〈論 説〉
若 者 の貧 困化 と雇 用 ・社 会 保 障
高 橋 保
目 次 は じめ に
1若 者 の 貧 困化 (1)若 者 の概 念 (2)若 者 の生 活 状況 (3)若 者 の貧 困化 の背 景 (4)若 者 の貧 困化 の社 会 的弊 害 2若 者 の雇 用 の保 障
(1)若 者 の雇用 の状 況 (2)若 者 の雇用 対策 (3)日 本 の若 者 の雇 用 対 策 3若 者 の社 会 保 障 の 支援
(1)若 者 の社 会保 障 の 状 況 (2)若 者 の社 会保 障 の 支 援 お わ りに
は じめ に
現 代 社 会 で 、 誰 もが 心 を痛 め て い る こ と は、 これ か ら 日本 を 背 負 っ て い く若 者 が 、 貧 困 化 し、 生 きて い くこ とに苦 悩 して い る こ とで あ る。 こ の よ うな 生 活 状 況 の も とで 、 若 者 は 、 犯 罪 、 自殺 、 うつ 病 な どを 発 生 させ 、 家 庭 は も とよ り 社 会 生 活 も不 安 に 陥 っ て い る。
そ もそ も若 者 を貧 困 化 させ て い る根 本 的 要 因 は 、 な にか 。 そ れ は、 若 者 を め ぐる 「雇 用 」 と 「社 会 保 障 」 の 問 題 性 に あ る と考 え る。
この小 論 は、 そ の よ うな 問題 意 識 に立 って 、 若 者 の 生 活 状 況 、 貧 困化 の 背 景 と社 会 的 弊 害 、 雇 用 及 び社 会 保 障 の 現 状 と対 策 に つ い て 検 討 した もの で あ る。
1若 者 の 貧 困 化
(1)若 者 の 概 念
若 者 の 雇 用 と社 会 保 障 に つ い て 検 討 す る に 当 た って 、 まず 「若 者 」 の概 念 を 明 らか に して お きた い。 若 者 の 概 念 を 明 らか に して お く こ と は、 若 者 の 社 会 的 支 援 や 救 済 を行 な う場 合 、 そ の 対 象 年 齢 が 問 題 に な るか らで あ る。
厚 労 省 や 内閣 府 また 総 務 省 等 の 統 計 上 の デ ー ター に よ る と、 「15歳以 上34歳 未 満 」 を 若 者 と捉 え て い る。 た とえ ば 、 内 閣 府 の 「国 民 生 活 白 書 」 に よ る と、 ブ リー ター を 「15歳以 上34歳 の 若 者 の うち(た だ し、学 生 と主 婦 を 除 く)、パ ー ト・
り
ア ルバ イ ト(派 遣 等 を含 む)及 び働 く意 志 の あ る無 職 の人 」 と定 義 して い る。
国 連 やEUで は、 「15歳以 上25歳 未 満 」 を捉 え て い る。 日本 で は、 各 種 社 会 的支 援 を必 要 と して い る対 象 年 齢 を全 体 的 に捉 え て 「15歳以 上35未 満 」 を若 者 と捉
z)
え る の が よ い と す る 見 解 あ る が 、 妥 当 と 考 え る。
(2)若 者 の 生 活 状 況
上 記 の 年 齢 層 を 念 頭 に 、 若 者 の 生 活 状 況 に つ い て 、 検 討 し て み よ う 。 今 日 、 若 者 と い え ば 、 失 業 者 、 無 業 者 、 パ ラ サ イ ト、 ニ ー ト、 フ リ ー タ ー 、 パ ー ト、 ア ル バ イ ト、 ネ ッ ト ・カ フ ェ難 民 、 ホ ー ム レ ス な ど 、 そ の 身 分 や 地 位 に 応 じ て さ ま ざ ま な 呼 称 が 用 い られ て い る 。 こ れ ら の 若 者 に 共 通 し て い る こ と は 、 ワ ー キ ン グ ・プ ァ ー(workingpoor働 く貧 困 層)で あ る こ と で あ る 。 ワ ー キ ン グ ・プ ァ ー と は 、 「働 い て も 、 生 活 が 豊 か に な ら ず 、 最 低 生 活 を 脱 却 で き な い 階 層 」 の こ とで あ る 。 ワ ー キ ン グ ・プ ア ー は 、 若 者 の 個 人 的 怠 惰 で 働 か な い の で は な く、 働 き た くて も 、 働 く場 が な い 人 た ち の こ と で あ る 。 国 税 庁 「民 間 給 与 実 態 調 査 結 果 」 に よ る と、 ワ ー キ ン グ ・プ ア ー は 、 性 別 、 年 齢 を 問 わ ず 、 増 加 し て お り、 と く に 若 者 に 増 加 が 著 し い と し て い る 。 ま た 、 全 給 与 者 の5人
に 一 人 は 、 年 収 、200万 未 満 で 、 女 性 の 給 与 所 得 者 は 、4割 も 占 め て い る と し て
9)
い る 。
1990年 代 半 ば 以 降 、 若 者 の な か に フ リ ー タ ー が 急 速 に 増 加 し て い る 。 フ リ ー タ ー と は 、 働 く意 志 は あ っ て も 、 正 社 員 に な れ な い 無 職 の 人 を い う。 当 初 、 ブ リ ー タ ー は 、 自 由 を 楽 し み な が ら生 活 を して い く人 の こ と を 意 味 し て い た が 、
そ の 後 、 若 者 の 失 業 率 の 増 加 、 新 卒 者 の 就 職 難 な ど を 背 景 に 、 働 く意 志 が あ っ て も 、 正 社 員 と し て 職 を 得 て い な い 人 の 意 味 合 い に 変 わ っ て き た 。 こ の よ う な フ リー タ ー に 共 通 して い る こ とは 、(1)年 齢 が 、15歳 代 か ら34歳 代 で あ る こ と、
(2)完 全 失 業 者 で あ る こ と 、(3)正 社 員 へ の 雇 用 を 希 望 し て い る こ と 、(4)雇 用 さ れ て も 、 非 正 規 社 員 と し て 取 り扱 わ れ て い る こ と、 な ど が 指 摘 さ れ る 。
内 閣 府 の 「国 民 生 活 白 書 」 に よ る と 、 フ リ ー タ ー は 、1990年 に183万 人 で あ っ
4)
た が 、2001年 時 点 で 、417万 人 で 達 した と し て い る 。 さ ら に 、UFG総 合 研 究 所 調 査 レ ポ ー トに よ る と、2010年 に は476万 人 と な り 、 こ の 数 字 は 、 団 塊 世 代 サ ラ
う
リー マ ン の 約500万 人 に 匹 敵 す る も の で あ る と指 摘 さ れ て い る 。 な お 、 同 調 査 レ ポ ー トに よ る と 、 今 後 フ リ ー タ ー の 人 口 は 、2020年 に は444万 人 に 落 ち 着 くが 、 若 年 人 口 の30.6%に 上 昇 す る 見 込 み で あ る と し て い る 。
で は 、 フ リ ー タ ー の 生 活 状 況 は 、 ど う か 。 こ れ に つ い て は 、UFG総 合 研 究 所 の 調 査 レ ポ ー トが 、 正 社 員 と フ リ ー タ ー を 比 較 し な が ら 、 「フ リ ー タ ー 人 口 の 長 期 予 測 と そ の 経 済 的 影 響 の 試 算 」 を 算 出 し て い る の で 、 こ れ を 参 考 に 、 以 下 の よ う に ま と め て お く。
正社 員
フ リ ー タ ー
平均 年収 387万 円
106万 円
生涯 賃金
2億1500万 円 5,200万 円
住 民税
64,600円 11,800円
所得税
134,700円 12,400円
消費 税
135,000円 49,000円
消 費額
282,9万 円 103,9万 円
年金 受取 額(月 額)
146,000円 66,000円
資 料 。UFG総 合 研 究 所 調 査 レポ ー ト23/116な お 、 上 記 調 査 レ ポ ー トは 、 次 の よ う な コ メ ン ト を 加 え て い る 。
1年 収 。 平 均 年 収106万 円 は 、 正 社 員 の 半 分 以 下 。 これ は 、 フ リ ー タ ー の ほ と ん ど が 、 ア ル バ イ トや パ ー ト な ど の 単 純 作 業 を して い る か らで あ る 。 こ の よ う な 、 フ リ ー タ ー の 低 賃 金 は 、 当 然 生 涯 賃 金 の 格 差 を 広 げ る こ と に な る 。
2税 金 。 住 民 税 や 所 得 税 額 は 、 所 得 額 に 応 じ て 徴 収 さ れ る 。 し た が っ て 、
フ リー タ ー の低 賃 金 は 、 納 税 額 の格 差 を広 げ る こ とに な る。
3年 金 受 領 額 。 年 金 に は 、 国 民 年 金 の 老 齢 基 礎 年 金 、 厚 生 年 金 の 老 齢 厚 生 年 金 が あ る。 正 社 員 の場 合 は、 両 者 の 年 金 の他 、 企 業 に よ っ て は 、企 業 年 金 が 上 乗 せ され て 支 給 され る。 老 齢 厚 生 年 金 は 、 フ リー ター の場 合 は、 非 正 規 社 員 と して 働 くの で 、 厚 生 年 金 に加 入 しな い のが ほ とん どで あ る。 そ の た め 、 フ リー タ ー は 、 老 齢 厚 生 年 金 の 支 給 が な い。 フ リー タ ー が 、 老 齢 基 礎 年 金 を受 給 す るた め に は 、 国 民 年 金 に加 入 し、25年 以 上 保 険 料 を納 付 して 、 受 給 資 格 期 間 を満 た さ な け れ ばな らな い 。 しか し、 フ リー ター は、
抵 所 得 者 で あ るた め、 保 険 料 の 滞 納 や 納 付 不 可 能 者 が 多 い 。 結 果 と して 、 老 齢 基 礎 年 金 の 受 給 も期 待 で き な い 。 フ リー ター は、 無 年 金 者 、 低 年 金 者
と して 、 老 後 生 活 が 危 惧 され る。
以 上 は 、 フ リー タ ー を 中 心 に、 そ の 生 活 状 況 を み て き た の で あ る が 、 そ の他 の 若 者 につ い て もい え る こ とで あ る 。正 に、 若 者 は、 ワ ー キ ン グ ・プ アー 、 す
な わ ち 「働 く貧 困 層 」 な の で あ る。
さ ら に、 注 目 す べ き こ とは 、 若 者 の貧 困 化 が 、 長 期 化 し、 社 会 的経 済 的 に 固 定 化 さ れ て き て い る こ とで あ る。 これ に よ り、若 者 は、 固 定 的 な貧 困 階 層 を形 成 して 、 生 き る こ とに、 不 安 と狼 狽 、 また 、 うっ 病 な ど心 の 病 に よ り、 心 身 共
に悪 影 響 を被 っ て い る の で あ る。
(3)若 者 の 貧 困 化 の 背 景
これ まで 、 若 者 の 生 活 状 況 を紹 介 しな が ら、 若 者 が い か に 貧 困 化 して い るか につ い て み て き た 。 で は 、 若 者 が 、 なぜ 貧 困 化 して き た の か につ い て 、 具 体 的 に検 討 して み よ う。
1経 済 の 変 動 と経 営政 策 の 転 換
1990年 初 頭 か ら始 ま るバ ブル 経 済 の崩 壊 は 、 そ れ まで の 日本 の高 度 経 済 成 長 の 急 速 な 発 展 を 覆 し、 経 済 の 長 期 低 迷 化 、 不 況 化 を招 来 させ た 。 これ に よ り、
大 量 失 業 者 も発 生 させ 、 若 者 を は じめ とす る労 働 者 に深 刻 な 貧 困 化 を もた ら し た 。
日本 の 企 業 経 営 者 は 、 こ の よ う な 経 済 状 況 の 悪 化 の 下 で 、 「リ ス ト ラ 」
(restructuring企 業 組 織 の再 編 成)と い う名 の 経 営 政 策 の転 換 を余 儀 な く させ られ た 。 こ の経 営 政 策 の 転 換 は 、企 業 の 縮 小(downsizing)、 合 併 、 企 業 分 割 、 営 業 譲 渡 な どを 断 行 して い っ た。 この よ うな 経 営 政 策 の 転 換 は 、企 業 組 織 の 再 編 成 を とお して 人 件 費 の抑 制 、 人 員 削減 を も断 行 して い く こ とに な っ た 。 その た め 、 「リス トラ」 とい う解 雇 が 数 多 く行 な わ れ た 。 解 雇 さ れ た 労 働 者 は 、 企 業 の 人 員 削 減 政 策 の 下 で 、 再 就 職 が 困 難 な 状 況 に あ っ た。 リス トラ は 、 企 業 に とっ て 「生 き延 び 作 戦 」 で あ った が、 結 果 と して 多 数 の労 働 者 の貧 困化 を現 出 させ る こ とに な っ た 。
この よ う な経 済 の 変 動 と経 営 政 策 の転 換 は、 若 者 た ち を貧 困化 させ る最 も重 要 な背 景 で あ っ た 。
2雇 用 政 策 の 変 容
企 業 は 、 経 済 状 況 の 長 期 悪 化 の も とで 、 経 営 政 策 の 転 換 に 止 ま らず 、雇 用 政 策 の 変 容 も断 行 して行 っ た 。 な か で も、1995年5月 の 日本 経 団 連(日 本 経 済 団 体 連 合 会)に よ る 「新 時 代 の 『日本 的経 営』 挑 戦 す べ き方 向 とそ の具 体 策 」 は、 「日本 的 雇 用 の 全 面 的 見 直 し」 を提 言 した こ とは 、 そ の後 の 日本 的 雇 用 政 策 を変 容 させ る重 要 な 柱 とな っ た 。 す な わ ち 、 日本 経 団 連 は、 この 提 言 で 、 正 社 員 を 中 心 と して 長 期 雇 用 慣 行 や 年 功 賃 金 制 を支 柱 と して き た 日本 的 雇 用 政 策 に 対 して 、 経 営 者 が 行 な うべ き21世 紀 の雇 用 の 戦 略 的 方 向 と して 、 ① 長 期 蓄 積 能 力 活 用 型 、 ② 高 度 専 門 能 力 活 用 型 、 ③ 雇 用 柔 軟 型 の3つ に分 化 し た雇 用 形 態 を 提 示 した 。 と ころ が 、 高 度 専 門 能 力 活 用 型 と雇 用 柔軟 型 は、 業務 の必 要 に応 じ て 非 正 規 社 員 を雇 用 して い くこ とを提 示 した も の で あ っ た。 さ ら に、 日本 経 団 連 は、 これ を さ らに 具体 化 した も の と して 、 「雇 用 の労 働 化 の促 進 」 を 提 言 して い る。 そ の 結 果 、長 期 雇 用 慣 行 、 年 功 賃 金 制 を 中 心 と して い た 固 定 的 な雇 用 関 係 が 弾 力 化 し、 代 わ っ て 、 「非 正 規 社 員 」 といわ れ るパ ー ト、 派遣 、 契 約 労 働 者 な どの 有 期 短 期 雇 用 者 が 多 数 現 出 して き た 。 こ の よ うな 有 期 短 期 雇 用 制 度 の 下 で は、 契約 期 間 満 了 後 、 雇 用 関 係 が 終 了 し、 企 業 か ら放 逐 さ れ る のが 基 本 で あ る。 企 業 か ら放 逐 され た 労 働 者 は、 再 就 職 もで き ず 、 企 業 外 で 浮 遊 化 し、 貧 困 化 して い っ た 。
「雇 用 の 流 動 化 の促 進 」 は、 人 員 削減 ・人 件 費 の抑 制 を推 進 し、 経 営 の 効 率 化
を 図 っ て い く こ と に あ っ た 。 企 業 は 、 人 員 の 削減 ・人 件 費 の 抑 制 の た め に、 新 規 学 卒 者 の採 用 を抑 制 して い っ た。 他 方 、企 業 は、 新 規 採 用 を す るに 当 た っ て 、 新 規 学 卒 者 を優 先 採 用 す る た め 多 くの就 職 留 年 や 就 職 浪 人 を 発 生 させ て い る。
読 売 新 聞 社 調 査 に よ る と、就 職 留 年 とは 、 在 学 中 就 職 が 決 ま らず 、 留 年 して翌 年 の[新 卒]と して 就 職 活 動 に臨 む学 生 の こ とで あ る と して い る。 この よ うな 就 職 留 年 者 は、2010年7月6日 現 在 で 、 全 国 で79、000人 と推 計 され て い る。 ま た 、 国 の 調 査 に よ る と、 就 職 が 決 ま らな い ま まに 大 学 を卒 業 した 者 は 、31,000
6)
人 とさ れ て い る。 合 計ll万 人 が 就 職 浪 人 とい う こ と にな る。 こ う した 状 況 の下 で 、 「就 職 氷 河 期 」 とい う言 葉 が 飛 び 交 って い るが 、 そ の 背後 に は、 若 者 の 貧 困 化 が 顕 著 に な っ て きて い る の で あ る 。
人 員 削 減 、 人 件 費 の 抑 制 の 直 接 的推 進 と して、 解 雇 、 早 期 退 職 制 度 、 退 職 勧 奨 、 強 制 退 職 な ど も行 わ れ て い る。
経 営 の効 率 化 につ い て は 、 い わ ゆ る 「ア ウ トソー シ ング(outsourcing)外 部 業 務 委 託)」 が 積 極 的 に推 進 され て い る。 日本 経 団連 は 、 労働 者 の 募 集 ・採 用 に 当 た っ て は 、[民 間 有 料 職 業 紹介 事 業 の 積 極 的 推 進]を 提 言 して い る。 これ に よ り、 人 材 派 遣 か ら即 戦 力 ・即 能 力 を 有 す る人 材 を 雇 用 す る こ とが 可 能 で あ る。
ま た 、 この 制 度 を 導 入 す る こ とに よ り、 な に よ りも企 業 内 教 育 訓 練 費 用 が 節 減 で き る う え、 技 能 ・技 術 ・専 門 的 知 識 の 即 利 用 が 可 能 とな る。 経 営 の 効 率 に メ リ ッ トが あ る。 しか し、 ア ウ トソ ー シ ン グ とい え ど も、 そ の 対 象 労 働 者 の ほ と ん どは 、 非 正 規 社 員 、 有 期 短 期 雇 用 者 で あ る。 そ の 限 りに お い て 、 雇 用 契 約 満 了 後 の再 就 職 の 困 難 、 そ の延 長 線 上 に貧 困 化 が襲 って く るの で あ る。
以 上 、人 員 削 減 ・人 件 費 の抑 制 さ らに経 営 の 効 率 化 の 視 点 か ら、 「雇 用 の 流 動 化 の促 進 」 につ い て 雇 用 政 策 の 変 容 を検 討 して きた 。 こ の よ う な 「雇 用 の 流 動 化 の促 進 」 こそ 、 雇 用 身 分 の 定 か で な い 非 正 規 社 員 の 発 生 源 で あ り、 そ れ は、
若 者 の貧 困 化 と密 接 に関 連 して い る の で あ る。
雇 用 政 策 の変 容 につ い て は 、 具 体 的 に 、 い わ ゆ る 日本 的 雇用 政 策 の 変 容 につ い て検 討 して み た い 。 日本 的 雇 用 政 策 と は、 長 期 雇 用 慣 行 、 年 功 賃 金 制 、 企 業 内教 育 訓 練 、 年 功 昇 進 ル ー トな どを い う。 こ の う ち、 と くに 若 者 の貧 困 化 と関 係 す る もの と して 、 長 期 雇 用 慣 行 、 年 功 賃 金 制 に つ い て取 り上 げ る。
長 期 雇 用 慣 行 につ いて は、 「雇 用 の 流 動 化 の 促進 」政 策 の結 果 、 有 期 短 期 雇 用 、
非 正 規 社 員 の 大 量 発 生 と人 員 削 減 、 人件 費 の 抑 制 、 経 営 の効 率化 に 由来 す る就 職 難 、 そ の延 長 線 上 にお け る貧 困 化 につ い て言 及 して きた 。 も はや 、 学 卒 就 職 一 定 年 ・退職 一 退 職 金 ・年 金 とい う長 期 雇 用 慣 行 に み られ る ラ イ フ ・サ イ クル は 、 内 部 的 に崩 壊 して きて い る。 将 来 的 に は 、 少 子 高 齢 化 社 会 の進 行 と国 家 福 祉 財 政 の 逼 迫 の 拡 大 を考 え る と、一 層 の 貧 困化 が 危 惧 さ れ る。
年 功 賃 金 制 に つ い て は、 「能 力成 果 主 義 の 導 入 」 が る。 能 力 成 果 主 義 の 競 争 敗 退 者 は 、企 業 か ら放 逐 され 、 あ る い は退 職 し、 浮 遊 化 、 貧 困化 へ と流 され る危 険 を負 っ て い る。
3若 者 の意 識 の 変 化
若 者 の 意 識 の変 化 が 、 貧 困化 を促 す要 因 に な っ て い る。 これ につ い て は 、 若 者 の 側 か ら、 次 の こ とが 指 摘 され う る。
自 由 ・気 ま ま な 生 き方 を好 む 若 者 が増 加 して きて い る。 この よ うな 若者 は、
長 期 的 に 固 定 化 さ れ た 労 働 生 活 を避 け、 自由 ・気 ま ま に生 き よ う と して い る。
その よ うな 若 者 の 多 くは親 世 帯 へ の 経 済 的依 存 心 が 強 い 。
自 己本 位 的 は職 業 観 を も っ て い る若 者 が 多 い 。 す な わ ち、 自分 の好 き な職 業 、 自分 の個 性 に合 っ た 職 業 、 自分 の 適 性 に 合 っ た職 業 に こだ わ っ て い る 。 この よ う な若 者 は 、 就 業 後 、 仕 事 が好 きで な くな っ た、 自分 の 適 性 に 合 わ な い こ とが 分 か っ た と 自分 で判 断 す る と、 直 ち に辞 職 す る。 辞 職 後 は、 他 社 で も辞 職 の 継 続 ・反 復 を して 、 当 座 の 生 活 維 持 の た め に非 正 規 社 員 とな っ て 、 貧 困化 して い
く。
学 卒 就 職 者 の3年 以 内 の早 期 離 職 者 が 急 増 して い る。 長 期 継 続 勤 続 意 識 が 希 薄 化 して きて い る 。 この よ うな 若 者 も、 離 職 後 、 非 正 規 社 員 、 フ リー ター に な る者 が 多 い 。
この よ うな若 者 の 意 識 の 変 化 は 、企 業 の側 に ネ ガ テ ィ ブ なイ メ ー ジ を もたせ 、 結 果 と して 、 若 者 に 対 す る 求 心 力 を弱 め て い る。
4若 者 対 策 の 立 ち遅 れ
日本 で は 、 若 者 の 貧 困 化 が深 刻 化 して い る背 景 に 、 い わ ゆ る 「若 者 対 策 の 立 ち 遅 れ 」 が あ る。 若 者 の 貧 困化 は、 若 者 の側 に そ の 原 因 を求 め る見 解 も少 なか
らず あ る 。 た と え ば 、 フ リ ー タ ー に つ い て も 、 若 者 の 怠 惰 や 個 人 的 事 情 に そ の
ハ
原 因 を 求 め る見 解 も あ る。 確 か に、 そ の よ うな見 解 に は、 そ れ な りの 理 が あ る こ とは 否 め な い 。
しか し、 若 者 の 貧 困 化 の 源 流 は、 す で に述 べ て きた よ うに 、 経 済 的 変 動 に よ る長 期 不 況 下 で 、企 業 経 営者 に よ る経 営 政 策 の転 換 と雇 用 政 策 の 変 容 に あ る。
若 者 の貧 困 化 は 、 この よ うな 経 済 的社 会 的 構 造 の 変 化 に深 く由 来 して い る ので あ る。 そ れ 故 、 若者 の 貧 困化 を防 止 して くた め に は、 国 ・地 方 公 共 団体 ・企 業 経 営 者 が 一 体 とな った 総 合 的 な 「若 者 対 策 」 を積 極 的 に推 進 して い くこ とが 必 要 不 可 欠 で あ る。 宮 本 み ち子 放 送 大 学 教 授 は 、 「い ま必 要 な こ とは、 欧 州 諸 国 の 経 験 に 学 び 、 若 者 政 策 を 国 の 最 重 要 課 題 と して位 置 づ け、 教 育 ・生 涯 学 習 ・就 労 ・社 会保 障 ・家族 ・健 康 医 療 な どを 包 括 した 自立 支 援 方 策 を推 進 す る こ とで
R)
あ る。」 と提 言 して お られ るが 、大 い に賛 意 を 表 した い 。
日本 で は、 この よ う な総 合 的 な若 者 対 策 の 立 ち 遅 れ が あ り、 それ こ そが 若 者 の 貧 困化 を深 刻 化 させ て い る と考 え る。
(4)若 者 の 貧 困 化 の 社 会 的 弊 害
若 者 の貧 困化 は、 さ ま ざ ま な社 会 的弊 害 を もた ら して い る。 若 者 が 、 ニ ー ト、
フ リー ター 、 パ ラサ イ ト、 ネ ッ ト ・カ フ ェ難 民、 ホ ー ム レス な どの貧 困 階 層 を 形 成 して い る こ と は、 若 者 が 「社 会 的 弱 者 」 と して の 地 位 を 余 儀 な くされ て い る こ とで、 そ れ が起 因 して 時 代 に逆 行 した社 会 的 弊 害 を も た ら して い る。 以 下 、 これ に つ い て検 討 して み る 。
第1に 、 若 者 の 貧 困 化 は 、 国 の 経 済 的 基 盤 を脆 弱 化 して い る。 若 者 が 、 失 業 者 ま た は 失 業 状 態 に い る こ と は、 若 者 が 、 企 業 外 的 存 在 に 追 い や られ て い る こ
とで 、企 業 が 活 性 化 す る こ とな く、 必 然 的 に生 産 力 の 低 下 を もた ら して い る。
企 業 の 生産 力 の低 下 は、 国 の 経 済 的基 盤 を脆 弱化 し、 強 い て は国 際 競 争 を低 下 させ る こ とに な る。
第2に 、 若 者 の 貧 困 化 は 、 国 の 社 会 保 障 体 制 を 脆 弱 化 させ て い る。 若 者 が 、 企 業 外 的 存 在 に 追 い や られ て い る こ とは 、 企 業 内 で 稼 働 して い な い こ とで 、 こ れ に よ り国 に税 収 入 の 減 少 を もた ら して い る。 税 収 入 の減 少 は、 国 の社 会 保 障 財 源 の 減 少 を意 味 し、 必 然 的 に国 の社 会 保 障 体 制 を脆 弱 化 させ て い る。 そ の結
果 、 国 民 の 生 活 ・健 康 ・医療 、 教 育 な どあ ら ゆ る分 野 で 深 刻 な 問 題 を 惹起 させ て い る 。
第3に 、 若 者 の貧 困 化 は 、 若 者 自身 に 止 ま る こ とな く、 家 庭 生 活 の貧 困 化 を もた ら して い る。 若 者 の 貧 困化 の 最 終 的 な 逃 避 先 は 、 家 庭 で あ る。 厚 労省 に よ る と、15歳 か ら34歳 の 卒 業 者 で 、 配 偶 者 を もた な い 雇 用 者 の うち 、5割 以 上 の
9)
者 が 独 立せ ず 世 帯 内 に 止 ま っ て い る と して い る。
近 年 の 家 庭 生 活 は 、 父 親 の 失 業 、 ロ ー ン、 教 育 費 な ど、 一 家 総 労 働 して も経 済 的 余 裕 を もた な と こ ろが 増 加 して い る。 これ に加 えて 、 若 者 の 親 世 帯 へ の 依 存 生 活 は 、 家 庭 生 活 の 貧 困 を さ らに一 層 貧 困 化 させ て い る。
第4に 、 若 者 の貧 困 化 は、 人 口減 社 会 を さ らに 助 長 させ て い る。 若 者 の 生 活 状 態 は、 ニ ー ト、 フ リー ター 、 パ ラサ イ ト、 ア ル バ イ ト、 ネ ッ ト ・カ フ ェ難 民 、 ホ ー ム レス な どに加 え 、 失 業 者 、 無 業 者 、低 所 得 者 と して の 非 正 規 社 員 の 生 活 で あ る 。 この よ うな 貧 困 階 層 に あ る若 者 の 生 活 状 態 か ら、 晩 婚 化 、 非 婚 化 、 シ ン グ ル ライ フ な ど増 加 して きて い る。 そ の 結 果 、 少 子 化 が さ ら に進 行 し、 人 口 減 社 会 を 助 長 させ て い る。
第5に 、 若 者 の貧 困 化 は 、老 後 生 活 の 不 安 を もた らす こ とに な る。 近 年 、 若 者 の 厚 生 年 金 保 険 の 未 加 入 者 が 急 増 して い る。 あ るい は、 基 礎 年 金 で あ る国 民 年 金 の保 険 料 の滞 納 者 も急 増 して き て い る。 そ の 背 景 に は、 若者 が 、 非 正 規 社 員 と して 、 厚 生 年 金 保 険 に加 入 して い な い こ と、 低 所 得 者 で あ る た め 、 国 民 年 金 の 保 険 料 で さ え 支 払 え な い 生 活 状 態 に あ る こ とで あ る。 若 者 の 老 後 生 活 は、
危 機 状 態 に あ る とい え る。
若 者 の な か に は 、 老 後 生 活 の 拠 り ど こ ろ と して 、 生 活 保 護 法 か らの扶 助 給 付 を期 待 して い る者 も多 い。 しか し、 少 子 高 齢 化 の進 行 と人 口 減社 会 の 到 来 か ら み て 、 危 惧 され る 。
第6に 、 若 者 の メ ン タル ヘ ル ス(mentalhealth一 精 神衛 生)が 社 会 問 題 に な っ て きて い る。 い ま、 若 者 は、 ど う に も な らな い 生 活 状 態 か ら、 不 安 と
焦 燥 か ら、 うつ 病 そ の 他 諸 々 の 「心 の病 」 を発 症 さ せ て い る。 そ の た め 、 若 者 の メ ン タル ヘ ル ス が 重 大 な社 会 問 題 に な って い る。
第7に 、 若 者 の貧 困 化 が 、 原 因 とな っ て 、 犯 罪 や 自殺 が 増 加 して い る こ と も、
社 会 的 弊 害 と して 指 摘 して お く。
以 上 、 若 者 の 貧 困 化 が 原 因 とな っ て発 生 させ て い る社 会 的 弊 害 に つ い て 検 討 して きた 。 若 者 は 、 これ か らの 家 庭 ・社 会 ・国 を 背 負 っ て い く人 材 で あ り、 手 厚 く育 成 し、 活 用 して い か な けれ ば な ら な い。 しか し、 す で に述 べ て きた 若 者 の 生 活 実 態 か ら、 若 者 が 「社 会 的 弱 者 」 と して 固 定 化 さ れ て い る。 国 ・地 方 公 共 団体 、企 業 経 営 者 の 総 合 的 な 「若 者 対 策 」 が必 要 とさ れ て い る の で あ る。
2若 者 の 雇 用 の 保 障
(1)若 者 の 雇 用 の 状 況
若 者 の雇 用 の状 況 が 極 め て悪 化 して い る。1990年 初 頭 か ら のバ ブル 経 済 の崩 壊 後 、 日本 経 済 は 、 日本 経 団 連 の 主 導 の 下 で 、 不 況 の 脱 出 を 目指 して 抜 本 的 な 経 営 政 策 の 転 換 を 断 行 して きた 。 この経 営 政 策 の 転 換 は、 同 時 に雇 用 政 策 の変 容 を もた ら した 。 企 業 経 営 者 は、 こぞ っ て 企 業 の 維 持 ・再 建 の た め に 、 人 件 費 の 抑 制 の た め の賃 金 の 切 り下 げ、 人 員抑 制 の た め の 新 規 採 用 の 抑 制 、 コス ト高 の 中高 年 労 働 者 の 解 雇 、 長 期 雇 用 慣 行 か ら有 期 短 期 雇 用 制 の 導 入 、 年 功 賃 金 制 か ら能 力成 果 主 義 の 導 入 な ど枚 挙 に 逞 が な い。
なか で も、新 規 採 用 の 抑 制 は、 新 卒 者 の 若 者 に対 して 、 重 大 な影 響 を 与 え た 。 新 規 採 用 の抑 制 は、1993年 か ら2004年 の10年 間 にわ た って 断 行 され 、 い わ ゆ る
「就 職 氷 河 期 」 とい われ る就 職 難 を招 い た 。 この間の状況 は、次 の とお りで ある。
「厚 生 労 働 白 書 」 に よ る とim、 就 職 率 ・就 職 内 定 率(就 職 希 望 者 の う ち 就 職(内 定)
者 の 占 め る 割 合)と 求 人 倍 率 を 見 る と、大 卒 の 求 人 倍 率 は1990年 の2.77か ら2000 年 の0.99に 、 就 職 率 は1997年 の94.5%か ら2000年 の91.1%ま で 落 ち 込 ん で い
る 。 高 卒 の 場 合 は 、 求 人 倍 率 は 、1990年 の2.57か ら2003年 の1.21に 、 就 職 内 定 率 は 、1990年 の99.2か ら2002年 の89.7に 落 ち 込 ん で い る 。
さ ら に 、 最 近 で は 、2008年 秋 ご ろ か ら 、 新 規 学 卒 者 の 採 用 内 定 率 の 低 下 に 加 え 、 採 用 内 定 の 取 消 し も 急 増 し て き て い る 。 ま さ に 、 「第2就 職 氷 河 期 」 で あ り、
2010年 か ら[超 就 職 氷 河 期]と い う 言 葉 が 飛 び 交 わ っ て い る 。
こ う して 若 者 は 、 新 卒 の 段 階 か ら就 業 機 会 を 失 い 、 失 業 者 な い し失 業 状 態 に 追 い や ら れ て い る の で あ る 。 な お 、 若 者 の 失 業 者 の 発 生 は 、 企 業 倒 産 、 解 雇 の 他 、 パ ー ト、 派 遣 、 ア ル バ イ ト な ど 非 正 規 社 員 の 雇 用 期 間 の 満 了 か ら も 派 生 し
て い る 。 さ ら に 、 若 者 の 失 業 者 は、 若 者 の 意 志 に よ る場 合 も増 加 して い る。 若 者 の 失 業 者 の失 業 の 理 由 につ いて は、 「希 望 す る種 類 ・内容 の仕 事 が な い」 とす る者 が 多 い 。
次 に 、 若 者 の完 全 失 業 率 に つ いて 、見 て み よ う。
ID
総 務 省 の 「労 働 力 調 査 」 に よ る と、2009年10月 現 在 で 、 日 本 の 労 働 力 人 口 は 、 6,615万 人(男3,845万 人 、 女2,770万 人 で 、 この う ち 、就 業 者 は 、6,271万 人(男 3,636万 人 、 女2,635万 人)、 完 全 失 業 者 は 、344万 人(男208万 人 、 女136万 人)、
完 全 失 業 率 は 、5.1%と な っ て い る 。 そ こ で 、 こ の 完 全 失 業 率 に つ い て 、 年 齢 別 に 見 る と 、 次 と お りで あ る 。
■ 完 全 失 業 率 【2009年10月 年 齢 別 】
総数
15〜24歳 25〜34歳 35〜44歳 45〜54歳 55〜64歳
65歳 以 上失業率
5.2% 9.3% 6.8% 4.5
4.0°4,4.9
2.9°4,対前年同月比
1.4 2.6 1.7 0.9 1.1 1.6 0.8
注)失 業率 は季 節 調整 前 の 数値 資 料 出所:総 務 省 「労 働 力 調査 」
これ に よ る と、15歳 か ら34歳 まで の 完 全 失 業 率 は、 他 の年 齢 別 の 完 全 失 業 率 と比 較 して 、 き わ め て 高 い こ とが 分 か る。 若 者 の 失 業 者 が 、 圧 倒 的 に 多 い とい う こ とで あ る。
な お 、 同 労 働 力調 査 に よ る と、 若 年 層 の 失 業 期 間 別 完 全 失 業 者 の割 合 は 、15 歳 か ら24歳 で み る と、3ケ 月未 満 の 割 合 が 高 い が、25歳 か ら34歳 で み る と、 「1
年 以 上 」 の 割 合 が 高 い 。 失 業 期 間 が 長 期 化 して い る傾 向 が あ る。 失 業 期 間 が 長 期 化 して い る背 景 に は 、 若 者 に 正 社 員 に な る こ とを 希 望 して い る もの が 多 く、
これ に こだ わ っ て い る こ とに よ る。 しか し、 失 業 期 間 の 長 期 化 は、 再 就 職 を困 難 に して い る。
次 に 、 若 者 の 「非 正 規 社 員化 」 に つ い て も、 検 討 して み よ う。
ゆ
内閣 府 「若 年 雇 用 の 現 状 に つ いて 」 に よ る と、 非正 規 化 の傾 向 は、 男 女 とも 15歳 か ら34歳 の 若 年 層 と65歳 以 上 の者 に顕 著 で あ る と して い る。 平 成20年 の 15歳 か ら24歳 の 非 正 規 の割 合 は、 男性 で4割 、 女 性5割 で あ っ た と して い る。
しか し、 若 者 が 、 非 正 規 社 員 と して働 くこ とに つ い て は、 弊 害 もあ る。 す な わ ち、 若 者 が 非 正 規 社 員 と して 働 く こ と は、 期 間雇 用 労 働 者 と して 働 くこ とを
意 味 す る。 これ に つ い て は 、 次 の こ とを 指 摘 して お き た い 。
第1に 、 雇 用 期 間 が 満 了 す る と、 雇 用 関 係 が終 了 し、 失 業 状 態 とな り、 貧 困 化 して い く。
第2に 、 期 間 雇 用 者 で あ るが た め に 、 若 者 は キ ャ リア形 成 をす る機 会 を もた な い。 す な わ ち 、 若 者 が 、 この よ うな就 業 形 態 で 働 くこ とは 、 技 術 ・技 能 ・専 門 的知 識 を身 に つ け る こ とが で き な い 。
第3に 、 再 就 職 の 困 難 【生で あ る。 非正 規 社 員 と して の若 者 の ほ とん ど は、 正 規 社 員 と して の就 業 を希 望 して い る が 、 キ ャ リア形 成 を して い な い若 者 は、 再 就 職 が 困 難 で あ る。 そ の た め 、 失 業 期 間 も長 期 化 す る こ とに も な る。
(2)若 者 の 雇 用 対 策
1諸 外 国 の 若 者 の雇 用 対 策
1970年 以 降 、 欧 米 を は じめ と して 世 界 各 国 の 雇 用 情 勢 が 悪 化 して きた 。 なか で も若 者 失 業 者 の 急 激 な 上 昇 、 失 業 期 間 の 長 期 化 が 深 刻 な社 会 問 題 とな っ て き た 。 この よ うな 雇 用 情 勢 の 下 で 、 国 連 は 、1885年 に 「国 際 青 年 年 」 を 設 定 し、
1995年 に は 「青 年 に関 す る世 界 行 動 計 画 」 を 採 択 して い る。 そ の結 果 、 欧 米 で も、 若 者 の 雇 用 対 策 を積 極 的 に実 施 す る よ うに な って き た 。 そ こで 、 こ こで は 欧 米 の 若 者 を め ぐ る主 要 な雇 用 対 策 を概 観 した後 、 日本 の雇 用 対 策 に つ い て検
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討 し て み る こ と に す る 。
① ア メ リ カ
ア メ リ カ で は 、 「コ ミ ュ ニ テ ィ ・カ レ ッ ジ 」、 「宿 泊 型 若 年 者 集 団 教 育 訓 練 」fob corps)な ど の 就 業 支 援 制 度 と と も に 、 「イ ン タ ー ン シ ッ プ 」 が 広 く普 及 し て い
る 。
「コ ミ ュ ニ テ イ カ レ ッ ジ 」 は 、2年 制 の 短 期 大 学 で 、 高 校 か らの 入 学 の他 、 い っ た ん 社 会 に 出 て 就 職 し た 人 た ち が 再 度 職 業 能 力 を 高 め る た め に 学 習 す る と
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こ ろ で あ る 。
「イ ン タ ー ン シ ッ プ 」 は、 学 生 が 自 己 の 専 攻 や 将 来 の キ ャ リ ア と関 連 して 実 際 の 就 業 体 験 を 行 な う 制 度 で あ る 。 こ の 制 度 は 、 学 生 に と っ て 、 メ リ ッ トが あ る 。 学 生 は 、 イ ン タ ー ン シ ッ プ を と お し て 就 業 意 識 を 高 め る こ と が で き 、 ま た 実 際 の 就 業 体 験 を と お し て 職 業 適 【生 を 自 ら判 断 す る こ とが で き る 。 企 業 の 側 か ら は 、
イ ン タ ー ン シ ップ を と お して 、 学 生 の 人 物 、 適 格 性 な ど を観 察 で き、 将 来 の 人 材 発 掘 に も繋 が る 。
② イ ギ リ ス
イ ギ リス で は、1980年 代 か らの 急 激 な労 働 市 場 の 改 革 で 、 それ な りの成 果 は あ っ た もの の 、 他 方 に お い て所 得 格 差 が社 会 問 題 とな り、 な か で も最 低 賃 金 制 度 の 廃 止 に よ り、 若 者 を 中心 に 低 賃 金 労 働 者 が 急 激 に増 加 して きた 。 行 き過 ぎ た 低 賃 金 は 、 若 者 の 勤 労 意 欲 を 失 わ せ 、 大 量 の失 業 者 を発 生 させ る こ と に な っ た 。
この よ うな状 況 の下 で 、1997年 労 働 党 の ブ レア政 権 が誕 生 し、 この政 権 下 で 、 若 者 の 長期 失業 者 の勤 労 意 欲 や 技 能 を 高 め るた め に、 「福 祉 か ら就 労 へ(welfare towork)」 の プ ロ グ ラ ムが 策 定 さ れ 、 これ に も とつ くニ ュー デ ィ ー ル 政 策 が 全 国 的 に 実 施 さ れ た 。 そ の な か で 、 若 年 失 業 者 の た め の プ ロ グ ラ ム(newdeal foryoungpeopleagedl8‑24)を 策 定 し、実 施 さ れ た。 この プ ロ グ ラム は 、 若 年 失 業者 が 失 業 す る ま え に 、 雇 用 、訓 練 等 の支 援 をす る こ と を 目 的 と して い る。18歳 以 上 一24歳 まで が 対 象 で 、6カ 月 以 上 の 求 職 者 給 付 を 申請 して い る者 が 対 象 と され て い る。
この よ う な対 象 者 は 、 ま ず 、 最 長4ヶ 月 間 、 個 人 ア ドバ イ ザ ー や 集 中 的 な カ ウ ンセ リ ン グや ガ イ ダ ン ス を受 け、 就 職 を 目指 して い る。 この 期 間 で 、就 職 が で き なか っ た人 に は 、企 業 に対 して助 成 金 付 き就 職 と訓 練 の た め の費 用 助 成 金 、 最 長12カ 月間 の教 育 訓 練(求 職 者 給 付 付 き)、 ボ ラ ンテ ィ ア団 体 や 公 的 環 境 保 全 事 業 の 就 労(6カ 月 、 手 当 て 付 き)、 自営業 の 開 業(6カ 月 の助 成 金 付 き)な ど
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か ら選 択 で き る よ う に な っ て い る 。
③ オ ラ ン ダ
オ ラ ンダ は、1980年 代 に入 っ て か ら、 景 気 低 迷 、 物 価 上 昇 、 失 業 率 上 昇 、 社 会 保 障 費 の 支 出増 大 な ど、 い わ ゆ る 「オ ラ ン ダ病 」 とい わ れ た 苦 境 に 陥 っ て い た 。 政 府 は 、 この よ う な経 済 的 危 機 を 回 避 す る た め に、 政 ・労 ・使 三 者 に よ る
「ワ ッセ ナ ー合 意」 を成 立 させ 、 さ らに1996年 に労働法 を改正 し、 フル タイム労 働 者 とパ ー トタ イ ム 労 働 者 間 の 時 間 当 た り賃 金 格 差 、 社 会 保 険 制 度 へ の加 入 、
雇 用 期 間 、 昇 進 等 の 労 働 条 件 の格 差 を禁 止 した 。 ま た 、2000年 に は 、 労働 時 間 調 整 法 が施 行 さ れ 、 労 働 者 が 使 用 者 に 労 働 時 間 の 増 減 を要 請 した り、 フル タ イ マ ー か らパ ー トタイ マ ー に 、 パ ー トタイ マ ー か ら フル タ イ マ ー へ の移 行 も認 め られ 、 労 働 者 は 、 雇 用 形 態 や 労 働 時 間 な どを 自由 に選 べ る よ う に な っ た 。 そ の 結 果 、 若 年 者 を含 む 失 業 率 が 下 落 し、 マ イ ナ ス成 長 か ら安 定成 長 へ と転換 を成
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し遂 げ て い っ た 。
④ フ ラ ン ス
フ ラ ンス も、1980年 代 か ら失 業 率 が 上 昇 し、 と くに15歳 か ら24歳 の失 業 率 は、
1997年 に28%に 達 して いた 。この よ うな 雇用 状況 の下 で、 「若 年 者 雇 用 促 進 計 画 」 とい わ れ る雇 用 政 策 を策 定 した 。 これ は 、 地 方 自治 体 や 各種 公 共 団体 が 過 去 に 就 労 経 験 の な い18歳 以 上25歳 以 下 の 若 年 を1年 間 の期 限 付 き(最 大5年 まで 延 長 が 認 め られ る)で 雇 用 す る と、 政 府 が 社 会 保 障 分 を含 め て 賃 金 の8割 相 当額
を助 成 す る こ とを 内 容 と して い た 。
さ ら に、2002年 に は、 若 年 雇 用 促 進 策 と して 。 「企 業 で の若 年(jeunesen entreprise)]法 が成 立 した 。
「若 年 者 雇 用 促 進 計 画 」 は 、一定期間就業経験 をさせ るものであ った。 これ に 対 し、 「企 業 で の若 年 」 法 は 、 民 間企 業 で 、 期 間 の定 め の な い社 員 と して の 採 用
ア
を 目 的 に し た も の で,16歳 の 低 年 齢 が 対 象 と さ れ て い た 。
(3)日 本 の 若 者 の 雇 用 対 策
日本 の 若 者 の雇 用 対 策 が 、 国 レベ ル で 重 要 な政 策 課 題 と され る よ う にな っ た の は 、1999年 の 「第9次 雇 用 対 策 基 本 計 画 」 にお い て で あ った 。 この 基 本 計 画 は 、2010年 まで の基 本 計 画 にっ い て 策 定 して い た 。 内 容 は、 次 の3点 で あ る。
① 新 規 学 卒 者 に 対 す る雇 用 の 支 援 。 ② フ リー タ ー と若 年 失 業 者 対 策 の 強 化 、 ③ 在 学 中 か ら の職 業 意 識 の形 成 の 支 援 。 そ の 後 、 この 基 本 計 画 の 策 定 を 契uに 、 関 係 各 省 に よ り。 各 種 の若 者 関 連 対 策 が 検 討 さ れ る よ うに な った 。
2003年 に 、 厚 労 省 、 経 済 産 業 省 、 文 部 科 学 省 、 内 閣 府 か らな る[若 年 自立 ・ 戦 略 会 議]が 設 置 され 、 「若 年 自立 戦 略 プ ラ ン」 が 策 定 され た 。 内 容 は、 次 の4 点 で あ る。 ① 教 育段 階 か らの 職 場 定 着 に い た るキ ャ リア形 成 ・就 職 支 援 、 ② 若
年 労 働 市 場 の整 備 、③ 若 年 者 の能 力 向上 、 ④ 創 業 ・起 業 に よ る就 業 機 会 の創 出 。 2004年 に、 厚 労省 の な か に 、[若 年 雇 用 対 策 室]が 設 置 され て い る。 同 年 に は、
「関係 機 関 の 窓 口の 一 元 化 及 び 関連 情 報 の 集 約 化 に よ る包 括 的一 時相 談 窓 口」 が 設 置 され て い る。 これ は 、 前 年2003年 の[青 少 年 育 成 施 策 大 綱]が 策 定 され た
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こ と と関 連 し て い る 。 こ の 包 括 的 一 時 的 相 談 窓 口 の 設 置 に よ り、 「ジ ョ ブ ・カ フ ェ (jobcafe)」 、 「イ ン タ ー ン シ ッ プ 」、 「若 年 者 ト ラ イ ア ル 雇 用 」 な どが 推 進 さ れ る よ う に な っ て き た 。 ジ ョ ブ ・カ フ ェ は 、 都 道 府 県 が 主 体 と な っ て 、 ハ ロ ー ワ ー ク を 併 設 し て 職 業 紹 介 や 雇 用 関 連 サ ー ビ ス を 提 供 す る こ と を 目 的 と し て い る 。 イ ン タ ー ン シ ッ プ は 、 学 生 が 、 在 学 中 か ら 実 際 の 職 業 体 験 を 経 験 し、 職 業 観 の 醸 成 や キ ャ リ ア 教 育 を 図 っ て い く こ と を 目 的 と し て い る 。 ト ラ イ ア ル 雇 用 は 、 ハ ロ ー ワ ー ク の 職 業 相 談 窓 口 を とお し て 、 事 業 主 が 若 者 を 一 定 期 間 試 行 雇 用 し た 後 、 常 用 雇 用 に 移 行 して い く こ と を 目 的 と し て い る 。
2005年 に は 、 「フ リ ー タ ー20万 常 用 雇 用 化 プ ラ ン」が 実 施 さ れ た 。 こ れ は 、1990 年 代 半 ば か ら 就 職 難 と若 者 の 意 識 の 変 化 を 背 景 に 、 フ リ ー タ ー が 急 増 し て き た こ と に 対 す る 雇 用 対 策 事 業 で 、 フ リ ー タ ー の 常 用 雇 用 化 を 図 る こ と を 目 的 と し て い る 。 事 業 と し て 、 ハ ロ ー ワ ー ク に 設 け ら れ た フ リ ー タ ー 専 用 窓 口 で 、 セ ミ ナ ー の 開 催 、 合 同 選 考 会 、 専 任 職 員 に よ る1対1の 相 談 ・助 言 、 求 人 開 拓 、 職 業 紹 介 、 就 職 後 の 職 場 定 着 指 導 な ど を 行 な っ て い る 。
同 年 に 、 「若 者 自 立 塾 」 が 創 設 さ れ て い る 。 こ れ は 、 ニ ー トを 対 象 と し て 、 若 者 が 親 元 か ら 離 れ 、3カ 月 合 宿 に よ る集 団 生 活 を し 、 生 活 訓 練 、 労 働 体 験 を し な が ら職 業 人 、 社 会 人 と し て の 必 要 な 基 礎 能 力 を 身 に つ け る こ と を 目 的 と し て
1U) い る 。
以 上 、 日 本 に お け る 若 者 の 雇 用 対 策 の 現 状 に つ い て 、 概 観 し て き た 。 次 に 、 上 記 の 雇 用 対 策 の 現 状 を 踏 ま え て 、 い ま 、 若 者 に い か な る 雇 用 対 策 が 必 要 と さ れ て い る か に つ い て 、 検 討 し た い 。
1雇 用 の 基 本 原 則 か らの見 直 し
日本 で は 、現 在 の 雇用 悪 化 以 前 に、 「雇用 の 基 本 原 則 」 が法 的 に 、 あ るい は慣 行 と して確 立 して い た 。 そ の基 本 原 則 が あ っ たが た め に、 少 な くて も現 在 と比 較 して 、雇 用 の安 定 と生 活 の安 定 が 図 られ て い た 。 で は、 雇 用 の 原 則 とは な に
か 。
(D長 期 雇 用 慣 行 ・年 功 賃 金 制 ・企 業 内 人 材 育成 は、 日本 的 雇 用 政 策 とい わ れ る もの で あ る が 、 雇 用 の基 本 原 則 と して 長 く維 持 され て きた 。 しか し、 バ ブ ル 経 済 崩 壊 後 、 この よ うな基 本 原 則 は 、 有 期 短 期 雇 用 、 能 力成 果 主 義 、 ア ウ ト
ソ ー ウ シ ン グ等 の 導 入 に よ り雇 用 が 悪 化 して き た 。 そ の結 果 、 と くに 、 若 者 の 貧 困化 が 顕 在 化 して き た。
(2)雇 用 は、 「常 用 雇 用 」 が原 則 で あ った 。 臨 時 社 員、 ア ル バ イ トは、 例 外 的 で あ っ た 。 しか し、 現 在 で は、 非 正 規 社 員(パ ー ト、 派 遣 、 フ リー ター な ど) とい わ れ る低 所 得 者 が フ ル タイ マ ー化 して い る。 若 者 た ち は 、 こ の非 正 規 社 員 に多 く集 中 し、 結 果 と して 、 貧 困 化 して い る。
(3)雇 用 は、 直 接 雇 用 が原 則 で あ っ た 。 現 在 で は、 派 遣 労働 者 に見 られ る よ うに、 間 接 雇 用 に な っ て い る。 しか も、 この よ うな 派 遣 労 働 者 は、 増 加 の 一 途 を た どっ て い る。 派 遣 労 働 者 は、 期 間雇 用 労働 者 で あ る。 雇 用 期 間 の 満 了 後 は、
失 業 状 態 とな る 。
(4)基 本 的 に 、 同 一 労 働 同 一 待 遇 が原 則 で あ っ た 。 現 在 で は、 労 働 時 間 や 仕 事 の 内 容 が 同一 で あ っ て も、 非 正 規 社 員 とい うだ けで 、 賃 金 その 他 の 待 遇 に格 差 が あ る。
(5)団 結 活 動 の保 障 も、 雇 用 の原 則 で あ っ た(憲 法28条)。 現 在 で は、 正 規 社 員 と非 正 規 社 員 の 二 極 分 化 が な され 、 団 結 活 動 も停 滞 状 態 で あ る。
(6)労 働 、社 会保 険 につ い て も、基 本 的 に す べ て の 労 働 者 に適 用 され て い た 。 現 在 で は 、 非 正 規 社 員 は 、 事 実 上 、 労働 ・社 会 保 険 か ら排 除 され て い る。
す で に指 摘 して きた よ うに 、 上 記 の雇 用 の 基 本 原 則 が あ っ た が た め に、 雇 用 の 安 定 と生 活 の安 定 が 図 られ て き た 。現 在 の 雇 用 の 悪 化 に つ い て は 、 以 前 の雇 用 の基 本 原 則 に則 り、 法 的 、 経 済 的 、社 会 的 に再 度 見 直 し して み る こ とが 必 要 で あ る。
2若 者 の キ ャ リ ア形 成 の 推 進
雇 用 形 態 や 就 業 形 態 が 多様 化 し、 そ の 下 で 、 若 者 は就 職 難 、 非 正 規 社 員 、 低 所 得 者 と して貧 困化 して い る。 しか し、 若 者 に就 業 の 機 会 が 奪 わ れ て い る わ け で は な い 。 正 社 員 と して の就 業 機 会 は 、 い ま な お あ る。
と こ ろが 、 最 近 の 企 業 の雇 用 政 策 は、 人 件 費 の 削 減 、 経 営 の 効 率 化 か ら、 技 能 、 技 術 、 専 門 的 知 識 につ い て 、 キ ャ リ アの あ る即 能 力 ・即 戦 力 を もっ た 労 働 者 を求 め て い る。 この 傾 向 は 、 今 後 一 層 拡 大 して い く と思 わ れ る。 この よ う な 雇 用 状 況 の 下 で は 、若 者 の キ ャ リア形 成 が 必 要 不 可 欠 で あ る。 で は 、若 者 の キ ャ
リア形 成 を いか に して 行 な うか 。
教 育 に お け る キ ャ リ ア形 成 の 積 極 的推 進 が 必 要 で あ る。 若 者 は、 非 正 規 社 員 と して 、 有 期 短 期 雇 用 労 働 者 で あ る。 この よ うな雇 用 環 境 の 下 で は、 若 者 は、
キ ャ リア形 成 を して い く機 会 が な い。 そ こで 、 教 育 の 現 場 で 、 キ ャ リア形 成 を して い く必 要 が あ る。 た とえ ば 、 教 育 の 現 場 で 、 職 業 教 育 、 職 業 再 教 育 を よ り 積 極 的 に導 入 して い くこ とが 考 え られ る。 これ は 、 「生 涯 学 習振 興 法 」 に基 づ く 生 涯 学 習 の 一 環 と して 推 進 され て も よい 。
3若 者 の社 会 保 障の 支 援
(1)若 者 の 社 会 保 障 の 状 況
若 者 の雇 用 の悪 化 は、 若 者 を め ぐる社 会 保 障 に も重 大 な影 響 を及 ぼ して い る。
これ ま で 、 若 者 の 生 活 状 況 に つ いて 、パ ラサ イ ト、 ニ ー ト、 フ リ ー タ ー 、 ネ ッ ト ・カ フ ェ難 民 、 ホ ー ム レス と して極 め て貧 困化 して い る こ とを指 摘 して きた 。 また 、 貧 困 化 の 背 景 に は、 就 職 難 、 非 正 規 社 員 化 、 失 業 率 の 上 昇 、 低 所 得 者 と
して の 固 定 化 な どが あ る こ とに つ い て も指摘 して きた 。 この よ う な若 者 の 状 態 は、 社 会 的 弱 者 と して 、 社 会 的 に排 除(socialexclusion)さ れ て い る といわ ざ る を得 な い。 した が って 、 当 然 の こ とな が ら、 こ う した生 活 状 態 に あ る若 者 に対 して は 、 社 会 保 障 か らの社 会 的 支 援 が 必 要 とさ れ て い る。
そ こで 、 こ こで は 、 い ま若 者 が 痛 切 に 必 要 と して い る 「職 ・住 ・所 得 」 の 視 点 か ら、 若 者 の社 会 保 障 の状 況 を検 討 して み る こ と にす る。
「職 」、す なわち職 業 は、若者 の生活 の経済 的基盤 として必要 不可欠 であ る。
しか し、新 卒 者 を 除 く と、 若 者 が 就 業 の機 会 を得 るた め に は 、 技 能 、 技術 、 専 門 的 知 識 な ど の キ ャ リ アが 求 め られ るの が 最 近 の傾 向 で あ る。加 え て 、 最 近 の 企 業 は 、 人 件 費 の抑 制 も あ っ て 、 即 戦 力 ・即 能 力 を 求 め て い る。
と こ ろが 、 若 者 は 、 非 正 規 社 員 とい う名 の 有 期 短 期 雇 用 者 で あ る。 そ の た め
に、 若 者 は、 キ ャ リ ア形 成 の 機 会 を 失 っ て い る。 そ こで 、 国 は、 キ ャ リ ア形 成 の た め に職 業 訓 練 の 機 会 を提 供 し、 職 業 訓 練 の受 講 を条 件 に 、 住 居 、 生 活 費 を 支 給 して い る。 しか し、 若 者 か らは 、訓 練 す る職 業 分 野 が 限 られ て お り、 魅 力 の あ る もの で は な く、 加 え て 職 業 訓 練 の 終 了 後 再 就 職 が 保 障 され る わ けで もな
い。 これ に よ り、 若 者 は 、迷 走 した 生 き方 を余 儀 な くさ れ て い る。
「住 」、 す な わ ち住 居 も、 若 者 に とっ て 重 大 な 問題 に な っ て い る。 若 者 は、 就 職 難 に加 え 、非 正規 社 員 と して の有 期 短 期 雇 用 者 が 多 く、 雇 用 期 間 の 満 了 後 は、
失 業 状 態 とな る 。 しか も、低 所 得 者 で あ るた め に 、 金 銭 そ の 他 の 蓄 え を も た な い。 企 業 か ら放 逐 され た若 者 は、 会 社 寄 宿 舎 を追 わ れ 、 家 賃 不 払 い で アパ ー ト を追 わ れ 、 ネ ッ ト ・カ フ ェ難 民 、 ホ ー ム レス な ど に流 れ て行 く。 住 居 もな く、
所 得 もな い 若 者 の 対 して は 、 公 共 建 物 の 提 供 が必 要 で あ る。 その た め に は、 現 在 の公 共 建 物 に つ い て 、 整 理 、 見 直 しが 必 要 で あ る。
「所 得 」 につ い て は、 所 得 保 障 こ そ社 会 保 障 の重 要 課 題 で あ る。 これ につ い て は、 生 活保 護 法 が あ るが 、 若 者 は、 生 活 保 護 受 給 請 求 権 を 奪 わ れ て い る。 生 活 保 護 法 で は 、 困 窮 、 資 産 、 能 力 の活 用 が生 活保 護 受 給 要 件 とな っ て お り(1条 ・
4条)、 若 者 が 、 生 活 保 護 受 給 請 求 の 際 は 、、 能 力 っ ま り稼 働 能 力 が あ る点 を突 か れ る。確 か に稼 働 能 力 を 有 す るが 、 しか し、現 実 に能 力 が あ っ て も稼 動 す る 場 が な い の が 重 視 され て い な い 。
若 者 の社 会 保 障 につ いて は、 所 得 と関連 して 年 金 と雇 用 保 険が あ る。 若 者 が 、 働 い て い る に もか か わ らず 、 厚 生 年 金 も雇 用 保 険 も若 者 に 適 用 され て い な い実 情 が あ る。 若 者 が 、 非 正 規 社 員 とい う有 期 短 期 雇 用 労 働 者 で あ る こ と、被 保 険 者 と して の 保 険 料 が 労 使 折 半 で あ る こ とが そ の 背 景 に あ る。 年 金 、 雇 用 保 険 つ い て は 、 若 者 の老 後 の 生 活 の 安 定 、 失 業 中 の 所 得 保 障 か ら問 い 直 しが 必 要 で あ る。
次 に 、最 近 若 者 の 社 会 保 障 問題 と して 重 要 課 題 に な っ て き て い る もの に、[医 療]問 題 が あ る。 い ま若 者 の 問 で 、 うつ病 な ど 「心 の 病 」 が 急増 して い る。 「心 の 病 」 は、 男 女 間 わ ず 、20代 か ら30代 の 若者 が 大 半 を 占 め て い る。 と くに、 職 場 の な か で 多 く発 生 して い る。
で は 、 そ の背 景 は ど うか 。 次 の こ とが 考 え られ る。
第1に 、 企 業 の 能 力 成 果 主 義 の 導 入 と これ に対 す る競 争 の 激 化
第2に 、 職 場 の 人 間 関 係 の ギ ク シ ャ ク 第3に 、 仕 事 との 重 圧
第4に 、 若 者 本 人 の 精 神 の脆 弱 性
脇 田教 授 は、 「自立 で き るだ けの収 入 を得 よ う と複 数 の仕 事 を掛 け持 ち した り、
き び しい 労 働 環 境 の な か で 長 時 間 労 働 に 従 事 す るた め 健 康(と くに メ ン タル へ
zo)
ル ス)を 壊 す 者 が増 え て い る。」 と指 摘 して い る。
若 者 の 「心 の病 」 は 、 職 場 に 止 ま らず 、 教 育 の場 や 家 庭 の な か で も多 く発 生 して お り、 今 後 ま す ます 拡 大 す る傾 向 に あ る。
(2)若 者 の 社 会 保 障 の 支 援
若 者 の貧 困 化 は 、 経 済 的 に社 会 的 に 固 定 化 さ れ 、 若 者 を社 会 的 弱 者 と して 社 会 的 に排 除 して い る。 こ の よ う な若 者 に つ い て は 、 人 道 的立 場 か ら も救 済 して い か け れ ば な らな い 。 そ の た め に は、 な に よ り も若 者 の 立 場 に 立 っ た よ り具 体 的 な雇 用 対 策 の策 定 と実 施 が 急 務 で あ る。
しか し、 若 者 の貧 困 化 は 、 ひ とえ に雇 用 対 策 の み で は解 決 しな い。 この よ う な 若 者 に つ いて は 、 貧 困 化 と雇 用 に密 接 な 関 連 を 有 す る社 会 保 障 の支 援 も必 要 で あ る 。 す な わ ち 、 若 者 の貧 困 対 策 は 、 雇用 と社 会保 障 が 、 両 輪 とな っ て 推 進 しな け れ ば な らな い 。 そ こで 、 若 者 の社 会保 障 の 支 援 につ い て 、 具 体 的 に検 討 して み た い 。
1自 立 支 援
資 本 主 義 経 済 社 会 で は、 「生 活 自己 責 任 の 原 則 」 が 基 調 に な っ て い る。 とこ ろ が 、20代 ・30代 の若 者 が 、 親 世 代 に依 存 して 生 活 を して お り、 そ の こ とが 生 活 の 主 体 性 、 自立 性 を 阻 害 し、 パ ラサ イ ト、 ニ ー ト、 フ リー タ ー 、 ア ル バ イ ト、
非 正 規 社 員 化 の原 因 に な っ て い る。
この よ う な若 者 の 生 き方 を 変 えて い くた め に は 、 青 少 年 の こ ろか ら 「自立 意 識 」 を醸 成 して い か な けれ ば な ら な い。 と くに、 小 学 校 、 中学 校 の時 代 は 、 自 立 意 識 を醸 成 して い く重 要 な 時 期 で あ る。 そ の意 味 で 、 学 校 教 育 は も と よ り、
家 庭 教 育 を 重 視 しな けれ ば な ら な い。 す な わ ち、 生 活 の 自立 意 識 は、 まず 家 庭 教 育 の な か で しっ か り と醸 成 して い く こ と は必 要 で あ る。
国 、 地 方 公 共 団体 は 、 これ に つ い て、 積極 的、 具 体 的 に啓 発 し、 支 援 して い
く必 要 が あ る。
2高 等 教 育 の 無 償 化
家 庭 の 貧 困化 が 進 行 し、教 育 に重 大 な 影 響 を及 ぼ して い る。 若 者 の な か に、
高 等 教 育 に進 学 す る者 と進 学 で き な い者 との格 差 が 拡 大 して い る。 そ の こ とが 、 正 社 員 と非 正 規 社 員 の 格 差 とな っ て い る。 大 卒 に 正 社 員 が 多 く、 高 卒 止 ま りに 非 正 規 社 員 が 多 い 。
国際 人 権 規 約(A規 約)は 、[高 等 教 育 は、 す べ て の適 当 な 方 法 に よ り、 特 に 無 償 教 育 の 漸 進 的 な 導 入 に よ り、 能 力 に 応 じ、 す べ て の者 の 対 して均 等 に機 会 が 与 え られ る も の とす る こ と」 と定 め(第13条2項(C))、 高 等 教 育 の 漸 進 的
な導 入 を各 国 に 呼 び か け て い る。
日本 政 府 は、1979年 の 批 准 の 際、 この 条 項 を留 保 し、2001年 に 「社 会 権 規 約 委 員会 」 か ら留保 撤 回 勧 告 を うけ て い るが 、[財 政 難]を 理 由 に拒 絶 した ま ま に
zu
な っ て い る。
3非 正 規 社 員 の 社 会 保 険 加 入 の 強制
若 者 は、 非正 規 社 員 化 し、 厚 生 年 金 や雇 用 保 険 か ら、 事 実 上 排 除 され て い る。
憲 法 は、 す べ て の国 民 に生 存 権 を保 障 して い る(第25条)。 この憲 法 の生 存 権 保 障 を根 拠 と して 、 非 正 規 社 員 も正 社 員 と同 様 社 会 保 険 へ の加 入 を強 制 す べ きで あ る。 これ に よ り、 若 者 の 失 業 中や 老 後 の 生 活 が 安 定 して くる。 しか し、 それ で も例 外 的 に社 会 保 険 へ の加 入 を排 除 す る場 合 に は、 不 加 入 要 件 を厳 格 に すべ
きで あ ろ う。
非 正 規 社 員 で あ る こ と、保 険 料 の 労使 折 半 を理 由 とす る社 会 保 険 の加 入 の排 除 は、 憲 法25条 違 反 に な る。
4若 者 の住 居 確 保
低 所 得 者 の若 者 は、 ネ ッ ト ・カ フ ェ難 民 に見 られ る よ うに 、 住 居 に 苦 難 して い る。 これ につ い て は、 す で に指 摘 した よ うに 、 公 共 の建 物 を見 直 し、 若 者 の た め に住 居 を確 保 して い くこ とが 必 要 で あ る。
5メ ン タ ル ヘ ル ス の定 期 的 事 前 チ ェ ッ ク
若 者 の うつ 病 な ど 「心 の病 」 が 職 場 で 増 加 して い る。 これ につ い て は、 事 業 主 に、 快 適 な職 場 環 境 を整 備 す る よ う行 政 指 導 を 強 化 す る こ とが 必 要 で あ る。
さ らに 、 事 業 主 に 対 して 、 メ ン タ ル ヘ ル ス の定 期 的 事 前 チ ェ ッ ク の 法 的 措 置