2 0 0 8
年2
月1 2 日提 出
国語科 の授 業にお ける 文学教育論と 文学 研 究論 の 相 互関係に 関する研 究
一 西郷理論を援用 した
「
羅 生 門」
実践の
可 能 性 と 課 題 ‑三重 大学大学院教育学研 究科教科教 育専攻 国 語教育専修
2 0 6 M O 1 2
林 浩 司
別 紙 様 式 第
3
論 文 目 録
三
重 大学大 学院教 育 学 研究科別 紙 様 式 第
4
論 文 要
三
重 大 学 大 学院教 育 学 研 究 科教科考嫡 専 攻 邑語改名 専 修 楓 浩 司
本 研 究
は
高等学校の
国 語 科の授業で
文学作品 を扱う 際に
、 文学 教 育論 と 文学研 究 論の
相互
関係が
どの よう な もの である
事が
、 生徒に
とっ て
最も 望 まし
い の かを 明ら か に
する
事 を目
的 とし た
o
る
事が
、 生徒に
とって
最も 望 まし
いの かを 明ら か に
する
事 を目
的 とし た
o
第
1
章で は
、 西 郷 竹 彦が
提 唱 する
西 郷 理 論に
着目 し
、 その
有効性 を他の 理論 (解釈 ・
鑑賞型、 言 語 技術型、 読者論型、 く
新し い
作品論〉
型)と 比
較し て
、 実 証し た
o第
2
章で は
具体的 な作品 を 取り 上
げて の
検証と し て
、2 0 0 7
年 度 使 用 生徒用 教 科 書『国 語総合』の 1 0
社2 4
種に
す べて
掲載さ れて い る
芥川龍之
介の 「羅 生 門」
を 取り 上
げた
o
文学教育論 と 文 学 研 究 論
の
双 方か ら の ア プ
ロ ーチ
とし て
、 研 究 者は
どの ように
読ん
だの かを作家論、 作 品論、 テ ク
ス ト
論 と 分 けて
分 析し た
。 また
、 西 郷理
論 を含む 5
つ の
文学
教育論 を援用し た
と 考え ら
れる 「
羅 生 門」 の
実 践 を 分 析し
、 そ
れ ぞれ の
論テ ク
スト
論 と 分 けて
分 析し た
。 また
、 西 郷理
論 を含む 5
の
有 効 性 と 問 題 点 を 明ら か に し た
o さら に
、 双 方の
見 地が
国 語 教育の
現 状で
どの
程 度、 反 映 さ れて
いる の か
を探る た め
、 『国 語 総 合』全2 4
種の
設 問 を 分 析し た
o その
結果、 解釈 ・ 鑑賞型、言 語 技術型、 読者論 型
の
論の
傾 向は
ある が
、く
新し
い作品 論〉
型 や 西郷理
論の 理論に
関 す
る
傾 向が
弱い とい う事を 実 証し た
.
第
3
章で は
第1
章、 第2
章で の実 証 を 基に
、
「
羅 生 門」
実践の
提 案 を行なった
o 作 品 を ど う読む か
とい う 点に お
いて
、 下人 の無 思想性、 く
神〉の
不在を 指 摘し た
o 生徒に
作品
とど
う 向 き合わ せ た い か
とい
う 点で は
、 作 品 を 読 む 際の
思 考 基 準に
つ い て
言 及 し
、 道徳 律で
読ん で し
ま う 現 状 をど
う 克 服 する か
を 問 題 とし
た。 そこ で西 郷 理 論の
実 践 記 録 「
あ
と か
くし の
雪」 に見ら れ る
、 善 悪で は
なく、 美醜 とい
う 物 差 し で
作品 を 捉 える
方 法 を「
羅
生 門」 に お い て
援用 出 来る の で は
ない かとし て
、 具体的 な 物 差し の
基 準 を 事 例 とし て
挙
し て
、 具体的 な 物 差し の
げ、
そ れ
ぞれ
検 証し た
。目次
目次
p
.1
・2
序 章 研究
の
目的と 方法p
.3
第
1
章 文学教育論と 文学研究論の
相互関係につい
てp
.3
第
1
節こ
れ まで の文学 教 育論 p
.3
第
1
項は じ め に
一 文 学教 育論と 文学研 究 論の
相互
関 係を考え る 上で
‑p
.3
第
2
項 解釈 ・ 鑑賞型の
理 論p
.3
・4
第
3
項 言 語 技術型の 理論 p
.4
・6
第
4
項 読 者論 型の 理論 p
.6
・9
第
5
項 < 新し い作品 論>型の 理
論 p
.9
・1 2
第
2
節 西郷理論につい て p
.1 2
第
1
項西
郷 文 芸教育論と
西 郷 文 芸学と は
何か p .1 2
・1 9
第
2
項西
郷理
論が
明 らか に し
た事p
.1 9
第2 章
「
羅 生 門」
実践の
可能性と 課 題p
.1 9
第
1
節「
羅生門」
論 ‑ 研究 者に は どの
ように読ま れて
き たの か ‑ p
.2 0
第
1
項「
羅 生 門」
論の
現 状p
.2 0
第
2
項 吉田
精 一の 「羅 生 門」
論 一 作家論か
らの ア プ ロ ー チ ‑ p
.2 0
・2 2
p
.2 0
・2 2
第
3
項三
好 行雄の 「羅 生門」
論 一 作 品 論か
らの ア プロ ー チ
ー p
.2 2
チ
ーp
.2 2
第
4
項 前田
愛の 「羅 生門」
論 ‑ テ ク
ス ト
論か
らの ア プロ ー チ
ー p
.2 2
・2 4
チ
ーp
.2 2
・2 4
第
2
節「
羅生門」
実 践の
た め に 一 授 業で
は どう扱わ れて
きたの か p
.2 4
第
1
項は じ め に
一 座 談会を中心 と し て
‑p
.2 4・2 5
第
2
項 解釈 ・ 鑑賞型の
実践p
.2 5
・2 6
第
3
項 言 語 技術型の
実 践p
.2 6
・2 8
第
4
項 読者 論型の
実 践p
.2 8
・3 2
第
5
項<
新し い作品論>
型の
実践 p
.3 2
・3 4
第
6
項 文 芸 研 型の
実践 その 1
‑「
羅 生門」 の
場合 ‑p
.3 4
・3 7
第
7
項 文 芸 研 型の
実践 その 2 ‑ ま どみ
ちお 「
火事」
を参 考に
‑ p
.3 7
・3 8
第
3
節 教 科 書に お け る「
羅生門」 の扱い
方 ‑ 『国語総 合』 分 析 ‑ p
.3 8
第
1
項 教 科 書で の位 置づ
け p
.3 8
‑3 9
第
2
項 各教科 書の
分析p
.3 9
・4 8
第
3
項 教 科 書分 析か
らの
考 察p
.4 8
・4 9
第
4
節 文学 教 育 論と 文学研究論の
理想 的な関係と は何か p.4 9
第
1
項 問題の
所在p
.4 9
・5 0
第
2
項理
想的な 相互
関係に
つい て ‑ 西 郷 理 論 をモデル
とし て
‑ p
.5 0
・5 3
第3 章
「
羅 生 門」
実践の
提案p
.5 3
第
1
節「
羅生門」
分析p
.5 3
第
1
項「
羅 生 門」
を ど う読むか p .5 3
・5 4
第
2
項 下 人は ど の よ
うに
語 られて い る の か
‑ 遠藤周 作『沈黙』 との 比較 ‑ p 5 4‑5 7
5 7
第
2
節「
羅生門」
実践に向けて p.5 7
第
1
項「
羅 生門」
とど
う 向き合わせ
たい か p
.5 7
・5 9
第
2
項 思考の
基 準に
つい て 一 学生の
意見 を事 例と し て
‑ p
.5 9
‑6 0
第
3
項 実 践の
ため に
何が 必
要か p .6 0
・6 1
終章 研究
の
成果と今後の
課 題p
.6 1 ・6 2
引用 ・ 参考文献/ 引用 ・ 参考H P 一 覧
p
.6 3
・7 2
お わ り に
p
.7 3
添 付 資 料 (
1
)序 章 研 究
の
目的と 方法国 語 科
の
授 業で
、 高校生と
小 説 を読み
進め る に
あ たって
,ど
うい
っ た方 法 を 取る
事が
生徒に
とって
最も 望 まし い のだろ
うか
。 そ の疑 問 を 明 らか に
する
ため
、 現在、 ど の よ
う な 授 業が
展 開
さ れて い る の か
、 幾つか の モデル
を示 し
なが
らそ の間 題 点 を 浮 き 彫り に
させ る
。 そ の上で
、 そ
れ ぞ れの
方 法 を支えて い る
文学教 育論 と 文学研 究 論の
内 容 や 方 法、 相互 の関連性に
つ い て
分 析
を 行 なった。
か に
する
ため
、 現在、ど の よ
う な 授 業が
展 開 さ れて い る の か
、 幾つか の モデル
を示 し
なが
らそ の間 題 点 を 浮 き 彫り に
させ る
。 そ の上で
、 そ
れ ぞ れの
方 法 を支えて い る
文学教 育論 と 文学研 究 論の
内 容 や 方 法、 相互 の関連性に
つ い て
分 析
を 行 なった。
り に
させ る
。そ の上で
、 そ
れ ぞ れの
方 法 を支えて い る
文学教 育論 と 文学研 究 論の
内 容 や 方 法、 相互 の関連性に
つ い て
分 析
を 行 なった。
に
つい て
そ の中で
も 本 研 究で は
、 西 郷竹彦が
提 唱する
西郷文 芸 ・ 教 育学 (以 下、 西 郷理
論と 記 す。)
に
焦 点 を 当て る
。 西郷理論は
、 国語教 育界に
登 場し
た、 文 芸学 ・ 教 育学を 網 羅し
た 独自の 理論
体系で
ある
。 文学教 育論と
文学研 究 論の
相互
関 係 を 明 らか に
する に
あ たって
、 双 方の
領 域を 網
羅 する
西 郷理
論は
、 先の
問 題意識 を 明 らか に し
、 そ の
間 題の
根源を 知る 上 で
有 効で
ある
と考える
。 ま た, 西郷が
立 ち上
げ た 文 芸 研( 注1) を 中心 と し て
数多くの
実践 も な さ れて
きて い る
。 本 研 究で は そ
れ らの
実践 も 活 用する
。 尚、こ
れに
あ たって 2 0 0 7
年度使 用 生徒用教科書 『国語 総 合』1 0 社 2 4
種に
すべ て
掲載さ れて い る
( 注2) 芥川 龍之
介の 「
羅 生 門」 の
先行 研 究・ 授 業 記 録
も扱う。 高校生と
小 説 を読むに
あ たって
, 有効 な 文学 教 育論と
文学研 究 論の
関 係 を 明 らか に
す
る
研 究で
ある
ため
, 高 等学校国 語の
特質に
も 留意し て お
く必
要が
ある か
らで
ある
。 幅 広い レ
ベ
ル の
教科書に
掲載さ れて い る 「
羅 生 門」 は そ の 上 でも有 効な 作 品で
ある と
考えて い る
o
<
注
>1
正 式 名 称 は 文 芸 教 育 研 究 協 議 会o
2
文 部 科学 省の H P に よ る
. h
t tp://w w w .n e xt.goj
.p /
第
1
章 文学教 育論と 文学研 究論の
相互関係に つい
て 第1
節こ
れ まで の文学 教 育 論
第
1
項 はじ
め に 一 文学 教 育 論と 文学研究 論の
相互
関係を考え る 上で
一文学を授 業
で
扱う ため に
準備し て お か
な け れ ば な ら ない
事と し て
、 対象と
なる
作 品の
教材 分 析 を行 な う必
要が
ある のだが
、 ど こ に
教 育の
目 標 を定め る か
、 ま た 対象と
なる
生徒を ど う 捉 え
て い る か と いう 問 題は
常に
付随し て
くる
。 そ
れ ぞ れの
捉 え方 や 関係 性、 優位性 を踏ま え な けれ
ば な らず、 背 後に
ある
時 代 性 や 思 想 も 大 き な影 響力 を 及 ぼし て い る と
思 わ れる
。 で は
現在の
授
業で は そ
うい
った 基 礎理
論が
どの よ
う な理論と し て
、 研 究者や教師に
捉 え られ、 位 置付 け ら れ
は
常に
付随し て
くる
。そ
れ ぞ れの
捉 え方 や 関係 性、 優位性 を踏ま え な けれ ば な らず、 背 後に
ある
時 代 性 や 思 想 も 大 き な影 響力 を 及 ぼし て い る と
思 わ れる
。で は
現在の
授 業で は そ
うい
った 基 礎理
論が
どの よ
て い る か
、そ し て そ
れが
授業に
どう影 響し て
くる の か
。こ
れに
つい て、 現在行 な わ れて い る
幾
つ
か の授業をモ
デル と し
、 そ
れ ぞ れの
授業が
抱 える
文学教 育 論と
文学研 究論の
中身や その
関 係 性に
つい て分析する
足が か り と
する
。
第
2
項 解 釈 ・ 鑑賞 型の
理論戦前
か
ら戦後に か
けて
、 文学 教育論に
多大 なる
影響を 与え て
き たの は、 垣
内松三 で は
ない
だろ
うか
。 垣
内は
『国 語の
力』 の
中で
、 文学作品 を解釈 する
ため の
方 法 とし て
、 次の ように
述べ て
い る(注 1)0
雪片 を 手
に
執り て
、そ の微妙 なる
結晶の
形象を 見ん
と する
時、 温 い掌上に
在る
もの は
、 唯
に
在る
もの は
一 滴
の
水で
ある
。 文に
面し て
、 作者が
書か
うと
思っ た もの
を 捉 えよ
う とする
時、 もし
文字に
泥む
な ら ば、そ こ に
在る
もの は、 既に
生命の
蒸発し
去っ た 文 字の
連り で
ある
。 微 妙な結
晶 を 見る と
きに は
、 硝 子板に 上
ぼせ て
顕 微鏡下に
結晶の
形象を視な け れ ば な らぬ
や うに
、
文の
真相 を観る に は
文字に
累は
さる る こ
と な く, 直下に
作者の
想 形 を視な け れ ば な らぬ
。「
文の
形 と想の
形」 にある こ の
一 説は
、垣
内の
形象理 論 を 端 的に
表し て い る
。こ こ で注 目し
たい の は、 「
文の
真 相」
を「
観る 」
ため に は 「
作者の
想 形」
を 手が か り に せ よ
とい
う 点で
ある
。
作 品 を読み
解く上 で
、 作者が作品創作の
ため に
用い
た「
想」
を唯 一 の
答 えと し て い る の で
ある
o
「
文の
真 相」
を「
観る 」
そ の後も戦前か
ら なる
文学鑑賞の
方 法 を概ね
受け継ぎ、 作品 を教室で
味 わ うと いう 事 を重視
し
た 授 業 を 行 な わ れる が
、 作 品の
位置づ
けに
つい て は、 三
好 行雄の
作品論の
影 響も 大 きい
とい
う 指摘が
ある
( 注2)o 三
好の 理論は
、 戦前の
鑑賞論が作品 を 一 義 的な もの と捉 える の に
対し
、 読
は
、 戦前の
鑑賞論が作品 を 一 義 的な もの と捉 える の に
対し
、 読
み
手個人の
価 値観を基 準に し
た 批 評に よ
って
読み の多 義性 を確 保し
た 所に
特徴を もつ。 し か し
、
文学研 究は
文学史の
体系に
完結する
認 識の
純粋運 動で
ある
と もし
、 文学史 とい
う 歴史 学の 1
つ
の
系 とし て の み
、 文学研 究は は じ め て
成立する と し て い る
。 つ まり は
, 読み
手の
数 だ け 拡が る
読
み
を、 文 献学, 実 証学の
見 地か
ら なる
作家論及び
作品 論に よ
って
集約し よ
う とい
う もの であ
る
o こ の
論は 三
好が 「
出口 の
ない
部 屋に
似て い る 」
と表 現 し て い る よ
うに
, ある
種の
閉 塞 感 を 持 って い る
(注 3)o文学教 育
に お い て
援用 さ れる
場合に は
、 先の
手続き を経た教師が
導き 出し
た教材 分 析 を 下 地 とし て
、 作品の
中の
物 語の
事 柄、 人 物の 心情、 作品の
描 写 を 生徒に
教える
事に
なる
。 まと め の
段階で は
文 献学、 実証学の
観点か
ら作家に
つい て の
情報 を扱える
。し か し
、そ こ で は
読み
手 とな
る
生徒の
読み は
、 作家の
歴史的 な事実に
集約 さ れる
。<
注
>1
垣 内 松 三 『国語のカ 国語
の力 ( 再稿)
』 ( 明 治 図書
1 9 7 7)
p .6 3
2 田 中 実 『小 説のカー 新 し
い作 品論
のた め に
』 ( 大 修館
1 9 9 6)
p .2 5 3
カー 新 し
3
三 好 行 雄 『作 品 論の試 み 三 好行 雄 著 作集 第
5 巻
』 ( 筑 摩
書房
1 9 9 3)
p .6 4
第
3
項 言語技 術 型の
理論 言語技 術と は、一 般 的に は、 能 率 的 ・ 効 果 的に表 現 ・ 理解 する た め