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厚生労働行政推進調査事業費補助金(政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業))
「我が国の貧困の状況に関する調査分析研究」
分担研究報告書
住宅・土地統計調査からみた住宅の貧困状況 その2
研究分担者 阪東 美智子(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究要旨
目的:「住宅・土地統計調査」を用いて、世帯の属性(世帯の年間収入、家計を主に支える 者の年齢や従業上の地位、世帯人員など)の違いによる住宅の貧困状況を明らかにすること を目的とした。
方法:統計法第 33 条に基づき総務省から提供を受けた「住宅・土地統計調査」の全国の調 査票(平成15年、平成20年、平成25年)を利用し、調査年別・都道府県別に、居住面積 水準未満世帯率や家賃負担率30%以上世帯の割合と、世帯の属性(世帯の年間収入、家計を 主に支える者の年齢・性別・配偶者の有無・就業上の地位、世帯人員、住宅の市所有形態、
入居時期)との関係を比較・分析した。
結果:最低居住面積水準未満世帯の割合は、人口が多く借家層が多い東京都やその隣接県と 大阪府やその隣接県、および沖縄県で高いが、その他の都道府県は3%前後と低く、この状 況は過去 10 年間で変動がなかった。東京都と大阪府では、世帯主が高齢の場合も水準未満 世帯の割合が高いが、全国的には世帯主が30歳代で水準未満世帯の割合が最も高い。また、
非正規雇用者は水準未満世帯の割合が高い。東京都とその隣接県や大阪府とその隣接県では 単身世帯における水準未満世帯率が高い。家賃負担率30%以上世帯の割合は、ほとんどの都 道府県で2割を超え、平成20年から平成25年にかけて増加している。年間収入が「200万 円未満」の世帯、家計を主に支える者(以下、世帯主)が「25歳未満」の世帯、世帯主が「女 性」の世帯、世帯主が「配偶者なし」の世帯、世帯主が「無職 学生」や非正規の職員(「臨 時雇」「労働者派遣事業所の派遣社員」「パート・アルバイト・その他」)の世帯、世帯人員 が「1人」の世帯、「民営の賃貸住宅」の世帯、で家賃負担率30%以上の割合が高かった。
考察:最低居住面積水準については、人口が多く借家率が高い東京都とその隣接県や大阪府 とその隣接県など、および沖縄県で未満世帯率が高く、地域的な特徴がみられた。単身世帯 の最低居住面積水準の基準値が29歳未満と30歳以上で不連続でありそのギャップが大きい ため、30歳代の単身世帯で水準未満世帯率が高くなる傾向があり、基準値設定の再考が必要 と思われる。一方、家賃負担率30%以上世帯の割合については、全国的にどの自治体も借家 世帯の2割前後が該当しており、また平成20年調査時から平成25年調査時にかけてその割 合が増加している。このことから、居住面積水準の確保については地域的な特徴を踏まえて 都道府県ごとに対策を検討することが望ましいが、家賃負担については全国的な取り組みが 必要である。
- 2 - A.研究目的
「住宅・土地統計調査」を用いて、世帯の属 性(世帯の年間収入、家計を主に支える者の年 齢や従業上の地位、世帯人員など)の違いによ る住宅の貧困状況を明らかにすることを目的 とした。
B.研究方法
統計法第33条に基づき総務省から提供を受 けた「住宅・土地統計調査」の全国の調査票(平 成15年、平成20年、平成25年)を利用し、
調査年別・都道府県別に、居住面積水準未満世 帯率や家賃負担率 30%以上世帯の割合と、世 帯の属性(世帯の年間収入、家計を主に支える 者の年齢・性別・配偶者の有無・就業上の地位、
世帯人員、住宅の市所有形態、入居時期)との 関係を比較・分析した。
居住面積水準未満率は、平成15年・平成20 年については、最低居住面積水準未満率を、平 成25年については、最低居住面積水準未満率 のほかに、誘導居住面積水準(都市居住型)未 満率と誘導居住面積水準(一般型)未満率も算 出した。なお、住宅・土地統計調査では、共同 住宅に都市居住型、共同住宅以外に一般型を適 用しているが、本稿ではすべての世帯に都市居 住型と一般型のそれぞれの基準を当てはめ、水 準未満率を計算している。最低居住面積水準は、
平成15年調査時と平成20年・平成25年調査 時で基準が異なっているが、本稿ではすべての 調査年のデータを共通の基準で比較するため に、平成25年の調査で用いられている以下の 基準に統一して算出した。最低居住面積水準の 算出に当たっては、10 歳未満の子どもの人数 は注1を適用して調整したが、平成25年のデ ータについては、参考までに注1を適用しない 場合の数値も算出し比較に用いた。
最低居住面積水準
1 二人以上の世帯で、床面積の合計(延べ 床面積)が次の算式以上を確保している。
10㎡×世帯人員+10㎡(注1、注2)
2 単身世帯の場合は、以下のいずれかを確 保している。
(1)29歳以下の単身者で、専用の台所があ り、居住室の畳数が「4.5畳」以上
(2)29歳以下の単身者で、教養の台所があ り、居住室の畳数が「6.0畳」以上
(3)30歳以上の単身者で、床面積の合計(延 べ床面積)が「25㎡」以上
誘導居住面積水準 都市居住型
1 二人以上の世帯で、床面積の合計(延べ 床面積)が次の三色以上を確保している。
20㎡×世帯人員+15㎡(注1、注2)
2 単身世帯の場合は、以下のいずれかを確 保している。
(1)29歳以下の単身者で、専用の台所があ り、居住室の畳数が「10.5畳」以上
(2)29歳以下の単身者で、教養の台所があ り、居住室の畳数が「12.0畳」以上
(3)30歳以上の単身者で、床面積の合計(延 べ床面積)が「40㎡」以上
一般型
1 二人以上の世帯で、床面積の合計(延べ 床面積)が次の三色以上を確保している。
25㎡×世帯人員+25㎡(注1、注2)
2 単身世帯の場合は、以下のいずれかを確 保している。
(1)29歳以下の単身者で、専用の台所があ り、居住室の畳数が「15.0畳」以上
(2)29歳以下の単身者で、教養の台所があ り、居住室の畳数が「16.5畳」以上
(3)30歳以上の単身者で、床面積の合計(延
- 3 - べ床面積)が「55㎡」以上
注1 世帯人員は、3歳未満の者は0.25人、3 歳以上6歳未満の者は0.5人、6歳以上 10 歳未満の者は 0.75 人として算出す る。ただし、これらにより算出された世 帯人員が2人に満たない場合は2人とす る。また、年齢が「不詳」の者は1人と する。
注2 世帯人員(注1の適用がある場合には適 用後の人員)が4人を超える場合は、上 記の面積から5%を控除する。
家賃負担率は、世帯の年間収入に占める年間 家賃の割合を算出した。ただし、調査票では収 入は区分された選択肢による回答となってい るため、便宜上、各区分の中央値をその区分に 該当する世帯の年間収入と仮定した。平成 15 年、平成20年、平成25年で選択肢の区分が異 なっているが、本稿ではすべての調査年のデー タを共通の基準で比較するために、平成15年 の調査で用いられている以下の選択肢に統一 して再集計し、再集計後の各区分における中央 値を用いて算出した。
算出した家賃負担率の分析に当たっては、欧 米諸国で住居費保障の基準値として年収の 30%という数値が使用されていることから、本 稿でも家賃負担率が 30%以上となる世帯の比 率を使用して比較検証することとした。
世帯の年間収入の区分と家賃負担率の算出に 用いた数値
(1)200万円未満→100万円 (2)200~300万円未満→250万円 (3)300~400万円未満→350万円 (4)400~500万円未満→450万円 (5)500~700万円未満→600万円
(6)700~1000万円未満→850万円 (7)1000~1500万円未満→1250万円 (8)1500~2000万円未満→1750万円 (9)2000万円以上→2000万円
(倫理面への配慮)
本研究では、公開されている統計法に基づく 既存統計データを用いており、データはすべて 匿名化されている状態で提供されている。新規 に人を対象にした調査を行ったり個人情報を 扱ったりはしないため、倫理面の問題はない。
C.研究結果
1.都道府県別の最低居住面積水準未満世帯
(1)平成15年から平成25年の推移(表1)
各都道府県の最低居住面積水準(以下、最低 水準)未満世帯の割合は、平成25年調査では、
東京都が 13.4%で最も高く、次いで沖縄県が
10.4%、大阪府が8.9%、神奈川県が7.9%で、
その他の都道府県は3%前後であった。
平成15年、平成20年、平成25年の推移を みると、ほとんどの都道府県が1%ポイント未 満の変動であり過去10年間で大きな変化は見 られなかった。
(2)世帯の年間収入との関係(表2-表4)
いずれの都道府県も、年間収入が低いほど最 低水準未満世帯の割合は高かった。宮城県、埼 玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県、愛 知県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、福岡 県など、三大都市圏とその隣接県で収入間の若 干の相違がみられたが、全般的に収入による顕 著な差は見られなかった。
(3)家計を主に支える者の年齢との関係(表 5-表7)
東京都と大阪府では、65 歳以上の高齢者で も最低水準未満世帯の割合は高かったが、その 他の道府県は、世帯主が高齢の場合、最低水準
- 4 - 未満世帯の割合は低かった。多くの都道府県は、
30 歳代で水準未満世帯の割合が最も高くなり、
20歳代と比べて大きな差がみられた。宮城県、
東京都とその隣接県、愛知県、京都府・大阪府、
広島県、福岡県など人口の多い都府県でその差 が大きく、特に東京都は、平成15年、平成20 年、平成25年のいずれも「30~35歳未満」で
28%を超え、20歳代との差が顕著であった。
(4)家計を主に支える者の性別との関係(表 8)
沖縄県を含む九州南部では男女間でほとん ど差は見られなかったが、その他の都道府県で は男性よりも女性が最低水準未満世帯の割合 が高かった。ただし、ほとんどの都道府県でそ
の差は 1~2%ポイントであり顕著な差は認め
られなかった。
(5)家計を主に支える者の配偶者の有無との 関係(表9)
沖縄県を除く全都道府県で、「配偶者なし」
のほうが「配偶者あり」よりも最低水準未満世 帯の割合が高かった。特に東京都、神奈川県、
京都府、大阪府は、両群の差が大きかった。
(6)家計を主に支える者の就業上の地位との 関係(表10-表12)
いずれの調査年でも、東京都、神奈川県、大 阪府で、非正規の職員(平成 15 年と平成 20 年は「臨時雇」、平成25年は「労働者派遣事業 所の派遣社員」「パート・アルバイト・その他」) における最低水準未満世帯の割合が顕著に高 かった。平成25年調査で「臨時雇」は「労働 者派遣事業所の派遣社員」と「パート・アルバ イト・その他」に分類されているが、前者のカ テゴリーはいずれの都道府県でも最低水準未 満世帯の割合が高く、宮城県、群馬県、埼玉県、
千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、静岡県、
愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、福岡県、熊 本県、大分県、沖縄県の16の都府県で10%を
超えており、東京都では4人に1人という結果 となった。
(7)世帯人員との関係(表13-表15)
いずれの調査年でも、埼玉県、東京都、神奈 川県、愛知県、京都府、大阪府で、1人世帯に おける最低水準未満世帯の割合が高く、平成 25年調査では10%を超えた。東京都や大阪府 では、世帯人員が5人以上の世帯でも割合は高 くなっていた。また、沖縄県は世帯人員が 4 人以上で顕著に割合が高くなっており、平成 25年調査では、6人以上の世帯で 30%を超え る高い値を示した。
(8)住宅の所有形態との関係(表16-表18)
いずれの調査年も、持ち家では、東京都、京 都府、大阪府、沖縄県を除く、すべての道県で 最低水準未満世帯率は1%未満であった。これ に対して、借家では、いずれの調査年も最低水 準未満世帯の割合は高かった。平成25年調査 では、民営の賃貸住宅において、東京都、神奈 川県、大阪府、沖縄県で水準未満世帯が 20%
を超えた。都道府県・市町村営の賃貸住宅では、
岩手県、宮城県が20%を超え、平成15年・平 成20年調査よりも約10~15%ポイント増えた。
UR・公社の賃貸住宅は、首都圏や愛知県、大 阪府、福岡県以外の道府県では母数が少ないた め、調査年によって数値の変動が大きくなった。
(9)入居時期との関係(表19-表21)
入居時期が新しいほど、最低水準未満世帯率 は高い傾向がみられ、入居時期が5年以内の場 合に比較的高い値を示した。入居時期が30年 以上前の世帯は、ほとんどの都道府県で未満世 帯の割合が1%未満であった。
2.最低居住面積水準未満世帯の割合と誘導居 住面積水準未満世帯の割合(表22-表24)
平成25年調査において、最低居住面積水準、
誘導居住面積水準(都市居住型)(以下、誘導
- 5 - 都市水準)、誘導居住面積水準(一般型)(以下、
誘導一般水準)、および子どもの年齢による人 員調整なしで算出した最低居住面積水準(以下、
最低水準(調整なし))について、水準を満た さない世帯の割合を比較したところ、最低水準 未満世帯の割合は 1.4%-13.4%であったが、
誘導都市水準未満世帯の割合は、10.0%-
48.7% 、 誘 導 一 般 水 準 未 満 世 帯 の 割 合 は 19.6%-70.3%となり、大幅に増加した。誘導 一般水準未満世帯は、多くの都道府県で 30%
を超え、7都府県が50%を超えた。最低水準(調 整なし)未満世帯の割合は、人員調整済みの最 低水準未満世帯の割合よりも、多くの都道府県
で0.5%ポイント上昇し、沖縄県では2.4%ポ
イントの上昇を示した。
誘導都市水準は、本来は都市部の共同住宅に 用いられるものであるが、すべての住宅に当て はめたところ、持ち家では東京都とその隣接県、
大阪府とその隣接県、沖縄県で水準未満世帯の
割合が 15-20%程度存在した。民営の賃貸住
宅では全都道府県で 50%以上が水準を満たし ておらず、都道府県・市町村営の賃貸住宅でも ほぼ同じ傾向を示した。誘導一般水準は郊外や 都市部以外の共同住宅への適用が想定されて いるが、これをすべての住宅に当てはめたとこ ろ、持ち家では、水準未満世帯の割合が最も少 な い 富 山 県 で 10.0% 、 最 も 多 い 東 京 都 で 51.3%であり、民営借家では、いずれの都道府
県も75%以上が水準を満たしていなかった。
3.都道府県別の家賃負担率30%以上世帯
(1)平成15年から平成25年の推移(表25)
各都道府県の家賃負担率 30%以上(以下、
30%以上負担)世帯の割合は、平成25年調査
では、石川県が 43.1%で最も高く、次いで京 都府が40.3%、大阪府が38.4%と続き、ほと んどの都道府県で2割を超えた。
平成15年、平成20年、平成25年の推移を みると、平成15年から平成20年は6割の都府 県でその数値は下がっていたが、平成20年か ら平成25年の5年間では2県を除いて数値が 上がっていた。とくに石川県は 17.8%ポイン トの大幅な増加を示した。
(2)世帯の年間収入との関係(表26-表28)
いずれの都道府県も、年間収入が「200万円 未満」の世帯では 30%以上負担世帯の割合が 顕著に高く、平成25年調査では多くの都道府
県で 60%を超え、埼玉県、千葉県、東京都、
神奈川県、石川県、京都府では80%を超えた。
「200~300 万円未満」でも、東京都とその隣 接県、大阪府とその隣接県では高い割合を示し た。年収が300万円を超えると、東京都とその 隣接県、大阪府とその隣接県を除くほとんどの 自治体では数%の低い値であった。
(3)家計を主に支える者の年齢との関係(表 29-表31)
平成25年調査の石川県を除いて、いずれの 調査年とも全都道府県で、「25歳未満」におい
て 30%以上負担世帯の割合が最も高く、その
ほとんどが5割を超えた。また平成25年調査 の石川県を除いて、60 歳以上の高齢層でも 30%以上負担世帯の割合は高かった。
(4)家計を主に支える者の性別との関係(表 32)
平成25年調査の石川県を除いて、いずれの 調査年とも全都道府県で、男性よりも女性にお
いて 30%以上負担世帯の割合が高かった。平
成25年調査では、男性と女性の差は最も低い
東京都で 10.0%ポイントであり、他の都道府
県では概ね 15~20%ポイントの差があった。
沖縄県では、いずれの調査年でも、家計を主に 支える者が女性である世帯の半数以上が家賃
負担率30%以上に該当した。
(5)家計を主に支える者の配偶者の有無との
- 6 - 関係(表33)
平成25年調査の石川県を除いて、いずれの 調査年とも全都道府県で、「配偶者あり」より も「配偶者なし」において 30%以上負担世帯 の割合が高かった。平成25年調査では、配偶 者の有無による差は最も低い東京都で 11.8%
ポイントであり、他の都道府県では 20%ポイ ントを超えるところが多かった。沖縄県では、
いずれの調査年でも、配偶者なしの世帯の半数 以上が家賃負担率30%以上に該当した。
(6)家計を主に支える者の就業上の地位との 関係(表34-表36)
平成25年調査の石川県を除いて、いずれの 調査年でも、学生で 30%以上負担世帯の割合 が高く、全国的に8割~9割を超える数字を示 した。非正規の職員(平成15年と平成20年は
「臨時雇」、平成25年は「労働者派遣事業所の 派遣社員」「パート・アルバイト・その他」)に
おける 30%以上負担世帯の割合は正規の職員
と比べると、いずれの都道府県でも高い割合を 示し、3~4 倍以上の開きがある自治体も少な くなかった。
(7)世帯人員との関係(表37-表39)
平成25年調査の石川県を除いて、いずれの 調査年でも、1人世帯における30%以上負担世 帯の割合が最も高く、平成25年調査ではほと んどの都道府県で30%を超えた。
(8)住宅の所有形態との関係(表40-表42)
平成25年調査の石川県を除いて、いずれの 調査年も、民営の賃貸住宅が他のカテゴリーよ
りも 30%以上負担世帯の割合が高かった。平
成25年調査で、民営の賃貸住宅と都道府県・
市町村営の賃貸住宅とを比べると、多くの自治
体で 20%ポイント以上の差がみられた。U
R・公社の賃貸住宅や給与住宅は、首都圏や愛 知県、大阪府、福岡県以外は母数が少ないため ここでは比較検討はしない。
(9)入居時期との関係(表43-表45)
入居時期が新しいほど、30%以上負担世帯の 割合は高い傾向がみられ、入居時期が5年以内 の場合に比較的高い値を示した。しかし、その 差は顕著ではなく、特に平成25年調査では入 居時期が新しくても古くても 30%以上負担世 帯の割合はほとんど変わらないところが多か った。
D.考察
1.最低居住面積水準と世帯属性
最低居住面積水準未満の世帯率は都道府県 によって大きく異なり、借家率が高い東京都、
大阪府、沖縄県は水準未満世帯率が高く、逆に 持ち家率が高い秋田県、山形県、新潟県、富山 県では、水準未満世帯率は低い。この状況は、
過去10年間でほとんど変化がない。
世帯属性との関係をみると、世帯の年間収入 が低いほど水準未満世帯率は高く、この傾向が 顕著なのは人口が多く経済活動が活発な都府 県である。
世帯主の年齢との関係では、借家層の多い東 京都と大阪府で、世帯主が65歳以上の高齢の 場合に水準未満世帯の割合が高い。他の道府県 は持ち家率が高く、特に世帯主が高齢であるほ ど持ち家率は高いことから、水準未満世帯が低 くなっていると考えられる。
全国的に30歳代で水準未満世帯の割合が高 いが、この要因として、最低居住面積水準の基 準値の違いが影響していると考えられる。とく に 1 人世帯や世帯主に配偶者がいない世帯で 水準未満世帯の割合が高いのは、30 歳以上の 単身世帯において水準未満世帯が多くなって いることが影響していると思われる。たとえば、
18 ㎡の1DK(居室部分は約 10㎡)の住宅は、
29 歳未満の単身世帯の最低居住面積水準(専 用台所がつき居室の畳数が4.5畳以上)を満た
- 7 - しているが、30 歳以上の単身世帯の最低居住 面積水準(床面積25㎡以上)は満たさない。
結婚や転勤・転職などの機会でもなければ、30 歳までに広い住宅に転居することは考えにく い。未婚化・晩婚化や出産の高齢化が進んでい る中、若年層のほとんどは最初に入居した住宅 に30歳代半ばごろまで継続居住すると考えら れることから、単身世帯の最低居住面積水準の 基準値を20歳代と30歳以上で大きく変更する のは現実的ではない。
世帯主の性別は、最低居住面積水準とほとん ど関係がないように見えるが。世帯主が女性と いうケースは、母子世帯のほかに、夫と死別し た高齢単身女性世帯が多いことから、この両者 の相違について検討する必要があるだろう。高 齢単身女性世帯と母子世帯の状況が相殺され 見かけ上水準未満世帯の比率が低くなってい る可能性がある。夫と死別した単身高齢女性の 場合は、夫が残した持ち家に継続居住すること で水準を満たす可能性が高いが、母子世帯の場 合は世帯人員が多く借家層が多いうえ、非正規 雇用で年間収入も低いため、水準未満世帯の比 率は高いと考えられる。
世帯主の就業上の地位との関係では、群馬県 や静岡県、愛知県などで水準未満が顕著に高い が、これらの県は工場などで働く非正規雇用者 が多いことが影響していると思われる。
入居時期との関係では、5年以内に入居して いる世帯で水準未満世帯の割合が高いが、入居 時から最低居住面積水準に満たない住宅を選 択していることは問題である。居住年数が長く なっても水準未満世帯の割合は増加せず、長く なるほど減少していることから、居住している うちに世帯人員が増えて水準に満たなくなる というケースは少なく、逆に30年以上居住継 続している場合は、子どもの結婚や配偶者との 死別などで世帯人員が減少し水準が満たされ
るケースが増えている可能性が高い。いずれに しても、入居時に世帯人員に見合った適切な住 宅を選択することが重要である。
2.最低居住面積水準と誘導居住面積水準 最低居住面積水準未満世帯の割合は、東京都 とその隣接県や大阪府とその隣接県など、人口 が多く経済活動が集積しており、かつ借家世帯 が多い都府県を除けば、3%前後である。しか し、誘導居住面積水準では、都市居住型で 1 割から5割、一般型で2割から7割と、高い比 率で水準未満世帯が存在する。特に民営借家で はどの都道府県でも半数以上の世帯が水準未 満世帯であり、借家での誘導居住水準の充足の 実現はかなり困難であると言わざるを得ない。
3.家賃負担率と世帯属性
最低居住面積水準の達成度が都道府県によ って大きく異なり、一部の都府県に水準未満世 帯率が偏在していたのに対し、家賃負担率
30%以上世帯はほとんどの都道府県で 2 割以
上存在しており地域差はほとんどなく全国的 な問題であるといえる。
30%以上負担世帯の比率は平成15年から20 年にかけて下がり、平成20年から平成25年は 上がっているが、平均家賃は平成15年から平 成25年まで連続的に増加しているので、世帯 の年間収入の増減が影響していると考えられ る。平成25年調査の石川県が他の都道府県や 調査年と異なる動向を示したが、北陸新幹線開 業の 2 年前であったことが地価や家賃相場な どに影響を与えた可能性があるものの、詳細は 不明である。
世帯の年間収入との関係では、「200 万円未 満」の世帯で30%以上負担世帯の割合が 6割 を超える都道府県が多く、一部の都道府県では 8割を超えており問題である。年収100万円と
- 8 - 仮定すると 30%以上負担世帯では、家賃支払 い後に生活費として使用できる収入は70万円 以下であり、月額では6万円以下であり、これ は生活保護の生活扶助基準額(単身者で1級地 の場合約8万円、3級地の場合約6万5千円)
よりも低い。年間収入が 300 万円を超えると 30%以上負担世帯の割合は大きく減少してい ることから、年収300万円未満の世帯について、
対応を検討する必要がある。
年収は世帯主の従業上の地位とも関連が深 いと考えられる。非正規の職員は正規の職員に
比べて3~4倍も30%以上負担世帯の割合が高
いことがその証左である。また、学生の場合は ほぼ全員が 30%以上負担世帯であり、学生に 対する何らかの補助の検討が求められる。
世帯主の年齢については、25 歳未満の若年 層の約半数が 30%以上負担世帯であり、高齢 層よりも比率が高いことは注視すべき点であ る。この中には、先述の学生の1人暮らしが含 まれていると思われる。
また、世帯主が女性や配偶者がいない世帯、
および 1 人世帯で30%以上負担世帯の割合が
高いが、未婚の女性や、配偶者と死別した高齢 女性などが該当すると考えられる。
住宅の所有関係との関係では、いずれも家賃 負担が生じるのは借家層であることに変わり はないが、民営の賃貸住宅と公営の賃貸住宅で は家賃額が大きく異なるため、おのずと家賃負 担率の大きさに差が生じている。
入居時期と 30%以上負担世帯の割合との関 係については、一般に、居住年数とともに家賃 が大きく値上がりすることはほとんど考えら れず、年間収入が上がれば家賃負担率は徐々に 下がるはずであるが、長く居住している層でも 一定の割合で 30%以上負担世帯が存在してい ることから、これらの世帯では年間収入の伸び
がほとんどなかったか、定年などで収入が減少 したことなどにより、負担が持続又は増加して いる可能性もある。
E.結論
住宅の貧困状況について、最低居住面積水準 未満世帯率と家賃負担率 30%以上世帯率の 2 つの指標を用いて都道府県別に検証を行った。
この結果、最低居住面積水準については、人口 が多く借家率が高い東京都とその隣接県や大 阪府とその隣接県など、および沖縄県で未満世 帯率が高く、地域的な特徴がみられた。一方、
家賃負担率 30%以上世帯の割合については、
東京都や大阪府、沖縄県で数値が高いものの、
全国的にどの自治体も借家世帯の 2 割前後が 該当していることが明らかになった。
また、最低居住面積水準未満世帯の割合は過 去10年で大きな変動は見られないが、家賃負
担率30%以上世帯の割合は平成20年調査時か
ら平成25年調査時にかけて増加しており、雇 用状況や年収の変動の影響を受けていると思 われる。世帯の年間収入が200万円未満の世帯、
世帯主が25歳未満の世帯、世帯主が女性の世 帯、世帯主に配偶者がいない世帯、世帯主が非 正規雇用や学生の世帯、世帯人員が1人の世帯 では、3~5割が家賃負担率30%以上の世帯に 該当している。
以上から、住宅の貧困状況については、地域 的な特徴を踏まえ、人口が多く借家率が高い自 治体では居住面積水準の確保について、各都道 府県ごとに対策を検討することが望ましい。家 賃負担については、全国的に同様の傾向がみら れることから、全国的な取り組みが必要である。
F.研究発表 なし
表1 最低居住面積水準未満世帯の割合(平成15-25年)
平成15年 平成20年 平成25年 15→20年の 増減率
20→25年の 増減率
北海道 3.0% 2.9% 3.1% -0.1% 0.2%
青森県 2.6% 2.0% 2.2% -0.6% 0.3%
岩手県 2.3% 2.1% 3.1% -0.2% 1.0%
宮城県 4.3% 4.3% 5.5% 0.0% 1.2%
秋田県 1.7% 1.5% 1.4% -0.2% -0.1%
山形県 1.7% 2.0% 2.0% 0.4% 0.0%
福島県 2.9% 2.6% 3.6% -0.3% 1.0%
茨城県 3.4% 1.4% 2.9% -2.0% 1.5%
栃木県 3.3% 3.4% 2.9% 0.1% -0.5%
群馬県 3.3% 3.3% 3.0% 0.0% -0.2%
埼玉県 5.4% 5.2% 5.5% -0.3% 0.3%
千葉県 5.0% 4.1% 4.5% -0.9% 0.4%
東京都 13.1% 12.8% 13.4% -0.3% 0.6%
神奈川県 8.3% 7.4% 7.9% -0.9% 0.5%
新潟県 1.8% 2.2% 2.0% 0.4% -0.2%
富山県 1.4% 1.4% 1.5% 0.0% 0.1%
石川県 2.5% 2.0% 2.1% -0.5% 0.1%
福井県 1.7% 1.7% 2.3% 0.0% 0.5%
山梨県 3.2% 3.1% 3.3% -0.1% 0.1%
長野県 2.6% 2.3% 2.1% -0.3% -0.2%
岐阜県 3.2% 2.5% 2.3% -0.7% -0.2%
静岡県 4.1% 4.3% 4.0% 0.2% -0.4%
愛知県 5.6% 5.5% 5.5% -0.1% 0.0%
三重県 2.9% 3.3% 3.0% 0.4% -0.3%
滋賀県 3.2% 3.2% 2.6% 0.0% -0.6%
京都府 6.1% 5.7% 6.1% -0.4% 0.4%
大阪府 10.3% 9.3% 8.9% -1.0% -0.4%
兵庫県 5.2% 3.6% 3.5% -1.6% -0.1%
奈良県 3.6% 3.0% 3.1% -0.6% 0.1%
和歌山県 4.5% 4.0% 3.6% -0.4% -0.4%
鳥取県 2.8% 2.0% 2.8% -0.8% 0.8%
島根県 2.3% 2.4% 2.5% 0.1% 0.1%
岡山県 3.0% 2.8% 3.2% -0.3% 0.4%
広島県 4.8% 4.5% 4.6% -0.3% 0.2%
山口県 3.3% 3.1% 3.0% -0.2% -0.1%
徳島県 3.0% 2.5% 2.9% -0.5% 0.4%
香川県 2.7% 2.5% 3.1% -0.2% 0.6%
愛媛県 3.4% 2.9% 3.7% -0.5% 0.8%
高知県 3.9% 3.2% 3.0% -0.8% -0.2%
福岡県 5.1% 1.2% 5.4% -3.9% 4.2%
佐賀県 2.8% 2.5% 2.8% -0.3% 0.3%
長崎県 4.9% 4.1% 3.6% -0.8% -0.5%
熊本県 3.9% 3.4% 4.2% -0.4% 0.7%
大分県 3.8% 3.2% 3.3% -0.6% 0.1%
宮崎県 3.2% 3.3% 3.4% 0.1% 0.1%
鹿児島県 3.7% 3.1% 3.5% -0.6% 0.4%
沖縄県 9.8% 9.8% 10.4% 0.0% 0.6%
表2 世帯の年収と最低居住面積水準未満世帯の割合(平成15年)
注:「-」は度数が2以下のセル
200万円未 満
200~300 万円
300~400 万円
400~500 万円
500~700 万円
700~
1000万円 1000~
1500万円 1500~
2000万円 2000万円 以上
合計
北海道 4.7% 3.5% 3.3% 2.8% 1.9% 1.0% 0.6% 0.5% _ 3.0%
青森県 3.6% 3.2% 3.0% 2.0% 1.7% 1.0% 0.7% 1.5% 0.0% 2.6%
岩手県 3.3% 2.6% 2.8% 2.0% 1.6% 1.0% 0.8% 0.0% 0.0% 2.3%
宮城県 6.4% 6.0% 5.2% 4.3% 3.0% 1.5% 1.0% _ _ 4.3%
秋田県 2.6% 1.9% 1.7% 1.6% 1.5% 1.0% 0.4% 0.0% 0.0% 1.7%
山形県 2.7% 2.0% 2.0% 1.5% 1.5% 0.7% 0.3% _ _ 1.7%
福島県 3.8% 4.1% 3.6% 3.0% 1.9% 1.3% 0.7% _ _ 2.9%
茨城県 4.8% 4.7% 4.6% 3.6% 2.6% 1.4% 0.7% 0.4% _ 3.3%
栃木県 4.6% 4.8% 4.9% 3.8% 2.3% 1.1% 0.7% 0.5% _ 3.3%
群馬県 4.8% 4.2% 4.1% 3.8% 2.4% 1.0% 0.7% _ 0.0% 3.2%
埼玉県 8.8% 7.4% 7.2% 6.6% 4.4% 2.3% 1.3% 0.7% 1.9% 5.4%
千葉県 7.6% 7.0% 6.6% 5.9% 4.3% 2.4% 1.0% 1.0% 0.5% 4.9%
東京都 18.2% 16.6% 16.2% 15.2% 11.7% 7.3% 4.4% 3.5% 2.7% 12.9%
神奈川県 13.6% 11.9% 10.6% 10.0% 7.4% 3.9% 2.0% 1.3% 0.6% 8.2%
新潟県 3.2% 2.4% 2.1% 2.1% 1.1% 0.7% 0.4% 0.6% _ 1.8%
富山県 2.4% 2.6% 2.2% 1.4% 1.0% 0.5% 0.2% _ 0.0% 1.4%
石川県 4.2% 3.3% 3.5% 2.5% 1.6% 0.7% 0.2% _ 0.0% 2.4%
福井県 3.2% 3.0% 2.3% 1.6% 1.1% 0.6% _ 0.0% _ 1.7%
山梨県 3.8% 4.4% 4.2% 3.7% 2.8% 1.7% 0.6% 0.0% 0.0% 3.2%
長野県 3.7% 4.1% 3.3% 2.6% 1.8% 1.0% 0.5% _ 0.0% 2.5%
岐阜県 5.2% 5.2% 3.9% 3.5% 2.1% 1.0% 0.5% 0.0% 0.0% 3.1%
静岡県 7.1% 6.0% 5.5% 4.6% 3.1% 1.5% 1.0% 0.2% 0.5% 4.1%
愛知県 8.8% 8.0% 6.9% 6.4% 4.7% 2.5% 1.2% 0.9% 0.8% 5.5%
三重県 4.9% 4.2% 3.0% 3.2% 1.9% 1.0% 0.6% _ _ 2.8%
滋賀県 4.5% 6.0% 4.1% 3.2% 2.1% 1.1% 0.7% 0.7% _ 3.0%
京都府 9.4% 7.5% 6.4% 5.5% 4.3% 3.2% 1.5% 1.1% 0.8% 6.1%
大阪府 17.3% 12.7% 10.8% 9.3% 7.0% 3.8% 1.9% 1.0% 1.5% 10.3%
兵庫県 9.4% 6.5% 5.6% 5.1% 3.6% 2.1% 1.1% 0.9% 0.4% 5.1%
奈良県 6.5% 4.9% 4.7% 3.2% 2.6% 1.4% 0.7% 0.8% _ 3.5%
和歌山県 7.5% 5.5% 4.8% 3.6% 2.4% 0.7% 0.5% _ 0.0% 4.4%
鳥取県 3.9% 3.4% 3.1% 2.9% 2.6% 1.3% 0.5% _ 0.0% 2.7%
島根県 3.0% 3.7% 2.9% 2.1% 1.7% 1.2% 0.2% 0.0% 0.0% 2.3%
岡山県 3.9% 3.7% 3.3% 3.4% 2.6% 1.7% 0.5% 0.0% 0.0% 2.9%
広島県 6.7% 6.2% 5.7% 5.2% 3.6% 2.3% 1.7% 0.3% 1.4% 4.8%
山口県 4.1% 3.7% 3.9% 3.7% 3.0% 1.6% 0.7% 0.0% 0.0% 3.2%
徳島県 4.1% 3.9% 3.6% 2.4% 2.1% 0.9% 0.7% 0.0% _ 2.9%
香川県 4.1% 3.7% 3.0% 2.5% 2.0% 1.2% _ 0.0% _ 2.6%
愛媛県 4.8% 3.8% 3.9% 3.1% 2.0% 1.6% 1.1% _ 0.0% 3.4%
高知県 5.3% 5.1% 3.2% 2.9% 3.1% 1.7% 1.4% _ _ 3.9%
福岡県 6.7% 6.4% 5.5% 5.3% 3.9% 1.8% 1.1% 0.6% 1.7% 5.0%
佐賀県 4.4% 3.6% 3.0% 3.1% 1.6% 0.7% 0.7% 0.0% _ 2.8%
長崎県 5.9% 5.7% 5.5% 4.9% 3.4% 2.2% 0.9% _ 0.0% 4.7%
熊本県 4.5% 4.7% 5.1% 4.1% 2.9% 1.4% 0.8% _ _ 3.8%
大分県 5.4% 4.4% 3.7% 3.5% 2.9% 1.4% 0.8% 1.3% 0.0% 3.8%
宮崎県 3.9% 4.1% 3.4% 2.6% 2.3% 1.2% 0.8% _ _ 3.2%
鹿児島県 3.6% 4.2% 4.3% 4.1% 3.3% 2.3% 1.1% _ 0.0% 3.6%
沖縄県 11.2% 11.7% 9.8% 9.0% 5.8% 2.6% 2.7% 1.7% _ 9.6%