The Japanese Association of Management Accounting
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The Japanese Assooiation of Management Aooounting 日本管理会計学 会
管 理会計学 2008 年 第 16 巻 第 2 号
論 壇
多様 性 を 活 か す マ ネ ジ メ ン トス タ イ ル
一 第一三 共の 経 営 統 合を 事 例 とし て 一
尾 崎 昭雄米 斎 寿明 †
〈 論壇要 旨 〉
第一三共 (株 )は 三共 (株 )と第一製 薬 (株)が経営統合し誕 生 し た国 内 大 手製 薬企 業であ るが, その 経営統合に あ た り統 合 前企 業の 伝 統に捉われ ない ,多 様 性 を 活か し,企 業の あ り た
い 姿の 実現を目指 した新た なマ ネジメ ン トス タ イル お よ び シ ス テ ム を 構築 し運 用 を 開 始 した .
こ のマ ネジメン トス タイル とその シ ス テ ムは 以 下の 特 徴 を 有し てい る.第一に
,
一気 通貫の マ ネジ メ ン ト実 現の た めに企業理念か ら個別業 務シス テ ムまで一体的 体系 を 構築し, 経 営ビジョ
ン の 達成を図っ て い る.第二 に, 各執行 組 織の 自律性を重視し,各 場 面で イ ノベ ーシ ョ ン を 促 進 する と 同 時に, 企 業のベ ク トル を 整 合 し組織力 を高め る こ と を狙 っ てい る.第三 に,第一三
共 固有の 12構成要素か らなる PDCA サ イ クル を 廻 し,継 続的 な価 値 を創 出し てい る.第四 に, 環 境 変 化の激 しい 時代に 応 え社 会 的 責 任 を果たすた め に,ス テ ーク ホル ダーの
視 点で の継 続 的 な業務評価を行い ,内 部 統 制 も同時に実 現 してい る.最後に,全体 最適化や課 題 対 応 / リス ク 管理の た め にス タ ッ フ を 配 置 し機 動的 なマ ネジメン トサ ポー トの
仕 組み を整えて い る.
〈キーワー ド〉
マ ネジ メン トス タ イル ・シス テ ム
, 多様 性, イ ノベ ーシ ョ ン
, PDCA サ イ クル , 内部 統制
Management Style to Respect and Utilize Diversity : ACase Study for Business lntegration of Daiichi Sankyo
Akio Ozaki米 and Toshiaki Sai†
Abstract
Dai三chi Sankyo Co ., Ltd. is one of the largest Japanese pharmaceutical companies , which was
fc}rmed by business integration between Sankyo Cα and Daiichi Pharmaceutical Co . Under this
business integration process, Daiichi Sankyo has estab1 三shed new management style and system , which
is not always based on the fbrmer companies ’traditional ways of thinking. Daiichi Sankyo aims at realization ofst 三mulating diversification with the new rnanagement style and system , which has several
unique aspects . Primarily, Daiichi Sankyo aims to achieve corporate vision by utilizing the united style and system consistently from the top management to.the bottom. Secondly, through the operation under
its management style and system Daiichi Sankyo emphasizes on promoting selfLdirected innovation and unifies the group under management pollcies to improve organizationa ユcapabilities . Thirdly, Daiichi
Sankyo aims to create corporate value continuously by the operation ofDaiichi Sankyo ’s unique twelve eiements ofacyole ofplan −do−check −action 、 Fourthly, the style and the system fUlfiH society ’
s various demξmds and social responsibilities as a member of the society by evaluat 三〇n of business procedure from the point of each stakeholde ビs view . At the same time the internal control is fulfilled by operation of the same style and system ↓ astly, the staff is posted in various tiers of the organization to support management fbr optimization as the whole , resolution of issues, and risk management ,
Key words
Management style and system , Diversification, Innovation, Cycle of PDCA ,Internal contro1 system 2008 年 2月 2 日 受 理
*第一三 共株 式 会 社 取 締 役 専 務 執 行 役 員
†第一三 共株 式 会 社 MS 推 進 部長
Accepted 2 Fじbruary 2008
Member ofthe Board, Senior Executive Of狙cer, Daiichi Sankyo Co., Ltd. General Manager, M鋤 agement System Departmeηt, Daiichi S闘 kyo Co,, Ltd.
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管理会 計 学 第 16巻 第 2号
1 . は じ め に
本 稿で は三共 株 式 会 社 (以下,三共 ) と第一
製 薬 株 式 会 社 (以 下,第一製薬 )の経 営 統 合 を 事 例 とし, 多 様 性 を活 かし,経 営 統 合の成 果 を継 続 的に創 出して い くた め に,どの よ うなマ ネジ メン トス タイルを構 築 す るこ とが有 効であっ た かを 検 証 す る,な お,筆 者は経営統合の プロセ ス に おい て は, 第一三 共
株式会 社 (以 下, 第一三共 )の経 営 統 合プ ロ ジェ ク トの PMO 〈Project Management Office)の責 任 者 な らび に副責任者 とし て, プロ ジェ ク トの全 般 管理 にあ たっ た.ま た, 完 全 事 業 統 合 後の現 在 は,尾 崎は第一
三共の CSR ・人 事 管 掌の取 締 役 専 務 執 行 役 員 な らび に経 営 戦 略 会 議 / 経営執 行 会 議メン バ ーで
あ り,斎
は経営統合の フォ ローを 担 当 する組織 (MS推 進部, MSはマ ネ ジメン トシ ス テムの 略 )の 長の 任に当たっ てい る.
2 . 第一 三共の概 要 2. 1 財務 実績 等の 会社概 要 第一三
共グループ は,三共 と第一
製 薬の経 営 統 合に よりGlobal Pharma Innovator (グn 一バ ル創 薬 型 企 業 ) を目指し, 20es年 9 月に発足 し,2007 年 4月 に国 内 事 業 会 社の 統 合 を完了 し,完 全 事業統 合 を 果た した 国 内最 大 手の製 薬 企 業の一つ で
, 医 療 用 お よ び一般 用 医 薬 品 事 業 を事 業 内 容 とし てい る.2006 年 度の財 務 実 績 は,売上高 9,295億 円 (うち海 外 売上 比率 38% ),研 究 開 発 費 1,707億 円,営 業 利 益 1, 363 億 円であ る.国 内に 生産 拠 点 7箇 所,研 究 拠 点4箇 所,目・米 ・欧 ・ア ジア ・南米に各 販 売 拠 点 を 展 開し,
要 員 数は国 内9, 635名,海 外 6,020 名, 計 15,655 名 (2007年 度 中 問 期 末 実績)である.
2 . 2 医薬品 事業へ の 資源集中
今回の統 合にあ たっ て は 医薬品事 業へ の経営資 源の集中を企図 し, 医療 用 ・一般用の医薬品事業以外
の事 業 を 営 む 関 連 会 社のグループ外 化 を,経 営 統 合の 意 思 決 定か ら現 在に至るまでの約2年 半 とい う限 ら れ た期 間の 中で推進 し,実行に移 し た.こ の期 間にグループ外 化 し た事 業の規 模は合計で売 上 高 約 1, 800億 円,従 業 員 数 約3,700名 と な り,取 り扱っ た 案 件 数 とし て は 17 件であっ た.結 果 とし て,2007 年度の中 間 期の決算に おい ては,医 薬 品 事 業の構 成比 が売 上 高,営 業 利 益 と も90% 超 となっ ており, 第 一三 共 は単一事業会社に ほぼ 近い 形態となっ て い る.
3 .多様性を活かす 企業の 「あ りたい姿」 を実現 するマ ネジ メン トス タイル 3 . 1 第一三共 グル ー プの文 化 ・風 土 経営統 合で 目指す 企業の 「あ りたい 姿」 第一三
共は 90〜100余 年の歴 史のある三共 な らびに第一
製 薬が経 営 統 合 し誕生した 企 業であるが, 新 会社と して,統合前の両社の伝統に捉われ ず,多様 性を活かす新たな 文 化 ・風 土 を 築 くとい うス タン ス
で諸業務や 諸 課 題に取 り組ん でいる.と くに今, 経営統合の成果 を継続的に創出し てい く た め に 「ど う
い う会 社であ りたいか」 とい うこ とにつ い て, い くつ かの像 を描い て い る.第一に, 環境変 化に敏感で 適 応力の高い企業,即ち,社会的な 要請に十 分に応えてい くこ とのでき る企業であ る、第二 に, 自律 的 に イ ノベ ーショ ンを生 み 出すことのできる企業,言い 換え れば,「挑戦と自己革新」 の風土 が根 付いた活 気 溢 れる企 業である,第三に, 経 営のベ ク トルが浸透 し, 組織とし てのカを存分に発揮でき る企業, 結
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多様性 を活かすマ ネジメン トス タ イル
ー 第一三共の 経 営統合を事例と し て 一
果 として,業 界 最 高 水 準の 業 務運営 効 率 を 実現で き る企 業である.第四 に, 3つ の価 値 (社 会 的 価 値,
人間 的価 値, 経 済 的 価 値 ) (4,3参 照 ) をバ ランス よ く継 続 的に高 めるこ とが でき る企 業である,3っ の
価 値 と は 企業価値 をス テーク ホル ダー (株主,顧 客 社 会,従業員 等)の 視点も踏まえて,社 会 的,人 間的, 経 済 的の 3つ の 側面 か ら測っ た もの で, これ ら をバ ラン ス よ く最 大化 してい くこと が経 営の使 命 である と第一三
共では 考 えて い る.そして最 後に, 企 業 を取 り巻 く様々 なステーク ホル
ダーに対し て説 明 責 任 を果た せ る 企業,即 ち,社会的責任 を十 分 に果 た してい くこ とのでき る企業であ る (図 1参 照 ).
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遮 応 力の冨い 企業
(社 会 的 聾 請に応え る 企業 )
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ス テーク ホ ルダーに して
説 明 責 任を果た せ る企 業
(社 会 的 責 任を桑 た す 企繋 )
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自律 的に イ ノベーション を生み出 すこ
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図1 第一三 共 グループの 「あ りたい姿」
(ア) 社会 ・環境の多様な変化に 迅速に対応し課 題解決に当た る
現在, 第一三共が直面 してい る 課 題 にっ い て見る と, 社会 全 般と 同様に, 二極 化し てい た り, 多様な
マ ト リクス に なっ て い る事 象 を 解 決 しな けれ ば な ら ない場 面が頻 繁に発生 して いる.これ を妥 協によっ て解を 出し て対 応して いたの で は,企 業の競 争 力 は 生 まれ ない.新 しい考え方 (イノベ ーシ ョ ン) を採
り入 れて解 決 してい くこ とが重 要で あ る.例え ば グロ ーバ ル 化 する企業運営に あ たっ て , 日本の 従 来の
ス タイル と米 国のス タ イルや その他の諸 国の ス タイル を融 合し,どの国籍に帰 属 す る もので もない第一
三共のス タ イルを様々 な 場面で構築し てい くこ と を目指して い るのが その一例で あ る.た だ し改革は何 もない ところ に ゼ ロか ら生 まれるもので はない.日常の運用のなか で改 善が積み重 な り, 知 識 や 情報が 集 積 されて いくな かで ,これ らのば らばらで あっ た 知識 ・情報を融合し,バ ラン ス さ せ,体 系 化 するこ と に よっ てまっ た く新 しい切り口での シス テムやス タ イルが 生み出 される.これが改 革であり, こ うし た 考 えに基づい て構 築 されて い るのが第一三
共のマ ネジメン トス タイルな らび にマ ネジメン トシ ステム
で あ る.変化の激しい 時代に はこ うし た改革が多く生ま れ ることで組織を活 性 化し,時代を先取 り した 形での成 果 を 生み出 すこ とができる ようになる と考 える (次ペ ージ に 示す 図2 ・図3参 照 ).
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例:自 律 性 重 視 例:英米 流
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例:第一三共マネジ メ ン トス タ イ ル
例:第一三共 流
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例:地域 (法人 )鞘
例:機 能 鞘
相 反 す る もの を 妥 協 で 新 た な ア イデア で解 決 する
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図2 社会 ・環境の多様な変化 に 迅速に対 応 し,イ ノベ ーション で課題を解決する
;2 誤・ ・ ”冖
方 針 ・戦 賂の徹 底
会 社 経 営 ・組 織 あ りた い 姿 長 期 的 (戦 隨 ) グロ ーバ ル
マ ネ ジメ ント 可 視 化 ・標 準 化 基 盤
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
部 門 の 自 立 性 社 会
個 人 現 状
短 期 的 (戦 衛 )
ローカ ル
内 部 統 制 (リス クマ ネ ジメ ント)
ル ール 化
成 長
図 3 課 題を多様 な 視 点で 理解する
(イ) 第一三共のマ ネジメン トス タイルを 通じて一気 通 貫かつ 多 様 性 を活かすマ ネジ メン トを 実 現 す る
前 述の企業の “
ありたい姿”
を実現し て い くこ と を 目指し て構築され た “マ ネジ メン トの 体系” が第 一三 共マ ネジメン トス タ イル であ る.第一三共のマ ネジ メン トス タ イル は 大 き く3つ の括 りで構 成 され てい る.最上層は企業理念 ・経営ビジョン ・方 針な ど経営の方向 性 を 明 確に し,組 織全体に浸 透 させ る 仕 組みの部 分, 中間 層は経 営 計画 ・戦 略 立案 と社員の 目標の整合性 お よび業績評価へ の 反 映の仕 組 みの 部 分で,中期経営 計 画 (3ヶ年 計 画 )や業 績目標 管理 が核 となる.最下層は業 務プロ セス の明確化 と改 善の仕 組み で後 述する3つ のマ ネジメン トシス テム で カバ ー
す る (次ペ ージ に
示 す 図 4参 照 ).
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