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240 (240一一242) 小児保健研究 翻灘翻麟 …二二二丁丁丁i二二灘露天灘面懸海面難癖無声難寸寸

ワクチンで防ぐ子どもの病気

早産児・基礎疾患を有しワクチン接種開始が遅れた,

        子どもたちへの予防接種の実践

菅原美絵(国立成育医療研究センター)

1.はじめに

 早産児・基礎疾患を持つ乳幼児は,出生直後からそ の時間の大半を病院で療養するため,治療に時間を費 やすことが多く,予防接種開始が遅れ予防接種可能な 時期に限りがある傾向があります。その一方で,早産 児や,心臓疾患,薬剤による免疫抑制状態におかれた 基礎疾患のある乳幼児が,インフルエンザ菌b型(ヒ ブ),肺炎球菌などによる細菌感染症に罹患すると,

一般健常児に比べ重症化しやすく,予後と死亡率に大 きな影響を与える可能性があります。そのため,子ど もたちをワクチンで予防できる病気(以下,VPD:

Vaccine Preventable Diseasesとする)から確実に守 るためには,必要なワクチンを適切な時期に適切な回 数接種することが重要です。しかしながら,基礎疾患 を持つ子どもの多くは,予防接種要注意者1)に含まれ るため接種を躊躇されることがあります(表)。また 血液疾患・移植治療を受けた子どもたちは,いったん 獲得した免疫がその基礎疾患や治療により低下してし まうことがあり,免疫再獲得のため,もう一度ワクチ ン接種を受ける必要がありますが,その時期は治療終 了後から数年かかることもあり接種ができません。そ の中で社会に出て日常生活を送るわけですが,日本国 内のワクチン接種率が低い疾患(水ぼうそう,おたふ くかぜ等)は地域での流行がしばしばみられ感染する 可能性が高い現状があります。今回,早産児・基礎 疾患を有しワクチン接種開始が遅れた子どもたちを VPDから守るために必要なことについて述べさせて いただきます。

1.日本の予防接種スケジュール

 日本の予防接種は,予防接種法に基づいて,一類疾 病(ジフテリア,百日せき,急性灰白髄炎(ポリオ),

麻しん・風しん,日本脳炎,破傷風,結核),二類疾 病(インフルエンザ)のワクチンの定期接種を行って います。これらの予防接種は,各市町村が実施主体と なり居住地区により実施されています。また任意接種 の予防接種対象ワクチンには,肺炎球菌(23価),水 ぼうそう,おたふくかぜB型肝炎,A型肝炎,ロタ ウイルスがあり,更に子宮頸がん等ワクチン接種緊急 促進事業の対象ワクチンとして,Hib(インフルエン ザ菌b型),肺炎球菌(7価),HPV(ヒトパピロー マウイルス)があり,これらのワクチンを予定通り接

表 予防接種要注意者(文献1より)

!心臓血管系疾患,腎臓疾患,肝臓疾患,血液疾患および  発育障害等の基礎疾患を有することが明らかな者 2予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた者,または  全身性発疹などのアレルギーを疑う症状を呈したことが  ある者

3接種しようとする接種液の成分に対してアレルギーを呈  する恐れのある者

4過去にけいれんの既往がある者 5過去に免疫不全の診断がなされている者

6BCGについては,過去に結核患者との長期接触がある者,

 その他結核感染の疑いのある者

*要注意者の考え方

 心臓血管系疾患,腎臓疾患,肝臓疾患,血液疾患および発 育障害等の基礎疾患を有することが明らかな者とは,①心臓 血管系疾患を有する者,②腎臓疾患を有する者,③悪性腫瘍 の患者,④HIV感染者,⑤重症心身障害児(者),⑥低出生 体重児⑦その他基礎疾患がある者,を指す。

国立成育医療研究センター感染防御対策室 Tel:03-3416-0181 Fax:03-3416-2222

〒157-8535東京都世田谷区大蔵2-10-1

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第72巻 第2号,2013

種するための,接種スケジュールも過密になります。

接種スケジュール表は,国立感染症研究所から出され ている物をはじめ,日本小児科学会,NPO法人VPD を知って子どもを守ろうの会からも出されています。

昨今ではそのスケジュールの過密さ,複雑さから,ワ クチン接種スケジュールを自動で立てる機能を持った スケジューラーも利用できるようになってきました。

 これら多くのワクチンの接種を単回接種にて実施す るのは困難で,いくつかのワクチンは同時接種による 接種が推奨されています。健常な子どもたちが開始時 期を遅れずに開始させたとしても,全ての接種をスケ ジュール通りに終了させるのは大変です。基礎疾患の ある子どもたちは,開始時期が遅れることに加え体 調の変化に伴い接種スケジュール通りには接種できな いことも多くあり,全てのワクチン接種を予定通りに 終了させることは通常より困難であることが予想され

ます。

皿.基礎疾患を持つ患者のワクチンスケジュールの実際  予防接種可能な時期に限りがある子どもたちは,同 時接種により適切な時期に可能な限りのワクチン接種 を進めていくことでVPDへの罹患を防ぐ必要があり ます。日本国内においては,2種類以上の予防接種を 同時に同一の接種対象者に対して行う同時接種は,医 師が特に必要と認めた場合に行うことができるとされ ていますが,諸外国においては,一般的に行われてい る医療行為です。特に乳児期においては複数回接種が 必要な三種混合ワクチン,インフルエンザ菌b型(ヒ ブ)ワクチン,結合型肺炎球菌ワクチンなどの同時接 種が積極的に勧められています。

同時接種した子どもの持つ基礎疾患

2YO,60

■消化器

□肝移植後 庭神経

■循環器 國代謝系

■感染症 騒皮膚

■遺伝

□腎臓  N=104

図1 成育医療研究センターワクチン同時接種者の基礎   疾患(文献2より)

241

 当センターでは,基礎疾患を有する長期入院患者に 対し,自宅での療養に向け子どもたち個々に合わせた ワクチンスケジュールを立案しワクチン接種を行って います。その中で,単一によるワクチン接種ができず,

同時接種(図1)になる子どもたちは年間約10%に上 ります。同時接種となる子どもたち2)の多くは長期間 にわたる入院治療を必要とし,社会に出る前の準備と して1回あたり平均3種類のワクチンを同時接種して います。また子どもたちは予防接種要注意者1)に含ま れ,退院後地域でのワクチン接種を躊躇され接種でき ないこともしばしばあり,その場合には外来において もワクチン接種を実施し副反応等の問題がないことを 再確認後に地域でワクチンが接種できるように働きか けています。早産児においては,入院中から暦年齢で のワクチン接種を実施し退院後は地域で接種できるよ う保健師,地域のかかりつけ医への連絡を行います。

これらの取り組みにより予防接種可能時期を有効に使 いVPDを予防しています。

IV.周囲でのワクチン接種の勧め

 基礎疾患があり,ワクチン接種ができない子どもた ちにとっては,周囲にいるその疾患を罹患した人から の伝播が脅威となります。そのため,ワクチン接種が できない子どもたちの周囲の大人や同胞がワクチンを 接種することにより,家族全体でひいては地域社会全 体でVPDの流行を防ぎ子どもたちをVPDから守る ことができます。当センターにおいては,これから入 院治療を開始する患者,入院中の患者を取り巻く家族 のワクチン接種を推奨しワクチン接種できない子ども たちへの伝播予防を推奨しています。また,出産を希 望される方へは麻疹・風疹・水ぼうそう・おたふくか ぜの抗体価検査を実施しています。妊婦全体の約18%

の方に検査した項目のうち何かしらの抗体陰性が確認 され,その場合には出産後の初回産後健診にてワクチ ン接種を勧めています。

V.課

 早産児・基礎疾患を持つ乳幼児は治療のために,予 防接種法に定められた実施主体の自治体外においての ワクチン接種を二二なくされます。居住している地域 の連携状況にも大きな差がありますが,居住区により 手続きが必要となります。

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1.定期接種に指定されたワクチン

 公費負担が決まっていますが,自治体により公費助 成実施の指定場所による接種ができず,ワクチン接種 費用の自己負担・一時自己負担が生じることも少なく ありません。各医療施設は,個々の子どもたちの居住 地域と連絡を取り,できる限り自己負担のないように 働きかけを行っていますが,施設および患者家族によ

る手続きが必要です。

2.子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業対象ワクチン  定期接種によるワクチンの公費負担が可能となって いる自治体であっても,接種場所の自治体毎での助成 金が決められているため,指定のワクチン接種場所に よるワクチン接種をすることができない場合は自己負 担となることもあります。この場合は,自治体により 対応が分かれます。

3.任意接種のワクチン

 多くは自己負担となっています。自治体によって費 用の一部補助がある地域があります。おたふくかぜ,

水ぼうそうワクチンを例にとると2012年8月現在,全 国で5%にあたる97自治体3)が子育て支援の側面か らも接種費用の助成を開始しワクチン接種率を上げ VPD予防に取り組んでいますが,この場合にも指定 機関での接種が必要です(図2)。

 子どもを取り巻く周囲環境全体での予防をするため には,母親を含むきょうだい,父親同居している家 族へのワクチン接種が必要となりますが,そのワクチ

ン接種の制度助成がなく接種が進まない現状があり

ます。

 これらのことより,年齢・場所を問わずワクチン接 種が進む制度の確立が望まれます。

Vしおわりに

 ワクチンがもたらす社会への影響は,①自分がかか らないための予防②かかった時の症状の緩和,③周 りの人に移さないために(集団免疫),がありますが,

早産児・基礎疾患を持つ乳幼児はしばしばワクチンを 接種することができません。そのため,地域社会全 体で子どもたちを守るために,社会全体が免疫を持つ 仕組みを作り国全体でVPDの流行を抑えることが必

要です。

小児保健研究

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葛道府県別水庫・おたふくワクチン接種について  公費助威開始されている自治体の割合

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図2 2011年現在,都道府県別公費助成が開始されてい   る自治体の割合

  都道府県に所属する各市区町村が提供しているホーム   ページにおいて予防接種のページの閲覧,“水痘”,“お   たふく”で検索を行い抽出。

  割合は,公費助成を実施している市区町村/県内の市   区町村数で算出した。

         文   献

1)予防接種ガイドライン等検討委員会監修.予防接種  要注意者「2012年予防接種必携⊥予防接種リサーチ

 センタ・一,2012:50-51.

2)齋藤昭彦,他.基礎疾患をもつ小児に対する同時接  種によるワクチン接種 日本小児科学雑誌2012;

 116 (5) i 823-826.

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