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市民参加型 GIS の水環境保全活動への応用

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Academic year: 2021

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市民参加型 GIS の水環境保全活動への応用

東善広,長尾是史,藤田友丈,清原秀允

An application to the water environmental improvement activities of public participation GIS

Yoshihiro AZUMA, Tadashi NAGAO, Tomotake FUJITA and Hidemitsu KIYOHARA

Abstract: This paper described the development process of a WebGIS-based environmental information system for public participation in the Lake Biwa watershed, which was constructed on the basis of the former study on the Akanoi Bay watershed where is located to the south east of the lake. In order to increase the usefulness in environmental improvement activities of public participation WebGIS, it was considered that its role and application as a database is important. And it was thought that not only the use of WebGIS, but also the basic use of GIS in the various forms, in which include the high quality output or publishing, is important.

Keywords: 市民参加型 GIS(Public participation GIS),水環境(Water Environmental),

琵琶湖(Lake Biwa)

1.はじめに

GIS 利用は,研究者による研究ツールとしてや 行政の行政情報の統合化業務ツールとしての実例 は数多く存在するが,地域住民の環境保全活動に 利用する例は決して多くなく,GIS の今後のさら なる応用が期待される.

本報告では,琵琶湖流入河川の小流域,赤野井 湾流域における水環境保全活動への市民による GIS 利用の取り組みならびに琵琶湖流域全体を対 象とした WebGIS 構築の結果から,市民参加型 GIS の課題と展望を検討した.

2.琵琶湖の水環境保全活動における GIS 利用 2.1. 赤野井湾流域における GIS 利用

近年,琵琶湖では,水の入れ替わりにくい内湾 のような水域で著しい富栄養化現象が見られ,湖 の南東部に位置する赤野井湾(守山市)などがそ の典型例である.赤野井湾では,1988 年頃からア オコがたびたび発生するようになり,特に 1994 年夏の渇水時には,連日のように発生する状況で あった.

この赤野井湾の水環境を改善するためには,流 域全体を環境保全型に変えていく長期的な視点に 立った取り組みが必要である.

そこで,筆者らは,1998 年から GIS 等の情報技 術を市民による環境調査活動の成果集約や一般市 民への成果還元等に活用できるよう技術支援を行 東: 〒520-0022 滋賀県大津市柳が崎5-34

滋賀県琵琶湖・環境科学研究センター E-mail: [email protected]

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ってきた.(藤田・中村,1998; 東ほか,2000) 赤野井湾流域において水環境保全活動を展開し ている中心的団体が NPO 法人びわこ豊穣の郷(以 下,「豊穣の郷」と呼ぶ)である.「豊穣の郷」は,

1997 年から,流域内の里中河川約 100 ヶ所で,パ ックテスト等による簡易な水質調査を住民達の手 で実施・継続している.

筆者らは,赤野井湾の水環境改善のしくみづく りの一環として,この団体の膨大な調査資料を,

順次データ化,マップ化していくための技術支援 を行った.その際,極力押し付け的な技術導入で はなく,会員の自主的な取り組みを尊重し,会員 自らの手による情報の収集,整理,発信のプロセ スを促進するようにしてきたことである.その結 果,会員によるホームページづくりや GIS を用い た水環境マップづくりなどの技術的しくみづくり を達成してきた(図 1)

2.2. GIS のホタル調査への応用

特に,2001 年の水環境マップⅡづくりにおいて,

河川水質や水辺環境の変化を明らかにするため GIS を大いに活用したことが契機となり,「豊穣の 郷」では GIS への関心と期待が高まった.例えば,

市民から寄せられたホタル飛翔状況に関する情報 を,GIS データベースとして毎年蓄積し,ホタル 復活のための基礎情報にしていくことも始めた.

しかし,GIS が使える人材がほとんど皆無だった ため使い方に苦労したが,2002 年 10 月に「ほた るマップ」を何とか会員が独力で作成した(図 2) また,こういった環境保全活動の現場での GIS 利用は,単にパソコンでのマップ作成のみで目的 を満足できるとは限らない.市民参加による活動 では,例えばホタルの生育条件を分析する際,数 量的に関係を分析するよりも,その地域の生活者 の視点からの知識や経験などの環境イメージを 人々の間で共有し合うことが重要な場合がある.

そのような例が,2005 年に取り組んだ「ホタル復 活のための水辺環境調査」である.

ここでの GIS は,今回新たに実施した水辺環境 調査の結果のみならず,会員がこれまでの活動で 図 1 GIS を用いて作成した水環境マップ(左)と水環境

マップⅡ(右). 図 2 GIS を用いて作成したほたるマップ.

図 3 ホタルの生息環境を分析するためのワークショップ。GIS で作成した大地図の上に、カワニナ、水質、

河川構造などの調査結果を書き込みながら、議論してグループごとに結論を導いていった。

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培ってきた経験や知恵も合わせて,話し合いなが らホタルの生息環境を分析していこうとするワー クショップでの大地図づくり(図 3)や,その結 果を踏まえ,流域を巨視的に見た場合のホタル飛 翔と環境条件の関係を明らかにし,地域住民への 普及啓発として配布する環境マップ(図 4)の作 成に用いた.

単なる環境分析というよりは,参加者の環境イ メージを共有することを尊重したワークショップ 方式では,システム化された GIS 利用よりは,GIS で作成した大きな紙地図に情報を手で書き込んで 話し合って行くほうが効果的だった.環境マップ についても,ワークショップ等で分析した結果を,

いかにわかりやすくマップとしてアウトプットす るかが重要であった.つまり,このような活動の 現場では,そのときの課題に迅速に対応できる,

使いやすい,わかりやすい GIS のアウトプットを,

いつでも手軽に作成できることが重要であった.

3.WebGIS の構築

3.1. 赤野井湾流域環境情報システム

本システムは,前章で述べた「豊穣の郷」にお ける GIS 活用の成果を WebGIS で情報共有するため のもので,1999 年から運用している.赤野井湾流 域の全調査地点の水質調査結果を、年別、調査項 目別に地図上で視覚的に確認できるようになって いる(図 5)

当地域では,たくさんの小河川が網の目のよう

に流れているため,水路が十数メートル離れただ けで水源,流路,水質特性が大きく異なる場合が あり、当システムは,主に水系の違いを確認しな がら調査結果を調べる際に用いられている.

3.2. びわこ環境マップシステムの構築 赤野井湾流域での取り組みをモデルにして,琵 琶湖の各流域に応用できる WebGIS として開発し たのが「びわこ環境マップ」である(図 6).赤野 井湾流域環境情報システムは単方向型マップシス テムであるのに対し,当システムは,調査地点の 位置,水質と指標水生生物に関する調査データを 利用者(調査者)自身が入力することができ,入 力した結果に応じてマップがリアルタイムで作成 される双方向型マップシステムである.

図 4 ホタル飛翔と環境条件との関係を表した水環境マップの例

図 5 赤野井湾流域環境情報システム(WebGIS)

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びわこ環境マップシステムは,試験運用が 2006 年 4 月,本格運用が同年 7 月と活用が始まったば かりであり,今後,活動主体のニーズに答えられ る本当に役立つ WebGIS 等のあり方を検討してい くことが重要だと考えられる.運用を始めて間が ないため,その検討は今後の課題ではあるが,少 なくとも前章で述べた事例の結果から言えること は,WebGIS のようなシステム構築だけでなく,活 動現場において様々な形で GIS を利用する場面を 作り出すことが重要であると考えられる.びわこ 環境マップシステムの活用もその視点を取り入れ ることが重要である.当システムはパソコン画面 上での利用のみが意味があるのではなく,データ ベース機能,つまり,当システムに蓄積された調 査情報を,目的に応じて新たに加工し活用してい くことが重要だと考えている.図 7 はその例であ り,調査参加者に結果を還元するために,当シス テムのデータを用いて,環境 NPO 関係者と協力し て作成したマップである.

4.おわりに

本報告では,琵琶湖の南東部に位置する赤野井 湾流域におけるこれまでの調査研究結果を整理し,

琵琶湖の各流域で応用可能な WebGIS を開発する までのプロセスを述べた.WebGIS 等市民参加型 GIS の環境保全活動における有益性・有用性を高 めるための方策や工夫についての検討は,今後さ らに実証調査を進める必要があるが,これまでの

結果から,WebGIS のデータベース機能の活用や,

WebGIS のようなシステムだけでなく,紙媒体への 高品質出力を含めた様々な形での GIS 利用との併 用などが重要であると考えられた.

謝辞

びわこ環境マップシステムの開発においては,

データ提供において多くの環境保全活動団体に協 力していただきました.この場をかりて各団体の 皆様にお礼申し上げます.

参考文献

東善広・中村正久・藤田知丈(2000) 住民参加型の 環境改善活動における情報共有化(Ⅱ),環境情 報科学論文集,13,25-30.

藤田知丈・中村正久(1998) 住民参加型の環境改善 活動における情報共有化,環境情報科学論文集,

12,41-46.

図 6 びわこ環境マップシステム(WebGIS)

図 7 びわこ環境マップのデータベースから作成し た身近な水環境全国一斉調査(2006 年)の滋 賀県マップ出力図

参照

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