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草 案 段 階 にみ る 欧州 憲 法 の 一 考 察 深化 と拡 大の欧州統合 の狭 間か ら

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〈 研 究 ノ ー ト〉

草 案 段 階 にみ る 欧州 憲 法 の 一 考 察

深化 と拡 大の欧州統合 の狭 間か ら

石 井 伸 一

は じ め に

EU(欧 州連合)は2004年6月18日,中 ・東 欧 諸 国 な ど新 規 に10ヵ 国 が 加 盟 し た25ヵ 国 体 制 の 初 の 首 脳 会 議 で,欧 州 憲 法 条 約 を採 択 した 。2001年12月 のEUの ラ ー ケ ン首 脳 会 議 が 立 ち 上 げ た,「 ヨー ロ ッパ の 将 来 に 関 す る協 議 会(コ ンベ ンシ ョン)」 が1年4ヵ 月 か け て 協 議s検 討 を 重 ね,03年6月 に ま とめ た 欧 州 憲 法 条 約 草 案 が 土 台 とな っ て い る 。

欧 州 憲 法 草 案 は03年12月,ロ ー マ の 政 府 間 会 議(首 脳 会 議)で 討 議 し た が,閣 僚 理 事 会 で の 多 数 決 の 際 の 意 思 決 定 方 式 を め ぐっ て ス ペ イ ン,ポ ー ラ ン ドが ニ ー ス 条 約 で 仏 独 英 伊 に 近 い 持 ち 票 を 配 分 さ れ た 方 式 に 固 執 し,政 府 間 会 議 は 決 裂 し,こ の 段 階 で は 合 意 に 至 ら な か っ た 。 ス ペ イ ン,ポ ー ラ ン ド両 国 は 決 定 に影 響 力 を 行 使 した い とい う立 場 に 立 っ て い た が,当 時 の ス ペ イ ンの 首 相 は 国 民 党 を 率 い る ア ス ナ ー ル 首 相 で 米 英 の ス ペ イ ン攻 撃 に は卒 先 して 支 持 を 表 明 して い た 。

欧 州 憲 法 を 制 定 し よ う と い う動 機 に つ い て は 以 下 の 点 が 挙 げ ら れ る 。(1)04年5月1日,

中 ・東 欧,バ ル ト,地 中 海 諸 国 の10ヵ 国 のEU加 盟(1)を控 え て,統 治 の 在 り方 な ど を 見 直 す 機 構 改 革 が 必 要 と な っ た 。 民 主 主 義 に 則 り,透 明 で,効 率 的 で ま た 敏 速 な 意 思 決 定 方 式 が25力 国 と い うEU拡 大 圏 に は 必 須 の 情 勢 とな っ た 。(2)こ れ に 関 連 し て,統 合 の 深 化,拡 大 に 伴 い,拡 散 し,複 雑 化 し たEU法 令 の 簡 素 化 が 求 め ら れ た 。 欧 州 統 合 は1952年 の 欧 州 石 炭 鉄 鋼 共 同 体 条 約 の 調 印 か ら半 世 紀 を経 て,4つ の 基 本 条 約 を制 定,ま た 改 定 と進 ん で きた が,こ の 中 か ら1つ の 基 本 法 に 集 大 成 す る必 要 か らEU憲 法 制 定 の 必 要 性 が 視 野 に入 っ て 来 た 。

(3)ま た,1992年6月 の デ ンマ ー ク の 国 民 投 票 が マ ー ス トリ ヒ ト条 約(EU設 立条 約)の 批 准 を 否 決,01年6月 の ア イ ル ラ ン ドの 国 民 投 票 が ニ ー ス 条 約 を 否 決 し た こ とが 物 語 る よ う に,官 僚 指 導 型 の 統 合 の 進 め 方 に,市 民 が 批 判,あ る い は無 関 心 と な る とい う市 民 不 在 の 懸 念 が 浮 上 し て きた 。 民 主 主 義 の 赤 字 で 表 現 さ れ る 市 民 不 在 の 課 題 か ら,市 民 参 加 のEUの 構 築 が 求 め ら れ た 。 (4)ま た,01年9月 の 米 同 時 多 発 テ ロ に 象 徴 さ れ る が,今 日 の 世 界 で は,国 家 間 の 戦 争 が 遠 の い た 反 面,民 族 ・宗 教 紛 争,テ ロ リズ ム,難 民 の 大 量 流 入 な ど が 現 代 の 脅 威 に登 場 し,共 通 外 交 ・安 全 保 障 ・防 衛政 策 が 重 要 課 題 と な っ た 。04年3月,マ ドリ ー ドで 連 続 列 車 爆 破 テ ロ 事 件 が 発 生 した が,こ の テ ロ事 件 は ヨー ロ ッパ に と っ て 一 層 身 近 か な 事 件 で,イ ラ ク 戦 争 を め ぐ っ て

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安 全 保 障 の 問 題 で深 く分 裂 したEUを 再 結 束 さ せ,テ ロ に 共 闘 す る と い う連 帯 の 修 復 へ と発 展 し た 。

と こ ろ で,03年12月 の ロ ー マ の 政 府 間 会 議 が 憲 法 草 案 を め ぐっ て 決 裂 した の は,国 家 主 権 が 深 く関 わ る 閣 僚 理 事 会 で の 意 思 決 定 方 式 で あ っ た 。 草 案 は,「 加 盟 国 の 過 半 数 の 賛 成 と人 口 全 体 の60%以 上 の 賛 成 」 を 可 決 の 基 準 と し た 。 こ れ に 対 し て ,2000年 の ニ ー ス 首 脳 会 議 で 合 意 し,03年2月 に 発 効 し た ニ ー ス 条 約 で は,閣 僚 理 事 会 の 意 思 決 定 の 持 ち 票 で独 仏 英 伊 の29票 に 近 い27票 が ス ペ イ ン,ポ ー ラ ン ドに配 分 さ れ,両 国 は これ を挺 子 に最 後 ま で 譲 ら な か っ た 。

し か し,マ ドリー ドの 列 車 テ ロ 事 件 発 生 の3日 後 の3月14日 に 行 わ れ た 総 選 挙 で 野 党 の 社 会 労 働 党 が 勝 利 し,誕 生 した サ パ テ ー ロ 政 権 は,前 の ア ス ナ ー ル 政 権 と は 大 き く異 な る 路 線 に 立 ち,イ ラ ク か ら撤 兵 し,欧 州 の 協 力 関 係 を複 活 させ,ま た 欧 州 憲 法 の 制 定 支 持 の 方 針 を鮮 明 に し た 。 こ れ と,テ ロ と 闘 う連 帯 と が 相 ま っ て,EU内 の 政 治 の 潮 流 が 変 わ り,憲 法 制 定 の 行 き詰 ま りを 打 開 す る 機 運 が 芽 生 え た 。 こ う し て新 情 勢 の 下,議 長 国 の ア イ ル ラ ン ドの アハ ー ン首 相 は, 憲 法 制 定 交 渉 を 再 開 し,精 力 的 な 調 整 工 作 を 進 め た 結 果,独 仏 の歩 み 寄 り と重 な っ て,最 大 の 難 関 で あ っ た 意 思 決 定 方 式 は,可 決 の 構 成 を加 盟 国 で は 過 半 数 か ら55%へ,人 口比 で は60%か ら 65%へ 引 き上 げ る こ と で,04年6月18日 の ブ リ ュ ッ セ ル の 首 相 会 議 で 合 意 し た 。 否 決 す る 場 合 に は,最 低4ヵ 国 の 小 数 派 の 構 成 が 必 要 との 条 件 を付 し,大 国3ヵ 国 だ け で は ブ ロ ッ ク で き な い とい う大 国 先 導 型 の 意 思 決 定 に は な らな い と い う妥 協 で 結 着 した(人 口比 率が これ に当て はま る)。

こ の 背 景 に は,政 治 の 潮 流 の 変 化 と し て,更 に,04年6月10日 一13日 に か け て25ヵ 国 体 制 で 行 わ れ た 初 の 欧 州 議 会 選 挙 で,投 票 率 が 平 均 で45%台 と低 く,特 に新 規 加 盟10ヵ 国 の 平 均 投 票 率 が27%だ っ た こ とが 加 盟 国 首 脳 を 危 機 感 に駆 り立 て,憲 法 を 成 立 させ た も う 一 つ の 要 因 に 挙 げ られ よ う。

欧 州 憲 法 の 制 定 は 曲折 を 経 て 政 府 間 レベ ル で は 妥 結 し,批 准 の 難 題 が 残 っ て い る が,こ の 憲 法 制 定 の ベ ー ス は起 草 に漕 ぎつ け た草 案 で あ る こ とか ら,本 稿 で は こ の 憲 法 草 案 に 焦 点 を 合 わ せ,

そ れ を取 り巻 く環 境 の 激 変 の狭 間 か ら考 察 して み た 。25ヵ 国 加 盟 のEU拡 大 圏 の 誕 生 ,イ ラ ク 戦 争 に 揺 さぶ られ な が ら進 展 す る共 通 外 交 ・安 全 保 障 ・防 衛 の 政 策,長 引 く景 気 の 低 迷 と痛 み を 伴 う社 会 福 祉 改 革 に 直 面 し た 経 済 の 課 題 に 触 れ な が ら欧 州 統 合 の 一 局 面 を 考 え て み た 。

1欧 州 憲法条約草 案 とその特徴

1‑1憲 法 条 約 起 草 と制 定 会 議

コ ン ベ ン シ ョ ン(諮 問 会 議)は フ ラ ン ス の ジ ス カ ー ル ・デ ス タ ン 元 大 統 領 を 議 長 に,ジ ュ リ ア ー ノ ・ア マ ー ト副 議 長(イ タ リ ア 元 首 相),ジ ャ ン ・ル ク ・デ ハ ー ネ 副 議 長(ベ ル ギ ー 元 首 相)の 下 に,加 盟 国 の 政 府 と 議 会,欧 州 委 員 会,欧 州 議 会,新 規 加 盟 国 の 代 表 を 交 え 総 討 議 を 開 始 し た 。2001年12月 に ラ ー ケ ン の 首 脳 会 議 で 立 ち 上 が り,1年4ヵ 月 か け て,過 去 を 集 大 成 し,現

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草案段 階 にみる欧州憲法 の一考察93 代 に相 応 しい,ま た,将 来 を展 望 し た 欧 州 統 合 の 基 本 的 枠 組 み を定 め た 憲 法 制 定 条 約 草 案 に漕 ぎ つ け,広 範 な コ ン セ ン サ ス が 達 成 さ れ た 。

草 案 は前 文 と1部,2部,3部,4部 か ら構 成 さ れ,こ の う ち,1部,2部 は03年6月20日, ギ リ シ ャ の テ ッ サ ロ ニ キ で 開 か れ たEU首 脳 会 議(欧 州 理事 会)に 提 出 さ れ,10ヵ 国 加 盟 条 約 に 調 印 した 首 脳 か ら歓 迎 を も っ て 迎 え られ た 。3部,4部 を含 め た 全 体 の 条 約 草 案 は ジ ス カ ー ル ・ デ ス タ ン議 長 か ら翌7月18日,EU議 長 国 イ タ リァ の ベ ル ル ス コー 二 首 相 に提 出 さ れ た 。

EUは03年12月12,13の 両 日,ロ ー マ で 政 府 間会 議(重 要課題 を討 議す る首脳 会 議)を 開 き,憲 法 制 定 を 目指 して 大 詰 め の 討 議 を 行 っ た 。 政 府 間会 議 は 閣 僚 レベ ル で 同 年10月 か ら討 議 を 開 始

し て い た が,首 脳 会 議 に 至 る ま で の 各 国 の 立 場,主 な 争 点 は 以 下 の 通 り で あ っ た と伝 え られ る(2)。先 ず 主 な争 点 は,

(1)大 統 領(欧 州 理事 会 議 長)。 現 状 で は,議 長 職 は6ヵ 月 毎 の 輪 番 制 に な っ て い る が,草 案 で は,欧 州 理 事 会(首 脳 会議)で 特 定 多 数 決 に よ っ て 選 出 さ れJ任 期 は2年 半,1回 再 選 が 可 能 と な っ て い る。 仏 独 英 の3ヵ 国 が 提 案,小 国 と欧 州 委 員 会 に異 論 。

(2)外 相 職 。 現 状 で は 閣 僚 理 事 会 所 属 の 共 通 外 交 ・安 全 保 障 担 当上 級 代 表 と欧 州 委 員 会 の 対 外 関 係 担 当 委 員 が2人 で 役 割 を担 っ て い る 。 草 案 の 外 相 職 は,共 通 外 交 ・安 全 保 障 政 策 を 担 当,欧 州 委 員 会 副 委 員 長 を兼 務 。 イ ギ リス が 留 保 。

(3)票 の 加 重 配 分 。 ニ ー ス 条 約 に よ る と,意 思 決 定 機 関 で あ る 閣僚 理 事 会 で の 多 数 決 制 はs人 口 比 率 の 高 い 独 仏 英 伊4力 国 の29票 に 対 して,ス ペ イ ン と ポ ー ラ ン ドに27票 が 配 分 さ れ て い る。 草 案 で は,「 加 盟 国 の 過 半 数 が 賛 成 し,賛 成 した 国 の 人 口 が 全 人 口 の60%を 上 回 れ ば可 決 さ れ る 」。 ス ペ イ ン,ポ ー ラ ン ドが 草 案 の 多 数 決 制 に あ く ま で も反 対 。

(4)欧 州 委 員 会 の 構 成 。 現 状 で は,仏 独 英 伊 とス ペ イ ン の5ヵ 国 が2名,10ヵ 国 が1名 の 構 成 と な って い る が,草 案 で は2009年 か ら投 票 権 を持 つ 委 員 の 数 を15名 に 減 ら し,委 員 長,副 委 員 長 を除 く13名 を輪 番 制 とす る 。 投 票 権 の な い 委 員 も任 名 で き る 。 小 国 の 多 く と 欧 州 委 員 会 が 反 対 。

(5)特 定 多 数 決 制 。 現 状 で は全 会 一 致 が 多 くの 領 域 で 適 用 され て い る が,草 案 で は,予 算,社 会 的 保 護,外 交 を 除 い て,特 に 司 法,内 務 関 係 の領 域 に特 定 多 数 決 制 を 適 用 す る。 イ ギ リス は 適 用 の 追 加 的 拡 大 に 反 対 。

(6)共 通 防 衛 。 現 状 で は,ニ ー ス 条 約 で 防 衛 を 除 い て 幾 つ か の 分 野 で 緊 密 化 協 力 が 可 能 と な っ て い る 。 草 案 で は,よ り高 度 な 軍 事 能 力 の 基 準 を満 た して い る 国 は,EUの 域 内 で 構造 化 さ れ た 協 力(unecooperationstructuree)を 設 定 す る こ とが 認 め られ る 。 安 全 保 障 の 強 化 を望 む 一 部 の 国 々 が 先 行 して 協 力 す る 仕 組 み 。

(7)キ リス ト教 へ の 言 及 。 現 状 で は,EU基 本 権 憲 章 は,「 精 神 的,道 義 的 遺 産 を 自覚 し て 」 と な っ て い る が,草 案 は,前 文 で,「 欧 州 の 文 化 的,宗 教 的,人 間 中 心 主 義 の 遺 産 」 に言 及 して い る 。 何 ヵ国 か が ヨ0ロ ッパ の キ リ ス ト教 に 明 確 に 言 及 を 要 求 。

(4)

こ う した 情 勢 の 中 で 大 詰 め の 討 議 を 迎 え た 政 府 間会 議 は ,直 接 的 には 国家 主権 の重 み が加 わ る 意 思 決 定 方 式 を め ぐっ て,会 議 は 決 裂 した 。2000年2月 の 首 脳 会 議 で 合 意 し,03年2月 に 発 効

した ニ ー ス 条 約 は ル ー マ ニ ア,ブ ル ガ リ ア を含 め た27ヵ 国 のEU加 盟 を 前 提 と し た 合 意 で あ っ た 。 しか し,07年 に も加 盟 が 見 込 ま れ る ブ ル ガ リ ア,ル ー マ ニ ア を 含 め,EUの 加 盟 国 が30ヵ 国 を 上 回 る 拡 大 圏 に な る こ と を想 定 す る と,特 定 加 重 多 数 決 方 式 は多 数 派 工 作 な ど で 意 思 決 定 の

プ ロ セ ス が 複 雑 化 し,円 滑 な 意 思 決 定 が 阻 害 さ れ る 懸 念 もあ る わ け で,仏 独 の 機 軸 国 を 中心 に 加 盟 国1票 と 人 口 は5分 の3と い う単 純 二 重 多 数 決 方 式 が 有 効 に 機 能 す る と判 断 した と み られ る 。 ス ペ イ ン,ポ ー ラ ン ドの 主 張 は 国 家 主 権 に 配 慮 し た ナ シ ョナ ル な 領 域 を 強 調 し た も の で あ る が,加 盟 国 が30ヵ 国 以 上 を 想 定 し た 統 治 の 在 り方 を 考 え た 場 合,ナ シ ョナ ル な 主 権 の 重 み に 配 慮 し な が ら も,政 治 の 求 心 力 を ど う確 立 す る か が 一 層 求 め られ て い る の で あ る。 国 民 国家 の威 信

と超 国 家 機 能 の 調 和,こ れ が 拡 大EU圏 の 統 治 の 枠 組 み で あ る こ とは 確 か で あ ろ う。

こ の 点 に つ い て,コ ンベ ン シ ョ ンの ジス カ ー ル ・デ ス タ ン議 長,デ ハ ー ネ ,ア マ ー ト両 副 議長 は,フ ラ ンス 紙 「ル ・モ ン ド」 へ の 寄 稿 文 の 中 で 次 の 様 に 説 明 し た(3)。「25ヵ 国 の ヨー ロ ッパ で は,最 も人 口 の 多 い6力 国(独 仏 英伊,ス ペ イ ン,ポ ー ラ ン ドの6力 国一筆 者 の注)は 人 口 で は 全 体 の 74%を 占 め る が,配 分 され た 票 数 で は全 体 の53%し か 行 使 で き な い 。 従 っ て 大 国 へ は 市 民 の 過 半 数 と い う観 点 か ら,中 小 国へ は 反 対 す る決 定 は 加 盟 国 の 過 半 数 に は 強 制 され な い とい う事 実 に よ っ て,大 国 と中 小 国 双 方 に公 正 に保 証 さ れ る 方 式 を模 索 し た 。 そ れ が 二 重 多 数 決 制 で あ り,欧 州 委 員 会 が 勧 告 し,欧 州 議 会 が 承 認 した 」。

しか し,03年12月 の 政 府 間 会 議 で は,欧 州 憲 法 制 定 条 約 を め ぐ る 討 議 は 不 調 に 終 っ た 。 こ れ ま で 通 貨 統 合,共 通 外 交 ・安 全 保 障 政 策 な ど重 要 政 策 を 取 り決 め た マ ー ス トリ ヒ ト条 約(EU設 立条 約),一 一部 改 定 し た ア ム ス テ ル ダ ム 条 約,中 ・東 欧 諸 国 の 加 盟 を 睨 ん だ 機構 改 革 の ニ ー ス 条 約 の 度 毎 に 政 府 間 会 議 で合 意 して きた こ とか らす る と異 例 な事 態 と言 え な く も な い 。 イ ラ ク戦 争 を め ぐるEU内 部 の 対 立 の 余 波,EUを 主 導 して き た 仏 独 機 軸 の 影 響 力 に 陰 り と か 中 ・東 欧 な ど 10ヵ 国 の 新 規 加 盟 に伴 う多 様 性 の 問 題 を指 摘 す る声 も 出 始 め た 。

確 か に,憲 法 制 定 の 最 重 要 項 目の 一 つ,閣 僚 理 事 会 の 意 思 決 定 方 式 を め ぐ っ て 草 案 に 反 対 した ス ペ イ ン,ポ ー ラ ン ドは 米 英 の イ ラ ク 攻 撃 の有 力 な 支 持 国 で は あ っ た 。 と は い え 両 国 が 草 案 に 反 対 した の は 独 仏 機 軸 に鉾 先 き を 向 け た と い う よ り は 大 国 に 囲 ま れ た 狭 間 か ら中 規 模 国 の 影 響 力 を 行 使 した い と い う視 点 か ら と 受 け 止 め ら れ る。 そ の 後,04年3月 の マ ド リー ドで 発 生 し た 連 続 列 車 爆 破 テ ロ事 件 後 に 行 わ れ た 総 選 挙 で,野 党 の 社 会 労 働 党 が 第 一 党 に 躍 進 し,米 英 の イ ラ ク攻 撃 を率 先 し て 支 持 した ア ス ナ ー ル 首 相 の 国 民 党 に代 わ る政 権 交 代 が 起 きた 。 ま た ポ ー ラ ン ドの 与 党,民 主 左 翼 連 合 を 率 い る ミ レル 首 相 は04年3月,党 の 分 裂 状 態 の 責 任 を と っ て,5月1日 の ポ ー ラ ン ドのEU加 盟 実 現 後 に 辞 任 す る 意 向 を表 明 す る な どEU内 部 の 政 治 の 潮 流 に 変 革 の 兆 し が 出 た 。

こ の 政 治 力 学 の 逆 転 現 象 に よ っ て,憲 法 制 定 の 行 き詰 ま り を打 開 す る 道 が 開 け ,EUは 改 め て

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草案段 階 にみ る欧州憲法 の一考察95 仏 独 を 主 軸 に体 制 の 建 て 直 しの 機 運 が 芽 生 え た 。 こ れ に 追 い風 と な っ た の に,イ ギ リス の ブ レ ア 首 相 の 独 仏 両 国 へ の 歩 み 寄 り もあ る 。 イ ラ ク攻 撃 で 世 論 を は じめ 与 党 労 働 党 内 部 か ら も厳 しい 批 判 を受 け た ブ レ ア 首 相 は,内 政 で の 政 治 的 進 退 が 問 わ れ 出 し た の に加 え て,EU25ヵ 国 拡 大 圏 の 時 代 を迎 え て イ ギ リス の 体 制 建 直 しが 課 題 と な っ て い る 。

英 仏 独3首 脳 は03年11月,ブ レ ア 首 相 の イ ニ シ ア テ ィ ブ で,EU共 通 安 全 保 障 ・防 衛 政 策 と し て 文 民 ・軍 事 に ま た が るEU独 自の 司 令 単 位 と な る 防衛 機 能 を立 ち上 げ る こ と で 合 意 し た の に 続 い て,04年3月 のEU首 脳 会 議iを前 に2月18日,ベ ル リ ンで 開 い た 三 国 首 脳 会 談 で 雇 用 の 創 出,産 業 の 競 争 力 の 強 化 な ど ヨー ロ ッパ 経 済 の 活 性 化 で 合 意 し,三 大 国 の 協 調 を 演 出 し た ・EU 拡 大 圏 の 中 で 英 仏 独 三 国 の 新 体 制 が ど う機 能 す る か 新 し い 焦 点 と な りそ う だ 。

と こ ろ で,拡 大 に 反 対 す る 欧 州 の 反 対 論 者 は,拡 大 は統 合 を弱 め,意 思 決 定 機構 を麻 痺 させ る 危 険 性 が あ る と主 張 し て い る 。 新 規 加 盟 国 が 民 主 主 義 の 経 験 に比 較 的 乏 し く,か な り異 っ た 政 治 文 化 と,発 展 段 階 の 異 な る 経 済 をEUに 持 ち 込 む こ と に な る と い う こ と に あ る(4)。し か し,

ジ ョー ジ タ ウ ン大 学 の チ ャー ル ズ ・カ プ チ ャ ン教 授 は,「 懸 念 は す べ て 正 当 な も の で あ る 。 し か し,拡 大 が 内 部 改 革 をEUに 迫 る 重 要 な触 媒 と な る か も し れ な い 。 拡 大 の 準 備 に よ っ て,EUの 指 導 者 は,機 構 の 深 化 と い う政 治 的 に 難 しい 仕 事 に と りか か る 国 内 的 挺 子 を得 る こ と に な っ た 」

と述 べ て い る 。 困 難 は逆 にEUに と っ て 救 い と な る の で は な い か と教 授 は 考 察 して い る。

多 様 性,相 違 の 増 大 が 欧 州 統 合 の 更 な る進 展 の 妨 げ に な る とい う懸 念 に つ い て は,拡 大 を調 整 す る 必 要 が あ る の は 欧 州 統 合 計 画 自体 に あ り,そ れ は あ ら ゆ る 多 様 性 を容 認 す る こ と を 意 味 す る も の で は な く,欧 州 が も っ と創 造 的 で 実 務 的,ま た ゆ る や か な や り方 で 多 様 性 へ の 対 応 を学 ぶ 必 要 が あ る(5)とい う見 方 も あ る 。 多 様 性 が 欧 州 統 合 の 妨 げ に な る ど こ ろ か,時 間 を か け て 文 化 を 超 え た 社 会 統 合 に 向 う こ とが で きれ ば,ヨ ー ロ ッパ 市 民 の 共 同体 の構 築 は 一 層 確 実 な も の に な っ て

く る の で は な か ろ う か 。

1‑2欧 州 憲 法 条 約 草 案(6)

条 約 草 案 が 可 決 採 択 さ れ 成 文 に な る 段 階 で は 一一部 修 正 さ れ,草 案 と異 っ て い る が,草 案 の 一 部 (Partl)は,EU(欧 州連合,以 下連合 とす る)の 定 義,目 的,基 本 的 権 利,機 能,機 構 な ど い わ ば 総 則 に あ た る 部 分,2部(Partll)は 連 合 基 本 権 憲 章,3部(Part皿)は 連 合 の 政 策 と機 能 に つ い て,4部(PartIV)は 総 合 的 な 最 終 条 項 と して 付 属 議 定 書 に つ い て 規 定 して い る 。 筆 者 はEUの 研 究 と い う観 点 か ら,成 文 に な る前 の草 案 は 政 治 的 妥 協 を そ れ 程 強 い ら れ な い オ リ ジ ナ リ テ ィ を 多 分 に包 摂 す る と い う観 点 か ら{府鰍 して お く こ と は有 意 義 と考 え,取 り上 げ た 。

1部,第1条 「欧 州 連 合 設 立 」 で,「 共 通 の 将 来 を 築 く とい う 欧 州 の 市 民 と国 家 の 意 志 を 反 映 して 憲 法 は 欧 州 連 合(EU)を 設 立 す る 」 と謳 い,第1条2項 で 「連 合 は連 合 の 価 値 を 尊 重 し,と も に こ の 価 値 の 発 展 を 誓 う す べ て の 欧 州 の 国 家 に 開 放 さ れ る 」 と し,市 民(citizens)と 国 家

(6)

(states)を 同 列 に 置 きr市 民 と 国 家 で 構 成 され るEUに 力 点 を置 い て い る。 第2条 で,「 連 合 は, 人 間 の 尊 厳 の 尊 重,自 由,民 主 主 義,平 等,法 の 支 配,人 権 の 尊 重 とい う価 値 に 基 づ い て 創 設 さ

れ た 」 と規 定 した 。2000年12月 の ニ ー ス 首 脳 会 議 で 政 治 宣 言 と し て 採 決 さ れ たEU基 本 権 憲 章 を 盛 り込 み,欧 州 市 民 主 義 の 考 え方 を発 展 させ て い る 。

こ れ に続 い て 第7条 で,「 連 合 は,入 権 と基 本 的 自 由 の 擁i護に 関 す る 欧 州 条 約 へ の 加 入 を 求 め る 。 こ の よ う な加 入 は 連 合 の 権 能 に 影 響 を 与 え る こ と は な い 」 と規 定 し て い る 。 こ の 欧 州 条 約 と は 一 般 的 に1950年4月,ロ ー マ で 欧 州 評 議 会 が 採 択 し た 欧 州 人 権 条 約 の こ と を指 し,EU憲 法 草 案 で は,こ の 人 権 条 約 の 精 神 を共 同 体 の 法 体 系 に 編 入 す る 方 針 を 明 確 に し た 。 人 権 に 関 す る 画 期 的 発 展 に 思 う。

人 権,人 間 の 基 本 的 権 利 に つ い て は,1970年 代,EC共 同体 の 中 で は扱 い が 狭 隆 で あ る と い う 懸 念 が 示 さ れ,80年 代 にECの 政 治 的 変 革 と共 に 高 ま り,単 一 欧 州 議 定 書 の 前 文 で,欧 州 人 権 条 約 で 認 め られ て い る基 本 的 権 利 につ い て 宣 言 し た 。 次 い で93年11月 発 効 の マ ー ス トリ ヒ ト条 約(EU設 立 条約)で は 第7条 で,欧 州 人 権 条 約 が 保 障 し,加 盟 国 の 憲 法 か ら生 じ る基 本 的 権 利 を 共 同 体 法 の 一 般 原 則 と し て 尊 重 す る と し て い た。 ア ム ス テ ル ダ ム 条 約 で は 第6条 で,「 欧 州 連 合 は,加 盟 国 に 共 通 の 原 則 で あ る,自 由,民 主 主 義,人 権 の 尊 重,基 本 的 自由 の 原 則 に 基 づ い て 設 立 さ れ た 」 と基 本 条 項 で扱 っ て い る 。 そ して,人 間 の 尊 厳 の 尊 重,法 の 支 配 を 含 め てEU基 本 権 憲 章 が 政 治 宣 言 と して,ニ ー ス 首 脳 会 議 で採 択 さ れ て い た 。 草 案 は こ れ を集 大 成 し た 。

マ ー ス トリ ヒ ト条 約 で 規 定 さ れ て い る 欧 州 市 民 権 は 第8条 に盛 られ ,人 の域 内移 動,居 住 の 自 由,居 住 先 で の 欧 州 議 会,地 方 自 治 体 選 挙 に 立 候 補 し,投 票 す る 地 方 参 政 権 を 規 定 し て い る 。 EU基 本 権 憲 章 に 次 い で,参 加 民 主 主 義 の 原 則 を 設 定 し た 点 も新 ら しい 。 第46条2項 は ,「 連 合

は 代 表 的 団 体,市 民 社 会 と公 開 で,透 明 な ま た 定 期 的 な 対 話 を 継 続 し て 行 う」 と規 定 し,3項 で,「 相 当 多 数 の 加 盟 国 か ら の100万 人 を 下 ら な い 市 民 は,憲 法 を 施 行 す る 上 で 法 的 措 置 が 必 要 と考 え る 件 で,欧 州 委 員 会 に 適 正 な 提 案 を す る よ う求 め る こ と が で き る」 と し て い る 。 市 民 の EUと い う視 座 か ら,市 民 に直 接 参 加 の 道 を 開 い た。

市 民 の コ ンセ プ トは,法,権 利,正 義 とい う制 度 か ら人 間 の 行 動 規 範 を 設 定 し よ う とい う ロ ー マ の 伝 統 とギ リ シ ャ都 市 国 家 の 倫 理 思 想 を 模 範 とす る2つ が 融 合 し,発 展 した とされ るが,市 民 のEUは 地 域 共 同体 の 中 で の 現 代 市 民 共 同 体 の1つ の モ デ ル を提 示 し て い る 。

1‑3欧 州 連 合 の 新 しい 機 構

「大 統 領 」,「外 相 職 」 の 創 設 が 注 目 さ れ る。 第21条 で,欧 州 理 事 会 は,任 期2年 半,1回 再 選 可 能 な 議 長 を 特 定 多 数 決 で 選 出 す る と規 定 して い る 。 こ れ ま で 議 長 は加 盟 国 が 半 年 毎 に 交 代 す る 輪 番 制 に な っ て い た 。 大 統 領(欧 州理 事会 議長)の 職 務 は(1)欧 州 理 事 会 を 主 宰 し,理 事 会 が 政 治 の 指 針 と優 先 事 項 を 明 確 に す る よ う に努 め る,(2)共 通 外 交 ・安 全 保 障 政 策 に 関 す る 問 題 で 連

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草 案段階 にみ る欧州 憲法の一考 察97 合 の 対 外 的 代 表 と な る,な ど と な っ て い る 。 任 期2年 半,再 選1回 可 と い う常 設 の 大 統 領 の創 設 は,加 盟25ヵ 国 とい う拡 大 圏 を視 野 に 入 れ る と,議 長 職 の 専 任 化 に よ っ て 多 様 な 意 見 の 取 り ま とめ が し易 く な り,ま た こ れ まで 以 上 に対 外 的 にEUの1つ の 声 と して の発 信 も し易 くな る とみ られ る。 主 権 を 持 つ 国 民 国 家 の 代 表 とい う形 で,国 民 国 家 連 合 を代 表 す る 統 治 の シ ス テ ム と言 え る で あ ろ う か 。

「外 相 」 に つ い て は,第27条 で,外 相 は,欧 州 委 員 会 委 員 長 の 同 意 の 下 に,欧 州 理 事 会 が 特 定 多 数 決 に よ っ て 任 名 す る。3部 タ イ トルV第2章,「 共 通 外 交,安 全 保 障 政 策 」 第197条 で,外 相 はEUの 共 通 外 交 ・安 全 保 障 政 策 を 立 案 し,欧 州 理 事 会 と 閣 僚 理 事 会 に よ る 決 定 を実 施 に 移 す

と あ る。 ま た 同 条2項 で,対 外 的 にEUを 代 表 して 政 治 対 話 を 行 い,国 際 機構 や 国 際 会 議 でEU の 立 場 を表 明 す る役 割 を担 う と規 定 す る 重 要 ポ ス トで あ る 。 外 相 は また 欧 州 委 員 会 で は 副 委 員 長

と して 対 外 関 係 を担 当 す る こ と に な り,現 在 の 共 通 外 交 ・安 全 保 障 担 当 上 級 代 表 と欧 州 委 員 会 外 交 担 当 委 員 の 職 務 は 外 相 に1本 化 さ れ る 。

「欧 州 委 員 会 」。 閣 僚 理 事 会 が 加 盟 国 の 主 権 を 行 使 す る場 で あ る と す れ ば,立 法 機 関 で 行 政 ・執 行 機 関 の 欧 州 委 員 会 は 加 盟 国 か ら独 立 した 超 国 家 機 関 で 連 邦 制 度 の 特 徴 を表 わ して い る。 第25 条 で,欧 州 委 員 会 は,委 員 長,外 相 兼 副 委 員 長,加 盟 国 間 の 対 等 の 輪 番 制 に 基 づ い て 選 出 さ れ た 13人 の 委 員 か ら構 成 す る と し て い る。 委 員 長 は,投 票 権 の 無 い 委 員 を 任 名 す る と し て い る。 欧 州 委 員 会 は 欧 州 議 会 に 対 し て 責 任 を負 い,欧 州 議 会 は,3分 の2の 多 数 の 投 票 で 不 信 任 動 議 を 通 過 させ る こ と が で き る と第243条 に 規 定 さ れ た 。

「欧 州 委 員 会 委 員 長 」 は,欧 州 理 事 会 が 特 定 多 数 決 で も っ て 候 補 者 名 を 欧 州 議 会 に 提 示 し,欧 州 議 会 が 多 数 決 で も っ て 選 出 す る。 候 補 者 が 必 要 な 支 持 を得 られ な か っ た場 合,欧 州 理 事 会 が 同

じ手 続 を踏 ん で 新 た な 候 補 者 を提 案 す る。 欧 州 議 会 議 員 がEU加 盟 国 の 直 接 選 挙 で 選 出 さ れ て い る こ とか ら,欧 州 委 員 会 委 員 長 が 欧 州 議 会 に よ っ て 選 出 さ れ,ま た,議 会 に責 任 を負 っ て い る こ とは,議 会 制 民 主 主 義 を 代 表 す る正 統 性 の 特 徴 を備 え て い る と言 え る。 ま た,欧 州 委 員 会 が 独 立 した 存 在 で,委 員 が 出 身 国 か ら影 響 を受 け る こ と な く任 務 を遂 行 す る観 点 か らす れ ば 超 国 家 的 な 連 邦 制 を具 現 して い る機 関 と見 る こ と が で き る。

15ヵ 国 の 欧 州 委 員 会 の 構 成 は,独 仏 英 伊,ス ペ イ ンが2名,他1名 の20人 の 委 員 か ら成 っ て い る が,04年5月1日 に10ヵ 国 が 新 規 に加 盟 し た 後 は 暫 定 的 に04年10月31日 迄 は30人 体 制 と な る 。04年11月1日 か ら09年10月31日 迄 は,ニ ー ス 条 約 に基 づ い て1国1名 の25人 体 制 と な る 予 定(7)。そ れ 以 後 は,EU憲 法 に則 っ た 体 制 と な る が,投 票 権 の 無 い 委 員 に任 名 さ れ る の で は な い か と懸 念 す る小 国 の 一 部 が 草 案 に 反 発 した 。

「閣 僚 理 事 会 」。 第22条 に,閣 僚 理 事 会 は,欧 州 議 会 と共 同 で 法 案 を 成 立 させ,政 策 立 案,調 整 機 能 を 行 う と あ る 。 第23条 で,立 法 化 す る 機 能 の 際 に は,各 加 盟 国 の 代 表 団 に は,専 門 知 識

を持 つ1人 か2人 の 閣僚 級 の 代 表 が 加 わ る こ とに な る 。 外 相 理 事 会 は,外 相 が 議 長 と な り,欧 州 理 事 会 が 策 定 した 戦 略 的 指 針 を基 準 にEUの 具 体 的 な対 外 政 策 を決 定 す る 。

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と こ ろ で,欧 州 理 事 会,ま た 閣 僚 理 事 会 が 多 数 決 で 決 定 す る 場 合,(i)加 盟 国 の 過 半 数 の 支 持 と(ii)EU全 体 の 人 口 の5分 の3(60%)の 賛 成 を 必 要 とす る。 こ の 条 項 が 効 力 を 発 生 す る の は,欧 州 議 会 選 挙 が 行 わ れ た 後,2009年11月1日 以 降 と な る 。 国 家 と人 ロ を2本 の 柱 に 据 え た 単 純 二 重 多 数 決 制 と い え る こ の 意 思 決 定 方 式 は,03年12月 の 大 詰 め を迎 え た 憲 法 制 定 会 議 を 決 裂 さ せ た 最 大 の 難 問 で あ っ た(最 終 合 意 で は,前 述 の 通 り,加 盟 国 の55%以 上 の 支 持 と全 人 ロ の65%以 上 の 賛 成 と な っ た)。 閣 僚 理 事 会 の 意 思 決 定 方 式 は04年5月1日 迄 と,04年5月1

日一 〇4年10月31日 迄 の 暫 定 期 間 を経 て04年11月1日 か ら ニ ー ス 条 約 に 基 づ い た 意 思 決 定 方 式 に従 う(8)。

1‑4共 通 外 交 ・安 全 保 障 ・防 衛 政 策

共 通 安 全 保 障 ・防 衛 政 策 実 施 の 特 別 条 項 の 第40条 は,「 共 通 安 全 保 障 ・防 衛 政 策 は,共 通 外 交 ・安 全 保 障 政 策 の 不 可 欠 の 部 分 で あ る」 と規 定 した 上 で,連 合 は,国 際 連 合 憲 章 の 原 則 に 従 っ て 平 和 維 持,紛 争 防 止,国 際 安 全 保 障 の 強 化 の た め 域 外 で 任 務 に 就 く際,文 民,軍 事 双 方 の ア セ ッ ト(装 備 な ど)を 利 用 す る と し,共 通 安 全 保 障 ・防 衛 政 策 が 連 合 に こ の ア セ ッ ト を利 用 し た 作 戦 能 力 を 提 供 す る こ と を 明 言 し て い る 。92年6月,ボ ン 近 郊 の ペ ー タ ー ス ベ ル ク で 開 い た WEU晒 欧 同盟)の 外 相,国 防 相 会 議 で,人 道 ・救 援 の 任 務,平 和 維 持 の 任 務,危 機 管 理 の 任 務 が 決 定 さ れ,そ の 後,WEUをEUへ 統 合 す る 意 向 に 言 及 し た99年5月 発 効 の ア ム ス テ ル ダ ム 条 約 に ペ ー ター ス ベ ル ク の 任 務 が 共 通 外 交 ・安 全 保 障 政 策 と し て 盛 り込 ま れ た 。99年12月,EU は ヘ ル シ ン キ の 首 脳 会 議 で,NATO全 体 の 関 与 が な い 場 合,国 際 危 機 に 対 応 で き る兵 力5〜6万 人 規 模 の 緊 急 対 応 部 隊 の 創 設 を決 定 し て い た 。 憲 法 草 案 で は,加 盟 国 が 提 供 す る 軍 民 双 方 の ア セ ッ トを利 用 した 作 戦 能 力 に 言 及 し,防 衛 政 策 の 分 野 に 踏 み 込 ん だ 。 第40条2項 で,共 通 安 全 保 障 ・防 衛 政 策 はEUの 共 通 防 衛 政 策 の 漸 進 的 な枠 組 み を 含 み,欧 州 理 事 会 が 全 会 一 致 で 決 定 す れ ば,こ の枠 組 み は 共 通 防 衛 に つ な が る と規 定 して い る 。 ニ ー ス 条 約 に 沿 っ て い る が,同 条 約 で は 全 会 一 致 と は な っ て い な か っ た 。

共 通 外 交 ・安 全 保 障 ・防 衛 政 策 に つ い て は 軍 事 能 力 を 強 化 す る た め の 機 関 の創 設,加 盟 国 が 侵 略 さ れ た 場 合,軍 事 力 を 含 め て 支 援 す る 体 制 を 敷 く条 項 が 注 目 さ れ る 。 こ の 機 関 に つ い て,第 40条3項 で 加 盟 国 の 軍 事 能 力 を 改 善 す る た め,「 欧 州 軍 備 ・研 究 ・軍 事 能 力 機 関」(Eur・peanAr‑

maments,ResearchandMilitaryCapabilitiesAgency)を 創 設 す る と し て い る 。 こ の 機 関 創 設 の 目的 と し て,(1)作 戦 要 件 を 確 認 す る,(2)こ れ らの 要 件 を 満 た す 手 段 を 高 め る,(3)防 衛 部 門 の 産 業 ・ 技 術 基 盤 の 強 化 に必 要 な 措 置 を講 じる,(4)欧 州 の 能 力 ・軍 備 政 策 の 策 定 に参 加 す る こ と を挙 げ

て い る。 要 は 自律 的 な 軍 事 能 力 とい っ て も,現 実 に は ア メ リ カ に比 べ て 多 くの 分 野 で 脆 弱 な 現 状 を 改 善 し,共 通 防 衛 能 力 を 高 め て い く政 策 が 打 ち 出 さ れ て い る が,欧 州 統 合 の 枠 組 み の 中 で 広 域 の 防 衛 庁 構 想 を初 め て 打 ち 出 し た。

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草案段階 にみ る欧州憲法 の一考察99 冷 戦 終 結 後,湾 岸 紛 争,旧 ユ ー ゴ 紛 争 を 通 じて,EUは 欧 州 独 自 の 安 全 保 障 ・防 衛 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 必 要 性 を認 識 す る が,軍 備 の 面 で ア メ リ カ と の 格 差 が 大 き く,軍 事 能 力 の 向 上 が 課 題 とな っ て い た 。 軍 事 力 に つ い て は 英 仏 と他 のEU加 盟 国 の 間 に 差 が あ り,人 道 救 援,危 機 管 理 の 任 務 を 果 す に は全 体 と して 装 備 の 改 善 が 課 題 と な っ て い る 。 ま た,平 和 維 持 活 動 に 従 事 す る と い っ て も,NATOが 関 与 し な い 場 合,99年 の ベ ル リ ン で のEU・NATOの 合 意 に 基 づ い てEU・

NATO協 力(ベ ル リ ン ・プ ラ ス)の 枠 組 み で 対 応 し て き た 。 し か し,01年9月 の 米 同 時 多 発 テ ー‑,04年3月 の マ ド リー ドの 連 続 列 車 爆 破 テ ロ の 発 生 で,欧 州 独 自の 安 全 保 障 ・防 衛 体 制 が 緊 急 の 課 題 に 浮 上 し た 。 能 力 に つ い て は作 戦,司 令 な ど意 思 決 定 の メ カ ニ ズ ム も大 き な 課 題 に挙 げ られ て い るが,と りあ え ず は 軍 事 能 力 の 研 究 ・開発,調 達 の 分 野 で 統 一 の メ カ ニ ズ ム を立 ち 上 げ よ う と して い る。

こ の 考 え方 は,あ る加 盟 国 が テ ロ 攻 撃 を 受 け た場 合,他 の 加 盟 国 が あ らゆ る 手 段 で 支 援 す る決 定 に つ な が っ て い く。 第40条 は7項 でEUの 枠 組 の 中 に,相 互 防 衛 を織 り込 ん だ 。 欧 州 理 事 会 が 全 会 一 致 で 決 定 を 下 す ま で は,相 互 防 衛=に関 し てEUの 枠 組 み の 中 で よ り密 接 な 協 力(closer cooperation)が 設 定 さ れ る 。 こ の 協 力 に 参 加 し て い るEU加 盟 国 の1ヵ 国 が 領 十 の 軍 事 侵 略 の 犠 牲 とな っ た場 合,他 の 協 力 参 加 国 は 国 連 憲 章51条 に 従 っ て,軍 事 力 を含 め あ らゆ る 手 段 で 援 助 を行 う とあ る。 こ の よ り密 接 な 協 力 を実 施 す る に は,参 加 国 は 北 大 西 洋 条 約 機 構(NATO)と 緊 密 な 協 力 の 下 に 取 り組 む と して い る。

この 相 互 防 衛 の 考 え は,EU独 自 の 安 全 保 障 ・防 衛 の 枠 組 に 沿 っ た もの と考 え られ る が,現 在 と将 来 を 展 望 す る 視 野 に 立 っ て い る と も言 え ま い か 。04年5月1日 加 盟 の マ ル タ,キ プ ロ ス は NATO加 盟 国 で は な い 。 ま た,07年 にEU加 盟 が 見 込 ま れ る ブ ル ガ リ ァ,ル ー マ ニ ア はNATO 加 盟 国 で あ る が,ク ロ ア チ ア な どEU加 盟 を 目指 す 他 の バ ル カ ン諸 国 は 現 状 で は 非NATO加 盟

国 で あ る。 冷 戦 終 結 後 か ら今 日に 至 る 情 勢 で は 国 家 間 の 戦 争 は 遠 の い た と み る の が 一 般 的 で あ る が,安 全 保 障 を め ぐ る環 境 の 激 変 を 想 定 す る と未 確 定 の 要 素 も あ る 。 ア メ リ カ は 欧 州 の 独 自 の 安 全 保 障 ・防 衛 力 構 想 に疑 念 を 抱 い て い る と さ れ る が,内 実 は ア メ リ カ は 現 状 で は 自 国 の 安 全 に 手 一 杯 な の が 実 態 で は な か ろ うか 。

ア メ リカ が 欧 州 の 自律 的 な 防 衛 能 力 が ア メ リ カ の 指 揮 の 手 を離 れ る の で は な い か とい う懸 念 が あ る と い っ て も,現 実 に は,ヨ ー ロ ッパ と周 辺 地 域 の 危 機 管 理 や 紛 争 の 予 防 に は ヨ ー ロ ッパ に 頼 ら ざ る を 得 な い 時 代 に入 っ て い る と考 え られ る。 ア メ リ カ は コ ソ ボ 紛 争 で 気 乗 り薄 で,ブ ッ シ ュ 政 権 は 米 軍 の 永 久 的 なバ ル カ ン半 島 駐 留 に ア ン ビ バ レ ン トな 感 情 を 明 らか に し た 。 こ の 懸 念 は, 本 土 防 衛 と テ ロ と の 戦 い に 新 た な 焦 点 を絞 る こ とか ら生 じ る 負 担 増 に よ っ て 強 く な る だ け だ っ た(9)と され る 。 ア メ リ カ の 懸 念 は大 西 洋 同 盟 の 破 綻 に つ な が る事 態 に あ る と考 え る の か 至 当 で は あ る ま い か 。

1‑5緊 密 化 協 力(enhancedcooperation)

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加 盟 の 基 準 を ク リ ア し,EU加 盟 が 承 認 され た と は い え,政 治,経 済,社 会 的 統 合 の 視 座 か ら す る と15ヵ 国 加 盟 時 のEU,25ヵ 国 加 盟 の 拡 大 圏,将 来 の 更 な る 拡 大 の 可 能 性 はEUに 新 た な 多 様 性 を 持 ち 込 み,ま た 地 域 格 差 が 顕 著 に な っ て こ よ う。 そ う し た 環 境 を傭 鰍 す る と,先 行 グ ル ー プが 統 合 を 先 取 りす る 必 要 に 迫 ら れ る こ と も想 定 で き る。

第43条 の 緊 密 化 協 力 は,「 連 合 の 目標 を 進 め,そ の 利 益 を 守 り,統 合 の プ ロ セ ス を 一 層 強 め る 」 と あ り,こ の 協 力 は 全 加 盟 国 に 開 か れ て い る と規 定 し た。 この 緊 密 化 協 力 は,ア ム ス テ ル ダ ム 条 約 に 導 入 され,政 策 領 域 に よ っ て は 過 半 数 以 上 の 国 の 参 加 で 統 合 を 先 取 りす る こ とが 認 め ら れ て い る 。 ニ ー ス 条 約 で は 欧 州 委 員 会 ま た は8ヵ 国 以 上 の イ ニ シ ア テ ィ ブ に 変 わ っ て い る 。 憲 法 草 案 で は3分 の1以 上 の 加 盟 国 の イ ニ シ ア テ ィ ブ に基 づ く こ と に な っ た 。

3部 タ イ トルV2章 の 第325条 で,共 通 外 交 ・安 全 保 障 政 策 以 外 の 領 域 で 緊 密 化 協 力 を 設 定 し た い 場 合 は,欧 州 委 員 会 に そ の 旨 を 申 し入 れ る が,共 通 外 交 ・安 全 保 障 政 策 の 枠 組 み の 範 囲 内 の 場 合 は,閣 僚 理 事 会 に 申 し入 れ る。 こ の 申 し入 れ は,外 相 と欧 州 委 員 会 に 回付 され,外 相 は 緊 密 化 協 力 が 共 通 外 交 ・安 全 保 障 政 策 に 一 致 し て い る か ど うか,ま た 欧 州 委 員 会 は そ の 他 の 政 策 と一 致 して い るか ど うか に つ い て 意 見 を 述 べ,ま た 情 報 と して 欧 州 議 会 に も 回 付 さ れ る。 こ う し た 手 続 き を 経 た 後,閣 僚 理 事 会 が 決 定 す る 。

緊 密 化 協 力(先 行統 合)は 連 合 全 体 と し て 相 応 の 期 間 内 に 緊 密 化 協 力 が 達 成 困 難 と み な さ れ る 場 合 に 限 られ る が,ユ ー ロ参 加 の 場 合 は 実 質 的 に こ の 先 行 統 合 の ケ ー ス に 当 た ろ う。 ユ ー ロ 参 加 を望 ま な い イ ギ リス,ス ウ ェ ー デ ン,デ ンマ ー ク の 適 用 除 外 で 通 貨 統 合 が 実 現 した の は こ の ケ ー ス で あ る し,安 全 保 障 ・防 衛 政 策 で 先 行 統 合 が 進 め られ る場 合 も想 定 で き る。10ヵ 国 の 新 規 加 盟,更 に 発 展 段 階 の 異 な る加 盟 国 が 増 え る こ と を想 定 す る と,統 合 の プ ロ セ ス を停 滞 させ な い た め に も必 要 な条 項 で あ ろ う。 同 時 に,す べ て の加 盟 国 に参 加 の 道 を 開 い て い る こ と は,拡 大 圏 に

と っ て 不 可 欠 の 統 合 の枠 組 み と言 え よ う。

1‑62部 の 基 本 権 憲 章

基 本 権 憲 章 に つ い て は 一 部 分 は す で に触 れ た が,こ の 分 野 は 人 間 の 権 利 に つ い て の 欧 州 の 価 値 感,モ デ ル を提 示 して い る 。 前 文 で,「 ヨ ー ロ ッパ の 諸 国 民 は,絶 え ず 緊 密 化 す る 連 合 を 創 設 す る に あ た り,共 通 の価 値 に基 づ く平 和 な未 来 を共 有 す る 決 意 で あ る 」 と前 置 き し,連 合 が,人 間 の 尊 厳,自 由,平 等,連 帯 と い う不 可 分 に して 普 遍 的 な価 値 に 基 づ い て 創 設 さ れ,ま た,法 の 支 配,民 主 主 義 の 原 則 に 立 っ て い る と した 後,「 欧 州 市 民 権 を 創 設 し,自 由,安 全 保 障,公 正 の 領 域 を設 け る こ と に よ っ て,個 人 を連 合 の 活 動 の 中 心 に 据 え る 」 と し,市 民 社 会 か ら構 成 さ れ る連 合 の 位 置 づ け を 明 確 に し た 。 続 い て,「 加 盟 国,国 家,地 域,地 方 レベ ル の 公 的 機 関 の ナ シ ョナ ル ・ア イ デ ンテ ィテ ィ と共 に,ヨ ー ロ ッパ 諸 国 民 の 文 化 と伝 統 の 多 様 性 を 尊 重 しな が ら,連 合 は こ れ らの 価 値 の 保 全,発 展 に 寄 与 す る」 と謳 っ て い る 。

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草案段 階にみ る欧州憲法 の一・考察101 基 本 権 憲 章 は,人 間 の 基 本 的 権 利 を 前 面 に 掲 げ て,個 人(市 民)を 加 盟 国 と並 ぶ 連 合 の 主 権 者 と銘 記 し,同 時 に 国 家 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ と伝 統 文 化 の 多 様 性 に言 及 し,共 同 体 と加 盟 国 の 権 限 の 配 分(補 完性 の原則)を 発 展 さ せ,EUと 市 民,国 家 と個 人 の 間 の 関 係 に 踏 み 込 ん で い る 。 こ れ 迄,条 約 が 国 民 投 票 で 否 決 さ れ る と い う民 主 主 義 の 赤 字 を抜 本 的 に 改 善 す る必 要 に迫 られ た こ

と も一 つ の 要 因 とみ られ る 。 今 後,加 盟 国 が 更 に 拡 大 す る こ と を視 野 に入 れ る と市 民 の 権 利,多 様 性 の 尊 重 は 重 要 な 要 素 で あ る。

EU基 本 権 憲 章 の こ の2部 は,尊 厳,自 由,平 等,連 帯,市 民 の 権 利,公 正,憲 章 の 適 用 と解 釈 に 関 す る 条 項 の7つ の タ イ トル か ら構 成 さ れ て い る 。 「尊 厳 」 の 項 で は 「人 間 の 尊 厳 は 不 可 侵 で あ る。 尊 重 され 保 護 さ れ ね ば な らな い 」 と し死 刑 の 禁 止,非 人 道 的 侮 辱 的 扱 い また は 刑 罰 の 禁 止 が 含 まれ,「 自 由 」 の 項 で は,思 想,良 心,宗 教 の 自 由 な どの 自 由 以 外 に,職 業 選 択 の 自 由 と 就 労 の 権 利 の 項 で,加 盟 国 以 外 の 国 の 国 民 に も欧 州 市 民 と対 等 の 労 働 条 件 が 認 め られ,ま た,追 放,排 除,送 還 の 際 の 保 護 の 項 で,何 人 も死 刑,拷 問 ま た は 非 人 道 的 侮 辱 的 扱 い また は 刑 罰 に さ

ら され る危 険 の あ る 国 に 追 放,排 除,送 還 して は な ら な い と規 定 して い る 。

「平 等 」 の 項 で は,先 ず 「法 の 前 の 平 等 」 を掲 げ,文 化,宗 教,言 語 の 多 様 性 の 尊 重,そ し て 子 供 の権 利 につ い て,「 子 供 は,自 ら の 幸 福 ・安 寧 に 必 要 な 保 護 と 世 話 を 受 け る権 利 が あ る」 と して い る。 ま た,「 連 帯 」 の 項 で は,不 当 解 雇 の 際 の 保 護,公 平 で 公 正 な 労 働 条 件,児 董 労 働 の 禁 止,若 年 労 働 者 の 禁 止,社 会 保 障 と社 会 扶 助,消 費 者 保 護 な ど を 取 り決 め て い る。 社 会 保 障 と 社 会 扶 助 に つ い て,妊 娠,病 気,労 災 事 故,失 業 と い っ た 場 合 に,社 会 保 障 手 当,社 会 サ ー ビ ス を 受 け る資 格 を認 め る と して い る 。 「市 民 の 権 利 」 の 項 で は,す で に 触 れ た が マ ー ス トリ ヒ ト条 約 に 規 定 さ れ て い る 欧 州 市 民 権 が 導 入 さ れ,居 住 先 で の 欧 州 議 会 選 挙 の 立 候 補 と投 票,地 方 自治 体 選 挙 の 際 の 立 候 補 と投 票 の 地 方 参 政 権,移 動 と居 住 の 自 由 の 権 利 が 含 ま れ て い る。 「公 正 」 の 項 で は,権 利 と 自 由 が 侵 害 され た 場 合,何 人 に も法 廷 で効 果 的 な 救 済 と公 正 な 裁 判 を 受 け る権 利 が あ る と し て い る 。

1‑73部 の 経 済 ・通 貨 政 策

3部 タ イ トル 皿2章 第69条 で,加 盟 国 と連 合 の 経 済 政 策 に は単 一 通 貨 の ユ ー ロ と単 一 通 貨 政 策 と為 替 政 策 が 含 まれ る と規 定 し,第71条 で,閣 僚 理 事 会 は,欧 州 委 員 会 か らの 勧 告 に 基 づ い て 加 盟 国 と連 合 の 経 済 政 策 に 関 す る 一 般 的 な 指 針 の 原 案 を作 成 し,欧 州 理 事 会 に よ る 検 討 の 結 果 を 経 て 閣僚 理 事 会 が 勧 告 事 項 を 採 択 す る こ と に な っ て い る 。 そ の 結 果,加 盟 国 の 経 済 政 策 が こ の 指 針 に一 致 し て い な い 場 合,ま た は,経 済 通 貨 同 盟 の 適 正 な 機 能 を危 う くす る恐 れ が あ る場 合 に は,欧 州 委 員 会 が,当 該 加 盟 国 に 警 告 を発 し,閣 僚 理 事 会 が 欧 州 委 員 会 の 勧 告 を 受 け て 必 要 な 是 正 勧 告 を行 う こ と に な っ て い る 。 こ う して,通 貨 統 合 の 経 済 通 貨 同 盟 を維 持,発 展 させ る た め に

閣 僚 理 事 会 が 関 与 して い く こ と に な っ た 。

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3部 第76条 で,欧 州 委 員 会 は 加 盟 国 の 財 政 状 況 と政 府 の 債 務 残 高 を モ ニ タ ー し,一 定 の 状 況 を勘 案 し な が ら,(i)GDPに 対 す る 財 政 赤 字 が 関 連 数 値(3%一 筆 者注)を 超 え た か,(ii)GDP に 対 す る 政 府 債 務 残 高 が 関 連 数 値(60%筆 者注)を 超 え た か の 何 れ か,ま た は,双 方 の 場 合,報 告 書 の 準 備 を始 め る 。 閣 僚 理 事 会 は,欧 州 委 員 会 か らの 提 案 に 基 づ い て,全 体 的 評 価 を した 後, 過 剰 な財 政 赤 字 が 存 在 す る か ど うか を検 討 し,存 在 を決 め た 場 合,当 該 国 に対 し一 定 期 間 内 に状 況 を 終 結 させ る よ う勧 告 を採 択 す る 。 こ の 段 階 で は 勧 告 は 公 表 さ れ な い 。 対GDPの 財 政 赤 字 の 上 限 が3%,政 府 債 務 残 高 が60%以 内 と い う数 値 は,通 貨 統 合 参 加 の 収 敏 基 準 を 取 り決 め た マ ー ス トリ ヒ ト条 約 に 規 定 さ れ て い る 。 収 敏 基 準 の 中 で 最 も重 視 さ れ る の は財 政 赤 字 の 基 準 で あ る 。

3部 第76条 第9項 で,当 該 国 が 勧 告 を実 施 に移 さ な い 場 合 に は,閣 僚 理 事 会 は,特 定 の 期 間 を 限 定 し,財 政 赤 字 削 減 の 措 置 を取 る よ う 通 告 す る こ と に な る 。10項 で,当 該 国 が こ れ に応 じ な い 場 合 に は,閣 僚 理 事 会 は,(i)相 応 の 供 託 金 を 無 利 子 で 連 合 に 預 け る,(ii)相 当 規 模 の 罰 金 を 科 す,(iii)欧 州 投 資 銀 行 に 当 該 国 に 対 す る 貸 付 政 策 の 再 検 討 を求 め る な どの う ち か ら一 つ か 二 つ 以 上 の 制 裁 を科 す こ とが で き る 。11項 で,過 度 の 財 政 赤 字 が 是 正 さ れ た 場 合,閣 僚 理 事 会 は 当 該 国 に 科 し た 是 正 措 置 の 一 部 また は す べ て を解 除 す る こ と に な る。

財 政 赤 字 がGDPの3%以 下 とい う 問 題 は,イ ン フ レ 率,長 期 金 利 な どユ ー ロ 参 加 の5つ の 収 敏 基 準 の う ち最 重 要 事 項 で あ り,EUは 安 定 成 長 協 定 を成 立 さ せ,財 政 の 安 定 規 律 を 守 っ て き た 。 ユ ー ロ参 加 の 可 否 は,欧 州 委 員 会 が1997年 発 表 し た 加 盟 国 の 秋 季 経 済 情 勢 の 見 通 し を ベ ー一 ス に 決 ま っ た が,そ の 関 連 で 安 定 成 長 協 定(当 初 は財 政 安定協 定)が 同 年,ア ム ス テ ル ダ ム のEU 首 脳 会 議 で 採 択 さ れ た 。 こ の 協 定 に よ る と,財 政 赤 字 がGDPの3%を 超 え た 場 合,改 善 策 を 勧 告 し,改 善 さ れ な い 場 合,GDPの0.5%を 上 限 に 罰 金 を 科 す な ど の 制 裁 措 置 が 発 動 さ れ る。

憲 法 の 草 案 に は,安 定 成 長 協 定 の 精 神 が 取 り込 ま れ た 。 制 裁 条 項 は,協 定 よ り加 盟 国 の 状 況 に配 慮 し た 緩 い もの と な っ て い る 。

1‑8経 済,社 会 及 び 地 域 の 結 束

3部 タ イ トルIn3章 第116条 で,全 体 と して 調 和 の と れ た 発 展 を 促 進 す る た め,連 合 は,経 済,社 会,地 域 に 関 す る結 束 の 強 化 につ な が る 行 動 を 遂 行 し,特 に,様 々 な 地 域 の 発 展 の 度 合 い の 格 差 と 田 園 地 帯 を含 め て 最 も不 利 な 地 域 ま た は 島 懊 の 後 進 性 を 改 善 し,是 正 す る よ う 目指 す と

し て い る 。

第117条 で,連 合 は こ の 目 的 達 成 の た め,構 造 基 金(欧 州 農業 指導保 証基 金指 導部 門,欧 州 社 会基 金,欧 州 地域 開発 基 金の3つ の基 金),欧 州 投 資 銀 行 及 び そ の 他 の 現 行 の 財 政 機 関 を 通 じて 支 援 す る

こ と に な っ て い る 。

地 域 間 格 差 は,ギ リ シ ャ,ポ ル トガ ル,ス ペ イ ン のEU加 盟 に 伴 っ て 顕 在 化 し,1974‑75年

(13)

草案段 階 にみ る欧州 憲法 の一考 察103 と,そ の 後 の 経 済,社 会 の 危 機 に よ っ て 一 時 縮 少 し た 経 済 格 差 が 再 び 拡 大 した 。92年 末 か ら の 始 動 を 目指 した 市 場 統 合 に よ る 域 内 競 争 の 激 化 もあ り,周 縁 諸 国(ア イル ラ ン ド,ギ リシ ャ,ス ペ イ ン,ポ ル トガル),低 開 発 地 域(前 記 周縁諸 国 とイタ リア南部,フ ラ ンスの コル シカ島 な ど。スペ イ ンはマ ド リー ド周辺 と東 部 を除 く)に 対 して,EUの 地 域 政 策 を 強 化 す る 必 要 が あ っ た 。

こ の 地 域 政 策 は 構 造 基 金 を通 じた 支 援 に よ り進 め て きた が,構 造 基 金 を構 成 す る3つ の 基 金 の 問 に 連 携 が な く,計 画 性 の 欠 除 が 指 摘 さ れ,ド ロ ー ル 欧 州 委 員 会 委 員 長 の 時 代 の1987年 に 改 善 策 が 発 表 さ れ た 。 地 域 政 策 の 改 革 に よ り,周 縁 諸 国 がEU財 政 か ら受 け 取 る 額 は 飛 躍 的 に増 大 し,92年 の 構 造 基 金 か ら の 純 受 取 り(GDP比)は,ギ リ シ ャ2.8%,ポ ル トガ ル2.7%,ア イ ル ラ ン ド2.4%,ス ペ イ ン2.5%で あ っ た(10)。

93年 発 効 の マ ー ス トリ ヒ ト条 約 に,地 域 間格 差 是 正 の た め の 「結 束 基 金(c・hesi・n=fund)が 設 定 さ れ た。 条 約 はEUの 目標 に つ い て,「 均 衡 の と れ た 持 続 的 発 展 を も っ た 経 済 的,社 会 的 進 歩 を促 進 す る こ と に あ り,と く に域 内 の 国 境 な き地 域 の創 造,経 済 的 社 会 的 地 域 間 の 格 差 是 正 の た め の 結 束 を 通 じ て,… … … 最 終 的 に は,こ の 条 約 の 各 条 文 に 対 応 して 単 一 通 貨 採 用 を含 む 経 済 通 貨 統 合 の 推 進 に あ る」 と して い る。

欧 州 結 束 基 金 は,特 に低 所 得 地 域 の ニ ー ズ に よ っ て そ の 地 域 の 所 得 向 上 を 図 る た め に社 会 投 資 を 実 施 す る こ と に な っ た 。EUは1990年 代 に,「 欧 州 横 断 ネ ッ トワ ー ク 」 の 建 設 に着 手 し た 。 こ の プ ロ ジ ェ ク トは 市 場 統 合 との 関 連 で80年 代 に ア イ デ ア が 浮 上 しJ近 代 的 で 効 率 的 な イ ン フ ラ の 整 備 が 必 要 だ と考 え られ た 。 マ ー ス トリ ヒ ト条 約 は,域 内 市 場 の 創 設,経 済 的社 会 的 結 束 の 強 化 の た め の 主 要 な要 素 と して 欧 州 横 断 ネ ッ トワ ー ク の 開発 を進 め な け れ ば な らな い と して い る 。 TEN(Trans‑EuropeanNetw・rks)で 呼 ば れ る こ の 計 画 は,高 速 鉄 道,道 路 網 な ど交 通 ネ ッ トワ ー ク,電 力 ・天 然 ガ ス な ど エ ネ ル ギ ー 供 給 網,電 気 通 信 網 を 建 設 し,加 盟 各 国 と結 ぶ 基 幹 の ネ ッ ト ワ ー ク に し よ う と い う 計 画 で,欧 州 結 束 基 金 か ら は,GDPがEU平 均 の90%以 下 の 周 縁 国 に

「ネ ッ トワ ー ク建 設 資 金 」 が 拠 出 さ れ,TENの 建 設 は 経 済 成 長 と雇 用 創 出 に 貢 献 す る と期 待 され て い る 。 第119条 で は,結 束 基 金 は,TEN以 外 に 環 境 の 分 野 の プ ロ ジ ェ ク トに も 拠 出 さ れ る こ と に な っ て い る 。 構 造 基 金 で あ れ,結 束 基 金 で あ れ,04年5月 か ら中 ・東 欧,バ ル トな ど10力 国 の 加 盟 に よ っ て,地 域 格 差 の 是 正 の 分 野 は 更 に拡 大 して 行 く点 か ら重 要 度 は 増 し,統 合 拡 大 圏 の 持 続 的 発 展 に 欠 か せ な い 要 素 に な っ た と も 言 え よ う。

五 憲法制定 を取 り巻 く環境

欧 州 統 合 は,1958年 発 効 の ロ ー マ 条 約 ま で は 統 合 の 立 ち 上 げ の 草 創 期 で あ っ た とす れ ば,欧 州 経 済 共 同 体(EEC)と 欧 州 原 子 力 共 同 体 と52年 発 足 した 欧 州 石 炭 鉄 鋼 共 同 体 の 執 行 機 関 を 統 合

し た67年 の 欧 州 共 同 体(EC)の 発 足 か ら通 貨 統 合,共 通 外 交 ・安 全 保 障 政 策 を 盛 り込 ん だ93年 発 効 の マ ー ス トリ ヒ ト条 約(EU設 立条 約)ま で は 生 成,発 展 の 時 期 で あ っ た 。 特 に 通 貨 統 合 の ユ ー ロ 立 ち上 げ は 経 済 を 中 心 と した 統 合 の 深 化 を象 徴 し て い た 。 ユ0ロ は ドル に 次 ぐ国 際 通 貨 と

(14)

し て 世 界 に 地 域 統 合 の ヨ ー ロ ッパ の モ デ ル を提 示 す る機 会 とな っ た と考 え る 。

一一方 で,90年8月 に 始 ま る湾 岸 戦 争,91年 以 降 の 一 連 の ユ ー ゴ 紛 争 を通 じ てEUと して の 外 交 ・安 全 保 障 政 策 が 重 要 課 題 に 浮 上 した 。 ま た,冷 戦 の 終 結 の 事 態 の 中 で,自 由 化 革 命 を 進 め,

表 皿一1aニ ー ス 条 約 に 基 づ く 決 定 (中 ・東 欧,バ ル ト,地 中 海諸 国 の12ヵ 国 の 加 盟 前 提)

人 口(単 位 百 万)03年 閣僚 理事会 での持 ち票 欧州 議会議 員数

ド イ ツ 82.5 29 99

フ ラ ン ス 59.6 29 72

イ ギ リ ス 59.3 29 72

イ タ リ ア 57.3 29 72

ス ペ イ ン 40.7 27 50

ポ ー ラ ン ド 38.2 27 50

ル ー マ ニ ア 2L8 14 33

オ ラ ン ダ 16.2 13 25

ギ リ シ ャ 11.0 12 22

チ ェ コ 10.2 12 20

ベ ル ギ ー 10.4 12 22

ハ ン ガ リ ー 10.1 12 20

ポ ル トガ ル 10.4 12 22

ス ウ ェ ー デ ン 8.9 10 18

ブ ル ガ リア 7.8 10 17

オ ー ス ト リ ア 8.1 14 17

ス ロ ヴ ァ キ ア 5.4 7 13

デ ン マ ー ク 5.4 7 13

ブ イ ン ラ ン ド 5.2 7 13

ア イ ル ラ ン ド 4.0 7 12

リ トァ ニ ァ 3.5 7 12

ラ トヴ ィ ァ 2.3 4 8

ス ロ ヴ ェ ニ ア 2.0 4 7

エ ス トニ ァ 1.4 4 6

キ プ ロ ス 0.7 4 6

ル ク セ ン ブ ル ク 0.4 4 6

マ ル タ 0.4 3 5

計 345 732

注:本 条 約 は27ヵ 国加 盟 を前 提 に取 り決 め られ た 。

欧 州 議 会 の 議 員 数 につ い て,15ヵ 国 は2004‑2009の 適 用,持 ち 票 に つ い て は,15ヵ 国 は2005年1月 か ら の 適 用 と 明 記 され た が,新 規 加 盟 国が 未定 の 当 時 は これ ら加 盟 国 の適 用 年 次 は 明 記 され て い な い。 人 口 は03年1月 ,欧 州 委 員 会 の統 計 に よる 。

(15)

草案段 階 にみ る欧州 憲法の一考 察105 体 制 転 換 し た 旧 東 欧 諸 国 は 自 ら を 中 ・東 欧 と名 乗 りEU加 盟 を 申 請 し た 。 欧 州 統 合 は こ れ を 契 機

に 政 治 統 合 の 分 野 に 踏 み 込 み,ま た 東 西 両 ヨー ロ ッパ の統 一 に つ な が る 拡 大 圏 の 形 成 とい う大 転 換 点 に さ し か か っ た 。97年 に 合 意 し,99年5月 に 発 効 した ア ム ス テ ル ダ ム 条 約 で,共 通 外 交 ・ 安 全 保 障担 当 上 級 代 表 を 新 設 し,決 定 に棄 権 し て も決 定 は成 立 す る とい う建 設 的 棄 権 の 制 度 を取

り入 れ た り,人 道 救 援 の 任 務,危 機 管 理 の 任 務 を 共 通 外 交 ・安 全 保 障 政 策 に盛 り込 む な ど時 代 の 変 革 に 対 応 で き る 態 勢 を 整 え た 。

一 方,チ ェ コ,ポ ー ラ ン ド,ハ ン ガ リー な ど 旧 東 欧 諸 国10力 国 のEU加 盟 申 請 は,EUに 加 盟27ヵ 国 の 拡 大 圏 を統 治 で き る機 構 改 革 を 迫 る 契 機 と な り,2000年12月 に 合 意 し た ニ ー ス 条 約 で 欧 州 委 員 会 の 新 ら し い 構 成,閣 僚 理 事 会 の 新 ら しい 意 思 決 定 制 度 な ど を取 り決 め た 。 し か し,条 約 が 国 民 投 票 で 否 決 さ れ る とい う民 主 主 義 の 赤 字 を解 消 す る に は 統 合 は 基 本 的 に は 国 家 と 市 民 か ら成 り立 っ て い る こ とが 明 白 と な り,市 民 のEUの 構 築 が不 可 欠 の 課 題 に登 場 し た 。 こ う して,欧 州 統 合 は,統 合 の 分 野 に 経 済,社 会,政 治 と市 民 共 同 体 を 中 心 に 据 え,統 合 を 集 大 成 し,将 来 を展 望 し たEU憲 法 の 制 定 が 求 め ら れ た の で あ る 。

皿一1ス ペ イ ン に 変 革 の 波EU内 に新 しい政治の潮流

03年12月,欧 州 憲 法 草 案 の 大 詰 め の 政 府 間 会 議 の 決 裂 を改 め て 振 り返 っ て お き た い 。 意 思 決 定 に あ た っ て 主 権 を背 負 っ た 加 盟 国 が どの よ う に対 応 す るか は今 後 に も波 及 す る テ ー マ と考 え ら れ る 。 こ の段 階 で の 決 裂 は,草 案1部 第24条 が 規 定 す る特 定 多 数 決 に よ る 意 思 決 定 方 式 に 対 し て ス ペ イ ン,ポ ル トガ ル が ニ ー ス 条 項(表IIlaニ ース条約 の規 定 を参照)の 合 意 に 固 執 した の が 最 大 の 理 由 で あ っ た 。 ま た,欧 州 委 員 会 の 構戒 に つ い て,草 案 で は,投 票 権 を持 つ 委 員 が 全 体 で 15人 に 削 減 さ れ る 点 に小 国 が 反 発 した 。 二 〇 ス 条 約 で は,1加 盟 国1人 の1入 制 と な り,加 盟 国 が27ヵ 国 と な っ た 段 階 で 上 限 の 枠 を見 直 し,輪 番 制 を 導 入 す る こ と に な っ て い た 。 但 し,拡 大 と機 構 改 革 に つ い て は,欧 州 委 員 会,欧 州 議 会,閣 僚 理 事 会 の構 成,意 思 決 定 方 式 と も に04年 11月 以 降09年10月 末 ま で は ニ ー ス 条 約 が 適 用 さ れ,新 ら し い 意 思 決 定 方 式 の 適 用 は09年11 月1日 以 降 と な っ て い る(表Hlbを 参照)。

と こ ろ で,ス ペ イ ン に04年3月 の 総 選 挙 で,社 会 労 働 党 の左 派 政 権 が 誕 生 し,国 民 党 か ら の 政 権 交 代 が 起 き た 。

04年3月11日,ス ペ イ ンの 首 都 マ ド リー ドで 朝 の 通 勤 時 間 に3つ の 駅 で 連 続 列 車 爆 破 テ ロ 事 件 が 発 生,200人 以 上 が 死 亡 と報 道 さ れ る惨 事 と な っ た 。 ア ス ナ ー ル 政 府 は,バ ス ク 地 方 の 分 離 独 立 を 要 求 す る 非 合 法 組 織 「バ ス ク祖 国 と 自 由(E丁A)」 の 犯 行 と の 見 方 を 示 した が,そ の 後 捜 査 当 局 が モ ロ ッ コ人 を拘 束 し,国 際 テ ロ組 織 と の 関 わ り説 が 伝 え られ,政 府 の見 方 を 否 定 す る情 勢 と な っ た 。 こ う した 中 で テ ロ 事 件3日 後 の14日 の 総 選 挙 で,イ ラ ク か ら の 撤 兵 を 公 約 に 掲 げ た 野 党 の 社 会 労 働 党 が 予 想 を 覆 し て 第1党 に 躍 進 し た 。 テ ロ 事 件 発 生 前 の 世 論 調 査 で は 景 気 を主

(16)

表 皿一1b欧 州 憲 法 発 効 ま で の 暫 定 的 なEU機 構 加盟 国 欧 州 委 員 会 委 員

04.5.1〜10.31

04.11.‑09.10.31 04.5.1ま

閣 僚 理 事 会 の 持 ち 票 04.5.1〜 ユ0.31 04.11.1〜

27ヵ 国 体 制

ド イ ツ 2 1 10 10 29 29

フ ラ ン ス 2 1 10 10 29 29

イ ギ リス 2 1 10 10 29 29

イ タ リ ア 2 1 10 10 29 29

ス ペ イ ン 2 1 8 8 27 27

ポ ー ラ ン ド 1 1 8 27 27

ル ー マ ニ ァ 14

オ ラ ン ダ 1 1 5 5 13 13

ギ リ シ ャ 1 1 5 5 12 12

チ ェ コ 1 1 5 12 12

ベ ル ギ ー 1 1 5 5 12 12

ハ ン ガ リ ー 1 1 5 12 12

ポ ル トガ ル 1 1 5 5 12 12

ス ウ ェ ー デ ン 1 1 4 4 10 10

ブ ル ガ リ ア 10

オ ー ス ト リ ア 1 1 4 4 10 10

ス ロ ヴ ァ キ ア 1 1 3 7 7

デ ン マ ー ク 1 1 3 3 7 7

ブ イ ン ラ ン ド 1 1 3 3 7 7

ア イ ル ラ ン ド 1 1 3 3 7 7

リ トア ニ ア 1 1 3 7 7

ラ トヴ ィ ァ 1 1 3 4 4

ス ロ ヴ ェ ニ ア 1 1 3 4 4

エ ス トニ ァ 1 1 3 4 4

キ プ ロ ス 1 1 2 4 4

ル ク セ ン ブ ル ク 1 1 2 2 4 4

マ ル タ 1 1 2 3 3

計 30 25 87 124 321 345

特定多 数決 62(71.26%) 88{70.97%) 232(72.27%) 255(73.9%}

注:欧 州 委 員 会 の 構 成 に つ い て は,04.11.1〜09.10.31は 暫 定 的 。 ニ ー ス 条 約 で は 加 盟 国 数 が27ヵ 国 と な っ た 場 合,委 員 総 数 は27以 下 と な り輪 番 制 と な る 。

閣 僚 理 事 会 に つ い て:現 在 の 議 長 職 の 輪 番 制 は2006年 末 ま で 持 続 。 政 府 間 会 議 は 議 長 職 に チ ー ム 制 度 の 導 入 検 討,ま 対 外 関 係 理 事 会 は 欧 州 憲 法 草 案 で は 外 相 が 議 長 を5年 間 務 め る 予 定(EUCommission,EUlnstitutionspressreleases,16

March2004)o

(17)

草案段 階 にみ る欧州憲法 の一考察107 な理 由 と し て ア ス ナ ー ル 首 相 が 率 い る 国 民 党 が優 勢 と伝 え られ て い た が,列 車 爆 破 テ ロで イ ス ラ ム 過 激 派 の 犯 行 説 が 浮 上 し,世 論 が イ ラ ク 戦 争 で対 米 協 力 を 貫 い た 国 民 党 政 権 の 批 判 に傾 い た 形

とな っ た(04年3月15日 付,朝 日新 聞。)

今 回 の 選 挙 で 野 党 の 社 会 労 働 党 に 覆 っ た の は,元 々 イ ラ ク 戦 争 に つ い て は 国 民 の 多 く は 反 対 だ っ た の に 加 え,バ ス ク祖 国 と 自 由 の 犯 行 説 に つ い て の 一 種 の 情 報 操 作 か とい う 疑 惑 が 持 ち 上 が っ た とす れ ば そ れ が 逆 作 用 し た こ と も推 測 さ れ る 。 英 紙 フ ィナ ン シ ャ ル ・タ イ ム ズ は,「 テ ロ の 勝 利 か 民 主 主 義 の 勝 利 か 。 ス ペ イ ン の 驚 愕 の 選 挙 結 果 は 欧 州 の 難 問 を 投 げ か け る 」 の 見 出 し の 論 評 の 中 で,「 政 治 の 局 面 で は,テ ロ行 為 は こ れ ま で は 法 と秩 序 の 政 策 の 強 化 に 作 用 す る傾 向 が あ っ た 。 しか し,イ ラ ク 戦 争 は こ う し た 想 定 を疑 問 視 した 。 ス ペ イ ンの 有 権 者 は テ ロ と戦 うが そ れ は イ ラ ク に対 し て で は な い こ と を 明 確 に した 」 と述 べ て い る(11)。

有 権 者 は テ ロ の 恐 怖 で投 票 した の で は あ る ま い 。 民 主 主 義 の 原 則 に則 っ て1票 を 投 じた の で あ ろ う 。1930年 代,フ ラ ン コ独 裁 政 権 が 成 立 した 当 時,ス ペ イ ン 国 民 は 国 を2分 し て 内 戦 を 戦 っ た伝 統 が あ る 。 無 差 別 の 殺 傷 とい う テ ロ事 件 で 民 主 主 義 の 価 値 に 目覚 め た 人 々 が1票 を投 じた の で あ り,投 票 率 が 前 回 の 総 選 挙 の68.7%か ら77.2%と8.5%伸 び た の は民 主 的 選 択 へ と駆 り立

て た も の と して 捉 え る こ と が で き る 。

も う1つ の 教 訓 は,政 権 交 代 に よ っ て 政 策 の 転 換 が 可 能 に な る こ と で あ る。 欧 州 統 合 に 関 し て,そ れ が 経 済 の 統 合 が 中 心 の場 合 は,保 守,中 道,左 派 の 政 権 が 政 策 で 大 き く対 立 す る こ と は 比 較 的 少 な か っ た 。 しか し,安 全 保 障 問 題 な ど政 治 が 色 濃 く反 映 す る 政 治 統 合 に駒 を 進 め る段 に な る と,政 権 の 選 択 は大 きな 決 定 の 要 素 と な る 。EU内 部 で ア ス ナ ー ル の ス ペ イ ン は,国 連 主 導 の枠 組 み を優 先 す る 仏 独 と対 立 し,欧 州 憲 法 の 制 定 で も ナ シ ョナ ル な利 益 を前 面 に立 て て 来 た 。 ロ ドリ ゲ ス ・サ パ テ ー ロ 書 記 長 は,総 選 挙 の 翌 日15日,イ ラ ク か らの 部 隊 の 撤 退 に 言 及,ま た 仏 独 と の 関 係 改 善 な ど ヨ ー ロ ッパ 政 策 の 転 換 を語 っ た 。

4月18日,ロ ド リ ゲ ス ・サ パ テ ー ロ 首 相 の 社 会 労 働 党 政 権 が 正 式 に 発 足 し た 。 外 相 にEUの 元 中 東 特 使 を 務 め た モ ラ ンテ ィ ー ス 氏,財 務 相 に 欧 州 委 員 会 の 経 済 担 当 委 員 だ っ た ソ ル ベ ス 氏 を 配 した 。 国 防 相 に社 会 労 働 党 の ボ ー 氏 を任 名 した 。4月 下 院 で の 討 論 の 際,欧 州 憲 法 草 案 に つ い て,ア イ ル ラ ン ド議 長 の 任 期 が 終 了 す る6月 末 まで に 採 択 さ れ る よ う完 全 に 受 け 入 れ る 意 向 を 表 明 した(12)。こ の こ と は,単 純 二 重 多 数 決 制 を受 け 入 れ た もの と み られ る 。

サ パ テ ー ロ 首 相 は,ま た,18日 の テ レ ビ演 説 で,「 ス ペ イ ン 軍 を イ ラ ク か ら早 期 に,安 全 な 形 で 撤 退 す る よ う 国 防 相 に 命 じた 」 と語 り,イ ラ ク で 国 連 が6月30日 ま で に 主 導 的 役 割 を 果 さ な い 場 合 に 撤 退 す る と した これ ま で の 方 針 を変 え て 早 期 撤 退 に踏 み 切 る な ど新 政 権 の 積 極 的 な政 策 実 施 の 姿 勢 を鮮 明 に した 。

サ パ テ ー ロ首 相 は,続 い て4月28日,ベ ル リ ンで ドイ ツ の シ ュ レー ダ ー 首 相,翌29日,パ リ で フ ラ ン ス の シ ラ ク大 統 領 と個 別 に会 談 し,対 米 接 近 の 路 線 に 立 ち 亀 裂 が 生 じた 仏 独 との 関 係 を 修 復 す る ス ペ イ ンの 新EU外 交 を 立 ち 上 げ た 。3首 脳 は,国 連 主 導 に よ る イ ラ ク 危 機 の 解 決 で 合

表 皿一1b欧 州 憲 法 発 効 ま で の 暫 定 的 なEU機 構 加盟 国 欧 州 委 員 会 委 員 04.5.1〜10.31 〃 04.11.‑09.10.31 04.5.1ま で 閣 僚 理 事 会 の 持 ち 票04.5.1〜ユ0.31 04.11.1〜 27ヵ 国 体 制 ド イ ツ 2 1 10 10 29 29 フ ラ ン ス 2 1 10 10 29 29 イ ギ リス 2 1 10 10 29 29 イ タ リ ア 2 1 10 10 29 29 ス ペ イ ン 2 1 8 8 2

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