新 踏 力 計 に よ る 歩 行 の 研 究
真 友武 一一*
On t h e New F o r c e P l a t e Study
by
Tomokazu MATAKE
(Mechanical Engineering)
As a method of the study of the gait
,
there has been the measurement of the floor reaction by the force plate. But it is not enough to know the accurate behavior during gait by the present instrument. Then the purpose of this study is to develop a new force plate and to get many informations concerning gait.The new force plate is supported by twelve combinations ball anb bar with strain gauges sticked on the latter. Therefore, it is able to measure various floor reactions simultaneously: normal compression, shear forces 'of antero‑posterior and transverse direction, and torsion.
Furthermore
,
it is the characteristics of the new instrument that the reaction forces are able to be combinedeach other and a locus of the resultant force draws an intuitive diagram,
a loop,
on the Braun tube.Six kind loops were obtained as combination of two from four reaction forces. Now we define these loops α
,
s,
r,
~, ηand <:: diagram; For example,
αdiagram is the loop of combination of normal compression and antero‑posterior shear force. Among them,
it became clear thatαdiagram was the most important one and its characteristics was indicated as the inverted heart pattern,
which was aHected and deformed easily by pitch and step width of gait.By use of αdiagram it is possible to distinguish obviously the abnormal gait from the norma
, l
then it may be used as assistant of diagnosis and the rehabilitation. Another diagrams indicate less characteristics compared with αdiagram,
but also wi1l be referred when making the artificial leg.1 . 緒 旨
歩行の研究は戦争による義足の開発の必要性もあっ て,古くから多くの研究がなされてきた.そしてその 研究方法としては,写真による歩行運動の連続あるい は聞けつ撮影,重心の運動の観測,筋電図を用いる方 法およびフォースプレートと称する踏力計による床反 力の測定による方法等がある.これらの方法はそれぞ れの特色を生かして歩行の状態を究明することに貢献 をしてきたし,近来は計算機を用いた自動化された測 定による研究も多い.その中でも踏力計による研究
*機械工学科
かめは歩行中の動的な力を計測できると
L、う本質的 で有効な方法である.これら従来の踏力計は
3本また は4 本のストレンゲージの貼られた柱で、支えられて,
上下,前後および左右の
3分力がそれぞれオシログラ フで記録できるようになっているのが普通である.
3
支柱すなわち
3ゲージの場合には,外力すなわち踏力と踏む位置すなわち着地点の座標がわかれば
3本の柱に加わる力を計算することができるし,その逆
も可能である.ただし,各支柱の力がわかっても具体
的に踏力として合成されたものを計測するには工夫が
4支柱の場合は不静定問題であるから外力とその位 置からは直ちに4支柱の反力は求まらないし,問題を 正しく解かねばならぬ必要がある.逆に4つの計測さ れた反力は踏む位置によって異なるから,踏力を出す ためのこれらの値の合計にも特別の考慮がなされなけ れぽならない.この意味で,従来の複雑な形式の踏力 計は正しい力を計測していない場合が多い.さらに垂 直力以外に前後あるいは左右の反力を柱の曲げによっ て計測する場合にも,着力点の位置によってねじれ力 が同時に計測されている恐れがある.
また1つのブリッジに1枚のゲージを用いる場合は よいが,数枚のゲージでブリッジを構成する場合に は,上述の理由でストレンメーターやオシログラフは 正しい粋事を表示していない.これを正しく計測する ためにはストレンゲージの原理に従って検討が必要で
ある.
これらの計測による情報は自動的にVTRや電子計 算機などの情報処理装置に入って,歩行力の特性を図 形や数値表示することが可能になり,診断や歩行機能 回復の程度の指針として利用することが近く実現する であろうから,測定値は従来の定性的な特性の追究と は異なって定量的に重要な意味をもってくる.この意 味で厳密に正しい値が測定されねぽならない.
他方, 従来のオシログラフ測定などからは,heel contact, foot flat, toe offなどの区別はできるが,
直観的に歩行動作を把握することは難しい.この方面 についても定量化の他に図形化の工夫が必要である.
このように,脂肉計を用いた歩行の研究には色々な 問題点が存在している. 本論文では,(1)4支柱系で 正しい測定値が得られるように工夫したこと,②こ の4支柱系を上下・左右・前後の3方向に配置して,
同時に多くの情報を得られるようにしたこと,特に従 来の3方向分力の測定以外にねじりの測定を可能にし たこと,および(3)これらの分力を同時に組合せて合 力が描く軌跡によって歩行の動作を直観的に判断でき るよう図形化・可視化したことについて述べる.
さらに,これらの計測値から正常歩行の特性を調査 し,ギブスによって足関節を拘束した状態の異常歩行 と比較研究を行ない,特性上の明瞭な相異を確認する とともに,異常歩行の診断やリハビリテーションへの 適用が可能であることを示した.
2.新踏力計の機能
意力計は踏板を中心とした計測部とオシログラフを 主体とする記録部に大別される.踏板はFig.1のよ
うに長方形で,4本の円柱で支えられ,前後・左右方
各柱・棒には2枚のストレンゲージが装着され,柱は 圧縮棒は曲げによって踏力の分力を計測する.柱およ び棒と踏板の間には鋼球があって,踏板との両者の摩 擦を減少させている.Fig.2はその写真である.
前述のように,4本の支柱に加わる力は踏板上の着 力点の位置によって異なる. これはFig.3(a)のよ うに, 着力点と踏板の中心を結ぶ線に直角なX 軸 のまわりのモーメントが着力点の位置によって異なる からである。したがってブリッジのゲージはこのモー メントによるひずみが出ないような結線を考えるべき
5
8
gS曾roio 80 goug●
8011
δ 、9》
6
1 2
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4 3
§ § 7
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12 11
Fig.1 Footboard, columms and po星ers of forec plate.
Fig.2 Force plate.
→一。
1 I
l ・
1
4
一一 一
l
71 81・一 S一ずゴ
(a)compression
5
8
9
10「
@ For
@9
●
12 11
(b) shear force
6
7
欝畷幾鑓 緯雛訟
・毒
Fig.5 Apparatus of force plate.
Fig.3 Footboard applied compression and shear force.
であり,この影響を打消す結線が考案された.この結 果,踏板のいずれの点を踏んでも同じ値が得られるよ
うになった.
踏板のせん断力についても同様なことが云える.例 を前後方向にとれぽ,Fig.3(b)からわかるように,
9〜12の棒のゲージは一様な曲げと踏板の回転による 曲げを計測している.前述のように,回転による影響 は,着力点の位置によって値が異なってくるので,こ の影響を除く結線も求めた.
歩行の際の足のねじりはFig.3(b)の5〜8の 横の棒を用いて測定できる.この際にも,ねじりと曲 げを分離して曲げの影響が混入しないような結線にし
た.
本甲力計は多数のゲージを内蔵しているから,この ように多数の力が同時に測定できる.これらの正しい 測定値を組合せることによって正しい図形が得られ る.このためX−Yシンクロスコープを用い,その ブラウン管財で合成された映像をカメラで撮影した.
その構成図をFig.4に,装置をFig.5に示す.
踏力計はどの部分を踏んでも正しい値が測定される ので,踏力計と同一水平面で,また踏力計と同じ床弾 性になるような広い通行路を作成し,その上をビニー ルで蔽って特定点を踏まねばならぬという心理的な拘 束からくる誤差をできるだけ除くよう配慮した.
3.歩行力線図
2つの分力をブラウン管上で組合せた場合,その合 力は管面上の一点の座標で表わされる.したがって1 歩の間にこの合力の描く軌跡は1つの図形を表わすこ とになる.上下・前後・左右およびねじりの4分力か ら2分力の組合せ方は6通りであるから,6個の図形 にTable 1のような名前をつける.α,β,γ,は3 分力の各組合せで,ξ,η,ζ,はねじりと3分力の 組合せである.
Table l Combination of forces.
ComI翫 Aotゆ06t
・盾窒b●
Troo5.
・盾窒b● Tor5100
Comp α β
ξA酷PO8仏
・盾窒メ
γ η
TrOO6.
・盾窒メ
ζ
正常歩行における左,右足の踏力の6通りの図形を Fig.6〜11に示した.歩行の条件は普通の状態で,
その値を欄外に示してある.
これらの図は1回の歩行によるものであるから,被 験者の個有のものかどうか疑わしいので,α線図につ
いて同じブラウン管上に同一人の4回分の歩行を重ね て撮影した.Fig.12がそれである.着地時に多少の バラツキが見られるが,同一歩行条件の場合は大体同
WolMng
Fbrc● plo曾●
[[6石「εδ1il Amplifi・r
工
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1 1
曾
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L______」
Fig.4
X−Y syochro・5cope Comero
Procedure of experiment.
2
6k
艦
o
oLef曾 foo曾
o
M
An曾erlbr
Fig。6
Righ↑ fOO↑
0
M
6 A所erior
9
呼卍
儒30
o
αdiagram.
♂ W曾.51Kg 日25?eρ亀/min
78cm/5曾OP
Lef↑ foo曾
o
納
¢
Lef,
2
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信きoo
Fig.7
RiOh曾 foo曾
o
M
6
9
Rlght300
βdiagram.
色
W曾.51k9 ll2 5曾OP鋤5n 78cπソ9曾OP
Lef曾 ずoo雪 Righf foo雪
M
さ忌芒榊く
M
益並ξ
0 o【
願
o o
1Lo台
6区 6
回
Fig.8 γ=diagram.
お W曾.51k9 8璽2s曾●P昏葡in 78cπレ勺曾6P
い↑
Lef曾foo曾 Righf foof
0
0
M M
「 ●
1
9C 9
o
Tor5ioo2
Tor5ion睾o きA
o o
3
Wf.51kg
Il2S曾ep5/min
78cm/sf叩
Fig.9 εdiagram,
Lef↑ foo曾 Righf foo曾
一
一
1
M O 1
1 0 M お
、 1
さ冨芒く
培芒く
1
1
o
おC Torsion
@【
cTor
念
Wt 51kg ll25暫ops/而in 78cm/もfep
Torsion
Fig.10 ηdiagram.
Lef實 foo↑
ζOJ O
XO
96 C Torsion
Righ↑ foo雷
三2α:
O
o
Torsion96
3
W曾。51kg・
ll2s↑eps/min 78cm/s曾ep
Fig.11 ζdiagram.
Fig.6〜11からわかるように,α線図が横方向か ら見たベクトル図になっており,γ線図は上方よりの 鳥鰍図になっていて,いずれも直観的に歩行の状態が 把握できる.ねじりについては,これらの図では特に 大きな特徴がみられないのは,身体は多くの骨と関節 で成り立っているので上体の方で自由な運動ができる からであろうが,将来は問題となることがらである.
歩行は重い身体を前に進めるという現象であるから α線図が一番重要であり,図形上でも一番大きく特色 がある.すなわち圧力を下方,右方向を前進方向とす れば一般に逆ハート形になる.この図形の特徴を数量 化するためFig.13のような寸法を考える.αは最 大垂直荷重で,Mはほぼ中間部で片足に体重がのった foot flat部である.bは制動とけりを合せた水平力の最 大幅である.原点0からM点までの前半部は着地によ
る減速部分で,M点から0点までの後半部は体重を前 に出す加速部分である.これらの比a/m,b/m, a/b
Right foo雪
お
W翫51kg l12s怜ps/min 78cm/5,ep
8
Fig.12 Scattering of walking onαdiagram.
線図は相似形となり,同じ歩き方であることを示して いる.きき足や色々な個性的な歩き方はすべてα線図 によって直観的にわかり,踏力比によって数量化され ることになる.
このα線図を基準化するにはこの線図に影響を及ぼ す因子を考えねぽならない.それは歩行速度である。
歩行の速度は2通りの変え方がある.すなわち毎分の 歩数,ケイデンスを一定にして歩幅を変える場合と,
歩幅を一定にしてケイデソスを変える場合とである.
種々の実験結果から,代表的なものを次に示す.ケイ
『デソスは普通の歩き方の112と少しおそ目の96,歩 幅は普通の78cmと少し小股の68cm,少し大股の 88cmを選んだ. Fig.14,15ではケイデンスー定で 歩幅の影響がわかり,Fig.16〜18では歩幅一定でケ イデンスの影響が直読できるであろう.すなわち一定
Righ↑ foo曾 96s↑eps/min
o
1 12
3
6k l
̀所erior
1
ど 1
創
⊆」50
3
W↑,51k9
①68cm/・t・p
②78・m/・↑・p
③88・m吟f・p
o
Fig.14 Speed effect onαdiagram,
cadel〕ce 96.
己
3
0 0
An奮e「io「
o
∈
o
M
b
Fig.13 Standard shape ofαdiagram.
Righ曾 foo†
日2sfep今/min
o
念
W曾,51k9
①68・m/sτ・p
②78cm/・f・p
③88・m幡サ・p
Fig.15 Speed effect onαdiagram,
cadence 112.
8
Fig.
Right foot
68cm/step
o
16 Speed effect on length of step,
Right foot 78cm/step
g
Wt.5tkg O 96 steps/min
@ t t 2 stepti/min
cr diagram, 68cm .
o
1
2
6 ,
x
Anterior
N
;
8
Fig. 17 Speed effect on length of step,
g
Wt. 51 kg
096steps/min
@ t l 2 stepE/mjn
cr diagram, 78cm .
4
e
g3
$ 3
"o‑'o oc 1
‑‑e‑‑
x
112( 4 96
Abnormat(steps/rnin ) )
}Normal ,
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i.pbjmIt
‑f‑ ‑
i687276808488
Fig.
Length of step (cm)
19 Relation of length of step to of shape of a diagram.
ratio
im
Xgg"・gk・ ' ・es. ,ge.,・i
ps
fi・
kge,
Fig. 20 Sprint
tttf"pt
of right
・t " ‑ i g・E Si 'gi,'W SP・ ge"
・; .・' : :・i .4 s,' tF tT e・::f, '・・・
leg.
Right foot 88cm/lstep
o
Fig. 18 Speed length
effect on of step,
g
Wt. 51 kg
@ 96 steps/min
@ 1 I 2 stepfi/min
a diagram, 88cm.
Riptt feot
‑
o
s N / " A2
tN
‑
v ‑
N6 t
,e,, Anterior
N
;8
Fig. 21 Abnormal walking with sprint.
g
Wt. 5l kg 96 steps/Vnin 78 cm/btep Abnormat
‑‑‑ Normal
of right leg
り,足首のばねを使うためにM点は上昇している.歩 幅が一定のときはケイデソスの影響は少ない.
これらの図から得た値を用いて踏力比を求め,歩幅 と踏力比の関係を示したのがFig.19である.この図 から歩幅が増せば,すなわち歩行速度を早めればfoot flat時すなわちM点が上昇し,水平力bが大きくなっ
てa/bが減少してゆくのがわかる.
このように歩行に対して割合敏感に変化するα線図 を用いて正常歩行と異常歩行との比較を試みた.異常 歩行はFig.20のように足首の関節を拘束するギブス を用いたもので,同一歩行条件の正常歩行と重ねて図 示したのがFig.21である.この結果はFig.19にも
×印で示してある.このように,けりが拘束されてい るため逆ハート形は大きく変形して正常歩行とは一見 して区別できる.またどの方向に強い歩行の拘束があ るかがわかる.したがって筋電図10)や神経筋肉制御の 研究と併せ考慮すれば異常の原因が容易に追究できる であろうし,逆にリハビリテーションにおける機能回 復の部位とその程度が診断でき,今後この方面に対し て大いに役立つであろう.
歩行における脚の運動は純粋に垂直面内のみではな く,加速のためのけりも真うしろだけではない.した がって前述の診断のためや違和感のない精巧な義足や 生理膝を製作するためには,α線図以外の線図が必要
となる.今後はα線図とともに他の線図の研究も考慮 されねばならない.
4.結 言
自由度の多い踏力計を開発して,従来よりも正確で かつ多くの情報が得られるようになった.これらの情
中でもα線図は重要で歩行力の解析や異常歩行の診断 やリハビリテーションにおける機能回復の判断に直ち に役立つことがわかった.また他の線図も同様に診断 や義足の製作に欠かせない重要性をもっている.
本研究を遂行するに当り,材料力学研究室の柳原武 仁技官は実験,線図の製作に協力し,献身的な努力を
してくれた.ここに厚く謝意を表したい.
5.文 献 1) Cunningham, H.
Artificial Limbs,
2)Elfman, H.;
(1939)
3)後藤;
; Advisory Cong. on Berkeley, 3−14(1950)
Arbeitsphysiolsgy,10, p.485,
日本整形外科学会誌,33,p.775,(1959)
4)松木;中部日本整形外科災害外科学会誌,9,p.
751,(1966)
5)水井;中部日本整形外科災害外科学会誌,4,p.
88,(1961)
6)Saunders,M.,V.T. Irman and H.D.Eberhart;
Journal of Bone& Joint Surgery, 35−A,
p.543,(1953)
7)Suzuki, K.;The Journal of The Japanese Orthopedic Associotion,46, p.503,(1972)
8)真武;日本ME学:会九州支部例会前刷(昭49.6),
p.4, (1974)
9)Matake, T.;Proc. Vth ICB (1975,
Jyvaskila, in Print)
10)Suzuki, R.;ibid.