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動線データを活用したバス走行改善支援 及び道路整備効果の検証

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Academic year: 2021

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土木技術資料 53 - 10 ( 2011 )

- 22 -

特集:ITSの新たな展開

動線データを活用したバス走行改善支援 及び道路整備効果の検証

濱田俊一 今井龍一 ** 井星雄貴 * **

1 .はじめに 1

交通計画などの各施策の推進には、交通行動を把 握する必要があり、数年の代表する 1 日を調査した 道路交通センサス

やパーソントリップ調査

など の結果が使用されている。また、道路の整備後の取 り組みに着目すると、交通量やプローブ

車両の実 走行の実地調査により整備効果を把握している。実 地調査は、実状を直接計測できる利点があるが、作 業負荷や調査費用がかかる。このため、通常は整備 前後 1 日程度の交通行動の調査になることが多く、

調査日の状況に大きく影響を受けてしまう。

一方、昨今は、交通行動を明らかにできる動線 データ

の調査技術が進展している。具体的には、

プローブカー、携帯電話や鉄道・バスの交通系 IC カードなどから、デジタル化された鮮度の高い動線 データが大量かつ広範囲で 24 時間 365 日収集されて いる。道路行政でもこれらの動線データの活用に注 目しており、例えば、プローブデータを用いて道路 整備の効果を把握する事例がある。

現在の事例の多くは、単一の動線データが用いら れている。しかし、多様な動線データの収集が進ん でいる現状を踏まえると、複数の動線データを用い て分析することにより、交通分野で新たな知見を広 められる可能性がある。

本稿は、複数の動線データの組合せ分析の効果的 な事例として、埼玉県内のバス停留所付近の走行改 善支援

1)

および道路整備効果の検証

2)

を実際のバス IC カードデータおよび民間プローブデータを用い て分析した結果を紹介する。

2.バス停留所付近の走行改善策の検討支援

2.1 バス停留所別利用者数の整理(Step.1)

分析対象エリアは、さいたま市内の全 1,116 停留 所(図 -1 )、分析に用いる動線データは、 2010 年 6 月( 1 ヶ月)とした。まず、バス IC カードデータを

────────────────────────

A supporting method for bus transportation planning and effect of road improvement by using multiple trail data

土木用語解説:道路交通センサス、パーソントリップ調査、

プローブ、動線データ、バスベイ、 DRM (デジタル道路地図)

用いて各停留所別利用者数を整理し、全停留所から 鉄道駅を除く 802 停留所の乗車人員を集計した結果、

上位 30 停留所合計で全乗車人員の約 27 %を占めて いた。施設別では、大学、高校、病院、集合住宅や 区役所などが上位を占めていた。

2.2 バス停留所の動的な状況整理(Step.2)

2 種類の動線データを用いて、バス停留所別平休 別の利用者数やバス停留所別時間帯別旅行速度など の動的な状況を整理した(図 -2 右側)。太田窪停留所 の場合、平日 1 日あたり約 640 人のバス利用者が存 在していた一方で、休日では約 300 人と平日の 5 割 程度利用者数が把握できた。また、平日朝夕ピーク 時の旅行速度が低いこと、平日夕ピーク時の一般車 はバスの旅行速度と同程度であることも把握できた。

2.3 バス停留所別の静的な状況整理(Step.3)

バス停留所別の運行本数や運行系統数などのバス サービスレベルの把握や、停留所の位置する道路の 車線数やバスベイ

の整備状況などの静的な状況を 整 理 し た ( 図 -2 左 側 )。運 行 実 態 は バス IC カ ー ド データから整理した。走行実態は、 Step.1 にて乗車 人員の多いバス停留所を先に抽出しているので、乗 車人員の多い停留所を対象に計画的に現地踏査する ことができる。

2.4 走行阻害箇所の抽出(Step.4)

走行阻害箇所とは、バス停留所でのバスの停車に 伴って後続車両が追い越しできず、渋滞が発生する 箇所を指している。抽出には、バス停留所のある DRM (デジタル道路地図)

リンクの旅行速度と、

停留所前の DRM リンクの旅行速度とを用いる。具 体的には、停留所リンクにおけるバスの旅行速度よ りも一般車の旅行速度の方が小さく、かつ一般車の 旅行速度が停留所の直前リンクよりも停留所リンク の方が小さい箇所を指す(図 -3 グラフの左下のエリ ア)。

2.5 バス停留所別カルテの作成(Step.5)

Step.1 ~ Step.4 の結果を、現場での使いやすさを 考慮したバス停留所別のカルテとしてとりまとめた

(図 -2 )。これにより、バス停留所別の状況把握が容

易となる。

(2)

土木技術資料 53 - 10 ( 2011 )

- 23 -

ICカードデータで 定義されたさいたま市の停留所 道路

鉄道 さいたま市

0 5km 10km

0 5km 10km

図-1 分析対象エリア(さいたま市)とバス停留所

図 -3 走行阻害箇所の抽出例

静的な状況

0 20 40 60 80 100 120 140

6時台 7時台 8時台 9時台 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22

IC利用に利用者数

動的な状況(利用者)動的な状況(走行状況)

評 価

 停留所は片側1車線の道路に位置しており,一般車がバスを追い抜くことができず,バスの停車 により走行阻害が発生しており,交差点付近の停留所位置変更等が考えられる

 歩道の狭い箇所に停留所が位置していることもあり,バス待ちの際に自転車、自動車との接触の 危険あり,バス待ちスペースの確保が望まれる

※ここに記載の評価内容は、関係者間で合意形成を得たものではないことに留意されたい。

基礎情報

停留所名 太田窪

住所 埼玉県さいたま市南区 緯度 35.86377194 経度 139.6708247 停留所ID 791108686

太田窪 (さいたま市南区)

Rank 2

利用客が多く,バスの停車による走行阻害が夕方に多く発生!

出典:バスICデータ

平均旅行速度 月別利用者数

東浦和駅方面 浦和駅方面

バスの運行実態

事業者 国際興業株式会社 系統数 9系統

運行 系統数

バスの走行環境

車線数 片側1車線 PTPS対象 ○

バスベイ整備 × 優先(専用)レーン ×

上屋の整備 × 公共交通幹線軸 ×

椅子の整備 ×

系統 起点・終点

運行本数(2010年10月時点)

平日 土曜 休日 浦50 浦和駅東口~南浦和駅西口 65 52 47 浦50-2 浦和駅東口~二十三夜坂下 4 3 2 浦51 浦和駅東口~北浦和駅東口 28 25 24 浦51-2 浦和駅東口~北浦和駅東口 6 6 6 浦51-3 浦和駅東口~北浦和駅ターミナル 12 12 12

浦04 浦和駅西口~北浦和駅 58 32 32

浦04-2 浦和駅西口~馬場折返場 58 50 56 浦04-3 浦和駅西口~さいたま東営業所 20 15 15

浦05 浦和駅西口~明花 9 3 2

日別利用者数

時間帯別利用者数(日平均) 雨天利用率(平日)

0 0.5 1 1.5 2

晴天時平均 雨天時平均

雨天時 1.36倍

13 14.4

13 14.3 13.9 14.7

20 18.1

12.2 21.9

18.8 17.3

0 10 20 30

朝ピーク 日中 夕ピーク 平日平均 土曜平均 日祝平均

バス 一般車

バスによる一般車の 走行阻害発生割合 停留所にバスが遅れてくる割合

・ICカードによる乗客数が,さいたま市の停留所で第2位の15.300人/月(年平均)

・平日の利用者は平均640人/日と多く、休日は平日の0.75倍の利用

・平日朝夕ピーク時間帯の利用客が特に多く,通勤でのバス利用が想定

・雨天時には,晴天時に対して,約1.36倍の利用者が増加

平日朝夕ピーク時 の利用が顕著

(注)時間帯別の利用 者増加を晴天時「1」と して比較 0

5,000 10,000 15,000 20,000

200910 200911 200912 20101 20102 20103 20104 20105 20106 20107 20108 20109

月別IC延べ乗車人員(人/月)

約1.5倍

(2009年9月比)

・バスの平均旅行速度は日中と比較して,朝・夕ピーク時には約1.5km/h低い

・停留所へのバスの到着遅れは朝ピーク時で27%,夕ピーク時で41%の割合で発生

・夕ピークでは,停留所へのバスの停車により,一般車の走行阻害が発生している可能性あり

平日朝夕ピーク時 の旅行速度が低い

平日夕ピーク時の 一般車はバスの旅 行速度と同程度

※停留所の位置するDRM リンク(バス,一般車)の 旅行時間の平均値 平均旅行速度(km/h

※収集されたデータのうち,当該停留所にて2分以上遅れが生じている割合

27% 19%

41%

29%

8% 11%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

朝ピーク 日中 夕ピーク 平日平均 土曜平均 日祝平均 停留所にバスが遅れて割合 平日夕ピーク時は

4割が遅れて到着

平日平均 休日平均 平日 土曜 日祝

状況 走行阻害 発生率 全日 0.32 平日朝ピーク 0.25 平日夕ピーク 0.62 雨天時 0.30

図 -2 バス停留所別のカルテ例

(3)

土木技術資料 53 - 10 ( 2011 )

- 24 -

3.道路整備効果の検証

3.1 分析対象及び利用データ

分析対象エリアは、図 -4 に示す県道 79 号朝霞蕨 線の交差点改良事業とし、右折帯延伸による左折 車の走行向上を計測することとした。分析期間は、

供用開始の 2010 年 2 月および動線データの取得状 況から設定した(表 -1 )。

バス IC カードデータは、北戸田駅入口交差点を 左折する路線バスのうち 1 系統で概ね全時間帯で データが取得されている。データ量は日当たり約 50 ~ 70 台、 3 月合計では約 2,700 台あり、分析上 十分なデータ量である判断した。また、 3 月の平日

全 1,983 台の時間帯別平均旅行速度を比較した結果、

速度は 10 ~ 18km/h の幅で、 14 ~ 15km/h が最頻値 となっていることから、実勢を反映していることが 確認できた。

民間プローブデータは、北戸田駅入口交差点を 左折する経路上の DRM (デジタル道路地図)リン クのうち、 2 リンクでは約 5 ~ 10 台 / 時の走行が見ら れた。平均旅行速度は日中約 10km/h で実勢を反映 していると考えられる。このため、この 2 リンクを 合わせた約 180m 区間のデータを分析で利用するこ ととした。

北戸田駅 駅入口 水深団地

駅 中央水路

戸田車庫

79 298

バス路線 バス停

右折帯延伸 北戸田駅入口

図 -4 分析対象箇所 表 -1 分析期間

バスICデータ 民間プローブデータ

2010年2月

事前:2009年3月 事後:2010年3月

※平休別時間帯別

事前:2009年3~6月 事後:2010年3~6月

※平休別時間帯別

供用時期 利用データ

3.2 バスICカードデータを用いた分析

バス IC カードデータを用いて整備前後の実態を 分析した。図 -5 は、整備前後の時間帯別平均旅行 速度の比較結果を示しており、朝ピークで約 0.5 ~

0.8km/h の速度上昇が確認された。

図 -6 は、日別時間帯別平均旅行速度の推移の比 較結果を示しており、朝ピーク時間帯で速度が上昇 している。

図 -7 は、バス走行速度帯別の走行代数分布の比較 結果を示しており、 9 ~ 11km/h が大幅に減少して

14km/h 付近に集中している。バスの平均旅行速度

が 13.2km/h から 13.8km/h に上昇するとともに、バ ス走行速度の標準偏差が 1.56 から 1.22 へと小さく なっていることから、バス走行速度の信頼性(定時 性)が向上したと言える。

10 12 14 16 18 20

5h 7h 9h 11h 13h 15h 17h 19h 21h

平均速度(

km/h)

朝霞蕨線(中央水路→戸田車庫間)

時間帯別平均旅行速度

2009年3月

2010年3月

整備後に速度上昇

整備前後とも低速度

整備後に 速度低下

図 -5 バスの時間帯別平均旅行速度の比較

図 -6 バスの日別時間帯別平均旅行速度の推移

相対的に広い速度幅

相対的に狭い速度幅 相対的に 低密に分布

相対的に 高密に分布 整備前(2009年3月)

整備後(2010年3月)

0 20 40 60 80 100 120

8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 2009年3月

2010年3月

速度帯(1km/h刻み)

バス台数(台) バス走行速度帯別の走行台数分布図

平均13.8km/h 平均13.8km/h

平均13.2km/h

平均13.2km/h 標準偏差 1.56

標準偏差 1.22 整備前

整備後

定時性が向上

図-7 バス走行速度帯別の走行台数分布

(4)

土木技術資料 53 - 10 ( 2011 )

- 25 - 3.3 民間プローブデータを用いた分析

民間プローブデータを用いて実態を分析した。図 -8 は、平日朝夕ピーク時間帯の平均旅行速度の比較 結果を示しており、朝ピークでは 4 ~ 6 月、夕ピー クでは 5 ~ 6 月で速度が上昇している。右折帯延伸 の結果、一般車は約 4km/h の速度上昇が確認された。

0 5 10 15 20

3

4

5

6

3

4

5

6

朝ピーク(

7~10時の3時間帯)

夕ピーク(

16~18時の 3時間帯)

事前(

2009年)

事後(

2010年)

平均速度(

km/h)

平日ピーク

3時間の平均旅行速度

(朝霞蕨線

a~bの約180m区間平均)

9.0 8.2 8.7

7.4 8.1 12.1

9.7 8.8 7.8

8.0

10.3 8.9

10.8 9.4 7.5 7.4

事後に速度上昇 事後に速度上昇

図-8 一般車の月別平均旅行速度の変化

4 .おわりに

本稿は、 2 種類の動線データを用いたバス走行改 善支援および道路事業の効果把握の有効性を報告し た。動線データを用いることにより、バスの定時性 の向上など従来の効果計測では把握しにくい効果の 発現まで明らかにすることができた。また、複数の 動線データを用いることで、バスと一般車両の両方

で効果の発現を確認できるため、小規模な道路改良 に対してもミクロな効果計測ができる。

今後、国や地方公共団体で同様の手順や手法に 基づき、動線データを用いた交通計画や道路整備効 果の把握などに活用していただけるよう普及活動に 努めたい。また、動線データのさらなる活用のため に、今回使用した以外の動線データ(携帯電話の データ等)の取得方法や活用方法、複数の動線デー タを組み合わせた分析方法等について検討していき たい。

謝 辞

本研究を実施するにあたり、埼玉県、さいたま市、

関東地方整備局大宮国道事務所には、貴重なご意見 を頂いた。また、埼玉県、さいたま市には、ケース スタディのフィールドをご提供頂いた。ここに記し て謝意を表する。

参考文献

1 ) 今井龍一、井星雄貴、濱田俊一、中村俊之、牧村和 彦:動線データを用いたバス走行改善の検討支援に 関する研究、土木計画学研究・講演集 Vol.43 、 2011 2 ) 井 星 雄 貴 、 今 井 龍 一 、 濱 田 俊 一 、 千 葉 尚 、 牧 村 和

彦:複数の動線データを用いた道路整備の効果検証 に 関 す る 基 礎 的 研 究 、 土 木 計 画 学 研 究 ・ 講 演 集 Vol.43 、 2011

濱田俊一 * 今井龍一 ** 井星雄貴 ***

国土交通省国土技術政策総合 研 究 所 高 度 情 報 化 研 究 セ ン ターグリーンイノベーション 研究官 Syunichi HAMADA

国土交通省国土技術政策総合 研 究 所 高 度 情 報 化 研 究 セ ン タ ー 情 報 基 盤 研 究 室 研 究 官、博士 ( 工学 )

Dr. Ryuichi IMAI

国土交通省国土技術政策総合

研 究 所 高 度 情 報 化 研 究 セ ン

ター情報基盤研究室 研究官

Yuki IBOSHI

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