Title
白鋳鉄の凝固条件と組織
Author(s)
糸村, 昌祐; 平敷, 兼貴; 村山, 哲朗
Citation
琉球大学理工学部紀要. 工学篇 = Bulletin of Science &
Engineering Division, University of the Ryukyus.
Engineering(13): 1-9
Issue Date
1977-03-28
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12000/26774
1.緒 琉球大学理工学部紀要(工学篇)第13号.1977年
白 鋳 鉄 の 凝 固 条 件 と 組 織
糸村昌祐市平敷兼貴*村山哲朗*取
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曾 冷却速度,化学組成と鋳鉄組織との関係を示した, 2) Greiner. Klingensteinの鋳鉄組織図 .あるいはケ 鋳鉄は,理論的には炭素を約 2.0%-6.67%含む欽 一炭素合金であり.実際には炭素約2.5%-3.5%. ケ イ素約1.5%-2.5%を含む鉄ー炭素ーケイ素三元系合 金として,その凝固途中に共品変態を呈する共品反応 型合金の代表的なものの一つである。鋳鉄をその組織 から分類すると,白鋳鉄、まだら鋳鉄,ねずみ鋳鉄の 三つに大別できる。機械用鋳物としては.被向IJ性の点 から主にねずみ鋳鉄が使用され.良質のねずみ鋳鉄を 得るため合金元素の添加や接種等,種々の研究がなさ イ素やクロムを添加した場合の.黒鉛ーオーステナイ ト共品変態温度,セメンタイトーオーステナイト共品 (レデブライト共品)変態温度の変化について研究し たOldfield均等,冷却速度や化学組成によってねずみ 鋳鉄や白鋳鉄組織になる複平衡状態図を有する鋳鉄の 研究は古くから行なわれているが,合金活素や按締剤 として添加される元素が,核生成に効果があるのか, 核の成長に効果があるのかはまだ日月らかではない。本 研究Ij欽ー炭素二元合金の凝固におよほす添加元素の 影響を検討するための基礎的実験として,まず白鋳鉄 凝固の場合を取リ上げ,電解欽と電極黒鉛で合成した 共品組成の鋳鉄を白鋳鉄となるように一方r
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疑図させ, 白鋳鉄の凝固過程と凝固組織との関係について得られ た結果を報告する。 1) れている。 Maurerの鋳鉄組織図 として知られる, 炭素,ケイ素量と組織の関係図や,これを修正して, 受 付 1976年10月30日 本 球 琉 大 学 理 工 学 部 機 械 工 学 科 * ホ 琉 球 大 学 短 期 大 学 部2 白鋳鉄の凝固条件と組織
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実験装置および方法 2.1 方向性凝固用鋳型 方向性凝固させるための鋳型は,図1に示すように Pt.Pt.Rh Thermocouple Quartz Tube M守ld Nickel守Chrome Wire Refractory Cement Refractory ube 。 的 ︻シ
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Copper chillFig. 1 Rough sketch of experimental apparatus 氷水中に入tLた直径80mm,高き 200mmの円柱状銅塊の 上面に内径18mm,高き 130mmの円筒状不透明石英管を 立てたものである。この石英管には,下端から 10mmお きに,試料温度jsIJ定用白金 白金ロジウム熱電対の保 護管として外径 3mm,内径 2mmの石英管が 3本水平に 差し込まれている。鋳型にj容j易が鋳込まれたときに, 銅のチル面から上方へ向って凝固が進み,鋳型側壁か らの凝固が起らない(一方向凝固する)ように,鋳型 の周囲は,炉芯管にニクロム線を巻いた炉で保温した。 この保温用炉はニクロム線に流す電流を,変圧器で調 整し,鋳型チル面から 40mmの高き附近の温度をクロメ ルマルメル熱電対で測定して,周囲保温温度とした。 保温温度は 800.C,900.C, 1000.Cの 3通りとした。
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実 験 方 法 溶解材料として電解鉄と高純度黒鉛粒を用い,鋳込 後の供試材組成が共品組成 (4.3%C) となるような黒 鉛配合比にて,全重量約 220g程度を,アルミナセメ ントの内張りを施した1番クレー質黒鉛るつぼを用い て,シリコニット電気炉にてj容解した。この場合.溶 解材料としての黒鉛配合比は,空気中溶解による黒鉛 粒の燃焼を考慮して予備実験を行なった結果,電解鉄 重量の 5.5%とした。白鋳鉄方向性凝固実験は,結晶成 長が非定常ではあるが,定常状態に近い条件のもとで 起るため,成長時の過冷却がそれほどなし長範囲に わたってセメンタイトーオーステナイト共品組織を得 ることがむつかしいようで,純粋に鉄 炭素二元合金 での実験は少なく 4)5) 安定的な白鋳鉄組織を得るた め,クロム等を添加した実験6)7) 8)がなされているが, 本報告ではあくまで基礎的な資料を得る目的で,鉄-炭素二元合金での実験を行なった。溶解温度 1450.C, 鋳込温度 1400.Cとし,溶解保持時間を 10分から 60分の 聞で種々変えて,方向性凝固鋳型内に鋳込んだ。この ときの試料冷却曲線を,熱接点が試料中央部に位置す るようにセットされた 3組の Pt-Pt.Rh 熱電対によ り 3ベン式X Yレコーダーに描かせ,凝固条件解析 のための資料とした。凝固後の試験片は,凝固方向お よびその垂直の方向に切断して,顕微鏡組織写真を撮 影し,冷却曲線から得られる冷却速度,凝固速度と組 織との関係について検討した。3
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実験結果および考察 3.1 鋳込後の経過時間と凝固高さ 図 2に試料の冷却曲線の一例を示す。測温部はチル 10sec トー---< 7001 Time Fig.2
Cooling cu.veKeeping time at 1450.C, 15min. Circumferenc e temp., 1000.C
3 琉球大学理工学部紀要(工学篇)第13号, 1977年 14
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12 ハ U A u n u q u つ L ' a E E d H 凶 ロ ω J 国 E と 自 主 一 。 的。
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Fig.4
白i;1)'らIOmm,20mm, 30mmの3個所であるが,チル面に i!J:い程冷却が速いのは当然である。この冷却曲線上の 折点は,凝固がチル面から上方へと進み,鋳込後ある 時間経過した時,熱電対の挿入されている位置で共晶 変態が起ったことを示している。鋳込後,この折点ま での経過時間と凝固高さとの関係を示したものが図3 3.2 凝固組織 図 5,図 6に実験で得られた試料の縦断面および横 断面顕微鏡組織の代表的な二例を示す。図5は自〈見 えるセメンタイトと黒っぽく見えるパーライトが共存 するいわゆるレデブライト共品組織であり,図6は初 品黒鉛が晶出した過共品組成の組織を示している。い ずれの組織もチル商から上方へ連続的に並べてあり, 特に縦断面組織写真を見ることにより,凝固が一方向 に進行していることがわかる。本実験では36個の試料 を鋳込んだが,冷却曲線測定範囲内で黒鉛を品出して いないレデブライト共晶組織の試料 4個,初品オース テナイトを品出した亙共晶組織の試料1個以外は, い ずれも初品黒鉛が多少現われた過共晶組織となった。 鋳型周囲を加熱することにより,鋳型壁面からの吸 困を押さえチル面から上方へ,一方向凝固させるよう 心掛けたが,チル面から35mm程度までの範囲では,チ ル面に垂直に凝固していたが,それ以上の部分は凝固 が周辺からも起って乱れた組織となっていた。 j容j易がチル商に接して急冷され,核形成のための潜 伏期間後(実際には非常に短かい時間であるが)細か い結晶核ができ,この結晶核を母体として高温度側へ 凝固が進行する。図5に示すような共品組成の試料で は,過冷によって最初に細かいレデブライト共品が品 出し.そのうちの一部が優先的に一方向に凝固成長し 全体にレデブライト組織となっている。一方初品セメ ンタイトが見られる過共品試料の場合には,試料端面 に細かく種々の方向にのびた初品セメンタイトが見ら EE . 4 H 出 口 ω 凶 国 E h 也 君 コ 。 的 14R
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である。冷たい鋳型によって急冷され,鋳型面に垂直 に凝固が進行するような方向性凝固において, 一般に 知られている経過時間(t)と凝固長さ(h)の関係式に従っ h =K . OIτ
C (K 定数) て,縦軸にチル面からの高さ,横軸に経過時間の平方 根をとったものであるが,実験の範囲では凝固式によ く従い,鋳込後の経過時聞の平方恨に比例して凝固界 面が高くなり,一方向凝固が良好に進行していること を示している。図3には溶解保持時間を変えたいくつ かの試料について示しであるが,溶解保持時間は炭素 の燃焼・般化, したがって試料の炭素含有量に影響し ても,共晶変態開始までの時間には大きな影響が無 いことを示している。このことは周間温度が 800"C, 1000"Cの場合についても言える。各周囲保温温度にお いて,熱電対挿入位置でのJ疑国時聞の算術平均を求め て一つの図に示すと図 4となる。周囲保温温度を高く すると,経過時聞の平方根に比例するという関係,す なわち一方向凝固性はよくなっているが,周囲からの 入熱との関係で,凝固時間は多少長くなっているよう である。e ‘ E務時帰
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琉球大学理工学部紀要(工学篇)第 13号, 1977年 7 れ,少し上方では初品セメンタイトが消失して,細か い球状黒鉛が現わjしさらにチル商から離れると, 片 状黒鉛が品出してレデブライト組織を百ししていること が図6からわかる。 Fe-C合金にみられる球状黒鉛の 代表的な生成方法は Mg処理であるが.他にもいくつ かの方法で提案されており,その一つに冷却速度が大 きいと, ~容湯の過 i令が大きくなり黒鉛の表面エネルギ (9) ーの関係から球状化しやすいとの報告がある 。共品 組成では球状黒釘が生成しにくく,過共品組成では溶 ( 1 目 湯から直按品出しやすいこと .チル面近傍て'は結晶 絞形成の
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替伏期の聞に大きく過冷するため,球状黒鉛 が生白しやすいが,凝固が進行するにつれて過冷が小 さくなり,球状から片状へと黒鉛形態が移行すると考 えると,図6の黒鉛形状について説明がつくが,チル 面近傍での冷却曲線を測定していないのであくまで推 定である。レデブライト共品凝固するような冷却速度 で,片状黒鉛が試料全体の凝固方向を横切るように成 長している機構を考察するため,連続的な横断面写真 による立体的組織として検討する,すなわち試料の縦 断面について数 10ミクロンずつ研磨と腐食を繰り返し 同一場所の組織を連続的に観察するため,初品黒鉛と レデブライト共品組織との関係を図 7に写真で示す。 写真の番号は凝固進行状態と対応し,試料の下方か ら上方への順となっている。 円で囲んだ黒鉛について 写真1では現われていない黒鉛が,写真 2ではかなり の大きさて・現われ,これが上方へ凝固するにつれて次 第に小きくなり,写真5ではこの黒鉛は見られない。 写真2から写真 5までの撮影間隔から考えると,この 黒鉛の縦方向の長きは約 100ミクロン程度と考えられ る。これらの写真からわかるように.黒鉛には方向性 がなく,勝手な方向に成長が進行していく通常のねず み鋳鉄中に見られる片状黒鉛の成長過程と同様である ことがわかる。四角で囲まれた部分はレデブライト共 晶セルであるが,写真 lから写真 5までの間隔 200ミ クロンを通して形状,大きさともさほど変化がない。 他の共品セルについても同様に,大きな変化は見られ ず図5,図 6の組織写真との関連から,レデブライト 共品セルは,凝固進行方向に平行に,板状に成長して/ いることがわかる。初品黒鉛の周辺でレデブライト共 品組織が多少不連続となっていることは,初晶黒鉛の 生成時期とレデブライト共品の生成時期を考慮するこ とにより説明できる。すなわち溶湯を鋳込んだ後,チ ル面からチル品(微細結晶粒)を経てレデプライト共 品セルが柱状晶として成長する際,凝固界面前方のj容 湯中に,液相線温度の高い初品黒鉛が,レデブライト 共品に先行して品出し,チル面から成長してくるレデ ブライト共品の柱状品に影響し,その組織を多少不連 続にするものと考えられる 1110 前述のようにレデブラ イト共品セルが,凝固進行方向に平行に板状に成長す ることから,各試料の横断面組織に現われる共品セル の厚きを測定し,共品セル巾と凝固速度との関係を以 下に述べる。 3.3 共晶セル巾と凝固速度 図8は.鋳込後経過時間と凝固高さとの関係を示し E E 40 .r:.- 30 誌 ロ.
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た図3から,任意の凝固界面高きでの時間を求めて放 物線を描いたものである。この図に示したように,放 物線の任意の点で接線を引けば,この接線の傾きdh/cit が,その点における凝固速度Rcm/min
となる。これ からわかる通り,本報告における一方向凝固は,ブリ yジ7ン法による一方向凝固とは異なリ i,疑函高さと 共に凝固速度が変化し,凝固部分が長くなるにつれて, 凝固速度は遅くなる。各試料について図8に示す方法 で求めた凝固速度と共品セル巾との関係を図 9に示す。 縦軸に共品セル巾,横軸に凝固速度をそれぞれ対数 日盛で示してある。図から凝固速度が小きくなるにつ れて,共品セル巾が大きくなることがわかる。すなわ ち図5,図 6に示した顕微鏡組織からもうかがえるが, 凝固が下方から上方に進むにつれて凝固速度が小きく なり,共品セル組織が粗くなっていることを示してい る。初品黒鉛の晶出した過共品組織の試料と,共晶組 織の試料とで,共品セル巾と凝固速度との関係が同様 となっているのは,凝固組織の項で述べたごとし初100 白鋳鉄の凝固条件と組織 8 n v R d
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晶黒鉛の存在が,あとから成長するレデブライト共晶 組織に大きな影響を与えていないことと一致する。 層状組織を有する共晶合金について,層間隔λ と凝 固速度Rとの聞に入 =αR-0.5 (α:定数)の関係が 12) あることが報告きれている が,共晶組織の集合体で ある共晶セル巾と凝固速度の関係も,当然比例定数は 異なるが,この関係式を満足させる筈である。図9に ついてみると,図中の直線の傾きがー0.5であり,上記 関係式を満足していることがわかる。 4. 錨 蛤 鋳型周囲を保温し,下端を強制的に冷却することに より,鉄ー炭素合金を一方向凝固きせ,共品および過 共品白鋳鉄組織の試料を作成し.凝閲条件と組織との 関係を調べ,次のような結果を得た。 1 )凝固高きは鋳込後経過時聞の平方根に比例する。 周閤保温温度が高い程一方向凝固が良好に進行す るが,多少凝固速度が遅くなる。溶解保持時間は 凝固には直接影響しない。 2 )共品組成では,きれいな一方向凝固したレデプ ライト共品組織が得られたが,過共晶組成の場合, チル面付近傍で初品セメンタイトが晶出し,つい で初晶セメンタイトが消え,球状黒鉛,さらに初 品片状黒鉛がレデブライト共品組織と共存する組 織を呈した。初品黒鉛は多少黒鉛周辺のレデブラ イト組織を乱してはいるが,大きな影響は与えて いない。 3 )レデブライト共晶セルは,凝固方向に平行に, 板状に成長し,共晶セル巾は凝固速度の平方根に 逆比例して,層状共晶組織の層間隔と凝固速度と との関係が成立する。 おわりに,本研究に当たり,実験の実施に際して熱 心に御協力下きった翁長武俊工学士に厚〈感謝致しま す。 文 献 1)E
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