GLOBAL DYNAMICAL BEHAVIOR FOR LOTKAVOLTERRA SYSTEMS
著者 陸 征一
雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告
巻 16
ページ 183‑185
発行年 1995‑03‑28
出版者 静岡大学大学院電子科学研究科
URL http://hdl.handle.net/10297/1266
氏 名0(本籍
)
陸征
― (中
国)
学 位 の 種 類
博
士
(工
学) 学 位 記 番 号工博 甲第
99
号 学位授与の日付平 成 6年 3月 23日 学位授与の要件
学位規貝1第 4条第 1項該 当
研究科・専攻の名称
電子科学研 究科
電子応 用工学専攻
学位論文題 目
GLOBAL DYNAM!CAL BEHAV:OR FOR LOTKA―
VOLttERRA SYSttEMS
(ロ トカ・ ヴォル テ ラ系 の大域 的動的挙動)
論 文 審 査 委 員 (委 員長)
教 授
市 月
1
朗教
授
大
坪 lllE 次
教
授
大
月
卓
良F
教 授 堀 部 安 一
助教授 明 山
浩 助教授
竹
内
康
博
論 文 内 容 の 要 旨
本研究では、数理生物学において最 も単純ではあるが最 も重要な数理モデルであるロ トカ・ ヴォル テラ型の微分方程式系の大域的動的挙動 (特に全ての生物種が絶滅 しないことを保証するパーマネン スと共存平衡状態の大域的安定性)を考察する。
初めにn次元のロ トカ・ ヴォルテラ型の常微分方程式系 を考察する。次 に、m個の連結 されたネッ ト ワーク状のパ ッチ間を、n種 の生物種が移動 している状況 を記述 しているモデルである、離散化 された 拡散項 をもつロ トカ・ ヴォルテラ型の方程式系 を考察する。最後に、種内・種間の関係 に時間遅れを 導入 したロ トカ・ ヴォルテラ型の差分・微分方程式系 を解析する。
第一章では、い くつかの必要な数学的概念 と既知の結果 を説明すると共に、本研究の歴史的背景 と 問題 を提示 している。
第二章では、ロ トカ・ ヴォルテラ系の研究 において基礎的ではあるが興味深い次の ような問題 を考 察 している。即 ち、系のどのような構造が系の正の平衡̀点の大域的安定性 を保証 しているのか
?
この問題 に対 して、行列の政 定性 と関連するい くつかの性質を調べることにより、系の構造を記述する 相互作用行列が、ある種の崚 定性、正確 には定性的安定性 を満足するならば、系は大域的に安定 とな ることを証明 している。この定理は、関連するHofbaue,Sigmundの 推論が前提条件 を厳 しくすることに
より成立することを示 している。
第三章では、異なるパ ッチ間を生物種が移動するモデルにおいて、パ ッチ内のダイナ ミクスが共生 的である場合を考察 している。共生系の流れの単調性 とSelgradeの定理 を用いることにより、各パ ツチ が大域的に安定であることと系全体がパーマネンスとなることが同値であること、更に系の正の平衡 点が一意であるな らば系は大域的に安定 となることを証明 している。 また、パーマネンスではあるけ れ ども大域的には安定ではない系の例 として、複数個の正の平衡点をもつ具体的な系を挙げることに より、各パ ッチの大域的安定性 は、系全体のパーマネンスを保証するが系全体の大域的安定性 は保証 しないことを示 している。
第四章では、第三章 と同様 にパ ッチ間を生物種が移動するモデルを考察するが、パ ッチ内のダイナ ミクスが競争的な場合を解析 している。系の流れのK単調性 に基づ き、各生物種が単独で生 き残る状況 を表す平衡点が全て不安定であるならば、系全体 はパーマネンスとなることを証明 している。更 に、
系の正の平衡点が一意であるならば、系は大域的に安定 となることを示 している。 この結果 と多項式 の解 を数値的 に計算する方法を用いることにより、計算機実験で大域的に安定であると推測 されてい た系が、実際に大域的に安定であることを示 している。 また、全てのパ ッチが同一の競争系である場 合に関連 したGohの推測が、一般的には成立 しないことを証明 している。
第五章では、時間遅れをもつロ トカ・ ヴォルテラ型の差分‐微分方程式系 を考察 している。従来の研 究では、種内・種間の関係 に時間遅れの影響 を導入する場合、時間遅れをもたない種内関係 を表す項 を残 したモデルが研究 されていた。 この ような系 に対 しては
Liapunov‐
Razumikhinの汎関数 と比較定理 を適用 し、時間遅れをもたない種内競争が時間遅れをもつ種内・種間競争 より大 きければ正の平衡点 が大域的ア トラクターとなることが知 られている。本章では、時間遅れをもたない種内関係が存在 し ない場合を考察 している。従つて、従来の既知の安定性条件 は一般 に適用で きない。ある連続な汎関 数 とWthtの方法を改良することにより、種内及び種間の時間遅れを無視 した系が大域的に安定である ならば、どのような大 きさの時間遅れの影響の下で も、系はパーマネンスであることを証明 している。この定理はHaleとWalmanの与えたパーマネンス条件 を含むよ り広い条件である。更に、系の大域的挙 動 を考察 し、彼 らの条件がパーマネンスだけではな く、系の正の平衡点が大域的なア トラクター とな ることも保証 していることを示 している。 この条件 は、種内競争 に対する時間遅れの影響が十分小 さ いことと同値であ り、種間競争 に関 しては任意の大 きさの時間遅れが系の安定性 と無関係であること を示 し、更にGopJsarFlyが与えた条件 を拡張 していることも証明 されている。
第六章は結論であ り、本研究で得 られた成果をまとめると共 に、今後に残 された課題 を与えている。
論 文 審 査 結 果 の 要 旨
本論文は、多数の生物種の共存 を保証す る生態系の構造 を明 らかにするとい う生態学の基本的課題 を研究するために、数理生物学で最 もよ く用い られる重要な数理モデルであるロ トカ・ ヴォルテラ
(LV)系の大域的動的挙動 を解析 している。
本論文は6章 か らな り、第1章では、問題の定義・歴史的背景 ‐意義 を説明 している。
第2章では、LV系の大域的安定性 を考察 している。系の構造 を記述する行列が定性的に安定であれ ば、系の共存状態は大域的に安定であることを証明 している。 さらに、この条件 を満たす系の構造 を 明 らかにしている。
第3章では、生態系がい くつかのLV系で表現 される共生的パ ッチに分割 され、パ ッチ間を生物が拡散 移動するモデルを解析 し、生物の移動が種の共存可能性 と安定性 に与える影響 を考察 している。系の 流れの単調性 とセルグレイ ドの定理 を用いて、パ ッチが大域的に安定であるならば、生物がパ ッチ間 をどのような大 きさで拡散移動 しても、全てのパ ッチにおいて生物が共存で きることを証明 している。
また、ある付加的な条件の下で、生物が共存で きるならば全てのパ ッチは大域的に安定であることを 証明 している。 さらに、パ ッチの大域的安定性は系全体の大域的安定性を保証 しない ことを示す こと により、生物の拡散移動 は系の安定性 を低下 させることを明 らかにしている。 また、共存系の大域的 安定性 を保証するための必要十分条件 は、共存平衡点の一意性であることを示 している。
第樟 では、前章 と同様なモデルでパ ッチが競争的な場合について考察 している。系の流れのK単調 性 を用いて、全パ ッチで生物が共存で きる条件 と共存状態が大域的に安定 となる条件 を与 えている。
第5章では、競争的LV系において種内・種間相互作用 に時間遅れを導入 した影響 を考察 している。 リ アプノフ汎関数 とライ トの方法 を改良す ることにより、時間遅れを無視 したLV系が大域的に安定であ るならば、任意の大 きさの時間遅れに対 して、生物の共存が保証 されることを証明 している。 また、
共存状態の大域的安定性が保存 される時間遅れの臨界値 を与 えている。
第6章は結論である。
上記のように本論文は、生態系 において全 ての生物種が共存で きる条件、 さらに共存状態が大域的 に安定 となる条件 を与えるとともに、拡散や時間遅れ を含む非線形系 に対する有効 な解析手法 を提案 している。LV系は工学系で も用い られ、また、提案 されている解析手法は非線形工学系 に適用可能で あ り、博士 (工学)の学位 を授与す るに十分 な内容を持つ もの と認める。
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