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英国における従業員役員代表制について

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英国における従業員役員代表制について

その他のタイトル On the Employee Representation on Company Boards in England

著者 奥田 幸助

雑誌名 関西大学社会学部紀要

巻 20

号 1

ページ 205‑237

発行年 1988‑12‑20

URL http://hdl.handle.net/10112/00022643

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研究ノート

英国における従業員役員代表制について

On the Employee Representation on Company Boards in England  Kohsuke OKUDA 

Abstract 

The  object  of  present  study  is  to  consider  the  employee  representation  at  board  level,  which  renders  services  for  development  of  organizational  demo cracy.  In  making  this  study,  I take  up  and  examine  the  system  recommend ed  by committee of inquire on industrial democracy in  England. I intend to consider  this  system,  focussing  above  all  the  following  problems. 

First,  many  companies  have  introduced  employee participation  at  each  lev el  of  mamagement.  I examine  the  relevance  of  employee  representation  at 

board  level  to  participation  at  lower  level  of  company. 

Secondly,  I consider  which  is  better  in  view  of  taking  effect  of  the  participation  by  this  system,  onetier  structure or twotier structure‑super‑

visory  board  and  board  of  directorsas in  the  Federal  Republic  of  Germany.  Finally,  I touch  on  the  relevance  of  this  system  to  trade  union  machin ery. 

Key words: decisionmaking, management participation, industrial democracy, execu tive management, employee representation  on the board, shop steward organization,  trade union. 

抄 録 ,

本稿は,組織民主主義の発展の一翼をになう従業員役員代表制について考察するものである。

この研究をすすめるにあたって,英国の産業民主主義研究委員会によって推奨された従業員役員 代表制をとりあげ,これを詳細に検討する。とりわけ,次の論点に焦点をあてて考察をすすめて いく。

従業員による経営参加が,すでにこれまで経営の各レベルで実現している。そこで,まず最初 に,従業員役員代表制と,それ以下のレベルでの参加との関連性を問題にする。次に,従業員参 加の実をあげるためには,役員会の構造をドイツ連邦共和国にみられるような監査役会と取締役 会に二分する二層役員制にするのか,それともこれを一体化した一層役員制にするのか,いずれ が望ましいかを考える。最後に,従業員役員代表制と労働組合機関との関連性を検討する。

キーワード:意思決定,経営参加,産業民主主義,執行経営,従業員役員代表制,職場委員組 織,労働組合

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関西大学「社会学部紀要」第20巻第1

は じ め に

本稿は,英国産業民主主義研究委員会 (Committeeof Inquiry on Industrial lJt:mocracy)  の推奨する従業員役員代表制 (employeerepresentation  on company boards)について考 察するものである。 この委員会は,英国商務局 (Departmentof Trade)の委託をうけて設け られた。 197512月から 1年間にわたって活動をおこない,議長には Lord Bullockがあたっ た。ここでの研究成果は,プロック報告として知られるところである。この委員会にゆだねられ たところは,会社役員会に従業員の代表者を参加させることの問題であった。

本稿では,英国における従業員役員代表制を考察するに際して,とりわけ次の諸点に焦点を合 わせることにする。まずはじめに, 日その導入部として, この制度が要請される時代的背景を 探り,従業員役員代表制の登場の必然性やその意義を明らかにする。当然,英国の各機関から,

これについての提言がなされている。口これらの提言の内容を確かめ, ここから従業員役員代 表制の問題点を浮かびあがらせる。すなわち,これらの提案では,従業員役員代表制と労働組合 との関係,一層役員制か二層役員制かを問う役員会の構造,従業員と株主の代表者の割合を問題 とする役員会の構成,役員会の役割,役員会における従業員代表役員の役割,さらには従業員役 員代表制の法制化の問題が提起されている。つづいて, 曰従業員役員代表制とこれまでに導入 され,発展してきた低レベルでの参加形態との関連性を問題にする。

ところで,この従業員役員代表制をめぐる観念は,従来の企業観とは異なった次元からでてき ている。そこで, 国新しい企業観や, 従業員役員代表制によって影響をうける利害者集団につ いて考察をすすめていく。その後に,固現行の会社役員会の構造と機能,そしてこれとの比較 において, 因従業員役員代表制に適合した役員会の構造と機能に論及する。さらに, 囮 役 員 会の構成にたちいる。そして, 囚従業員役員代表制と労働組合機関との関係を確かめる。最後 に,叫これまでの論旨をまとめておく。

従業員役員代表制の時代的要請

ここ20年来,企業はますます巨大化し,経済の集中化への歩みをすすめてきた。その意思決定 の権限は会社の内外に与える影響が大きいにもかかわらず,最高経営層の手にゆだねられ,とき には海外の親会社でなされることもある。巨大企業におけるこのような権限の集中化は,もはや 社会的に容認されるところとはならなくなってきた。会社は,社会から付託された存在としてそ の要請に応えていかねばならない。いまでは,会社は株主だけの利益を擁護できるような状況で はなく,従業員,顧客,債権者,供給者,地域社会,そして広く社会にたいする責任をうけいれ ざるをえなくなっている。会社は,これらの利害関係集団の意思を反映できるような意思決定の

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あり方を模索していかねばならないとみなされる%

とりわけ,従業員について,会社の意思決定はかれらの生活に強く影響を及ぼすだけに,会社 はかれらの利益に十分配慮をはらうのみならず,かれらにその決定にかかわらせる機会を与えね ばならない。ちなみに,英国産業連盟 (Confederationof British Industry, 以下 CBIと略 称)は, 従業員の利益に配慮をはらう会社の責任 (duty)をうけいれ, そして会社は労働者の エネルギーと能力を発揮させる従業員参加の効果的な体系を発展させるべきであると強く主張し たといわれる。このように経営側の経営参加にたいする従業員の権利の承認は,経営組織の社会 的責任ないし民主的原理の容認でもある丸

しかし,これは労働組合からの要請という実践的妥協によるものでもあった。従業員は,その生 活と安全を脅かす変化にたいしては労働組合組織を通して抵抗する立場にある。低落傾向をたど る英国産業の活性化をはかるためには, 労働組合をかかわらせる (involve)ことは基本的戦略 だとみなされる。なぜならば,このかかわりあいが変化にたいするその抵抗をとどめるのみなら ず,従業員が労働組合を通じて景気後退を阻止し,産業構造の必要な変化を促すという積極的な 役割を果たすがためである3)。従業員役員代表制は,労働組合の果たすこの積極的な役割を前提 に労働組合機関を基盤にして成立することを求められる。

労働組合を背景にして発展してきた参加には, 主に二つのレベル, すなわち全国レベル (na tional  level)  と支部レベル (locallevel)のそれとがある。全国レベルでは, 労働組合会議 (Trade Union Congress, 以下 TUCと略称)による労働組合運動があり,それは産業戦略の 展開と経済の規制とにたいする責任の分担を容認してきた。支部レベルでは,職場委員やそれに 相当する組合代表制があり, この発展によって現場の重要な問題にたいし団体交渉がおこなわ れ,従業員の発言が強められていった。この団体交渉の付議事項は,またますます広まりつつあ る。労働組合は,団体交渉事項としてもっぱら給与や労働条件の改善だけに専念するのではな く,これまで経営の特権とみなされてきた決定領域に浸透しようとしている。団体交渉範囲のこ の漸次的広がりは,一層の産業民主主義を求める現場の願いのあかしであるといわれる4)。これ を法的に支援するのが, 1974年の職場健康•安全法 (Health and Safety  at  Work Act) 1975年の職業安定法 (EmploymentProtection Act)である。 これらの法律は,職場の健康と 安全,余剰人員,情報の公開などこれまで経営に留保されていた決定権を労使の協議にゆだねる

ことを奨めている5)

このような全国的ならびに支部的レベルでの参加の発展にもかかわらず,会社レベルでの隙間 1) Department of Trade, Report of the Committee of Inquiry on lndustr Democracy,1977, p. 

20. 

2) Department of Trade, ibid.,  pp. 2021.  3) Department of Trade, ibid.,  pp. 2122.  4) Department of Trade, ibid., p. 23.  5) Department of Trade, ibid.,  pp. 2324. 

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関西大学『社会学部紀要」第20巻第1

は埋めきれるものではなかった。それを満たすことのできるのは,会社レベルの役員会での従業 員役員代表制によってのみであるという見解にたつ人たちがいる。これが, TUCの 立 場 で あ る。支部レベルでの従業員の影響力を増大する重要な方法としての団体交渉を信じながらも,そ れだけでは果たしえない重要な決定の範囲があるということを主張する。投資,立地,閉鎖,買 収,合併,組織の製品別特化のような決定は,これまで団体交渉の関与しないレベルでとりあげ られている。ここにコントロールの新しい形態が必要とされるというのである6)。このように全 国レベルと支部レベルでの団体交渉によって,労働者は既存の経営特権に浸透しつつあるも,こ れだけではいまなお関与の及ばない経営の決定領域が残る。これに参加するための制度として,

会社レベルの従業員役員代表制が構想されてくるのである。

従業員による経営参加の推進は,経済的要因のほかに教育や生活水準の向上によるところでも ある。一層多くの人たちが教育をうける機会を与えられたばかりでなく,教育内容そのものも変 化をきたしてきた。これまでのような公式的な権威主義的教育方法ではなく,個人のイニシア ティプや能力をひきださせるための自主的,問題本位のアプローチをとることになった。社会の この民主的風潮は,自ずと職場で働く人たちにも影響する。これとならんで生活水準の向上は,

人々をして生活の質や作業条件の改善に目を向けさせた。そこで,これを保証するための機構の 必要性が強調されることになった。このような教育と生活水準の向上の結果は従業員に自から作 業環境をコントロールし,労働生活に影響を及ぼす決定に発言していこうとする欲求の高まりと なった。伝統的な経営特権はうけいれられなくなり,経営者は,従業員を経営の意思決定にかか わらせる必要性と利点を認めた参加的管理の様式 (astyle of participative management)

とりいれざるをえなくなったのである 。

さらに,参加の議論にかなりの影響を与えたいま一つの事実は,英国の近隣諸国での経験であ った。西ヨーロッパは, 8カ国が従業員役員代表制の運営についてある種の計画を有している。

なかでもドイツ連邦共和国では共同決定 (Mitbestimmung)法にもとづいて従業員2,000人以 上を雇用する会社の監査役会 (supervisoryboards)に代表者を参加させたし, スウェーデン では実験的に会社役員会に従業員代表者を参加させた。 これは, その成功した点で注目に値す る。また, EEC委員会は,その構成国家にたいして労働会議 (WorksCouncil)や監査役会へ の従業員代表制を含む従業員参加の要件を満たすことができるような会社法の修正提案を試みて きた。そこで, EECの一員である英国政府も,役員会レベルの代表制についての議論にかかわ らないわけにはいかなくなってきた8)

このようにプロック委員会は従業員参加を時代のすう勢としてとらえ,従業員参加を求める民 主的な要請が広くこの国にあることを信じ,この合意にもとづいて参加の程度や方法が論じられ

6) Department of Trade, ibid., p.  24.  7) Department of Trade, ibid., pp. 2324.  8) Department of Trade, ibid.,  pp. 2425. 

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るべきであると考える。これとともに現行の参加形態が補われ,拡充され,発展される方法を考 えていこうとするのである。その焦点に合わされたのが,従業員役員代表制である9)

従業員役員代表制についての各種提案

産業民主主義を拡大するための一つの方法として,従業員役員代表制が各方面で提唱されてき た。しかし,その構想する内容には,かなりの相違がみられる。ここでは, TUC,EEC, ならび CBIの三つの考えをとりあげてみる。

TUCの見解

1974年の報告書,『産業民主主義 (IndustriaDemocracy)』に掲載され, その後修正をうけた TUCの提案の主たる内容は,下記のごとくである10)

a)労働者役員代表制は,承認されかつ主体性のある労働組合が求めることのできる法的権利であるべきで ある。

b)代表者の選出は,労働組合機関を通じてなされるべきである。

c)役員会の半数は,労働代表者によって占められるべきである。

d)この規定は,(少なくとも当初は) 2,000名,もしくはそれ以上の人々を雇用するすべての会社と集団に 適用されるべきである。

e)労働代表者の責任は株主役員のそれと全く同じというよりもむしろ似通ったものであり,その構成員に たいするかれらの責務と報告は保証されるべきである。

TUCのこの提案の基調にあるのは,近代企業にあっては,資本と労働は対等のパートナーで あるという見解である。 TUCは,コントロールの面で資本と労働の代表者の間に現在不均衡が みられ, これを是正するためには共同規制 (jointregulation)の拡大が必要であるとみなす。

そして,この共同規制を有効なものとするには,集団代表制 (collectiverepresentation)をと ることが最善の方法であると想定する。それは,役員会に出席する従業員代表者の任命やその構 成員への報告は団体交渉の場合と同様の機関ないしはサプ構造を通しておこなわれなければなら ないというものである11)。また, TUCは,企業の役員会での政策決定方式が労資対等 (equali ty)になるよう変えられるべきであるという。この対等の要求は,具体的には再編成される政策 役員会に従業員と株主の代表者が半数ずつ割りあてられるべきであるという主張となる。従業員 代表役員の数が少ないならば,その主張は株主代表役員によって票数で否決されることになり,

両者の間の信頼関係がそこなわれるのみならず,等しく責任をとることもできなくなるというの

9) Department of Trade, ibid.,  p. 25.  10) Department of Trade, ibid.,  pp. 2627.  11) Department of Trade, ibid., p. 27. 

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関西大学「社会学部紀要」第20巻第1

である12)

TUC この従業員役員代表制をとりいれるために,会社法の改訂と新しい立法化を提唱す る。現行の法律は, 「会社の利益 (interestsof the company)」を株主の利益と同義に解釈し ている。株主の利益とならんで従業員のそれをも考慮にいれる法的義務を会社に課することによ って,労使の共同利益 (jointinterests)を示すように変えられるべきであるという13)

さらに, 役員会の構造について, TUC 197¥f: の報告では役員会の二層構造 (twotier structure)を示唆した。それは,西ドイツでみられるように広範な政策の枠組を設定する第一 層の最高役員会と, これを実行に移す第二層の経営役員会 (secondtiermanegement board)  からなる。従業員役員代表制の導入が意図されるのは, 第一層の最高役員会においてである。

しかし, その後この役員会構造についての見解を修正し,英国における現行の単一役員会制 (unitary board)を基軸に編成し直すことによっても,労働組合の目的は達せられるであろう ということを示した14)

TUCの言及する従業員役員代表制は,他のレベルでの産業民主主義の拡大にとってかわるも のではない。その機能は,むしろ企業の低いレベルでの団体交渉による共同規制を補完すること である。実際TUCの発言のなかには,役員会レベルでの代表制の成否は,低いレベルでの産業 民主主義の強化と,さまざまなレベルの間での結びつきの効果にかかっているという考えがみら れる15)

EECの政策

従業員役員代表制に関する EECの提案は, グリーン・ペーパー『従業員参加と会社構造 (Employee Participation and Company Structure)』とヨーロッパの会社にむけての草案(Draft Statute for European Companies)にみられる。グリーン・ペーパーでは, 従業員はますま す株主と同じように企業活動に利害をもつようになってきているとみなされ,意思決定構造はこ の事態を反映するものでなければならないと結論づけた。従業員役員代表制は新しい一つの意思 決定方式であり, EEC委員会 (EECCommission)はこの制度を企業のさまざまなレベルでの 従業員参加のシステムにとって不可欠な部分として位置づける。従業員役員代表制を導入するに あたって, EECを構成するそれぞれの国家はその独自の体系にあうような弾力的なアプローチ をとることが望ましいとして, EEC委員会は, それについての単一の案を示さなかった。しか し,ヨーロッパの会社に向けての草案という形で,代表制についての EEC委員会の特別な提案 がある。この草案は, EEC域内で2カ国以上にわたって活躍する会社の組織形態に向けて用意

12) Department of Trade, ibid., pp. 2728.  13) Department of Trade, ibid.,  p. 27.  14) Department of Trade, ibid.,  p. 28.  15) Department of Trade, ibid.,  p. 28. 

(8)

されたものである。産業民主主義に関する主な規定は,次のごとくである16)

a)二層役員制 (twotiersystem)をとり,それは,監査役会 (supervisoryboard)と,これによって任 命され,監督される経営役員会 (managementboard)からなる。

b)監査役会は, 3分の1の株主代表者, 3分の1の従業員代表者. ならびにこの両代表によって選出さ れた,一般の利益を代表する3分の1のメンバーから構成される。

c)監査役会は,すべての経営情報を得る権利をもち,また活動の停止や変更,大きな組織変更,他の企業 との長期協定の提案にたいする拒否権の行使をなすことができる。

d)監査役会に送られる従業員代表者の任命は,すべての構成国家で間接選挙の同一システムによるものと する。それは,労働組合員のいかんを問わず,すべての従業員によって投票される。

e)会社内のすべての事業所が代表されるヨーロッパ労働会議 (European Works Councils)がもたれ る。そこでは既存の団体交渉機関を否定するような役割をもつのではなく,経営役員会にかかわる幾つ かの権能,すなわち会社の雇用政策や労働条件の問題についての共同決定,監査役会の拒否にあうよう な問題についての事前協議,ならびに広範にわたる他の問題に関する情報とかかわりあう。

プロック委員会は,この計画案を会社の役員会で労働と資本とが対等な代表制を実現するため の一つの代案としてみなされることができるという。これが TUCの政策と違うところは,第1 に役員会に第3集団である「独立性のある」構成員を導入し,その役割を主張する点,第2に従 業員代表役員の間接選挙のための手続を関係当事者の合意にゆだねるよりもむしろ,すべての構 成国家における複雑な法的手続にまで念入りにつくりあげている点,第3に投票が組合員であろ うとなかろうとすべての従業員によるものでなければならないということを規定する点において である。これと同時に, EEC委員会は,産業民主主義のこのような拡大が産業経営や業績に望ま

しい結果をもたらすであろうという点については TUCと同じ見解をとる")。

CBIの提案

CBIは,「参加協約 (participationagreement)」にもとづいて産業民主主義の拡大を提案す る。これは参加の内容を法の強制によってではなく,当事者間の任意の協約によって定めようと するものである。 CBI 強制的なやり方で企業に従業員役員代表制を導入させることにたい しては批判的である。企業にはそのおかれている状況によって異なった参加の要望があり, した がってそれを反映した任意の参加計画の価値を強調する。そのいわんとするところは,参加につ いてこれまでとは違った形態を発展させる場合には,弾力的であり,すでに発展させられてきた

ところのものを基礎に築かれねばならないということである18)

事実多くの大小の会社が,すでに公式的ではあるが,任意の協議によるとりきめをすることに 成功している。そこで, CBIは実行ができ, 参加の拡大の必要性が感じられる一定規模のすべ

16) Department of Trade, ibid.,  pp. 2829.  17)  Department of Trade, ibid.,  pp. 2930.  18) Department of Trade, ibid.,  p. 30. 

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ての会社に全従業員を代表する協議機関が積極的に設定されるぺきであると提案する。しかし,

相当の期間をおいても,参加の形態について任意の合意が得られる可能性がないような大会社に は,独立した第3者による強制的な仲裁に入るための法の要件が必要であることをも認めてい る。そこで, CBI なんらかの立法化が望ましいという結論をひきだす。 この発言の中心に なっているのが,「参加協約」である。 2,000人以上の従業員を雇用する会社は, 4年以内に従業 員と参加の合意を得るようにする。これが効力を発するためには,この合意は,大多数の従業員 の秘密投票による賛成を必要とする。団体交渉や経営の業務執行機能を保証する一般的な規準に 合致する限り,協約の当事者たちは,協約の範囲と内容を決定するに際して最大の弾力性をもた

される19)

CBIが現在重きをおいているのは, 役員会より下のレベルでの参加である。職場から上に向 かっての産業民主主義の漸進的,有機的な発展を求めているのである。従業員の参加の意思は,

低いレベルでこそ培われるというのである。 CBI, 現時点では役員会レベルでの従業員役員 代表制は必ずしも参加に適した形態ではないという。とはいえ,特定の会社の労使間で代表制に ついての任意的な協定が得られる可能性を否定するものではない。そのような協約は,次のよう な規律に合致していなければならないと主張する。すなわち,従業員によって選ばれた役員は3 分の1であり,その選挙は秘密投票によらなければならない,株主の法的権利が侵されるべきで ない,そして企業にたいする全役員の責任が弱められるべきではないというものである20)。 い ずれにせよ, CBIの提案の意味するところのものは, TUCEEC委員会によって主張され るところとは違って現在のところ産業民主主義の拡大に従業員役員代表制が積極的に貢献すると ころはほとんどないということである20)

従業員役員代表制と役員会レベル以下の参加との補完関係

1.  役員会レペル以下の参加の意義

プロック委員会は,役員会レベル以下の参加に重要な配慮をなし,従業員役員代表制とそれ以 下のレベルにおける参加構造との関連性を問題にした。そこで,この関係について各方面からの 意見を参考にして,その見解を表明した。従業員役員代表制は,それ以下のレベルでの参加と一 体になってこそ産業民主主義発展の一翼をにないうると。「必要とされるところのものは企業の すべてのレベルでの参加ないしは共同規制 (joint regulation)の相互に関連した構造であり,

役員会レベル以下の十二分に発展した構造が絶対必要なことは明らかである」21)

19) Department of Trade, ibid.,  p.  31.  20) Department of Trade, ibid.,  p.  31.  21) Department of Trade, ibid.,  p.  41. 

(10)

このように両者の補完関係の重要性を強調しながらも,現時点で従業員役員代表制をしくにふ さわしい参加のサプ構造が存在するかということになると,問題なしとはしない。そこで,役員 会レベル以下の参加の形態を強化し拡大するのを待って,従業員役員代表制を展開さすべきでは ないのかという見解も表明されることになる。これによると,参加は従業員の日常的に関心のあ る問題から始まり,逐次長期的,複雑な問題に移っていくことによって,かれらは上層レベルでの 参加の関心を呼び起こし,一層困難な問題を解決しうる経験と熟練を習得しうるとみなされる。

かくして大きな会社ではより上層レベルでの意思決定に貢献しうる能力をもった従業員代表集団 が育成されることになる。プロック委員会は,この過程はすでに進展しているし,また広範囲に わたる参加がすでに役員会レベル以下に存在しているとみなす。従業員参加は,内容の豊かなコ ミュニケーションから,決定にたいする共同責任,職務充実や参加的管理の実験にいたるまでの 多様な形態をとることもあるし,また不文律の慣行化した実践から,規定化された代表者会議の ような公式構造にまで及ぶこともある22)。これらの参加形態は,従業員役員代表制に現実的配慮 を与えるほどまでに発展しているととらえられる。以下,ブロック委員会にしたがって役員会よ

り低いレベルでの参加形態の意義と現状をみていこう。

2.  役員会レペル以下の参加形態と現状

コミュニケーション

従業員への適切な情報の提供は,多くの会社によって試みられてきた。これによって,経営と 従業員は,相互理解と連帯性 (involvement)を高めることができるとみなされた。離職率,生 産性,賃金,間接費,利潤,配当ならびに資本投下の間の関係を従業員に知らせることは,かれ らに自分たちの利害と会社のそれとが相互に依存しているということを理解させることになる。

とはいえ,この情報の提供だけをもってして,真の連帯を保証するものではない23) 協 議 機 関

今日, 英国の多くの大会社では, 労使の間のコミュニケーションを促進するために公式の協 議機関 (consultativemachinery)がもたれている。 この際協議 (consultation) 交渉 (negotiation)ないしは団体交渉とは異なることが慣行的に認められてはいたが,実際にはこの 区別は曖昧であり,最近では協議機関と交渉機関が次第に融合していく傾向にある。参加を,コ ミュニケーション,協議ならびに共同決定に厳密に範疇化することが疑わしいほどに協議という 言葉の有用性に疑問がもたれている24)

22) Department of Trade, ibid., pp. 4142.  23) Department of Trade, ibid., p. 42.  24) Department of Trade, ibid., pp. 4243. 

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