九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Decision-making dilemmas of paediatricians: a qualitative study in Japan
笹月, 桃子
http://hdl.handle.net/2324/4060060
出版情報:九州大学, 2019, 博士(医学), 課程博士 バージョン:
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(別紙様式2)
氏 名 笹月 桃子 論 文 名
Decision-making dilemmas of paediatricians: a qualitative study in Japan
論文調査委員 主 査 九州大学 教授 吉良 潤一 副 査 九州大学 教授 須藤 信行 副 査 九州大学 教授 中川 尚志
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
重篤な疾患や障害を抱える子どもの命に関わる治療方針を決定することは容易ではない。
その主な要因として、その子どもが抱える病態の希少性・多様性・個別性の高さ、医療技 術の発展に伴う選択肢の増加、そして子どもの意思決定能力の未熟性が挙げられる。個別 事例における実践的な倫理基準が必ずしも示されていない現場においては、必然的に、小 児科医は個人の価値観や経験をもとに判断せざるを得ない。そこで、本論文は、重篤な疾 患や障害を抱える子どもの命に関わる治療方針決定に際し、小児科医がどのような思考過 程と心理社会的体験を辿っているかを明らかにすることを目的としている。
方法としては、小児科専門医に対し個別の半構造化インタビューを行い、得られたデー タを網羅的に質的に解析している。理論的サンプリングと解析を繰り返し、13名のインタ ビューを終え、理論的飽和に至ったと判断している。さらに、2名のインタビューを追加 してその妥当性を確認している。
本論文では、小児科医は命に関わる治療方針の決定に際し、専門分野に関わらず互いに 共通する多様な葛藤を抱えていることが示された。これらの「葛藤」に焦点を当てて、あ らためて全データの内容分析を行い、葛藤は5つの因子(小児科医の信念・子どもの最善 の利益を求める・両親との対峙・医学的妥当性を求める・社会および環境因子)とそれぞ れの因子同士の衝突によって生じることを明らかにした。さらに、この5つの因子は3つ の視座(決定者・決定の過程・決定の結果)に分けられ、規範倫理学の3大理論と相関し ていた。したがって、本研究により、「小児科医の信念」を支える医学教育、「社会および 環境因子」における社会のコンセンサス形成にむけての議論促進など、小児科医に対する 効果的な支援体制の確立と導入の必要性が示唆された。
以上の成績はこの方面の研究に知見を加えた意義あるものと考えられる。本論文につい ての試験はまず論文の研究目的、方法、実験成績などについての説明を求め、各委員より 専門的な観点から論文内容及びこれに関連した事項について種々質問を行なったがいずれ についても適切な回答を得た。
なお本論文は共著者多数であるが、予備調査の結果、本人が主導的役割を果たしている ことを確認した。
よって調査委員合議の結果、試験は合格とした。