奈良教育大学学術リポジトリNEAR
中学校技術教育における問題点(II) ― 新カリ キュラムを実施して ―
著者 岡 俊博
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 19
ページ 77‑88
発行年 1983‑03‑23
その他のタイトル On the Problems Concerning Education of Technics in Junior High School (II) : After Practising the New Curriculum
URL http://hdl.handle.net/10105/6555
中学校技術教育における問題点(皿)*
一新カリキュラムを実施して
岡 俊 博**
(技術教室)
1.はじめに
昭和52年7月に中学校学習指導要領の改訂と学校教育法施行規則の一部改正が行なわれ、これ に伴って中学校指導書「技術・家庭編」且)が翌年5月に発行された。昭和53年より昭和55年迄3 年間の試行期間に、早速教員養成系大学・学部等の附属中学校では試行による研究成果の発表を 行なって来た。2・3・4)そして昭和56年度より新カリキュラムが本格実施されることになった。
本研究は、前報5)では調査時期が試行の最終年度(昭和55年度)にあたったため、いまだ改正 の主旨がっかみきれず困惑しているとの回答が多数を占めていたので、本格実施後2年目に新カ
リヰエラムをどのようにこなしているかを調査し検討を加えたものである。すなわち、前回の調 査の第1回目に回答された27校に、後述する項目についてアンケート形式で調査回答紙を送付し、
その回答内容をまとめて、新カリキュラムを実施してどのような問題点を抱えて授業が進められ ているかをできるだけ正確に把握し、問題点について検討したものである。
中学校技術・家庭科の改正の主な点は、前報で述べたように、①rゆとりのある授業」という 名の下に大幅に授業時間数が削減(1年生35単位時間、2年生35単位時間、合計70単位時間)さ れたこと、②教具や工作機械の購入が従来のr産振法」によるものからr教材基準」によるもの となったこと、③技術・家庭科の学習領域の決定がアラカルト方式になったこと、④技術・家庭 科学習領域間で最小1領域は相互乗り入れまたは男女共修を行なうことの4点である。
従って現場では、技術科教育として合計70時間短くなった授業時数の中で、少なくとも5領域 以上の技術学習領域を実施し、ユ領域以上は家庭学習領域との相互乗り入れを行ない、r教材基 準」による物品の購入が行なわれている筈である。しかし、現場の教師達は実際にこの急激な変 化をどのように受けとめ、どのような対策を講じているであろうか? その実態を知り、対応策 を考慮することは技術科教員の養成を任務とする者にとっても重要な課題であると考え、昭和45 年度から昭和54年度迄に本学技術科を卒業して中学校技術科教育を担当している教員に次の質問 事項を送付してその回答を返送してもらった。
〔1〕男女共修・相互乗り入れについて 〔3〕学習領域について 〔2〕新カリキュラムについて 〔4〕教科書選定について
*On the Problems Concemi㎎Educati㎝of Technics in Jmior High School(n):
After Practising the New Curriculum
**Toshihiro Oka (Department of11ヒ。hnolo馴,Nara University of Education,
Nara)
〔5〕機械領域における題材の設定について 〔8〕パーソナルコンピュータの利用について
〔6〕設備の充実状況について 〔9〕大学院への進学について
〔7〕栽培領域の学習について 〔1O〕近況について
2.調査内容と回答結果
調査項目の順にその内容と回答結果をまとめて以下に記述する。
〔1〕技術・家庭科での男女共修と相互乗り入れについて 11〕男女共修を行なっている場合、以下について御記入下さい。
ア、男女共修を行なっている領域(例:栽培一住居)。イ、この領域を選んだ理由。
ウ、男女共修を行なう技術領域における題材(例:本立て)。
工、男女共修を行なって生じた問題があれば簡単に御記入下さい。
12)男女共修を行なっていないが、相互乗り入れを別学で行なっている場合、以下に御記入下さ い。
ア、相互乗り入れを行なっている技術領域と家庭領域。 学年、学期、時間数 イ、技術領域における教材、題材は何を選んでおられますか。
ウ、別学による相互乗り入れを実施して問題点があれば簡単に記して下さい。
(回答結果)
27校の回答の中で相互乗り入れしている学習領域は表1に示すようである。男女共修を行なっ ている学校は13校で、別学による相互乗り入れを行なっている学校は14枚とほぼ同数である。表
1からわかるように、技術学習領域で最も多いのは〔木材加工1〕で19校が相互乗り入れを行な っている。次に〔電気1〕の4校、〔金属加工1〕の3校、〔機械1〕と〔栽培〕が各1校と最
も少ない。
表ユ 男女共修と別学相互乗り入れ領域の実施校数
男女共修領域 枚数 別学相互乗り入れ領域 枚数
木材加工1一食物ユ
8 木材加工1一食物1 7 金属加工1一食物1 1 金属加工1一食物1 1 電 気 1一住居 1 木材加工1一住居 1 電 気 1一住居 3柱 居 2 機 械 1一住居 1
栽培 1 木材加工1一食物1 ※
1
金属加工1■被服ユ
※1O月から入れかえるこの領域を選んだ理由として、①r男女共修をやらなければならないからやっているだけで、
なぜ〔木材加工1〕と〔食物1〕が適当であるといったはっきりとした理由はない」という回答 や、②「男子の授業において女の先生(家庭科の先生)が生徒を押え切ることが出来るのは1年
生だけである」という回答、③「性別に関係なく普段の生活の中で一番大切である(本音は教師 の力量と意欲の問題です)」という回答があった。共修、別学共に最も多い〔木材加工1〕の題材 は、共修の場合、本立て・カセットラック・ボトルスタンド・状さしなどで、別学の場合は焼き 杉による花台が最も多く、マガジンラック・フラワーボックス・額ぶち・照明器具・サービス盆
と、別学だけに題材数が多くなる。
男女共修になって良くなった点は「一つもありません」と回答されており、特に〔木材加工ユ〕
を共修している学校で、①r女子の工作品にはほとんど先生の手が加わっており、評価の段階で 迷うことが多い」、②r女子には積極さがなく内容・進度ともおくれが出て来る」、③r工具使 用の男女差や女子は機械をこわがる」二④r女子の性格上1㎜のくるいも気にするので、時間の ロスが多い」、⑤r男女の協力は少なく、ばらばらであるため進度差が著しい」など悪くなった とする回答ばかりであった。別学による相互乗り入れでは、①r時間数が少なくなったため、男 子領域と女子領域の人ねかわりのタイミングが合わない」、②r男子と女子の別々の教材を考え ねばならない.1、③r時間数が少なくなったので、2学期と3学期が同じ学習領域となり試験が むっかしい」などの回答があった。以上のように相互乗り入れによる好結果は1件も回答されな
かった。
/2〕新カリヰエラムになって、授業時数が少なくなりましたが、そのためにどのような変化・問 題を生じましたか御記入下さい。良くなった点、悪くなった点などありましたら、具体的に例を お示し」Fさい。
(回答結果)
「別に問題はない、内容の精選も行なったから」と回答したのが1件で、他の26校は良いとこ ろはない、悪いところは数え切れないといった回答ばかりであった。その内容について表2にま とめて示す。
表2新カリキュラムになって悪くなった点の順位と枚数
順位 悪 く な っ た 点 枚数
1 実習の時間が足りなくなった。 8
2 1,2年生の時間が足りなくなった。 5
3 内容が薄くなったので意欲をなくす。 4
4 学校行事などで進度がくるう。 3
5 補習することになった。 2
現在所カリキュラムになって、1年生、2年生の技術・家庭科の授業時間は1週間に2時間し かなく、これを2時間続けて授業を行なっているため、「何かの理由(学校行事、出張など)で 1週休みが出来ると、他のクラスとの進度がくるう。極端な例としては1ケ月で1回しか授業が 出来なかったクラスが出来た例もある」とのことである。「改正までは、ユ週間に2時間と1時 間の授業が出来たため、進度の遅れをとりもどせたのに」とのことである。また、r現在の2・
2・3時間というのを3・2・2時間にしてほしい」という改善を望む回答が多く出されていた。
そして、r授業時数を大幅に削減しているのに、学習領域は〔製図〕をなくしただけで、それも 製図を〔木材加工1〕にもぐりこませているため、〔木材加工1〕が非常に時間をとり、その内 容は薄くなり、やさしい教材を選べば教師も生徒も製作意欲をなくす」という回答である。その 他にr授業時数は短くなっても、教師の教える時間数は変らないので、その分だけ多くの生徒を 教えるということになり負担は大きくなった」という回答もあった。
〔3〕学習領域の決定は地域の状況や学校の状況に応じて選び決定することになりましたが、どの ようにして学習領域を決定されましたか。
(回答結果)
回答された学習領域の決定理由を表3にまとめて示す。ユ校で二つの理由をあげる場合もある ので、件数(枚数)は27以上になっている。
最も多い理由はr生徒の興味や状況に応じて」ということで、「何を教えるべきかを考えて」
という回答は残念ながら2校しかなかった。また、「栽培学習をぬぐ」が3枚あり、前報での調 査時から心配していた、〔栽培〕と〔金属加工2〕の領域が減少してゆくと考えられる。
表3 新カリキュラムの学習領域決定理由とその枚数
1
2 3 4 5 6 7 8 9 10
1ユ
学習領域の決定理由
生徒の状況や興味を中心に考えた。
施設や設備を考慮して行なっれ 今までと変りなくやっている。
必要とする年間の費用を計算して決定した。
市内の地域単位で決定した。
他の先生と教科会で相談し決定しれ 先生の指導能力に応じて考えた。
何を教えるべきかを考えて決定した。
材料の購入の便利さや教具の利用を考えて決定した。
年間の反省会をもって決定した。
栽培学習だけをぬいた。
枚数
〔4〕使用する教科書の決定はどのようにして決定されましたか。
(注:技術・家庭科の教科書は従来は男子用と女子用として分離されていたが、今回の改定で統 合され、男女同一の上・下巻となり、学習領域によって上・下巻におさめられている。)
(回答結果)
回答された教科書決定の理由を表にすると表4のようである。いずれの選定理由の場合でも地 域の教育委員会が最終決定を行なっており、教員は自分の意見を述べるだけで、意に反する結果 になることもあり、従って次のような意見が寄せられている。①r学校としては見やすいA社と
したが、市の方で勝手にB社にした」(1校)、②r当校ではA社としたが、ブロック単位でB社 となった」(2校)、③「A社の方が学問的であるが、本校の生徒の実状から実習中心のB社にせ
ざるを得なかった」(ユ校)。
なお、技術・家庭科の教科書会社は最少の2社で、27校の採用枚数はA社が1ユ校、B社が16校
である。
表4 教科書の選定理由とその枚数 選 定 理
ブロックの教科書選定委員の決定により教育委員会が決定した。
文字の見易さ、図・表のわかり易さ、内容の記述の妥当性を考えれ 過去から長年そのま、つづいている。
技術と家庭の教員の話し合いで決定した。
地区教師の多数決によった。
枚数
ユ1
9 3 2 2
〔5〕機械領域の題材の設定が一番難しいと言われていますが、 〔機械ユ〕、〔機械2〕の教材・題 材についてお答え下さい。
(ユ)〔機械1〕では、(1)分解整備、②設計製作、13臓構と材料、(4〕機械と生活の4項目で構成さ れていますが、各項目でどのような題材を設定されていますか。
12〕、13〕省略
14)〔機械1〕の領域で、問題点があれば御記入下さい。
15〕〔機械2〕では、1!〕エンジンの整備、②エンジンの機構、13〕動力機械と生活の3項目で構成 されていますが、各項目でどのような題材を設定されていますか。
㈲〔機械2〕の領域で、問題点があれば御記入下さい。
(回答結果)
〔機械1〕と〔機械2〕における学習内容の回答結果をまとめて表5に示す。
表5 〔機械1〕と〔機械2〕の学習内容とその枚数
〔機械ユ〕 の学習
学 習 項 目 学 習 内 容 枚数
(1〕整 備 学 習 1.自転車の分解組立ての実習を行なっている。 7 2.自転車を前に置いて分解・組立ての演示をす乱 7
3.していない。 工3
12〕設計・製作の学習 1.動くおもちゃや機構模型を製作させる。 14
2.していない。 13
13)機械のしくみと機 ユ.自転車やミシンを題材として、リンク機構、カ 1ユ
械材料の学習 ム、ベルト車、歯車、軸受などについて機構模型 や教具・ビデオを利用して授業する。
2. していない。 16
14〕機械と生活 ユ.教科書とは別に、機械と生活、技術史、道具と 6 機械の歴史、生活における機械の役割など考えさ せている。
2.教科書の内容を中心とする。 21
〔機械2〕 の学習
学 習 項 目
学 習 内 容
枚数ωエンジンの整備学習 1.2サイクルまたは4サイクルエンジンの分解・ 9 組立てを行なっている。
2.2サイクルまたは4サイクルエンジンの分解・ 3 組立ての演示を行なってい乱
3.教科書を中心に授業をしている。 15 12〕エンジンの構造学習 1.プラスチックや厚紙などを使ってエンジンの模 9
型の製作や、エンジン模型のスケッチ.サブノー ト作りなど作業を中心にしている。
2.教科書を中心に授業をしている。 18
13〕動力機械と生活
1.教科書とは別に、自動車のパンフレットを利用 6DOHCやTURBOなどの話、車社会と生活、環境
汚染との関係などを話す。
2.教科書を中心にすます。 21
自転車を教材としているのは14校で、教材用自転車の台数が少ないので十分な整備学習が出来 ないとの回答が大半である。また設計製作では動くおもちゃや機構模型の設計製作を行なってい るのが14校で半数を占めるが、rおもちゃはおもちゃである」といった意見や、r教科書のもの を作らせると創造性は乏しいが、ほぼ一定したレベルでの作品が出来る」、唱曲製作をさせれば 時間数がかかり、結局中途半端に終ってしまう」という回答が出た。問題点も同じ意味の回答が 多く、〔機械ユ〕の内容は豊富すぎるため、時間数が少なくなって結局座学に終る場合が一番多 い。実習するとなれば、(1〕か②を取り上げるが、ωでは自転車の台数が少ないし、また分解工具 もそろっていない。また、2時間では分解組立ては無理である。12〕では、創造性豊かな製作が出 来ないので、興味が湧かない。教科書のものは「おもちゃ」として中学生も教師もあまり良く思
っていない。
次に〔機械2〕では、(1〕のエンジンの整備学習で5台のエンジンを単学級(22人)で分解・組 立てさせている(1校)、2サイクルエンジン8台で組立て一運転一分解を行なっている(1校)
が特別目立つが、他は古くなった2サイクルまた4サイクルエンジンの分解・組立てであり、そ の中で整備によりエンジンを運転するということは含まれていない(7校)。従って問題点とし て次のような回答があった。 「教材の不足、工具の不足で実習が行なえない」、「他の領域にくら べて講義形式になりやすい」、r実際の2サイクル、4サイクルエンジンを見せて講義するだけ」、
「分解・組立ては人数が多すぎて出来ない」、「前の教科書よりもあまりに簡単すぎてポイントが わからない」、r生徒数、学級数、設備等の条件がそろわないと実習は出来ない」、r専門的な語句 が出て来て生徒がとまどう」、「実習による部品の破損が多く、補充が大へんであり、工具の不足 等で十分な実習が出来ない」、r20時間しかとっていないので分解・組立ては出来ない.1。
〔6〕r産振法」による設備購入から、新しくr教材基準」による設備購入となりましたが、加工 工具、整備工具、工作機械、測定機器等の設備の充実はどのように進められていますか。不備な 点、充実度などお書き下さい。
(回答結果)
色々な表現で回答されて来たので、筆者の判断で充実度が50%未満と50%以上と思われる2群 に分けてその回答を妻6にまとめた。なお、充実度が50%未満と50%以上と思われる回答はほぼ 同数であった。
〔7〕栽培領域の学習について。
一昨年の調査では16校中8校が実施されており、2校が男女共修でした。実施されておられま したら下の間にお答え下さい。
(回答結果)
実施校は27校中5校となり、一昨年の調査校の8校のうち3校が中止していた。各質問につい ての回答をまとめると妻7に示すようである。その中でD校は旧カリキュラムの最終年らしく3 年生3学期に教科書に沿って講義をしているので、実質4校が新カリキュラムで実施していると いうことになる。
〔8〕最近マイクロコンピュータの発達で、パーソナルコンピュータが中学校に導入され始めてお りますが、次の点についてお答え下さい。
(1〕コンピュータを使用した教育方法について考えておられますか。
(2)現在学校に導入して使用されておられる場合、その使用用途について(例:成績管理)。
(3〕将来導入しようと他教科の先生と計画中である場合、その点についてお書き下さい。
(4〕将来パーソナルコンピュータはOHPやVTRのように教育機器として各学校に導入される と思われますか。
(回答結果)
(1)については「考えていない」(16校)で他は無回答。
(2)については、3技あり①PC−880ユ(成績管理、アンケート等の集計に使用)、②PC−880ユ (他教科の先生と相談、協力して目下勉強中)、③M Z−80C(成績管理に使用、ただし個人
持)。
(4〕については、思うと回答したのが16技あり、ただし①「実現は今のところ考えられない……
それよりも一・・ということです」、②「グラフィック利用の立体認識の分野で」、③「教員 が十分使いこなせるかどうかによる、ソフトが充実すれば」、④「予算がおりしだい各校に 1台ずつ配置されるのでは」などの回答があった。
表6 加工工具、整備工具、工作機械、測定機器等の設備の充実度 11〕設備や工具の充実度が50%未満と思われる回答
1.とてもとても……すべてにおいて数がたりない。
2.設備購入費が少なく、充実度などとてもとても、物価の値上りについてゆけない。
3.充実不足。(機械類などじきにこわされるので、実際に使用出来るものは少ない)
4.配分予算は非常に少ない。消耗品の補充に使われてしまう。現在の機械工具の整備に 終始している。
5.あまり充実出来ない。
6.木工具はそろっているが、金工具が少ない。
7.他教科とのバランスがあり、あまりうまくいっていない。
8.少ない、少ない予算ではまだまだです。
9.設備購入費が少ない。充実度など考えられない。
10.木工具などはそろっている。
11.演示用教具等は十分充実しているが、実習用工具、機械等はまだまだ不足。
12.機械領域の整備が出来ない。 1木工具は個人持ですし、金工・電気工具は価格が低い)
特に、エンジンや分解・組立て工具など少ない。
13.r教材基準」が妥当な線とは思わない。 実習に対してはマイナスである。
14.加工工具一式、一組といった表現はわかりにくい。
12〕設備や工具の充実度が50%以上と思われる回答 1.70%程度がな。
2.普通程度。
3.教材費として毎年数十万円の予算がっくようになった。
4.備品については色々不満があるが、いろいろやりくりしている。
5.工具数の不足はあるが、50%程度と思㌔
6、基準には到達しているので、うまくやっている。消耗品として必要晶を買う。
7.別途購入することが出来る。
8.「産振法」の手押しかんな盤や、丸のこ盤がほしい。
9.r教材基準」が施行されてからの方が、工具や機械が買いやすくなった。しかし、晶 目が限定されているので、選びにくいことがある。
l O.高価な機械を購入しにくくなった。
ユ1.予算請求して購入するが、予算の都合上、けずられていることがある。
12.古い備品を廃棄して、校内操作で新規購入している。
ユ3、教材備品がクラス人数(46〜47人)に対して少し不足している。
〔9〕大学院への進学について。
(1)内地留学の形で大学院に進学の希望はおありですか。
(2〕大学院ではどのような専攻を勉強されたいと思われますか。
(回答結果)
(1〕について、進学の希望ありが9名、無し18名であった。
(2〕について、①電気・電子分野(4名)、②機械分野(2名)、③教育法分野(2名)、④学 校を離れて別の角度からながめてみたい(1名)であった。
〔1O〕近況について(省略)。
表7栽培学習の実施例
校名 学年 男女の別 学期 期 問 授業時数 題 材 ク)レーブ・個人
A 3 男 1〜2 5月〜11月 10 秋菊の栽培 グループ
B
3 男・女 1 5月〜1O月 20小菊の玉作り
個人C 3 男 1〜2 5月〜1O月 22 秋菊の栽培 個人 D 3 男 3 1月〜3月
20 教科書で授業
一E
3 男 1〜2 4月〜ユ1月 30 秋菊の福助作り 個人校名 実習・観察点など 栽培形式
生徒の興味
夏休みの管理 A 植えかえから支柱の結束鉢植
あまり関心がない グループ単位で灌水B 植えかえ・摘芽・摘芯など
鉢植
熱心さなし 家庭に持ち帰り観察C
植えかえ・摘芽・摘芯など 鉢植 他の領域と同じ 灌水については全校で分担D 一
E
さし芽から開花まで 鉢植 興味大きい 2人1組で水をやりにくる3.考察とまとめ
以上のごとく、本学技術科の卒業生で比較的若い中学校技術科担当の教員に新カリキュラムを 実施後、問題となるところを回答してもらった結果について考察すると次のようになる。
1ユ〕男女共修問題は昭和48年頃から大阪府の高槻市や京都府の一部において実施され、8)r技術
・家庭科」においても男女共修あるいは男子にも家庭学習領域を学習させるべきである(注:従 来から家庭学習分野には家庭工作(1年生)、家庭機械(2年生)、家庭電気(3年生)と技術 系分野の学習領域があった)との見解から、現場教師による自主カリキュラムにより男女共修を 行ない成功しているとの報告が発表され、一時は新聞にまでとりあげられたものである。一方的 な家庭側からのっきあげとしか言えないこの男女共修問題は、53年の新カリキュラムの改訂によ り男女共修あるいは別学相互乗り入れとアラカルト方式の採用で一応の決着をみたのである。そ れに関して、教員養成系大学・学部の附属中学校における試行に基づいた研究報告2・3・4)で、男 女共修あるいは相互乗り入れの否定的な主張は見られなかった。また、最近報告された文部省特 定研究6・7)においても否定的側面は認められなかったのであるが、今回の本格実施2年目におけ
るアンケート調査では、実にr良いところは全くなし、悪いところはかり」という結果が示され
た。
そして現場教師の反応がこのように急変した原因にはrゆとりのある授業」という名の下に、
技術・家庭科の授業時数が約20%強剛滅されたことが大きく関与したと考えられる。すなわち、
合計70単位時間の減少にも・かかわらず、学習領域の削除は製作実習には最も必要な〔製図〕の1 領域のみであり、また必ず家庭系学習領域をユ領域以上学習させられるために、35単位時間をユ 学習領域単位とすれば、実に3領域分の削減が行なわれたと同じことになり、9領域出来た従来 にくらべてその3分の2の6領域しか授業出来なくなっているのである。従って、35単位時間の 授業が9領域確保されていた場合の高槻市や京都府の報告や国立大学附属中学校の報告時とは全
く異なった状態にあり、旧カリヰエラムに慣れている教師はど「実習の合問をぬって講義をし、
時間に追われっぱなし」の授業を展開しているのである。1領域の授業時数を改訂指導書のよう に短縮してその内容を精選(?)したとすれば「題材が簡単になりすぎて製作意欲をなくする」し、
r教科書通りの題材をとり上げれば完成はするが創造力を養う教科としての特性が失われること になり」、r良くなったものは何もない」と言わしめているのも納得のゆくところである。技術科 教員を養成する本学技術教室においては、創造性豊かな題材で短時間でも完成出来る教材の開発
を早急に研究する必要があることを痛感した次第である。
12〕学習領域の決定と教科書の決定は現場教師の最も気にするところで、r何を教えるべきか を常に考えている」けれども、実状は勤務学校の設備の状況や生徒の状況や興味なども合わせ考 慮しなければならず、教科書はブロック単位で統一されてしまうし、家庭側と相互乗り入れ領域 を相談しなければならず、従って出来る限り時間的にも無理のない学習領域を選んでしまうとい う矛盾を感じているものと思われる。次に示す表8は、27校の回答を参考にして作成した男子生 徒用の年間指導例である。相互乗り入れの家庭学習領域として〔食物1〕を入れている。この計 画表は指導要領に適合しているが、この計画表を修正してもう1〜2領域追加すれば、各領域の 内容が浅くなって指導事項を満足出来るような学習内容には到底達しえないだろうと考える。
表8 男子生徒の技術学習領域の年間指導計画例
学期学年
1 2 3 総時
ヤ数
I 木材加工1(35) 食 物 1(35) 70
n 金属加工1(35) 機 械 1(35)
70
㎜ 機械2(35)
電気1(35)
電気2(35) ユ0513〕機械学習領域の成否は実習用教材の台数と整備工具の充実度にかかっている。整備学習で ある〔機械ユ〕では大半が自転車を教材としており、その自転車の台数が不足すれば、教卓の前 で演示する他はない。新しく設定されたr教材基準」において「分解・組立て用自転車」という 品目は見当らないのである。技術科の指導事項はr知る」、r考える」とrできる」の3本柱から なっているが、前2者より「できる」の項が技術科教育の特徴である。しかるに、整備学習を目 標にした機械学習領域の教科書に示す題材のr自転車」がr教材基準」にないという不思議な現 象をどう説明すればよいかと困惑している。このことは次の〔機械2〕におけるエンジンの整備 においても同様で、27校の平均学級数は6〜9学級で、その場合r教材基準」ではガソリン機関 は2台である。1台はカットモデルを必要とするので、他の1台が実動するエンジンということ
になる。
5〜6人でユ台の分解・組立て用エンジンが必要な整備学習は全く不可能で、従って表6の② 一6に示したようなr必要な品を消耗品として購入する」便法を考え出さねばならない。教材台 数の基準アップとその確保に努力してほしいものである。
中学校の備品(エンジンや工作機械)の故障による実習不可能の場合が多いが、教員は常にそ の整備、補修に努めて生徒に使用させるよう義務を課せられているが、放課後の会議やクラブ活 動の指導、進路指導、研究会など多忙な毎日を送っている。それに補修費も満足に出ないでは実 習が不可能という他はない。これを解決する試案を提示すると、教育委員会は各ブロック単位で 技術員を非常勤として採用し、ブロックの中学校の機械類を修理・整備させる。技術員には工場 などを停年退職した技術者で工作機械の熟練工だった人が適任である。ブロック内中学校を巡回
し機械類の整備を行なえば、常に運転出来る工作機械やエンジンの実習が可能となり、同一機種 を採用しておれば取り換え部品のストックも少なくて済み、補修費も最少でおさまるであろう。
男子教員は産休講師を雇うことはないのであるからこの程度の出費をしてほしいものである。
14〕学習領域として次第に実施が困難になっている領域として〔栽培〕と〔金属加工2〕があ る。今回の調査でも〔栽培〕は27校中実習を伴って実施しているのは4校となり、他の報告6)で も削除する領域として最大の比率を示している。インスタント時代に生きる現代っ子には長期に わたる息の長い作業を行なうのは不向きな題材となり、生育の最も盛んな時期が中学校の夏休み となる題材が多いこともその原因の一つである。4校とも比較的丈夫な秋菊を選んでいることも うなずけるが、これらに関する学習報告も少ない中で、E校の「秋菊の福助作り」の研究報告を 読んで教員の熱心さがないと実施出来ない領域であると感じた。 〔金属加工2〕は前報で述べた ように、〔木材加工2〕よりも工作機械は安全であるが、その価格が高く何台もそろえて実習を 行なうことは経費的に不可能なのであろう。台数が少なくても可能な題材の開発が急務である。
15〕卒業生の諸教員に近い将来への展望を聞くために、パーソナルコンピュータの利用と大学 院への進学について質問をした結果、パーソナルコンピュータに関心はあるが、もう一つ厄介な 荷物を背負いこむことになると思っている側面も感じられる。幸いにして本教室保有の機種を2 校で保有しており、技術教育用ソフトを開発してせび中学校技術科教育に試用してみようと考え ている。また、大学院への進学希望は、ある県の教員間では中問管理職をつくるものとして反対 しているとのことであるが、27名中その3分の1にあたる9名がr有り」と回答しており、その 学習分野についても研究しているようで、本学にも早く技術専攻分野の設立体制を確立しなけれ ばならないと考えている。
本研究に際し、腹蔵なく参考になる回答・御意見を送付下さいました本学技術科卒業生の諸先 生方に、末尾ながら深く感謝の意を表します。
参 考 文 献
1)文部省:r中学校指導書 技術・家庭編」(1978)、開隆堂出版
2)吉田 誠:r技術・家庭科における男女共学について」近畿地区二部・三部会合同研究会資 *斗 (1979)
3)上浦一道、藤沢きみえ、辻本美奈子:r技術・家庭科の男女共学を実施して」奈良女子大学 文学部附属中・高等学校研究紀要21集(ユ980)80
4)冨山朝司、虎丘美代:r学習の成立を求めて一新学習指導要領をふまえた教科指導のあり方」
近畿地区二部・三部会合同研究会資料(1980)
5)岡 俊博:r中学校技術教育における問題点(1)一工作機械の使用状況と男女共修一」
奈良教育大学教育研究所紀要 第18号(1982)91
6)愛知教育大挙技術・家庭科研究会編r技術・家庭科の男女学習に関する研究」(1981)
7)愛知教育大学技術・家庭科硯究会編「技術・家庭科の男女学習に関する研究」(第2報)(ユ982)
8)産業技術研究連盟編r男女共学技術・家庭科の実践」(ユ977)、民衆社