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第2章 必修教科等の研究 01国語 シンキングツールを取り入れた「的確に読む力」を育成する国語科読解教材の開発

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Academic year: 2022

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全文

(1)

1 国語

シンキングツールを取り入れた「的確に読む力」を育成する国語科読解教材の開発

北村 拓也

1.研究によせて

(1)はじめに

国語の学習の中で「文章の読解」はすべての基礎であ り,多くの時間が費やされている。しかし授業中に,「本 当に生徒に読解力を身に付けられているのか」と疑問を 抱くことがある。中学3年生対象に,説明的文章の指導 の中で「文章中に根拠はいくつ挙げられているか」とい う発問をしたところ,約4割の生徒が「わからない」と 答えた。また問題提起と主張を読み取らせたところ,正 確に読みとれた生徒は3割ほどしかいなかった。残りの 7割の生徒は全く読み取れていなかったわけではなく大 まかには読み取れてはいるが,文章の核心には迫ること ができていなかったのである。つまり,多くの生徒たち は文章を読んで「わかったつもり」になっていたのであ る。

これと同じことは,全国学力調査で活用型の問題の正 答率が低いこと,さらにPISA調査の結果で浮かび上 がった正確な情報を取り出す力がないことや文章や資料 の熟考が苦手であるという課題にもつながっており,全 国の多くの学校で見られる課題である。

このように今般の国語では読解の指導は行われている が「的確に読む力」の育成ができていない現状が見られ る。この状況の打開は,国語科が担うべき大きな義務で あり,今後注目されるであろう課題である。

(2)研究の目的

上記のような問題を解決するためには「的確に読む方 法」を生徒に学習させることが重要であると考える。「的

確に読む」とは,読む目的に応じて,それに関わる複数 の情報を漏れなく見つけ,それらから総合的に判断し,

読み取ることだと考える。しかし,この活動をする中で,

膨大な言葉の集まりから必要な情報を見つけ,重ね合わ せることや結びつけることが,生徒にとって難しいので はないかと感じる。そこで「シンキングツール」を活用 する。「シンキングツール」は思考を助けるための教具で あり,情報を抜き出す・整理する・結びつける・・・といっ た活動に非常に有効である。

これまでの国語の学習は内容を教えることが中心であ った。そして,これからは考え方を教えることが必要で ある。そしてその手段としてシンキングツールの活用が 有効である。

シンキングツールを国語の授業に取り入れる利点は これまでの研究の中で明らかにすることができた。具体 的に述べると,「たくさんの情報の中から必要なものだ けを取り出し,それらを整理したりまとめたりする作業 を行う国語の思考の過程で,シンキングツールは必要な 情報だけに注目でき,頭の中での考えたことを可視化す ることで、より深く思考することができる」という点で ある。シンキングツールの活用は「考え方を学ぶ」こと につながり,本研究のテーマである「的確に読む力」の 育成に大きな力を発揮するであろう。これまではベン図 やイメージマップ,チャート図を取り入れた教材開発を 行ってきたが,「読むこと」「書くこと」「話すこと」と いった多方面に領域が広がっていた。そこでこれまでの 研究成果を踏まえ,今回は国語学習の中心である「読む 本論の要旨

本研究は,シンキングツールを活用しながら,「的確に読む力」を身に付ける授業実践のまとめである。

「的確に読む力」を身に付けるために,本研究では「読解マップ」を開発し,授業に取り入れた。

「読解マップ」とは,「イメージマップ」をベースにしたシンキングツールで,文と文とのつながりと自分の 意見をマッピングさせ,可視化できるようにしたものである。

また,本研究では「読解マップ」を説明的文章と文学的文章の両方での実践を行い,「読解マップ」の効果に ついて検証を試みた。

シンキングツールを国語の授業に取り入れる研究を始めて今年で4年目に入る。他の先生方との交流の中で「聞い たことがある」という発言をよく耳にするようになり,シンキングツールという言葉も浸透し始めたように感じる。

しかし,その後「どのように使ってよいのかわからない」という言葉が続いて出てくることが多い。これが,現状な のであろう。今年行った実践事例を紹介し,少しでもシンキングツールの活用につながるようにしたい。

キーワード

シンキングツール 読解マップ チャート図 プロット図 的確に読む

(2)

こと」に視点を絞り,的確に読む方法を習得できる,的 確に読む力を身に付けることができるシンキングツー ル,教材の開発を行いたい。

またこれまでの研究の中で,シンキングツールは意見 の交流にも適していること,さらに交流によってより深 い読み,深い思考ができていることが明らかになった。

これは学習指導要領で叫ばれている言語活動の充実に も大きくつながる。その中で課題に感じていることが,

「どうすればより良い交流ができるのか」ということで ある。「より深まる」「より広がる」ようにICT機器と シンキングツールを活用した言語活動の在り方を考え ていきたい。

(3)シンキングツール(読解マップ)に関して 前述したとおり,「読解マップ」はイメージマップをベ ースにしたものであり,「読む目的を持ち,本文に沿いな がら,書き手の意見や思いにたどり着く」ことを意識し,

作成した。具体的には,同心円の中心に読む目的を書き,

第2円に目的に関わる本文から読み取れた情報を抜き出 させる。その際,文と文との関係を意識できるよう,同 じことが読み取れるものをつなげて記入させる。そして,

第3円に,そこから自分が読み取ったこと,考えたこと をつなげて記入させる。さらに、上記のほか期待される 効果としては,

*文章に書かれている情報をいったん取り出すことがで き,言葉とじっくり向き合うことができるのではないか。

*読解や解釈をするときには,言葉の意味やイメージや 本文中に書かれている情報,そして自分の体験や既存の 知識とのつながりが重要である。「読解マップ」はそのつ ながりを可視化することができ,より深い思考,的確な 判断につながるのではないか。

*思考を可視化できるので,読み落としに気が付くこと ができ,的確な読みにつながるのではないか。

*思考の過程を見ることができるので,解釈や意見のま とめをしやすくなるのではないか。

*書いた意見を述べたり,見せたりできるので班交流が 活発になるのではないか。

の4点が考えられる。

これから紹介する授業実践を通して,これらの効果に ついて明らかにしていきたい。

2.授業事例の実際

○説明的文章における実践

(1)単元名・対象・時期

「67年後」に考える

~戦争に関する教材を読み,意見文を書く~

(2)教材

「壁に残された伝言」 井上恭介 「意見文を書こう」

(中学生の国語 2年 三省堂)

(3)単元目標

【国語への興味・関心・態度】

自分から進んで教材を読み,筆者の意見や思いに触れな がら戦争に対する自分なりの新しい意見を持とうとする。

【読むこと】

筆者の思いや主張,さらに主張につながる理由など,目 的に応じて,広い範囲から情報を集め,的確に読み取り,

まとめるようとする。

【書くこと】

学習した教材の中から材料を集め,自分の意見や立場が 明確になるように,言葉や構成を工夫して書こうとする。

(4)学習指導計画

第1次:「壁に残された伝言」から戦争に関する筆者の主 張を読み取ろう。

第1時 戦争に関する情報を読み取ろう。

第2時 伝言が見つかった残った理由を読み取ろう。

第3時 筆者の「伝言」に対する思いを読み取ろう。

第4時 筆者の主張につながる理由を読み取ろう。

第2次:戦争に対する意見文を書こう。

第5時 「壁に残された伝言」から意見文に書く材料を 集めよう。

第6時 意見文を完成させよう。

第7時 戦争に関して新たに考えた意見を述べよう。

(5)授業の様子・シンキングツール活用について 第1時は「戦争に関する情報を読み取ろう。」を目標に 学習を行った。まず,既存の知識を確認する目的で,「第 二次世界大戦について知っていること」を挙げさせ,現段 階での「戦争に対する思い・考え」をノートに書かせた。

これは,後半に書かせる意見文と比較させ,本単元で新た に学んだことを引き出すためのものでもある。最後に「戦 争に関する情報」を本文中より,読み取らせた。

第2時では,「伝言が見つかった残った理由を読み取ろ う。」を目標に,「文章を二つに分ける」と「伝言が見つ かった理由を読み取る」の二つの課題に取り組ませた。最 初の課題で,前半と後半での内容の違いに注目させ,読む 範囲を絞らせた。二つ目の課題で,「伝言が見つかった理 由」を本文より読み取り,二つに分類させながら,「マイ ナスチャート図」に整理させた。その過程で,「見つかっ た理由」と「残った理由」が書かれていることに気がつく ことができていた。さらに,その二つの共通点より「奇跡 的」という言葉に注目することができていた。

第3時は「伝言という言葉に込められた筆者の思いを読

(3)

み取ろう。」を目標に,筆者の伝言に対する思いが読み取 れる言葉に注目させ,マッピングさせた。その後,マッピ ングしたものを見ながら,気がついたことを発表させると

「伝言に対する筆者の思いの変化が見られる」という意見 が出てきたので,その理由を考えさせ,さらに変化が読み 取れる言葉に注目させた。以下はその時に挙がった意見で ある。

・偶然 → 奇跡

・迫力は感じた → 心を揺さぶる

・途方に暮れた → 涙が出た

・遺物 → 遺産

第4時では「筆者の主張につながる理由を読み取ろう。」

を目標に,本文最後の一文「それは現代のわたしたちに,あ の日のことを静かに,力強く語ってくれる遺産であり,証人 なのである。」に注目させ,なぜ伝言を「遺産」と主張する のか,その理由を,読解マップを使って読み取らせた。

まず,前時で出てきた「遺物」と「遺産」の違いを考 えさせ,さらに,「遺産」と聞いて思いつくものやイメ ージ,辞書的意味などでとらえさせ,キーワードを第1 円に書かせた。次に,本文中より,遺産と主張する理由 を,キーワードとつなげながら読み取らせ,マッピング をさせた。その後,4人で交流をし,自分が読み落とし ていた情報をさらに記入させた。その後,全体で確認を し,「なぜ伝言を遺産と主張するのか」に対する自分の 解釈を,書き出した情報からつなげる形で,第3円に書 き出させ,発表させた。

第5時では『「壁に残された伝言」から意見文に書く材 料を集めよう。』を目標に学習を行った。まず「67年後 に考える」をテーマに『「壁に残された伝言」を読んで,

新たに戦争について考えたこと』を意見文に書くことを再 度確認し,これまで学習した教材を「新しく知ったこと」

「より深まったこと」「疑問に思ったこと」「発展して考 えたこと」「反対に思ったこと」の5視点で,「Wチャー ト図」で振り返らせ,意見文に書く材料を見つけさせた。

第6時では「意見文を完成させよう」を目標に,下書き を書き,交流を通して意見を集め,それを推敲に活かす学 習に取り組んだ。まず,交流するときの4視点(「意見を 支える根拠に説得力はあるか」「曖昧な表現やわかりにく いところはないか」「書き手の意見がはっきりと伝わって くるか」「根拠と意見が論理的につながっているか」)を 伝え,これを意識して意見文を書くように指示をし,下書 きに取り組ませた。その後4人グループで前述した4視点 と「その他気がついたこと」の5視点で互いに読みあいを し,気がついたことを「Wチャート図」に書き出させた。

第7時では,「戦争に関して新たに考えた意見を述べ よう。」を目標に,前回のWチャートを活かしながら,作 文を完成させ,4人グループでの交流を行った。さらに,

全体の中で3人の生徒に発表させ,それに対する感想を述

べさせ,本単元を終えた。

○文学的文章における実践

(1)単元名・対象・時期

太宰治の「勇者観」に迫る!

~比較しながら読もう!!~

(2)教材

「走れメロス」 太宰治

(中学生の国語 2年 三省堂)

(3)単元目標

【国語への興味・関心・態度】

文学作品の奥深さを感じながら読み進め,作者が描いた勇 者観を読み取り,それと自分の意見とを比較しながら,意見 を述べようとする。

【読むこと】

①読む目的に応じて,登場人物の言動の意味や描写など必要

【第4時で生徒が書いた読解マップ】

【第5時 振り返りWチャート】

(4)

な情報をとりあげ,的確な解釈に役立てることができる。

②文章に表れているものの見方や考え方,さらに書き手の思 いについて,体験や知識と比較しながら読み自分の考えを持 つことができる。

【言語についての知識・理解・技能】

人物の心情や行動を表すために書き手がどのような言 葉や表現を用いているかに注目し,その言葉の意味やイメ ージを踏まえながら読むことができる。

(4)学習指導計画

第1次:「メロスは勇者か?」というテーマで行われる討 論会に向けて,自分の意見をまとめよう!

第1時 私にとっての勇者を挙げ,交流を通して「私 の勇者観」をとらえよう。

第2時 「私の勇者観」にそって全文を読み勇者に結び つく情報と勇者に結びつかない情報を本文中から 見つけよう。

第3時 勇者に結びつく情報と結びつかない情報をマ ッピングしながら書き出し「メロスは勇者か」に 対する自分の解釈をまとめよう。

第2次:原作との比較から太宰治の勇者観を読み取ろう。

第4時 原作と「走れメロス」を比較し,共通点と相違 点をベン図に書き出そう。

第5時 「人質」との比較から,相違点に注目し,太宰 治が新たに書き加えたメロスの人物像をとらえ よう。

第6時 太宰治がディオニスとセリヌンティウスに付 け加えたものから,メロスとの比較を通して「走 れメロス」を通して描きたかったことをとらえよ う。

第7時 「メロスは何のために走ったのか!」を読み 取ろう。

第8時 太宰治の勇者観についてまとめ,自分の勇者観 と比較し,意見を述べよう。

(5)授業の様子

本単元に入る前に,授業開始の帯時間を使って,「走れ メロス」を黙読する活動を6回行った。その中で,2回通 して読ませ,1回目はとりあえず読む,2回目は「メロス は勇者か?」を考えながら読む,という目的を持たせて読 ませた。また,「あなたは勇者になったことがありますか?」

と「あなたにとっての勇者は?」という二つの質問に対す る答えとその理由を考えてくるよう,事前に課題を出して おいた。

第1時では,「私の勇者観をとらえる」を目標に学習 を行った。まず「勇者」の意味を辞書でとらえ,「あな たは勇者になったことがあるか?」さらに,「あなたに とっての勇者とは?」について考えてきたことを4人グ ループでベン図を使い,違いや共通点に注目させながら

交流し,集まった情報から「私の勇者観」に当てはまる キーワードを挙げさせた。

第2時では『勇者に結びつく情報と勇者に結びつかない 情報を本文中から見つけよう。』を目標に,範読を聞き,

本文中より前時に挙げたキーワードを意識しながら,勇者 に結びつく情報と結びつかない情報を読み取らせた。そし て,現段階での「メロスは勇者か?」についての自分の意 見を書かせた。

第3時では,『「メロスは勇者か?」について,自分 の解釈を述べる』を目標に学習に取り組んだ。中心に「勇 者」を書かれた「読解マップ」の第1円に「私の勇者観」

を記入させ,そこにつながる勇者に結びつく情報と勇者 に結びつかない情報を第2円にマッピングさせた。その 後4人グループで,どこを書き出したのか,どのように つなげたのかを交流させ,新たに気がついたことを補わ せた。次に集めた情報から『「メロスは勇者か」につい て考えたこと』を,第2円の情報とのつながりを意識さ せながら,第3円に記入させ,さらに,それを文章とし て表現させた。

【第3時で生徒が書いた読解マップ】

(5)

第4時は『原作と「走れメロス」を比較しよう』を目標 に原作であるシラーの「人質」と比較させ,共通点と相違 点をベン図に書き出させ,共通点に絞って,交流させ,2 つの作品から共通して読み取れるメロスの人物像を解釈 させた。

第5時では,「太宰治が新たに書き加えたメロスの人物 像をとらえよう。」を目標に,相違点に注目させ,そこか ら,太宰治が,新たに書く加えたメロスの人物像について 考えさせた。

第6時では,『太宰治が「走れメロス」を通して描きた かったことをとらえよう。』を目標に学習を行った。メロ ス同様,ディオニスを原作と比較させ,太宰治が新たに書 き加えたこと,さらにセリヌンティウスに付け加えたもの を読み取らせた。そして,メロス,ディオニス,セリヌン ティウスとの比較を通して,三つの共通点から太宰治が「

走れメロス」を通して描きたかったことに迫った。その結 果「人間らしさ」という言葉にたどり着く生徒が多く,そ の意見が出たとき「群衆にも人間らしさが付け加えられて いる」という発言がありさらに読みに対する深まりが感じ られた。

第7時では『「メロスは何のために走ったのか!」を読 み取ろう。』という課題で,学習を行った。この課題は学 習を進める中で,生徒の中から生じた疑問であり,いろい ろな解釈が生まれていた。これを明らかにすることで,太 宰治の勇者観により一層迫れると思い,学習計画の中に入 れた。プロット図を配布し,まず「走れメロス」のクライ マックスを図の下部に書かせた。生徒によって意見が分か れ,「メロスが再び走り始めるところ」「メロスがフィロ ストラトスと話しているところ」「セリヌンティウスの縄 がほどかれたところ」「ディオニスが改心するところ」な どが挙がった。次に「メロスは何のために走ったのか?」

を課題に,走った目的を本文中より読み取らせ,プロット 図に記入させた。それを4人グループで交流し,全体で最 後に出てくる目的「信じられているから走るのだ。間に合 う,間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないの だ。わたしは,なんだか,もっと恐ろしく大きいもののた めに走っているのだ。」という部分に注目させ,『「もっ と恐ろしく大きいもの」とは何か』を考えさせた。

第8時は『「太宰治の勇者観」についてまとめ,自分の 勇者観と比較し,意見を述べよう。』を目標に学習を行っ た。まず「太宰治の勇者観をまとめよう。」を課題に,こ れまで読み取ってきたことを振り返らせまとめさせた。次 に「自分の勇者観と比較しよう」という課題で,第1時に 考えさせた「私の勇者観」と比較させ意見を発表させた。

さらに,「太宰治の勇者観に対して意見を述べよう」とい う課題に取り組ませ,4人グループで意見交流を行った。

そして,本単元の最後に,もう一度「メロスは勇者か?」

ということについて自分の意見をまとめさせ,本単元を終

えた。初読では40人中35人以上の生徒が「メロスは勇 者だ」という意見であったが,最後には約半分になってい た。勇者でないと考えた生徒は「勇者とはもっと完璧な人 物であると思ったから」「人間らしさが勇者には必要かわ からないから」などの意見があった。勇者であると解釈し た生徒は「困難に負けず,再び立ち上がり,やり通したか ら」「人の心を動かしたから」といった意見が見られた。

生徒の解釈を読んでいて,学習の中で自分と異なる解釈と 出会い,意見が変容し,自分なりの根拠を示しながら考え ている様子が感じられた。

3.研究を終えて

まず「読解マップ」について,生徒のアンケートによ ると「使いやすかった」「まとめやすかった」「見やすく 整理できた」「つながりが意識できた」「後の自分の意見 が書きやすかった」と97%の生徒がよい評価をしてい た。授業をしていても,読む目的や課題のステップがツ

【第7時 プロット図】

【第8時 勇者観まとめYチャート】

(6)

ールにも記入されているため,意識して読み進め,課題 に取り組むことができているように感じる。何より「書 く」という活動が増えるため,記憶に残る情報も多いの であろう。また国語が苦手な生徒も,書ける情報は少な いが学習に参加をすることができており,この点もシン キングツールの大きな利点であると感じる。「的確に読む」

という点においても大きな成果が見られた。書きだすこ とにより気が付く言葉があったり,可視化することによ り読み落としに気が付いたりすることができ,広い情報 の中から解釈をすることができていた。「走れメロス」の 学習の中でも最初の解釈と最後の解釈で変容が見られた のも,より多くの情報の中から自分なりの解釈ができた からだと思う。しかし,まだ,生徒の解釈が多岐にわた っていた。いろいろな解釈があって良いとは思うが,そ の中にはおそらく明らかな誤読もあるはずである。そこ をどのように把握し,的確な読みに導いていくかがこれ からの課題である。

つぎに説明的文章と文学的文章におけるシンキングツ ールの活用に関して述べる。まず説明的文章において,

筆者の意見と根拠のつながりが可視化できることでより 的確な読みにつながる。今回は主張をスタートに根拠に 注目しながら情報を集め広げていく読み方であったが,

根拠から主張へと狭めていく読み方もできるのではない かという指摘があった。文章読解のプロセスを考慮する と後者の方がより実生活に合っているので,今後このよ うな活用の実践も行っていきたい。文学的文章において は,じっくり言葉と向き合うことができるので,新たな 気付きを生み出すことができる。また文章全体を対象に 読めることができるので,場面ごとに読むという従来の 国語学習と違った学習展開をすることができる。しかし どうしても論理的に,現実的に読んでしまうため,個々 の解釈の幅を狭めてしまい,文学特有の「読み浸る」「読 み味わう」要素が薄まってしまうという課題が見えた。

このような文学の良さも意識しながら,より有効なシン キングツールの活用を目指していきたい。

さらに,今後の展開も含めて,課題を二点挙げる。一 つ目が交流の場面での課題である。授業を参観いただい た方から,「意見交流は活発に行えていたが,単なる情報 の出し合いに終わっていた。」「異なる解釈に出会った時 の議論が見られなかった」という指摘を受けたことによ り,表面上の交流であったことに気付かされた。生徒の 様子を見ていると,交流を通して新たな気付きや意見の 変容は見られているが,もっと交流を通しての深まりが 必要である。それができていなかった原因として,「話す

・聞く」の指導がしっかりとできていなかったことが挙 げられる。言語活動の充実が叫ばれている中,それをよ り有効にするためには,「話す・聞く」の力をしっかりと 身に付けさせることが必要である。わかりやすい話し方

はもちろん,「話の聞き方」「メモの取り方」「質問の見つ け方」などを指導することでより充実した,深まりのあ る言語活動になると思う。今後,シンキングツールを使 って「話す・聞く」力を伸ばす授業の実践にも取り組ん でいきたい。

二つ目は表現にかかわることである。これも指摘され たことであり,「根拠は明らかにしているが,意見を述べ るときの理由付けがされていない」という課題である。

今までシンキングツールを活用させながら,思考させ,

判断させる学習を行ってきた。しかしその先がなかった のである。今,学習の中で「思考→判断→表現」が注目 されている中,次は「判断→表現」につなげていくため のシンキングツールが必要であると感じた。やはり,自 分の思いをよりわかりやすく,より的確に伝えていく力 はとても大切なものである。そのスキルを身に付けられ る,その過程を意識できるシンキングツール,授業展開 を考えていきたい。

【説明的文章の実践事例 第4時 指導案】

【文学的文章の実践事例 第3時 指導案】

【説明的文章の実践事例 第4時 学習指導案】

【文学的文章の実践事例 第3時 学習指導案】

【説明的文章の実践事例 第4時 学習指導案】

【文学的文章の実践事例 第3時 学習指導案】

参照

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