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Basic Study of the Influence on the Fluorescence Lifetime by the Strain

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Academic year: 2021

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(1)

ひずみが蛍光寿命に及ぼす影響に関する基礎研究

Basic Study of the Influence on the Fluorescence Lifetime by the Strain

精密工学専攻 8 号 今井昂 Akira Imai

1. 緒言

応力やひずみの解析は製造業や建設業だけでなく,あらゆる 分野において,不可欠なものとなっている.現在,この応力や ひずみの解析法として有限要素法などの数値解析法が,コンピ ュータの進歩にともない急成長している.しかし,数値解析法 だけでは不十分であり,実験的な解析法は欠かすことができな い.この実験的な解析方法に現在最も一般的に用いられている 方法は,被測定物に直接ひずみゲージを貼り付ける接触式の方 法である.しかし,このひずみゲージを用いた接触式の方法に は,ひずみゲージを取り付ける手間やゲージからの配線処理,

測定範囲の小型化の限界などの欠点が存在する.

本研究ではこれらの問題点を解決するために,非接触の応力 測定方法の一つの可能性として,蛍光現象に注目する.蛍光物 質を含むアクリル板からなる試験片を作成し,一軸応力を段階 的に変化させ加えながらレーザー光を照射することにより蛍光 を発光させる.その発光の様子が応力によりどのように変化す るかを調べ,蛍光現象を利用した応力測定法を考察する.特に,

蛍光の時間に対する減衰の早さを示す蛍光寿命と,ひずみの関 係について検討する.

2. 原理

2.1 蛍光現象

蛍光現象とは蛍光物質が電磁波や熱,摩擦などによりエネル ギーを受け取り励起され,そのエネルギーを特定波長の光とし て放出する発光現象である.本研究では,レーザー光を照射す る事で励起エネルギーを加えた.レーザー光の吸収から蛍光発 光までのプロセスを

Fig.1

に示す.レーザー光のエネルギーはま ず吸収過程において,基底状態のエネルギーを高次の励起状態 に上昇させるのに使われる.次に,分子内振動によりエネルギ ーが減少し,安定な励起状態となる.そして,最低次の励起状 態から基底状態に落ちる際に,エネルギーが蛍光として放出さ れる

(1)

2.2 ひずみによる蛍光の変化

ひずみが生じると電子エネルギーバンドに変化が生じる.変 形によってシフトしたり分裂したりしたエネルギーバンドの組 み合わせ毎に,異なった励起子状態が作られる.そして,ひず みの効果により準粒子の移動が起き,発光効率が変化し,蛍光

の特性が変化する可能性がある.蛍光強度

F( t )

の時間に対する 減衰の式は次式となる

(2)

) exp(

)

( t F

0

t τ

F = −

(1)

F 0

は励起停止前の発光強度,

t

は時間,

τ

は蛍光寿命を示す.本研 究では,この蛍光の時間減衰に関するパラメーターである蛍光 寿命τに特に注目し,応力によって変化するかを求める.

Ground state

State of excitation of higher - order State of excitation of the lowest - order

Ground state

Excitation light energy

Thermal energy from intramolecular vibration Energy of fluorescence

Thermal energy from intramolecular vibration

Fig.1 The luminescence process.

3. 実験装置

3.1 全体の構成

Fig.2

に本実験装置の概略を示す.半導体レーザーを用いた励

起レーザーから出力された光は,集光レンズにより細いビーム 状に変換され,ピンホールを通り試験片に投射され,蛍光物質 を励起させる.試験片には,引張試験機を用いてひずみが加え られる.蛍光を含む試験片から発せられる光のうち,光学フィ ルタを通過できる波長のものが,バンドルファイバを通してス トリークカメラに入る.バンドルファイバとは光ファイバを束 にしたもので,試験片側の先端に取り付けられた集光レンズに より,効率よく光を集め,ストリークカメラに送ることができ る.ストリークカメラへ入った光は増幅され,光電面に入射し たときの状態が映像のデータとしてモニターに写され,縦軸に 時間,横軸を空間軸とするストリーク像として写し出される.

このストリーク像を動画としてコンバータを通してパソコンに 取り込み,画像処理を行うことで時間に対する蛍光強度の分布 を作成する.

(2)

Fig.2 The outline of the experimental equipment.

3.2 励起レーザー

励起レーザーには,浜松ホトニクス製ピコ秒ライトパルサ

PLP-10

を使用した.波長は

439nm,パルス幅 79 ps,最大ピー

ク出力

111 mW

である.周波数は

100mHz~10MHz

であるが,

組み合わせるストリークカメラの周波数の上限が

2MHz

である ため,本研究では

2MHz

で使用した.

3.3 試験片

蛍光物質を含むアクリル板(三菱レイヨン株式会社製アクリ サンデー板

993

)を直方体に加工し,試験片として使用した.

試験片形状を

Table.1

に示す.試験片に使用されている蛍光物質 を製造元に確認したところ,企業秘密として回答を得られなか ったが,現在使用している励起レーザーの波長で良く励起され,

解析に十分な量の蛍光を発生させることができている.

次に,試験片の応力-ひずみ線図を

Fig.3

に示す.この図から,

この試験片はひずみが約

1.6%

までほぼ線形に変形することが わかる.

Table.1 Dimension of test pieces.

test length[mm] width[mm] thickness[mm]

tensile test 80 15 3

bend test 180 26 3

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45

0. 000 0. 003 0. 007 0. 010 0. 013 0. 016 0. 020 0. 023 0. 026 0. 029

Strain mm/mm

St re ss M P a

Fig. 3 The strain-stress diagram of the test piece.

3.4 光学フィルタ

透過限界波長

480nm

の光学フィルタ(シグマ光機製シャープ カットフィルタ)を用いた.このフィルタにより,波長

480nm

以下の光を遮断することができる.

Fig.4

に分光器を用いて測定 した,励起レーザーと励起レーザーを照射した際の試験片から の光の波長特性を示す.この図の縦軸は,一分間あたりに捉え た光子の数である.光学フィルタを 用いることで,励起レーザ ーの大部分をカットし,蛍光を効率的に測定できる.

0 5000 10000 15000 20000 25000

350 400 450 500 550 600 650

Wavelength nm

Ph oto n co un ts

Laser beam

Light from the test piece Laser Controller

Delay Unite Streak Camera Controller

Computer Streak Camera

Pinhole φ 1

Load Equipment

Wave Cutoff Filter Fiberscope

Condenser Laser Head

Test Piece 45°

Pulse Laser Beam

Fig.4 Wavelength characteristics of the excitation laser and the light from test piece.

3.5 ストリークカメラ

蛍光の測定には浜松ホトニクス製ストリークスコープ

C4332

を用いた.動作原理の概略図を

Fig.5

に示す.スリットを通り,

光電面上に入射した光子は,入射した光子数に比例した数の光 電子に変換される.これらの光電子は加速電極によりマイクロ チャンネルプレート(MCP)方向へと加速される.ここで,光 電子は掃引電極の間を通過する際に,軌道を上から下へ掃引さ れる.掃引された光電子は,

MCP

により電子倍増され,蛍光面 で光学像に変換され,映像データとして出力される.これをス トリーク像と呼ぶ

(3)

.ストリーク像をFig.6に示す.ストリーク 像に映し出された白い点一つ一つが捉えた光子に対応する.こ のようにして,光子が光電面に到達した時刻とその強度とをス トリーク像の位置および輝度により表すことができる.

このカメラは,

15ps

以内の時間分解能を持ち,掃引の繰り返 し周波数が単発~2MHz で可能である.今回は,最大周波数で ある

2MHz

で測定した.また,MCPによる電子倍増ゲインは

1

15

,掃引時間は

1ns

10ms

で調整可能である.

Slit

Photoelectron surface (Photon→Electron)

Lens

Accelerating electrode (Accelerate electrons)

MCP (Increase electrons) Trigger signal

Sweep circuit Sweep electrode (Sweep electrons)

Streak image Time Phosphor screen (Electron→Photon)

Photon

Electron

Fig.5 The work theory of a streak scope.

(3)

Fig.6 Streak image.

3.6 解析プログラム

Fig.6

に示したストリーク像を解析用プログラムを用いて解析

し,蛍光の時間減衰を求める.具体的な解析法としては,映像 として記録されているストリーク像を一フレームずつ,各座標 の輝度を読み取ることで光子の位置を調べ,時間毎に光子数を 積算する.それを所定のフレーム数繰り返すことで,光子数の 時間変化,即ち蛍光の時間減衰曲線が得られる.この減衰曲線 から蛍光寿命を測定する.

4. 実験結果

4.1 引張試験での蛍光寿命比較:掃引時間 20ns

引張試験機を用いて試験片に

0.0%~0.6%の間で 0.05%ずつ増

加させながら蛍光の測定を行なった.掃引時間は

20ns, MCP

インは

11

,各測定時における録画時間は

2

分間で

3000

フレーム の画像を解析した.その結果得られた蛍光の時間変化のグラフ,

いわゆる減衰曲線の一例を

Fig.7

に示す.減衰曲線の傾きを最小 二乗法により求め,式(1)を用いて蛍光寿命

τ

を計算する.減衰 曲線はFig.7のように途中ほぼ水平になっている部分があるもの もあれば,直線的に減衰しているものもあった.最小二乗法を 当てはめる範囲は,各減衰曲線で光子数の最大値と立ち上がり の中間を時間

0

とした上で,時間が

15ns

を超えるとばらつきが 大きくなることを考慮し,0.75nsから

10ns

後までとした.ひず みと蛍光寿命の関係を

Fig.8

に示す.ひずみ

0.35%程度までは,

ひずみの増加に伴い蛍光寿命が減少しているように思われる.

その後は,逆にひずみの増加に伴い蛍光寿命が増加しているよ うに思われる.

1 10 100 1000

0 5 10 15 20

Time ns

Ph ot on C ou nt s

Fig.7 The time dependence of the number of photon (sweep time 20ns)

5.85 5.9 5.95 6 6.05 6.1 6.15 6.2 6.25 6.3

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

Strain %

Fluorescence Lifetime ns

The direc ti on of ti m e pr og re ss io n Sweep tim e (1ns ~ 10 m s)

Fig.8 The relationship between the fluorescence lifetime and the strain in the tensile test (sweep time 20ns)

4.2 引張試験での蛍光寿命比較:掃引時間 5ns

励起直後の,蛍光強度の強い範囲をより強調して測定するた め,ストリークカメラの掃引時間を

5ns

にして,蛍光を測定し た.

20ns

の試験と同様,

MCP

ゲインは

11

3000

フレームを解 析した.得られた減衰曲線の一例を

Fig.9

に示す.蛍光寿命を求 める計算範囲は,20nsの試験と同様,立ち上がりと光子数の最 大値の中間を時間

0

とした上で,

0.25ns

から

2.5ns

までとした.

ひずみと蛍光寿命の関係を

Fig.10

に示す.ひずみ

0.3%

程度まで はひずみの増加に伴い蛍光寿命が減少する傾向が見られた.

1 10 100 1000 10000

0 1 2 3 4 5

Time ns

P hot on Count s

Fig.9 The time dependence of the number of photon (sweep time 5ns)

2.65 2.7 2.75 2.8 2.85 2.9 2.95 3

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

Strain %

F luoresc enc e Li fet im e ns

Average Test1 Test2

Fig.10 The relationship between the fluorescence lifetime and the

strain in the tensile test (sweep time 5ns)

(4)

4.3 曲げ試験での蛍光寿命比較

試験片の上に重りを乗せ

4

点曲げ試験を行い,試験片の各位 置で蛍光を計測した.試験の概略図を

Fig.11

に示す.また,同 じ条件の試験を有限要素法ソフト

ANSYS

で解析した結果を

Fig.12

に示す.試験は

MCP

ゲインを

10

とし,掃引時間

20ns

はレーザー照射位置を

1mm

ずつずらし

1500

フレーム解析し,

掃引時間

5ns

ではレーザー照射位置を

2mm

ずつずらし

3000

レームを解析した.蛍光寿命の計算範囲は,引張試験の掃引時

5ns

と同様,減衰曲線の立ち上がりと光子数の最大値の中間 を時間

0

とした上で

0.25ns

から

2.5ns

とした.梁の曲げモーメ ントを

M

,弾性係数を

E

,断面二次モーメントを

I

とすると,

中立軸からの距離

y

とひずみεには,

ε = My EI

の関係がある.

この関係を基に求めたひずみと蛍光寿命の関係を

Fig.13

に示す.

引張側,圧縮側共に外側の応力が大きくなる部分で蛍光寿命が 小さくなった.また,中立軸付近の,応力の小さい範囲はほと んど差がなかった.両試験で得られたひずみと蛍光寿命の関係

Fig.15

に示す(両試験のひずみのオーダーの都合上,横軸を

対数にしてある)

Fig.11 The outline of the bend test

Fig.12 The analysis result of stress distribution of the bend test

2.05 2.1 2.15 2.2 2.25 2.3 2.35 2.4 2.45 2.5 2.55

-0.003 -0.002 -0.001 0 0.001 0.002 0.003

Strain %

Fluor escence Lifeti me ns

Fig.13 The relationship between the fluorescence lifetime and the strain in the bend test (sweep time 20ns)

1.8 1.85 1.9 1.95 2 2.05 2.1 2.15 2.2

-0.003 -0.002 -0.001 0 0.001 0.002 0.003

Strain %

F luor esce nce L ife ti me ns

Fig.14 The relationship between the fluorescence lifetime and the strain in the bend test (sweep time 5ns)

1.8 1.85 1.9 1.95 2 2.05 2.1 2.15

0.0001 0.001 0.01 0.1 1

Strain %

Fluores cence L ifet ime ns

Fig.15 The relationship between the fluorescence lifetime and the strain

5. 結言と展望

蛍光物質を含んだアクリル板の試験片を用いて引張試験,曲 げ試験を行いながら蛍光を測定したところ,引張試験ではひず

0.3%程度までは,ひずみの増加に伴い蛍光寿命が減少する傾

向が見られた.曲げ試験では,中立軸付近は蛍光寿命が大きく,

外側は蛍光寿命が小さい傾向が見られた.また,非常に小さい ひずみの範囲で蛍光寿命が変化しやすい可能性が示唆された.

今後は,励起レーザーの光の時間分布の影響を考慮するデコ ンボリューション作業での精度向上,引張試験と曲げ試験で同 等のひずみを与えての相関性の確認等を行いたい.

6. 参考文献

(1)

蛍光体同好会,蛍光体ハンドブック,オーム社,東京

(1987) p.370

(2)

木下一彦,御橋廣眞,蛍光測定 生物科学への応用,

学会出版センター,東京

(1983) p.2-5

(3)

浜松ホトニクス,ストリークカメラハンドブック

p3-4

Fig. 3 The strain-stress diagram of the test piece.

参照

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