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ドイツ国法学の転機

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(1)

ドイ ッ国法学 の転 機 1

説 〉

ドイ ツ国法学 の 転機

ドイ ッ国法 学者 大 会管 見

塩 津 徹

は じ め に

長 い伝 統 が あ る ドイ ツ国 法 学 は今 や 一 つ の 転 機 が 訪 れ て い る と考 え られ る。

そ して、 そ の例 証 を2000年 に ラ イ プ ツ ッ ヒで 開 催 され た ドイ ツ 国法 学 者 大 会 の

i)

報 告 と討 論 に 見 る こ とが で き る の で あ る 。 ドイ ツ 国 法 学 者 大 会 は 毎 年 、 憲 法 と 行 政 法 に 関 して 各 々 一 つ の テ ー マ を め ぐ っ て 報 告 と討 論 が 行 わ れ る の が 通 例 で

あ るが 本 大 会 は 異 例 の 形 態 で 開 催 さ れ た 。 な ぜ な ら本 大 会 で は 憲 法 に 関 し て 二 つ の テ ー マ が 選 択 さ れ 、 議 論 さ れ た か ら で あ る。

一 つ 目 の テ ー マ は 「ナ チ ス 期 の ド イ ツ 国 法 学 」(Diedeutsche

StaatsrechtslehreinderZeitdesNationalsozialismus)で あ り、 二 つ 目 の テ ー マ は 「ヨ ー一ロ ッ パ 憲 法 と 国 家 の 憲 法 」(Europaischesundnationales

2)

Verfassungsrecht)で あ っ た。 しか も、後 者 の テ ー マ の報 告 者 の数 は あ ま り例 の な い 四 人 とい う多 さで あ った 。 しか し、 本 大 会 の特 徴 は この よ うな 異 例 の形 態 だ け に あ るの で は な く、 その よ うな形 態 を もた ら した 二 つ の.̲̲̲マ の 内 容 そ

の もの に あ っ た の で あ る。

概 括 す れ ぼ 、 二 つ の テ ー マ 設 定 に お い て 前者 で は ドイ ツ国 法 学 が 過 去 の 権 威 主 義 国 家 体 制 を反 省 、 総 括 す る もの で あ り、 後 者 で は ヨー ロ ッパ 連 合 の 展 開 と

ドイ ツ 国 家 との 関 係 の将 来 を展 望 す る もの で あ る。 これ らに お い て 共 通 す る の は 、 国 家 と憲 法 との 関 係 で あ り、 か つ 国 法 学 の方 法 の 問 題 で も あ る。 そ して 、

3)

筆者 は本 大会 の報 告 と討 論 の中 に ドイ ツ国法 学 の転 機 を示 す ものが あ る と捉 え て い るので あ る。

(2)

(一)ド イ ツ 国 法 学 者 大 会 の 歴 史 と社 会 の 変 化

ドイ ツ国 法 学 者 大 会 は、1922年 に トリー ペ ル の イ ニ シ ア チ ブ に よっ て 設 立 さ れ た 。1926年 に は ワ ・イ マ ー ル 憲 法 第109条 の解 釈 を め ぐって 方 法 論 論 争 が か わ さ れ た の は あ ま りに も有 名 で あ る。 そ の 後 、 ナ チ ス政 権 時 代 に は 中 止 され 、 戦 後

4)

に再 開 され て お り、 我 が 国 の 公 法 学 会 の モ デ ル とな っ て い る。 ドイ ツ国 法 学 者 大 会 は常 に ドイ ッ国 法 学 に お け る論 争 の 軸 とな っ て き た。 大 会 の テ ー マ は理 論 的 、体 系 的 に選 択 さ れ る とい う よ りは、 それ ぞ れ の 時 期 に 関 心 が 持 た れ た 項 目 が 取 り上 げ られ る こ とか ら時 代 状 況 が 反 映 され て お り、 また 、 それ ゆ え に国 法 学 の 動 向 が よ り鮮 明 に浮 か び 上 が っ て くる の で あ る。

現 行 の ドイ ツ憲 法(以 下 、 ボ ン基 本 法)が ナ チ ス体 制 を厳 し く総 括 した 上 で 制 定 され 、 ボ ン基 本 法 の全 体 の 構 造(憲 法 規 範 性 の強 化)、 個 々 の 制 度(政 党 違 憲 制 等)も この こ とを物 語 っ て い る。 そ して 、 政 治 、 社 会 状 況 の 変 化 が ボ ン基 本 法 体 制 を 支 えて お り、 この 変 化 の一 つ が 個 人 主 義 の 確 立 で あ る。 か つ て の よ

う に国 家 や 指 導 者 へ の 依 存 で は な く、 人 間 の尊 厳 、 個 人 の 自己 決 定 、 責 任 が 重 視 され 、 こ の個 人 主 義 の確 立 は多 元 主 義 的 社 会 の展 開 と歩 み を 共 に して い る。

二 つ に は、 国 民 国 家 を超 え る様 々 な制 度 の創 設 と拡 大 で あ り、 特 に ヨ ー ロ ッ パ 連 合(EU)が もた らす 変 化 で あ る。第 二 次 大 戦 後 、 ヨー ロ ッパ 共 同体 が 設 立

され 、 ドイ ツ も加 入 した 。更 にEUの 設 立 は ヨー ロ ッパ の政 治 的 統 合 を拡 大 し、

ドイ ッ社 会 、 国 民 に 直 接 的 に影 響 を与 え る よ うに な っ た 。 そ して 、 この よ うな 社 会 の 変 化 は ま た、 ボ ン基 本 法 の展 開 の段 階 に相 応 して い るの で あ る。

ヴ ァ ー ル は ボ ン基 本 法 の 展 開 の歴 史 を二 つ の 段 階 に分 け、 第 一 の 段 階 は法 化 (Verrechtlichung)と 司法 化(Justitialisierung)で あ り、具 体 的 に は ボ ン基 本 法 の 枠 の 中 で 憲 法 の優 先 、 基 本 権 の保 障 、 連 邦 憲 法 裁 判 所 の 確 立 で あ っ て 、 これ らは個 人 主 義 を否 定 し全 体 主 義 を掲 げ た ナ チ ス 体 制 の 批 判 的 克 服 を 目指 し た もの で あ る と して い る。第 二 段 階 は ヨー ロ ッパ 化 で あ り、国 際 化 で あ る と し、

ドイ ツ に お け る公 法 は ドイ ツ法 だ けで す まな い状 況 で あ る とす る。

す な わ ち、 第 二 段 階 で は第 一 段 階 で の 法 化 、 司 法 化 も ヨ,̲̲,.ロッパ 化 の 影 響 を 被 ら ざ る を えな い し、 それ に伴 っ て 国 民 国 家 の 完 結 性 な る も の も変 化 せ ざ るを

5)

得 な い と指 摘 した の で あ る。 ヴ ァ ー ル の 二 つ の段 階 論 は、 ボ ン基 本 法 の展 開 の

(3)

ドイ ッ国法 学 の転 機 3

歴 史 を述 べ た もの で あ るが 、 本 国 法 学 者 大 会 は世 紀 の 変 わ り目 に これ らを 合 わ せ て今 日 的課 題 と して総 括 し よ う と した こ とが 注 目 され るの で あ る。

(二)ナ チ ス 期 の ドイ ツ 国 法 学

ナ チ ス 」 は タ ブ ー か?

「ナ チ ス 期 の ドイ ツ 国 法 学 」の よ うな テ ー マ が 国 法 学 者 大 会 で取 り上 げ られ る

6}

の は初 め て で あ る。 ナ チ ス 期 の 国 法 学 の研 究 は これ まで も な くは な いが 、 国 法 学 者 大 会 の公 の 舞 台 で 議 論 され る こ とはな か っ た 。 そ の理 由 の 一 つ と して考 え られ るの は人 脈 の 問題 で あ る。 戦 後 の 国 法 学 に多 大 な 影 響 を与 え た ス メ ン ト、

シ ュ ミ ッ トは と も に一 時期 、 ナ チ ス の 思 想 に 共 感 を持 つ か 、 も し くは政 権 に 協 力 的 で あ った(た だ し、両 者 は後 に ナ チ ス とは距 離 を お くよ うに な るが)。 この よ うな二 人 が 第 二 次 大 戦 後 に再 び活 躍 し、 多 くの 弟 子 が そ れ に続 く とな る と こ の テ ー マ は取 り上 げ に く くな る の は確 か で あ る。

なぜ な ら、 ナ チ ス 期 の 国 法 学 を論 ず る とな る と先 の 二 人 も含 め て 多 くの 国 法 学 者 の 歴 史 的 責 任 を問 わ な け れ ぼ な らな くな るか らで あ る。 この よ うな 人 脈 の

7)

問 題 が この テ ー マ に対 す る タ ブー の要 因 の 一 つ とな っ て きた こ とは否 め な い 。 シ ュ トライ ス は、 第 二 次 大 戦 後 の 国法 学 者 大 会 再 開 に あ た っ て ナ チ ス 期 の 問題 につ いて 触 れ な い との コ ンセ ンサ ス が あ り、 この 点 に つ い て は ナ チ ス に荷 担 し

$)

た 者 もそ の被 害 者 とも に共 通 して い た とい う。 しか し、 それ か ら半 世 紀 を越 え た1999年 の 国 法 学 者 大 会 で 翌 年 の 大 会 の テ ー マ と して よ うや く取 り上 げ られ る こ とが 決 定 され た の で あ る。

本 大 会 の報 告 者 の 一 人 で あ る ヴ ァル タ ー ・パ ウ リ ィ は報 告 の 冒頭 で こ の 問題 が タ ブー とされ て きた こ とを語 り、 最 後 に 改 め て ナ チ ス期 の 国 法 学 の 資 料 に ア

クセ ス す る こ とが容 易 で は な か っ た こ とを 吐 露 して い る。 それ は 当 時 の 国 法 学 者 の 見 解 を現 在 改 め て 議 論 の組 上 に あ げ る こ とは 当人 の面 目を っ ぶ しか ね な い か らで あ る と して お り、彼 の 発 言 は現 在 で も この 問 題 を取 り扱 う困 難 さ を物 語 って い る。そ れ ゆ え に本 大 会 で この テ ー マ を取 り上 げ た こ とにっ い て は 、ベ ッ

ケ ン フ ェル デ の よ うに 非 常 に 勇 気 あ る決 断 で あ る とす る賞 賛 の意 見 が 多 く寄 せ られ た 。

(4)

また 、 シ ュ トライ ス は 国 法 学 者 大 会 の 中 で この種 の 問題 に 付 随 しが ち な 個 人 の 責任 を問 うの で は な く、 過 去 の歴 史 化 や 構 造 の プ ロ セ ス の分 析 が 必 要 で あ る

と述 べ た。こ の よ うな視 点 な く して は個 人 の 過 去 の行 為 を 非 難 す る に と どま り、

今 後 に生 か す学 問 的 成 果 は の ぞ め な い か らで あ る。 本 大 会 の報 告 者 は先 の パ ウ リ ィ とホ ル ス ト・ドライ エ ル で あ っ た 。 両 者 の報 告 内 容 は 重 な る部 分 も多 い が 、 相 違 点 を あ げれ ば ドライ エ ル は ナ チ ス期 の 国 法 学 の 時 代 的 変 化 に 重 点 を置 き、

国 法 学 者 達 の ナ チ ス へ の 対 応 の相 違 を グル ー プ別 に分 類 して い る こ とで あ る。

そ れ に 対 して パ ウ リィ は個 々 の代 表 的 な 国 法 学 者 を例 に あ げ て そ の 国 法 学 の 方 法 の 特 色 を説 明 して い る。 ドライ エ ル も報 告 の 中 で 触 れ て い る よ う に これ ま で ナ チ ス 期 の 国 法 学 に関 して は、 国 法 学 以 外 の研 究 者 、 エ ル ンス ト ・フ レ ン ケ

9)

ル、 フ ラ ン ツ ・ノ イ マ ン な どの 亡 命 者 た ち の 研 究 が 高 く評 価 され て きた 。 それ ゆ え に 国 法 学 者 自 らの 手 に よ っ て 国 法 学 者 大 会 で 改 めて この 問 題 へ の取 り組 む

こ とが 評 価 に値 す るの で あ る。

ナ チ ス 期 の 国 法 学 の特 徴

1933年 の ナ チ ス の政 権 掌 握 後 に突 如 と して 全 面 的 に国 法 学 が 転i換 した わ け で はな く前 兆(前 史)が あ っ た 。 ドライ エ ル に よれ ば ワ イ マ ー ル共 和 国 末 期 に は 社 会 の 各 分 野 で反 自由 主 義 、 左 右 両 極 の政 党 の進 出 が 見 られ 、 国 法 学 と して も 社 会 状 況 とは無 縁 で は あ りえ な か っ た とされ て い る。 彼 は、 国 法 学 に お い て も 多元 主 義 を非 統 合 と見 徹 し、 議 会 主 義 を政 党 支 配 と捉 え、 自 由 主 義 は 国 家 に危 機 を及 ぼ す とい う見 解 が 広 ま り、 そ れ ら を制 度 的 に保 障 した ワイ マ ー ル 憲 法 へ の批 判 とな っ て 反 議 会 主 義 、 反 民 主 主 義 制 度 へ と向 か わせ た こ とを 指 摘 す る。

彼 に よれ ば ナ チ ス 期 にお い て 国 法 学 者 の 対 応 は 四 つ の グ ル..̲̲プに分 か れ る。

ナ チ ス に よっ て 教 職 を奪 わ れ た グ ル ー プ(ヘ ラー、 ケ ル ゼ ン、 ナ ヴ ィ アス キ ー 等)の 他 に学 問 的 に ナ チ ス とは距 離 を置 くグル ー プ もい た(ト リー ペ ル 、 ス メ ン ト、 トー マ 、 ア ン シ ュ ッツ等)。 また 、 ナ チ ス に協 力 的 で あ っ た者 もシ ュ ミ ッ トに代 表 され る権 威 主 義 国 家 を支 持 す る一 方 で 国家 の法 的意 味 を否 定 しな か っ た グ ル ー プ(フ ォル ス トホ フ、 フー バ ー 、 シ ョイ ナ ー等)と 国 家 の 存 在 を消 極 的 に 見 て ナ チ ス の運 動 、 民 族 主 義 、 ヒ トラ ー の個 人 的指 導 を 重 視 す る 「親 衛隊 法 学 者 」(SS‑Juristen)達 の グ ル ー プ(へ..̲..ン等)と に分 け られ る。

(5)

ドイツ国法学 の転機 5 と ころ で 、 ドライ エ ル は1920年 代 の 国 法 学 に は 「ネ ガ テ ィ ブ ・コン セ ンサ ス」

が 見 られ 、それ は反 自由 主 義(反 個 人 主 義 、反 多 元 主 義 、主 観 的 公 権 の 否 定 等)、

反 議 会 主 義 と反 連 邦 主 義 で あ り、 反 ユ ダ ヤ 主 義 で あ っ た とす る。 これ ら は ワイ マ ー ル 期 に見 られ た 前 兆 で あ り、 全 て ワ イ マ ー ル 憲 法 に対 す る 「ネ ガ テ ィ ブ ・ コ ンセ ンサ ス」 で あ る。 しか し、 ナ チ ス 期 に入 る とそ れ に と ど ま らず ナ チ ス の オ リジ ナ ル な国 法 学 が 形 成 され 、 そ こ に は基 本 原 理 な る もの が 存 在 した と指 摘 す る。基 本 原 理 の一 つ が 民 族(Volk)、 民族 共 同体 で あ り、そ れ に と もな う主 観 的 公 権 の 欠 如 、 国 家 の 意 味 喪 失 な い し相 対 化 で あ る と して い る。

二 つ に は運 動 国 家(Bewegungsstaat)で あ る。ナ チ ス は公 法 上 の 団体 と して 認 め られ る と同 時 に他 の 政 党 は 禁 止 され 、 ナ チ ス は 国 家 と並 立 され る存 在 とさ れ 、 非 国 家 の 高 権 の 担 い 手 と さ れ た の で あ っ た 。 三 っ に は 指 導 者 原 理 (%hrerprinzip)で あ る。指 導 者(ヒ トラ ー)は 民 族 の意 思 を体 現 す る もの で あ り、 指 導 者 の決 定 は法 律 を意 味 す る と され た 。 そ の 結 果 、 近 代 の法 治 国 家 の 原 理 で あ る法 律 の優 先 、 法 律 の 留保 さ え な く、 政 府 、 議 会 さ え も固 有 の 存 在 価 値 を 失 っ て し ま った の で あ る。

他 方 の パ ウ リィ の報 告 は フ ォ ル ス トホ フ、 フー バ ー 、 シ ュ ミ ッ ト、 へ 一 ン等 の例(ド ライ エ ル の い う第 三 、 第 四 の グル ー プ〉 を取 り扱 い、 個 々 の 国 法 学 の 内 容 の説 明 して い る点 で 年 代 的 変 遷 や グル ー プ別 の 分 析 を 中心 に行 っ た ドライ エ ル の報 告 とは異 な る。 ま た 、 第 三 と第 四 の グ ル ー プの 理 論 的 相 違 に も力 点 を 置 い て い い る。 フ ォル ス トホ フ、 フ ーバ ー、 シ ュ ミ ッ トに 関 して は 当 時 の 社 会 の 分 裂 と国 家 の危 機 的 状 況 に あ っ て 国 家 の権 威 を確 立 ・強 化 し政 治 的 統 合 へ 向 か お う とす る国 法 学 上 の 努 力 が 描 か れ て い る。

た だ 、 フ ォル ス トホ フ は国 家 行 政 の拡 大 の み な らず 、権 威 主 義 国 家 を 強 調 す る に して も、 ナ チ ス の 運 動 に は関 与 せ ず 、 また 、 そ れ を 法 的 に正 当化 す る こ と に は積 極 的 で は な か っ た 。 フー バ ー も同様 に 国 家 と運 動 そ の もの を混 同 す る こ と も な く、 区別 しよ う と した 。 シ ュ ミ ッ トも 『国 家 ・運 動 ・民 族 』 で 運 動 、 民 族 の 法 的意 味 を評 価 しな が ら も、 国 家 を それ ら と同 一 視 す る こ とは な く、 そ の

こ とが 後 に 「親 衛 隊 法 学 者 」 か ら批 判 され る こ とに な る。

そ れ に対 して 親 衛 隊 法 学 者 」 に属 す るへ ・..ンは 国 家 に代 わ る共 同体 を 全 面 に提 起 し、 共 同体 は 同 じ血 と人 種 か らな る民 族 で あ る こ とを強 調 す る。 そ こ に

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お い て は も は や 近 代 国 家 の合 理 性 は失 わ れ 、 法 律 は国 家 の意 思 で は な く、 指 導 者 の意 思 で あ る とされ た ので あ る。 パ ウ リ ィ は ヘ ー ンの 国 法 学 の 特 徴 を 国家 の 概 念 の 否 定 で あ る と して い る。 ドライ エ ル の 区分 の と こ ろで も述 べ た よ う に第 三 の グ ル ー プで は権 威 主 義 国 家 に は賛 同 しつ つ も、 国 家 の存 在 そ の もの は 否 定 さ れ な か っ た 。と こ ろが 第 四 の グ ル ー プで は否 定 も し くは大 き く相 対 化 され る。

親 衛 隊 法 学 者 」 は、国 家 の法 的 意 味 を全 く認 めず 、非 合 理 的 な運 動 、指 導 者 に重 点 を置 く。 それ ゆ え に 主 観 的 、 恣 意 的 な意 思 に動 か され 、 客 観 的 予 測 可 能 性 は不 可 能 で あ る。 しか し、 権 威 主 義 国家 を支 持 す る者 は、 国 家 の法 的 意 味 を 認 め て お り、 国 家 の存 在 を合 理 的 に説 明 し よ う とす る。 した が っ て 、 そ れ な り

に法 的 安 定 性 、 客 観 的 予 測 可 能 性 も維 持 で き る。 この 思 想 的 差 は第 三 の グル ー プが 法 治 国 家 が 維 持 され た ワ イ マ ー ル 憲 法 時 代 か らの 活 躍 が 見 られ る者 が 多 い の に対 して 、 第 四 の グ ル ー プ は法 治 国 家 が 否 定 され た ナ チ ス 期 に な っ て 活 躍 し 始 め た 者 が 多 い 点 に も相 応 す る。

とこ ろ で 、 近 代 立 憲 主 義 に お い て は権 力 分 立 や 法 の 支 配 の思 想 は権 力 へ の不 信 が 根 底 に あ り、 権 力 分 立 は 国 家 統 治 の合 理 的 コ ン トロー ル に不 可 欠 で あ る。

しか し、 権 威 主 義 国 家 の理 論 に お い て も国 家 統 合 を強 調 す る以 上 、権 力 分 立 や

抑 制 は消 極 視 され る こ とに な る。 そ して 、 権 力 統 合 は必 然 的 に権 力 を担 う人 へ の信 頼 に な り、 人 の 支 配 へ 赴 か ざ る を え な い。 事 実 、 ワイ マ ー ル 憲 法 に破 壊 的 な態 度 を取 っ た 権 威 主 義 国 家 理 論 は、 それ な りの合 理 性 も維 持 で きず 、 結 局 、

親 衛隊 法 学 者 」 へ の橋渡 し とな っ た の で あ る。

た とえ ば、 シ ュ ミ ッ トは 『国 家 ・運 動 ・民 族 』 に お い て 、 あ るナ チ ス 指 導 者 の 「あ らゆ る権 力 は 民 族 か ら発 す る」 との 言 葉 を重 視 し、 ワイ マ ー ル 憲 法 第1条

ロ ラ

の 「国 家 権 力 は 国 民 か ら発 す る」 との規 定 か らの転 換 を強 調 した 。 ワイ マ ー ル 憲 法 時 代 に は先 の第1条 を根 拠 に 「国 民 的 同質 性 」を強 調 し、そ れ ゆ え に権 力 統 合 を 主 張 した彼 が、 ナ チ ス期 に は 「国 民 」 で は な く、 む し ろ、 「民 族 」 「人 種 」

ユの

に依 拠 す る よ うな転 換 を遂 げた こ とは先 の橋渡 しの 一 つ の例 で あ る。

親 衛 隊 法 学 者 」の思 想 で は、も はや 国 家 の 法 的 意 味 す らな くな っ て い る との 指 摘 で は ドラ イ エ ル とパ ウ リィ の報 告 で も共 通 して い る。 国 法 学 が 対 象 とす る の は国 家 で あ り、国 家 の合 理 的根 拠 、国 家 の法 的 意 味 が な くなれ ば、 「学 」 と し て の 国 法 学 も存 在 根 拠 が 失 わ れ る の は 当 然 と もい え よ う。 要 す る に ナ チ ス 支 配

(7)

ドイ ツ国法 学 の転 機 7 の 確 立 後 に お い て は も はや 法 、 憲 法 の 規 範 性 は完 全 に喪 失 し、 そ れ に とも な っ て 国 法 学 の 存 在 意 義 も失 わ れ た とい わ ざ る を え な い の で あ る。

ヘ ー ベ ル レが 指摘 す る よ うに近 代 立 憲 主 義 に お い て は輪 郭(国 の か た ち)が

13)

明 確 で は な い よ うな無 前 提 的 な 国 家 な る も の は存 在 しな い。 憲 法 に よ っ て は じ め て 国 家 の様 々 な形 態 が 具 体 的 に規 定 さ れ るか らで あ る。 しか し、 ナ チ ス 期 に お い て は ワイ マ ー ル憲 法 が破 棄 され 、 国 家 統 合 、 権 威 主 義 国家 が 強 調 され る ど こ ろか 、 究 極 的 に は 国 家 その もの も消極 視 さ れ た。 結 局 、 そ の よ うな 状 況 の 中 で は 憲 法 とは成 文 化 され た 憲 法 典 」 どこ ろ か 、 法 の 本 質 で あ る 「当為 」 で す らな くな っ て し まっ て い る。 た だ 、 事 実 と して 存 在 す る ヒ トラ ー、 ナ チ ス の 権

i4)

力 の正 当性 を説 明 す る もの で しか な か っ た の で あ る。

ナ チ ス 期 の 国 法 学 登 場 の 思 想 的 背 景 と今 日的 課 題

ナ チ ス期 の 国 法 学 の 登 場 の 思 想 的 背 景 に つ い て は 、 二 人 の報 告 で は触 れ られ る こ とが 少 な か っ た 。 報 告 は あ くまで もナ チ ス 期 の 国 法 学 の動 向 を客 観 的 に記 述 す るに と ど ま っ た の で あ る。この 点 に関 して は報 告 後 に改 め て議 論 され 、シ ュ タ ル ク は 三 つ の 点 にわ た って ナ チ ス の 登 場 の 思 想 的 背 景 を指 摘 す る。一 つ は 「 た な ヒ ュー マ ニ ズ ム 」 と呼 べ る もの で あ り、 人 間 を価 値 あ る人 間 とそ うで は な い 人 間 に 区 別 す る よ うな 思 想 を あ げ る。 二 つ に は個 人 は全 体 の た め に あ る と し て シ ー ザ ー 的 な独 裁 を許 容 す る よ うな思 想 もあ っ た とい う。

そ して 、 三 っ に は1933年 に 開催 され た ドイ ツ法 曹 大 会 を あ げ るが 、 これ は ナ チ ス に よ っ て組 織 され た大 会 で あ る。 シ ュ タ ル ク は当 時 の0人 の ドイ ツ 国 法 学 者 が これ を 主 導 した と しか い わ な か っ た が 、 そ の 国法 学 者 の報 告 の 内 容 は あ ま

りに も有 名 な 「国 家 ・運 動 ・民 族 」(後 に 出 版)で あ り、 シ ュ ミ ッ トで あ る こ と は大 会 参 加 者 に は周 知 の こ とで あ っ た 。 シ ュ タル クが い わ ん と した と こ ろ は、

権 威 主 義 国 家 を求 め る ドイ ッ 国 法 学 の 潮 流 が あ っ た と して もそ れ を決 定 的 に し た の は シ ュ ミッ トの主 導 した ドイ ッ法 曹 大 会 で あ っ た とい う こ とで あ ろ う。

また 、 ヴ リ ンガ ー は二 人 の報 告 者 が 思 想 的 背景 に触 れ る こ とを しな か っ た 点 を批 判 し、 ゲ ル マ ンー ロ マ ン主 義 的 思 考 、 反 ユ ダ ヤ主 義 的傾 向 を あ げ た 。 そ し て 、 プ ロ イ ス は ワ イ マ ー ル 憲 法 下 の社 会 ほ古 典 的 自 由主 義 で 想 定 す る社 会 で は な か った とい う。 産 業 発 展 に伴 い 大 衆 社 会 化 して お り、 そ こで は 階 級 分 裂 が 見

(8)

られ た と指 摘 す る。 これ に対 して ドライ エ ル は討 議 の 最 後 に思 想 的 背 景 に改 め て 触 れ た 。 なぜ ナ チ スが 登 場 しえ た の か との 問題 提 起 は 重 要 で あ る こ とを認 め つ つ 、 ワイ マ ー ル共 和 国 は国 家 の秩 序 を 維 持 し形 成 す る機 能 的形 態 を有 しえ な カ}った とレ}う。

そ して 、1932年 頃 か ら憲 法 状 況 は絶 望 的 で あ り、 合 理 的 、 リベ ラル 、 西 欧 的 な もの を否 定 す る精 神 状 況 、 非 合 理 性 の 思 想 の 存 在 を強 調 し、 人 々 が 指 導 者 を 信 頼 し従 っ た こ と、 知 識 人 が ワイ マ ー ル 憲 法 を拒 否 した 点 が 多 大 な 影 響 を もた ら した と指 摘 す る。 最 後 に2000年 とい う節 目の 年 に この テ ー マ を取 り上 げ た こ

とに感 謝 した の で あ る。 この よ うに大 会 で は国 法 学 の 問題 に と どま らず 、 思想 的 背 景 に まで 踏 み 込 ん だ 議 論 が され 、 単 に個 別 的 問 題 で は な く、 国 法 学 の歴 史 的 、 社 会 的 基 盤 そ の もの を も問 い直 す もの で あ っ た の で あ る。

と こ ろで 、2000年 の 国 法 学 者 大 会 が ナ チ ス期 の ドイ ツ国 法 学 」 の全 面 否 定 をす る こ とに よ っ て過 去 を総 括 した の か とい え ぼ 、 必 ず しも そ うで は な い 。 ド ライ エ ル もパ ウ リ ィ も今 日の 国 法 学 の 発 展 につ な が る もの もあ っ た こ とを認 め て い る。 た と え ば、 両 者 と も に指 摘 して い る の は フ ォ ル ス トホ フ の 生 存 配 慮 (Daseinsvorsorge)の 概 念 で あ る。フ ォル ス トホ フ の この概 念 は ナ チ ス 政 権 下 で 国 家 に よ る給 付 を積 極 的 に認 め た もの で あ るが 、 今 日、 この 点 は従 来 の侵 害 行 政 論 に対 す る新 た な給 付 行 政 論 の展 開 で あ る と して 高 く評 価 され て い る。

パ ウ リ ィ は 、 そ の他 に も他 の 個 々 の 学 者 の理 論 を あ げ て い るが 、 い ず れ にせ よナ チ ス 期 に お い て も今 日 の 国 法 学 に っ な が る発 展 も あ っ た こ とを 述 べ て い る。 た だ、 ドラ イ エ ル が ナ チ ス の 国 法 理 論 と して 大 空 間秩 序 」 が提 起 され た こ とは今 日 の ヨー ロ ッパ 連 合 に見 られ る よ うな ヨー ロ ッパ統 合 に先 駆 け る もの で あ る、 と述 べ た 点 に関 して は賛 同 は え られ な か っ た 。 な ぜ な ら ヨー一ロ ッパ 連 合 の理 念 は 自 由 と民 主 主 義 で あ り、 単 な る地 理 的 な 統 合 で は あ りえ な い か らで あ る。 この よ うな 「ナ チ ス期 の 国法 学 」 の 冷 静 か つ 客 観 的 な 評 価 は本 大 会 の成 果 で あ る とい え よ う。

また 、 ナ チ ス の再 来 を防 止 す るた め に今 後 の 課 題 と して 国 法 学 と して は ど う 対 処 す べ き か も議 論 され て い る。 グ レシ ュ ナ ー は大 学 にお け る法 史 と法 哲 学 の 講 義 の重 視 を あ げ る。 ワ イ マ ー ル共 和 制 が 単 に君 主 制 を否 定 す るだ け で 指 導 者 原 理 に 対抗 で き な か っ た 歴 史 を ふ まえ て 現 状 を解 釈 す る個 々 の 実 定 法 学 で は な

(9)

ドイ ツ国法学 の転機

9

く、 現 状 を根 本 的 に問 い 直 す理 論 法 学 に 期 待 した の で あ る。 そ して 、 へ 一 ペ ル レ は比 較 憲 法(Verfassungsrechtsvergleichung)の 必 要 性 を 訴 え ドイ ツ 国 家 を相 対 化 す る視 点 を持 つ こ とを指 摘 した 。

この よ うな提 案 が され た 背景 に はナ チ ス 期 に お け る大 学 の 講 義 課 目 の 変 化 の 問題 が あ っ た か らで あ る。 フ リー ドリ ッ ヒに よれ ぼ 、 ナ チ ス 期 に お い て は 「国 法 」 に代 わ っ て 「憲 法 」 が 、 「一 般 国 家 学 」 に代 わ っ て 「民族 と国 家 」講 義 の 登 場 した。 近 代 国 家 を規 律 す る 「国 法 」 で は な く、 ナ チ ス の 民 族 共 同 体 の 原 理 を 表 わ す 「憲 法 」 へ の転 換 を、 法 や 国 家 の 一 般 的 原 理 の 一 般 国 家 学 」 で は な く

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ドイ ツ 民 族 の優 位 性 を教 え る 「民 族 と国 家 」 が 求 め られ た の で あ る。 こ の 変 化 こ そ が ナ チ ス 期 の オ リジ ナ ル な 国法 学 の基 本 原 理 を表 現 す る もの で あ る。

ナ チ ス期 の 国 法 学 」の問 題 につ い て は、シ ュ トライ ス に よ る帝 政 末 期 か ら ワ イ マ ー ル 憲 法 の成 立 と崩 壊 、 ナ チ ス 期 の 国 法 学 につ い て の 詳 細 な 論 究 が あ る。

特 に 国法 学 者 大 会 の開 催 が ナ チ ス政 権 下 で 中 止 とな り、ア ンシ ュ ッ ツ が 退 会 し、

ケ ル ゼ ン な どの ユ ダ ヤ 人 学 者 が 追 わ れ 、 大 会 創 立 者 で あ る ト リー ペ ル の 挫 折 な どが 描 か れ て い る点 は注 目 に値 す る。 そ こで もナ チ ス 期 の 国 法 学 者 の グル ー プ

16)

分 けが な さ れ て い るが、 今 回 の よ うに 国 法 学 者 大 会 とい う公 的 な 場 で 論 じ られ た こ とに意 味 が あ る。

パ ウ リィ は報 告 の 中 で 「ナ チ ス期 の ドイ ツ国 法 学 」 の 本 質 とは何 か とい う問 題 を論 ず る こ とは今 日の 国 法 学 の あ り方 とは 無 関 係 で は な い と して い る。 大 会 で は他 に も 「ナ チ ス 期 の ドイ ツ国 法 学 」 を論 ず る こ とは過 去 に 目 を 閉 ざ す こ と をや め るだ けで は な く ドイ ツ 国 法 学 の 将 来 に も学 問 的 な成 果 を もた らす もの で

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あ る との見 解 が 見 られ た 。 国家 の観 念 を 過 剰 に強 調 す る こ とか ら姶 ま っ て ワ イ マ ー ル 憲 法 の近 代 立 憲 主 義 を否 定 し、最 後 に は 国 家 の 法 的 意 味 を も否 定 した 「 衛 隊 法 学 者 」 に至 る 「ナ チ ス期 の ドイ ツ 国 法 学 」 の議 論 に は角 度 は異 な る が 国 法 学 者 大 会 の も う一 つ の テ ー マ で の 国 家 と憲 法 の存 在 定 義 に 関 す る議 論 と も通 底 す る もの が あ る。

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(三)ヨ ー ロ ッパ 憲 法 と国 家 の 憲 法

ヨ ー ロ ッパ 連 合 の展 開

今 日、 ヨー ロ ッパ は経 済 的 統 合 の み な らず 、 政 治 的統 合 へ と向 か っ て い る こ とは確 か で あ り、そ の 軸 とな っ て い る の が ヨー ロ ッパ 連 合(EU)で あ る。第 二

rs)

次 大 戦 後 の展 開 の 歴 史 に触 れ る こ とは紙 数 の 関 係 か ら避 け るが 、 焦 点 とな るの は 、加 盟 国 の 国 家 主 権 とEUの 権 限 との調 整 の 問 題 で あ る。そ こで 、現 在 に お け る問題 点 を 改 め て 要 約 す れ ば 、 以 下 の とお りで あ る。 国 家 の 基 本 法 は憲 法 で あ り、 国 家 主 権 の 対 外 的 な絶 対 性 は、 憲 法 に お い て も他 国 か ら何 らの影 響 を 受 け

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な い 意 味 で 排 他 性 、 完 結 性(Geschlossenheit)を 有 して い る とさ れ る。

とこ ろが 、EUの 発 展 は一 国 の 憲 法 体 制 へ の 他 か らの影 響 、 た とえ ば、EU法 が ドイ ッ の 法 律 に優 位 し、 また 、 直 接 に ドイ ッ国 民 を法 的 に拘 束 す る こ とに も 現 れ て い る。そ の他 に も、EUを 設 立 した マ...ストリ ヒ ト条 約 で 確 認 され た 「 合 市 民 権 」 も、 従 来 の 憲 法 の排 他 性 、 完 結 性 の 国 家 観 を打 破 す る内容 を有 して い る。 一 般 に 国 家 の 三 要 素 と して 、 土 地 ・人 ・統 治 権 が あ げ られ るが 、 「連 合 市 民権 」 で はEU域 内 の人 の 自 由 な移 動 を認 め 、EU市 民 の居 住 国 に お け る地 方 参 政 権 を保 障 す る な ど、 一 の 国 家 に属 す る とされ た 三 要 素 が 国 家 の 枠 を外 れ つ っ

あ るの で あ る。

この よ うにEUの 設 立 に よ っ て加 盟 国 の 国 家 主 権 の 絶 対 性 、憲 法 の 排 他 性 、完 結 性 は崩 壊 しつ つ あ るの で あ る。 た だ 、 こ の こ と は事 実 と して 否 定 で きな い と

して も、 それ を国 法 理 論 上 どの よ うに と らえ るか が 問 題 と して 残 る。 そ れ が 、 この 国 法 学 者 大 会 の テ ー マ 「ヨー ロ ッパ 憲 法 と国 家 の 憲 法 」とな った の で あ る。

国 法 学 者 大 会 で はEUの 前 身 で あ る ヨー ロ ッパ 共 同体 と ドイ ツ 憲 法 との 関 係 に つ い て は部 分 的 に で は あれ これ まで も何 回 か 議 論 され て い る。 特 に1990年 に は

「ヨ ー ロ ッパ 共 同体 の 一 員 と して の 立 憲 国 家 」 の テ ー マ で 包 括 的 に討 議 され た 。20)

1990年 の 大 会 で は ヨー ロ ツパ 共 同体 の各 機 関 、 特 に立 法 機 関 で あ る理 事 会 、 執 行 機 関 で あ る委 員 会 に対 す る民 主 主 義 的 統 制 に 欠 け て い る とい う 「民 主 主 義 の 赤 字 」(Demokratiedefizit)論 が 指 摘 され た 。具 体 的 に は各 国 にお い て 直 接 選 挙 され る ヨー ロ ッパ 議 会 に は立 法 権 限 は な い に等 し く(た だ 協 力 、 関 与 す る

こ とは認 め られ て い るが)、 そ の 点 で̲̲̲.国の 憲 法 体 制 の よ うに 国 民 一 議 会 に よ

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ドイ ッ国法 学 の転機 る権 力 の 民 主 的 統 制 を 欠 く とされ た の で あ る。 そ して 、 各 加 盟 国 は ヨー ロ ッパ 共 同体 に対 して は 包 括 的 な権 限(Kompetenz‑Kompetenz)を 付 与 した の で は な く、 設 立 目的 に応 じて個 別 的 権 限 を与 え た の にす ぎ な い との 意 見 が 大 勢 を 占 め た の で あ る。

21)

これ はエ ッ クハ ル ト・ク ラ イ ン の い う 「目的 団体 論 」 で あ り、 い い か え れ ば 、 当 然 、 主 権 は加 盟 国 に あ り、 ヨー ロ ッパ 共 同体 は一 定 の 目 的 の た め に設 立 さ れ た もの で あ って 個 々 の 国 家 で は な しえ な い分 野 だ け を 補 完 す る権 限 を 有 す る と い う 「補 完 性 の原 理 」 が 主 張 され た の で あ る。 した が っ て 、 この大 会 に お い て は 国 家 主 権 の 問題 は そ れ 以 上 に議 論 さ れ る こ とな く統 合 の 事 実 上 の 進 展 の 中 で

22)

個 別 的 に 「可 能 性 と許 容 性 」 で 考 え る他 は な い とい う意 見 が 見 られ た 。 これ は 個 別 的 な 問題 で の法 的 な検 討 は と もか く国 家 主 権 の 問題 に 関 す る包 括 的 な議 論 を棚 上 げす る考 え方 で あ る。

しか し、 そ の後EUが 設 立 され 、 ヨー ロ ッパ の統 合 が 更 に進 展 した こ とは既 に述 べ た とお りで あ る。 そ こで 、 国 法 学 者 大 会 に お い て も1990年 の大 会 の 「目 的 団体 論 」 以 上 の 議 論 に踏 み 込 ま ざ る を得 ず 、特 に国 家 主 権 の 問題 に 関 して は そ うで あ る。 国家 主 権 に つ い て は本 大 会 の テ ー マ に あ る 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 の 言 葉 は刺 激 的 で あ っ て 、 事 実 と して あ る統 合 を そ こ まで 法 的 存 在 と して 捉 え ら れ るの か 大 い に議 論 を 呼 ぶ は ず で あ る こ とは予 想 で き る。

「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 へ の様 々 な 立 場

「ヨー ロ ッパ 憲 法 と国 家 の憲 法 」 の テ ー マ で報 告 した の は イ ン ゴ ル フ ・ペ ル ニ ス 、 ペ ー ター ・フー バ..̲̲、ゲ ー トル デ ・リュベ ー ボ ル フ、 ク リス トフ ・グ ラ ー ベ ンヴ ァル タ ー の 四 人 で あ り、 異例 の 数 の 多 さで あ っ た 。 リュベ ー ボ ル フ は、

既 に1990年 の 大 会 で も指 摘 され たEUの 民 主 的 正 当性 の 欠 如 、 す な わ ち、 立 法 機 関 で あ る理 事 会 の 不 透 明 な 決 定 過 程 と議 会 の 地 位 の 相 対 的 弱 さ に 見 られ る

民 主 主 義 の 赤 字 」論 にっ い て 報 告 した が 、連 合 の レベ ル だ け で は な く各 国 に お い て も この 点 は不 十 分 で あ る と し、 改 善 の必 要 性 を述 べ た の で あ る。 この 点 で は従 来 の 議 論 の 域 を出 て お らず 、「ヨー ロ ッパ 憲 法 」に 対 す る積 極 的 議 論 は 見 ら れ な い。

次 に グ ラ ー ベ ン ヴ ァ ル タ ー は ヨー ロ ッパ 人 権 宣 言 を 中 心 に 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」

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に つ い て 述 べ 、ヨー ロ ッパ 人 権 宣 言 が 憲 法 の 内 容 を有 して い る と主 張 す る。ヨー ロ ッパ 人権 宣 言 は、 各 国 にお い て は法 律 と同様 に扱 わ れ 、更 に は基 本 権 の 解 釈 に も影 響 を及 ぼ して い る とす る。 中 で も 「議 会 主 権 」 の下 で 議 会 法 の 優 越 性 、 違 憲 審 査 制 の 否 定 、 自国 以 外 の 法 の拘 束 力 を排 除 して きた イ ギ リス に お い て も

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1998年 の人 権 法 は ヨ ー ロ ッパ 人権 宣 言 の 法 的拘 束 力 を認 めた も の で あ る と して い る。 この こ とは ヨ ー ロ ッパ 人 権 宣 言 が あ た か も 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 と して イ ギ リス 憲 法 に影 響 を及 ぼ して い る例 証 とさ れ て い る。そ して 、EUが ヨー ロ ッパ 人 権 宣 言 をEC法 の̲̲̲̲̲,般原 則 で あ る と して 法 的 拘 東 力 を認 め た こ と も取 り上 げ て い る。

確 か に、EU条 約6条2項 は 「連 合 は1950年ll月4日 に ロ ー マ で 署 名 され た 人 権 お よ び基 本 的 自 由 の保 護 の た め の欧 州 条 約 に よ り保 障 さ れ た 基 本 権 を 一 中

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略 一 共 同体 法 の 一 般 原 則 と して 尊 重 す る」 とあ る。 また 、 ヨー ロ ッパ 人 権 宣 言 の保 障 は加 盟 国 を超 えて ヨー ロ ッパ 人 権 裁 判 所 に よ っ て 担 保 さ れ 、 人 権 の 国 際

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的 保 障 の 典 型 とされ て い る。 これ らの 状 況 か ら グ ラー ベ ン ヴ ァル タ ー は、 憲 法 の概 念 と して は一 国 の 憲 法 の よ うに人 権 と統 治 機 構 等 の 内容 を 有 す る必 要 は な く、 ヨ ー ロ ッパ 人 権 宣 言 の よ う に基 本 権 と して各 国 民(市 民)に 対 して 法 的 拘 束 力 を 有 す れ ば実 質 的 な意 味 で の 「ヨpッ パ 憲 法 」 で あ る と した の で あ る。

しか し、 本 大 会 で の テ ー マ か ら期 待 され るの は、 人 権 の み な らず統 治 機 構 も 含 め て 国 家 主 権 の 絶 対 性 と そ れ を伝 統 的 に法 的 に表 現 して き た 一 国 の 憲 法 と EUと の 関 係 の議 論 で あ り、 グ ラ ー ペ ン ヴ ァル タ ー の よ うな 部 分 的 な影 響 力 の

問題 で は な い。この 点 に 踏 み込 ん だ の が フー バ ー で あ り、ペ ル ニ ス の報 告 で あ っ た 。 フ ー バ ー は、 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 は存 在 す る と断 言 し、 マ ー ス トリ ヒ ト条 約 の よ う にEU設 立 を もた らす 条 約 で あ る..一 次 法(連 合 の 機 関 に よ っ て 設 定 さ れ る法 が第 二 次 法)が 憲 法 の性 格 を有 して い る と見 徹 す 。 そ して 、 憲 法 の機 能 を考 え る な ら ぼ、 部 分 的 で あ れEUも 有 して い る こ とを指 摘 す る。

彼 はEUの 設 立 に よ っ て 「連 合 市 民 」の 規 定 が 設 け られ 、加 盟 国 国 民 の居 住 国 に お け る地 方 参 政 権 が 認 め られ た こ と、更 にEC裁 判 所 に よ るEU法 の保 障(各 国 の法 律 に対 す る優 先 的 適 用)な どを具 体 例 に あ げ て い る。 そ こで は、 基 本 権 領 域 に 限 らず 既 に現 実 と して 各 国 の憲 法 と並 ん で 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 が 法 的 拘 束 力 を 有 して い る こ とを述 べ て い るの で あ る。た だ 、 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」が 各 国 の

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ドイ ツ国法 学 の転機 13 憲 法 に完 全 に優 越 し、 な お か っ 排 除 して い る わ け で は な い こ とは 認 め て い る。

した が って 、 フ ーバ ー一は 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 と各 国 の憲 法 が相 互 補 完 の 状 況 に あ り、「多 層 的 憲 法 連 合 」(Mehr‑Ebenen‑Verfassungsverbund)で あ る と し て い る。

な お 、彼 は 憲 法 の概 念 を 当 然 の ご と く国 家 に結 び 付 けて きた これ まで の ドイ ツ国 法 学 の 対 応 は十 分 で な い とす る。 なぜ な ら伝 統 的 な 国 家 主 権 、0国 の 憲 法 の絶 対 性 、 自律 性(Verfassungsautonomie)が 失 わ れ て い る と捉 え た の で あ る。 そ して 、 ヨー ロ ッパ 化 の 中 で 一 国 の 議 会 の権 限 は低 下 しつ つ あ る一 方 で 、 他 方 、EUの 機 関 の 決 定 の拘 束 力 は ます ま す 強 化 さ れ て い る こ とを述 べ る。 た だ 、 フー バ ー は これ らの現 実 を認 めつ っ も 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 の 法 的位 置 づ け に つ い て は慎 重 で あ る。 とい うの も ヨー ロ ッパ 連 合 の 設 立 の主 体 は 「国 家 」 で あ り、EUの 特 質 はや は り 「国 家 連 合 」で あ る とす る点 で後 の ペ ル ニ ス の 見 解 と は 異 な るか らで あ る。

最 後 にペ ル ニ ス で あ るが 、 彼 の報 告 内 容 が 最 も 「ヨ ー ロ ッパ 憲 法 」 の 存 在 に 積 極 的 で あ る こ とは 間 違 い な い。 フ ーバ ー と同 じ く憲 法 と国 家 と結 び つ け た 国 法 学 の伝 統 を批 判 し、EUは 国家 で は な い が 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」は既 に存 在 す る

と報 告 して い る。彼 は脱 国家(Postnationa1)的 状 況 を見 据 え、 国 家 な る もの (Staatlichkeit)が 事 実 上 も法 的 に も相 対 化 され て い る こ とに触 れ 、主 権 国 家 の 理 念 は 時 代 錯 誤 で あ る との 見 解 も紹 介 して い る。 ま た 、 国 家 は死 ん で は い な い が 、脱 神 話 化(entrnythologisiert)、 脱 魔 術 化(entzaubert)さ れ て い る との 議 論 も取 り上 げ、 国法 学 、 憲 法 に お い て も国家 へ の 拘 泥 か らの 脱 却 を強 調 して

い る。

彼 は ボ ン基 本 法20条3項 の 「立 法 は憲 法 的秩 序 に拘 束 され る … … 」 の 規 定 を と りあ げ 、この 場 合 の 憲 法 的 秩 序 とはEUの 憲 法 秩 序 も含 まれ る と して お り、そ の 点 に関 して憲 法 の意 味 変 遷 が あ る と して い る。そ して 、EU設 立 条 約6条 で は 人 権 、民 主 主 義 、 自 由がEUの 共 通 原 則 で あ る と され 、7条 で は加 盟 国 が そ れ ら を侵 害 し た 場 合 のEUと して の 制 裁 措 置 が 規 定 さ れ て い る こ とな ど を 取 り上 げ、 国 家 主 権 の絶 対 性 、 一 国 の 憲 法 の 完 結 性 の観 念 を批 判 す る。

要 す る にペ ル ニ ス は 国家 の絶 対 的 な 存 在 、 それ と結 び っ け られ た 憲 法 概 念 を 批 判 的 に再 検 討 し よ う と した の で あ る。 そ こで 、 国 家 か ら離 れ て 憲 法 を機 能 的

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観 点 か ら と らえ 、 基 本 権 の保 障 、 権 力 分 立 等 が 憲 法 の 持 つ 本 質 的 な機 能 で あ る とす る。要 す る に憲 法 の概 念 を この よ うな機 能 を有 す る も の とす れ ば、 あ え て そ れ は 国 家 に結 び つ け る必 要 は な く、EUで あ っ て も よい は ず で あ る との 論 理 で 国家 を神 話 化 す る こ とを避 けて い るの で あ る。 この 点 に関 して ペ ル ニ ス は 、 国 家 は 憲 法 に よ っ て構 成 され る もの で あ る とす るへ 一 ベ ル レの 見 解 を紹 介 して い る。

へ 一 ベ ル レ は1989年 の 国 法 学 者 大 会 で この 点 を強 調 し、ス メ ン トの 「憲 法 あ っ て 国 家 が あ る」 との 言 葉 を 引用 し、 憲 法 を離 れ て 抽 象 的 な 目的 を措 定 され た 国

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家 の 存 在 に は否 定 的 な態 度 を 示 して い る。 い い か えれ ば 、 具 体 的 な 憲 法 の 機 能 が 重 要 で あ っ て 抽 象 的 な 国 家 の 存 在 そ の もの で は な い とい う こ とで あ る。 ペ ル ニ ス もヘ ー ベ ル レ と同 様 に 抽 象 的 な 国 家 で は な く具 体 的 な 憲 法 の 機 能 に 着 目 し、 そ の 重 要 性 を 強 調 す るの で あ る。 そ して 、 国 家 との 結 合 の 必 然 性 を 否 定 す るの で あ るが 、 更 に 論 を展 開 す る。

そ れ は 、 憲 法 の正 当性(具 体 的 に は 国 民 主 権 論 、 憲 法 制 定 権)に つ い て も国 法 学 の 伝 統 を批 判 し、 国 家 を 超 え た 個 人 の 自 己決 定 に正 当化 の 根 拠 を 求 め る も の で あ る。 この 点 に 関 して 、従 来 の 国 民 主 権 論 の 再 検 討 か ら始 め る。す な わ ち 、 国 民 主 権 は神 秘 化 され た(集 合 的)人 民 の行 為 で は な く、 個 人 の 自 己決 定 を意 味 す る と した の で あ る。 か つ て ヘ ー ベ ル レ も国 民 主 権 の 主 体 と して の 国 民 は、

一 般 的 に は抽 象 的、 神 秘 的 な集 合 体 と して 捉 え られ て い るが 、 実 際 に は国 民 の 内 容 は基 本 権 を担 う個 々 の 人 々 で あ る とす る。 そ して 、 抽 象 的 な 国 民 を民 主 主 義 の 担 い 手 とす る よ りは、 社 会 の 多 元 性 に応 じて 個 々 の 具 体 的 な 人 間 の 存 在 を

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担 い 手 とす べ きで あ る と した の で あ る。

ペ ル ニ ス も ヨー ロ ッパ 共 同体 、EUの 設 立 条 約 は 国家 主 権 の硬 い殻 を打 破 し、

各 制 度 を 通 してEUと 個 人 と の 間 の 直 接 的 な 法 的 関 係 を 根 拠 づ け た と して い る。フ ーバ ー と異 な る の は、こ の よ うな条 約 の設 立 の 主 体 は各 加 盟 国 で は な く、

連 合 市 民 」 で あ る と して い る点 で あ る。 彼 はEUレ ペ ル で の 「社 会 契 約 」 を想 定 して い るの で あ る。 フー バ ー とペ ル ニ ス も 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 と各 加 盟 国 の 憲 法 との 共 存 の 多 層 的 シ ス テ ム 」 の現 状 を認 め る点 で は共 通 して い るが 、 ペ ル ニ ス は 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 の 存 在 を 国 家 か ら よ り自立 的 に捉 えて い る。 なぜ な ら、 フ ーバ ー は ヨー ロ ッパ 憲 法 の 設 立 主 体 を 国家 で あ る とす るが 、 ペ ル ニ ス

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ドイ ツ国法 学 の転 機

IS

は 「連 合 市 民 」 を主 体 と してEUと 連 合 市 民 」 を直‑結 び つ けて お り、 そ れ ゆ え に脱 国 家 の 意 識 が 明確 で あ るか らで あ る。

ペ ル ニ ス は 、 更 に詳 し く ドイ ツ 国 民 は 同 時 に 「連 合 市 民 」 で あ り二 重 の ア イ デ ン テ ィテ ィ と二 重 の 忠誠 を 有 して い る とす る。 そ して 、 既 に行 政 法 、 民 法 、 商 法 の ヨ ー ロ ツ パ 化 、 「国 法 学 の ヨ ー ロ ツ パ 化 」(EuroP盃isierungder

Staatsrechtslehre)が 進 行 して お り、そ の こ とは共 同 体 法 と各 国法 が 抵 触 した 場 合 に は 共 同体 法 の適 用 が 優 先 され る こ とに よ って う らづ け られ て い る こ とを 述 べ る。 また 、 世 論 調 査 で7割 の 「連 合 市 民 」 が 「ヨ ー ロ ッパ 憲 法 」 を要 請 し

て い た こ とを取 り上 げ て い る。 た だ し、 この場 合 の 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 とは、

マ.̲̲̲ストリ ヒ ト条 約 等 の 実 質 的 な 意 味 で の そ れ で は な く、 今 後 制 定 が 予 想 され る法 典 化 され た もの を指 す 。

大 会 報 告 で は リ ュベ ー ボ ル フ を 除 け ば 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」の存 在 を認 め た が 、 グ ラー ベ ヴ ン ァル タ ー は ヨー ロ ッパ 人 権 宣 言 の ヨー一ロ ッパ 憲 法 化 とい う限 定 さ れ た もの で あ っ た。他 方 、 フ ーバ ー はEUの 設 立 条 約 が 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 を意 味 す る と して包 括 的 な存 在 を 肯 定 して い る。 た だ 、 フ ーバ ー は ヨ ー ロ ッパ 憲 法 の主 体 は あ くまで も国 家 で あ る とい い、 ヨー ロ ッパ 連 合 は国 家 連 合 に と どま る

と して い る。 それ に 対 して ペ ル ニ ス は 国 家 を超 え て 連 合 市 民 が ヨー 「ロ ッパ 連 合 と結 びつ き、「ヨー ロ ッパ 憲 法 」の主 体 とな っ て い る と主 張 す る点 が 際 立 っ て お り、 報 告 後 の討 論 で も この 点 に批 判 が 集 中 した の で あ る。

「国 家 の 憲 法 」 の概 念 を 超 え て

報 告後 の 討 論 で 最 も議 論 が 集 中 した の は 「ヨ ー ロ ッパ 憲 法 」 の概 念 を め ぐっ て で あ るが 、 概 ね 二 つ の論 点 に整 理 され る。 一 つ 目の 論 点 は憲 法 の い わ ぼ 「 全 性 」 の 概 念 で あ り、 一 の 国 家 の 憲 法 が 有 す る 「完 全 性 」 との 比 較 で あ る が 、 視 点 を変 え れ ば憲 法 と国 家 との 結 び つ きの 問 題 で も あ る。 バ ドゥー ラ は憲 法 と

は 自 由 や 正 義 な どを保 障 す る制 度 を備 え た もの で はな くて はな らな い とす る。

彼 はEUは 一 定 の 機 能 を 有 して い る が 一 の 国 家 の よ う な 完 全 な も の で で は な い 。あ くま で も憲 法 とは 国家 が 主 体 で あ り、 「脱 国 家 」の表 現 は妥 当 で は な い と 主 張 した 。

同 様 に シ ュ ナ イ ダ ー は憲 法 と呼 ぶ に値 す る た め に は ヨー ロ ッパ 連 合 に お い て

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個 人 の 基 本 権 が 保 障 され るだ け で は な く統 治 機 構 に お い て は権 限 が 限 定 され て い る こ と、 す な わ ち、 権 力 分 立 が 確 立 さ れ て い る こ とが 必 要 で あ り、 そ の 点 で EUは 不 十 分 で あ る と した 。そ の 他 に も フ ォ ル ク マ ン は 「連 合 市 民 」 は、加 盟 国 の市 民 間 に法 的 な結 合 を実 現 した こ とを認 め っ つ も社 会 心 理 学 的 に い え ぼ未 だ 共 同 性 を 欠 い て い る と述 べ 、 経 済 的統 合 か ら政 治 的 統 合 に達 して い な い と、 不 十 分 さ主 張 す る。

この よ うに 憲 法 の 「完 全 性 」の 概 念 を根 拠 に 憲 法 と一 の 国 家 を結 び つ け、「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 に消 極 的 な 意 見 が 多 か っ た こ とは確 か で あ る。 しか し、 これ らの 意 見 に 対 して は反 論 が な さ れ た こ と も確 か で あ る。 ラ ンゲ ン フ ェ ル ドは ヨー ロ ッパ 連 合 は一 定 の 目的 の た め に設 立 され た 団 体 以 上 の 存 在 で あ り、 個 人 を直 接 に拘 束 す る もの で あ り、 民 主 的 正 当性 が な い とは い え な い とす る。 そ の 上 で

「ヨ ー ロ ッパ の政 治 的 公 共 性 」、「ヨー ロ ッパ 世 論 」が 成 立 す る 中 で ヨー ロ ッパ 議 会 の権 限 が 増 す こ とを期 待 した こ とは そ の一 例 で あ る。 そ して 、 プ ロイ ス は大 会 で の 多 くの 意 見 が 一 の 国 家 の 憲 法 の 完 全 性(Volistandigkeit)と 閉 鎖 性

(Abgeschlossenheit)の 理 念 に傾 斜 しす ぎ る と批 判 す る。

この 指 摘 は 、 完 全 な基 本 権 保 障 と権 力 分 立 を有 して い な くて も憲 法 と呼 べ る し、 しか も、 一 の 国 家 の憲 法 と並 立 して 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 が 存 在 す る こ との 許 容 性 を含 意 して い る と受 け取 れ る。 彼 は 「ヨ ー ロ ッパ 憲 法 」 の 正 当 化 が 不 十 分 で あ れ ば 、 新 た に ヨー ロ ッパ 人 権 憲 章 を作 成 す る必 要 が あ る と、 前 向 き な議 論 を して い る。 た だ 、 プ ロ イ ス と して も一 挙 に国 家 を超 え るの で は な く、 現 在 の 国 家 の枠 の 中 で 連 合 市 民 の 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 へ の 信 頼 を醸 成 して い くべ き で あ る とは して い る。

これ らの 批 判 に 対 して ペ ル ニ ス は、 各 国 の 憲 法 は 「ヨー ロ ッパ の 屋 根 」 の 下 に あ る。 当 然 、 各 国 で は そ の 国 の 憲 法 が 有 効 で あ る こ とは い う まで もな い が 、 この 屋 根(ヨ ー ロ ッパ 憲 法)と の 共 存 の 多 層 性 をい うので あ る。 そ して 、 リ ュ ベ ー ボ ル フの 指 摘 す る 「民 主 主 義 の 赤 字 」 の 現 状 は否 定 し な い し、 改 善 を 望 む こ とを述 べ た 。 要 す る に彼 は い つ ま で も一 国 の憲 法 の 絶 対 性 に 固執 す る必 要 は な く、 一 国 の 憲 法 と 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 の共 存 を主 張 す るの で あ る。

二 つ 目 の論 点 は 国 民 主 権 の 問 題 で あ り、 憲 法 制 定 権 の 問 題 で あ る 。 ム ー ス ヴ ィ ク は 国 民 主 権 の 主 体 は抽 象 的 、集 合 的存 在 で あ る人 民(dasVolk)で あ っ

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ドイ ツ国法学 の転機 !7

て個 人(dasIndividuurn)で は な く、個 人 は人 民 の 民 主 的 意 思 形 成 に参 加 す る だ け で あ る と主 張 す る。「ヨー ロ ッパ 憲 法 」の制 定 は ヨー ロ ッパ 人 民 の憲 法 制 定 権 に よ らな けれ ば な らず 、現 在 は そ の 基 盤 に 欠 い て い る とペ ル ニ ス を批 判 す る。

この ム ー ス ヴ ィ クの 見 解 に見 られ る よ う に現 在 の 国 法 学 で は 「国 家 の 憲 法 」 は 国 民 主 権 の下 、 抽 象 的 な集 合 と して の 人 民 に よ っ て 憲 法 制 定 が な され た とい う 理 論 的前 提 が あ る。

しか し、 この 場 合 の 憲 法 制 定 権 の行 使 は現 実 に な され た とい う よ りも正 当 性 の根 拠 とな って い る に す ぎ な い と もい え る。 それ は過 去 の 絶 対 王 政 に対 す る対 抗 の イ デ オ ロ ギ ー で あ っ て も、 今 日 もな お 有 用 な もの で あ るか 疑 わ しい の で あ る。か つ て ベ ッケ ン フ ェ ル デ は別 の論 稿 で 憲 法 制 定 権 は君 主 の 支 配 に 対 す る 「 命 的 概 念 」 で あ り、 国 民 主 権 の正 当 性 の 根 拠 とな っ た が 、 それ は正 当 化 の た め の 一 つ の 擬 制(Fiktion)で あ る とい う。そ して 、憲 法 制 定 権 の 根 拠 とな る ナ ツ ィ オ ン(Nation)は 個 々 の 具 体 的 人 間 で あ る とい う よ りも抽 象 的 、集 合 的 に想 定

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され た 人 民 で あ り、 政 治 主 体 で あ る と指 摘 した の で あ る。

この べ ッケ ン フ ェ ル デ の見 解 に は憲 法 制 定 権 を一 定 の 理 念 の 下 に押 し と どめ て い くこ とに批 判 的 視 点 が 見 られ る。 要 す るに 国 民 主 権 の 歴 史 的 な意 味 を認 め た と して も、 既 に 国 民 主 権 が確 立 した後 で は も う少 し柔 軟 に捉 えた 方 が 良 い の で は な い か とい う こ とで あ る。 この 点 、 ム ー ス ヴ ィ ク は伝 統 的 概 念 に立 っ て 人 民 とい う抽 象 的 、 集 合 的 存 在 を正 当 性 の 根 拠 と して い るが 、 それ は国 民 国 家 の 枠 の 中 で の 正 当性 の根 拠 とな っ た と して もEUの よ うな 国 民 国 家 を超 え た 新 た

な事 態 に 対 応 し う る概 念 な の か 問題 は な くは な い の で あ る。

以 上 の二 つ の 論 点 に 関 して大 会 後 に見 られ た 見 解 で 興 味 深 い の は メ ー ラ ー ズ

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の憲 法 の概 念 に関 す る論 文 で あ る。彼 は本 大 会 で の 議 論 の 内容 を射 程 に い れ な が ら、 欧 米 各 国 の 立 憲 主 義 の歴 史 を検 証 した 上 で 次 の よ うに論 じて い る。 す な わ ち 、 歴 史 的 に は憲 法 の概 念 と して は必 ず し も一 つ の 国 家 と結 び っ い た わ けで もな く、 ま た 、 憲 法 の 概 念 にお い て は 国 民 主 権 論 、 国 民 の 憲 法 制 定 権 は 不 可 欠 で は なか った と指 摘 す る。 特 に ドイ ツや イ ギ リス の 歴 史 に お い て は国 家 との 結 び っ きや 国 民 主 権 の 要 素 が な い 場 合 で も憲 法 と呼 ん だ こ とを説 明 して い る。

彼 は フ ラ ンス の 場 合 で は憲 法 の概 念 は 一 つ の 国 家(国 民 国 家)と 国 民 主 権 と 不 可 分 で あ り、 新 た な 社 会 の創 造(人 は生 まれ なが ら に して 自由 か つ 平 等 な社

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会)と 一 体 を な す もの で あ っ た が 、 ドイ ツ に お い て は ワ イ マ ー ル 憲 法 以 前 の 憲 法 は必 ず し も そ うで は な く現 存 の秩 序 を法 化 す るだ け の 場 合 もあ り、 す べ て の 機 能(権 力 分 立 、 人 権 保 障)を 完 全 に備 え た もの で もな く、 また 、 国 家 と結 び つ い た もの で は な か っ た こ とを歴 史 的 に論 証 す る。 これ ら を総 括 した 上 でEU

憲 法 」 を 有 して い るか ど うか の 判 断 も この よ うな概 念 規 定 の 方 法 に よ る と 議 論 を整 理 して い る。 要 す る に、 憲 法 の完 全 性 、 憲 法 と国家 との 結 び っ き、 国

民 主 権 論 が 欠 如 して も憲 法 と呼 ぶ こ とは不 可 能 で は な い こ とを 示 唆 して い る の で あ る。

これ まで 「憲 法 」 の概 念 は 当 然 の こ と と して 「国 家 」 と結 び つ け られ て きた 。 そ の場 合 の 国 家 の 主 権 とは三 っ の概 念 が 含 まれ て い る とされ る。す な わ ち 、(イ) 国 家 の 統 治 権 、(ロ)最 高 独 立 性(対 外 的 独 立 性)、 い)最 高 決 定 権(国 民 主 権)

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とか らな る とされ て い るの で あ る。しか し、EUの 展 開 で 見 られ る新 た な事 態 は この 三 つ の概 念 を̲̲̲̲つの 国 家 に収 め る こ とが 不 可 能 に して きて い るの で あ る。

なぜ な ら統 治 権 にっ い て い え ば 、司 法 、立 法 の分 野 で 既 にEUは 国 家 の 枠 を超 え て お り、 この 結 果 、 対 外 的独 立 性 も完 全 とは い え な い の で あ る。

国 民 主 権 に 関 して い え ば 、 そ もそ も今 日、 主 権 の 問 題 を あ え て を論 じ る こ と は歴 史 的 な 意 味 が あ る とは思 え な い 。 む しろ、 憲 法 典 の 記 され て い る 内容(憲

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法 の 機 能)の 方 が 重 要 で は な い か と も考 え られ る。 あ えて 、 主 権 を 論 じた と し て も一 国 の枠 の 中 に収 め る こ とが 絶 対 的 に必 要 で あ るか 疑 わ しい 。 要 す る に こ れ ら三 つ の 主 権 概 念 を一 つ の 国 家 の枠 に収 め きれ な い の で あ れ ぼ、 憲 法 を 国家 の結 び つ け る こ とは も ち ろ ん、 逆 にEUに 限定 す る とい う、 二 者 択 一 で は な く、

フー バ ー や ベ ル ニ ス の よ うに両 者 の 並 存 を見 据 え る こ とは必 要 で は な い か 。 た だ 、 それ に して も 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 を正 当 化 す る具 体 的 手 続 き は 不 十 分 で あ る こ とは 否 定 で きず 、 そ の こ とが 「ヨー ロ ッパ 憲 法 」 へ の た め らい を生 ん で い る の で あ る。 各 国 の憲 法 の 場 合 は一 応 、 制 定 に 際 して 憲 法 制 定 会 議 、 も し くは 国 民 投 票 等 の 手 続 きが 踏 まれ て い る。しか し、ヨー ロ ッパ 連 合 の 場 合 は マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 が 各 国 に よ っ て 批 准 され 、 そ の後 も幾 つ か の修 正 が な され て 統 合 が 進 ん で い る とは い え 、 憲 法 制 定 行 為 とい う明 確 な意 識 は強 固 で は な い 。 そ れ ゆ え に ペ ル ニ ス の い う 「社 会 契 約 」論 も また フ ィ ク シ ョン性 を ま ぬ が れ な い 。

また 、 大 会 報 告 と質 疑 応 答 の 中 で 繰 り返 し確 認 され た 民 主 主 義 の 赤 字 」 論 は

参照

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