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1/2 (中央大学論文審査報告書)

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Academic year: 2021

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1/2 (中央大学論文審査報告書)

Analytical Study on the Wave Scattering by Canonical Two-Dimensional Obstacles 長坂 崇史

論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨

電磁波、弾性波、音波など、波動の散乱・回折問題に関する理論解析は、これまで数多く の研究者により、種々の物体について波動論の立場から行われてきた。波動方程式で記述さ れる境界値問題は一般にGreenの公式を用いて積分方程式に帰着されるため、積分方程式論 が散乱・回折理論の発展に果たした役割は極めて大きい。Wiener とHopfは1931年、ある 種の特異積分方程式が複素 Fourier 変換と関数論の応用によって厳密に解きうることを示 した。この積分方程式、及び彼らの確立した解法理論は、それぞれWiener-Hopf型積分方程 式、Wiener-Hopf 法と呼ばれ、散乱・回折理論の進歩に重要な寄与を与えた。Wiener-Hopf 法は、Copson とSchwingerによって初めて波動散乱問題に応用され、両者は全く独立に、

有名な「Sommerfeldの半平面問題」をWiener-Hopf法によって解析し、Sommerfeldが得た 厳密解と同一の結果を得た。その後、数多くの研究者が、規範形状をもつ2次元・3次元物 体による波動散乱問題をWiener-Hopf法により解析し、散乱・回折理論は輝かしい進歩を遂

げた。Wiener-Hopf法は波動散乱問題に対する有力な厳密解法として知られており、現在で

も多くの論文が発表され、Wiener-Hopf法に基づく解法理論は発展を続けている。

本研究はWiener-Hopf法が適用可能な散乱・回折問題のクラスを拡張することを目的とし

ており、レーダが対象とする物体の代表的な例として媒質ストリップを取り上げ、近似境界

条件とWiener-Hopf法を応用して平面電磁波の散乱問題を解析している。特に、著者は本研

究において厳密な漸近解法理論を確立し、これに基づいてストリップの幅が波長程度以上で あれば一様に有効となる新しい高周波漸近解を得ている。

第1章は序論であり、波動散乱・回折問題におけるWiener-Hopf法の重要性、本研究の意 義、本論文の構成について述べている。

第2章では、誘電率、透磁率がスカラー任意定数で記述される薄い媒質ストリップによる 平面電磁波の回折問題を、H波入射の場合について、Wiener-Hopf法と近似境界条件を併用 した手法を用いて解析している。この問題は過去において、近似境界条件、角スペクトル法、

拡張スペクトル光線法を併用した方法に基づき、Volakis氏によって解かれている。しかし 同氏の解析は、対向する二つの薄い半無限媒質スラブによる散乱界の重ね合わせに基づいて ストリップによる散乱界を導いているため、境界値問題の観点から厳密性に乏しい。更に、

Volakis氏の解はストリップ幅が数波長以上の場合にのみ精度が保証されるものであり、周

波数に関する適用範囲が狭いという難点を持っている。著者はVolakis氏の解が持つこれら の問題点を解決することを目的とし、Wiener-Hopf法に基づく新しい解法理論を提案してい

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る。ストリップの厚みが波長に比べて小さいという仮定の下でSenior-Volakisの近似境界 条件を適用し、問題を厚みゼロのストリップによる回折問題に置き換えている。この近似境 界条件は媒質の複素屈折率の絶対値があまり大きくない場合に有効である。未知の散乱界の

Fourier変換を導入し、Fourier変換領域で放射条件と近似境界条件を適用することによっ

て、問題を未知スペクトル関数の満足する Wiener-Hopf 方程式として定式化している。

Wiener-Hopf方程式に現れる核関数を積形式に分解し、次いで和形式の分解操作と端点条件

を適用することによって厳密解を得ている。しかし、この解には未知関数を被積分項に持つ 無限積分が含まれているため、形式解に過ぎない。著者は、ストリップ幅が波長に比べて大 きいという条件下で無限積分に漸近展開を施し、Wiener-Hopf方程式に対する高周波漸近解 を厳密に導出している。著者が得たこの漸近解はストリップの両端による多重回折の効果を 厳密に考慮しているため、ストリップ幅が波長程度以上であれば一様に有効である。得られ

た結果にFourier逆変換を施すことにより、実空間における散乱界の漸近表現を導出してい

る。この解析結果に基づいてレーダ断面積に関する数値計算を行い、ストリップの遠方散乱 特性を詳細に考察している。以上の解析は複素屈折率の絶対値があまり大きくない場合に有 効である。著者は更に、同じ回折問題に対し、複素屈折率の絶対値が大きい場合に有効とな るBleszynski-Bleszynski-Jaroszewiczの近似境界条件を適用し、Wiener-Hopf法による解 析を行った。2つの異なる近似境界条件に基づく解の精度を検証するとともに、Volakisの 解との比較を行い、本解析の有効性を実証している。

第3章では、第2章で取り上げた形状と同一の媒質ストリップによる平面電磁波の回折問 題を、E波入射の場合に関し、2つの異なる近似境界条件とWiener-Hopf法を併用した手法 により解析している。第2章と同様、近似境界条件を用いて問題を厚みゼロのストリップに 置き換え、Wiener-Hopf法により解析している。問題を散乱界が満足するWiener-Hopf方程 式として定式化し、これに積形式・和形式の分解操作を施すことによって、厳密解及び高周 波漸近解を得ている。これらの結果に基づいてレーダ断面積に関する数値計算を行い、スト リップの遠方散乱特性を詳細に考察している。また、第2章におけるH波の解析結果と比較 することにより、偏波の違いが散乱特性に与える影響に関し、詳細な考察を与えている。

第4章は結論であり、本研究において得られた成果の総括を行っている。

過去においてWiener-Hopf法を応用して解かれた有限幅物体による散乱・回折問題の中で、

多重回折を厳密に考慮した解析はほとんど存在しない。その意味で、本研究で著者が確立し た新しい漸近解法理論はWiener-Hopf法が適用可能な問題のクラスを拡張するものであり、

高く評価される。

以上の研究成果は電磁界理論、電波工学に関する研究分野に新しい見地から重要な寄与を 与えるものであり、工学上の貢献度は高いと言える。よって、著者は博士(工学)の学位を 授与される資格が十分にあるものと認める。

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