造船下請の動向と諸問題
有田辰男
I 造船下請と労働力不足
Ⅱ 造船下請と下請再編成
(1)造船業における大型化と省力化
(2)部品のユニット化と品質管理の強化
(3)下請利用の変化と下請再編成
Ⅲ 団地化・協業化とその問題点
(1)団地化・協業化の意義
(2)設備投資と操業度問題
(3)下請構造の重層化
Ⅳ 造船下請における立地条件の変化
(1)下請部品加工と物的流通
(2)立地条件の変化
船型の大型化と受注ブームによって長らく繁栄を続けてきた造船業界も,
中東戦争による中東原油の供給削減で,昭和48年末から,受注・生産両面で 影響を受け,沈滞状態が現われた。造船下請の動向を考える場合,当然のこ とながら造船業界の今後の見通しがどうであるかに左右されざるを得ない が,ことに,船腹需要がどうなるか,船型の大型化の傾向はどうなるかの二 点が重要であろう。これを考える場合,第4次中東戦争後に新たに現われた 条件として,スエズ運河の再開と中東各国の石池精製基地建設計画があ り,その影響がどうでるかが問題となろう。日本郵船の調査資料「スエズ運 河の再開の影響」によれば,スエズの再開により,世界のタンカー全船腹畳 の約6%,1690万重量トンが過剰船腹となりタンカー市況および造船需要を 圧迫し,不定期船でも300万重量トンの船腹過剰が生ずると予測している。
船型の面では,中東諸国が資源(原油)供給国からリファイナリーをもった 原料(石油製品)供給国に脱皮しようとしていることから,将来は原油と
ともにガソリン・ナフサなどの一次石油製品の輸送が活発化すると予想さ れ,主力建造船型は10'"""‑'20万トン型のプロダクト・キャリアになるのではな いかと見られているo原油輸送の面では,コスト低減を目的とした大量輸送 の観点から,タンカーの大型化が近年著しく進展してきたのであるが,現在 は28万重量トン型から一挙に40万重量トン型に移行しつつあり,さらに今後 は,各国のC T8 (石油備蓄基地)の建設が進んで吃水にこだわる必要がな くなったため, 60'"""‑'70万重量トン型が操船および建造コストの面から最適と みられるようになっており,メジャー・オイルもこの60'"""‑'70万重量トン型の 建造に意欲的になっているといわれるo したがって, 27万重量トン型, 40万 重量トン型, 60'"""‑'70万重量トン型の三船型が今後のタンカーの主力となるも
のと予想されるo
以上のように,今後の造船業は建造需要の面では今までのようなブームを のぞむことは出来ないが,船型の面では従来のような大型化の基調が今後と も続くとみてよかろうo本稿ではそうした想定のもとに,以下,長崎県下の 下請中小企業を中心として,造船下請の動向と問題を採ってみたい。
I 造船下請と労働力不足
造船下請には,親企業の外注方式の相違にしたがっていくつかの下請形態 がある。それら下請形態の呼称は親企業の具るにしたがって具る場合がある が,一般には,加工外注,工事外注,所内下請,その他に分けられるo加工 外注は親企業の設計仕様,材料支給により製作・加工を行なうものであり,
工事外注は親企業の構内または構外において,業者材料持ちで造修・組立・
据付等の工事を行うものである。所内下請は一般的には親企業の構内におけ る造修・組立・据付等を行なうものであるが,佐世保重工 (88K) の場合 は運輸・設計等の下請がこの中に含まれており,林兼造船の場合は下請の分 化が行なわれておらず,また単なる労務提供を行なっている企業が多いの で,全下請が所内下請として一括されているo三菱重工の場合は,運輸下
(1)
請,設計下請等をその他の下請として分離しているo長崎県の場合,こうし
た諸形態で第1次下請として登録されている企業は,三菱重工131社,佐世 保重工92社,林兼造船51社,合計274社あり,親企業の規模の大きいほど下 請企業数に占める加工外注の割合が高く,親企業の規模の小さいほど労働集 約的性格が強くなるため所内下請の割合が高くなっている(第1表)。
(46年3月現在) 長 崎 の 造 船 下 請 企 業 数
第l表
)内は県外企業 計 95 (28) 13 (12) 140 (9) 26 (1 ) 274 (50) 林兼造船
51 (1) 51 (1) (昭和46年)より。
佐世保重工 33 (14) 13 (12) 46 (3) 92 (29) 長崎県経済労働部『長崎県の中小企業』
三菱重工 62 (14) 43 (5) 26 (1) 131 (20)
ん函一週竺i
注 注 詰 他 工 外 事 外 内 下
の 計 加 工 所 そ
注
これら大手造般の下請企業は,その下請形態如何を問わず,ここ数年,共 通して慢性的な労働力不足の問題に直面している。第2表は長崎県下詰企業 振興協会が昭和48年11月に造船業を中心に下請企業244社を対象に労働力調 査を行ない,135社の回答を得て集計したものであるが,これによると,職種 別にみて労働力不足のもっとも激しいのは溶接工であり,塗装工,製缶工の 不足がこれについで著しくなっているO また従業員規模別にみると,従業員 20人以下の下請企業ではl社当り平均不足人員は5人となっており, 21‑‑‑‑50 人規模の企業では平均11人, 51‑‑‑‑100人規模では平均14人, 101‑‑‑‑300人規模 では平均28人, 301人以上の規校では平均5人が不足しているo みられるよ こと うに,下請企業における労働力不足の事態は全般にかなり深刻であり,
に規模が小さいほど不足の度合は著しくなっているO さらに,年間の従業員 人数では増加が減少を上回わっているが,
増減の状況をみると(第3表) ,
企業数でみると,半数以上の54.796の下請企業で従業員の減少をみており,
労働力がlP.~ 乙不足状態にあるばかりでなく,減少傾向も現われてきているこ とが知られるO
こうした下前企業の労働力不足の深刻化に直面して, ;jJI企業の側も対応策 長11向造船所 三 ~m工では,
このため,
をとらざるをえなくなってきており,
知2表 職 利 別 規 枝 別 不 足 人 口 (昭和48年11月〉
¥ ¥ ¥ 規模別 120人 I 21人 1 51人 1101人 1 301人 │ 叫
職積別 ¥ 下 一¥J 以下 1,....,50人 I,....,100人I,....,300人│ 以上│ 可人) 溶 接 工 l詰円 jfljfl iPIl例 制 (127)
製 缶 工 131I 28 I 35I 56 147 I 10 1 (1~ぅ;)
板 金 プ レ ス 工 11 I 8 I 7I 10 I 12 1 I ( ヲ ) 機 械 工 I 36 1 181 2お6I 4臼1I 2お8│ │(i臼hid;P)
さ 品P£:)
屯 気 工 1 1口1I 1 1 241 8 1 6 1 ( 2ち官マ
; r
)配 管 工 I 1臼3! 9 I叩o1 2幻2I 4犯5I I (三芯Y
仕 上 工 I3ωo I叩o1 3羽0I 6臼8I 3お6│ │(?包臼A2??) 組 立 工 I 163 1 8 I 14 I 5白1I 1叩oI 三(
塗 装 工 I2斜41 5白713お5I剖 I7苅8I ! (αlもi包台??) 鉄 工 I 2お6I 18 I 2お8I 1臼51 5臼9I 10 I(iS)
クレーン(玉掛)工 1I I 11 5 I 4 I 2o 1 6 I (24~)
補 工I 12 1 6 1 10 I 51 23 I31 I ( 官 ) 現 図 工 I11 1 4I 15 1 I 3 I 2 I (す
木 工 I 7 1 I 4 I 10 1 8 I│(12
そ の 他 28I 28 I 52 I 27 1 82 1 (1i8~)
合 計 l※333l(124)!(224)│(も;)│(3U)│(5J)!(!?銘)
一 社 当 り 平 均 人 員 対 l
z
l d │ IA 1 23 1 4?│125突j注 長崎県下請企業振興協会『労働力状況調査結果報告書』より。
※印は回答延べ件数を回答企業数で表わしたもの。
第3表 下請企業労働者の増減(前年同期比較) 昭和48年11月
増 一 加 │ 不 滅 少
術│業│務 I~!- I社Zl弘 術 │ 業 │ 務 │ 三 l社平 技 │ 作 │ 事 │ 合 │ ー り │ 技 │ 作 │ 事 │ 合 一り 員 i員 │ 員 │ 計 │ 当 均 l 員 │ 員 │ 民 │ 計 当均 人 員 ( 人 )1 621 3521 251 4391 9.75 I 1 431 3221 411幻915.1
企業数 j勢~ 1 1 I 133.~~61 11l.~~61 I 1田弘│
および香焼工場の所内に労働力を供給している所内下請の請け負い作業,所 外で機械加工をおこなっている加工外注,造船・機械の設計を専業とする設 計下請などへの外注単価を,昭和48年10月から 1時間当り一律平均40円引き 上げたのであるO この下請単価の改訂は従来の単価改訂とは性格が異なって おり,第ーに,この単価改訂は年度内で2度目の改訂で,再引き上げである ことが特徴である。下請単価の改訂は毎年3月に行なわれてきたが,48年度の 下請単価はすでに 3 月に 80~100 円の引き上げがおこなわれており,年度の 中間で単価再引き上げが行われたのは初のケースである。第二の特徴は,こ の単価改訂による上昇分を全額下請労働者の賃金に充当することが条件づけ られたことであった。この二つの特徴からみてこの単価改訂は明らかに親企 業による下請労働力不足対策であるとみることができるO 長崎を中心とした 西九州は,三菱重工のほかに佐世保重工や林兼造船があり,さらに,西彼大 島町には大阪造船・住友商事・住友重機械の共同出資による大島造船所が建 設されており,また,伊万里湾lとは名村造船所,南高西有家町には目立造船 が進出計画を進めている。三菱重工としては,単価改訂によって下請労働者 の賃金を改善する乙とによって,西九州造船地帯の形成にともない予想され る下請労働者の引き抜きに対し,先手を打ったものとみられている。
だが,この下請単価の引き上げは,意外にも,下請企業の強い反換を受け ることになった。時間当り下請単価の上昇分をそのまま下詰労働者の時間当 り賃金に充当すると,それが超過勤務手当や保険料支払の算定基礎になるの で,そのはね返りによる労務質の膨脹が大きく,下請企業にはその経営的余 裕がないというのが理由である口つまり,この単価改訂が造船下請における 下請低単価と下請低賃金労働の利用という下詰利用の本質をはしなくも露呈 せしめたのであり,造船下請における低単価と下請労働力確保という親企業 のもつ要求の矛盾が表面化したのであるo
この矛盾は, 49年度の下訪単価の改訂にあたって,いっそう深刻な様相を 示すにいたっている。乙の改訂によって 1時間当りの下前単価は,所内詰 負い作業の場合は145円,加工外注は190円, 図而外注は135円, いずれも前 年度比で平均2096引き上げられた。だがこの下前m価の引き上げにあたって
は,親企業である三菱重工側から,下請労働力確保のための方策として条件 これまで作業詰負いの場合は下請単価の70%を人件 がつけられた。それは,
こ れ を80%,20%に改善 賀l乙, 30,96を管理費l乙投入してきたのであるが,
その他6096で あ っ た も の を50 し,加工外注の場合は,従来,人件費4096,
50%!乙改善するようにという指示である。これによって下請企業は今後
%
,
かり しかし,
かなり苦しい間接費削減の企業努力を強いられることになるD
にこうした企業努力が成功したとしても問題はなお残ることになるのであ る。今春の賃金ベース・アップは本工の場合平均27,500円であったが, 乙れ に対し,下請工の場合には,下請単価の70'"'""80%を労務費に充当しでもなお 本工の半分しか賃上げできないという実情にあるo だが,春斗によるベース
‑アッフ。で,下請企業でも賃金は30%程度の上昇をみせており, 20%程度の 下請単価上昇ではとても対応が困難になっている。下詰の低単価が下請企業 をますます苦境に追い込んでいるのである。
そればかりではない。上述の下請労働力確保の対策と親企業自身における 労働力確保対策とが競合するという矛盾も現われてきているo三菱重工長崎 造船所の人員募集が下請企業の労働力を引き抜く結果となり,下請企業の労
下 請 企 業 の 労 働 者 減 少 理 由
│長崎 1ft世窓│実存│西彼│告書l計│
(社
) 1 ω
第4表
他 1 3I
長崎県下詰企業振興協会『労働力状況調査結果報告書』より。
数値は従業員減少企業74社の回答延べ数である。
25.0 1.9
4.8 9.6 26
2 10
5 4 3
4
1 l 8 7
3 19
3 19
2 6 自己都合。家庭事情
他 か ら の 勧 誘 ( 引 抜 ) 人 間 関 係 企 業 の 将 来 性 安 定 度
仕 事 内 容 ( 不 適 ) 労働条件(賃金・休)1日・時fHJJI i
明
11.5 12
3 8
6.7 2 7
不 5
3.8 の 4
そ
注
人 一 一 一 ( 一 外 一 一 一 一 一 異 業 程 一 1 4 1 一 一 一
・ 企 業 一
│
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地 区
別 第5表
5
2
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3
23 区
佐世保・北松地区
西
諌 早 ・ 大 村 地 区 区 島 原 ・ 南 高 地 区
合 計 地地
彼 崎 長
注
働力不足に拍車をかけているのである。先に示した第3表において,1年間lこ 乙の74社についてその減少の理由 従業員の減少をみた企業は74社あったが,
を示しているのが第4表であるD 本人の都合や家庭の事情を理由にするもの が36.5%でもっとも多く,他からの勧誘(引抜)をあげるものは2596でこれ 企業の将来性や安定度,労働条件などを不満とするものが21.196に につぎ,
なっている。転職者が表面上の理由として自己の都合や家庭事情をあげる 場合も多いと考えられるので,造船下請では,中小企業相互間の引き抜きば かりでなく,親企業による下請労働力の吸引も著しいと思われる。乙の事情 をさらに第5表について下詰企業からの従業員の転職先をみると, 87%は県 しかし,長崎地 内の移動であり,概して同業種の中小企業への移動が多い。
区だけに限ってみると,県内の同業種の大企業への転職がもっとも多く,下 詰労働力の親企業への吸引の跡を明瞭に示しているO 従来は大企業の雇用は 閉TR性が強く,中途採用はほとんどみられず,労働市場を分断していたので あるが,労働力不足はこの大企業の閉鎖性を弱め,労倒力の流動化を進めた
のであるが,それは一方通行の流動性であり,それだけ下請労働力の不足に 拍車をかけることになったのであるo
このようにして,造船下請においては,その下請形態の如何を問わず,全 般的に労働力不足が慢性化した状態にあるが,この労働力不足は「労務提 供」的な所内下請の場合がもっとも深刻であろうと思われ,こうした状態が 進むとすれば,今後1"労務提供」的な所内下請はその存立条件を失うこと になり,親企業の側からする利用のメリットも次第に薄れていくのではない だろうか。
加工外注の下詰企業の場合には,この労働力不足の問題に対して省力化投 資による対応が考えられるのであるが,またそれとは別に,建造船舶の大型 化に対する対応も迫られているので,このことについてさらにみていかなけ ればならない。
注(1) 長崎県経済労働部編『長崎県の中小企業~ (昭和46年)p.143o
E 造船下請と下請再編成
(1) 造船業における大型化と省力化
タンカーを中心とした建造船舶の超大型化と,労働力不足に対応する省力 化投資と,この二つの傾向が,今や造船業界のすう勢となってきているO そ
してこの流れが,造船業における下請利用の変化をうながし,下詰再編を迫 っている。
タンカーの大型化の傾向が顕著になったのは昭和30年頃からで, 2""""3万 トンが標準であったものが, 31"""" 2年には4........5万トン台のいわゆる「マン モス・タンカー」が出現したのである口だが大型化の傾向はこれにとどまら ず, 36"""" 7年には9""""10万トン台が標準となり, 40年代に入ると20万トン台 から30万トン台ヘ,さらに40万トン台へと大型化のテンポはいっそう急速と なっていった。
その後一時, IMCO (政府間海事協議機関)のタンカー容量規制によ り,経済船型として20........30万トンが主流になるものと予想され,大型化も頭
打 ち か とd思 わ れ た が , 今 日 で は タ ン カ ー の 主 流 は40万 ト ン 級 に 移 行 し つ つ あ り,メジャー・オイノレ(国際石油資本)の発注計画がなお大型化の傾向をた どっていることから, 60'""‑'70万 ト ン 時 代 の 到 来 も そ れ ほ ど 遠 く な い と 予 想 さ れ る に い た っ て い るO
第6表 大 手 造 船 の 動 向 (昭和48年4月) 受 注 状 況 │ 設 計 開 発l設 備 拡 張
三 菱 重 工 i ‑ i 3 9 U │ 関野加に
y v r
目 立 造 船 l I40)]"ン 2受!4'‑t0V/J 1'./ 万トン│ 有明工場I 堺工場406万トン修到[ドック椛恕0万トンド yク建設
I ')cO:::: L '/ 1 I I iit造船所100万トンドック51午‑完成
日 本 鋼 管 I 36万トン 1 I 一 │ 同50万トン修理ドック計四 川 附 工 │ 認 知 ン iドo万トン
! 2
喝罪抑制:嫡I ':l'7h ¥.. '/ ') I 追沢造船所50万トン操業
住 友 重 機 I37万トン 2 I ‑ I 同50万トン修理ドック51年完成計四 I 30.5万トン 1 I 千葉工場50万トンドック授業 三 井 造 船 I35万トン 2 I 40万トン I113良工場33万トン修引ドック操業
I 37万トン 2 I 大分臨海地区100万トンドック計四
I 36.4万トン 5 知多工場100万トンドック完成 石川島播磨 I 48万トン 1 i 65万トン│ 呉造船所80万トンドック完成
1 70万トン 鹿児島100万トン修翌日ドック計阿 注 月 刊 工 業 新 聞 ( 昭 和48年1月‑‑‑..4月)より作成。
大 手 造 船 各 社 の 受 注 状 況 を み る と ( 第6表),日本鋼管はノノレウエーの,ウイ ノレ・ウィノレへノレムセンから36万 ト ン 型 タ ン カ ー を , 住 友 重 機 械 工 業 は ギ リ シ
ャ 系 船 主M・p・ノミコス,モービソレなどから37万 ト ン 型 タ ン カ ー を 受 注 し ており, 目立造船はl契水72フィート(約22メートノレ)の40万 ト ン 型 タ ン カ ー を 開 発 し , エ ッ ソ ・ タ ン カ ー ズ か ら2隻 を 受 注 し て い るD 三 井 造 船 は シ ェ ル か ら30万5千 ト ン 型 タ ン カ ー 受 注 の ほ か , ス エ ー デ ン の ブ ロ ム ス ト ロ ー ム か ら 35万 ト ン 型 タ ン カ ー2隻,ノルウエーのベノレゲッセンから37万 ト ン 型 タ ン カ
‑ 2受 を 受 注 し て い る ほ か , 設 計 面 で は40万 ト ン タ ン カ ー 標 準 船 型 を 完 成 し ている。これは目立造船の開発したものと同秘,喫水は72フ ィ ー ト で あ る が 誠
貨重量トンは41万1千トンで,同じ喫水で設計されたものの中では世界最大 といわれる。川崎重工はエッソから30万トン型タンカーを受注のあと,ノノレ ウエーのベノレゲッセンから36万5千トン型3隻を受注, 40万トン級タンカー の設計にも取組んでいる。三菱重工は未だ受注実績はないが, 39万5千トン 型タンカーを開発し,関係船主に売込みをはかっているo とくに注目すべき は石川島括磨重工の場合で,ギリシャ系船主グラーンドリス, C. M ・レモ ス, A. S ・オナシスなどから36万4千トン型タンカー5隻 を 受 注 し て お り,設計面では, 60"""'70万トンタンカ一時代に対応するため65万トンタンカ ーの船型開発に着手していたが,本年2月,実船としては世界最大の48万 3664トンタンカーを船主のグロープディック・タンカーズ社(イギリス)に 引渡すと同時に,新たに同社と70万トンタンカー建造に関する仮協定に調印 し, 70万トン時代の幕開けを告げることになった。わが国造船業は設計段階 では 100万トンタンカーを技術的に処理できるところまできているといわれ るが, 40万トンタンカーが最大船型になっていたのは,港湾事情を考慮して 喫水を72フィート (22メートノレ)におさえたためであるが,最近では,欧米 各港湾の』契水大型化の傾向がみられ,ユーロポート(ロッテノレダム) ,フラ ンスのjレアーブノレ,フォス, アメリカのニューファンドランド, ノイハマな ど,いずれも近く100フィートへ拡大される計画であるといわれ, 70万トン タンカーはこうした港湾事情の変化に対応したものであるとみられているo
受注船舶の大型化にともなって,設備投資の大型化も急ピッチに進展して いる(第6表)口三菱重工香焼工場では 100万トンドックに加えて, 50万ト ン修理ドックが操業を開始し,目立造船では,有明工場の60万トンドックの ほかに,堺工場における40万トン修理ドックの建設が構想されており,日本 鋼管では津造船所における 100万トンドック51年完成計画に加えて50万トン 修理ドックの建設が計画されているD 川崎重工では坂出工場のほかにやはり 40,.....,50万トン程度の修理ドック構想をもって候補地を物色中であり,住友重 機械工業では,追浜造船所の50万トンドックの操業開始に加えて, 51年完成 をメドに50万トン修理ドックが計画されている。また,三井造船では,千葉 造船所のほかに大分臨海地区に 100万トンドックの建設を計画しており,修
理ドックとしては由良工場33万トンが操業を開始した。石川島括磨重工で は,知多工場の100万トンドック,呉造船所の80万トンドックが完成し,さ らに,鹿児島臨海地区に新たに100万トン修理ドックの建設計画を建ててい る口
こうした設備の大型化は,たんなる量的な大型化ではなく,徹底した省力 化,機械化,自動化による合理化を必然的に内包するものであった。
戦後の造船業における技術革新は大きく三つの段階に分けることができ (1)
るO その第一は昭和25"'‑'27年における鋲接法から溶接法への転換であり,第 二は昭和30"'‑'35年における層状建造方式からブロック建造方式への移行であ った。このブロック建造方式は昭和30年頃からの船型の大型化により限界を 示しはじめた層状建造方式にかわって,大型化への対応として生じた建造方 式であるが,このブロック建造方式への転換は,実は,一方では,第一段階 における溶接法の採用によってはじめて可能となったものであるが,他方で は,次の第三段階の技術革新を準備する役割を果したのである。その第三段 階が昭和37年以降の建造工程の機械化,省力化,自動化であるo 罫書工程・
切断工程の自動化,数値制御化,自動溶接,コンベアー化,全工程のコンビ ューター管理等,ブロック工法での省力化,自動化が進められるにいたっ た。こうした省力化・自動化は,ひとつには,船舶の建造がプロック工法に よる分割建造方式をとったため,建造工程が大巾にドックから解放されて工 場生産化することが可能となったためであり,もうひとつは,分割して建造 されたプロックを統合する場合に必要な精度の要求から規格化・13!準化が求 められるにいたったためであるO つまり,鋲接工法から溶接工法への転換が プロック建造方式を容易にし,さらに,大型化lこともなう居状建造方式から ブロック建造方式への転換が建造工程の自動化,省力化を準備したのであ る。
(2) 下請部品のユニット化と品質管理の強化
従来,典型的な労働集約産業とされてきた造船業は,以上でみてきたよう に,船型の大型化とブロック建造方式への転換を契機として,近年,建造工 程の機械化,自動化,省力化を進め,資本集約的な性格への脱皮は造船業全
体の大きな流れになりつつある。こうした傾向は,下請発注にも大きな変化 をもたらすことになるであろうO
造船業!j:,;京合組立工業であって, 200種以上にものぼる関連産業の生産物 を部品として組立てる工業であり,船価構成の面からみても,造船業自体の
(2)
比 重 は30%前後であり, 70%は関連産業に依存している。この点,自動車 工業とよく似ており,自動車工業の場合は外注部品が全コストの4596を占 め,これに材料費を含めると70'""'‑'80%に達するといわれている。これはフォ ルクスワーゲンの場合も外注部品は40%,)レノーの場合も同様に40%を占め ているので,日本の自動車工業だけの特殊性ではなく,部品工業の生産性が自 動車工業の競争力を左右するといわれているO 造船工業と自動車工業は乙の ように外注部品への依存度が高いという点では共通の性格をもっ組立産業で あるが,他方では,造船工業が注文生産で,一船一船が異った仕様によって建 造されてきたのに対し,自動車工業は極度に標準化,規格化の進んだ大量生産 工業であり,同じ組立産業でありながら,全く具る性格をもつものとして考え られてきた。だが,最近では,造船業は船舶建造工程が分割建造方式によっ て工場生産的な性格を強めつつあり,また,受注方式も単品受注から標準船 型の設計開発による受注へと変化をみせており,こうした船型の標準化とあ いまって,工程全体の標準化,規格化,コンベアー化の傾向を強めつつあ り,自動車工業に接近してきている。こうした点から,造船業における今後 予想される下請発注方式の変化も,かつて自動車部品工業が昭和40年代初期 に経験した下請再編成過程と同様の道をたどる可能性が強まってきてい るo
当時の自動車メーカーによる下請再編成を日産自動車の宝会再編成につい てみると,再編成は,日産が宝会所属の部品メーカー107社のうちから20'""'‑' 30社程度のピックアップ企業を選定し,部品はこのピックアップ企業を通じ て,ユニットとして集中発注をおこない,部品をアッセンフツレした複合部品 として納入させ,機種別に納入経路を一本化して能率の向上をはかろうとい うものであった。乙れにより, ピックアップ企業の選定にもれた企業は二次 下請的地位に転落するととになるo 乙のピックアップ企業選定について示さ
れた基準は次のようなものであった。
a 資本金5千万円以上の企業。
b 親企業の各種要望に対して自社だけで意志決定できる企業。
C 同族会社でなく経営近代化をおこなっている企業。
d 市場性ある独自の製品をもち,親企業への依存度50%の企業。
e 株式上場あるいは株式に交換性があり,資金を市場から集めうる企 業。
f ユニット受注可能な企業。
このピックアップ企業選定構想は当時各部品メーカーに大きな衝撃をあた え,そのため再検討されることになったものの,再編成の方向はこれによっ て明示されたのであり,系列部品メーカーの提携・合併の動きをにわかに活
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発化させたのであったが,乙の選定基準のなかのdとfは最近の造船親企業 の要求と全く同じあり,設計外注,ユニット発注方式への傾向は明白な線に なってきているo
さらにもう一つ,最近の造船業には自動車工業との類似点がみられるよう になっているojust司in・timesystemであるoかつて,自動車工業でも,ロ ット生産から流れ作業に移行する必要から, トヨタは「スーパーマーケット 方式」により,部品メーカーに生産予定量を示し,自社に過剰ストックを置 かない方針をとり,日産では rVA(価値分析)周期化計画」によって,部 品を適当間隔でラインにのせて無駄をはぷこうという方針をとってきた。こ れは全く親企業本位の方針であり,親企業はこれによって在庫投資を節約で きるが,その分は部品メーカーにシワ寄せされることになり,いっそうのコ ストダウンを迫られることになったのであるo造船業においても,近年の技 術革新により,工場レイアウトは鋼材の流れにそって各工程が編成され,そ の上に立って流れ作業芳式が導入されるにつれて,自動車工業の場合と全く 同じ要求が造船業の場合も親企業から下請企業に示されるようになってきて いるo
さて,以上みてきた下請部品のユニット発注方式と,納入のjust‑in ‑time systemは,ともに,品質管理の強化という新たな要求を下請企業につきつ
けることになる。下請企業によって生産されたユニット部品は他のプロック と接合され組み立てられることになるのであるから,乙の際l乙カンや腕によ るケース・パイ・ケースの調整は不可能であり,寸法の誤差やヒズミは許さ れず,高い精度が要求されることになる。乙乙に下請企業における品質管理 の問題が生じてくる。 just‑in‑timesystemの場合も同様である口親企業の 側に過剰在庫をおかず,部品を適当な時期にラインにのせるのであるから,
品質検査は品質保証協定によって下請企業の側にまかされることになるので あるから,ここからも,下詰企業における品質管理の問題が生じてくるので あるロ
{3l 下請利用の変化と下詰再編成
造船業における下詰発注のユニット化,設計外注の強化,納入方式におけ るjust‑in‑timesystemの採用,品質管理の強化,というような親企業側の 新たな要求に対して,下請企業側の状況はどうであろうか。
長崎県における造船下請企業の状況を『長崎県の中小企業j(昭和46年〉に よってみると次の通りであるO 第7表にみられるように,三菱重工,佐世保 重工,林兼造船3社の登録l次下請企業数は274社,このほか2次下請が140 社程度あるとみられ,その他の関係企業と合計すると関連下詰は500社ほど になり,機械金属関係中小企業800社の60%を占めるといわれている。乙れら 下請企業を,さらに,資本金規模別にみると,第1次下請においてさえ資本 金100万円以下の企業がもっとも多く, 80%以上が資本金1,000万円以下の企 業である。従業員規模でみても21,...,.,50人規模のものがもっとも多く,約70%
が100人までの規模の企業で構成されているO そればかりか,さらに問題な のは,下請企業の生産性の低さである。従業員l人当りの年間加工高は1,148 千円で,機械器具関係の中小企業の全国値2,033千円と比較するとほとんど 半分に近く,因島団地や神奈川県,愛知県の中小企業とくらべてもかなりの 差がみられるO 従業員1人当りの機械装備額では,長崎県の下請企業が平均 287千円で,機械器具中小企業の全国値488千円の60%以下であり,同じ造船 下請の因島団地の場合と比較してみても,機械関係では約6096,鉄工関係、で は46%にすぎず,その差は著しい。乙れに対し,従業員1人当りの月平均人