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地域生活学研究 3 号の刊行に寄せて

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Academic year: 2021

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地域生活学研究 3 号の刊行に寄せて  

 

宮口侗廸   早稲田大学  

富山大学で研究に従事しておられる先生方を中 心に本誌「地域生活学研究」が創刊されて 2 年が 経過し、ここに 3 号が刊行されたことに、まず心 からの敬意を表したい。ますます複雑化し、ヴァ ーチャルな事象が絡み合う現代社会そのものを研 究することは、従来からの縦割りの社会科学には とても無理な相談になってきている。このような 流れを正面から見据えて、富山大学で、学際的共 同研究の場としての「地域生活学」の創出をめざ されていることはすばらしい。

地方都市にある大学は、地域と極めて近い存在 であり、地域生活の内実にリアルに接近すること が可能である。しかし数十年前は、その利を活か して地域の実態から新しい学問領域を切り開く作 業には、必ずしも力が注がれなかったのではなか ろうか。そのように感じていたのは筆者のみでは あるまい。しかし今多くの地方都市にある大学で、

地域連携推進のための組織やプロジェクトがつく られ、教員と学生が地域から学び、そして地域に 何らかの貢献をすることが普通になってきた。こ のことは長く地域とリアルに付き合ってきた筆者 にとって、極めて嬉しい傾向である。

筆者は岐阜県境の村に育ち、東京の大学に行っ てから地域の違いに目覚め、地理学教室に進んだ。

卒論を書くころに過疎問題が注目されるようにな って、日本の農山村の行く末が気になり、それ以 来ずっと地方の農山村や小都市を歩いている。近 年では国の過疎問題懇談会の座長として、過疎地 域のための法整備にもかかわらせていただいた。

東京に身を置いて地方を考えることに次第に疑問 を持つようになり、家族ともども富山市に移って

26 年になる。この間週 1 往復のペースで富山と東 京を行き来し、合間にいろんな地域を訪ねる生活 を続けており、自分としては出稼ぎ人のつもりで ある。

40 年以上前の卒論調査の頃は、農家を訪ねて話 を聞かせてもらうこと自体がひと苦労であった。

「お隣で聞いたら」とか「お前の相手なんかして いる暇はない」という言葉を何度耳にしたことか。

しかし集落を単位にした生活を考えるには一人一 人の取材が不可欠であり、お酒が多少強かったこ ともあって、村を訪ねる呼吸というものが次第に 身について行ったように思う。

しかし今は、地域調査というものが情報として 相当行きわたってきたためか、学生の状況を見て いても、地域を訪ねて冷たくされることはあまり なくなったように思う。とくに高齢化が進行して いるような集落では、話し相手として喜んで迎え てもらえたりする。地域の行政も、大学との縁を 濃くすることが、地域にとってプラスになると考 えるようになった。その点からも、大学が多様な 専門分野の研究者を結集して地域の暮らしを総合 的にとらえ、それを「学」に高めていこうとする 作業は、極めて大きな意義を持つといえる。

筆者が地理学教室に進んだ頃、富山県では、小 中高の地理の先生方が「扇状地同人会」というグ ループを結成し、県内のリアルな地域調査の成果 を次々と刊行しておられた。その中心に、筆者の 高校の恩師でもあり、後に富山大学に移られた故 北林吉弘先生がおられたが、当時としては全国に 誇るべき活動であったと思う。ぜひ紹介しておき たい。

2 Journal for Interdisciplinary Research on Community Life Vol.3 (2012)

【巻頭言】

(2)

富山に住むようになってからは富山市の都市計 画審議会長を務めるようになり、地方都市の価値 とそのあり方にも関心が育った。そのようなこと から研究会の代表である竹内潔先生に声をかけて いただき、2 年前のフォーラムにも参加させてい ただいた。いささか縁のある人間として、「地域生 活学研究」の持続とますますの発展を心から期待 するものである。

地域生活学研究 Vol.3 2012

3

参照

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