九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Anisotropic Image Processing for Generating Non-Photorealistic Images
胡, 忠英
https://doi.org/10.15017/1500743
出版情報:Kyushu University, 2014, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Fulltext available.
氏 名 胡 忠英
論 文 名 非等方画像処理による非写実的画像の生成
Anisotropic Image Processing for Generating Non-Photorealistic Images 論文調査委員 主 査 九州大学 教 授 浦濱 喜一
副 査 九州大学 准教授 坂本 博康 副 査 九州大学 准教授 原 健二
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
非写実的な画像や映像を生成するコンビュータグラフィックスの一分野であるノンフォトリア リスティックレンダリング (non-photorealistic rendering: NPR) は,解析的NPR と幾何学的 NPR とに大別される.解析的NPRは,微分や積分など空間的に連続的な画像処理によって非写実 的効果を生成する技法である.油彩や水彩などの絵画風の画像を生成するフィルタリング技法が代 表例である.一方,幾何学的NPRは,クラスタリングや領域分割など,離散的な処理によって非写 実的効果を生成する技法であり,点描画や貼り絵などが代表例である.胡忠英氏は,後者の幾何学的 NPRを研究し,バイラテラル距離に基づく非等方点描画や貼り絵風画像などの新しいNPR技法を 開発してきた.本論文は,同氏のこれまでに提案した独自の幾何学的NPR技法の研究成果をまとめ たものである.本申請論文では,バイラテラル距離に基づく ポアソンディスクサンプリング法と非 等方ボロノイ分割が導入され,それらを応用して点描画やステンドグラス画像を生成するNPR法 が提案されている.まず,本論文の第l章では,NPR研究の背景を述べ,なかでも幾何学的NPRの 従来法をサーベイして,申請者がバイラテラル距離に至った経緯を述べている.第2章ではポアソン ディスクサンプリング(PDS) による非等方点描画の生成法を提案している. PDS によって点を一 様密度で配置して点描主義点描画を生成し,また入力画像の濃淡に応じた密度で点を配置してハー フトーニング点描画を生成する手法である.本提案法が従来の非等方点描画法と異なる点は,従来法 の2次形式距離に代わってバイラテラル距離を用いることであり,これにより各点を中心とする円 が濃淡勾配に沿って歪み,入力画像の構造に即した点描画が得られることが示されている.続く第 3 章では,バイラテラルLp距離に基づくPDSによる簡単な非等方ストローク画の生成法を提案し,
等方的なPDSよりも入力画像の保存性が高いことを示している. 第4章では,線分の向きが濃淡の 等高線に沿うようなTSP (Traveling Salesman Problem)線画を求める手法としてバイラテラル距 離に基づく非等方TSPアートを提案している.また,ボロノイ点描画の各点と最近傍点との聞に線 を引く線描画の生成法を提案し,バイラテラル距離による非等方性によって線の向きが入力画像の 濃淡の等高線に沿い,手描きの線描画の向きに近くなるとともに物体の輪郭が明瞭になることを示 している.続く第5章では,灰色の背景のなかに白点と黒点を打つ2値点描画を作る簡単な2段階法 を提案している.この手法では,Lloyd緩和法で画像全体に一様に点を配置し,PDSでそれらの点を 白か黒にして2値点描画にする.また,非等方 PDS による非等方ボロノイ線画がハーフトーニング になるようにPDSでのディスク半径を補正し,非等方ボロノイ線画のほうが等方ボロノイ線画よ りも入力画像の濃淡の保存性が高いことを示している.第6章では,点描画を連続階調画像に変換す る手法として,等方ボロノイ分割した後に非等方ボロノイ分割する方法を提案している.この変換で は,等方ボロノイ分割よりも非等方ボロノイ分割のほうが精度が高いことを実験で示し,点描画の 作成法であるLloyd反復についての検証も加えている.第7章では,バイラテラルLp距離に基づく
非等方Lp PDSによる貼り絵風画像の生成法を提案し,等方的なPDSで等方的なディスクを貼り
付けるよりも,非等方なPDSで非等方ディスクを貼り付けるほうが輪郭の保存性が高いことを示 している.また,バイラテラルL1距離による貼り絵風画像のNPRにおいて,紙片を明度順に貼り 付け,各紙片に色のグラデーションを付けて立体感を増進する手法を提案し,非等方距離による輪 郭保存性の高い貼り絵についても同様な効果を確認している.
以上のように,本論文はバイラテラル距離に基づく新しい幾何学的NPR手法を提案したもので あり考案し,点描画やステンドグラス画像,貼り絵風画像などの生成実験を通して提案手法の有効 性を実証しており,コンピュータグラフィックスや画像処理などの画像工学分野での研究開発に寄 与しうると期待され,博士(工学)の学位論文に値するものと審査委員全員一致で認めるものである.