通が難しい留学生にも積極的に参加を促している。参加希

14) 2009年度については,2つの質問「他の留学生(自分が日本人の場合は「他の日本人学生」)と交流できましたか」「日本人学生(自 分が日本人の場合は「留学生」)と交流できましたか」への合計回答数から算出した(教職員との交流は調査していなかった)。

2010年度以降はすべて「他の学生及び教職員と交流できましたか」という質問への回答数から算出した。

100%

80%

60%

40%

20%

0%

2009

とてもよく交流できた

2010 2011 2012 2013

交流できた どちらでもない

あまり交流できなかった 交流できなかった

100%

80%

60%

40%

20%

0%

2009

とてもよく交流できた

2010 2011 2012 2013

交流できた どちらでもない

あまり交流できなかった

交流できなかった

(13)

望学生は申し込み用紙に,自分の母語と,日本語・他言語運用能力の自己評価を記入するこ とになっている。この記入内容を参考に,間接的にでもお互いが意思疎通できるようメン バーを組み合わせることがグループ作りの肝であり,筆者もその点に注意してきた。しかし そのように作っても,通訳を果たせる言語能力をもった学生が,必ずしも意思疎通の仲介役 をしてくれるとは限らない。様子を見て引率教職員やリーダーが仲介する必要があり,今後 さらに改善していく余地がある。

9.3 留学生・日本人学生─満足度

 次に,参加学生が,農業体験ツアーおよび2回のツアー全体の満足度に関し,どのように回 答したかを考察する。

図3 農業体験ツアーに参加して満足したか(留学生・日本人学生)

図4 農業体験ツアーと収穫感謝祭ツアーに参加して満足したか(留学生・日本人学生)

 図1,2で見てきたように,参加学生の回答にはわずかではあるが,他の学生・教職員,農 家との交流について不満足または満足していないというものもあった。しかし農業体験ツ アー全体として,また農業体験ツアーと収穫感謝祭ツアーを合わせた総合的評価としては,

この5年の間,ほぼ毎年100%に近い参加学生が「とても満足した」「満足した」と肯定的に捉 えている。

 自由記述式で書かれた感想・意見を考察すると,参加学生が特に高く評価していたのは 100%

80%

60%

40%

20%

0%

2009

とてもよく交流できた

2010 2011 2012 2013

交流できた どちらでもない

あまり交流できなかった 交流できなかった

100%

80%

60%

40%

20%

0%

2009

とてもよく交流できた

2010 2011 2012 2013

交流できた どちらでもない

あまり交流できなかった 交流できなかった

100%

80%

60%

40%

20%

0%

2009

とても満足した

2010 2011 2012 2013

満足した どちらでもない 不満だ

とても不満だ

100%

80%

60%

40%

20%

0%

2009

とても満足した

2010 2011 2012 2013

満足した どちらでもない 不満だ

とても不満だ

(14)

主に, (1)さまざまな新しい体験と知識の獲得, (2)学生や農家との出会いと交流, (3)農家の 優しく温かい雰囲気であり, (4)再訪・再参加の希望も多く見られた。実際の回答例を挙げ ながらそれぞれを紹介したい。

 (1)については,日本・秋田の文化や暮らし,農家の暮らし(農作業・料理),農作物,他国 の文化や農業,グリーン・ツーリズムなどを,新たに体験し知ったという感想が多かった。

本事業の主な内容は,1泊2日で農家に泊まりながら農作業を経験し,1か月後に再会して料 理作りなどの活動を行うというものであるが,そこで何を体験し学んだと認識しているか は参加者によって異なる。たとえば,日本人とコミュニケーションしたのもはじめてとい うような来日後間もない留学生にとっては,生の日本の文化を学んだ経験として記憶に残 るようだ(「Farming tour was so enjoyable and it gave me opportunities to learn Japanese farming and culture. Also it was the first time experience with communicating Japanese people」(2011農業体験

15)

))。

 一方で,出身国の都市部で成長し,東京等の日本語学校を卒業した後,秋田の大学に入学 したような留学生にとって,日本人と話すこと自体は珍しくない。しかし出身国でも田舎を 知らず,ましてや農家に泊まったことなどない場合,農作物ができていく過程自体が非常に 興味深いものとして映るだろう(「私にとって自然の景色と農家の生活は,新しい体験。いつ も繁華街に住んでいる私にとって,今回の体験は本当に珍しいこと」(2012農業体験))。ま た筆者が直接・間接に聞いた話では,出身地でコミュニティとのつながりを模索している 留学生や実家が農家という日本人学生は,グリーン・ツーリズムというプログラム自体に 関心を抱き,自分の出身や家でもやってみようと考え始める場合もある。

 (2)については,大学や出身の異なる留学生・日本人学生と知り合えた,農家の家族とい ろいろな話ができたといった感想があった。秋田県内には複数の高等教育機関があるもの の,それぞれの立地は離れており普段の生活の中では知り合う機会が少ない。本事業は,そ の数少ない機会となると同時に,出身の異なる学生同士の出会いの場ともなっている(「I think farm stays are a brilliant way in which to foster community amongst students from different origins, and amongst universities and local residents.」 (2009農業体験), 「農家の方々 だけじゃなくて,他の学校の学生とも友達になって嬉しかった」(2011総合))。

 農家との交流に関しては,秋田の農業や生活についていろいろ教えてもらったという感 想(「People from here were so welcoming and warm and taght as many interesting things and shown as wonderful things, also told us history and how to make something interesting many things」(2012総合))のほかに,ことばの問題で十分な意思疎通は図れな かったけれども,農家が優しく接してくれたので楽しかったというコメントも見られた(「The family that I stayed with are very nice and helpful, eventhough I could not understand the language」(2010農業体験), 「Home mother and father are very nice people. They are passionate and patient to tell me many things even though I could only got 70%~ 80% in the conversation」(2013農業体験))。

 (3)の家族的で優しく温かい農家の雰囲気については,毎年非常に多くの感想が残されて

15) 以下,自由記述の回答から引用する際には,年度とともに,農業体験ツアーについての回答中のものは「農業体験」,事業全体に ついての回答中のものは「総合」と記す。アンケートの実施時期は,前者は農業体験ツアーの終わり,後者は収穫感謝祭ツアーの 終わりである。

(15)

きた(「農民さんは優しかったですから,とてもrelaxと思います」(2009農業体験), 「家族の 皆さんはとても親切にしてくれました」(2010農業体験), 「I'm really pleased to meet such kind farmers. And they behaved like our family」(2011総合), 「けいこ・ゆきこ and their family were very kind and welcoming」(2012農業体験), 「農家民泊のお父さんとお母さん は本当の親みたいにやってくれて久々に温かい心を感じることができました」(2013農業体 験))。(2)でも触れたように,言語による情報交換には限界があるとしても,受け入れの農 家の対応がそれを補い得るほどの温かさをもっているため,参加学生は,総じて満足という 評価を出してきたものと思われる。こうした思いを残す事業であるからこそ,多数の (4)再 訪・再参加の希望を表明する感想が見られるのだろう。もう一度こうした機会があるなら必 ず参加したい,また来年も参加したいので続けてほしいなど,プログラム化された事業への 再参加を望む声がある一方で,正月にまた来たい,今回泊まった農家をまた訪れたいといっ た,個人として再訪を願うコメントも見られた。このような個人的に再訪を望むコメントは 2011年度以降増加しており,その理由については10章で考察する。

9.4 農家─交流

 次に,農家が,参加学生・教職員との交流に関しどのように回答したかを考察する。

図5 農業体験ツアーで留学生と交流できたか(農家)

図6 農業体験ツアーで日本人学生および教職員と交流できたか(農家)16)

16) 2009年度については,教職員との交流は調査しておらず,「日本人学生と交流できましたか」という質問への回答数から算出した。

100%

80%

60%

40%

20%

0%

2009

とてもよく交流できた

2010 2011 2012 2013

交流できた どちらでもない

あまり交流できなかった 交流できなかった

100%

80%

60%

40%

20%

0%

2009

とてもよく交流できた

2010 2011 2012 2013

交流できた どちらでもない

あまり交流できなかった

交流できなかった

(16)

 留学生との交流については, 2009・2010年度には, 「あまり交流できなかった」という回答 もあった。また,同じく開始から2年間は,日本人学生および教職員との交流についても「あ まり交流できなかった」という回答が見られた。

 その原因は,交流に使える時間の短さと,グループ引率者の役割にあったと考えられる。

アンケートの自由記述欄を見ると,2009・2010年度ともに時間の短さに言及するコメントが あった(「短い時間だったので,みなさんに慣れる前に終わってしまった気がします」(2009 農業体験), 「ゆっくりした時間があったら,お互いにもっともっと,自分で出来ることや話 し合いが出来たのに」(2010農業体験))。また2010年度には,引率者があまり学生との仲介 をしてくれず交流できなかったという不満の声も見られた(2010農業体験)。これら問題の指 摘を踏まえ改良した結果については,次の10章で述べる。

 2010年度から新規の受け入れ農家の参加が続いており,慣れの問題もあって十分に交流で きたとは言い切れない場合もあったと推測される。それでも2011年度以降は,受け入れ農家 からも「とてもよく交流できた」「交流できた」という肯定的な回答を得てきている。

9.5 農家─満足度

 最後に,農家が,農業体験ツアーおよび2回のツアー全体の満足度に関しどのように回答 したかを考察する。

図7 農業体験ツアーに参加して満足したか(農家)

図8 農業体験ツアーと収穫感謝祭ツアーに参加して満足したか(農家)

100%

80%

60%

40%

20%

0%

2009

とても満足した

2010 2011 2012 2013

満足した どちらでもない 不満だ

とても不満だ

100%

80%

60%

40%

20%

0%

2009

とても満足した

2010 2011 2012 2013

満足した どちらでもない 不満だ

とても不満だ

(17)

 過去5年間を通じ,農業体験ツアー,またそれに収穫感謝祭ツアーも合わせた事業全体に 対する否定的な回答は,2010年度の「不満だ」1件のみであった。交流という面では事業の初 期には問題も見られたものの,総じて本事業への参加は,受け入れ農家にとっても高い満足 感を残すものとして評価されてきたと言うことができる。

 アンケートの自由記述欄に書かれた感想も肯定的なものが圧倒的であり,内容は, (1)留 学生が家に来ることへの喜びと感謝, (2)参加者との再会の希望, (3)事業の継続への希望,

とまとめることができる。(1)は「こんな山の中で,遠く来ていただき,各国の人達と交流が 出来た事,とても良かったです」(2009総合), 「60歳を過ぎ,若い人たちとの交流,それも外 国の言葉も違う人たちとこうした会える事など思ってもいませんでした。とっても幸せを 感じております」(2011総合), 「世界各国の皆さんと秋田のこの地で出会うことができる! 

これは素晴らしい経験。何よりも我が家の子どもたちには刺激的(中略)ありがとうございま した」(2012総合)など,世界中から自分の家に学生が訪れることを,新たな学びや刺激を得 られる機会ととらえていることがわかる。筆者にとって,グリーン・ツーリズム西木研究会 の農家は,ことばの壁のある留学生を受け入れてくれる感謝すべき存在だが,農家にとって もこうした機会は得難いこととして受けとめられている。だからこそ, (2)のように再び参 加者に訪れてほしいといった感想や, (3)のように本事業を今後も継続してほしいという要 望が出されるのだろう。

10 5年間の事業内容の概括と改良点 10.1 互恵的な事業であるために

 本事業のもっとも大きな目的は,参加学生と農家との関係を事業終了後にまで続いてい くような継続的なものとすることにある。アンケートでは学生からも農家からも再会や再 訪を望む声が多く出されており,農家の話によれば実際に再訪した例や訪問を続けている 例もあるとのことなので,筆者のねらいはある程度成功を収めていると言えるだろう。

 継続的な関係を築いていくためには,参加者が一方的に楽しみ,農家が一方的に負担を強 いられるというようなアンバランスは避ける必要がある。6章で述べたように,受け入れ農 家に金銭面での負担を強いないよう,外部資金等により予算を確保することは必須である。

このことに加え,事業内容としても参加学生と受け入れ農家双方に得られるものがあるよ うにすることが,筆者にとって課題のひとつであった。ここでは,5年間の事業内容を振り返 り,アンケートの自由記述の回答にも再度触れながら,これまでの改良点をまとめていく。

10.2 2009年度 秋田の農家民泊─体験から持続的交流へ

 事業実施初年度にあたる2009年度は, 「秋田の農家民泊─体験から持続的交流へ」をテー マとした。地域との交流を目的とした事業であっても,そのほとんどは日帰りか1泊2日の一 回性のものであろう。それに対し本事業は,同じメンバーが1か月の間を空けて再会するこ とに特色がある。秋田の中心部から離れた地域を2回訪れることや,同じメンバーに確実に 再参加してもらうための連絡などがあり,1回で終了するよりも準備作業には手間がかかる。

しかし筆者は継続的な関係作りのためには,事業として再会の機会を用意したほうがよい と考え,中島記念助成にもその内容で申請し採択されることができた。

100%

80%

60%

40%

20%

0%

2009

とても満足した

2010 2011 2012 2013

満足した どちらでもない 不満だ

とても不満だ

100%

80%

60%

40%

20%

0%

2009

とても満足した

2010 2011 2012 2013

満足した どちらでもない 不満だ

とても不満だ

(18)

農業体験ツアー

 1 農業・農家民泊体験

 2 外国人留学生の農業体験を考える会

   ・グループごとに,前日からの体験の概要,魅力,改善点を模造紙1枚にまとめる    ・全体に発表

 3 森林工芸館・陶芸体験

収穫感謝祭ツアー  1 料理作り体験  2 アルバム作成・贈呈  3 名刺作り・交換

 初年度の農業体験ツアー 2日目の前半には, 「外国人留学生の農業体験を考える会」として,

前日の振り返りとともに,外国人のグリーン・ツーリズム受け入れ推進のための改善案を 提案する活動を実施した。グリーン・ツーリズムを一つの地場産業として盛んにしていこ うという動きがあると想定し,この動きに留学生が何らかの貢献ができないかと考えて入 れた活動だった。この提案と,2回目の収穫感謝祭ツアーでのアルバム贈呈とで,農家民泊・

農業体験を実施してくれた農家にとっても得られるものがあるようにしたかった。

 また農業体験ツアー 2日目には,第2の活動として地元の体験所で陶芸作りを行うという メニューも入れていた。同じ推進会議主催で前年度まで行われていた町おこし事業でも,こ うした体験時間が必ず設けられており,これに倣おうとしたことと,農業関係だけでなくほ かの体験もできたほうが,参加学生にとっても飽きずによいのではないかと考えたためで ある。

 この年のアンケートの意見・感想を読むと, 「農業体験は時間があまりなく,かつ人数も 多かったので,ほとんどさわり程度だったのが少し残念」(2009農業体験)など農業体験の時 間不足を訴えるものが複数見られた。しかしこのアンケート結果を読んだ時点では,農業体 験だけでは単調になるという筆者の考えは変わらなかった。「農家の方たちともっと交流し たかった。例えば,一緒にごはんを食べながらしゃべるなど」(2009農業体験)といった,農 家と一緒に作業する時間を延ばしてほしいという感想もあったことから,グリーン・ツー リズム西木研究会の会長であった藤井氏に,留学生はお客さんとして扱われるより普段の 作業を手伝いたいと考えていることを伝え,次年度以降のその点での工夫をお願いした。

 また収穫感謝祭ツアーにおいては,西木町で作られた和紙を使って名刺を作り交換する 時間を最後に入れた。地域の活性化のためには,その地の産物を購入して使うことが重要だ と考えていたためだが,今後も本当に連絡し合おうと思っていれば,すでに連絡先の交換は 終えているはずのタイミングだったことに気づき,形式的な活動にならないよう次年度以 降はやめることとした。

 この時にはあまり意識していなかったが,西木町での農業体験がはじまって30年近くの歴

史の中で,個人の旅行客ではなく,外国人団体を複数の農家が一度に受け入れたのは,本事

業がはじめてのことだった。12月には仙北市の広報誌の表紙に,本事業の様子が写真で掲載

(19)

された(仙北市2009,p.1)。このことからも,外国人団体の農業体験受け入れがめずらしかっ たことがわかる。

 終了後アンケートの農家からの回答には,受け入れの前はことばの問題などでうまくい くか心配していたという声も複数見られた。しかし「受入する前は言葉(話す事)が出来だろ うかとても心配でしたが,なんの心配も無く逆に私の方で良き勉強をさせてもらいました」

「当初の予想に反して,会話もコミュニケーションもとてもスムーズに行えました」(2009農 業体験), 「初めに思っていたよりもずっと楽しい交流となりました」(2009総合)といった感 想からは,農家が,当初の心配に反してうまくいき楽しかった,成功したという思いで1年目 の事業を終えたことがうかがえる。

10.3 2010年度 秋田の農家民泊 in 西木町─持続的交流の展開

 2年目は, 「秋田の農家民泊 in 西木町─持続的交流の展開」として事業を計画・実施した。

前年度の西木町がとても印象的だったことから町の名前を入れ,また事業内容に改良を加 えさらなる「展開」を図るという意図を込め「持続的交流の展開」をサブテーマとした。

農業体験ツアー

 1 農業・農家民泊体験

 2 留学生とグリーン・ツーリズムを考える会    ・グループごとに,前日からの体験を振り返る

   ・各農家宣伝用パンフレット作成準備として,素案を作る    ・全体に紹介

 3 角館・樺細工作り体験

収穫感謝祭ツアー  1 料理作り体験

 2 パンフレット作成・贈呈

 前年度との変更点は,外国人客のための農家宣伝パンレットを作成したことである。農業 体験ツアー 2日目の「留学生とグリーン・ツーリズムを考える会」で,写真選びや素案作りを 行い,収穫感謝祭ツアーで料理作りを手伝いながら,手分けをしてA3両面・カラーの手書 きパンフレットを作成した。前年度はグリーン・ツーリズム推進のための提案を行ったわ けだが,提案だけでは直接に推進に貢献できないと考え,宣伝パンレフレットの作成という 活動を思いついた。できあがったものは,写真も豊富で中国語や英語で書かれており,後日,

仙北市内の観光案内所等に置いてもらうことができた。一方で,公開に耐える質のものを作 るには時間がかかる。農家からのアンケート結果にも「11月6日は,とても忙しく」 (2010総合)

という記述があり,ゆっくり話し合う時間が足りなかったという印象も残った。

 この年も続けた工芸品作り体験にも,違和感をもつようになっていた。このスケジュール では,農家に1泊2日で滞在すると言っても,2日目は8時半には農家を出発しなければならず,

パンフレット作成後には早々に農家に別れを告げて,昼食と工芸作りに移らなければなら

参照

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