概念依存表現からの日本語文の生成
(昭和57年10月29日 原稿受付)
徳 山 高 専 重 永 幸
情報工学教室松尾豊文 情報工学教室安在弘幸
Japanese Sentence Generation from
Conceptual Dependency Representationby Miyuki SHIGENAGA
Toyofumi MATSUO Hiroyuki ANZAI
Abstract
The problems of natural language processing have been important in accordance with the development of computer technology. One of them is how to synthesize sentences as surface
structures from given semantic structures.
This paper presents a method to generate Japanese sentences from Schank s Conceptual Dependency Representation, and shows an experimental system implem≧nting the method.
Here, the choice of verbs, the management of sentence modification and the composition of
predicate paragraphs are mainly treated. Sentences generated by our system were syntactically and semanticaIly natural as partly shown here.
1.まえがき ムなどがある力職々}ま表層文融立であるという特徴
からSchankの概念依存(Conceptual Dependency:
近年,ワードプロセッサの開発にみられるように,日 CD)理論5)を用いた。これまでにCD理論を用いた文生 本語情報処理に対する期待と関心がますます高まってき 成システムとしてGoldman2}〜4)の英文を対象に行った ている。このように,日常使っている形で情報を直接に ものがあるが,我々は日本語文を対象にしてシステムを 計算機に入力し,処理し,そして出力することは,計算 作成した。
機の技術開発の進歩と相まって,十分に実現しうる時期 本稿では,2章でCD表現(CD理論による表現形式)
に来ている。 から日本語文を生成する原理について説明を行い、3章 しかしそのためには,知識を取得・保有し,かつユー でこの原理に基づいて作成された我々のシステムについ
ザの問題解決に役立つような知識型システムを実現して て述べる。そして4章でこのシステムで生成された日本 いかなければならない。そこには知識表現の形式,知的 語文とその生成過程の例を示す。
データベースの設計および談話システム作成などといっ
2.本システムの概念 た種々の問題があると}
我々はその第一段階として,既に何らかの形式で計算 本章では,まずCD表現にっいて説明し,次にそれか 機上に実現されていると仮定した知識構造から文を生成 ら生成される日本語を不自然さを感じさせない程度に限 する過程を計算機でシミュレートした。知識表現の形式 定した文法を示す。そして最後に生成システムの設計方 としては,セマンティック・ネットや述語論理,フレー 針について述べる。
2.1.CD表現 てできた並びをXゴ(D…X,㈲…Xゴ(。)(1≦ブω≦η)とす CD表現の特徴は全ての動作を11の基本的な行為 ると∫(〃−1)<元(〃)でなければならない。
(primitive ACT)の組合せによって表現するところに Cαs(α1,α、)は助詞α2を助詞α1に変更する操作を表 ある。ここでは自然言語に独立であること,すなわちど わす。
の言語の意味内容を表わしても,同じ内容のものは同じ Mみ(2)は〔」Vl…∧π一1,」V、,1V、.1,…2V。〕を〔2Vl…
表現として得られることを志向している。また格 2V日,凡.1,…1V。〕に変える操作を表わす。
(CASE)の導入によって複雑な概念関係の表現も可能 2.3. 生成システムの設計の方針
にしている。CD表現の表現形式をそれぞれ図一1のように 日本語文の生成において,本システムが主点を置いた 与える。 事項は,日本語文の係り受けの取扱い,CD表現からの動 なお,図的表現としてのCD表現は計算機に入力され 詞の選択および述語文節の合成である。
るときは,記号列言語表現であるリスト表現で表わされ 一般に,日本語文には次の性質がある乙)ω同一文中の る。 複数の係り受けは交差しない,㈲文末にない文節はその 2.2. 日本語文表現 右側のいずれかの文節に係る。この性質は,上述のCD 本システムで扱う日本語文を次のように規定する9) 表現のリスト表現への変換の際,また,計算機内での処
〈文〉::=〈格要素の並び〉〈述語文節〉 理の際にも利用される。
〈格要素の並び〉::=〔2V1…2V、…」V。〕 文の生成は次の手順で行われる。
(2V は格要素) Step 1 時制概念を抽出する。
〈格要素〉::=〈名詞〉〈助詞>1〈節〉<格要素> Step 2 動詞辞書を用いて動詞を選択する。
〈節〉::=〈形容詞節>1〈名詞節>1<副詞節> Step 3 構文情報を用いて概念を表わす単語間に
〈形容詞節〉::=Cα.(が,は)(ルfガω(文)) 関係を与える。
( は格要素の並びの中でこの節が占める位置 Step 4 格要素並びを合成する。
を示す) Step 5 叙述情報により述語文節を合成し, Step 〈名詞節〉::=Cas(が,は)(〈文〉) 4までに合成した部分と連接する。
〈述語文節〉::=〈語幹〉〔Pl…P、…P、〕 Step 1から5までの手続きによって単文の生成を行 (P、は付属語) う。
〈語幹〉::=〈動詞の語幹>1<形容詞の語幹>1〈形 Step 3では連体修飾関係の処理を行う。たとえば「私 容動詞の語幹〉 のケーキ」という係り受けの関係を合成する過程は次の 君::=〈可能>1〈否定>1〈時制>1〈疑問> 1〈叙 ようになる。
述形式〉 (1) 「#は私のだ」という文を生成する。
なお,〔Xl…X、…X。〕はその中から任意の要素X,(1 (2)ル1〃(#),〃ガ(だ)により「私の」に変え
≦i≦η)を取って並べることを示す。ただし,それによっ る。
概念 CD表現 表 現 例 日 本 語 文
事象概念 行為主⇔根元的行為 一……
虫ア=←〔㍍ tl tl now
ジョンはトムに本をあ ーた
様相度合
T 念 概念⇔様相(値) Tom⇔MENTAL−STATE(5) トムは幸せだ 関係概念 概念⇔関係(概創
hand(㊤>PART(Tom)
トムの手 様相変化T 念 概念{欝嬬 }〔1:隠蕊;ll, トムは悲しかった
時制概念 時間関係,基底時点との関係 一一 一→一一一十一
狽Q tl tl now t1:過去
狽Q:過去
図一1 概念依存表現
(3)cakeを連接し「私のケーキ」を合成する。 定および可能を考える。統語上連接する助詞はCD表現 様相度合概念もほぼ同様な処理を行うが,生成する形 と日本語文の格との対応を考えて表一1のようにする。
容詞あるいは形容動詞によって語尾変化が異なる。たと 表一1 CD表現上で位置 えば,活用1:幸せ+な+少女,活用2:灰色+の+空,
活用3:悲し+い+少年および活用4:いらいら+して いた+少年,となるため,どの活用をするのかという情 報は様相度合辞書に蓄える。ただし活用4の場合には活 用は時制によっても変わるので活用形自身が蓄えられ
る。(図一8参照)
本システムではCD表現から直接日本語文を生成する
方法をとるが両者のア応を考えた場竺こ・竜問題と 3.実験システムの実際
なるのはStep 2の動詞の選択をどう行うかである。
我々は,あらかじめ動詞の定義特性をあいまいさがない 本章では,前述の設計方針に基づいて作成したシステ ように注意しながらCD表現で表わし,入力したCD表 ムについて,その詳細を述べる。3.1節でCD表現の内部 現とそれとのマッチングをとって動詞を選択する方法を 表現について,3.2節で辞書について述べ、3.3節で生成 採った。たとえば「投げる」という動詞の定義時性は「 システムについて説明する。
XがyPに力を作用してYの所有をXからZへ変える」 3.1. CD表現の内部表現
と表わされる。これをCD表現で表わすと図一2(a)のよう CD表現を本システムへ入力するためには,既に述べ になる。ここでわかるように,概念には表層文として現 たように,計算機で処理しやすい入力形式,すなわちり われるものと現われないものとがある。 スト表現に変換しなければならない。CD表現で用いら 述部を合成するアスペクトとしては,時制,疑問,否 れる記号は図一3に示すキーワードに置き換えられ,さら に図一4に示すBNFに従う入力形式に書き換えられる。
一一一躍工曜1璽覧i議竃1竃轍麸
一己 う意味をCD表現で表わすと図一5(・)のようになり,それ (a) 投げる x z は図.5(b)の入力形式に変換される。本システムではこの
一一ヰユ 作i難i二辞___詞.
エ ヒ
ュ 書および様相度合辞書を参照しながら文生成を行う。
(、)・殴る〃 XY 名詞轄は図一6に示す髄を持つ・これは・嬬で表
一一・』一一Y躍 ㌶㌫鷺:罐翻』嶽灘
(。)・あげる の意味は次のとおりである。
一一工一玉 1:耀㌻欝りうる・
(d) 泣く
・⇔・・GES一』〔㍗h l:lll;:1㌶ll驚念
(e) 食べる G:INGESTの対象として気体である。
E:EXPELの対象となりうる。
基 本 格 位 置 助詞
動作主体
ACTORbONCEPT
は
動作・作用の及ぶ対象
OBJECTを
動作・作用の相手または動作・位置の終点
TO に
動作・作用・位置の起点
FROM から図一2 動詞のCD表現 (脚注)これはLISPのa−listに当る。
M:MOVEの対象になりうることを示す。次の欄 TIME t2))
の数字は身体の一部であるこ.とを示す。 下線(1)で「いらいらしていたジョン」という名詞句が D:場所である。 生成され,下線(2)で「ジョンのこぶし」が生成される。
これらは意味的に不自然でない文を生成するための情 次に下線(3)を見るが,これはINSTRの属性値になって 報として用いる。 いるので文を生成せず道具格用のスタックに退避しておく。
動詞辞書の構造を図一7に示す。Keyの欄は格情報,行 一番外側の概念情報は事象概念(TYPE=perform)
為主および対象の性質,概念構造の型などの情報を持ち だからここで動詞の選択を行う。属性の並びを調べて表 動詞を選択する際のキーとなる。各カラムに書かれてい 一2に従って〈P.61P++IMO214+++〉というキーを作る。
る記号の意味は表一2に示す。 このキーによって動詞辞書を引き同一の構造を持つ動詞 次に,動詞選択のアルゴリズムを次のCD表現(リス 「殴る」を得る。
ト表現)を例にとって説明する。 図一8に様相度合辞書の構造を示す。MENTS(mental ((TIMERELT t1−t2 BASETIME t2−now)(AC・ state)やSIZEなどの様相に対して各値に適当と思われ
TOR John(⊆Ω一L△丁旦旦 る形容詞あるいは形容動詞を対応させる。これらは日本
(ll
ments VAL−7 TIME t1)TYPE perform ACT 語文で連体修飾関係を表わす場合と述語文節を合成する
prope10BJECT fist(CΩ一 場合に用いる。活用の種類としては連体形が「な」のも
(2)
RELT part OBJECT John)DIRECT−F John TO のを1,「の」を2,「い」を3,その他を4とする。
Tom INSTR(ACTOR John TYPE perform ACT 3.3. 日本語文生成アルゴリズム (3)
move OBJECT fist DIRECT−F John TO Tom) 本システムは図一9に示すように,あらかじめ準備され た辞書類と入力であるCD表現,そして時制処理ルーチ ンと文生成ルーチンより成る。
最初の時制処理ルーチンでは,入力したCD表現から 時制概念を抽出し,各事象発生点に時制を与える。この 時制情報を得るために基本時点(BASETIME),基本時 制(BASETENSE),新時点(NEWTIME)および新時 制(NEWTENSE)の4つの変数を導入する。その処理 アルゴリズムを次に示す。
Step l 基底時点(now)より基本時点に基本時制 を与える。
Step 2 時制情報を求めるべき時制表示点を新時 点とする。
Step 3 新時点の時制(新時制)を時間関係より求 める。
Step 4 この新時制と基本時制の連接により時制 情報表(表一3参照)から時制を求め,新た にこの時制を基本時制とする。
Step 5 さらに時制を求めるべき時制表示点があ ればStep 3へ行く。
たとえば(TIMERELT t1−t2 BASETIME t1−
(1)「一一一2)
哩)という時制概念は次のように処理される。
Step 1 (2)より基本時点t1に基本時制PASTが 与えられる。
図一3 CD表現と属性 Step 2 (1)を処理する。Step 1でt1には既に時制
Key word
CD表現またはそれに対応した意味
ACTOR 行為主ACT 根元的行為
OBJECT 《』_対象
DIRECT−F
@TO
叱RECEIP−F
@TO
工NSTR 滉工TYPEoERFORM
̀TTRIB uARY
概念単位の種類
@ ⇔
@ ⇔
CONCEPT 概 念 PEIT 関 係 ATRB 様 相
VAL 値
TO(VALUE l
eROM(VALUE) ←{こ8
MODE
テ/
法 疑 問
@可 能@否 定 TIMEsIMERELT
aASETIME
事象発生時点 條ヤ関係
賴齊條ヤとの関係
{ )
概念単位CONJTYPE
@r@R
@E@ROTAT
結果因果関係の種類
@ w。
@ 介R
@ 介E
@ 卿
X 未知の行為主
Y, Z
場所を表わす未知概念
〈概念依存表現〉::=((〈時制概念〉) (〈概念情報〉))
〈時制概念〉::=TIMERELT<tlmerelt> BASETIME<ba8θtime>
〈概念情報〉::=<様相概念>1<様相変化概念>1〈事象概念〉
〈様相概念〉:::=<様相度合概念 >1〈関係概念〉
〈様相度合概念 〉::=CONCEPT<埋込み概念> TYPE attrlb ATRB<atrb>
VAL<▽a1> {MODE ?}{TIME<time>}
〈関係概念〉::=CONCEPT<埋込み概念> TYPE attrlb RELT<relt>
OBJECT <paraロ6tgr> {MODE ?}{TIME<tim6>}
〈様相変化概念 〉::=CONCEPT<埋込み概念> TYPE vary ATRB<atrb>
FROM (VALUE〈key×va]じ〉) 「TO(VAI」UE〈va]じ〉)
{MODE?}
〈事象概念〉::=ACTOR<埋込み概念> TYPE perform ACT<act>
OBJECT〈埋込み概念〉 {1)1RECT−F<埋込み概念> TO 〈埋込み概念〉}{RECElP−F<埋込み概念> TO〈埋込み概念〉}
{INSTR(〈事象概念〉)}{MODE〈modθ〉}{TIME<time>}
〈埋込み概念〉::=<parameter>1<paramθt6r>(〈概念情報〉)
<act>::= INoEsT l 口⊂PEL l oRAsP l MovE l PRoPEL l PTRANs l ATRANs−〔⊃l ATRAN S一P
<relt>::=POSS I pART I LO(H I LO(}−B I LO(}−O I LOC≒R I LOG−L
<timerelt>:時間関係 <Va1>:様相概念の値 (+10〜−10の数字)
<ba3etime>:基底時点 <1【6y>::==< 1>
<atrb> :様相概念 〈modθ〉::=cl?1/ (または組合せ ) <time>::= tllt21t3
<parametgr>::=:英単語 1#
図一4 本システムで処理する概念依存表現 むわ
一㌣…阜一r箒一十
ユユ
す・識 {
John Mary
(a)CD表現
1( 丁工MERELT tl BASET工ME tl−now )(ACTOR John TYPE perform ACT atrans−p OBJECT ball RECE工P−F John TO Mary INSTR (ACTOR John TYPE perform ACT propel OBJECT ball DIRECT−F John Tp Mary } 丁工ME tl ))
(b)入力形式
図一5 ジョンはメアリーにボールを投げた が与えられたので新時点をt2とする。
Step 3 時間関係としてt2はt1の右側にあるこ
図一6 名詞辞書 とを認識する。
Step 4 時制情報表でNEWTENSE=右, 時制概念の処理が終了すると概念情報の処理に移る。
BASETENSE=PASTの欄を引いてt2 図一4で表わされるCD表現のうち特に問題となるのは の時制(TENSE)としてFutureを得る。 埋込み概念の処理である。埋込み概念が〈parameter>
Step 5 t1,t2以外に時制表示点はないので処理を であれば名詞句の並びとして処理するが,〈parameter>
終了する。結果としてt1:過去, t2:未来 (〈概念情報〉)をとる場合,括弧内の概念情報はその前 という情報を得る。 の〈parameter>に係るとして係り受けの処理をする。
英 語 日本語 性 質
Akira あき ら
P
M apple り んごu
S・ ■
nUlce ジュース
u L
tear 涙 .u E
mouth 口
u
M 1eye 目
u
M 2book 本
u
house 家 u D
ball ボール
u
TOKYO 東 京
u
Dpark 公 園 u D
〜
K E Y
構文情報 貢。幹 未然形連用形 終止形活用宅工NGEST
G
1 2★ 2★ll ★2
吸 わ つ う 5L
1 2★ 2★ll ★2
飲 ま ん む 5S 1 2★ 2★11 ★2
食 べ べ べる0
亀EXPEL
なみだ 2
1 ★ ★ 1 ★2
泣 かい
く 5 あせ 51 2★ 2★11 ★2
か かい
く 5 宅MOVE4L★!
1 4★ 4★ll ★4
向 かい
く 53LO! 1 2★ 2★11 ★2 あ
げ げ げる 0亀PROPEL
P 61★ 工MO214 1 4★ 4★11 ★4 なぐ ら つ る 5
P 71★ IMO214
14★4★11★4 け
ら つ る 5〜
図一7 動詞辞書
様 相 活用 サ行変格活用
竃MENTAL−STATE
一9 白 痴 2
一7 いらいら 4 していた している するだろう した
一5 ゆううつ
1
一3 ろうばい 4
していた している するだろう した
一2 悲 し 3
o 正 常 1
2 うれし
35 幸 せ
1lo 満 足
4していた している するだろう した 亀S工ZE
一5 非常に小さ
3
一3 小さ 3
o 普 通
23 大き
3〜
表一2 動詞選択のKeyの構成
カラム
意 味
1
行為主が生物概念ならばP,そうでなければU2 根元的行為がATRANS・PならばP, ATRANS・0ならば0,そ 鼈ネ外ならばブランク
3
根元的行為の対象が行為主と同じならばA,身体部分ならば、
サの場所を示す記号、それ以外ならば生物概念か否かを示す記ロ
4〜@7
方向格、受領格の起点と終点のそれぞれが行為主と同じなら ホ1、行為主以外の生物概念ならばP,それ以外ならば場所を ヲすか否かを表わす記号
8 道具格が存在すれば1、そうでなければブランク
9.10
9〜15カラムは道具格が存在する時に限り意味をもつ。
X、10カラムは道具格の根元的行為の最初の2文字を入れる。
1〜
@15
道具格の概念のparameterで、道具格を含む概念のpara−
高?狽?窒ニ等しいものがあればそれぞれの関係を示す。
16 空白
処理は〈概念情報〉の種類によって次の三つに分れる。
1 〈概念情報〉::=〈様相概念〉
(i) 〈様相概念〉::=〈関係概念〉のとき
本システムで処理可能な関係概念には次のも のがある。括弧内は生成される句を示す。
POSS(XのY)
PART(XのY)
LOC−N(Xの近くのY)
LOCB(Xの下のY)
LOC−0(Xの上のY)
図一8 様相度合辞書 LOC−R(Xの右側のY)
LOC−L(Xの左側のY)
(ii) 〈様相概念〉::=〈様相度合概念〉のとき
品詞によって次のような語尾変化を伴う。㍑ 「 …iiii量…:… i…善…iア
日 「1 形になる。そのため時制を考慮しなければならない。
III 〈概念情報〉::=〈事象概念〉
図一9 システム構成 この場合,事象概念のACTORまたはCON・
sENSE
NEWE§EiTENSE
l I
」認Ei早合§§E i TENSE l l
左 = 右 PAST lPAST ;
oAST lPAST l
oAST 畑TURE
左 |PRESENTlPAST I l I l
≠奄oRESENTiPRESENT
左 = 右
eUTUREIPAST
CEPTの〈parameter>が係る部分なのか, OBJECT 処理手続きはすべてPASCALでコーディングした。3.
の<parameter>が係る部分なのかによって処理が分 3で述べた時制処理ルーチンが約200ステップ、文生成 れる。 ルーチンが1300ステップぐらいである。処理手続きの論
(i)ACTOR, CONCEPTのとき 理的なまとまりごとにできるだけ一つのプログラム単位 たとえば…CONCEPT Keiko(ACTOR # を設定して全体のプログラムの構成を明確にすると共 TYPE perform ACT ingest OBJECT apPle)… に,作成・管理および拡張が容易になるように心懸けた。
というCD表現から生成される文は「#はりんご その結果,副プログラム27個,前処理プログラム1個,
を食べる」→「りんごを食べる」→「りんごを食 主プログラム1個となった。
べる啓子」という変形を受ける。 入力となるCD表現は様相概念,様相変化概念,事象
(ii)OBJECTのとき 概念および埋込み概念を用いたものなど,図一4で表わさ …CONCEPT cake(ACTOR keiko TYPE れるほとんどのものについて文生成実験を行った。その perform ACT atrans−o OBJECT#RECEIP一 いずれの場合についても,意味的に不自然でない日本語 FKeiko TO Tom)…の処理手順は次のようにな 文が生成された。(表一4参照)
る。 本システムでは埋込み概念についてLIFOスタック 1.括弧内の概念情報を処理する。「啓子はトム で処理をするので,CD表現の入力形式に忠実な日本語 に#を与える。 文が生成される。そのため図式で示されるCD表現(図 2.〃ガ(#)を行う。「啓子はトムに与える」 的表現)を入力形式に変換する際、日本語の文法にあっ 3.Cαs(が,は)を行う。「啓子がトムに与え た変換をしなければならない。たとえば図一10で表わさ る」 れるCD表現において,(1)と(2)は共にcakeを修飾する。
4.ε藺θを連接する。「啓子がトムに与えるケー (1)から生成される句は「啓子がトムにあげた」であり,
キ」 (2)から生成される句は「大きな」である。これらを合成 CD表現においては叙述情報として否定,可能, して名詞句を作る場合,「啓子がトムにあげた大きな 疑問および時制を扱っているので,これらから合 ケーキ」の方が「大きな啓子がトムにあげたケーキ」よ 成される述語文節の語順を次のように決める。 りもあいまいさがなく・口調的にも座わりが良い。だか 形容詞 ら入力形式においては(1)が(2)のcakeの埋込み概念にな 形容動詞 +ない+か る。現在はこの事を意識しつつ人間がCD表現を入力形 動詞 +ことが+できる 式に書き換えているが,これらが全て機械的手続きで行 これらは後ろに続く助動詞によって活用語尾が える見通しがなければシステムの拡張はむつかしい。し 変わってくる。 かしこれは,日本語文法をさらに検討し,埋込み概念の 種類に応じて優先順位をあらかじめ決めておくことで解 表一3 時制情報表
決できると思われる。
また本システムでは生成される日本語文は,これを処 理する計算機システムの構成上片仮名で出力されるが,
これは人間にとって大変見にくいので,計算機システム の拡張に伴って平仮名出力,漢字出力を可能にしたい。
(1)
「一一 一一一一一一一一一一一一一一「
巴・竿竺・竺竺ゴ㌫」
じ
…巨晶、⊇「 一_一_←
4.生成実験と検討 L_____」 tl七2 七ln。w 実験にはMELCOM COSMO 700を用い,システムの 図一10修飾関係
表一4 日本語文の生成例 1.ケーキは私のだ
2.彼女の家は大きくなった 3.私の家は公園の近くだ 4.章は啓子に本を貸した
5.ジョンはメアリにボールを投げた 6.トムは壁の近くにテーブルを運んだ 7.トムはあなたの大きいりんごを食べた 8.悲しかった啓子は泣いた
9.メアリーは右を向くだろう
10.いらいらしていたジョンはトムを殴った 11.章は汗をかいた
12.幸せな啓子はメアリーに白い大きい帽子を与えた 13.あなたの大きいりんごを食べることができなかっ た啓子は悲しかった
14.章は啓子がトムに与えたケーキを食べた 15↑あなたは私がトムに投げた黒いボールをつかむこ とができなかったトムを殴ったか
16.幸せなトムは家の近くの大きい公園に行くことが できたか
うにシステムの拡張を図りたい。本格的な使用には,各
辞書を充実しなければならない。 特に動詞辞書において,
動詞の定義特性をあいまいさがないようにCD表現で表 わすのは大変な仕事である。何らかの(半)自動化が必
要であろう。
本システムの応用の一つとして,多言語間翻訳の中間言、
語としてCD表現を用いるという考えがある。これには 動詞辞書の作成だけでも相当な労力を要すると思われ る。しかし,生成される日本語の範囲が限られるものに ついては,この方法の適用も有用と思われる。
謝辞 本研究には九州大学吉田将教授に種々の御助言 を頂きました。また,本研究は梨木隆志,本多寛人,青 木清児,川上由紀子の各氏の修論や卒論に深く負ってい
ます。ここに,各氏に深く感謝の意を表します。
参考 文献
1)大須賀節雄: 知識表現のための多層論理 ,情報処理人工知識と 対話技法研資17−6,(1980)
2)Goldman, N. M.: Computer Generation of Natural Language
from a Deep Conceptual Base, STAN−AIM−247, Stanford univ.,
1974
5.あとがき 3)Goldman, N. M.: Sentence Paraphrasing from a Conceptual Base, CACM, Vol.2, No.18,1974
本稿では知識の表現形式にSchankのCD理論を用 4)Goldman, N. M, The Boundaries of Language Generation,・
い,そこから表層言語として日本語文を生成する方法と TINLAP−1 1975
実験について述べた.この方法}・基づ・・て我々が作成し5 f鑑:噺ceptua11nf°mati°nP「° inピN°品
たシステムでは,CD表現から生成される単文について 6)井上和子;「変形文法と日本語」,大修館,1976
は日本語として不自然さがないことが確認された。また, 7)田中・佐藤他: 自然言語処理技術と言語理論 ・電総研20ふ1980
埋込み概念(CD表現で矢印‡で表わされる概念)にっい8蛯T:灘嶽㌍構造化としての日轍合成に関
ての係り受け処理も適当だと思われる。 9)本多寛人: 自然言語処理一概念依存表現からの日本語文の合成,
しかし,本システムでは,CD表現のうち因果関係を表 九工大卒論1978_
わす概念について,また,接続詞を含む複文及び重文の灌鶏蕊識醐念依存表現からの日本語文の嚇