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著者 沢田 勇, 片谷 直治

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

四国カルストに生息するキクガシラコウモリ科コウ モリの内部寄生虫相

著者 沢田 勇, 片谷 直治

雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

巻 26

号 2

ページ 1‑5

発行年 1977‑11‑15

その他のタイトル Helminth Fauna of Rhinolophidae Bats in Shikoku Karst

URL http://hdl.handle.net/10105/2521

(2)

四国カルストに生息するキクがシラコウモリ科 コウモリの内部寄生虫相

沢 田  勇    片 谷 直 治 (奈良教育大学生物学教室)  (大阪府立花園高等学校)

(昭和52年4月26日受理)

Helminth Fauna of Rhinolophidae Bats in Shikoku Karst

Isamu Sawada and Naoji Katadani

{Biological Laboratory, Nara University of Education, Nara, Japan) (Hanazono High School, Osaka, Japan)

(Received April 26, 1977)

Abstract

The study reported here was undertaken to examine helminth fauna of Rhinolophidae cave bats, Rhinolophus ferrumequinum and R. cornutus, living in Korakan‑do, Rakan‑do and Nakakub0‑do located at Shikoku karst in Ehime Prefecture.

(1) R. cornutus collected in Korakan‑do was infected with the cestode peculiar to R. cornutus, Vampirolepis ise?isis. This is the丘rst record of V. isensis from the bat in Shikoku.

(2) The number and rate of infection of the trematode (species name unknown) and the cestode belonging to genus Hymenolepis or Insectivorolepis except the nematode (Strongylacantha preto‑

riensis) on R. ferrumequinum from Rakan‑do were markedly great as compared with those from Nakakubo‑do. The nematode and the trematode were all mature, but the cestode was very small and immature one whose segment formation did not begin.

(3) The infection rate of the helminth parasitic on R. cornutus from Korakan‑do was 83 per cent. On the other hand, those of R. ferrumequinum from Rakan‑do and Nakakubo‑do were 100 per cent, respectively. Each of R. ferrumequinum was infected with some or other helminth.

愛媛県から高知県西北部にかけての四国カルストには多数の鍾乳洞が散在している.この中で 愛媛県東宇和郡野村町大久保にある羅漢洞および同町色納にある小羅漢洞のコウモリの生息状態 について1973年12月17日予備調査をおこなった.その結果,羅漢洞にはキクガシラコウモリ Rhinolophus ferrumequinum,コキクガシラコウモ(J R. cornutus,テングコウモリ Murina leucogasterおよびコテングコウモリ M. aurata が生息し,小羅漢洞にはコキクガシラコウモ

リが生息していることが判明した.コれらコウモリのうちで羅漢洞のキクガシラコウモリ9頭, コキクガシラコウモリ2頭,小羅漢洞のコキクガシラコウモリ6頭を剖検した結果,小腸内に吸 虫,線虫および条虫の寄生が認められたが条虫のみはすべて幼弱虫体であった.そこで1975年7 月21日小羅漢洞および羅漢洞, 11月26日に羅漢洞および上浮穴郡柳谷村西谷にある中久保洞のコ

1

(3)

沢 田  勇・片谷 直治

ウモリを採集して,その内部寄生虫相を調査したので結果を報告する.

材料および方溝

1973年12月17日,小羅漢洞で採集した6頭のコキクガシテコウモij, 1975年7月21日小羅漢洞 で採集したコキクがシテコウモリ1頭,さらに11月26日に採集した羅漢洞の18頭および中久保洞 の4頭のキクガシラコウモリについて内部寄生虫相を詳細に認べた.採集したコウモリはその場 で解剖して小腸を切開し, 5%フォルマリンで固定して研究室に持ち帰った.そして双眼実体顕 微鏡を使用して十二指腸の始端から直腸の終端部までの小腸内ならびに小腸壁の柔毛部を詳しく 探索し,吸虫,線虫および条虫の寄生状態を調査した.

調 査 括 果

1973年12月16日,小羅漢洞で捕獲した6頭のコキクガシラコウモリの内部寄生虫の寄生状態は 第1表に示す通りである. N0. 2のコウモリに1条の未成熟虫体が寄生していたが,頚節が不明 瞭のため同定は不可能であった.線虫はコキクガシラコウモ1)の固有種であるStrongylacantha rhinolophiであった.

1975年7月21日,小羅漢洞で捕獲した1頭のコキクガシラコウモT)の小腸には1条の Vampi‑

rolepis isensisのみが寄生していた. 1975年11月26日,羅漢洞で捕獲した18頑のキクがシラコウ モリおよび中久保洞の4頭のキクガシラコウモリの内部寄生虫の寄生状態はそれぞれ第2表およ び第3表の如くである.羅漢洞および中久保洞のコウモリは夜間の気温が低くなっていたため, 殆んどの個体が活動を停止して冬眠状態にあった.羅漢洞のキクガシテコウモリの内部寄生虫は

第2表に示すごとく,吸虫および条虫の寄生は非常に高率であったのに対して線虫のそれは低率 であった.条虫はすべて片節が未だ形成されていない幼弱虫体のみであったので同定が不可能で あるが,頭節の形態から考えてHymenolepisあるいはInsectivorolepis属のいずれかに属する 種と考えられる.線虫はキクガシラコウモリを固有宿主とする Strongylacantha pretoriensis であったが吸虫は目下同定中のため種は不明である.

小羅漢洞のコキクがシラコウモリを除いてはすべてのコウモリが第4表に示すごとく何らかの 寄生虫に寄生されていた.吸虫,線虫および条虫おのおのの寄生率およびコウモリ1頭あたりの 寄生数を示すと第5表,帯6表の如くなり,それぞれの鍾乳洞のコウモリによって寄生状態にか

Table 1. Helminth of R. cornutus from Korakan‑do Number of helminth in alimentary tract Bat no.

Trematod e Nematode Cestode

i

H   W   C O   T j I T 5 t O

ウ 一 八

>

  0

^   o   o

ハ D   o   o   O   C O   O

O r‑1 0 0 0 0

(4)

Table 2. Helminth of R. ferrumequinum from Rakan‑do Number of helmin血in alimentary tract Bat no.

Trematode Nematode Cestode

N   t o  

^   i n   t o   i

>

  c o   Q   O   W   C O  

^ f   l f t   I D   t

"

‑   O O l   1   1   1   1   1   1   1   1

23 16 140 53

0 ll 40 18 18 154 15 67 9

"* iH N O 00

W   N   r f   t

*

c

‑   c o   o   i n   c o   o   o  

^   o   o   c o   o   c v j   o   o   o   i o  

^

75 4 4 22 362 30 1170

o   o   o   c n

^ H   r H

^ i   i r j U 3 3

<

M   W   r H   I D   O

>

        r

‑ 4

Table 8. Helminth of R. ferrutnequinum from Nakakubo‑do Number of helminth in alimentary tract Bat no.

Trematode Nematode Cestode

rH CM CO "tf w

  i n   m   o 1   1

Table 4. Infection state of helminth in bats

Host Locality No. examined No. infected Infection rate R. cornutus Korakan‑do

R. ferrumequinum Rakan‑do     18 R. ferrumequinum Nakakubo‑do

Table 5. Infection rate of helminth

Infection rate

Locolity

Trematode Nematod e Cesto de

Korakan‑do     33      17      17

Rakan ‑do      89       50       89

Nakakubo ‑d o    50       75       75

(5)

4

なりの相異がみられた.

沢田  勇・片谷 直治

Table 6. Number of helminth per a bat Numもer infected Locality

Trem atode Trematode Ces to de Korakan‑do 1 0. 5       0. 5 Rakan ‑d o      39       2      1 05 Nakakubo ‑d o

m

小羅漢洞のコキクガシラコウモリからコキクガシラコウモリを固有種とするV.isensisの寄生 が認められた V. isensisは沢田(1976)によって日本各地のコキクガシラコウモリから報告さ れているが,四国のコキクガシラコウモリからの報告は初めてである. Host‑parasite relationship の面から考えて四国産のコキクガシラコウモリも日本各地のコキクガシラコウモリと何らかの関 連性があると考えてよい.

小羅漢洞のコキクガシラコウモリに宿る条虫の寄生率は第1,第4および第5表にみられるど とく,羅漢洞および中久保洞のキクガシラコウモリのそれに比して著しく低率であり,コウモリ 1頭あたりの寄生数(第6表)も極端に少い.こうした傾向は沢田(1976)が報告した日本各地 のコキクガシラコウモリの条虫の寄生状態と一致している.その原因はコキクガシラコウモリと キクガシラコウモリとの採餌習性が異るため両者が採取する洞穴内の小昆虫(中にはそれぞれの 条虫の中間宿主が含まれる)の種に相異があることによると考えられる.

なあ1973年12月17日,羅漢洞で捕獲した9頭のキクガシラコウモリおよび2頭のコキクガシ ラコウモリについては条虫以外の吸虫および線虫の詳しい調査はおこなわなかった.さらに, 1975年7月21日におこなった羅漢洞の調査では多数のコウモリが活動中のため捕獲が不可能であ

った.

羅漢洞と中久保洞とは直距離にして7‑8キロメートルしか離れていないのに第5表にみられ る如く,吸虫,線虫および条虫の寄生率が異なり,さらにコウモリ1頚あたりの各寄生虫の寄生数 も異なっている.とくに羅漢洞のキクガシラコウモリに宿っていた条虫数は吸虫および線虫に比 して多く, N0.7のキクガシラコウモリに1170条という多数の虫体が宿っていた.また,吸虫に ついても羅漢洞の方が中久保洞に比して多数であった.こうした事実を比較すると,中久保洞の コウモリは4頑という少数ではあるが,両鍾乳洞に生息するコウモリ間に交流があったとは考え にくい.羅漢洞は洞穴が大きく,多数のコウモリが洞内のあちこちに生息していてグアノ量も多 く,条虫に感染する機会が多かったことが原因と考えられる.羅漢洞および中久保洞のキクガシ ラコウモリの条虫はいづれも片節の形成が全く見られない極めて小型の幼弱虫体のみであった.

これは調査時期が11月後半であったため,コウモリが冬眠に備えて洞穴内で多数の中間宿主を食 べた直後であったことが原因であろう.しかし, 11月中旬でも沢田(1975)が行った南九州の鍾 乳洞に生息するキクガシラコウモリの内寄生虫を調査した際には多数の成熟虫体の寄生が認めら れた.このような条虫の発育状態に著しい相異がみられたがその原因は今のところ不明である.

小羅漢洞のコキクガシラコウモリ,羅漢洞および中久保洞のキクガシラコウモリに宿っていた

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内部寄生虫のうち条虫を除いた吸虫および線虫については沢田(1975)が報告した南九州地方の コキクガシラコウモリおよびキクガシラコウモリのそれと同じく成熟虫体であった.

摘   要

愛媛県側の四国カルスト地帯にある小羅漢洞,羅漢洞および中久保洞のコキクガシラコウモリ およびキクガシラコウモリの内部寄生虫相を明らかにした.

(1)小羅漢洞のコキクガシラコウモリから Vampirolepis isensis の寄生が認められた.これ は四国産コキクガシラコウモリからは最初の記録である.

(2)羅漢洞のキクがシラコウモリは線虫類を除いた吸虫類および条虫類の寄生が極めて多く, 条虫類はすべて片節の形成が認められない幼弱虫体のみであった.

(3)中久保洞のキクガシラコウモリの内部寄生虫の寄生率は羅漢洞のそれに比して著しく低率 であった.

(4)小羅漢洞のコキクガシラコウモリの内部寄生虫の寄生率は83%であったのに対して羅漢洞 および中久保洞のキクガシラコウモリのそれは1∝)%で,各コウモリとも何らかの寄生虫に多か れ少なかれ寄生されていた.

謝   辞

小羅漢洞,羅漢洞および中久保洞におけるコウモリの採集ならびにコウモリの内部寄生虫の調 査にご協力下さった愛媛大学医学部寄生虫学教室の西田弘博士ならびに行天淳一氏に心から御礼

申し上げる.

文   献

沢田 勇1975 冬眠直前における洞穴棲コウモリの内部寄生虫について.奈良教育大紀要 24 (2) :13‑19.

1976 条虫相からみた日本産キクガシラコウモリ科コウモリの分布に関する2, 3の知見.動物学雑

誌 85 (2) :140‑155.

Table 2. Helminth of R. ferrumequinum from Rakan‑do Number of helmin血in alimentary tract Bat no

参照

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