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3D ディスプレイの時空間特性に基づいた生体影響評価

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Academic year: 2021

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3D

ディスプレイの時空間特性に基づいた生体影響評価

Psycho-physiological effects of time-space characteristics of stereoscopic display systems

1W070602-2 吉竹 淳樹 指導教員 河合 隆史 教授

YOSHITAKE Junki Prof. KAWAI Takashi

概要: 家庭への立体映像(3D)の普及が期待されている中、本研究では主要な立体呈示方式である、時間多重 方式と空間多重方式を取り上げ、その視覚特性並びにアーチファクトが与える生体影響について実験的な検討を 行った。具体的に、単純刺激を用いて、心理指標として映像酔いや眼精疲労の自覚症状と立体感を、生理指標と して脳血流、心拍動並びに屈折力、調節微動を測定し、生体影響評価を行った。その結果、特定の環境下でアー チファクトの生起が確認され、またそのアーチファクトが生体に影響を与えることが示唆された。また、アーチ ファクトの種類や数によって生体に与える影響が異なる傾向が見られ、それらは呈示手法を工夫することで抑制 し得ることが示唆された。

キーワード:立体映像、生体影響、アーチファクト、時間多重方式、空間多重方式

Keywords: stereoscopic, psycho-physiological effects, artifact, time-multiplexed, space-multiplexed

1.時間多重・空間多重方式のアーチファクト 本研究におけるアーチファクトとは、3Dの呈 示方式の特性によって生じる、望ましくない知覚 現象の総称を意味している。時間多重方式では、

以下の3種類のアーチファクトに着目した。

・ファントムアレイ:跳躍運動時に観察される 残像感

・偽視差:水平移動の視標観察時に生じる、本 来呈示されない視差

・フリッカ:液晶シャッタの開閉によるちら つき

空間多重方式では、以下の3種類に着目した。

・視野闘争:水平ラインや小さい文字などの見 にくさ

・偽視差:左右眼で時間差を有したフレームの ホールド表示による、本来呈示されない視差

・解像度低下: ラインバイライン表示による 垂直解像度の半減

2.方法

2.1.実験環境と条件

実験は暗室内で行い、視距離600mmの位置に 参加者を着席させ、顎台で固定した。刺激の呈示 には、時間多重では SAMSUNG SyncMaster 2233RZnVIDIA 120Hz液晶シャッタメガネ を、空間多重ではHYUNDAI IT W220Sと円偏 光メガネを用いた。水平移動する視標は視角 1 度の正方形であり、各辺を1ピクセルで描写した。

加えて、白線を画面中心から5度離れた位置に2 本表示し、視標はそれを横切るように、5分間往 復運動させた。なお、空間多重の条件1では視野 闘争を誘発させるため、視標の上底と下底を片眼 のみに表示させた。

実験条件は表 1 に示すとおり、各方式 4 条件 とし、アーチファクトの含有を調整した。

1 各条件で含まれるアーチファクト 時間多重

視標速度 (deg/sec)

ファントム アレイ

偽視差 フリッカ

条件1 20 条件2 5 × 条件3 5 × × 条件4 5 × × ×

空間多重

視標速度

(deg/sec) 視野闘争 偽視差 解像度低下

条件1 5 条件2 5 × 条件3 5 × × 条件4 5 × × ×

参加者は、眼精疲労の自覚症状・立体感では男 女28名、屈折力・調節微動では男女20名、脳 血流・心拍動では男女8名である。

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2.2.測定項目と解析方法

実験前後に眼精疲労に関する自覚症状と屈折 力及び調節微動を、実験中には脳血流と心拍動を、

実験後に立体感を測定した。自覚症状と立体感は 質問紙を、屈折力と調節微動はオートレフラクト メータ (ライト製作所,Speedy-K)を、脳血流と 心拍動の測定には、NIRS(日立製作所,HOT121)

を使用した。なお、自覚症状、屈折力、調節微動 の測定値は変化率に変換し、また脳血流、心拍動 は標準化した後に平滑化を行い、さらに適宜、交 差相関を求め、刺激開始時が0となるようシフト することで、各条件間での傾向の比較を容易とし た。脳血流と心拍動に関して上記の処理後の値を、

NIRS値、心拍動値として解析を行った。

3.結果

自覚症状では、条件と自覚症状を要因とする分 散分析を行った結果、両方式ともに、条件の主効 果(p<.05)、自覚症状の主効果(p<.01)と交互作用 (p<.01)が認められ、下位検定の結果、条件 1 が 他の条件より有意に上昇率が高い結果となった。

1 映像酔いや眼精疲労の自覚症状の結果

次に立体感について、評定値を要因とする分散 分析を行った結果、両方式とも有意差(p<.01)が

認められ,下位検定の結果、条件 3 と 4 に比べて、

条件 1 と 2 の立体感が有意に高いことが分かった。

屈折力・調節微動に関して、条件と観測眼を要 因とする分散分析を行った結果、屈折力では両方 式とも有意差は認められなかった。一方、調節微 動において、時間多重では観測眼の主効果に有意 傾向(p<.10)、交互作用で有意差(p<.05)が認めら れた。空間多重では、呈示条件、観測眼の主効果 (p<.05)、交互作用(p<.01)で有意差が認められ、

下位検定の結果、条件 2 と条件 1 と 4 との間で有 意差(p<.05)が認められた。

脳血流値・心拍動値に関しては、両方式とも刺 激呈示後に上昇傾向が見られた。特に、心拍動値 に関しては、時間多重では条件 1 が、空間多重で は条件 1 と 2 の上昇率が高い傾向を示した。

4.考察

自覚症状および心拍動で、時間多重、空間多重 方式ともに、条件 1 が有意な上昇を示した要因と して、ファントムアレイや視野闘争の生起が関与 していると考えられた。また、立体感の結果と合 わせて考察すると、偽視差の関与も否定できない。

その偽視差は、呈示方法を工夫することで、除去 されることが示唆された。

一方、屈折力や脳血流で一貫した傾向が現れな かった理由としては、測定機器や参加者の人数の 問題などが挙げられる。また、調節微動に関して、

空間多重の条件 2 が有意に高い結果となったが、

変化率が微小なことや、自覚症状の結果と対応し ていないことを考慮すると、これらの指標では明 確な結果が出ていない可能性も否定できない。

心理・生理評価を踏まえた全体の傾向として、

より多くのアーチファクトを含む刺激ほど、生体 に影響を与える可能性が示唆され、一方で、呈示 方法を工夫することで、特定のアーチファクトを 抑制可能であることが示唆された。

5.まとめ

本研究では、3D 呈示方式毎のアーチファクト による生体影響について実験的な検討を行った。

結果から、方式特有のアーチファクトの生起を確 認したとともに、それらが与える生体影響に関す る基礎的な知見を得ることができた。

今後は実際のコンテンツを用いて、アーチファ クトの生起と生体影響に関する検討を行いたい。

参照

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