米国におけるモー ビルホーム市場 の 収縮 と業界再編
豊 福 裕 二
米国の住宅産業及び住宅市場 を他の先進諸国 と比較 した とき,他 国に はみ られない特徴 の 1つ としてモービルホーム (mobile hOmeあるいは manufactured housing)とい う住宅形態の発達があげ られる。ほぼ完成 品に近い状態 まで工場内で生産 され,大 型 トレーラーによって設置現場 まで牽引 されるモー ビルホームは,大 型ユニ ッ トの輸送 を可能 とす る道 幅の広 い幹線道路 とハ イウェイ網の発達,市 場 としての広大 な郊外住宅 地及 び農村地域の存在 など,米国に特有の条件 によつて支 えられてお り, その意味で米国に独 自な住宅形態である。
90年 代半ば以降,米 国の戸建住宅市場がかつてない持続的なブーム的 活況 を呈す るもとで,モ ー ビルホーム市場 もまた まれにみる活況 を示 し た。 しか し,戸 建住宅のブームが世紀 を越 えてなお持続 しているのに対
し,モ ービルホームのブームは比較的短命 に終わ り,2000年 に市場が反 転す ると,以 後工場 出荷数は減少の一途をたどり,上 位企業の倒産や M
&Aを 伴う業界再編に帰結した。2005年には出荷数が若干回復 したも のの,そ の主因は8月末にメキシコ湾岸を襲ったハリケーン ・カトリー ナの被害復1日に伴う特需によるものであり,本 格的な市場の回復には 至っていない①。
近年の米国の住宅ブームを巡っては,ブ ームに伴 う住宅価格の高騰が 消費者信用の拡大を通 じて個人消費を下支えし,世 界経済を牽引する役 割を呆たしてきたことから,い まやその動向に世界中の注 目が集まって
(41)
論 説
い る。 しか し一方 で,米 国の住宅市場 の一角 を占め るモー ビルホーム市 場 が半 ば崩壊状態 に至 った に も関わ らず, そ の事実 は米 国内 を除いてほ
とん ど注 目され ていないのが実状 であ る。
本稿の課題は,こ のような 90年 代 におけるモービルホーム市場の活 況 と2000年以降の市場収縮の背景について,戸 建住宅及びその供給主 体である一般の住宅建設業 とモービルホーム産業 との異同に注 目しつつ 明らかにすることにある。両者の異同に着 目するのは,一 般の住宅建設 業 とは異なるモービルホーム産業の独 自な発展過程 と,そ の出自に規定 された産業構造上の特性 こそ,モ ービルホーム ・ブームが短命に終わっ た最大の要因であると考えられること, しか し一方で,ブ ームの拡大 と 収縮に対 して金融 ・資本市場の動向が及ぼした影響は,一 般の戸建住宅 市場 と二定の共通性を有 していると考えるか らである。
以下では, まずモービルホーム産業の発展過程 とその現状について概 括 したうえで,次 にモービルホーム産業の産業構造の特徴 とその近年の 変化について述べ,最 後にモービルホーム金融の展開に注 目しなが ら, 90年 代後半におけるブームとその崩壊の背景について考察 したい。な お,「モービルホーム」 という呼称は,米 国では70年 代後半以降 「工場 生産住宅 (manufactured housing)」という呼称へ と改められているが, 米国におけるプレハブエ法であるモジュラー住宅,パ ネル化住宅 といっ た他の工場生産手法 と区別するため,本 稿では 70年 代後半以降のもの も含めて,一 貫 して 「モービルホーム」 という呼称を用いている。
1.モ ー ビル ホ ー ム産 業 の成 立 と展 開 1)モ ービルホーム産業の成立
米国におけるモービルホーム産業の前身は,1930年 代 に登場 した ト レーラーハウスの製造企業である。 トレーラーハウスとは,簡 易な宿泊
(42)
設備 を備 えた車輪付 きのユ ニ ッ トの こ とで,当 時 は幅 8フ イー ト,広 さ 300平 方 フ イー ト以下 で 自家 用 車 で の牽 引 が 可 能 な小 型 の もの で あ っ た。 トレー ラーハ ウス は もともとレジ ャー用 途 に開発 され,製 造企業 の 中心 は 自動 車 メー カー で あ ったが,大 恐 慌後 の失業者 の急 増 に伴 い,住 宅難に陥った人々によらて次第に恒久的な居住 目的で利用 されるように なっていった。1937年には,販 売 された トレーラーハウスのうち,本 来 のレジャー目的での取得は半分程度にす ぎなくなっていた②。
第 2次 大戦への米国の参戦により,軍 事用の建設需要が増大すると, 米国内では深刻な住宅不足が発生 した。住宅の大量供給の必要性に迫 ら れた連邦政府は,居住用途での トレーラーハウスの利用可能性に注 目し, 軍用住宅及び軍需部門の労働者向け住宅 として トレーラ,ハ ウスを大量 に購入 した。第 2次 大戦の末期には連邦政府による購入 も削減され,製 造企業数の減少を招 く結果 となったが,居 住用途での トレーラーハウス が普及 したことは,レ ジャー用途 という従来の トレーラーハウスのイ メージを変え,戦後のモービルホームの普及を準備する役割を果たした。
第 2次 大戦が終結すると,戦 時中に抑えられていた需要 と帰還者の増 加に伴 う新規需要 とで住宅需要が急増 し, トレーラーハウスの需要もま た拡大 した。 トレーラーハウスの製造企業は,従 来の製品に染みついて きた一時的な住居 というイメージを払拭するため, 自らの製品を 「モー ビルホーム」と呼び,住 宅という成長市場の取り込みを図らた。こうし
た トレーラーハ ウスか らモービルホ∵ムヘの移行 は, ト レーラーハ ウス 製造企業の業界団体が,1952年 に 「モービルホーム製造業者協会」と「レ ジャー用車両 (recreatiOnal vehicle)協会」に分割 されたことによって決 定的 となった゛。
「モー ビルホーム」 としての恒久的な住宅用途への対応 は,1950年 代 以降,ユ ニ ッ ト自体 の大型化 をもた らした。1956年 に 10フ イー ト幅の 製品が開発 されたのを皮切 りに,1962年 には 12フ イー ト,1969年 には
(43)
論 説
14フ イー トの製品が相次いで登場 し,居 室面積 も480平 方 フイー ト, 720平 方 フィー ト,950平 方 フィー トヘ と飛躍的に拡大 した。 また,1968 年 にはダブルワイ ド (ダブルセクシ ョン)と 呼ばれる,従 来のユニ ッ ト を並列的に連結 して 2倍 の居室面積 を確保で きる製品が登場 し,そ の広 さは 1,200平方 フイー トに達 した。1974年 までに,モ ー ビルホームの出 荷数の うち半数以上 は 14フ イー ト幅か ダブル ワイ ドのユニ ッ トで占め られるようになった。住宅 としての質の向上 と,通 常の住宅 よりも格安 であったことなどか ら,モ =ビ ルホームは主に通常の住宅を購入する余 裕のない低所得者層 に普及 し,60年 代後半か らの住宅 ブーム と相 まっ て,出 荷数は 1962年の 11万 8,000戸か ら1972年の 57万 6,000戸へ と 4倍 近 くの増加 を示 した④。
もっ とも,モ ー ビルホームの大型化 に伴い,そ の本来の特徴であった
「移動性」は急速 に後退 した。 8フ イー ト幅か ら 10フ ィー ト幅へ の移 行 は, 自家用車 によるユニ ッ トの牽引 を不可能にし,モ ー ビルホームの 運搬 には専 門の運送業者が不可欠 となった。製 品の大型化 に伴 って, モービルホームは工場か ら購入者の土地 まで搬送 された後,車 輪 を取 り 外 され,簡 易 な基礎 の上 に設置 されるようにな り,一 度設置 されたモー
ビルホームが再 び 「移動」することはまれになった。
こうして,居 室面積の拡大 と固定性の高 まりにより,モ ービルホーム と通常 の住宅 との質的 な格差 は縮小 した。 しか し,依 然 として当時の モー ビルホームは一般的な住宅 とはみなされなかった。住宅 としての質 が改善 された とはいえ,タト観,デ ザインは一見 してそれ とわかる簡素な ものであったことや,入居者の中心が低所得者層であった ことなどか ら, モー ビルホームには貧 しい者が住 む仮住 まいといったイメージが定着 し たし また,法 制上の扱 いにおいて,そ もそ もモービルホームは一般の住 宅 と区別 されていた。建築基準の面では,一 般の住宅が各地方 ごとの建 築基準 によって規制 されていたのに対 し,モ ー ビルホームはその対象 と
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な らず,税 制面では,多 くの州でモービルホームは動産 とみなされ,不 動産 に対 して課 される財産税の対象 とならなかった。財産税の課税 を免 れることは,モ ー ビルホームの購入者 にとってそれだけ住宅 コス トの低 減 を意味 したが,一 方で動産であるために通常のモーゲージ融資が利用 で きないことは,購 入資金の金利負担 をそれだけ高める要因 となった。
しか しなが ら,60年 代 の後半 になると,連 邦政府 は住宅の一形態 とし てモー ビルホームを認め,そ の供給 を支援す るようになる。当時,低 所 得者層向け住宅の供給 目標 を定めていた連邦政府 に とって, 日標達成の ためにはモービルホームを住宅 として位置づけることが不可欠であった か らである⑤
。1969年 には,モー ビルホームの購入融資 と,モービルホー ムを設置す る専用 区画であるモービルホームパークの開発資金 に対 して 連邦住宅庁 (FederJ Housing AssOCiation:FHA)の信用保証が開始 さ れ,ま た 1970年 には,1968年 住宅 ・都市 開発法 (Housing and Urban Development Act of 1968)で設定 された住宅建設 目標 にモー ビルホー ムの生産量が含 まれることになった。
また,住 宅 としての質 を確保するため,建 築基準の面で も改善が図 ら れ た。1974年 には全 国工場 生 産住 宅建 築及 び安全 基準 法 (National Manufactured Housing Construction and Safety Standards Act)が 市J定
され,1976年 にモービルホームの統一的な建築基準である連邦工場生産 住 宅建 築及 び安全 基準 ( F ed e r a l M an u f a ct ured Housing Cons t ruc t ion an d S a fet y St a nda r ds ) が公 表 された。す で に 1969年 には:モ ー ビル ホームに独 自の建築基準 を確立 しようとす る業界 内部の取 り組 み によ
り,ア メ リカ全 国基準協 会 (American Nadonal Standard lnsdtute:
AN S I ) に よって全 国的な建築基準が公表 されていた⑥
6連 邦政府 の建 築 基 準 は そ れ を取 り込 ん で 発 展 させ た もの で,住 宅 都 市 開 発 省 ( D e p a r t m e n t O f H o u s i n g a n d U r b a n D e v e l o p m c n t i H U D ) の所管 であ る こ とか ら一 般 に H U D コ ー ドと呼 ばれた。以後,モ ー ビルホームの呼
(45)
論 説
称 は工場 生 産住 宅 ( m a n u f a c t u r e d h o u s i n g ) へと改 め られ,米 国内のモー
ビルホームの大半はこのHUDコ ー ドに従って製造されるようになっ た。
もっとも,連 邦政府の積極姿勢 とは対照的に,地 方政府 におけるモー ビルホームの扱 いは決 して好意的なものではなかった。財産税の対象 と な らないばか りでな く,低 所得者層の集中を招 くモー ビルホームは,近 隣の不動産の価値 を引 き下げると考 えられ,多 くの 自治体では, しば し ばゾーニ ング規制 によってモー ビルホームの設置やモービルホームパー クの開発が排除されていた。 こうした差別的なゾーニ ング規制 は次第に 減少 した ものの,モ ービルホームに対する否定的なイメージは,長 らく モー ビルホームの普及 を妨げる障害 となった゛
。
また,HUDコ ー ドが定め られた 70年代半ば以降,モ ービルホーム産 業 はむ しろ長期 に渡 る低迷 を余儀 な くされた。図 1は モービルホームの 出荷数の推移 を示 した ものであるが,60年 代 を通 じて急速 な伸 びを示 し た 出荷 数 が,1973年 か ら 75年 の わず か 2年 間 に 58万 戸 か ら 21万 2 ,0 0 0 戸へ と激減 していることがわかる。 これは第 1次 オイルシ ョック
を契機 とす る景気の悪化が,モ ー ビルホームの中心的な購買層であった ブルーカラー層 を直撃 した結果,モー ビルホーム向け融資の債務不履行, 抵当流れが急増 したことと,60年 代 を通 じたモー ビルホームの生産量の 急増 に伴い,業 界全体 として過剰 となった生産設備や販売店の整理 ・淘 汰 を迫 られたことによる。淘汰 を免れた企業 も,以 後,新 たな生産設備 の積み増 しには消極 的にな り,金 融機関 もまた, リスクの高いモービル ホーム向け融資に対 して きわめて慎重な姿勢 をとるようになった③。
モービルホームの出荷数はその後 80年代 まで小幅な増加にとどまり, 本格的な需要の回復には 90年代を待たなければならなかった。
(46)
( 単位 : 千戸 ) 700
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出所 :Manufactured Housing lnstitute
(http://www.manufacturedhousing.org/admin/template/
subbrochures/387temp.pdfl
原資料 : 1 9 5 9 ‑ 6 9 年は M a n u f a c t u r e d H o u s i n g l n s u t u t e , 1 9 7 0 ‑ 7 6 年は Elkridge&Levidge,Inc.1997‑2002」 │は Institute for Building Technology and Safety(IBTS).
2 ) 9 0 年 代 に お け る モー ビル ホ ー ム の 発 展
1 9 9 1 年に 1 7万戸 と60年代初頭以来の低水準 に落ち込んだ後,モ ービ ルホームの出荷数 は増勢 に転 じ,以 後 1994年か ら99年 まで毎年 30万 戸 を上回る好況 を維持 した。持続的な好況の背景 について詳 しくは後述 す るが,モ ー ビルホームの需要が伸長 した要因の 1つ には,90年 代 にお けるモー ビルホーム と一般の住宅 との質的格差の縮小がある。
上述の通 り,モ ービルホームの タイプには単一のユニ ッ トか らなるシ ングルセクシ ョンの他 に, 2つ のユニ ッ トを連結す るダブルセクシ ヨン があ り,後 者 は 2つ 以上のユニ ッ トを連結す るタイプと合 わせてマルチ セクシ ョンと呼ばれる。図 2は ,80年 代以降のモー ビルホーム設置数に
(47)
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図 2 モ ー ビルホー ムの タイプ別割合 の推移 出所 :U.S,Census Bureau,M励 〃枡励たノ∬θttιs Sπηク.に よ り
作成。
(httpノ/www.census.gov/const/mhs/selcharbyregion.
html)
占めるこれ らタイプ別割合の推移 を示 した ものである。それによると, 198 1 年時点で 7割 以上 を占めていたシングルセクシ ョンが 80年 代以降 その比率 を低下 させ,代 わってマルチセクシ ョンの割合が上昇 している こと,そ の結果,1996年 にシングルセクシ ョンとマルチセクシ ョンの割 合が逆転 し,2003年 には後者が 7割 以上 を占めるに至 った ことがわか る。マルチセ クシ ョンの うち 95%以 上 はダブルセ クシ ョンであ ること か ら,以 上の変化 は,モ ービルホームの標準的なタイプがシングルセク シ ョンか らダブルセクシ ョンヘ と移行 したことを意味 している。
このようなダブルセクションの標準化は,モ ービルホームの住宅とし ての質を一段 と改善 した。表 1は,1983年から2003年までの 20年間に おけるモービルホームの特徴の変化をタイプ=Uに示 したものである。住
(48)
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表 1 モ ー ビル ホ ームの諸特徴 の推移
1983年 1 9 9 3 年 2 0 0 3 年
計 シ ングル ダブル 計 シングル ダブル 計 │シ ングル │ダ ブル
設 置 総 戸 数 ( 千戸 ) 242 1381 291 104
構 成 比 ( % ) 寝 室 数
2 室 以 下 3 室 以 上
191:9: 1T-9,
1 0 . 1 : 3 1 . 0 i
8 e . 1 i o o . o i
Ю一 32
︲0〇一 495
53 6 46 4
6 2 6 37.4
28 2 7 1 8
24 76
37 8 6 2 2
892
平均床面積 (平方 フィー ト) NA NA 1:6151 1,095 1 1,735
平 均価 格 ( ドル) 21,000 17.600 30,500 30.500 21,900 39.600 5 4 , 9 0 0 ; 3 1 , 7 0 0 i 5 9 , 8 0 0
立 地
M H コ ミュ ニ テ ィ内 M H コ ミュ ニ テ ィ外
53.9 45 6
43 7 56.3
32 6 67 8
25 0 75 0
27 9 72 1 権 限設定
動産 不動産
権 限設定 な し (not iued)
N A
N A
N A
AAA A AAN N N
95.3 3 1 1 6
84.8 1 4 . 3
0 9
58
37
4
︲7
3 鬱
3 3
4
注 :数 字 は,平 均床面積 と平均価格 を除 き,設 置総戸数 を 100 構成比。
出所 :U.S.Bureau ofthe Census,拗 物力θ″″J〃 磁 s ttηFy.
gov/const/mhs/selcharbyregion.html)
とした各項 目の内訳の (http://www.census.
宅の質に関す る特徴 をみる と,寝 室数が 3室 以上の物件の割合 は,1983 年 にはシングルセクシ ョンで 37 . 4 % ,ダ ブルセクシ ョンで も71.8%に す ぎなかったが,2003年 にはシ ングルセクシ ョンで 69%,ダ ブルセク
シ ョンでは 95.2%へ と上昇 し,全 体 で も 89。1 %に 達 している。 これは 20 03 年 における新築 1世 帯住宅の平均 90%と 同等の水準である⑨
。 ま た,平 均床面積 をみると,シ ングルセクシ ョンでは 2003年時点で 1,095 平方 フイー トに とどまってい るが,ダ ブルセクシ ョンでは 1,735平方
フ イー トに達 してい る。同年 の新 築 1世 帯住 宅 の平均 は 2,315平方 フイー トであるが,モ ー ビルホームの約半数が立地す る大都市統計地域 (M et ro po li tan S tat i s ti c al A r ea s :M S A ) 外では 1,975平方 フィー トで あ り,こ の点で もダブルセクシ ョンは一般 の住宅 と遜色 のない水準 と
(49)
論 説 な ってい る( 1 °
。
モ ー ビル ホー ム と一般 の住 宅 との格 差 が縮小 す る一 方 で, モ ー ビル ホー ムの立 地 や法的形態 に も変化 が生 じた。 同 じ表 1 に よる と, モ ー ビ ル ホームの専 用 区画で あ るモー ビルホーム ・コ ミュニテ イ( モー ビルホー ム ・パーク)に 立地する物件の割合 は,1983年 時点では全体 で 51.4%と 半数 を上回っていたのに対 し,2003年 では 30.4%に 低下 し,代 わって コ
ミュニテ イ外,す なわち購入者が各 自で調達 した一般の住宅 と同様の区 画 に立地す る割合が上昇 している。 また,モ ービルホームの権限設定 に ついてみると,1993年 時点では全体で 9割 が動産 として扱われていたの に対 し,2003年 には不動産 として扱 われる物件の割合が全体で 33.3%, ダブルセクシ ョンでは 37.5%に 上昇 した。従 来,モ ービルホーム ・パー クとい う形態での集中的立地やモー ビルホームの動産 としての扱いは, 地方 自治体 におけるモー ビルホームの差別的扱いの根拠 ともなって きた が, これ らの変化 は,実 質的のみな らず形式的に もモー ビルホームと一 般の住宅 との区別がな くな りつつあることを示 している。
もっ とも,入 居世帯の所得階層 についてモービルホーム と一般の住宅 表 2 モ ー ビルホ ーム入居世帯 の中間所得 の推移
( 単位 : ド ル , % )
1975年 19854巨 1995年 2003年 所有者 占有世帯
モー ビルホーム (A) 全住宅平均 (B)
(A/B)
9,500 13,500
17,257 27,833
24,010 39,857
29,841 52,803 70.4 62.0 60.2 56.5
賃借 人 占有世帯
モー ビルホーム (C) 全住宅平均 (D)
(C/D)
6,500 7,800
11,642 15,496
18,099 21,981
21,934 26,983 8 1 . 3 83.3 75。1 82.3
出所 :U.S.Bureau of the Census,■%θ″″θ″ 〃磁sJ′T Sπ/77飢 各 年版 よ り作 成。
( 5 0 )
とを比べ ると,両 者 には依然 として格差がみ られる。表 2は ,モ ービル ホームの入居世帯の中間所得の推移 を,全 住宅平均のそれ と比較 した も のである。それによる と,賃 借人占有世帯 (借家世帯)の 場合,モ ービ ルホーム入居世帯の所得水準 は全住宅平均 の約 80%で あ り,1975年 以 降その割合 にはほ とん ど変化がないのに対 し,所 有者 占有世帯 (持家世 帯)で は,同 じ割合 は 1975年の 70.4%か ら年 を追 うごとに低下 し,2003 年 には 56.5%に まで落 ち込んでいる。新築物件 のみではな く既存 のス トック全体の数字であるため,最 近の物件の変化が必ず しも反映 されて いないが,所 得格差がむ しろ拡大傾向にあることは,モ ー ビルホームの 質の向上が必ず しも入居世帯の所得階層の上昇 につ なが っていない こと を示 している。
以上のように,80年 代か ら90年代 を通 じて,住 宅 としてのモービル ホームの品質は向上 したが,モ ービルホームの入居世帯の中心は依然 と して相対的低所得者層である。こうした特徴は,先 の図 1に 示 したよう に,1999年 以降再びモービルホームの出荷数が激減する一因ともなって いるが,90年 代ブームの形成 と崩壊の背景には,よ り構造的な問題,す なわちモービルホーム産業それ自体の構造 と90年代の資本市場の動向 が関係 している。以下,章 をあらためてみてい くことにしたい。
2.モ ー ビル ホーム産 業 の構 造
モービルホーム産業が トレーラーハウスの製造企業に起源を持ち,戦 後,レ ジャー用車両業界 と枝分かれして成立 したことはすでに述べた。
その出自にもとづ く産業構造の特徴は,HUDコ ー ドに規定される工場 生産住宅へ と発展 した今 日でも根強 く残ってお り,モ ービルホーム産業 は製造手法,販 売形態,融 資手法等において建設業 というよりもむしろ 自動車産業に近似する特徴を有 している°D。
すなわち,工 場での組立ラ
(51)
論 説
イ ンを用いた大量生産,専 門のデ イーラーを通 じた販売,デ イーラーの 伸介 による動産融資 などである。 ここではまず,生 産 システムの特徴か
らみてい くことにしたい。
1)生 産 システム
モー ビルホームの生産過程が一般の住宅のそれ と最 も異 なる点 は,製 品の工場生産比率の高 さである。米国における住宅の工場生産化手法の
うち,最 も工場生産比率の高いモジュラー住宅の場合,そ の割合はず般 に85〜 95%で あるが,モ ービルホームはそれを上回る98%で あるl121。
モ‐ビルホームは内外装含めほぼ完成された状態で工場出荷 され,残 り の2%の みが現場で仕上げられる。この中には,輸 送用の車台を外 して 基礎の上に設置する作業や,マ ルチセクションの場合,複 数のユニット を接合する作業などが含 まれる。
モービルホームの製造工場においては,一般に組立ラインが導入され, 流れ作業によってユニットの生産が行われる。労働者は単純化された特 定の作業のみを行えばよいため,現 場生産住宅のような熟練工は必要な く,組 立 ラインは労働 コス トの低い未熟練 または半熟練工によって担わ れているl131。
その結果,モ ービルホームでは現場生産住宅に比べて効率 的な生産が可能であ り,標準的な工場では,生 産効率は 1日 あた り10〜
13ユ ニ ッ ト,ダ ブルセクションの場合 はこの半分 となっている°→。ま た,現 場生産住宅のように天候に左右 されずに作業を行いうることも, 生産効率を高める一因となっている。
こうした工場内での住宅ユニットの大量生産により,モ ービルホーム 産業は住宅産業に特有の量産化の限界,す なわち,製 造工程に必ず現場 での施工行程を伴 うため,工 場内での大量生産が困難であるという問題 をかなりの程度克服 している。工場内での集中生産は,部 材,資 材の大 量購入を可能にし,工 場数が増加すればそれだけ大量購入によるコス ト
( 5 2 )
削減効果 も大 きくなることか ら,モ ー ビルホーム製造においては,生 産 規模の拡大 に伴 って規模の経済性が働 きやすい。 さらに,現 場生産住宅 と異 な り,建 築基準すなわち HUDコ ー ドが全 国統一基準であることは, モー ビルホーム産業 による工場の全国展 開を容易 に し,規 模拡大 を促進 す る要因 となっている。
生産部面 における規模 の経済性の実現 は,モ ービルホーム製造企業に おける少数の大企業への集中傾 向をもた らしている。図 3は ,モ ー ビル ホーム製造業 における売上高 または販売戸数上位 10社 の市場 シェアの 推移 をみた ものであ る。それに よると,1972年 の時点ですで に上位 10 社が 40%を 占めてお り,以 後着実 にシェアが上昇 して 2002年 には 90%
に達 していることがわかる。上位 10社 のなかで もと りわけチ ヤンピオ ン ・エ ンタープライゼスお よびフリー トウ ッ ド ・エ ンタープライゼス 2
(単位 :%) 100
90 80 70 60 50 40 30 20 10 0
丁
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ノ
ノ
ヘ 〆
^ ―
‐ ヽ
図 3 上 位 10社 の市場 シェアの推移
注 :上位 10社 は,1994年 までは売上高上位 10社,そ れ以降は出 荷戸数上位 10社。
出所 :1972‑1997年は PTtteSSJθπα′Bπ′′ごιγ各年版,1998年 以降は Bπ′〃ιγ各年版。
ヾ00N
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寸OOr
﹈OOr
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寸∞〇
剌∞Or
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∞い0︸
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ヾ卜Or
﹃卜0︐
(53)
論 説
社 へ の集 中度 は高 く,2000年 には 2社 だ けで 51.8%の シェア を占め る に至 ってい る。現場生 産 の住 宅建 設業 にお い て も 90年 代 後半 か らは顕 著 な シェアの上昇傾 向が み られ るが,上 位企業へ の集 中度 とい う点で は モ ー ビルホー ム製造業 にははるか に及 ばない0。
しか しなが ら,工 場内での住宅ユニ ッ トの量産は,一 方で次の ような 限界性 を抱 えている。第 1に ,ユ ニ ッ トが非常 に大型であ り,一 定の道 路幅がなければ輸送で きないことか ら,一 般 に道路幅の狭小 な都市部へ の販売が困難である とい うことである。実際,2003年 の米国住宅調査 (American HOusing Survey)による と,既 存のモービルホームの占有 物件 685万 4,000戸 の うち,70.7%の 484万 4,000戸 は農村 (rural)地 域 に立地 している°の
。第 2に ,同 じくユニ ッ トが大型で重量物であるた め,輸 送 コス トが非常 に高 く,工 場か らの出荷先が一定の地理的範囲内 に限定 されることである°つ
。 このため,製 造企業が新 たな市場 に進出す るためには,そ の地域 に工場 を設立す るか,他 社の工場 を買収す るしか な く,い ずれにせ よモービルホームの製造工場 は消費地立地 とな らざる をえない。 これは裏返せ ば,工 場の立地が困難 な地域 においては,新 た な販路の開拓が困難であることを意味 している。工場内での住宅ユニ ッ トの量産 による規模 の経済性の実現 は,一 方で市場の範囲を特定の地域 に限定せ ざるをえない とい う限界性 と不可分の関係 にある。
2)販 売 システム
モービルホーム産業の生産 ・販売 システムの特徴 は,生 産部門 と販売 部門 とが分離 され,モー ビルホーム製造企業 とは別組織の,専門のデイー ラーによってモービルホームの販売が担 われていることである。デ イー ラーの中には製造企業の直営店 もあるが,大 半は独立系のデ イーラーで あ り,さ らにその多 くは単一 の店舗 のみ を有す る個人経営 であるt181。
2002年 の経済セ ンサスによると,モ ービルホームデ ィーラーには全国で ( 5 4 )
5,553の 事 業所 が あ り,う ち従 業 員 数 が 4名 以 下 の事 業 所 が全 体 の 39.8%,10名 未満 の事業所 で は全体 の 71.7%を 占め る。 また,売 上高 シェアでは,上 位 8社 で 23.8%,上 位 50社 で も 34.8%で あ り,上 位企 業へ の高度 な集中がみ られ る製造企業 とは対照的に,中 小企業が大半 を 占める分散的な構造 を特徴 としているaの。
モービルホームデ ィーラーの役割 は, 自動車産業 におけるデ イー ラー のそれ と近似 している。デ イーラーは,製 造企業か らモデルハ ウス及び 在庫 としてモービルホームを購入 し,店 舗 において即売するか,あ るい はモデルハ ウスを通 じて顧客の注文 を受け,製 造企業 に発注 を行 う。独 立系デ イーラーの場合,複 数の製造企業の製品を取 り扱 うのが一般的で ある。 また,デ イーラーの店舗 においては,店 舗規模 に もよるが,付 属 品やパーツの展示 ・販売,販 売 した物件の修繕,改 装サー ビス,お よび 物件 を購入す るための融資の仲介 な どが行われている°①
。詳 しくは後述 するが,モ ービルホームを購入する場合,顧 客はデイーラーを通 じて融 資 を取得す るのが一般的である。
モー ビルホーム製造企業 に とって,直 営店 のみ な らず多数の独 立系 デ イー ラー と取引 を行 うことは,生 産規模 を拡大 し,ま た維持す るうえ で不可欠であ り,従 来,製 造企業 は製品の販売先の多 くを独立系 デイー ラーに依存 して きた。 しか し,90年 代 における販売競争の激化 に伴 い, 製造企業の販売戦略 にも変化が生 じている。すなわち,製 造企業 による 既存 デイーラーの買収 を通 じた直営店の拡大 と,独 立系 デイーラーに対 す る特約店戦略の展 開である。
製造企業 に よる販売戦略の転換 の画期 は,業 界第 1位 のチ ヤ ンピオ ン ・エ ンタープライゼスによる 1997年以降の既存 デ イー ラーの買収 を 通 じた直営店戦略の展 開である。同社 は,1996年 まで製品出荷先の大半 を独立系 デ イーラーに依存 していたが,1997年 か ら 1999年にかけて, 合 わせて 179店舗 を有す る 16の デ イー ラー系列 を買収 し,2000年 1月
(55)
論 説
時点で全米 2 8州 で 2 80の 店舗 を保有す るに至 った。直営店 における 自 社製品の取扱 い比率 は 1998年には 49%,1999年 には 62%へ と上昇 し, 同社 の製品出荷先 に占める直営店の割合 は 2000年 1月 時点で 14%に 達 した゛D 。
チ ャンピオ ン ・エ ンタープライゼスの動向は,業 界第 2位 のフリー ト ウ ッ ド ・エ ンタープライゼスの危機意識 を高め,対 抗 的な直営店戦略の 採用 を促 した。同社 によれば,1997年 後半か ら 1998年前半 にかけて買 収 されたディーラーは,当 時同社の出荷先 シェアの約 25%を 占めていた ことか ら,同 社 は 1998年に当時最大の独立系 ディーラーであったホー ム USAを 買収 して対抗 し,さ らに 2000年までに数社 を買収 した。その 結果,同 社が保有す る店舗数 は従来の直営店 と合 わせて 2000年には 244 に達 した( 2 )。
このような直営店の増加 と同時に,90年 代後半には製造企業各社によ る独立系ディーラーとの特約店契約が拡大 した。特約店契約 とは,例 え ば店舗在庫の半数以上を当該企業の製品とするといった条件で,マ ーケ ティング支援や各種サービスの優先的利用などのメリットを契約店に与 えるもので,チ ャンピオン ・エンタープライゼスでは 「チャンピオン ・ ホームセンター小売プログラム」,フ リー トウッド・エンタープライゼス では 「ピナクル小売 プログラム」などが展開され,他 にもパームハー バー ・ホームズやキャバ リエ ・ホームズなどの大手企業において同様の 特約店戦略が展開された。特約店プログラムの加盟店にはたいてい直営 店 も含 まれるが,そ れらを含めて特約店が製品出荷数に占める割合は, 2003年にはチャンピオン・エンタープライゼスで約 39%,フ リー トウッ
ド・エ ンタープライゼスで約 45%に 達 している°の。
製造企業による下流部門の垂直的統合 ともいえるこうした動 きは, モービルホームの販売部面における非価格競争の強まりを示唆 してい る。すなわち,上 述のように 90年代 においてモービルホームの品質が
( 5 6 )
向上 した結 果 ,顧 客 のニーズが多様化 し,顧 客 の注文 に応 じた製 品仕様 の変更や ア フターサ ー ビスの充実, さ らにはブ ラ ン ドイメー ジ とい った 要素 の重 要性 が 高 ま り,製 造企 業 と して も自社 の マ ー ケ テ イ ング′戦 略 を デ イー ラー に まで浸透 させ る必要が生 じてい る こ とが,一 連 の積極 的販 売戦 略 の背 景 にあ る と考 え られ る。
しか しなが ら,製 造企業 に よる下流 部 門の統合 は,デ イー ラーの業界 再編 と販 売 競争 の熾 烈化 を もた らす と同時 に,従 来 の生 産部 門 と販売 部 門の分業 関係 に も変化 を もた らさざるをえない。従 来,製 造企業 は基本 的にデイーラーか らの注文 に応 じて生産 を行 うため, 自 ら製品在庫 を抱 えることはな く,在 庫 リスクはデ イーラーに転嫁す ることが可能であっ た。 しか し,直 営店の増加 は,事 実上製造企業 自身が製品在庫 を抱 える ことを意味す る。実際,フ リー トウッ ド ・エ ンタープライゼスは,小 売 事業への参入 に伴い,顧 客へ の展示及び即売 を目的 として完成品在庫 を 維持する必要か ら,完 成品在庫 を持 たない とい う従来の製造方針 の転換
を迫 られた と述懐 しているに→
。
こうして 90年 代後半 には,製 造企業 自身 を巻 き込んだ販売競争 の激 化 によ り,デ イーラーにおけるモービルホーム在庫の過剰傾向が生 じた。
それは次にみるように,90年 代 におけるモー ビルホーム向け融資の拡大 に支 えられていたが,融 資 システム自体の脆弱性及び業界特有の融資慣 行 と相 まって,今 世紀以降のモービルホーム生産の急激 な落ち込み と, 製造企業 による工場 の休止お よび直営店 の相次 ぐ閉鎖 を招 くことにな る。
3 . モ ー ビル ホ ーム金融 の展 開 と 90年 代 ブーム 1 ) モ ービルホーム金融の特徴 とその展開
モービルホームに対する融資には,消 費者がモービルホームを購入す
( 5 7 )
論 説
る際の小売金融 と,デ ィーラーが製造企業か らモー ビルホームを購入す る際の卸売金融 とがあ り,そ れぞれ一般の住宅に対する融資 とは異 なる 特徴 を有 している。 まず これ らの特徴か らみてい くことに したい。
消費者がモービルホームを購入する際に利用で きる融資には,大 別 し て 2 つ の形態がある。すなわち,モ ー ビルホームの法的形態が不動産の 場合 に利用 されるモーゲージ融資 と,動 産の場合 に利用 される動産融資 であ り,両 者の比率 はモービルホームの形態の割合 に規定 される。先の 表 1 で 示 した通 り,近 年,不 動産 として扱 われるモービルホームが増加 傾 向にあるが,1993年 時点では 9割 ,2003年 で も約 3分 の 2が 動産であ り,依 然 としてモー ビルホーム融資の中心 は動産融資である といえる。
モーゲージ融資 と動産融資 とを比較 した時,貸 し手にとってのモー ゲージ融資の利点は,不 動産 という担保物件の流通市場が発達 し,担 保 価値が比較的安定 していることと,モ ーゲージの流通市場すなわち第 2 次市場が発達 し,債 権の流動性が高いことから,比 較的長期で低金利の 融資が可能であるということである。逆に言えば,動 産融資の場合,融 資物件の減価は避けられず,ま た債権の流動性に乏 しいため,貸 し手に
とってのリスクは高い。一方,借 り手にとっては,信 用調査 も限られ, 担保不動産の権限調査など煩雑な手続 きが不要な動産融資は,モ ーゲー ジ融資に比べて手軽に利用できるという利点 もある。 しかし,調 達コス トは割高であ り,モ ーゲージ融資が最長 30年 間の借入が可能であるの に対 し,動 産融資は通常 15年,金利 もモーゲ∵ジ融資に比べて 3か ら5
%ポ イント高 くなっている°D。
こうしたモービルホーム向け動産融資のリスクの高さから,従 来,動 産融資においては次のような形態が とられるのが一般的であった。すな わち,顧 客が金融機関と直接融資契約を結ぶのではな く,あ らか じめ金 融機関の了解のもとにデイーラーと融資契約を結び,続 いてディーラー が金融機関に対 して債権を売却するというものである。なお, ここで重
( 5 8 )
要な点 は,借 り手が支払不能に陥った場合,デ イー ラーが債務の全額 ま たは一部 を支払 うとい う保証が しば しばなされ る点である°①
。 これ は デ イー ラーが場合 に よっては貸 し手 の リス クを負担す るこ とによ り, モービルホームの販売 を促進 しようとす る方策であるといえる。
同様 の動産融資 にお ける リス ク分散 の仕組 み は卸売金融 に も存在す る。デ イーラーが製造企業か らモー ビルホームを購入する際の融資は売 場計画 (■oor plan)融資 と呼ばれるが,金 融機 関が売場計画融資を行 う 場合,製 造企業 との間で融資対象物件の再購入協定 (repurchase agreё― ment)を 結ぶのが一般的である。 これはデ イーラーが契約期間内 (通常 24ヶ月以内)に 債務不履行 に陥った場合,製 造企業が債権 を買い取 るか, あるいは未払い残高 に相当す る価格 に手数料分 を加 え,そ こか ら住宅や 装飾品の欠損分 を差 し引いた価格 で物件 を買い取 る義務 を負 うとい うも のであ る②
。 ここでは製造企業が貸 し手の リス クの分担者 となってい る。
以上の ように,デ イーラーや製造企業が リスクを分担する慣行が存在 していることがモービルホーム向け動産融資の特徴であ り,そ の リスク の高 さを象徴 している。 しか し,90年 代 には,動 産融資で も小売金融の 部面 において債権の流動性が高 ま り,金 融機 関による融資額が飛躍的に 拡大 した。その背景 となったのが,動 産融資 を担保 とした資産担保証券 (asset backed securities,以下 ABSと 略す)の 発行 による債権の流動 化 と資金調達 の仕組みの発展 である。ABSと は,一 般 に金融機 関が債 権 を特別 目的会社 に売却 し,特 別 目的会社が債権のプールを担保 とした 証券 を投 資家 に販売す るとい うものである。米国の債券市場協会 (The Bond Market Associadon)によると,モ ー ビルホーム向け動産融資 を担 保 とした証券の発行残高は,1995年 か ら2000年 にかけて年率 30%以 上 の伸 びをみせ,112億 ドルか ら369億 ドルヘ と増加 したC281。
ABS市 場 の発展 は,証 券化 を前提 としてモー ビルホーム向け融資 を (59)
論 説
行 う金融会社,す なわち,融 資の組成 (origination)後す ぐに債権 を売却 して証券化 し, 自らは組成や債権の回収業務 に関わる手数料収入のみを 得 る金融サービス会社の台頭 を促 した。金融会社 によるモービルホーム 融資の全体像 は明 らかではないが, ここではその最大手の 1つ であるコ ンセコ ・ファイナ ンスの事例 をもとにその融資の特徴 をみてお きたい。
コンセコ 。ファイナ ンスは,1998年 に総合金融サービスの持株会社で あるコンセコによって買収 されたグリー ン・ッリー ・ファイナ ンシャル ・ コーポ レーシ ョンが社名 を変更 して誕生 した企業である。モービルホー ム向け動産融資 (小売融資)の 他 に,卸 売融資である売場計画融資,住 宅資産 を担保 とした消費者信用であるホームエ クイテ ィロー ン,住 宅 リ フォーム融資,ク レジッ トカー ド信用 など主 に住宅関連の消費者信用 を 総合的に扱 う金融会社である。 なかで もモー ビルホーム向け融資は同社 の主力商品であ り,2000年 時点での全組成額に占める割合 をみると,動 産融資が 26%,売 場計画融資が 23%と 合わせてほぼ半数 を占めている。
同社 の組成するモー ビルホーム向け動産融資は,大 半がモニビルホーム デ イーラーか ら購入 した ものであ り,2000年 末時点では 860/0がデ ィー ラー経由,残 りの 14%が 顧客への直接融資である。なお,組 成 された融 資の大半は証券化 されてお り,モ ー ビルホーム向け動産融資の場合,組 成額 に対す る証券化 された債権の害J合は 1998年で 91.4%,1999年 では 84.7%で あるの。
次 に,コ ンセコ ・ファィナ ンスによる融資の動向をみてみ よう。図 4 は,同 社 によるモービルホーム向け動産融資の組成額 と平均貸付金利の 推移 をみた ものである。それによると,平 均貸付金利が 10%程 度 に低下 した 1993年以降,貸 付額が顕著 な増加傾向を示 していることがわかる。
同時期 には,連 邦政府の低金利政策によって市場金利が低下 し,一 般の 住宅向けモーゲージ融資において も実効金利が 8%を 下回るな ど,借 り 手の金利負担 は歴史的な低水準 となった。 この ような資金需要者 にとっ
( 6 0 )
( 単位 : 千卜リレ) 7000
1000
(単位 :%) 16
14
12
塁塁 ヨ E E ヨ ヨヨ ヨ彗 屋目目
図 4 Conseco Financeに よるモー ビルホーム融資及び貸 付金利の推移
出所 :Conseco Finance Corp.Annual Report各年版より作成。
て の良好 な市場 条件 と,ABS市 場 とい う資金 供 給 者 に とっ て の リス ク 分散及 び資金 調達手段 の発展 が,90年 代 にお け るモー ビルホーム向 け融 資 の増加 を もた ら した とい える。
しか しなが ら,同 じ図4に 示 されているように, コンセコ・フアイナ ンスによる融資組成額は 2000年以降急激な減少に転 じる。この減少は 低金利が持続するなかで生 じていることから明らかなように,一 般的な 金融市場の動向によるものではなく,モ ービルホーム向け融資に特有の 問題から生 じている。この点については節をあらためてみてい くことに
したい。
2)90年 代ブームの終焉 とモービルホーム産業の再rn
コンセコ 。ファイナンスに限らず,2000年以降,金 融機関によるモー
( 6 1 )
論 説
ビルホーム向け融資は軒並み減少 に転 じ,先 述の通 リモービルホームの 出荷数 も大幅な減少 を示 した。その直接的な契機 は,モ ー ビルホーム向 け融資 における債務不履行及 びその結果 としての物件 回収 (reposses̲
sion)の 増加 である。同融資の物件回収 を含 む債務不履行比率は,1995 年 までは 3%前 後で推移 していたが,1996年 以降 4%を 超 え,1999年 に は下時 5%を 上回った゛の
。同年の一般住宅向けモーゲージ融資の債務不 履行比率が 3。17%で あ り, また 80年 代後半以降一度 も4%を 超 えてい ないことと比べ ると,モ ービルホーム向け貸付債権の質の低下は明 らか であるm)。
その背景 としては以下の 2点 を指摘す ることがで きる。
第 1は ,90年 代 におけるモービルホーム向け融資の与信条件の緩和で あ る。モー ビルホーム向け動産融 資 には,FHA及 び VA(Veteran's Administration:退役軍人庁)の 信用保証が付 くFHA,VA融 資 と,保 証の付 かない コンベ ンシ ョナル融資 とがあるが,90年 代 にはコンベ ン シ ヨナル融資の割合が拡大 した。FHA・ VA融 資は政府系の証券化機関 で あ る政 府 抵 当金庫 (Government National MOrtgage AssociatiOn:
GNMA)を 通 じて証券化す ることが可能であ り,貸 し手 にとっての流動 性 は高いが,借 り手 にとっては,FHAで は頭金の割合が融資額 の 10%
であるなど,融 資条件が厳 しい とい う難点がある。一方,コ ンベ ンショ ナル融資の場合,頭 金割合 は 5%と 借 り手 にとってのメリッ トは大 きい が,貸 し手に とっては流動性が低 い とい うデメ リッ トがあった。 しか し, 90年 代 における ABS市 場 の発達 によって債権の流動性が高 まると,融 資条件の緩やかなコンベ ンシ ョナル融資に対する選好が強 ま り,動 産融 資の大半 はコンベ ンシ ョナル融資で占め られるようになった⑫
。 また, 融資期 間 も長期化 し,90年 代後半には条件 によってはモーダージ融資 と 同様 30年 満期の融資 も可能 となった。90年 代 における融資機関の増加 と貸 し手 間競争の激化 に よって促進 された この ような与信条件 の緩和 は,歴 史的な低金利 と相 まって,従 来融資が困難であった所得階層 まで
(62)
も融資対象 に引 き入れる結果 となった。
第 2は ,モ ー ビルホーム向け融資の借 り手における低所得者層及びマ イノ リテ イ比率の高 さである。モービルホーム向け融資全体 について借 り手の特徴 を示すデー タは存在 しないが,1975年 住宅モーゲージ情報開 示法 (Home Mortgage Disclosure Act of 1975:HMDA)に基づ く開示 デー タによつてその一端 を伺い知ることがで きる。HMDAは ,金 融機 関に よる融資差別の是正 を目的 として,MSA内 に事務所 を有す る金融 機関に対 し,住 宅 ロー ンの貸付先の所得,人種,居住地域等 に関するデー タの開示 を定めた ものである。デー タ自体´ヽらは住宅ローンの種類は特 定で きないが,貸 し手 を類型化す ることによつてその融資 を区分す るこ
とは可能である。例 えば, コンセコ・フアイナ ンスは住宅購入融資に関 してはモー ビルホーム向 け専 門であ るか ら,同 社 の開示 したデー タは モービルホーム向け融資に関す るもの とみなす ことがで きる。
表 3は ,1998年 の HMDAデ ー タに基づ き,貸 し手の類型別に融資先 の特徴 をみた ものである。モー ビルホーム向け融資 と通常の住宅モー ダージ融資 とを比べ ると,借 り手の所得水準では,前 者 では低位階層が 6割 弱 を占めるのに対 し,後 者では 2割 強にす ぎないこと,ま た借 り手 の人種及び民族構成では,前 者 において黒人や ヒスパニ ツク等のマイノ リテ イの比率が高 くなっていることがわか る。同様の傾 向は融資先地域 の特徴 にも表れてお り,前 者では後者 に比べて所得階層が低 く,ま たマ イノ リテ イ比率が高い地域 にお ける融 資の割合が高い。HMDAデ ー タ は MSA内 に限 られてお り,MSA外 に多 く立地す るモー ビルホーム全 体の特徴 を代表 しているとはいえないが,少 な くとも MSA内 に関す る 限 り,モ ービルホーム向け融資が低所得者層及びマイノリテイに集中 し ていることは明 らかである。
以上の ようなモービルホーム融資の特徴 に加 えて,貸 し手の側 の金融 機 関の特徴 も,融 資の焦げ付 きの影響 を大 きくした。90年 代 には金融機
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論 説 表 3 見
比霞 1 毒 署 ] l l i £葦賃宅 ロー ンの融資世帯及 び融資
<借 り手の特徴 >
世帯の所得水準D 低位 中位 高位
計 人種及 び民族
アメ リカ及びアラスカ先住民 アジア人
黒人 ヒスパ ニ ック 白人
計
モー ビルホーム融資 1 通 常モーダー ジ融資
融資件数 構成比 (%) 融資件数 構 成比 (%)
97.845 44,171 25,475 167,491
2,773 1,283 27,750 16,931
1 : 1 認│
5 8 4 26 4 1 5 . 2 100 o
l l 0 5 10 5 6 4 81 5 1 0 0 . 0 1
566,134 662,614 1 , 鈍9 , 鶉o 2,578,682
9 , 3 2 6 109,216 105,827 128,541 2,417.617 2,770,527
22 0 25 7 52 3 100 0
0 3 3 . 9 3 ′8 4 . 6 87.3 100.0
37,121 102,609 22,644 162,374
73,095 71,620 17,756 162,471
22.9 63.2 1 3 9
100.0
L鵞
2,613,9391,451,780 997,974 158,259 2,608,0131
9 ´5 46 8 43 7 100 0
55 7 38´3 6 1 100 0
注 :1) 瀾
2 )
源』馨β
居住す る MsAの 中間所得 に対す る借 り手の所得 借 り手の居住するセンサス区域の中間所得の MSA中 間所 得 に対する割合。
低位 :MsA中 間所得の 80%未 満,中 位 :80%以上 120%未 満,局 位 :120%以上
3)借 り手 の居住す るセ ンサス区域 の人 口に占めるマイノリ テ イの割合。
出刃千:canner,G.B.,Passmore,W.and Laderman,E.[1999],p.712 よ り作成。
関全体の特徴 として低所得者層向け融資が拡大 したが,商 業銀行など大 手金融機関は中 ・高所得者向け融資も広範に扱っており,一 部の債権が
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引
= 引
= 1 1 1 1 1 11
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