• 検索結果がありません。

技術報告 57

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "技術報告 57"

Copied!
18
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Vol.16 No.1 原子力バックエンド研究

技術報告 廃棄体回収に関わる塩水を利用した緩衝材の分解除去方法の検討

岩佐健吾*1 石井卓*2 張至鎬*2 沖原光信*1 斉藤亮*2 鈴木啓三*3

高レベル放射性廃棄物地層処分においては,何らかの理由により,ベントナイト緩衝材を撤去して定置した廃棄体を 回収する場合があると考えられる.塩水によって緩衝材を分解してスラリー状にして除去する方法に着目し,その適用 の可能性と基礎的な特性を調べるために,塩水(NaCl水溶液)と小型の模擬緩衝材を用いた要素実験を行った.ベントナ イトおよびケイ砂で構成されている模擬緩衝材は,濃度3~4wt%の塩水に浸漬することで容易に粘着性を失って分解す ること,分解した材料と塩水のスラリーは短時間で沈殿すること,を確認した.また,小型の模擬緩衝材に塩水を噴射 する実験を行った結果,塩水を噴射する方法は緩衝材を効率よく除去する上で効果的であることが判った.

Keywords:放射性廃棄物処分,回収,ベントナイト緩衝材,分解・除去,塩水

In high-level radioactive wastes disposal, it may be decided to free and retrieve the emplaced overpack for some reasons. We have been paying attention to the method of slurrying bentonite buffer around overpack with fluid (salt solution) as an option method for freeing overpack. Some laboratory tests performed for finding out the fiesibility of this method. The results from the tests indicate that the buffer material, constituted of bentonite and quartz sand, can easily be dissolved in NaCl 3 or 4wt% solution, and dissolved material is deposited soon in the slurry. The results from the flushing experiments applied to a small specimen of buffer material suggest that flushing NaCl solution is effective for speedy stripping of buffer material.

Keywords:high-level radioactive wastes disposal, retrieval, bentonite-based buffer, dissolving/removing, salt solution

1 はじめに

高レベル放射性廃棄物地層処分計画においては,不測 の事故など何らかの理由により定置した廃棄体を回収す る(回収可能性)概念を取り込むことの検討が行われてい

る.Table 1に示すように回収可能性の考え方は,各国の事

情や処分事業の進捗状況に応じて様々である([1]に加筆).

わが国では,原子力安全委員会において,「処分場の閉鎖 に際しては,建設段階および操業段階に得られたデータを 追加し,安全評価の結果が妥当であることの確認を行う.

また,その妥当性を確認するまでの期間は,高レベル放射 性廃棄物の回収の可能性を維持することが重要である」と している[2].回収に必要な作業内容は,処分概念や処分 事業の段階によって異なり,OECD/NEAでは,回収可能性 は①廃棄体の定置中,②廃棄体定置後および坑道埋め戻し 前,③坑道埋戻し後および処分場閉鎖前,④処分場閉鎖後 の4つの段階で考慮されるとしている[3].

回収のための技術に関しては,諸外国においていくつか の検討がなされている.例えば,カナダの事例では,廃棄 体の外側の緩衝材をオーバーコアリングすることによる 方法が検討されている[4].また,スウェーデン原子燃料 廃棄物管理会社(SKB)では,上記①と②の段階における回 収技術について,廃棄体回収に先立つ緩衝材除去が極めて 重要な技術であるとしていくつかの除去方法の候補案が

比較検討されており,有力な候補として選定された流体力 学的緩衝材除去方法について,具体的検討が進められてい る[5, 6].これは,塩水によるベントナイト分解促進現象 を利用した技術であり,ベントナイト緩衝材に塩水を低圧 で注入(噴射)して徐々に分解し,スラリー化したベントナ イト緩衝材をポンプにより取り出すという方法である.エ スポ岩盤研究所における実規模スケールのテストでは,塩 水を用いて分解・除去したスラリーからベントナイトを分 離して塩水を再び分解・除去のために再利用することも実 験的に試みられている[5].一方,わが国においては,具 体的に検討した例は少なく,塩水を流体として利用する方 法[7, 8]とドライアイスブラスティングによる方法[9]が実 験的に取り組まれているのが現状である.以上を総括する と,国内外ともに,緩衝材の中に埋設されている廃棄体を 回収することの実現可能性を検討している段階であり,適 用技術を確定する段階に至ってはいない.

現時点で廃棄体回収の方法に関する技術に関して具体 的な技術を提示できていないわが国において,実用化でき そうな方法を一例として提示することは意義があると考 えたので,塩水を利用した緩衝材の除去方法に関して,実 用化の可能性を探るために実験的に取り組んだ成果をこ こに報告する.

(1) 廃棄体回収技術に求められる要件

廃棄体の回収作業では,下記に示す機能を満たすこと が必須である.

Preliminary study on the method of dissolving/removing the buffer with salt solution by Kengo Iwasa, Takashi Ishii ([email protected]), Jiho Jan, Mitsunobu Okihara, Akira Saitou, Keizou Suzuki

*1 清水建設株式会社 土木事業本部 Civil Engineering Div., Shimizu Corporation

〒105-8007 東京都港区芝浦1-2-3 シーバンスS

*2 清水建設株式会社 技術研究所

Institute of Technology, Shimizu Corporation

〒135-8530 東京都江東区越中島三丁目4-17

*3 北海道大学 環境循環システム専攻 環境地質学研究室 Laboratory of Environmental Geology, Hokkaido University

〒060-8628 札幌市北区北13条西8丁目 (Received 26 December 2008; accepted 2 November 2009)

① 廃棄体を回収する際に廃棄体の性能が劣化す るような損傷を与えないこと.

② 周囲に埋設されている他の廃棄体に悪影響を 与えないこと.

③ 周囲に埋設されている他の廃棄体のための人 工バリア(緩衝材)に悪影響を与えないこと.

④ 回収作業に従事する作業員の被ばくが許容値 を超えないこと.

(2)

原子力バックエンド研究 December 2009

Table 1 Situation on retrievability of foreign countries (modified after Grupa et al.2000)[1]

米国 フランス ベルギー スイス ドイツ スウェーデン フィンランド 廃 棄 体 の タ イ

SF ILW/HLW/SF HLW/SF HLW/SF LLW/ILW/

HLW/SF

SF SF 主たる母岩 凝灰岩 粘 土/結 晶 質

粘土 粘土/結晶質 岩

岩塩 結晶質岩 結晶質岩 処 分 概 念 に 固

有 の 回 収 可 能 性

あり あり あり あり なし あり あり

回 収 可 能 期 間 の長さ

操 業 期 間のみ

未定 未定 操 業 期 間 後 も継続

適用外 操業期間後も 継続

操 業 期 間 後 も 継続

回 収 可 能 性 に 関する規制/義 務

あり あり 未定 未定 なし 未定 あり

回 収 可 能 性 に 関 す る 研 究 開 発

あり あり あり あり なし あり あり

注)SF:使用済み燃料, ILW:中レベル放射性廃棄物, HLW:高レベル放射性廃棄物

•スラリーをその場で固液 分離して塩水を再利用で きること

•除去した緩衝材を減容・

固形化して搬出できるこ と

•遠隔操作しやすいこと

•塩水の濃度は海水の濃度 を著しく超えないこと

•効率的に緩衝材を分解で きること

•廃棄体が倒れないように 保持しながら緩衝材を除 去できること

•装置のトラブル時には作 業員が短時間作業できる こと

•廃棄体の定置作業に用い る装置と同様の機能で回 収できること

Fig. 1 Schematic process flow of retrieving radioactive waste and issues for operation

高レベル放射性廃棄物の処分事業では,廃棄体を地下深 部の所定の位置に搬送して定置し,埋設した後に施設を閉 鎖することを行う.廃棄体の受入れ検査,オーバパックの 装着等のパッケージ作業,搬送作業,定置作業,緩衝材の 設置等の埋設作業,坑道の埋め戻し等の閉鎖作業が主たる 作業であり,これらの作業を日常的に多頻度に実施する.

これらの日常的作業とは違って,実際に廃棄体を回収する 作業が実施される頻度は非常に稀であり,場合によっては 全く行われない可能性もある.しかし,対応可能な技術と それに必要な設備や装置は施設に装備されていなければ ならない.このような位置づけとなる廃棄体回収技術は以 下に示すような特徴を有していることが望ましい.

a.廃棄体の回収作業に使用する設備や機器のうち,専 用機器として装備すべきものは必要最小限とし,日 常的に施設内で使用する設備や装置を使って廃棄体 を回収できることが望ましい.

b.作業は廃棄体の直近での作業となるため,遠隔作業 により回収作業の従事者の被ばく量を極力小さくで きることが望ましい.

c.廃棄体の回収に伴って発生する廃棄物の量を極力小 さくできることが望ましい.

(2) 緩衝材除去方法の着目点と候補となる技術

廃棄体の回収を実施する際に,廃棄体の表面に密着した 緩衝材を除去でき,かつ,定置作業時と同程度の隙間が存

(3)

在しているならば,定置装置に類似した装置により定置作 業とは逆動線での回収が可能と考えられる[5].しかし,

廃棄体周りの緩衝材は地下水の浸潤に伴って膨潤が進展 していくため,緩衝材が廃棄体に密着している状態となっ ていることが想定されるので,廃棄体と緩衝材との密着部 を除去する作業は必要であり,この作業には専用の装置を 工夫する必要があると考えた.すなわち,回収技術の検討 を進めるうえでは,廃棄体回収に先立つ緩衝材除去技術の 成立性や適用性を検討していくことが重要であると考え られる.

緩衝材を除去する手段としては,機械的に掘削する方法,

緩衝材を強制的に乾燥させて体積収縮させることで廃棄 体と緩衝材の密着部をもろくさせる方法,高圧水で切断す る方法,流体で分解させてほぐす方法,等が考えられる.

作業は廃棄体の直近での作業となるため,遠隔作業しやす い方法であることが望ましい.機械的に掘削する方法では 遠隔操作を適用しにくい複雑な機械操作が必要となるこ と,粉じんが発生しやすいこと,廃棄体を損傷する危険性 が大きいことがデメリットであり,緩衝材を強制的に乾燥 させて体積収縮させる方法では廃棄体と緩衝材の密着部 をはがれやすくできるメリットはあるが,その後の緩衝材 撤去作業で機械的に掘削する必要があり,同様のデメリッ トがある.高圧水で切断する方法は緩衝材を小割りする効 果はあるが,ベントナイト泥水が多量に発生して泥濘化し,

その後の小割りした材料を取り除く作業が効率的にでき ないことが懸念される.

ベントナイトスラリーを用いた隙間や岩盤亀裂への注 入技術に関する既往研究[10, 11]によれば,水に比べて塩 水あるいはエタノール水はベントナイト系の材料の粘着 性を低下させてスラリー化しやすくする効果があること が判っていることから,流体で分解させてほぐす方法とし ては,塩水あるいはエタノール水によるスラリー化が可能 であると考えた.塩水あるいはエタノール水を圧縮固化さ れている緩衝材に接触させることでスラリー化できるな らば,分解後の材料を取り除く作業も遠隔操作しやすい.

以上のことを考慮し,筆者らは,まず緩衝材除去技術に ついて実用化できそうな方法を提示できることを目指し,

その一例として,流体で分解させてほぐす方法の適用可能 性の検討を進めていくこととした.

(3) 塩水を利用した緩衝材の除去方法のメリットと課題 塩水を利用した緩衝材の除去方法を実際の廃棄体回収 に適用した場合には,Fig. 1に示すようなプロセスと留意 点が想定される.流体に浸漬する方法あるいは低圧で噴射 する方法により緩衝材をスラリー化する作業は除去対象 部位から離れた位置から注水あるいは噴射する作業とな るため,精密な位置制御を伴う作業とはならないため,遠 隔操作しやすいと考えられる.また,分解した緩衝材がス ラリー状になった後はバキューム吸引あるいは水中ポン プによる流体搬送によって排出できるため,吸引口あるい

は水中ポンプの位置決めを精密に操作することは求めら れないので,このプロセスの制御操作も,固体状の材料を 機械的に除去する方法に比べて遠隔操作しやすいと考え

られる.Fig. 1には遮へい機能をもたせたカバーを処分孔

の上に設置して,廃棄体が倒れないように機械的に保持し ながら緩衝材を除去する方法を概念的に図示した.同図に 示すような廃棄体の転倒防止対策は必ず必要となる対策 ではなく,注水あるいは噴射の量・圧力・位置・方向等を コントロールすることで廃棄体の転倒を抑止できる可能 性がある.一方,スラリー状態で除去したものが大量に発 生することはデメリットとなるので,スラリーをその場で 固液分離して塩水を再利用できることが求められる.

前述のように,廃棄体の表面に密着した緩衝材を除去で きるならば,廃棄体の搬出は廃棄体の定置作業に用いる装 置と同様の機能で対応できると考えられる.したがって,

この技術に関する実用化への可能性を確認するためには,

流体により緩衝材を分解・スラリー化するプロセスにおけ る塩水の濃度の目安と分解の効率を確認できること,およ びベントナイトスラリーを固液分離し塩水を再利用する プロセスの実用性を確認することが肝要である.塩水によ り緩衝材を分解・スラリー化するプロセスについては,ベ ントナイトスラリーを用いた隙間や岩盤亀裂への注入技 術に関する既往研究[10, 11]において,塩水あるいはエタ ノール水が水に比べてベントナイトのスラリー化に有効 であるという知見があることから,まずはこの2種類の流 体に着目した.予備的な実験の結果,塩水(NaCl水溶液) に浸漬すると短時間で分解するが,エタノール水に浸漬し た場合には短時間では分解しないことが判ったので,スラ リー化するための流体としては塩水を第一候補とするこ とにした.また,ベントナイトスラリーから塩水とベント ナイトを分離するプロセスは,建設分野の地中連続壁工事 等で用いられるベントナイト安定液のリユースシステム の中で既に実用化された機構と類似しており,適用性が高 いと考えられる.

回収対象となる廃棄体に塩水を使用した場合には,隣接 する廃棄体周囲の緩衝材の性能を劣化させることが懸念 されるが,小峯ら[12]は処分の安全性の観点から海水成分 の与える影響を実験的に検討し,海水環境下にあっても緩 衝材の自己シール性の低下は小さくできることを示して いることから,海水に相当する濃度以下であれば懸念材料 とはならない.なお,使用した塩水の濃度が希釈されずに,

そのまま隣接する廃棄体周囲の緩衝材に接触することは ないと考えられるので,厳密な上限濃度を設定する必要は ないが,原則的には海水の濃度を著しく超えない塩水を使 うことが望ましい.

(4) 本研究の目的

筆者らは,塩水を接触させて緩衝材を分解してスラリー 化する方法が,実用化しやすい緩衝材除去技術として第一 候補であると考え,この技術の実用化に向けた可能性を調

(4)

原子力バックエンド研究 December 2009

電磁はかり 吊下げワイヤー

ビーカー 供試体

メッシュ網金 沈殿物

150mm

200mm

A picture Schematic

べることを研究目的とした.塩水の成分としてはまずは代 表的なNaCl水溶液を使うこととした.塩水による緩衝材 除去技術は,廃棄体を損傷させるリスクが小さいこと,除 去作業で粉じんが出にくいこと,流動性を有するため除去 緩衝材の搬出がしやすいこと,スラリー化して取り出した 後で固液分離が可能で塩水を再利用できることから大量 のスラリーの発生は生じないこと,というメリットを期待 できるため,閉鎖空間での操作や遠隔操作における装置化 やシステム構築の観点でも,優位性を有する技術であると 考えられる.

本研究では,塩水を利用した緩衝材除去方法の実用化の 可能性を探るために,複数の要素実験を行なうとともに,

実験で示された現象についてメカニズムに関する考察を 試みた.要素実験では特に下記の観点で実用化への可能性 を確認することを目標とした.

Fig. 2 Test apparatus

50mm

50mm

70%配合 100%配合

• どの程度の塩水濃度であれば緩衝材を分解できる のかを明らかにすること

• 塩水を使ってスラリー化した流体から固液分離し て塩水を再利用できることの確認

• 塩水で分解した緩衝材を塩水の噴射によって取り 除くことの適用可能性の確認

また,建設分野で実用化されている安定液リユースシステ ムの緩衝材分解除去方法への適用の可能性についても検

討を行なった.これらの結果について報告する. Fig. 3 Bentonite specimen

2 要素実験 2.1.2 実験条件

模擬緩衝材を浸漬させるためのNaCl水溶液は,濃度の 違いによる分解現象の相違をみるために,0, 2, 3, 4, 6 wt%

の5水準の濃度とした.NaCl水溶液に浸漬させる模擬緩 衝材の供試体は,ベントナイト(クニゲルV1) 70 wt%とケ

イ砂30 wt%の混合体とベントナイト100 wt%の2水準と

し,Table 2に示すように,それぞれ直径50 mm高さ50

mm(体積100 mL)の大きさで乾燥密度1.6 Mg/m3にプレス 成型したものを用いた.Table 2に実験の要因と水準なら びに供試体条件を,Fig. 3に供試体の成型後の写真を示す.

水溶液は水道水に所定の塩化ナトリウムを加えて作成し 要素実験では,この技術の中核である分解プロセスと分

解スラリーの固液分離プロセスに関するメカニズムの把 握に資するために,「模擬緩衝材の塩水浸漬分解実験」と

「ベントナイトスラリー沈殿実験」を行なうとともに,緩 衝材を分解・除去するための具体的な方法についての見通 しを得るためにビーカースケールの模擬緩衝材を用いた 室内における「塩水噴射実験」を行なった.

2.1 模擬緩衝材の塩水浸漬分解実験

模擬緩衝材の塩水浸漬分解実験では,塩水(NaCl水溶液) 中に緩衝材を模擬したベントナイト供試体を浸漬し,時間 経過に伴う供試体の分解現象や塩分濃度に応じた分解速 度の違いを把握することを目的とした[7].

Table 2 Factor and level on test of dissolving bentonite 溶液条件 NaCl濃度 0,2,3,4,6 wt%

ベントナイト配 合率

70 wt%

(ケイ砂 30wt%)

100 wt%

含水比 12 % 17 % 間隙率 41.6 % 42.4 % 体積含水率 19.2 % 27.2 % 気相率 22.4 % 15.2 % 乾燥密度 1.6 Mg/m3

供試体 条件

寸法 直径50mm,高さ50mm

2.1.1 実験方法

Fig. 2に示すように,吊下げワイヤーで固定したメッシ

ュ金網に載せた模擬緩衝材の供試体を,所定濃度を有する 1000 mLのNaCl水溶液(水道水にNaClを混合した溶液) が入ったビーカー内に浸漬し,時間の経過に伴って供試体 表面部から順に粘着性を失って沈殿しビーカー底に溜ま った分解供試体の重量を,ビーカー下に設置した電磁はか りにより経時的に測定した.

(5)

1 時間 0 時間

24 時間

水道水 NaCl 6% 溶液

Fig. 4 Appearance of dissolving bentonite specimen

たので,濃度 0 wt%の場合には水道水そのものが使われて いる.当該水道水の平成17年から19年の3年間における 東京都水道局水質データによれば,ナトリウムおよびその

化合物 は11~18 mg/L,カルシウム,マグネシウム等(硬度)

については 27.5~52.0 mg/L,塩化物イオンは 19.2~32.0 mg/Lであり,NaCl水溶液2 wt%(20,000 mg/L)に比べて希 薄な溶液である.

2.1.3 実験結果

Fig. 4 に,ベントナイト 100 wt%の供試体を,水道水

(NaCl濃度0 wt%)に浸漬した場合とNaCl水溶液(NaCl濃

度6 wt %)に浸漬した場合の時間経過(0→1→24時間)に伴

う分解状況の進展の1例を写真で示す.Fig. 4の例からも 明らかなように,水道水に浸漬した場合と NaCl 水溶液 (NaCl濃度2, 3, 4, 6 wt%)に浸漬した場合とでは,分解速度 に大きな差が見られた.Fig. 5には浸漬後の時間経過に応 じた分解供試体の累積重量を示した.Fig. 5に示すように,

NaCl濃度が高くなるほど(0→2→3→4→6 wt%)早く分解す る傾向があること,ベントナイト70 wt%配合の供試体の 方がベントナイト100 wt%配合の供試体よりも2倍程度 早く分解する傾向があることが確認された.Fig. 6は,供 試体の分解累積重量が 20 g に達するまでの時間を NaCl 濃度別に比較したものである.Fig. 6に示すように,NaCl

濃度3 wt%以上で分解速度が速くなる傾向が認められた.

なお,Fig. 5において崩壊重量がマイナスの値となって

いる部分がある.試験体は不飽和状態であり,浸漬直後か ら吸水し,吸水量に相当する空気が供試体から放出される

ため,供試体の水中体積が減少したことがその理由である.

なお,崩壊してビーカーの底に落下する材料の重量が吸水 量よりも大きい場合にはマイナスの値は観測されない.ま た,実験は2ケースづつ並行して実施したので,計測のタ イミングは同一ではない.濃度2 wt%のケースでは予想よ り長時間を要したため,計測のタイミングが飛んでいる場 合がある.

2.2 ベントナイトスラリー沈殿実験

ベントナイトスラリー沈殿実験では,塩水の分離・再利 用に関わる予備的知見として,ベントナイトスラリー(ベ ントナイト懸濁液)中のベントナイトやケイ砂が塩水と固 液分離し沈殿する現象や,塩水溶媒中の塩分濃度に応じた 沈殿速度の違いを把握することを目的とした[7].

2.2.1 実験方法

沈殿現象の違いを把握するために,プレパックドコンク リートの注入モルタルのブリーディング率(上澄み率)の 試 験 方 法 に 準 拠 し , ポ リ エ チ レ ン 袋 方 法(JSCE-F 522-1999)[13]によりブリーディング率(vol%)を測定する こととした.ポリエチレン袋方法は,直径約50 mm,長さ

500 mm以上のポリエチレン袋に高さ約200 mmまでモル

タルスラリーを充てんし,時間経過後の上澄み部ブリーデ ィング液の体積変化を観測するというものである.

この沈殿実験では,前述の塩水浸漬分解実験が終了した 後のビーカー内の供試体分解・沈降物と溶液を十分撹拌し,

撹拌後の懸濁液をポリエチレン袋に充てんしたものを使 って,その後の上澄み液の時間経過に伴う体積比変化(Fig.

7参照)を確認した.体積は,同図の右側に示すように適量 の水を入れてある 1000 mL メスシリンダー(目盛間隔 10 mL,許容誤差±5 mL)内に試料を充てんしたポリエチレン 袋を沈めてメスシリンダー内の水位上昇量から測定した.

したがって,スラリーの初期体積約400 mLに対して±5 mL 程度の誤差は生じる.この体積比(ブリーディング率) は,次式で求めることができる.

ブリーディング率(vol%)=B/V×100 (1) ここに,B:上澄み液体積 V:スラリーの初期体積 2.2.2 実験条件

Table 3に沈殿実験の要因と水準を示す.沈殿実験では,

塩水浸漬分解実験後のビーカー内分解・沈殿物を撹拌した 懸濁液を用いるため,NaCl濃度とベントナイト配合率は,

塩水浸漬分解実験と同じ水準となる.

2.2.3 実験結果

時間の経過に伴うブリーディング率の増加傾向をFig. 8 に示す.

Fig. 8より,NaCl水溶液を溶媒としたベントナイトスラ

リーは,水道水を溶媒とした場合に比べ沈殿しやすく,特

にNaCl濃度3 wt%以上で沈殿速度が大きくなること,ま

た,ベントナイト100 wt%配合よりも,ベントナイト70 wt%配合の方が早く沈殿する傾向を示していることが把

(6)

原子力バックエンド研究 December 2009

-10 0 10 20 30 40 50 60 70 80

0 1 2 3 4 5 6

時間(Hr)

崩壊 重 量( g )

4% 3%

6% 6% 4% 3%

7 溶液濃度 ベントナイト配合率 6% 4% 3% 2% 0%

○ □ 100%

● ■ × 70%

2%

2%

0%

Fig. 5 Time variation of weight of dissolved specimen

0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00

0 2 4 6 8

塩水濃度(%)

時間(Hr)

ベントナイト配合率

○ 100%

● 70%

Table 3 Factor and level on sedimentation test of bentonite particle

ベ ン ト ナ イ ト 配合率

70 wt%

(ケイ砂 30wt%)

100 wt%

懸濁液中の 固形分濃度

16 wt% 16 wt%

容積 400 mL

ポ リ エ チ レ ン 袋寸法

直径50mm,高さ200mm 懸 濁 液

条件

NaCl濃度 0, 2, 3, 4, 6 wt%

握された.なお,NaCl濃度0 wt%の条件では測定時間内 にはブリーディングは見られなかった.

Fig.9は,ベントナイト70 wt%配合のスラリーの場合に

おける塩水濃度と沈殿速度の関係を示した.濃度2 wt%の 塩水ではブリーディング率が30 vol%を超えなかったため,

沈殿速度への影響程度を相対的に比較するための参考値 としてブリーディング率が 20 vol%に達するまでの時間 を,同図ではプロットしてある.NaCl濃度3 wt%以上に おいて凝集沈殿の速度が顕著に上昇する傾向が認められ た.

Fig. 6 Relation between NaCl-concentration and time until specimen dissolved up to 20g

研究[6]においても試みられているようなFig. 10に示す手 順の塩水噴射の繰り返しによる除去方法が有効と考えら れるため,その方法の適用性を実験的に確認するために,

模擬岩に削孔した模擬処分孔にビーカースケールの模擬 緩衝材を定置した試験体を対象に,塩水噴射の繰り返しに よる除去を模擬した実験を行った.

2.3 塩水噴射実験

2.3.2 実験条件 前述した塩水浸漬分解実験により,浸漬条件下では塩水

が模擬緩衝材の分解に効果があることを確認できたため,

処分孔に定置された緩衝材を塩水で分解除去するための 具体的方法について見通しを得ることを目的として,室内 における小規模な塩水噴射実験を実施した[8].

試験体は,Fig. 11に示すように,模擬岩(来待砂岩)の中 にくり抜いた内径50 mm深さ50 mmの模擬処分孔に模擬 緩衝材の供試体を装填したものとした.供試体に塩水を噴 射するための実験装置をFig. 12に示す.塩水を模擬緩衝 材の上面に一定圧力(0.1 MPa)で1Lずつ噴射して,分解・

除去されてできた懸濁液を回収し,乾燥後に重量を測定す 2.3.1 実験方法

緩衝材を効率的に分解・除去する方法として,SKBの

(7)

B:沈殿部体積か ら上澄み液体 積を計算

メスシリンダー内 の水位上昇量から 沈殿部体積を測定 V:スラリーの初

期体積

メスシリンダー内の 水位上昇量からスラ リー体積を測定 0時間後

1時間後

5時間後

NaCl 濃度 6% 4% 2%

Fig. 7 Sedimentation appearance of bentonite particle and method of volume measuring

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 1 2 3 4 5 6 7

時間(Hr)

ブリ ー デ ィ ン グ 率 ( % )

6 % 4 %

2 % 6 %

4 %

2 % 3 % 3 % 溶液濃度 ベントナイト配合率

6% 4% 3% 2% 0%

○ □ △ ◇ 100%

● ■ ▲ ◆ × 70%

注)NaCl濃度0wt%の条件では測定時間内にはブリーディングは見られない Fig. 8 Time variation of bleeding ratio

(8)

原子力バックエンド研究 December 2009

1:00 2:00 3:00 4:00 5:00

0 1 2 3 4 5 6 7

塩水濃度(%)

時間(Hr)

ベントナイト配合率

● 70%

Fig. 9 Time in each salinity until bleeding ratio reached up to 20 vol % (in case of sullury made from bentonite 70wt% & silika sand 30wt% )

分解していないベントナイト表面部と塩水との接触

塩水の接触・浸入したベントナイト表面部の分解により 粘性の小さいスラリーを生成

粘性が小さく軟らかくなったベントナイト表面部の スラリー分を洗浄・回収

緩衝材の 分解・除去残量は

ゼロか?

yes

no

end end 緩衝材の除去 緩衝材の除去

Fig. 10 Overview flowchart for removing buffer in SKB’s study

ることによって,1回の噴射で分解・除去できた重量を測 定した.塩水の噴射は,10分の間隔をおいて,最大10回 まで繰り返した.

Fig. 13に,塩水噴射による分解・除去状況の一例(NaCl

濃度4 wt%,噴射流量速度70 mL/s)の写真を示す.事前の

予備的噴射実験により,供試体の表面を塩水に10分程度

50mm 50mm 80mm

80mm

50mm 50mm

50mm 50mm 80mm

80mm

50mm 50mm

50mm 50mm

Simulated buffer (bentonite

specimen) Simulated disposal pit

Fig. 11 Simulated disposal pit and buffer

接触させて,供試体表面付近への塩水の浸入を促進してお くことが効果的であることが把握できていたため,Fig.

13に示すように,供試体の上部に高さ10 mm程度の樹脂 製型枠を設けて,貯液スペースとして利用した.

模擬緩衝材の供試体には,直径50 mm高さ50 mmにプ レス成型したTable 2に示すベントナイト70 wt%とケイ砂 30 wt%の混合体(乾燥密度1.6 Mg/m3)を用いた.噴射する 塩水(NaCl水溶液)のNaCl濃度は,浸漬分解実験で顕著な 分解効果が見られた4 wt%とした.

実際の廃棄体回収作業においては前述Fig. 1に示すよう なプロセスが想定される.塩水の所要の使用量や噴射圧力 (あるいは噴射流量速度)あるいはノズル口径等の条件を 決めるためには,実物大の実験による検討が必要であり,

小規模な噴射実験では最適条件を明らかにすることは難 しい.今回実施したビーカースケールの模擬緩衝材を使っ た小規模な塩水噴射実験では,塩水の浸漬によって粘着性 が低下した緩衝材を塩水の噴射によって削剥して除去で きることの確認を目的に行った.また,塩水は短時間で固 液分離して再利用できることが判ったので,緩衝材の量に 対してどの程度の塩水の累計使用量が必要となるかとい う課題は現時点で明らかにする必要はないと考え, 1 回 の噴射での塩水の使用量は供試体体積の10倍に相当する

1000 mLの1条件のみとした.口径4 mmのナイロンチュ

ーブのノズルを用いて事前に噴射圧力を0.05 MPaから0.5 MPa までの範囲で噴射を試行した結果から,噴射圧力が

0.1 MPaであれば浸漬によって分解あるいは軟質化した材

料の洗浄・除去には十分であることが判ったので,噴射圧 力については0.1 MPaの1条件のみとした.なお,噴射に

Table 4 Condition of test for flushing bentonite specimen ケース

No.

噴射圧力 P(MPa)

噴射溶液量 Q(L×n回)

噴射間隔

(分)

NaCl濃度

(wt %)

噴射用 チューブ径

平均流量速度

(mL/sec)

1 0.1 1L×10回 10 4 4mm 70

2 0.1 1L×10回 0 4 2mm 10

3 0.1 1L×10回 10 0 4mm 70

(9)

コンプレッサ

試験体

注入タンク

加圧

模擬処分孔+模擬供試体 開閉バルブ

注入タンク

4%NaCl 水 レギュレータ

加圧

模擬処分孔+模擬供試体 開閉バルブ

注入タンク

4%NaCl 水 レギュレータ

Fig. 12 Schematic of test apparatus for flushing bentonite specimen

①上面に塩水を貯水 ②10 分後表面が分解 ③塩水1ℓを噴射して洗浄 ④分解液

樹脂製型枠

Fig. 13 Procedure of flushing test

ケース1 ケース2 ケース3

4wt%塩水を70ml/sの流 速で噴射 4wt%塩水を10ml/sの流 水道水を流速70ml/sで噴射

速で噴射

Fig. 14 Appearance of removed bentonite specimen (after 10th flushing)

よる削剥効果を期待せずに噴射流量速度を絞って噴射継 続時間を長くすることで塩水の浸入が促進されて除去効 率が増大できる可能性があると考えたので,ノズル口径 1/2に相当する口径2 mmのノズルについても実験した.

この場合には塩水の噴射前に毎回10分間塩水を浸漬させ るプロセスは行わないこととした.口径4 mmのノズルで 噴射圧力が 0.1 MPa の場合の噴射流量速度を測定した結 果は70 mL/secであり,口径2 mmのノズルでは10 mL/sec

であった(Table 4).また,比較のために,NaClを添加しな い水道水の噴射実験も実施した.実験で着目した要因とそ の水準をTable 4に示す.

2.3.3 実験結果

Fig. 14に,10回の噴射終了後における各ケースの供試

体の分解・除去状況写真を示す.塩水(NaCl濃度 4 wt%)

を70 mL/sで噴射した場合(ケース1)の除去効果は顕著で

あり,事前に噴射を試行した結果から設定した噴射圧力

(10)

原子力バックエンド研究 December 2009

0 20 40 60 80 100 120 140 160

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

施工回数(回)&累積噴射量(ℓ)

累積 回収 量( g)

4wt%塩水を 70ml/s 噴射 の場合:除去回収率 96%

淡水を 70ml/s 噴射の場合:

除去回収率 1%

4wt%塩水を 10ml/s 噴射の場 合:除去回収率 12%

Fig. 15 Weight of bentonite removed by flushing

0.1 MPaの条件で効率良く除去できることを確認できた.

Fig. 15は,塩水噴射を10回繰り返したときの各段階に

おける供試体の分解・除去重量の累積値を示したものであ

る.同じNaCl濃度4 wt%の塩水でもノズル口径4 mm(噴

射流量速度70 mL/s,事前浸漬10分間)の条件(ケース1) では,ノズル口径2 mm(噴射流量速度10 mL/s,事前浸漬 なし)の条件(ケース2)に比べ同じ時間で8倍程度大きな分 解・除去量となることが示された.後者の実験条件では、

噴射継続時間を長くすることで塩水の浸漬を促進するこ とも効果があると期待したが、結果は事前浸漬10分間を 行う前者の方法に比べて効果的ではなく,この条件では塩 水の浸透による分解促進効果や塩水の浸透によって軟質 化した領域を除去する能力が不足したようである.

一方,ノズル口径が4 mmの場合には1回あたりの噴射

量1000 mLの前半段階で除去が進み,後半で除去できる

量は微量であった.実際の緩衝材の除去のための噴射条件 を最適にするためには,緩衝材表面にできるだけ長時間の 塩水の接触を継続すること,浸漬によって分解あるいは軟 質化した表面部の緩衝材を効率よく除去する条件として 噴射圧力やノズル口径の両者の組み合わせで決まる噴射 流量速度の条件に着目すべきであること,が判った.ただ し,緩衝材の表面から浸入した塩水によって軟質化が進展 する領域は塩水の接触継続時間の条件によって異なるで あろうから,実際の適用に際しては塩水接触条件との組み 合わせにも着目して,総合的な検討をする必要がある.塩 水接触後の噴射継続時間については除去状況を遠隔観察 しながら人間が判断することが現実的であると考えられ る.

また,水道水による噴射はほとんど効果がないことが確

認された.

これらの結果から,NaCl濃度4wt%の塩水を使った場合,

比較的低圧(0.1MPa)の塩水噴射でも必要な噴射流量速度 を有していれば緩衝材の分解・除去に効果があることが示 唆された.

3 試験結果の考察

ここでは,塩水浸漬分解実験とベントナイトスラリー 沈殿実験の結果について考察する.

3.1 塩水による模擬緩衝材の分解現象

前述した塩水浸漬分解実験におけるNaCl水溶液に浸漬 した模擬緩衝材の分解現象や分解速度の違いは,供試体に 浸入した溶液のイオン濃度とモンモリロナイト層間距離 の関係に起因するメカニズムによるものと考えられる.こ のメカニズムに関する既往知見を整理したうえで,塩水に よる分解現象について考察を試みる.

3.1.1 モンモリロナイトの結晶構造と層間距離の変化 (1) 結晶構造の特徴

ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトの層状 結晶構造はGrim(1968) [14]が記述したように,Si-O四面体

シートとAl-O,Mg-O等の八面体シートで構成される層状

の結晶構造の各層の結晶層に陽電荷が不足しており,層間 に陽イオンが介在することで,層どうしの電気的引力によ って互いに力学的に結合力(以降では電気的結合力と称 す)をもたらしているとされている.

(2) 層間距離の拡大特性

ベントナイトは水を吸収して膨潤する.これについて

(11)

(3) 間隙水のイオン濃度の層間距離への影響

0 6

4

2 20

10

8 12 14 16 18

0 0.5 1.0 1.5

0 6

4

2 20

10

8 12 14 16 18

0 0.5 1.0 1.5

水溶液のイオン濃度がゼロの場合は液固 比に応じて水分子が層間に取り込まれる.

・液固比2のとき層間距離は5nm程度

・液固比5のとき層間距離は9nm程度

・液固比10のとき層間距離は12nm程度

水溶液のイオン濃度が0.2~0.3M の場合に層間距離が2nmおよび 5nmのモンモリロナイトが共存する.

イオン濃度が0.3Mより高い場合層間距離は2nm以下 (nm)

NaCl水溶液モル濃度(M)

液固比がより大きくなり層間距離が 15nm以上に拡大するすると,層間 に取り込まれない水分子が多くなり,

層状結晶相互の電気的結合力は失 われて,水中を浮遊するようになる.

型モンモリロナイトの結晶層間距離

Na型モンモリロナイトの結晶層間距離 Na

イオン濃度が0.3Mより高い場 合に水分子は層間にほとんど 取り込まれないので,液固比 が小さくても層状結晶相互の 電気的結合力は失われる.

イオン濃度が0.3Mより高い場 合に水分子は層間にほとんど 取り込まれないので,液固比 が小さくても層状結晶相互の 電気的結合力は失われる.

ベントナイト系材料において,モンモリロナイトの層 間距離は,ベントナイトの間隙水(モンモリロナイト粒子 の周囲に存在する溶液)のイオン濃度によって異なると考 えられる.モンモリロナイト粒子の周囲に存在する間隙水 のイオン濃度よりも層状結晶の層間に存在する陽イオン のイオン濃度が大きい場合には水分子はさらに層間に取 り込まれることになる.イオン濃度の違いによる層間距離 への影響については,Low(1992)[17]が,NaCl水溶液中に おけるNa型モンモリロナイトの層間距離の実測例に基づ いて, NaCl水溶液のモル濃度(mol/L)が0.2(mol/L)未満の 濃度領域においては,濃度が小さくなるほど層間は大きく なること,0.2~0.3(mol/L)の濃度領域においては層間距離 が2 nmの状態と5 nm程度の状態の両者が共存しているこ と, 0.3(mol/L)以上の濃度条件であれば層間距離は 2 nm より大きくはならないことを示している.すなわち,濃度

領域0.3(mol/L)付近(濃度2 wt%程度)は,層間距離が急激

に変化する濃度の境界領域(層間距離が大きいものと小さ いものが共存する濃度領域)であると考えられる.

(4) 間隙水のイオン濃度がベントナイト系材料の粘着性 に与える影響

上述のFukushima(1984)およびLow(1992)の研究を参考 にして,Fig. 16にはNaCl水溶液中におけるモンモリロナ イトの層間距離とイオン濃度がゼロに近い場合における 層間距離の大きさの変化を概念的に示した.この図に示す ように,イオン濃度がゼロに近い場合にNa型モンモリロ ナイトの層間距離が15 nmを超えるとモンモリロナイト の層状結晶相互の電気的結合力は失われるが,逆に考える ならば,モンモリロナイトの層状結晶の層間距離が小さい ときにはモンモリロナイトの層状結晶相互の電気的結合 力は大きい.ベントナイトが吸水して粘着性の大きいゲル 状になった状態はそのようなときである.ただし,このよ うな結合力はモンモリロナイトの層状結晶の周囲にある 間隙水のイオン濃度が Low(1992)の述べるように所定の 濃度以下の場合に限定される.

Fig. 16 Relation between the basal spacing of

Na-montmorillonite and the NaCl concentration of the solution with which it is in equilibrium (modified after Low et al.1992 [17] and Fukushima 1984[16])

は,例えばSladeら(1991)[15]が言うように,モンモリロナ イトの結晶層間と周辺水溶液との陽イオン濃度勾配によ り浸透圧が発生し,層間に極性を持つ水分子が次々に浸入 し陽イオンと水和して層間が広がるためと考えられてい る.すなわち,モンモリロナイトの結晶層を取り囲んでい る周辺水溶液の陽イオン濃度が高くなると,モンモリロナ イトの結晶層間へ水が取り込まれる力となる浸透圧が減 少するため,モンモリロナイトの結晶層間の距離は小さく なり,逆に周辺水溶液の陽イオン濃度が低くなると結晶層

間の距離は大きくなる. モンモリロナイトの層状結晶の周囲の間隙水のイオン 濃度が高い場合にはモンモリロナイトの層状結晶相互の 電気的結合力が維持された状態での層間距離の拡大がで きないので,水分子は層状結晶の層間に取り込まれず,結 晶粒子の外側において水分子が自由に移動するようにな り,モンモリロナイトの層状結晶相互の電気的結合力は失 われる.その結果,同じ液固比条件であっても,イオン濃 度が小さい場合にはベントナイトゲルの粘着性は高く,イ オン濃度が大きい場合にはベントナイトゲルとしての粘 着性は発揮しなくなる.ベントナイトを構成する粒子相互 の一体性は,ケイ砂やベントナイト中の随伴鉱物粒子の周 りを取り囲んでいるモンモリロナイトゲル中におけるモ ンモリロナイトの層状結晶相互の電気的結合力が粘着性 (拘束力)として機能しているためであると理解すること 周辺水溶液のイオン濃度がゼロの場合には,液固比(モ

ンモリロナイトの固相の重量に対する水の重量の比)によ って層間距離は決まる.Fukushima(1984) [16]は,Na型モ ンモリロナイトに水を加えていった場合の液固比と層間 距離の関係を測定し,液固比が大きくなるに従って Na型 モンモリロナイトは多量の水を層間に取り込んで層間が 数倍以上に広がること,ならびにNa型モンモリロナイト の層間距離が150Å (15 nm)を超えると,水中を自由に浮 遊する状態になると述べている.このことから,層間距離

が15 nmを超えると,増加された水分子は層状結晶の間に

取り込まれず,自由に移動できる水分子が多くなるので,

これ以上の層間距離になるとモンモリロナイトの層状結 晶相互の電気的結合力は失われるものと考えられる.

(12)

原子力バックエンド研究 December 2009 随伴鉱物あるい

はケイ砂

空気相の間隙 モンモリロナイト

(層間に3層の水 分子層)

モンモリロナイト

(層間に3層以下 の水分子層)

Fig. 17 Schematic of microstructure of specimen before immersion in solution

随伴鉱物あるい はケイ砂

モンモリロナイト

(淡水が浸入した 境界面付近は吸水 膨張(層間拡大)

する)

供試体表面部のミクロ構造 Fig. 18 Microstructure of bentonite specimen after water supply

ができるが,モンモリロナイトの層状結晶の周囲の間隙水

濃度が0.3(mol/L)付近(濃度2 wt%程度)を超える濃度に変

化した場合に,ベントナイト系材料は一体性を保持する上 での粘着性を喪失すると考えられる.

3.1.2 塩水による浸漬分解メカニズム (1) 土粒子の浸漬分解の原因

土質材料を水に浸漬し,かつ,土質材料の外表面が土粒 子の崩壊を自由に許す自由面であるとすれば,土粒子は 徐々に粘着性を失って,やがては分解する.すなわち,土 粒子によって拘束されていない自由水が土粒子を取り囲 み,土粒子相互の粘着力を喪失させ,土粒子相互は分離す る.このときの分解速度は主として浸漬領域の透水係数 (すなわち浸漬水の浸入速度)で決まると考えられる.

(2) 浸漬前の供試体条件

今回用いたプレス成型による供試体は,Table 2に示し

た通り41.6 %あるいは42.4 %の間隙率を有しているとと

もに不飽和供試体であり,その気相率(空気容積の全容積 に対する体積百分率)は,ベントナイト70 wt%配合の場合

22.4%,ベントナイト100 wt%配合の場合15.2 %である

から,飽和状態の場合に比べて塩水が浸入する領域が多く 存在する.

Davineau et al.(2006)[18]は,風乾したベントナイトを,

直径30 mm,高さ4 mm,乾燥密度1.7 Mg/m3に圧縮成型 し,中性子線回折で測定し相対湿度と層間距離の関係を求 めており,相対湿度 98 %の雰囲気において,Na モンモ リロナイト層間距離は 18.2 Å(1.8 nm)であったとしてい る.当実験で用いた供試体の乾燥密度は1.6 Mg/m3である ため,彼らの測定値と同一とは限らないが,一方,佐藤

(2001)[19]によれば,周囲の相対湿度が100%に近い場合に

Naモンモリロナイトの層間距離は1.8 nm程度であり,層 間には水分子層が3層含む状態になっている.当実験で用 いた供試体は不飽和供試体であるものの飽和度(間隙体積 中に占める水の体積比)の値はベントナイト 70 wt%配合 の場合46 %,ベントナイト100 wt%配合の場合64 %で あったことから間隙中の相対湿度は 100 %相当であった と考えられる.したがって,供試体中のNaモンモリロナイ ト層間距離は,1.8 nm程度であり,層間の広がりが非常に 小さい状態であったと推定される.今回用いた不飽和供試 体の間隙構造は,概念としてFig. 17のようにケイ砂およ びベントナイト中の随伴鉱物の周囲に層間距離が 1.8 nm 程度に層状に重なっているモンモリロナイトの粒子が分 布している状態であると想定される.

(3) 淡水(水道水)に浸漬した場合の現象

不飽和状態の圧縮ベントナイト供試体を淡水(水道水) に浸漬した場合には,まず供試体の表面部分が水で浸潤す る.間隙に浸入した水はモンモリナイト層間に取り込まれ 層間距離が拡大(膨潤)するため,粒子構造の粘着性低下に 寄与する自由水は極めて限定される.例えば,ベントナイ

トには約50 %のモンモリロナイトが含まれるとすると,

ベントナイト配合率が70 wt%で乾燥密度が1.6 Mg/m3の 緩衝材の単位体積1 mL中に占めるモンモリロナイトの量 はおよそ0.56 g(1.6 g/mL×70 %×50 %)であり,間隙体積

は0.4 mL程度であるから,吸水した結果,仮に緩衝材中

の間隙が水で満たされたと仮定した場合の液固比は1よ り小さい.緩衝材の表面部では吸水膨張が生じるので液固 比はそれよりは大きくなるであろうが,瞬時には体積膨張 できないので,液固比が10を超えることは考えにくい.

このような状態では浸漬後短時間でモンモリロナイトの 層状結晶の層間距離が15 nmを超えて,層状結晶相互の結 合力が喪失することは生じにくい.実際に,Fig. 4に示す 水道水に浸漬した場合の観測例では,1時間経過した時点 において表面から遊離したベントナイト粒子が水中に拡 散する現象はほとんど生じなかった.

上記のような挙動であると考えると,モンモリロナイト の層間距離が2 nm程度に小さい状態で空気層が供試体体 積の15.2 %もしくは22.4 %を占めているFig. 17に示した 間隙の構造から,モンモリロナイトの層間距離が若干拡大

(13)

供試体表面部へのNaCl水溶液の浸入

浸入したNaCl水溶液はモンモリロナイトの層間に取 り込まれず、モンモリロナイトは膨潤しない

NaCl水溶液浸入領域に てベントナイト粒子を自 由水が取囲み,固結性 低下による分解が生じる モンモリロナイトの膨潤

が抑制されるので表面 浸潤部の透水性は小さ くならない

供試体表面部からさらに 深部へNaCl水溶液の浸 入が生じる

不飽和状態の模擬緩衝材をNaCl水溶液中へ浸漬

淡水(水道水)に比べ供試体の分解が速く進む 供試体表面部への淡水の浸入

浸入した水がモンモリロナイトの層間に取り込まれ膨潤

材料の表面部から深部 への淡水の浸入は妨げ られる

モンモリロナイトの膨潤に よって間隙は塞がり 材料表面部の透水性はさ らに小さくなる

粒子構造の固結性低下に 寄与する自由水の増加は 少ない

不飽和状態の模擬緩衝材を淡水に浸漬

材料の分解に長時間を要する

Fig. 21 Cause-and-effect sequence of events in bentonite specimen surface layer after NaCl solution (concentrations of 3wt% or more) supply

Fig. 19 Cause-and-effect sequence of events in bentonite specimen surface layer after water supply

随伴鉱物あるい はケイ砂 間隙内に浸入した

塩水溶液は深部ま で浸入(自由水溶 液として挙動)

モンモリロナイト

(層間の広がりは 小さい)

供試体表面部のミクロ構造

結果,水道水に浸漬した場合には,供試体の分解速度が極 めて遅くなったものと推察される.以上のように水道水に 浸漬した場合に関して推察したメカニズムをブロックダ イアグラムで因果関係として示したものがFig.19である.

(4) NaCl溶液に浸漬した場合の現象

次に不飽和状態の圧縮ベントナイト系供試体をNaCl水溶 液に浸漬した状態を考える.NaCl水溶液の濃度が3 wt%

(0.5 mol/L)以上の場合には,Fig. 16に示した概念図に示す ように,モンモリロナイト層間距離は2 nm以上には広が らないので浸漬前のモンモリロナイト層間距離と大きく 変わらない.すなわち,Fig. 20に示すような間隙構造にな っていると考えられる.間隙内に浸入したNaCl水溶液は モンモリロナイトの層間にほとんど取り込まれないため,

層状結晶粒子に拘束されない自由水として挙動し,粒子相 互の分解に寄与する.また,モンモリロナイトの膨潤は抑 制されるので,材料の表面部に難透水性のゾーンは形成さ れず,NaCl 水溶液はより深部の間隙内に浸入する.表面 部から順に分解・沈降することにより,継続的に供試体の 分解が進行することとなる.このようなメカニズムにより,

NaCl溶液(塩水)に浸漬したときの分解速度が水道水(淡水) に比べ顕著に早くなったものと考えられる.以上のように NaCl 水溶液に浸漬した場合に関して推察したメカニズム をブロックダイアグラムで因果関係として示したものが

Fig. 21である.なお,上述のようなメカニズムの推定は実

験結果を説明できる仮説として提示したものであり,今後 の実験的な確認が必要であると考えている.例えば,上記 のようなメカニズムが正しいならば,初期飽和度が100 % に近い緩衝材を塩水に浸漬した場合には,効率よく分解す ることはできないと予想されるので,比較実験で確認する ことが望まれる.今後の課題としたい.

Fig. 20 Schematic of microstructure of bentonite specimen after NaCl solution (concentrations of 3wt% or more) supply

しているものの均質なゲル状を呈している膨潤モンモリ ロナイトにより間隙が埋まるようなFig. 18に示す構造へ 変化し,その結果,層状結晶としての一体性と層状結晶相 互の結合力の両方が発揮されているとともに,極めて難透 水性のゾーンが形成されると考えられる.このようにゲル 化した膨潤モンモリロナイトで間隙が埋まる状況は,小 峯・緒方(2002)[20]が論文中で示した写真のように走査型 電子顕微鏡による膨潤挙動観察で確認されている.供試体 の表面部には,ベントナイトゲルに満たされて難透水性を 有する皮膜のようなゾーンが形成され,その皮膜のような ゾーンのミクロな構造はFig. 18に示すように均質なゲル 状の膨潤モンモリロナイトがケイ砂やベントナイト随伴 鉱物の周囲を取り囲んでいる構造となっているであろう.

この皮膜のようなゾーンは難透水性を有するので供試体

表面部より深部への水の浸入を阻害することとなる.この 一方,NaCl水溶液の濃度が2 wt%の場合は,Fig. 16の

(14)

原子力バックエンド研究 December 2009 随伴鉱物あるい

はケイ砂

間隙内に浸入した 自由水 溶液(濃度 3%以上の場合に比 べ間隙が狭い)

層間の小さいモン モリロナイト

(層間2nm程度)

層間の大きいモン モリロナイト

(層間5nm以上)

供試体表面部のミクロ構造

3.2 NaCl 水溶液中のベントナイトスラリー沈殿現象 モンモリロナイト粒子は水分子のブラウン運動により 運動しているため,粒子同士はランダムに接近したり離れ たりしている.モンモリロナイト粒子の表面は負電荷を生 じているので,モンモリロナイト粒子の外側を取り巻くよ うに陽イオンが広がりをもって分布している.一方,モン モリロナイト表面と同符号の陰イオンは,表面から離れる にしたがって次第に増え,両者の濃度はある距離のところ で等しくなる.これを電気二重層と呼び,この電気二重層 が厚いと,ファンデルワールス力が作用する前に二重層の 同符号間の反発力が働き,ブラウン運動により粒子同士が 接近しても粒子の結合は困難であり分散状態となる.二重 層が薄くなると近接した粒子同士には反発力が働くが,そ れ以上のファンデルワールス引力により粒子は結合し凝 集することになる(例えば,佐藤(2001)[19]).電気二重層の 厚さは,懸濁液(スラリー)のイオン強度により変化し,イ オン強度が高いと電気二重層は薄くなってモンモリロナ イト粒子は凝集状態になる.イオン強度が高いほど,モン モリロナイト粒子は凝集しやすくなるため,水道水による 懸濁液に比べ,NaCl 水溶液による懸濁液が,また NaCl 溶液の懸濁液ではNaCl濃度の濃い方が,より凝集しやす い状態となる.したがって,水道水により分解した後に撹 拌した懸濁液では沈殿が極めて遅く, NaCl溶液による懸 濁液(スラリー)では,イオン強度が高くなる(NaCl 濃度が 大きくなる)ほど,沈殿速度がより早くなったものと考え られる.

Fig. 22 Schematic of microstructure of bentonite specimen after NaCl solution (concentrations of 2wt%) supply

ポンプによりスラリーを吸引して固液分離プラントへ流体輸送 プラントにおけるスラリーの固液分離

分離溶液の調整

塩水溶液として再利用

固形分の搬出

固形分の廃棄 液体

固体 発生したスラリーの処理 発生したスラリーの処理

固体または 液体?

end 緩衝材の分解プロセスへ end

緩衝材の分解プロセスへ

また,ベントナイト70 wt%配合(ケイ砂30 wt%)の方が ベントナイト 100 wt%配合に比べて沈降速度が早くなっ たのは,ベントナイト70 wt%配合では,凝集粒子の中に 共沈現象による砂粒子も含まれるためであると考えられ る.

Fig. 23 Flowchart of recycling of salt solution using solid-liquid separation method

4 塩水の分離,再利用における既存技術の適用

前述したベントナイトスラリー沈殿実験における NaCl 水溶液を溶媒としたベントナイトスラリーは凝集により 固液分離しやすいという結果から,Fig. 1に概念的に提示 した廃棄体回収のプロセスにおける固液分離プロセスは 実現可能性があると考えられる.すなわち,実際に緩衝材 を塩水により分解・除去した後に回収されるスラリーは,

Fig. 23に示すようなフローにより効率的に固液分離し,分

離した塩水を再利用することができると考えられる.Fig.

24 には建設分野における類似の固液分離プラントの例を 示した.同図は地中連続壁の構築のための掘削工事等で用 いられている安定液(ベントナイトスラリー)のリユース システム[21]のプラント概念図である.このプラント設備 ではフロック生成装置において凝集剤を添加し発生した フロックを脱水減容化して固液分離している.固形分(ベ ントナイト)は同図の安定液製造設備に供給されて,再び イオン濃度と層間距離に関する概念図に示すように,層間

距離が段階的に変化する濃度の境界領域付近であり,層間 距離 2nm 程度(層間に新たな水分子を吸収しにくいもの) のモンモリナイト粒子と層間距離 5 nm 以上(層間に新た に水分子を吸収する)のモンモリロナイト粒子とが共存す

るFig. 22に示すような間隙構造になっていると考えられ

る.膨潤モンモリロナイトのゲルによって占められていな い間隙は部分的には残った状態であるため,間隙のほとん どがゲルで埋まった状態と考えられる水道水浸漬ケース

(Fig. 18参照)に比べると分解速度は速くなるものの,NaCl

水溶液の濃度3 wt%以上のケース(Fig. 20参照)と比べれば 塩水が浸入しやすい間隙は小さくなっており,間隙内に浸 入し自由水として挙動するNaCl水溶液も少なくなるため,

分解速度はNaCl濃度3 wt%以上の場合に比べて低下した ものと考えられる.

(15)

フロック生成装置 脱水装置

分離水処理装置

処理水の放流 脱 水 固 形 物

は 安 定 液 に 再利用 ベントナイトスラ リー安定液

ベントナイトスラ リー安定液

Fig. 24 Principle of recycle system of bentonite slurry used in foundation work of construction field (modified after Iizuka 2001) [21]

安定液(ベントナイトスラリー)として利用される.分離し た液は処理後に放流する.緩衝材を塩水で回収する場合の 固液分離のプラント設備では,再利用するものは固形分で はなく分離した液となる点が異なるが,固液分離のプロセ スは同じである.塩水による凝集効果が十分であれば新た な凝集剤の添加は不要となる.固形分(ベントナイト)は再 利用せずに廃棄され,分離した液は塩分濃度を再調整して,

塩水として再利用されることになる.したがって,Fig. 24 に示したプラント設備のうち安定液製造設備は不要にな り,よりシンプルなプラントになる.坑道内での利用とな ることからコンパクト化が必要になるものの,既存の技術 で十分適用できると考えられる.ただし,塩水が常時接触 する設備機械であることから,ステンレス化等の腐食対策 は必要である.なお,この固液分離プロセスは必ずしも緩 衝材除去作業場所の直近の狭隘な場所で行う必要はなく,

数10 mから数100 m離れた場所に固液分離プラントを設

置し,両者間を流体輸送することも可能であろう.なお,

分離した固形分(ベントナイト)は廃棄するのではなく,埋 め戻し材等の別の材料として利用できる可能性がある.

5 まとめ

今回実施した3種類の要素実験と実験結果の考察および 既往技術の調査により,以下が把握された.

① 塩水(NaCl水溶液)による不飽和条件の模擬緩衝材供

試体の分解現象

・塩水では水に比べ分解が早く進む.

・塩水の成分としてNaClは適用性がある.

・塩水(NaCl水溶液)の塩分濃度は3~4 wt%程度で効 果の発揮が顕著となる.

・ケイ砂混合材料の場合はベントナイト単体材料より 分解が早い.

・これらの現象は,供試体に浸入した溶液のイオン濃 度とモンモリロナイト層間距離の関係に起因する メカニズムにより説明できる.

② 塩水浸漬分解実験によって得られた懸濁液の沈殿現 象

・溶媒が塩水(NaCl水溶液)の場合は水に比べ沈殿が早 く進む.

・塩水(NaCl水溶液)の塩分濃度は3~4 wt%程度で効 果の発揮が顕著となる.

・ケイ砂混合材料の場合はベントナイト単体材料より 沈殿が早い.

・これらの現象は,分散溶媒中の塩濃度とモンモリロ ナイト凝集効果の関係に起因するメカニズムによ り説明できる.

③ 塩水噴射による模擬緩衝材供試体の分解・除去現象

・供試体表面から塩水が浸み込む時間を確保すること により,表面部をスラリー状にする効果の発揮が 顕著となる.実際の適用に際しては,緩衝材表面 にできるだけ長時間の塩水の接触を継続する手段 を工夫することが大切である.

・小型供試体を対象とした実験では,塩水により分解 しスラリー状になったベントナイトを比較的小さ

い0.1 MPaの噴射水圧で除去できる.

・噴射条件を最適にするためには,実寸法のノズル口 径と噴射圧力の両者の組み合わせで決まる噴射流 量速度の条件に着目すべきである.

また,建設分野で実用化されている既往技術(安定液リ ユースシステム)の調査により,以下が把握された.

④ 安定液リユースシステムの緩衝材分解・除去技術へ の適用

・緩衝材の分解により生じるスラリー(懸濁液)から塩 水溶液を効率的に分離する方法として,すでに実 績のある既往技術(安定液リユースシステム)を十 分適用することができる.

この論文のはじめにおいて,実際の廃棄体回収に塩水を 利用した緩衝材除去方法の実用化への可能性を確認する ためには,流体により緩衝材を分解・スラリー化するプロ セスにおける塩水の濃度の目安と分解の効率を確認でき ること,およびベントナイトスラリーを固液分離し塩水を 再利用するプロセスの実用性を確認することが肝要であ ると述べたが,以上にまとめたように,実験によってその 可能性に肯定的な知見が得られた.塩水(NaCl)溶液を用い

Fig. 1    Schematic process flow of retrieving radioactive waste and issues for operation
Table 2 Factor and level on test of dissolving bentonite  溶液条件 NaCl 濃度               0 , 2 , 3 , 4 , 6 wt % ベントナイト配 合率  70 wt% (ケイ砂 30wt%)  100 wt%  含水比 12  % 17 %  間隙率 41.6  % 42.4 %  体積含水率 19.2 %  27.2 %  気相率 22.4  % 15.2 %  乾燥密度 1.6  Mg/m 3供試体 条件  寸法
Fig. 4    Appearance of dissolving bentonite specimen
Table 3  Factor and level on sedimentation test of  bentonite particle  ベ ン ト ナ イ ト 配合率  70 wt%   (ケイ砂    30wt%)  100 wt%  懸濁液中の     固形分濃度  16 wt %  16 wt% 容積  400 mL  ポ リ エ チ レ ン 袋寸法  直径 50mm ,高さ 200mm懸 濁 液条件  NaCl 濃度  0, 2, 3, 4, 6 wt%  握された.なお, NaCl 濃度
+7

参照

関連したドキュメント

aripiprazole水和物粒子が徐々に溶解するのにとも ない、血液中へと放出される。PP

UVBVisスペクトルおよびCDスペクトル を測定し、Dabs-AAの水溶液中での会へ ロ

熱力学計算によれば、この地下水中において安定なのは FeSe 2 (cr)で、Se 濃度はこの固相の 溶解度である 10 -9 ~10 -8 mol dm

原子炉水位変化について,原子炉圧力容器内挙動をより精緻に評価可能な SAFER コ ードと比較を行った。CCFL

津波到達直前の 11 日 15 時 25 分に RCIC は原子炉水位高により自動停止して いたが、 3 号機は直流電源が使用可能であったため、 16 時 03

原子炉冷却材浄化系沈降分離槽 ※1 原子炉冷却材浄化系受けタンク 燃料プール冷却浄化系受けタンク 復水浄化系沈降分離槽 ※2 復水浄化系受けタンク

H23.12.2 プレス「福島原子力事故調査報告書(中間報告書)」にて衝 撃音は 4 号機の爆発によるものと判断している。2 号機の S/C

 2020 年7 月21 日午前10 時15 分より、4 号機原子炉補機冷却海水系 ※1 【A系】の定例試験