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厚生労働科学研究費補助金

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1

厚生労働科学研究費補助金

(

地球規模保健課題推進研究事業

)

総括研究報告書

東アジアにおける生活習慣病予防モデルの開発

−ベトナムにおける予防介入支援

(H23-

地球規模

-

若手

-002)

研究代表者  松下  由実

      国立国際医療研究センター  臨床研究支援部  臨床研究推進室長  

研究要旨   

近年、糖尿病のような生活習慣に関連する疾患が、経済的発展による生活習慣の劇的 な変容にともない、先進国のみならず発展途上国においても社会的重要課題の一つとな ってきている。世界保健機関(WHO)の 2002 年々次報告では、世界的にみた健康増進 施策上の重要課題として 心血管病 を挙げ、さらに、今後 30 年の間に、特にアジア の発展途上国において糖尿病患者の数が劇的に増加することに警告を発している。これ らの国々では健診システムが整備されておらず、生活習慣病が悪化している状態の人の ほとんどは無自覚で放置されている。早期に確実に生活習慣病を診断し、進展を防ぐシ ステムを構築し、効果を検証することが急務である。当該国の1つであるベトナムにお いて、日本の特定健診の仕組みを参考に地域の実情に則した健診システムを開発し、健 診で生活習慣病と診断された人に対し、指導を行う群と行わない群に無作為割りつけを 行い、指導効果を比較し、アジアにおける生活習慣病対策の基本パッケージを作成する 必要がある。 

日本発の保健指導システムを発展途上国へ導入し、WHO 西太平洋事務局と協力しなが ら地域行動計画の全国レベルの普及とネットワーク構築について検討を行い、アジア全 土の生活習慣病対策の仕組みを構築し、普及することを目的とし、本研究を行った。こ のことにより、日本発の特定健診・特定保健指導を基にした生活習慣病対策が根付き、

アジアの健康作りに貢献することができる。 

 

分担研究者   

梶尾裕 

国立国際医療研究センター病院    糖尿病・代謝症候群診療  医長  岸本美也子 

国立国際医療研究センター病院    糖尿病・代謝症候群診療  医長  三好知明 

  国立国際医療研究センター    国際医療協力部  課長 

横山徹爾 

  国立保健医療科学院    生涯健康研究部  部長  中川徹 

日立製作所  日立健康管理センタ    副センタ長 

   

A. 研究目的 

健診を実施していないアジアの発展途 上国の1つであるベトナム国内に日本発 の健診、保健指導を導入することで、住

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2

民の健康状態の向上がみられるかを検討 する。さらに、医療経済学的観点からも 検証し、WHO 西太平洋事務局と協力しな がら地域行動計画の全国レベルの普及と ネットワーク構築について検討を行い、

生活習慣病対策の仕組みをアジア全土に 広めることを目的とする。 

   

B. 研究方法   

1. IT を用いた生活習慣病予防プログラ ムの作成 

現地の事情に合わせた費用対効果の高 い介入プログラムを作成した。 

 

2. 保健指導スタッフの教育 

ベトナムの調査スタッフおよび介入ス タッフの研修および教育を行った。 

 

3. 介入を行い、3 か月間の効果を検証し た。 

1) 実施施設   

国立栄養研究所(ベトナム) 

2) 研究デザイン  無作為対照比較試験 

調査の流れ   

             

                                                                        説明と

同意

1次

スクリーニング

2次

スクリーニング

無作為 割付

3ヵ月 後調査

同意された方 該当者 生 活 習 慣 病

指導

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3

調査項目 

1次  ス ク リ ー ニ ン グ 

2次  ス ク リ ー ニ ン グ 

3 ヵ 月 後 調査 

身体計測(身長、

体重、腹囲、血圧) 

○  ○  ○  簡易採血(指先の

針刺し、1回、10 μℓ

) 

○     

採血(1 本、計5 ml)血清測定用 

  ○  ○   

 

1 次スクリーニング、2 次スクリーニング の両方に通過された方のみ、生活習慣指 導を受けていただいた。 

1 次スクリーニング、2 次スクリーニング、

3 カ月後調査の 3 回、国立栄養研究所へい らしていただいた。(1 次スクリーニング と 2 次スクリーニングの間は 1 週間) 

 

3)参加適格性 

選択基準:以下の条件をすべて満たす人

(2 次スクリーニング時) 

 銀行または学校に勤務している人 

 年齢:40〜59 歳 

 家、もしくは職場でインターネット にアクセスできる方 

 

 下記の 5 項目のうち、3 項目以上に 該当する方 

 (1) TG ≥

150 mg/dl 

 (2) HDL コレステロール < 40 mg/dl   (3) SBP ≥

130 mmHg または/かつ DBP ≥ 85 mmHg 

 (4) FPG ≥

110 mg/dl 

 (5) BMI ≥

25 kg/m

2  または/かつ       男性: ウエスト ≥

90cm   女

性: ウエスト≥80cm 

 体重減少やメタボリックシンドロ ームに関する服薬の無い人 

(ビタミンのサプリメントは除く) 

 

除外基準:以下のいずれにもあてはまら ない人 

 脳心血管疾患の既往歴のある人 

 肺疾患の人 

 3 か月間の研究継続が見込めない人

(3 か月以内の引っ越し予定など) 

 医師が、参加が適切でないと判断し た人 

4)スクリーニング 

①1 次スクリーニング  a.健康調査  既往歴 

b.簡易採血(指先の針刺し 1 回) 10μl    血糖 

c.身体計測  身長、体重、腹囲、血圧   

②2 次スクリーニング(初回調査)     

介入前評価のため以下の調査を実施する。 

(4)

4

a. 健康調査  生活習慣(運動・食事)、

既往歴 

b. 測定用採血  5ml 採血管 1 本 

  コレステロール、HDL コレステロール、

LDL コレステロール、中性脂肪、HbA1c、

血糖、インスリン、CRP 

c. 身体計測  身長、体重、腹囲、血圧         

*b.生化学検査結果と c.身体計測結果を 本人に通知した。 

*測定は、国立栄養研究所(ベトナム)

で行った。 

                               

5)割り付け  ブロック無作為割り付け  専属の研究スタッフが割り付けを行い、

その結果を担当医に通知した。 

 

                                                       

6)介入  ブロック無作為割り付けを行い、

生活習慣指導を提供した。 

非介入群:参加者は、健診後にパンフレ ットのみでの指導を受けた。 

下記2条件をいずれも満たす候補者1000 名に電話をかけ、ハノイの国立栄養研究 所に来てもらうよう依頼する。

1.銀行または教育関係に勤務して いる

2.40〜59歳 3. BMI ≥ 25 kg/m2

下記5項目のうち、3項目以上を満たす人を メタボリックシンドロームと診断する。

(1) TG ≥ 150 mg/dl

(2) HDL コレステロール< 40 mg/dl (3) SBP ≥ 130 mmHgかつ/またはDBP ≥ 85 mmHg (4) FPG ≥ 110 mg/dl [採血による測定]

(5) BMI ≥ 25 かつ/または 男性: WC ≥ 90cm

女性: WC ≥ 80cm

1次スクリーニングを行う。

(1) 10時間の絶食後、血液検査をし、

TG、HDL、血圧、FPG、CRP、HbA1c を 測定する。

(2)アンケートを実施する。

(生活習慣、病歴、治療の有無)

対象者の選定とスクリーニング方法

1. 全候補者から、インフォームドコンセントを得る。

2. 10時間の絶食後、下記の指標を計測し、

1次スクリーニングを行う。

(1) 男性: WC ≥ 90cm

かつ/または BMI ≥ 25 kg/m2 女性: WC ≥ 80cm

(3) SBP≥ 130 mmHg かつ/またはDBP≥85 mmHg (2) FPG ≥ 110 mg/dl [簡易測定]

1

2

4 3

メタボリックシンドロームと診断された人を対象として 本研究を実施する。

上記3項目のうち、2項目以上を満たす人

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5

介入群:参加者は、初回に自分で、目標 リストより選択して目標を設定した。さ らに研究開始後は、毎日自分の体重、歩 数を計測し、目標の達成度と併せてイン ターネットで情報を送り、インターネッ トを通じて日々医療スタッフより個別に 指導を受けていただいた。対面式の介入 は行わなかった。 

 

7)有害事象報告 

有害事象発生時には、臨床研究推進室を 通じて速やかに総長と倫理委員会に報告 する仕組みを作成した。(本研究実施中に 有害事象は発生しなかった。) 

 

8)追跡調査 

介入後、3 か月後に下記の調査を行った。 

a. 測定用採血  5ml 採血管 1 本 

    総コレステロール、HDL コレステロー ル、LDL コレステロール、中性脂肪、

HbA1c、血糖、インスリン、CRP  b. 身体計測  身長、体重、腹囲、血圧         

*a.生化学検査結果と b.身体計測結果を 本人に通知した。 

*測定は、国立栄養研究所で行った。 

 

9)アウトカム評価 

主要:介入前と 3 か月後の体重変化量(kg) 

副次:介入前と 3 カ月後調査より、下記 の項目について研究期間中の値の変化

(連続値)あるいは発症(カテゴリー値) 

①血圧    収縮期血圧、拡張期血圧 

②糖代謝  血糖、HbA1c、インスリン 

③脂質    総/HDL/LDL コレステロール、

中性脂肪 

④炎症    CRP   

10)統計解析 

  それぞれの群において介入前後の各要 因の変化量の性・年齢調整済みの平均値 を求め、さらに、両群におけるアウトカ ムの変化量の比較を共分散分析で行った。 

 

4.結果の検討およびワークショップの開 催 

得られた研究結果を基に、地域の現場 担当者からヒアリングを行い、問題点の 抽出を行った。ベトナムの省レベルでの 生活習慣病予防対策としてどのように活 用できるかのワークショップを開催した。 

 

(倫理面への配慮) 

 

本研究の実施計画は「疫学研究に関す る倫理指針」に則って作成し、研究実施 前に、研究代表者及び海外共同研究者は 研究計画書をそれぞれが所属する機関の 倫理委員会に諮り、承認を得た。また調 査・介入にあたっては、その内容をわか りやすく示した図入りのパンフレットを 用いて、自由意志に基づく参加であるこ とや個人情報の保護対策を含め調査員が 対象者に説明した後に、本人から署名入

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りの同意書を得た上で実施した。調査票 は個人情報管理者の監督下に匿名化(連 結可能)した上で、鍵のかかる部屋及び ロッカーに保管した。結果の公表に際し ては個人が特定できない形式で行った。 

   

C. 研究結果   

 

1)内臓脂肪面積の変化がメタボリックシ ンドロームの各要因の発症に及ぼす 影響 

 

  2004 年度、2007 年度の腹部 CT 受診者 のうち、高血圧、高脂血症、糖尿病の現 在治療中の人を除外した男性 1,106 人を 対象とした。3 年間の内臓脂肪面積の変化 量により 7 群に分け、±10 cm2以内の群 を基準とした。①中性脂肪高値②HDL コレ ステロール低値③血圧高値④糖代謝異常、

および⑤メタボリックシンドローム (①

‑④のうち 2 項目以上あり)の3年後の発 症オッズ比を求めた。⑤のオッズ比は 50cm2以上内臓脂肪面積が増加した人で 有意な上昇がみられた。②、④でも同様 の結果が得られた。①は−50cm2以下の群 でオッズ比が有意に下がり、30cm2以上の 群で有意に上昇していた。内臓脂肪の増 加を抑制することがメタボリックシンド ロームの解消につながる可能性が示唆さ れ た 。( Matsushita  Y,  et  al.  Obesity  2013; 21(10):2126‑9.) 

 

2)  アディポネクチン・内臓脂肪面積が

メタボリックシンドロームのリスク重積 に及ぼす影響 

 

  男性 6221 名、女性 775 名、合計 6996 名を対象とし、アディポネクチン、内臓 脂肪面積別にそれぞれ 4 分位、16 群に群 分けし、アディポネクチン最高値・内臓 脂肪面積最低値群を基準(1.0)とした時 のメタボリックシンドロームのリスク重 積の調整オッズ比を求めた。アディポネ クチン最低値・内臓脂肪面積最高値群が 最も高いオッズ比(95%信頼区間)であ った(男性:12.7(9.7‑16.6)、女性:13.5

(6.0‑30.2))。さらに、内臓脂肪面積と アディポネクチンは、独立してメタボリ ックシンドロームに影響を及ぼしている ことが明かになった。 

(Matsushita Y, et al. Obesity 2014; 

22(1):287‑91.) 

 

3)ウエスト周囲長と体格組成との関係   

ウエスト周囲長、BMI は、内臓脂肪面積 の簡易指標として用いられているが、性、

年齢別の内臓脂肪面積とウエスト周囲長、

BMI との関連はいまだ明らかにされてい ない。そこでわれわれは、ウエスト周囲 長の意味を明らかにするため、CT 画像よ り算出した内臓脂肪、皮下脂肪、筋肉、

筋肉内脂肪、骨、内臓面積とウエスト周 囲長の関連を検討した。 

  2004〜2009 年度に日立健康管理センタ において腹部 CT 検査を受検した 20 歳か ら 76 歳の男性 9874 名、女性 1696 名を対 象とした。身長、体重の測定から BMI を 算出し、ウエスト周囲長、内臓脂肪面積、

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7

皮下脂肪面積は CT 検査から計測した。CT 画像から筋肉、筋肉内脂肪、骨、内臓領 域を分離する技術はこれまでなかったが、

私共は、新しく解析ソフトを開発し、こ れらの面積を算出した。 

解析は、性、年齢別(〜39、40‑49、50‑59、

60‑69、70 歳〜)に分け、内臓脂肪面積と 他の体格指数(皮下脂肪面積、ウエスト 周囲長、BMI)の相関係数、皮下脂肪面積 と他の体格指数(ウエスト周囲長、BMI)

の相関係数を求めた。回帰分析により、

ウエスト周囲長と内臓脂肪面積および内 臓脂肪面積と皮下脂肪面積の和との関係 を表す回帰係数と切片を求めた。 

  男女ともに内臓脂肪面積は年齢が高く なるにしたがって増加するが、ウエスト 周囲長は、女性は年齢ともに増加するが、

興味深いことに、男性は年齢とともに減 少していた(P<0.001)。内臓脂肪面積と ウエスト周囲長の関係が男女で異なるこ とが明らかになった。その原因を解明す るため、さらに体格構成につき、男女合 計 11570 名からランダムで各年齢層別に 抽出した約 1500 名を対象とし、詳細に検 討を行った。内臓脂肪面積と皮下脂肪面 積の和は、ウエスト周囲長の年齢別の動 きと似ていることが明らかになった(相 関係数:男性 0.901、女性 0.945)。この ことより、ウエスト周囲長は、内臓脂肪 面積ではなく、内臓脂肪と皮下脂肪面積 の和を反映していることが示唆され、さ らに男女で比較すると、男性は筋肉量が 多いという特徴が認められた(P<0.001)。 同じ内臓脂肪面積に相当するウエスト周 囲長は、年齢の高いグループは年齢の低 いグループに比べ、低くなっていた。 

  年齢層が高くなるに従って、内臓脂肪 面積は男女ともに大きくなる傾向が認め られた。しかしながら、ウエスト周囲長 は内臓脂肪面積ではなく内臓脂肪面積と 皮下脂肪面積の和を表していることが明 らかになった。現在は、メタボリックシ ンドロームの診断基準では、全年齢で同 じウエスト周囲長のカットオフを用いて いるが、若い世代ではメタボリックシン ドロームの人を見落とす可能性があるこ とが明らかになった。各年齢層に適した ウエスト周囲長のカットオフを設定する 必要があると考えられる。 

(Matsushita Y, et al. Diabetol Metab  Syndr 6: 11, 2014.) 

 

4) アジアにおけるメタボリックシンド ロームのリスク重積検出のウエストカッ トオフ値の性・年齢・民族別検討   

  メタボリックシンドロームは、循環器 疾患のリスクファクターとされている。

ウエスト周囲長は、内臓脂肪蓄積の簡易 指標とされ、国際糖尿病連合(IDF)によ るメタボリックシンドロームの診断基準 では、民族特異的なウエスト周囲長のカ ットオフ値が必要とされているが、開発 途上国ではまだあまり検討されていない。

そこで、我々は、年齢、地域、民族別に いくつかのアジアの国々の人を対象とし て最適なウエスト周囲長のカットオフ値 を見出すことを目的として研究を行った。 

  トータル 12,877 名(中国:北京 3,957 名、太原 3,034 名、スリランカ:2,984 名、ベトナム:ハノイ 1,205 名、タイビ ン 1,697 名)を対象とした。IDF のメタボ

(8)

8

リックシンドロームの診断基準(ウエス ト周囲径を除く)のうち、2 つ以上持って いる人をメタボリックシンドロームのリ スク重積ありと判定し、ROC 曲線を描き、

最適なウエスト周囲長カットオフを求め た。 

  ROC 曲線による感度と特異度の和が最 大になるウエスト周囲長は、北京、太原、

スリランカ、ハノイ、タイビンでは男性 では、88.1cm、81.5cm、83.3cm、81.9cm、

75.3cm、女性では、82.4cm、76.5cm、86.2cm、

72.2cm、73.8cm であった。それぞれの地 域の、感度 80%でメタボリックシンドロ ームのリスク重積者を拾い上げることの できるウエスト周囲長は、男性では、

84.8cm、78.5cm、81.9cm、75.9cm、70.1cm、

女性では、80.1cm、73.4cm、79.0cm、72.4cm、

66.4cm であった。さらに年齢別にも解析 を試みたところ、同じ地域であっても年 齢により大きくウエストカットオフ値が 異なることが明らかになった。 

アジア人用のウエストカットオフ値は、

IDF のメタボリックシンドローム診断基 準では現在、統一されている(男性が 90cm、

女性が 80cm)。しかしながら、年齢と地域 により同じアジア人でも違いがみられ、

最適なウエストカットオフ値は、環境要 因だけではなく、民族による影響も大き いことが示唆された。 

 

5)IT を用いた生活習慣病予防プログラム の検証 

 

  我々が今回新たに開発した IT を用いた 生活習慣病予防プログラムを使い、3 か月 の介入前後で、体格指数および生化学デ

ータの変化を比較し、プログラムの有用 性を検討した(詳細な方法は、P.2〜6 参 照)。 

体重の介入前後の平均変化量(SD)は、

介入群では、‑2.6 (2.8)kg、非介入群で は‑1.2 (1.4)kg であり、両群とものベー スライン時よりも有意に減少していた

(P<0.01)。BMI の平均変化量(SD)は、

介入群では、‑1.0 (1.0)kg/m2、非介入群 では、‑0.5 (0.6) kg/m2 で、ウエスト周 囲長の平均変化量(SD)は介入群では、

‑4.1 (5.0)cm、非介入群では‑3.7 (3.4)cm であった。BMI、ウエスト周囲長に関して も体重と同様にベースライン時に比し、

有意な減少が見られた(P<0.01)。介入群 では、血糖値、血圧、インスリンが、介 入に伴って有意に減少し、HDL コレステロ ールは有意に上昇した(P<0.05)。非介入 群では、3 か月後に拡張期血圧、インスリ ンは有意に減少し、HDL コレステロール、

CRP は有意に上昇した(P<0.05)。    性・年齢を調整した介入前後の体重の 平 均 変 化 量 ( SE ) は 、 介 入 群 で は 、

‑2.4(0.4)kg、非介入群では、‑1.5 (0.5)kg となり、有意差はみられなかったが、介 入群での減少量が大きかった。HDL コレス テロールは有意に介入群は非介入群に比 べて変化量が大きくなっていた(性・年 齢 調 整 済 平 均 値 (SE); 介 入 群 :0.5  (0.1)mmol/L 、 非 介 入 群 :0.2   (0.1)mmol/L)。 

   

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9

介入群(n=20)

(男性11,女性9) 前後差

平均値 SD 平均値 SD 平均値 SD P値 平均値の差 SE P値

年齢(歳) 49.17.0 ) - - - -

身長(cm) 161.69.5 ) - - - -

体重(kg) 72.69.670.09.4‑2.62.8<0.001 -0.9 ( 0.7 ) 0.178 BMI(kg/m2 27.71.926.72.2‑1.01.0<0.001 -0.3 ( 0.3 ) 0.217 ウエスト周囲長(cm) 93.26.289.16.5‑4.15.00.002 0.9 ( 1.2 ) 0.473 ヒップ(cm) 100.16.098.25.2‑1.93.20.015 -0.1 ( 0.8 ) 0.909 血糖値(mmol/L) 6.51.25.90.7‑0.50.90.021 0.1 ( 0.3 ) 0.802 収縮期血圧(mmHg) 132.318.7121.918.0‑10.412.70.002 -2.1 ( 4.5 ) 0.649 拡張期血圧(mmHg) 85.613.575.111.1‑10.412.80.002 -0.7 ( 4.4 ) 0.868

HbA1c(%) 5.81.05.60.3‑0.20.90.283 0.1 ( 0.3 ) 0.736

インスリン(mg/ml) 11.36.97.43.9‑3.96.40.013 -0.3 ( 2.2 ) 0.897 中性脂肪(mmol/L) 2.72.12.11.8‑0.61.60.092 -0.1 ( 0.6 ) 0.916

コレステロール 4.91.14.91.20.01.00.846 -0.4 ( 0.3 ) 0.225

HDLコレステロール 1.10.21.60.30.50.3<0.001 0.3 ( 0.1 ) 0.011

LDLコレステロール 2.70.72.90.90.21.00.465 0.0 ( 0.3 ) 0.941

CRP(mg/dl) 2.12.11.71.4‑0.42.00.371 -1.9 ( 0.9 ) 0.045

非介入群(n=17)

(男性5,女性12) 前後差

平均値 SD 平均値 SD 平均値 SD P値

年齢(歳) 49.5 6.3 - - - - -

身長(cm) 152.6 8.6 - - - - -

体重(kg) 62.1 8.6 60.9 8.6 ‑1.2 1.4 0.002

BMI(kg/m2 26.6 1.4 26.0 1.4 ‑0.5 0.6 0.003 ウエスト周囲長(cm) 88.7 5.2 85.1 6.5 ‑3.7 3.4 <0.001

ヒップ(cm) 96.8 5.0 95.5 5.0 ‑1.3 1.8 0.009

血糖値(mmol/L) 6.6 1.1 6.1 0.6 ‑0.4 1.0 0.097

収縮期血圧(mmHg) 128.8 16.6 121.2 12.5 ‑7.6 15.3 0.057 拡張期血圧(mmHg) 83.5 13.4 75.0 10.5 ‑8.5 14.9 0.032

HbA1c(%) 5.9 1.0 5.8 0.5 ‑0.1 0.7 0.514

インスリン(mg/ml) 9.4 6.5 5.0 1.6 ‑4.4 6.4 0.012 中性脂肪(mmol/L) 2.4 1.5 2.0 1.0 ‑0.5 1.6 0.246

コレステロール 5.0 0.7 5.3 1.1 0.4 0.8 0.062

HDLコレステロール 1.1 0.3 1.4 0.3 0.2 0.3 0.008

LDLコレステロール 2.9 0.7 3.1 1.0 0.1 0.7 0.474

CRP(mg/dl) 1.3 1.4 3.0 2.9 1.7 3.2 0.043

※対応のあるt検定

※※共分散分析

変化量の2群比較※※

ベースライン 3か月後 変化量

ベースライン 3か月後 変化量

  D.考察   

  IT を用いた生活習慣病予防プログラム を使って 3 か月の介入を行うと、介入前 に比べ、有意に体重をはじめとする体格 指数が減少することが明らかになった。

また、体格指数の減少に伴い、糖・脂質・

血圧などの代謝改善も認められた。人数 が少なかったため、有意差はみとめられ なかったものの、介入群は非介入群に比 べて体重減少量は大きくなっていた。HDL コレステロールは有意に介入群は非介入 群に比べて変化量が大きくなっていた。

今後、さらに人数を増やし、今回の生活     

習慣病予防プログラムの検証を行い、発 展途上国での実用化に向けて検討を続け ていく必要がある。 

同じアジア人であっても、肥満とメタ ボリックシンドロームの関係は年齢、民 族により異なることが明らかになり、生 活習慣病対策を行っていくにあたり、そ の点を考慮したプログラムの作成が必要 であることが示唆された。 

       

(10)

10

E. 結論 

 

  生活習慣病対策のプログラムを作成す る際、性・民族差だけではなく、年齢に ついても考慮していかなければならない。

生活習慣病予防プログラムの検証を行い ながら、同時に各国の肥満の基準につい ても検討する必要があると考えられる。

F

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健康危険情報 なし

G

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研究発表 1.論文発表 

1)Iwata M, Matsushita Y, Fukuda K,  Wakura T, Okabe K, Koshimizu Y,  Fukushima Y, Kobashi C, Yamazaki Y,  Honoki H, Suzuki H, Tobe K. Secretory  units of islets in transplantation  index (SUIT)is a useful predictor of  insulin requirement in Japanese type  2 diabetic patients. J Diabetes  Investigation. 2014 (in press). 

 

2)Matsushita Y, Nakagawa T, Shinohara M,  Yamamoto S, Takahashi Y, Mizoue T,  Yokoyama T, Noda M. How can waist  circumference predict the body  composition? Diabetology & Metabolic  Syndrome. 2014; 6: 11. 

 

3)Matsushita Y, Nakagawa T, Yamamoto S,   Kato T, Ouchi T, Kikuchi N, Takahashi  Y, Yokoyama T, Mizoue T, Noda M. 

Adiponectin and visceral fat  associate with cardiovascular risk  factors. Obesity. 2014; 22: 287‑291. 

 

4)Okumura A, Unoki‑Kubota H, Matsushita  Y, Shiga T, Moriyoshi Y, Yamagoe S, 

Kaburagi Y. Increased serum leukocyte  cell‑derived chemotaxin 2 (LECT2)  levels in obesity and fatty liver. 

Biosci Trends. 2013; 7: 276‑283. 

 

5) Okazawa T, Iwata M, Matsushita Y,  Kamura Y, Kato H, Okazawa S, Kigawa M,  Tobe K. Aging attenuates the 

association of central obesity with  the accumulation of metabolic risk  factors when assessed using the waist  circumference measured at the 

umbilical level (the Japanese  standard method). Nutr Diabetes. 

2013; 3: e96. 

 

6) Matsushita Y, Nakagawa T,       Yamamoto S, Takahashi Y, Yokoyama T,  Mizoue T, Noda M. Effect of 

longitudinal changes in visceral fat  area on incidence of metabolic risk  factors: the Hitachi Health Study. 

Obesity. 2013; 21: 2126‑2129. 

 

7) Yi S, Nakagawa T, Yamamoto S, Mizoue  T, Takahashi Y , Noda M, Matsushita Y. 

Short sleep duration in association  with CT‑scanned abdominal fat areas: 

the Hitachi Health Study. 

International Journal of  Obesity.2013;37:129‑134. 

    2.招待講演 

1)肥満症の成因と疫学  成因のコントロ ールによる効果的な予防  

食習慣・食環境. 松下由実.  

(日本肥満学会、東京  2013 年) 

     

(11)

11

3.学会発表 

国際学会 

1)Effect of longitudinal changes in  visceral fat area on incidence of  metabolic risk factors. 

Matsushita Y, Nakagawa T, Yamamoto S,  Takahashi Y,  Yokoyama T, Mizoue T,  Noda M. 

(APDO symposium, Tokyo 2013) 

    国内学会 

1)

アディポネクチンおよび内臓脂肪と心血 管リスクファクターの関連 

松下 由実, 中川 徹, 山本 修一郎, 高 橋 義彦, 横山 徹爾, 野田 光彦 

(日本肥満学会、東京   2013年) 

 

2)

LECT2は肥満と脂肪肝の予測因子となり うるか 

奥村 彰規, 久保田 浩之, 松下 由実,  志賀 智子, 森吉 百合子, 鏑木 康志 

(日本肥満学会、東京   2013年) 

 

3)

2型糖尿病患者における内因性インスリ ン分泌の指標による治療選択と将来の治 療効果予測への有効性 

福田 一仁, 岩田 実, 和倉 健朗, 松下  由実, 岡部 圭介, 小清水 由紀子, 石木  学, 薄井 勲, 戸邉 一之 

(日本糖尿病学会、熊本  2013年) 

 

4)

Leukocyte cell‑derived chemotaxin 2は 新規の肥満関連因子である 

奥村 彰規, 久保田 浩之, 松下 由実,  志賀 智子, 森吉 百合子, 鏑木 康志 

(日本糖尿病学会、熊本  2013年) 

 

5)

腹部肥満とメタボリック症候群の危険因 子との関連における加齢の影響 

岡澤 光代, 岩田 実, 加村 裕, 戸邉 一 之, 加藤 弘巳, 松下 由実 

(日本糖尿病学会、熊本  2013年) 

 

H

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 知的財産権の出願・登録状況  1. 特許取得 

  なし   

2. 実用新案登録      なし 

 

3. その他      なし   

                                                 

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