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学生時代と図書館 48

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Academic year: 2021

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一生学生、ということでお許しを頂いて、長い 間に経験したエピソードの二、三をお話しいたし ます。

学生時代には、医学部の各教室ごとに図書室が あった。卒業に際して、私たちのクラスは、当時 最良の教科書とされていたアメリカのテキストブ ックを、内科の図書室に寄贈した。アメリカの新 しい文献が入手できず、熱心な人たちは、アメリ カ文化センターへ通った時代であった。

その後、医学部図書館へ各教室の蔵書を集中す る制度になったが、蔵書数はとても十分とは言い 難い状態であった。大学の医局時代をふりかえる には、恩師前川孫二郎先生をはなれては考えられ ない。先生の偉大さを示す一例をあげると、私達 が京都大学医学部の入学試験を受けたのは昭和24 年(1949年)春のことであるが、その数学の入試 問題に「世間の人は、1たす1は2とは限らないと いうが、これについて論ぜよ」とあり、後に前川 先生のご出題とわかった。

この問題は、現在恐るべき発達をみているコン ピュータの原理ともう一つ近年かまびすしいファ ジーの問題を内含しているもので、半世紀以上も 前に、すでに前川先生はこれらの問題を提起して おられたのである。その前川先生が停年で大学を 辞される頃、「齋明寺君、この論文の校正をしな さい」との最後のご下命を頂いた。

さあ、困った。引用された文献すべてに当たら なければ校正は出来ない。幸いその頃は医学部図 書館もかなり整備されていて助かったが、貸し出 し中の文献が多くて時間のロスが多く、また他大 学からとりよせるのにも時間がかかり、集中でき ないのには情けない思いをした。その頃でも、本 当に主要なものは、各専門分野の教授がおもちの 書物を、特にお願いして拝借しなければならなか った。回り道は併し、無駄ではなかった。その頃、

そ れ 程 発 展 し て い な い

(と思っていた)領域の 章を開いたところ、驚い たことに、ちゃんと読ま れて、書き込みがしてあ ったのには参った。世の

中には、すごい人が居られることを再認識した。

かくて無事(?)恩師の論文の、理解できないと ころは直接おたずねして、校正を完遂することが 出来た。それ以来、少し論文を書くことが出来る ようにして頂いたと有り難く感謝申し上げてい る。

もう一つ忘れることが出来ないのは、コーネル 大学のライブラリーである。1966年機会を頂いて New  York  CityのCornell  University  Medical Collegeに、当時腎・体液生理学の第一人者であら れたRobert  F.  Pitts教授のご薫陶を頂く幸せに恵 まれた。コーネルのライブラリーはよく整ってい るので有名で、道路一つへだてたロックフェラー 大学からの利用者も多いと聞いた。利用の多い標 準的な書籍は必ず複数冊おいてあって、単数の状 況では貸し出さなかった。大抵の文献は、直ちに 見付かり、その日のうちにコピーが得られた。そ の気になってその時間があるときに、集中して勉 学が捗ることを体験した。

ご縁を頂いて京都外国語大学に奉職させて頂い て、本学の図書館が、人類の文化の本物の歴史を 多量所蔵されていることを、折にふれて教えられ、

その慧眼とご努力に深い敬意を抱いている。先日 も、野口英世の自筆署名入りの武士道のお話しが 新聞紙上を飾っていた。

最近では、IT機器システムの発達により、簡単 に情報にアクセス出来るようであるが、私には原 著(書物)に直接接すれば著者の薫りがするよう に感じられる。ゆっくりと考えながら読むことも 出来やすいと思われる。

論語の『學而不思則罔。思而不學則殆。』が恩 師の最終講義の教えであるが、感慨一入である。

さいみょうじ ひろし(京都外国語大学 校医)

学生時代と図書館 48

齋明寺 央

『學而不思則罔。思而不學則殆。』

参照

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