3 次元シェルピンスキー・ガスケット上のルー プ・イレーズド・ランダムウォーク
学修番号
15878301
芦沢 宏治目 次
1
イントロダクション2
2 3
次元プレ・シェルピンスキー・ガスケットとループ・イレーズド・ランダムウォークの構成
3
2.1 3
次元プレ・シェルピンスキー・ガスケット. . . . 3 2.2
パス空間とループ消去. . . . 5
3
確率測度と生成関数12
4
ループ・イレーズド・ランダムウォークの連続極限の存在16 4.1 3
次元シェルピンスキー・ガスケット上のパス空間. . . . 16 4.2
連続極限. . . . 18
5 Appendix A 27
6 Appendix B 29
1 イントロダクション
この論文では,
3
次元シェルピンスキー・ガスケットというフラクタル 上のループ・イレーズド・ランダムウォークの連続極限の存在について 扱っている.シェルピンスキー・ガスケットおよびループ・イレーズド・ランダムウォークについては後で説明する.
2
次元のシェルピンスキー・ガスケットにおけるループ・イレーズド・ランダムウォークについては,
連続極限の存在や様々な性質が得られている
([2])
.さらに2
次元のシェ ルピンスキー・ガスケット上のループ・イレーズド・ランダムウォークで は,ループを大きい順に消して構成するときと,ループができた順に消 したときの分布が一致することが証明されている([6])
.一方,3
次元に拡 張したシェルピンスキー・ガスケット上のループ・イレーズド・ランダム ウォークについては何も調べられていない.本論文では,2
次元のシェル ピンスキー・ガスケットに対して用いられたループを大きい順に消して 構成する方法を,3
次元のシェルピンスキー・ガスケットに適用してルー プ・イレーズド・ランダムウォークを構成できることを示す.3
次元では2
次元では存在しなかった困難が生じるが,連続極限の存在を証明した.また,パスのループ和の計算は,
3
次元になるとかなり計算量が多くなる ためMathematica
を用いて計算した(Appendix B)
.第2
章では,3
次元 プレ・シェルピンスキー・ガスケットとループ消去の手順など,第3
章で 扱うループ・イレーズド・ランダムウォークの確率測度を定義するために 用いる記号や定義をまとめた.第3
章では,ループ・イレーズド・ランダ ムウォークの確率測度と生成関数に関する定義と命題を述べる.第4
章で は,連続極限の存在を証明するための準備と,連続極限の存在の証明をまとめた.
Appendix A
では,本論文で用いた分枝過程の基本的な事項をまとめた.
Appendix B
では,パスのループ和の計算についてまとめた.謝辞
この研究に取り組むにあたり,
2
年間お世話になり論文作成に最後まで指 導していただいた服部久美子教授に,心から感謝しています.また,ゼミ で共に議論してくださった同研究室の先輩や後輩たちにも,心から感謝し ています.2 3 次元プレ・シェルピンスキー・ガスケットとループ・
イレーズド・ランダムウォークの構成
2.1 3
次元プレ・シェルピンスキー・ガスケットまず,
3
次元プレ・シェルピンスキー・ガスケットとよばれる無限グラ フを定義する.これは3
次元シェルピンスキー・ガスケットというフラク タルの離散近似に相当する.次に,このグラフ上のパス(
辺に沿って動く 軌跡)
を定義し,粗視化およびループ消去の操作を導入する.定義
2.1 (3
次元プレ・シェルピンスキー・ガスケット). O = (0, 0, 0), a
0= (
12,
√63,
√36), b
0= (
12,
√23, 0), c
0= (1, 0, 0)
とする.また,G
′0= { O, a
0, b
0, c
0} , E
0′= {{ O, a
0} , { O, b
0} , { O, c
0} , { a
0, b
0} , { a
0, c
0} , { b
0, c
0}} , F
0′= G(G
′0, E
0′)
とおく(
図1)
.ここで,G(G
′0, E
0′)
はG
′0を頂点の集合,E
0′ を辺の集合とするグラフである.以下では,Z
+= { 0, 1, 2, · · ·}
とする.また,帰納的にグラフの列
{F
N′}
∞N=0をF
N+1′= F
N′∪ (F
N′+ 2
Na
0) ∪ (F
N′+ 2
Nb
0) ∪ (F
N′+ 2
Nc
0)
のように定義する
(N ∈ Z
+)
.ここで,F
N′+ a
は,F
N′+ a = {x + a : x ∈ F
N′}
とする.F
N′ と,F
N′ をyz
平面に関して折り返したものの和集合をF
N′′とおき,F
0=
∪
∞N=0
F
N′′とする.このようにして得られたF
0を(
無限)3
次元プレ・シェル ピンスキー・ガスケットという.さらに,
G
0とE
0をそれぞれF
0の点の集合と辺の集合とする.各N ∈ Z
+に対して,
F
N= 2
NF
0とおき,G
N= { 2
Nx : x ∈ G
0} , E
N= { 2
N{ x, y } : { x, y } ∈ E
0}
とする.つまり,
F
Nは1
辺の長さが2
Nの粗い3
次元プレ・シェルピンス キー・ガスケットである.O a
0b
0c
01
図
1 F
0′次に
F
0上のパスと,それに関連する用語を定義する.定義
2.2 (F
0上のパス). F
0上の有限長さのパスの集合W
を次のように定 義する.W = { w = (w(0), w(1), · · · , w(n)) : w(0) ∈ G
0, { w(i − 1), w(i) } ∈ E
0, i = 1, 2, · · · , n, n ∈ N}
.O
出発のパスの集合をW
∗とする.つまり,W
∗= { w = (w(0), w(1), · · · , w(n)) ∈ W : w(0) = O }
.また,
l(w)
をw
の長さとする.すなわち,w = (w(0), w(1), · · · , w(n))
に 対して,l(w) = n
とする.定義
2.3 (
自己回避パス). w ∈ W
∗で,一度通った点を通らない(
自己回 避)
パス全体をΓ
とする.つまり,Γ = {w = (w(0), w(1), · · · , w(n)) ∈ W
∗: w(i) ̸= w(j), 0 ≤ i < j ≤ n, n ∈ N} .
定義
2.4 (
到達時刻). w ∈ W, A ⊂ G
0に対してT
A(w) = inf { j ≥ 0 : w(j) ∈ A }
と定義する.ここで,inf ϕ = ∞
とする.w ∈ W, M ∈ Z
+に対してG
Mの到達時刻の列{ T
iM(w) }
mi=0を次のよう に定める.T
iM(w) =
T
GM, (i = 0)
,inf { j > T
iM−1(w) : w(j) ∈ G
M\ { w(T
iM−1(w)) }} , (i ≥ 1)
.(1)
ただし,
m = inf { j ≥ 0 : T
j+1M(w) = ∞}
とする.T
iMは,F
0上のパスw
がi
回 目にG
Mの点を訪れる時刻を表す(
ただし,同じ点を連続して複数回訪れ たときは1
回とみなす)
.2.2
パス空間とループ消去定義
2.5 (
パスの種類1).
各N ∈ Z
+に対し,O
からa
Nへのパスで,F
N′ を折り返してできた三角錐の頂点a
′N, b
′N, c
′Nを通らないものを3
種類に分 ける.(1) W
N1(O
からa
Nにいく途中,b
N, c
Nを通らない)
W
N1= { w = (w(0), w(1), · · · , w(n)) ∈ W
∗: w(n) = a
N, T
1N(w) = n } , (2) W
N2(O
からa
Nにいく途中b
Nを通るが,c
Nを通らない)
W
N2= { w = (w(0), w(1), · · · , w(n)) ∈ W
∗: w(n) = a
N, w(T
1N(w)) = b
N, T
2N(w) = n } ,
(3) W
N3(O
からb
N, c
Nの順で通りa
Nにいく)
W
N3= { w = (w(0), w(1), · · · , w(n)) ∈ W
∗: w(n) = a
N, w(T
1N(w)) = b
N, w(T
2N(w)) = c
N, T
3N(w) = n } .
また,補助的に次のような
2
本のパスの組を導入する.定義
2.6 (
パスの種類2). W
N4(O
からa
N,b
Nからc
Nの互いに交差しな い2
本のパスの組)
W
N4= { (w
1, w
2) ∈ W
∗× W : w
1(0) = O, w
1(T
1N(w
1)) = a
N, w
2(0) = b
N, w
2(T
1N(w
2)) = c
N} .
また,自己回避なパスの空間の種類を次のように表す.
W
Nk∩ Γ = ˆ W
Nk, k = 1, 2, 3, 4. (2)
O a
0b
0c
0O a
0b
0c
0O a
0b
0c
0O a
0b
0c
0図
2 W
01, W
02, W
03, W
04のパスの例定義
2.7 (
粗視化). w ∈ W, M ∈ Z
+に対して,Q
M を(Q
M(w))(i) = w(T
iM(w)), i = 0, 1, 2, · · · , m
(m
はT
m+1M(w) = ∞
となる最小の整数)
と定義する.ここで,{ T
iM(w) }
mi=0 は式(1)
で定義したG
Mの到達時刻の列である.Q
Mw = [w(T
0M(w)), w(T
1M(w)), · · · , w(T
mM(w))]
は
F
M 上のパスである.ループについて定義する.
定義
2.8 (
ループ).
パスw ∈ W
が同じ点を通るとき,ループをもつと 定義する.より正確には,点c = w(i) ∈ G
0に対して,w(i) = w(j)
とな るi, j ∈ Z
+(i < j )
が存在するとき,w
の時刻i
から時刻j
までの部分をc
におけるループとよぶ.各ループは他の点における,より大きいループの 一部をなすこともある.また,ループ{ w(i), w(i + 1), · · · , w(j) }
の直径d
を,d = max
i≤i1<i2≤j|w(i
1) − w(i
2)|
で定義する.定義
2.9 (
脱出時刻とスケルトン). T
M を,各頂点がG
M の要素で各辺 がE
M の要素となる閉三角錐で上向きなものの全体の集合とする(M ∈ Z
+)
.{ T
iM(w) }
mi=0を式(1)
で定義した到達時刻の列とする.w ∈ W
に対 してw
が通り抜ける2
M−
三角錐の列(∆
1, · · · , ∆
k)
と,それらからの脱 出時刻の列{ T
iex,M(w) }
ki=0を次のように定める.i = 0
のとき,T
0ex,M(w) = T
0M(w), ∆
1を∆ ∈ T
Mでw(T
0M)
とw(T
1M)
を 含むものとする.(
ゆえに,w ∈ W
∗ならT
0ex,M(w) = 0)
次に
i ≥ 0
に対してはJ (i) = inf { j ≥ 0; j < m, T
jM(w) > T
iex,M−1(w), w(T
j+1M(w)) ∈ / ∆
i}
とする.ただし,inf ∅ = ∞ , k = min { i ≥ 1 : J(i) = ∞}
とおく.i = 1, 2, · · · , k − 1
に対して,T
iex,M(w) = T
J(i)M(w)
とし,∆
i+1を∆ ∈ T
Mで,
w(T
iex,M), w(T
J(i)+1M)
を含むものとする.i = k
のとき,T
kex,M(w) = T
mM(w)
と定義する.このようにして定めた
σ
M(w) = (∆
1, · · · , ∆
k)
をパスw
の2
M−
スケル トンとよび,T
iex,M(w)
をスケルトンのi
番目の要素(
三角錐)
からの脱出 時刻という.またw = (w
1, w
2) ∈ W
N4のときは,w
1, w
2それぞれに対して スケルトンおよび脱出時刻を決める(N ≥ M)
.定義
2.10 (
スケルトンによるパスの分割). w ∈ ∪
4k=1
W
Nk, N ≥ M, σ
M(w) = (∆
1, · · · , ∆
k)
とする.このとき,各∆
i∈ σ
M(w)(i = 1, 2, · · · , k)
に対して その分割を次のように定める.w |
∆i= [w(n), T
iex,M−1(w) ≤ n ≤ T
iex,M(w)]
必要なら,平行移動,回転,
2
N−Mスケール変換により,Q
Mw(T
iex,M−1)
をO, Q
Mw(T
iex,M)
をa
N−Mと対応させてw |
∆iを∪
4k=1
W
Nk−Mの要素と同一視す る.このような分割は一意に定まる.簡単のため,同一視された∪
4k=1
W
Nk−M のパスに対しても同じ記号で表す.O
b 2
c 2 a 2
∆
1, ∆
2, ∆
3w |
∆1, w |
∆2, w |
∆3図
3
スケルトンσ
1(w)
と分割されたパス(
相似変換後)
の例 次に,ループを消去する操作を定義する.ループの消し方は,ループが できた順に消す方法と,大きいループから順番に消す方法が考えられる.2
次元シェルピンスキー・ガスケットでは,どちらの方法でループを消去 しても分布が等しいことが証明されている([2]
参照)
が,一般には分布は 等しくならない.この論文では,2
次元で用いられた大きい順に消す方法 をもとに,3
次元シェルピンスキー・ガスケットに適用できるループ消し の方法を考案する.2
次元と3
次元のシェルピンスキー・ガスケットの構 造の違いから必ずしも大きい順に消されるわけではないが,生成関数を用 いて,解析可能になる.定義
2.11 (
ループ消去1.1(k = 1, 2, 3
のとき)). w ∈ ∪
3k=1
W
1kのループ消 去を定義する.まず,{ s
i}
ni=0を次のように定義する.s
0= 0,
s
i= sup { j : w(j) = w(s
i−1+ 1) } , i ≥ 1,
次にループ消去を定義する.
w
からループ{ w(s
j−1+1), w(s
j−1+2), · · · , w(s
j− 1) }
を消去したものをLw
′とおく(s
j> s
j−1+ 1, j = 1, 2, · · · , n
のときに ループが存在する)
.つまり,Lw
′= [w(s
0), · · · , w(s
n)].
ここで,
w(s
n) = a
1.
定義
2.12 (
ループ消去1.2(k = 4
のとき)).
補助的に導入したW
14に属す るパスの組w = (w
1, w
2)
に対しても,ループ消去を定義する.F
0と三角 錐Oa
1b
1c
1の共通部分上の,それぞれO
からa
1まで,b
1からc
1までの,ループをもたず,かつ互いに交わらないパスの組で置き換える.条件を満 たすパスの組の集合を
W
1∗4とする.W
1∗4= { v = (v
1, v
2) ∈ W
14: v
1, v
2はループをもたず,互いに交わらない} .
W
1∗4は285
個の要素をもつ.この段階では置き換えうるパスの組は一意 に定めず,第3
章でランダムウォークを導入したあとで,置き換えるパスの組に適切な分布を導入する.この章では
w = (w
1, w
2) ∈ W
14に対してLw
は可能な置き換えの一つとする.以上の操作で,
w ∈ ∪
4k=1
W
14に対してはループ消去が定義された.w ∈
∪
4k=1
W
N4 に関しても,帰納的に定義する.定義
2.13 (
ループ消去2). w ∈ ∪
4k=1
W
N4 とする.w
′= Q
N−1w = [w(T
0N−1(w)), w(T
1N−1(w)), · · · , w(T
kN−1(w))]
,w(T
kN−1) = a
Nと定義する
(
このとき,2
−(N−1)w
′∈ ∪
4k=1
W
14となる)
. また,{ s
i}
ni=0を次のように定義する.s
0= sup {j : w(T
jN−1) = 0},
s
i= sup { j : w(T
jN−1) = w(T
sNi−−11+1) } , i ≥ 1,
次に,ループ消去L
とL
N−1を定義する.Lw
′= [w(T
sN0−1), · · · , w(T
sN−1n)]
とする.(2
−(N−1)Lw
′∈ ∪
3k=1W ˆ
1kとな る)
ここで,w(T
sNn−1) = a
N.L
N−1w = [w
0, w
1, · · · , w
n−1, a
N]
とする.(
ここで,w
iは,w
i= [w(T
sNi−1), w(T
sNi−1+ 1), · · · , w(T
sNi+1−1− 1)]), i = 0, · · · , n − 1.)
以上の操作をまとめると,まず粗視化したパス
Q
N−1w
からループを消 す.この部分は∪
4k=1
W
1kのパスからループを消す方法と同じである.そ の結果残ったパスの部分に細かい構造を戻す.これで,直径が2
N−1以上 のG
N−1に属する点におけるループはすべて消されたことになる.G
N−1 以外の点での2
N−1以上のループは消されていないかもしれない.これが3
次元の困難点である.定義
2.14 (
ループ消去3). N ≥ M
とする.(L1)
まず,Q
M−1w
′|
∆i= [w
′(T
kM−1), w
′(T
k+1M−1), · · · , w
′(T
k+kM−10
)]
とする.ここで,
w
′(T
kM−1)
は上向き三角錐∆
の最初の点で,w
′(T
k+kM−10
)
は 上向き三角錐の脱出点である.(L2)
また、{s
i}
ni=0を次のように定義する.s
0= sup { j; w
′(T
jM−1) = w
′(T
kM−1) } ,
s
i= sup { j; w
′(T
jM−1) = w
′(T
sMi−1−+11) } , i ≥ 1.
このとき
L(Q
M−1w
′|
∆) = [w
′(T
sM0−1), w
′(T
sM1−1), · · · , w
′(T
sMn−1)].
(
ここで,w
′(T
sM0−1) = w
′(T
kM−1)), w
′(T
sMn−1) = w
′(T
k+kM−10
))
ここで定義2.10
で述べたようにw
∆を∪
4k=1
W
0kのパスと同一視していることに注意.(L3)
次にL
M−1(w |
∆) = [w
0′, w
1′, · · · , w
n′−1, w
′(T
sMn−1)]
とする.ここで,
w
i′= [w
′(T
sMi −1), w
′(T
sMi+1−1), · · · , w
′(T
sMi+1−1− 1)], i = 0, 1, · · · , n − 1.
(L4)
すべての∆ ∈ σ
M(w
′)
に対して,L
M−1(w |
∆)
を連結しw
′′= L
M−1w
を つくる.次に,すべての
∆ ∈ σ
M(w
′)
に対して,(L2)
で得たL(Q
M−1w
′|
∆)
を 連結して,Q ˆ
M−1w
をつくる.このとき,Q ˆ
M−1w
は,Q
M−1( ˆ Q
M−1w) = Q ˆ
M−1w
が成り立つ.O
からa
NへいくF
M−1上のパスである.Q ˆ
M−1w = Q
M−1w
′′をみる.すべてのループが消去され,
Lw = L
0w = ˆ Q
0w
が成り立つまでこの操 作を続ける.必ずしも大きい順とは限らないが,最後まで繰り返し操作を 行うとループはすべて消える.ループ消去を行う間,任意のw ∈ W
N′ に 対してσ
K( ˆ Q
Mw) = σ
K( ˆ Q
Kw)
がすべてのM ≤ K ≤ N
で成り立ち,特に,σ
K(Lw) = σ
K( ˆ Q
Kw), K ≤ N
が成り立つ.定義
2.15 (
スケルトンの要素のタイプ). w ∈ ∪
4k=1
W ˆ
Nk, N ≥ M, σ
M(w) = (∆
1, · · · , ∆
k)
とするとi = 1, 2, · · · , k
で,あるn(i)
が存在してT
iex,M−1(w) = T
n(i)M(w)
が成り立つ.このとき,∆
iが次の条件を満たすとき,∆
iのタイ プを定義する.T
iex,M(w) = T
n(i)+1M= sup {j : T
jM∈ ∆
i}
なら,タイプ1 T
iex,M(w) = T
n(i)+2M なら,タイプ2
T
iex,M(w) = T
n(i)+3M なら,タイプ3
T
iex,M(w) = T
n(i)+1M̸= sup {j : T
jM∈ ∆
i}
なら,タイプ4
タイプ
4
のときに2
回目に通る∆
iをタイプ5
とする.
タイプ
5
をϕ
として,σ
M′(w) = σ
M(w) \ ϕ
と,タイプ1
からタイプ4
ま での要素をもつσ
′M(w)
を定義し,σ
M′(w)
をパスw
の4
タイプ2
M−
スケ ルトンと呼ぶ.(
タイプ5
をϕ
とせず,タイプ1
からタイプ5
までの要素を もつσ
M(w)
は,5
タイプスケルトンと呼ぶことにする)
3 確率測度と生成関数
この章では,ループ・イレーズド・ランダムウォークの確率測度を定義 する.次に,ループ・イレーズド・ランダムウォークの歩数の生成関数を 定義し,生成関数の再帰式の命題を証明する.
定義
3.1 (
ランダムウォークの種類と確率測度). O
を出発点とし,a
Nを初 めて訪れたときに止まる3
種類のランダムウォークを考える.(1) W
N1上の測度P
N,1を,w ∈ W
N1に対してP
N,1[w] = ( 1
6 )
l(w)−1
,
と定義する.これは
O
を出発してb
N, c
N, a
′N, b
′N, c
′Nを通らずにa
N を訪 れてそこで止まるランダムウォークにあたる.(2) W
N2上の測度P
N,2を,w ∈ W
N2に対してP
N,2[w] = ( 1
6 )
l(w)−2
,
と定義する.これは
O
を出発してc
N, a
′N, b
′N, c
′N を通らずにb
N, a
N の順 に訪れてa
N で止まるランダムウォークにあたる.(3) W
N3上の測度P
N,3を,w ∈ W
N3に対してP
N,3[w] = ( 1
6 )
l(w)−3
,
と定義する.これは
O
を出発してa
′N, b
′N, c
′N を通らずにb
N, c
N, a
N の順 に訪れてa
N で止まるランダムウォークにあたる.また,
2
本の独立なランダムウォークの組を用いて次を定義する.(4) W
N4上の測度P
N,4を,w = (w
1, w
2) ∈ W
N4⊂ W
∗× W
に対してP
N,4[w] = P
N,1[w
1] × P
N,1′[w
2] = ( 1
6 )
l(w1)−1
× ( 1 6 )
l(w2)−1
,
と定義する.ここで,
P
N,1′ はb
Nを出発してO, a
N, c
N, a
′N, b
′N, c
′Nを通ら ずにc
N を訪れてそこで止まるランダムウォークw
2の確率 を表す.ここでは,ランダムウォークは
O
出発で,有限長なパスはW
∗の要素と 考える.よって,T
iNやQ
Nも定義される.定義
3.2 (
ループ・イレーズド・ランダムウォーク).
単純ランダムウォー クから,ループを消して得られるランダムウォークを,ループ・イレーズ ド・ランダムウォークとよぶ.ループを消去した後は,自己回避になって いる.まず,
N = 1
のときのループ・イレーズド・ランダムウォークを定義 する.定義
3.3 (
ループ消去後の確率1). k = 1, 2, 3
に対して,ループ・イレー ズド・ランダムウォークを次のように定義する.w ∈ W ˆ
1,kに対してP ˆ
1,k[w] = P
1,k◦ L
−1[w].
ここで,
W ˆ
Nk(= W
Nk∩ Γ)
は自己回避なパスの空間を表す.(
式(2))
定義
3.4 (
ループ消去後の確率2). k = 4
に対してはループ・イレーズド・ランダムウォークを次のように定義する.
v = (v
1, v
2) ∈ W
1∗4に対して,P ˆ
1,4[v]
を定義する.まず,「v
1と交わらない」という条件をつけたb
Nを出 発点としてc
N を初めて訪れたときに止まるランダムウォークをZ
v1 と表 す.Z
v1から,P
1,1のランダムウォーク と同様にしてループを消去したラ ンダムウォークをLZ
v1 と表す.P ˆ
1,4[v] = ˆ P
1,1[v
1] × P
1,1′[LZ
v1= v
2],
と定義する.定義
3.5 (
ループ消去後の確率3). { P ˆ
N,k}
を以下のように帰納的に定め る.k = 1
のとき,P ˆ
M,1, M = 1, 2, · · · , N
が定義されたとする.このと きv ∈ W ˆ
N+11 に対して,v
の2
N−
スケルトンによる分解をσ
N′(v) = (∆
1, · · · , ∆
j) (∆
i∈ T
N), w
i= w |
∆iとする(w
iは定義2.10
と同じもの)
. このとき,P ˆ
N+1,1[v]
を以下のように定める.P ˆ
N+1,1[v] = ∑
u
P ˆ
N,1[u]( ∏
j i=1P ˆ
1,∗[w
i]) (3)
ここで,∑
uは
σ
′N(u) = σ
′N(v)
を満たすu ∈ W ˆ
N1 についてとった和であ り,P ˆ
1,∗は∆
i∈ σ
′N(u)
がタイプm
のときP ˆ
1,∗[w
i] = ˆ P
1,m[w
i]
と定義す る.k = 2, 3, 4
のときも同様に定義する.次に,ループ・イレーズド・ランダムウォークの歩数の生成関数を定義 する.
定義
3.6 (
生成関数). w ∈ ∪
4k=1
W ˆ
Nkに対し,タイプ1
からタイプ4
のσ
′0(w)
の要素の個数を,それぞれs
1(w), s
2(w), s
3(w), s
4(w)
とする.この とき,l(w) = s
1(w) + 2s
2(w) + 3s
3(w) + 2s
4(w). (4)
また,⃗ x = (x
1, x
2, x
3, x
4), x
k≥ 0, k = 1, 2, 3, 4
,とする.生成関数の列
{Φ
N,k(⃗ x)}
∞N=1を次のように定める.(k = 1, 2, 3, 4.)
Φ
N,k(⃗ x) = ∑
w∈WˆNk
P ˆ
N,k[w]x
s11(w)x
s22(w)x
s33(w)x
s44(w), x
k≥ 0, k = 1, 2, 3, 4.
(5)
また,簡単のためN = 1
のときは,Φ
1,k(⃗ x) = Φ
k(⃗ x)
とおく.定理
3.7 (
生成関数の再帰式).
生成関数{Φ
N,k(⃗ x)}
∞N=1はすべてのN ∈ N
で次の再帰式を満たす.Φ
N+1,k(⃗ x) = Φ
N,k(Φ
1(⃗ x), Φ
2(⃗ x), Φ
3(⃗ x), Φ
4(⃗ x)), k = 1, 2, 3, 4. (6) Proof. Φ
N,1(⃗ x)
についてのみ証明する.W ˆ
1∗をタイプm
のパスならW ˆ
1mと すると,Φ
N+1,1(⃗ x) = ∑
w∈WˆN+11
P ˆ
N+1,1[w]x
s11(w)x
s22(w)x
s33(w)x
s44(w)= ∑
u∈WˆN1
∑
w1∈Wˆ1∗
· · · ∑
wk∈Wˆ1∗
(
∏
k i=1P ˆ
1,∗[w
i]) ˆ P
N,1[u]
∏
4 j=1x
sjj(w1)+···+sj(wk)= ∑
u∈WˆN1
P ˆ
N,1[u]
∏
k i=1( ∑
wi∈Wˆ1∗
P ˆ
1,∗[w
i]
∏
4 j=1x
sjj(wi)) (
定義3.5
より)
= ∑
u∈WˆN1
P ˆ
N,1[u]
∏
4 j=1Φ
j(⃗ x)
sj(u)= Φ
N,1(Φ
1(⃗ x), Φ
2(⃗ x), Φ
3(⃗ x), Φ
4(⃗ x)).
Φ
N,2, Φ
N,3, Φ
N,4に関しても同様に示せる.2
定義
3.8 (
平均値行列). Φ
k(⃗ x)
の平均値行列M = (m
ij)
1≤i,j≤4を(1, 1, 1, 1) ∈ R
4でのΦ
k(⃗ x)
のヤコビ行列として定める.(k = 1, 2, 3, 4.)
M =
∂
∂x1
Φ
1(1, 1, 1, 1)
∂x∂2
Φ
1(1, 1, 1, 1)
∂x∂3
Φ
1(1, 1, 1, 1)
∂x∂4
Φ
1(1, 1, 1, 1)
∂
∂x1
Φ
2(1, 1, 1, 1)
∂x∂2
Φ
2(1, 1, 1, 1)
∂x∂3
Φ
2(1, 1, 1, 1)
∂x∂4
Φ
2(1, 1, 1, 1)
∂
∂x1
Φ
3(1, 1, 1, 1)
∂x∂2
Φ
3(1, 1, 1, 1)
∂x∂3
Φ
3(1, 1, 1, 1)
∂x∂4
Φ
3(1, 1, 1, 1)
∂
∂x1
Φ
4(1, 1, 1, 1)
∂x∂2
Φ
4(1, 1, 1, 1)
∂x∂3
Φ
4(1, 1, 1, 1)
∂x∂4
Φ
4(1, 1, 1, 1)
ここで,
(1, 1, 1, 1)
は写像⃗ x = (x
1, x
2, x
3, x
4) → (Φ
1(⃗ x), Φ
2(⃗ x), Φ
3(⃗ x), Φ
4(⃗ x))
のR
4+ での固定点である.
また,平均値行列
M
は各成分が正なので,フロベニウスの定理より最 大固有値が存在する. M
の最大固有値をλ
とおく(2 < λ < 4)
.4 ループ・イレーズド・ランダムウォークの連続極限 の存在
この章では,まず
3
次元シェルピンスキー・ガスケットを定義し,ルー プ・イレーズド・ランダムウォークの連続極限の存在を示す.証明は,2
次元シェルピンスキー・ガスケットの場合を参考にした.([2], [3])
4.1 3
次元シェルピンスキー・ガスケット上のパス空間まず,フラクタルである
3
次元シェルピンスキー・ガスケットを定義 する.定義
4.1 (3
次元シェルピンスキー・ガスケット).
プレ・シェルピンスキー・ガ スケットF
0に対して,∆
1, ∆
2, ∆
3, ∆
4, F
N(N ∈ Z)
を 次のように定める.∆
1をT
0の要素の閉三角錐とし,頂点はO, a
0, b
0, c
0とする.∆
2をyz
平面 に関して∆
1を折り返した閉三角錐とする(O
で接する)
.∆
3を∆
1とb
0で接 する∆
1と合同かつ同じ向きな閉三角錐とする.∆
4を∆
1とc
0で接する∆
1と 合同かつ同じ向きな閉三角錐とする.F
Nを,F
N= 2
−NF
0∩ ( ∪
4k=1∆
k)
と 定める.また,3
次元シェルピンスキー・ガスケットF
をF = cl( ∪
∞N=0
F
N)
で定める(cl(A)
はA
の閉包を表す)
.F
上の点の集合をG
N= 2
−NG
0∩ ( ∪
4k=1∆
k)
と定める.前章までと異なり連続な空間であるため,パスや到達時刻も連続なもの を扱う.
定義
4.2 (3
次元シェルピンスキー・ガスケット上の連続なパス).
出発 点O
からa
0に着く,3
次元シェルピンスキー・ガスケット上の連続なパス の集合をC
とおく.つまり,C = { w ∈ C([0, ∞ ) → F ) : w(0) = O, lim
t→∞
w(t) = a
0}
.C
は距離d(u, v) = sup
t∈[0,∞)| u(t) − v(t) | , (u, v ∈ C)
に関して完備可分 距離空間を成す.ただし,| x − y | , x, y ∈ R
3はユークリッド距離である.W
N= 2
−NW
N1= {2
−Nw : w ∈ W
N1}, W ˆ
N= 2
−NW ˆ
N1とおく.定義
4.3 (
パスの線形内挿). w ∈ ∪
∞N=1
W
N1, N ∈ Z
+に対して,線形内挿 を以下のように定める.w(t) =
a
N, (t ≥ l(w))
(i + 1 − t)w(i) + (t − i)w(i + 1), (i ≤ t < i + 1)
これにより,
w
を[0, ∞)
上の連続関数(
つまりCの要素)
とみなせる.以 後,すべてのパスは線形内挿されたものであるとする.このようにして,W
N, W ˆ
NはC
の部分集合とみなせる. w ∈ W
Nに対して,˜ l(w) = l(2
Nw)
と おく.すなわち,˜ l(w)
はパスw
がa
0に着くまでの2
−Nサイズの「歩数」で ある.到達時刻,粗視化,脱出時刻,スケルトンも
C
上で定義する.定義
4.4 (
到達時刻). w ∈ C
に対して,G
Mへの到達時刻の列{ T
iM(w) }
mi=0を次のように定める.
T
iM(w) =
0, (i = 0)
inf { j > T
iM−1(w) : w(j) ∈ G
M\ { w(T
iM−1(w)) }} , (i ≥ 1) (7)
ただし,inf = ϕ, m = inf { j ≥ 0; T
j+1M(w) = ∞}
とする.簡単のため,W
Nの到達時刻と同じ記号を用いている.定義