人 文論 叢 (三重 大 学) 第2 5号 2 0 0 8
グリム 童話と 『日本の昔ばな し』 の比較
一条 件 結 婚につ いて ‑
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要 旨: あ る条 件を満た して結 婚す る条 件 結 婚に は、 出さ れ た課 題 を 解いて結 婚す る課 題 成 就 結 婚と理 想の結 婚 相 手と し て あげた条 件に か な え ば結 婚す る という単な る条 件 結 婚の 2 種 類が あ る。
課 題 成 就 結 婚は難 題 解 決 結 婚と共 通す る点が多いが、 大 きな遠いは, 課 題 成 就 結 婚で は、 課 題 を 解 くのは主 人 公 自 身で あ る が、 難 題 解 決 結 婚で は、 # 題を解 くの は、 主 人公で は なく、 異 界の存 在や異 界か らの贈 物で あ り、 こ の面に限れ ば主 人 公は脇 役だ ということ で あ る。 課 題 成 就 結 婚で は、 王様、 殿 様と お姫 様が登 場し、 王様、 殿 様が結 婚の条 件 ( 課 題) を出し、 課 題 を 成 就し た者 に、 その褒 美と し て、 お姫 様 を 嫁と し て や る という構 造に なっ ている。
は じ めに
グ リム童 話と 『日本の昔ば な し』 を条 件 結 婚に焦 点 を 当て て比 較す る。 分 析の対 象は、 グ リ ム童 話の場 合は、 1 8 5 7年の決 定 版の K H M 2 0 0 篇、 2 0 3 話で、 日本の昔 話の場 合は、 関 敬 吾 氏 編 集の 『日本の昔ば な し』 ( 岩 波 文 庫) 第Ⅰ、 第Ⅱ、 第 Ⅲ 巻の 2 4 0 話であ る。
結 婚は、 そ の種 類と類 型の両 面か ら分 析す ることにす る。 種 類と は、 恋 愛 結 婚、 難 題 解 決 結 婚、 魔 法か らの解 放 結 婚、 政 略結 婚、 等々 であ る。 類 型であ る が、 異な る結 婚、 例え ば、 恋 愛 結 婚と難 題 解 決 結 婚であ っても、 王家 ( 殿 様 家) の男と 王家 ( 殿 様 家) の女の結 婚ということ
では同じ型の結 婚であり, そ れを結 婚の類 型と呼ぶ ことにす る。 王家 ( 殿 様 家、 高 貴な身 分)
の男と 王家 ( 殿 様 家、 高 貴な身 分) の女の結 婚 を類 型1、 王家 ( 殿 様 家) の男と庶 民の女の結 婚 を 類 型2、 庶 民の男と 王家 ( 殿 様 家) の女の結 婚を類 型3、 庶 民 同士の結 婚 を 類 型4 と す る。
類 型は神 様と人 間の結 婚 ( 神と神、 神と女、 男と神)、 人 間と動 物の結 婚 ( 男と動 物、 動 物と 女、 動 物 同士)、 人 間と物 ( 男と物、 物と女) の組み合わ せで、 類 型1 2 まであ る。
条件と は、 謎 解きのよ う な比較 的簡 単な課 題で、 それ を 果た せば 結 婚さ せてや る、 という よ うに、 そ れ が結 婚の条 件にな って いることを意 味す る。 そ れ は、 ガラ ス の斧で森のすペ て の木 を 一 目で伐 採す る と か、 部 屋 一 杯の藁 を一 晩で金の糸に紡 ぐという よ うに、 お よ そ人 間が やり 遂 げること が不 可 能か、 不 可 能に近い難 題と は違う。 その よ う な条 件 を 満た し、 花 嫁や花 婿 を もら うのが条 件 結 婚であ る。
グ リム童 話には, そのような条 件 結 婚は全 部で 1 0 篇あ る。 類 型1 が1 篇、 類 型2 が2 篇、
類 型3 が5 編、 類 型4 が1 篇、 類 型1 0 が1 篇であ る。 類 型1 0 は動 物 同 士の結 婚であ る。 『日 本の昔ば な し』 には、 条 件 結 婚は1 話し か ない。
これ か ら、 グ リム童 話の条 件 結 婚を類 型 別に具体 的に見て いくことにす る。
グ リム 童 話の テ キス ト は、 B ROD E R G R I M M K i
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類 型1 の条 件 結 婚は 『な ぞ な ぞ (D
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l) 』 (K H M 2 2) だ けであ る。む か し昔、 一 人の王子が あ っ た。 王子は忠 臣 を一 人 連れて旅に出た。 そ してあ る大き な森
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入 り 込み、 宿を探して いる と、 若 くて美しい Gu n
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) 娘が小さ な家の方へ
歩い て い くの を見つけ た。 宿 を 頼む と、 娘は「 中へ
お入 りにな ら ない で。」、 「 私の養 母は悪い術 を 使う の です。m e
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,」 と言った。 王子は別に怖い とも思わ ず、 中へ
入 って い っ た。 する と、 老 婆 ( 魔女) は赤い目で (
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) じ ろっ と 王子 達 を 見た。 老 婆は毒 を入 れ た飲 物 を家 来の所へ
持っ て来て、 お前の主 人にあ げ る よ うにと言った。 その と た んに、 コッ
プ が破 裂し、 毒が馬に飛び散 り、 馬は死んで し ま った。 す る と、 鶴が ‑ 羽 馬に止まり、 馬の肉 を食べた。 家来は鵡 を殺してお 土産に持 っ て い った。一 日中歩き回った が、
森か ら出ること はでき な か っ た。 し か し、 あ る宿 屋を見つけ、 そこ に泊ま ることにし た。 とこ ろ が, そ こは人 殺し達の隠れ家 (
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) であ った。 十二人の人 殺し達は、 王子 達
を殺す前に、 宿 屋にや って釆て いた あの魔 女 (di
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) と 一 緒に鶴の ス ー プ を飲み、 全 員 死 んで し まっ た。王 子 達は長い間 旅 を 続け た後、 あ る都
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やっ て釆た。 こ こ の王女は美しいが、 自 惚れ が強 く (e
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)、 「 私に解 くことの でき ない よ う な な ぞ な ぞを 出 す者がいた ら、 私のお婿さ んにしてあげよ う。w e r
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」 し か し失 敗す れ ば首 を もら う、 という御触れを 出してい た。 「 王子は 王女の余 りの 美し さ に目が肢み、 そ れに命 を 賭け よ う と し た0
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」 そ して王女に 「あ る人が誰 も 殺さ ない の に、 十二人 を 殺し ま し た。 そ れ は ど ういうことで しょう。
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61 fe .'」 と謎 を掛け た. 王女は答え
が さっぱり 分ら な か った。 そこ で、 王女は、 王子が寝て いる ところ
へ
行き、 寝た ふり をし た 王 子の寝 言か ら答えを導 き 出し た。 そ して裁 判 を 開 き、 謎 を 解いたことを証 明し よ う と し た が、王子に証 拠を挙げて真 相 を暴 露され、 裁 判で負け、 王子と結 婚 することになっ た。
こ の よ うに、 王子と 王女の結 婚は、 誰か 王女が解 くこと が出 来ない謎 を 出 すこと が出来た な ら、 そ の者 をお婿さ んに してあ げ る という約 束 通 り、 謎 掛けで勝っ た 王子が負け た 王女 をお嫁 さ んにもらっ たの であ る か ら、 条件 結 婚であ る。 王子は 王女に 一 目 惚れであ る が、 王女は最 後 まで王子の こと を何とも思 っ て いない。 否、 裁 判 を 開い て勝つこと を望み、 王子の首 を取ろ う と し たくらい であ る か ら、 王女は 王子が好きで は ないと言え る。 二人の結 婚 生 活が辛か不 幸か は不 明であ る。 こ のメル ヘ ン には父王 は登 場せ ず、 王女は 「 私に解 くことの できないよ う な な ぞ な ぞを 出す者がいた ら、 私のお婿さ んに して あ げ よ う。」 という よ うに、 自ら結 婚の条 件を
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太田伸 広 グ リム童 話と 『日本の昔ば な し』 の比 較一条 件 結 婚に
つ
いて一 出す。 王女の強い意 志と独立 し た人 格は顕 著であり、 いわ ば 王女の 一 人 舞 台で、 王女は 王様の よ うに振 舞っ て いる。 し か し、 十二人の裁 判 官は その王女でさ え裁 く0第2 節 類 型2 の条 件 結 婚
類 型2 の条 件 結 婚は 『賢い農 民の娘 (D i
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) 』 (K H M 9 4) と 『つむ ( 防 鍾) と梓 (ひ) と縫い針 (s p in
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l) 』 (K H M 1 8 8) の 2 篇だ けであ る。
ま ず最 初は 『賢い農 民の娘』であ る。 む か し昔、 貧 乏な農 民が あり、 娘が 一 人いた。 二人は 王様か らいた だいた芝草の土地で、 純 金の乳 鉢 (
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) も探して持 って いか な け れ ば なりま せ ん、という娘の忠 告を、 父親は無 視し、 そ れを王様の所
へ
持って い った。 王様は、 乳 棒 を見つ けて持 っ てくる まで、 牢 屋に いろ と言っ て、 農 民 を牢 屋
へ
入 れた。 農 民が、 残 念、 娘の忠 告を聞け ば よ かっ た、 と言って悔し がり、 牢 屋で断 食して いることを 聞いた 王様は、 そ ん なに賢い娘が お る な ら連れて来い、 と言 っ た。 娘が連れて来ら れ る と、 王様は「わ し が お前に 一 つな ぞ な ぞ を 出す。 う まく 解け れ ば、 お前と結 婚してや ろ う.e r w o
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.」 と言っ て、 謎 を 掛け た。 そ れ は「 服 を 着ず、裸にな ら ず、 馬に乗ら ず, 車に乗ら ず、 道 を通らず、 道の外に出ず、 わ しの所
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やっ て来い。K
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g,」 というもの であっ た。 娘は難なくその謎 を 解いた。 そ して父 を牢 屋か ら出してもらい、 娘は 王様の お后 様にな った。そ れ か ら何 年か経っ て、 あ る農 民の馬が子 馬 を生ん だこと が あっ た。 ところ が、 その子 馬が
2 頭の牛の真ん中に座 り 込ん だ。 牛の持ち主は、 子 馬 欲し さに, こ の子 馬は雌 牛が生ん だ と主 張し た。 農 民は私の馬が生ん だのだ と言って、 争い にな っ た。 王様は、 馬の子は馬の子が座 っ
て いる ところに帰すペきだ という裁 定 を 下し た。 馬の子 を 取ら れ た農 民に泣 きつか れ た お后 様 は、 農 民に王様の裁 定 を 覆 すような入れ知 恵 をし た。 王様は その ことを知 り、 怒 って、 お前の 最 も 大 切で最 も 良い と思うもの (d
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) を 持っ て実 家に帰 れ、 と 三行 半 を 出し た。 お后 様は、 お別れの杯を す る と言い、 王様に眠 り薬 を飲ま せ, 眠った 王様 を自 分の家に運ん だ。 目 を 覚ま し た 王様が、 訳 を 尋ね る と、 お后 様は、 王様より 大切で良いものは ご ざいま せ ん、 と答え た。 王様は感激し、 改めて御 婚 礼 をやり直し た。
こ のメル ヘンも 『な ぞ な ぞ』 と同じく 謎 解きであ る。 農 民の娘が 王様の出し た謎 を解 き、 王 様のお嫁さ んにな ったの であ る か ら、 娘と 王様の結 婚は条 件 結 婚であ る。 王様のお后様になっ
た農 民の娘は、 王様の ことをど う思って いるのか結 婚す る まで分ら ないが、 結 婚 後は明ら かに
「 最 も大 切で最 も 良い ( 最 愛の最 良の) 」 人と思 っ て いる。 王様 も、 結 婚 後心底か ら お后様 を 大 切だ と思 って い る。 二人の結 婚 生 活は幸せ そうであ る。 『な ぞ な ぞ』 では、 王女が自分に解け ないよ う な難しい謎 掛けを する者が あ れ ば、 お婿さ んに してや る、 と言い、 こ のメルヘ ン では、 王様が謎 掛けをし、 解 くこと ができれ ば、 お嫁さ んにしてや る、 と言 っ て いる。 相 違は、 男 性
と女 性が入れ替わ って いること( 前者では、 条 件 を出すのが 王女でそ れに応ず るのが 王子、 後 者では、 条 件 を 出すのが 王様でそれに応ず るのが農 民の娘), そ して前 者で は 王家 同士の結 婚 だ が、 後 者は 王家と庶 民の結 婚だ ということ だ けであ る。 こ の 『賢い農 民の娘』 でも、 謎 を 解 くの に異 次 元の世 界か らの援 助 を必 要と して いない。