九州工業大学研究報告(工学)No.52 1986年3月 33
ある非線形力学系の解の挙動について
(昭和60年11月29日 原稿受付)
制 御 工 学 科 宮 浦 す 力書
学
長井上順吉
Some Solutions of Nonlinear Dynamical Systems
by Suga MIYAURA Junkichi INOUE
Abstract
Nonlinear dynamicaI s}・stems indicale some interes加g behaviours. When we solve numericaL ly differential equations by a digital computer, we sometimes obtain ullexpected solutions due to changing the parameters(for example, tlle initial conditlon5,[he inputs and the sampling periods).
In 1974、 J. A. Yorke cal】ed these unexpEcted solutiolls ch臼os ㌧ Roughly speakillg, a chaotic dyna.
nlical system is one which has 8011」tions which disp】ay highly ap巴riodic or erratic time depelldence.
In the field of mathematics and physics, there are many publications about chaos for a matter of ten years・In・ecent years, it has attracted interest in the field・f engineering.
In this paper, we deal with a nonli爬ar vibrating system. The purpose of this paper is IIlainly to analyze the subharmonic oscillation ol order 1/2 arld chaotic behaviours, and t⑪propose the para.
meter condition wllich assure the existence o正tllem. Finally, we show some numerical resul[s.
系の解の準動のうち,主に]ノ2次分数調波振動とカオ 1.はじめに
スについての解析を行う。どのようなパラメータ条件の 非線形の微分方程式や差分方程式でモデル化できる現 もとで杜2次分数『臨皮振動やカオスが発生するかを洞 象が,パラメータ等の変化によっていくつかの興味ある べ,数値計算を行なったのでいくつかの結果を示してお 挙動を示すことがある。特に微分方程式を差分化して計 く。
算機でその解を求めようとする際,初期値や入力の変化
あるいはキザミのと肪によって,思い杣ない形酬 2・基蹴
を得ることがしばしばである。この思惑はずれの解は, 本論文では,図1に示されるような非線形ばねをもつ 1974年,J, A、Yorkcによって名付けられたミカオス、 振動系を考▲える。
と呼ばれるもので,おおざっぱに言えぱ,「宥界な領域 運動方程式は次のようになる。
で不現則に変化する現象」のことである。数学や物理学 .. . .
my+cy+∫(]ノ}=PICOS副+P。 川 の分野ではこの10年余ですでにかなりの量の辻カオスの
理論、に閲する出版物がでまわっているが,工学の分野 ただし,復原力:∫ω=舶訊『一σ}+by](『一α)1,外力 でも数年前から注目されはじめた。 :PICO5ω1十Poであり,他の記号については,
本諭文では.非線・形ばねに時1田遅れを伴うような振動 7η:質丑, C:粘性減衰係数, y:変位,
34 宮浦すが・井上順吉
の満たすぺき条件を平均法を用いて解析し,いくつかの 数値例を示す。
3.1定常解 式(2]の解.を
cシ f(y) エーA。。s.1+s・・訓/2』』 {、1
士一rsM−(・/2)s・i・ヨし/2)1+副 皿 と仮定する。ただし,5,珠は↓に関してゆるやかに 変化する閲数であるとLまた,・1−1訂{丁同とお
U いている.馴酬・}にft入すると
Plc・5ωt+P・y〔t〕 一丁8・i・(丁⇒一÷5輌・c・・(÷1+・・}
図一1 振動系 =ノ{識,A,5,恥, D 側
r,時間.⊇形雌数.⊇嘔, 8…(÷⇒−S剛㌢侮)=°
bl復原力の線形からのずれを表わす係数・ となる。ただし
㍉ =d/d『 ∫(エ。,止5.恥,£1=
とお、、ている。 ・1・・C・S・Z+(1/・}・ ∫・・sl(・/2)1+・・1
、醐いの聴上.卿耀式を・・のよう1・鰍元化し +・〔・・S・…+(1/2)・S・▲・1(・/・)・+・・1〕
ておく。 一脆。・・ε+・・siM)一エ・
−5〔・・sl{・μ+司+〔1/2}・τ×
工+(・一・一・・⊇+…】=1 1c°sμ1+F・(2} X。i。1(。/2)1+。」〕+エ・(・一・)
ただし・ とおいている試(砿1〕定常解工..5.・・、を求めるた
・一・/疏・炉疏一=輌 めのヲ融形迎立代蹴呈式
二ω焦元∴三。シ左, 五一号識+÷識宮一÷Ay・…縣一凡
1二二漂一1、洲ねの系、。r,漸硬÷囲・一(÷… +÷・・5:+3品⇒=°
ばねの系〕 (・L・〕+・(謡+÷古÷エ・1緬5・・」一・
とおいている.さらに・は剛・であるとし 固
を得る。
訓一・∈蜘一・土ω 3.2安定性
としている。 つぎ碇酬の安定性につい郡1べる・
式醐訓酬底,<,㌦一一1のと謹定創 式(・)から得られる定酬5・論からの変分をξコ
ミ。トサイクルを持つ ことがわカ・っているので・本論とす社次のよう麟分方穏式が枯れる・
文龍系力轍肋を肱τがアより大きいがτ フ一陪一・・一÷(÷蹄÷・・5;・・品・・…非 は微小である場合を考えることにする。
_旦Aエ。50sin2軌。・η ㈲ レ
:]{ll鷲鷲な_}でモデ_ト÷婦碍 A−)ξ
る系はいくつかの興味あ碇1;r雛を持つ.ここで腱 一÷品5・・i・2・品 に,ユ/2次分数誰】波振動が存在するためのパラメータ
ある非線形力学系の解の挙動について 35 式㈲よりλを特性操とする特性方程式が 3.3 数値計算
λL(、1斗D)λ+、1D−BC−。 〔7] 醐力のll鋼遅れ聾ξわすバラ・一タ・と・蹴{瓢 を表わすパラメータγの値をrニ0.03,γ=0.02のよう
とポまるのでぽ定条件は に固定して試㈲から得られ碇古棚で安定条件(8)を満
細<° (、〕足するものを・醐の螂凪蛙変化させて求めた.
AD−BC>0 その1例が図2である.図2では, F1−0.4,凡_0.]
となる。ただし・ とした。太線の部分が安定な定常解である。この図から
A→(・+÷(輌+÷調+3A識・i⇒∴翼欝誓驚蕊繍1㌫㌫
6U;一噤bP端S。cos2聡 ベクトルを示したのが図3である。
C−一?i謡÷÷A・+÷S;+3Aエ…s・・。) ついで1二・縫Rll]亨皮鮒・うなIL 1/3次分数調1皮 振動についてもその振動波形,位相面解軌道,パワース
P−÷Aエ・5・si・2・・ ぺ外ルを、Eめた.それが図、.臨図、である。
とおいている。 なお・ここでは例示しないカ㌔他のパラメータを固定 して遅れに閲するパラメータτを増加すると安定解の領 域は狭くなるという結果を得た。
1.0
奪 奏 iヨ ご
委 0.5
仰ア
口♪
1.5 1.75 2.O
FREQUEN(二、 〔ξu/ ・パ1〕
図一2 安定解
4.1 カオスの例
4・カオス 酬㌦よれ、垣里繊帥系では3次以⊥,1里繊
カオスというのは前述したように,微分方程式や差分 非自律系では2次以上.離散時川系では1次以上の系で 方程式のような砿定的な方程式によってモデル化できる カオスが発生する。そこで理論解析を行うまえに,簡単 現集坑条件の変化(例えぱ,初期仙,パラメータ,入 に力才スが見付かるのではないかと思い.パーソナルコ カ,サンプリング周期の変化)によって有界な領域で不 ンピュータを用いて調べてみた。
規則な挙動を示すものに変化するような現象である。 式働には,(O,0)に沈点.(±1,0}に鞍点とい ここでは図]に示される振動系がどういう条件のもと う3つの特異点が存在する。後の理論解折での健lt上.
でカオスを発』kさせるのかという解折を行った。 ひとつの鞍点日,0)が原点にくるように変数変換ま
36 宮 浦 す が・井 上 順 吉
F] 5:4 H ° 1
…
:
…
…
…
…
也
㌔ ! x
』己 i ㌧レ
;
雌相囎髄 i 喘相面解髄
1 …
旧舳▲ o o.丁6 0 n.77 L54
〔司パワースペクトル {c)パワース≠こクトル
図一4 基本調波振動 図一3 1/2次分数鯛波振動
臼・O.1
アト ロモ
Fo.0
口D
川 旧
〔a版動波形
回振動澁形
壷∵ 三 一、. 、.;
i ・..㌔ 1 一』ゴー
ニ
i ㌫圧_互 i 一酬道
. 】 1 苫口 o ロ ロ
…
o o.,」 1
(c}パワースベクトル 忙}パワースペクトル
図一5 うなり 図一6 U3次分数鯛波振動
ある非線形力学系の解の挙動について 37
二㌻元を改め くこと ;㌫1蕊蕊三::蒜鷺
工+(γ+2・+3・エコ÷6・エ}ヱー2エー3エ・_エ・ る・いずれの場合も,データ数13000個rザミ幅1。.
−F・c・s・ +F. 〔9]°1・初1切値:(エ・・£・)一(] ・)とした.
となる。 図7回喘相面鰍道が示すように・・つの閉ループ 式脈パラメータの値を, をもつ醐2の鋤〔1麟分数調波振獅功)を現わし
・一・皿・一鵬ハー剛・凡一・ @ご;≡芸謬蒜㌶テ欝二:㌶
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倒レ=2・0 (b)P=2.1
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{c)P=2.3
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38 宮浦すが・井上順吉
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∵込 1)」.1
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wl・≒、1
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声 {nP=3.0
(e戸=2.〆
図一7 振動波形と位相面解軌道
動)が現われている。いいかえれぱ,u=2の振動特性 ときの解は,土=品であることを考慮すると次のよう はひとつの秩序(order)を形成し,り=3の振動特性は に求めることができる。
別の種類の秩序を形1戎すると考えられるqしたがって,
これら異なった種類の秩序のllllにぱ前の秩序を破壊し X 2
工1==二じ言
毒:=:2ユ「|一←3エ…十エi {10:
十ε」−fラご≒−2「≡一ト3…三]ご…十6〒工1)コ7コ十∫ひ]C⑪Sレ己一ト1㍉1
となる。ただし,εは微小パラメータであるとし. 図一8 保存系
ξア=ア. £τ一τ, F1=F1. ε、F三二F』
2e・ピ 言h
と::蒜一蜘一 恥=−1三∵.(漂 已
工治+÷・ト宇一…5L (ユ1}工+(1+・岬
となる.consL=0である場合の解曲線のグラフは図 εキ0の場合には,原点を通る七パラトリ・ノクスが2 8のようになリセパラトリックスを構成する。このとき 本の枝に分かれ,1→。σで原点に収束する安定多様体
ある非線形力学系の解の挙動について 39 と1→一゜°で原点に近ずく不安定多毛綱・なる.原点≧・となることが」・かる.す舗ち.この」胎にはゴ、オ 以外でこの2つの枝が再び交わる点のことをホモクリスが硫して・・るということが塾的にも示される。
二・ク点というが醐齢ホモクリニ・ク点赫在すれ 式醐・ルニコフ1題数に基づいて,加ス的挙虻調 ばこの点の近傍には無限個の周1び1の異なる周期点や非可べる数f[丘シミュレーシ。ンやそれに閲する考察の詳細に P:個の非周期点があることをSmaIeが証明している:〕 ついては,次の機会に報告したい。
つま端断的ホモクリニ・ク畑r字在すれば力才劫苛
在するということに鱈。 5・おわりに
つぎにホモクリニ・ク点の存嵌f・持与える・ルニコ 本論文では.ひとつの非線形力学系の例について]/
フ関ガを言間・しよう・ 2次分数調波鋤と材スについての馴を行った.
私迂が考慮中の系では・メルニコフ閏数が 数値的な解折の前半は,パーソナルコンピュ_タFM 鋼・〕=一・∫:・緬Z−・。.,〕,エ、。(、一己..,ll×−7を棚し三作成した力鴇業石斤究生であった鱈充 彦氏(現・㈱安川盲E機製作所)と田村師雄氏(現・松下 ×P。1エ1。(,−1.,C).却,一,。、,ぱ〔13:1電糠業㈱〕の醐力を得て徹]・れたものであ1〕・特 にパワースペクトルを求めるFFTのプログラムについ
のよう喧義される誤だL てはFM−・用に酬氏にア。ばして、、ただいたもの P、(。1.牛エ, を使肌た・f絆は・技官の星野英聡氏と卒i融の野頴
,q1〔エ1.エ,]一一{,+2.〕エ,−3.』一、蹴。 和額の醐加1]}てPC−98・1VM2を用いてf械し たものである。
十.FICOSレ1十F』
最後になってしまったが、制御工学科の小林敏弘助教 とおいている・これは・七パラド」・クスが原点に蹴授にも1]ロ眠をいただいた.この機会を4・椥して皆楳 をもつ場合の定義式である。 に濡く感謝いたします。
メルニコフ関数4ε(島,c)はセパラトリックスから枝 分かれした安定多様体と不安定多様体の£=』。におけ
る蹴と位剛係を』、(1.,dの綱靴符号でそれぞ 参考文献
れ与えているから・2つの枝が1黄断的に交差するために D品ヒバ上剛・・酬]i呈れ酬う強制剛系の振肱、
は』dl。, cl≧0となる条件を求めればよいということ 日本促会学会趨文集〔C掲)・凹在・139号.ζ昭58−3),
PP.298−306
になる・ 2〕・腓:・」1聯膓・ステムの臓聴と力蠕.江テム
式{13}の積分を行うと と制伽 V°1 28 N° a1}P15n2〜512 (198 1)
3) Sr11{1k㌔S・ Djfft・rピnlinbl亡Dynamic Sy詞輩mざ , Eull, Ar11りr.
鋼・}−2乎・−7;{冨・−2抗 、}1蒜二㌔IP£:諾7ill6㍊blli、y。f 1_,,ふ,
−8・・一(乎。π}℃。S.1・。一,)・1−1二llll;ll;竺II㌫b緬バT馴バ1…M 【h S㏄・
5〕1 blmus・P・」・1 A Nolllh廿・ご r Oscnlこ1tOr wilh a Slmn即 となる・1・を蹴して棚条f」・・を変化させると4・{1。,蒜11°^Phil 1h【】S R° S°C・・A292・…4 9一14S C)はcについての周期閥数であるから,F、が小さい値
をとるときには常に4ε日。、c)<⑪という場合がある が・F1を大きくしていくとユェ(島, c}≧0となる条件 が存在する。
一例として,図7(c]のパラメータ値をもっ場合のメル ニコフ閲数を計算すると
4ε(〜・. c)≒ −0.n】96−47.8486 cos l2、3(£。−c)1 {15、
となるから,Lを何定してcを変化させると』ζ佑, c]