高等学校における学習の評価の 実態把握と改善に関する研究
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(2) は. し. が. き. この報告書は,科学研究費・基盤研究(C)「高等学校における学習の評価の実態把握と 改善に関する研究」(平成20~22年度)の研究成果をとりまとめたものである。 高等学校における学習評価の枠組みは指導要録の改訂通知によって示されてきており, これまで各教科・科目の評定については,目標に準拠した5段階の評価として実施されて きた。また,評定に当たっては評価の観点を参考にすることや,教師の主観に流れて客観 性や信頼性を欠くことがないように留意することについても従前から明確にされてきた。 平成13年の改訂通知では,「具体的な評価規準を設定するなど評価の在り方の工夫・改善 を図ること」が改めて明記された。平成22年の指導要録の改訂通知においては,評価の観 点及びその趣旨に改善はなされているものの,学習評価の基本的な在り方についてはこれ までの方法を継続することとされている。. 一方,高等学校の教育指導については,学科や課程,履修方法等の制度の弾力化が進 められ,生徒の実態や特性等に応じた教育が展開されることとなった。このことにより, 生徒の進路希望や興味・関心,適性等に応じた学習が可能となったが,一方で,各学校 における教育指導の成果を把握し,その後の教育指導の改善に具体化し,もって高等学 校教育の質の向上につなげることが求められている。教育の質の向上の基本は,指導の 成果としての学習状況を的確に把握し,その後の学習指導の改善に確実に結び付ける仕 組みと体制を確立することにある。 このような問題意識から,本研究では次の3点にねらいを置いて研究を進めてきた。 ①高等学校における教科・科目の学習評価の現状と課題を把握すること,②指導に生か す評価の在り方や評価の客観性・信頼性を高めるための取り組みの在り方,③学科や課 程,生徒の実態等を踏まえた高等学校における評価システムの在り方の明確化。 本報告書は,これらのうち主に①についての調査研究の結果をとりまとめたものである。 第1部では,全国の全日制普通科高校へのアンケート調査を通じて,各学校における評価 の内規や学習評価の現状や課題を把握することをねらいとした。第2部では,全国の高等 学校の中堅教員に対して行ったアンケート調査の結果の整理を通じて,学習評価の課題の 把握と解決に向けた考察を行った。 調査にご協力いただいた各位に感謝すると共に,本報告書が高等学校における学習評価 の現状把握と改善に向けた取り組みの基礎的な資料として活用されることを願うものであ る。. 平成23年3月. 研究代表者. 工藤. 文三. (国立教育政策研究所).
(3) 目. 次. 第1部 高等学校における学習評価の現状等に関する調査 ~全日制・普通科高等学校376校のアンケートより~ (国立教育政策研究所初等中等教育研究部長. Ⅰ. 工藤. 文三). 調査の概要. 1. 調査の目的. 3. 2. 調査の概要. 3. Ⅱ. 調査の結果. 1. 評価に関する校内の規定について. 2. 評価の妥当性や信頼性を高めるための工夫について. 11. 3. シラバスへの評価の記載について. 13. 4. 観点別学習状況の評価の取り組みについて. 15. 5. 評価についての生徒,保護者への周知の状況. 19. 6. 校内における学習の評価に関する現状,課題,意見等(自由記述). 22. Ⅲ. 5. 資料. 1. アンケート実施関係資料. 25. 2. 通知表の調査結果と例. 32.
(4) 目. 次. 第2部 高等学校における学習評価の実施上の課題に関する調査 ~中堅教員(教務主任等)666人からのアンケートより~ (国立教育政策研究所教育課程研究センター基礎研究部総括研究官. Ⅰ. 二井. 正浩). 問題の所在,調査の目的・方法. 1. 問題の所在,調査の目的. 41. 2. 調査の対象,及び調査事項. 43. 3. 「目標に準拠した評価および観点別評価」の実施上の課題の整理. 46. Ⅱ. 課題全般に関する結果. 1. 各課題(Ⅰ~Ⅹ)について指摘した教員の割合. 48. 2. 各課題(Ⅰ~Ⅹ)の年度別比較. 49. 3. 各課題(Ⅰ~Ⅹ)の学科等別比較. 50. 4. 課題全般についての分析. 51. Ⅲ. 各課題に関する結果. 1. 「Ⅰ評価技術の問題」について. 52. 2. 「Ⅱ教員の意識や学校体制の問題」について. 58. 3. 「Ⅲ授業計画・評価計画・評価規準等の作成と活用の問題」について. 64. 4. 「Ⅳ主観的または客観性や信頼性の問題」について. 70. 5. 「Ⅴ評価に手間がかかる」について. 75. 6. 「Ⅵ保護者や生徒の反応や対応の問題」について. 80. 7. 「Ⅶ生徒の学力差・状況等による対応の難しさ」について. 85. 8. 「Ⅷ入試や就職に向かない」について. 90. 9. 「Ⅸ評価の活用ができていない」について. 95. 10. 「Ⅹその他」について. Ⅳ. 集計データ. 100 103.
(5) 科学研究費補助金【基盤研究(C)】について (1). 研究課題. 高等学校における学習の評価の実態把握と改善に関する研究. (2). 課題番号. 20530710. (3). 研究組織. 代. 表. 者. 工藤. 文三(国立教育政策研究所. 初等中等教育研究部. 部長) 連携研究者. 鳩貝. 太郎(国立教育政策研究所 基礎研究部. 連携研究者. 名取. 教育課程研究センター. 総括研究官) (平成22年3月まで). 一好(国立教育政策研究所. 教育課程研究センター. 基礎研究部 連携研究者. 二井. 正浩(国立教育政策研究所. 教育課程研究センター. 基礎研究部 (4). 研究経費 平成20年度. 1,100千円. 平成21年度. 1,100千円. 平成22年度. 900千円. 計. 3,100千円. 総括研究官) 総括研究官).
(6) 第1部 高等学校における学習評価の現状等に関する調査 ~全日制・普通科高等学校376校のアンケートより~ (国立教育政策研究所初等中等教育研究部長. Ⅰ. 工藤. 文三). 調査の概要. 1. 調査の目的. 3. 2. 調査の概要. 3. Ⅱ. 調査の結果. 1. 評価に関する校内の規定について. 2. 評価の妥当性や信頼性を高めるための工夫について. 11. 3. シラバスへの評価の記載について. 13. 4. 観点別学習状況の評価の取り組みについて. 15. 5. 評価についての生徒,保護者への周知の状況. 19. 6. 校内における学習の評価に関する現状,課題,意見等(自由記述). 22. Ⅲ. 5. 資料. 1. アンケート実施関係資料. 25. 2. 通知表の調査結果と例. 32.
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(8) Ⅰ 1. 調査の概要 調査の目的. 小・中学校の学習評価については,従来から観点別の評価と評定による評価が実施され ており,平成3年の指導要録の改訂では,観点別の評価を各教科の評価の基本とし,評定 と所見を併用することとなった。その後,平成13年の指導要録の改訂では,評定が目標に 準拠した評価に改められ,今日に至っている。これに対して高等学校の学習評価について は,昭和48年の指導要録の改訂までは,各教科・科目の学習の記録は「評定」及び「各教 科・科目の学習についての所見」で行われ,後者の欄については,設定された観点を参考 にいわゆる個人内評価として実施されていた。昭和56年の改訂以降,各教科・科目の学習 の記録は「評定」と学年を単位として記される「所見」とされた。評価の観点は, 「評定」 を行う際の「参考」として位置付けられると同時に,「一部の観点に偏して評定が行われ ることのないよう」との記述が設けられた。なお,評価の枠組みの一つである,目標に準 拠した評価と集団に準拠した評価のどちらを用いるかについては,既に昭和30年の改訂以 降目標に準拠した評価がとられてきた(昭和30年の指導要録の改訂では,「各教科・科目 の目標をほぼ達成しているものを三とし,目標を特に高い程度に達成しているものを五, ・・・」とされている)。 一方,高等学校教育の現状に目を転じると,進学率の上昇等の社会の変化に伴って教育 内容や履修システムの弾力化が図られ,総合学科や単位制,中高一貫教育等の新しい制度 を活用する学校が広く設置されることとなった。これらの多様化,特色化の流れの一方で, 高等学校教育の水準と質の向上が課題となっているのも今日の状況といえる。高等学校教 育の水準と質の向上を図るための原点となるのが,各教科・科目等の指導と評価の改善充 実であり,指導と評価の一体化を通した生徒の学力等の向上が課題になっているといえる。 以上のような趣旨から,本調査では,高等学校全日制普通科について次の点を把握する ことをねらいとした。 (1) 各学校におけるいわゆる内規には評価についてどのような内容が規定されているか (2) 評価の妥当性や信頼性を高める取り組みの現状 (3) 生徒に示すシラバスへの評価の記載の状況 (4) 観点別学習状況の取り組みの状況 (5) 学習評価について,生徒,保護者への周知の状況 (6) 各学校の通知表の様式や内容. 2. 調査の概要. (1)調査対象と実施時期 ○調査対象(全国の公立,私立の全日制普通科高等学校から無作為に抽出) 全国の国立を除く公立高等学校(全日制普通科):340校 全国の私立高等学校(全日制普通科). :162校 計. - 3 -. 502校.
(9) ○実施時期. 平成22年10~11月. (2)回収状況 全国の国立を除く公立高等学校(普通科):265校(回収率. 77.9%). 全国の私立高等学校(普通科). :111校(回収率. 68.5%). 376校(回収率. 74.9%). 計. (3)質問紙の調査項目 質問紙の調査項目は次のとおりである。 1. 2. 評価に関する校内の規定について (1) 内規の設定の有無 (2) 内規の規定の内容 ①目標に準拠した評価,集団に準拠した評価の別 ②観点別学習状況の評価の実施についての指示 ③成績評価に用いる評価資料の範囲 ④成績評価の目安 ⑤評価の基準(分割点)について ⑥各評価結果の割合について ⑦学期ごとの評価結果の表示について ⑧その他設けている内規の内容 (3) 内規を設けていない場合の取組 評価の妥当性や信頼性を高めるための工夫について. 3. シラバスへの評価の記載について (1) シラバスの作成配布状況 (2) シラバスへの評価の記載状況 (3) シラバスへの記載事項について. 4. 観点別学習状況の評価の取り組み状況について (1) 観点別学習状況の評価の実施状況 (2) 実施している場合の内容 ①各科目の観点の設定状況 ②観点別学習状況の評価の結果の表示 ③観点別学習状況の評価を評定に総括する方法 (3) 観点別学習状況の評価を実施していない場合の状況等. 5. 評価についての生徒,保護者への周知の状況 (1) 周知の内容 (2) (1) 以外の周知の内容. 6. 学習評価に関する現状と課題等(自由記述). - 4 -.
(10) Ⅱ 1. 調査の結果 評価に関する校内の規定について. (1)評価(評定)に関する校内の規定の設定の有無 この項目では,評価(評定)に関する校内の規定を設けているかどうかを尋ねた。結 果を見ると,規定を設けているとする回答が全体で96.4%となり,公立高校,私立高校 ともほぼ同じ割合であった。高等学校では,ほとんどの学校で評価に関する内規を設け ており,内規に沿った評価を行っていることがうかがわれる。. 【図1:評価に関する内規を設けていますか】. - 5 -.
(11) (2) 評価に関する校内の規定を設けている学校について ①目標に準拠した評価,集団に準拠した評価の別の規定の有無 この項目は,評価方法の枠組みである目標に準拠した評価と集団に準拠した評価の 別について規定があるかどうかを尋ねた問いである。ここでは目標に準拠した評価, 集団に準拠した評価の具体的な内容については説明せずに回答を求めた。結果として, 規定の有無はそれぞれほぼ半数程度となった。 一般に目標に準拠した評価,集団に準拠した評価の種別についてそれ自体を内規に 示すことよりも,学習状況の判断の方法(例えば目標の達成状況とそれぞれに対応し た評定の区分を示す方法や,各評定段階にあてる人数の割合など)として示されるこ とが多いと考えられる。実際に目標に準拠した評価として実施されているかどうかを 判断するためには,実際に行われている評価の取り組みを見ていくことが必要である。. 【図2:内規における「目標準拠評価,集団準拠評価の別」の規定の有無】. ②観点別学習状況の評価の実施に関する規定の有無 この項目は,内規に観点別学習状況の評価の実施に関する規定があるかどうかにつ いて尋ねたものである。結果として,全体の31.1%が有との回答であり,公立では37. 2%,私立では16.0%となった。 自由記述欄に記入された内容によると,規定の内容は様々であるが,次のような回 答が見られる。 ・4つの観点を踏まえ,総合的な見地から行う ・県で作成している「生徒指導要録の取扱い要領」に記載されている評価の観点 及び趣旨を基本として実施 ・シラバスや年間指導計画に観点別学習状況を明示 ・各教科ごとに観点別の評価規準を設けている 本調査の4で観点別学習状況の評価の取り組み状況について質問している。何らか の形で実施しているとの回答が43.8%となっており,内規の規定と実際の実施状況と は異なっていることが分かる。類似の調査に,「学習指導と学習評価に対する意識調 査」(平成21年度文部科学省委託調査報告書,平成22年1月,財団法人. - 6 -. 日本システ.
(12) ム開発研究所)がある。この調査によると,「指導要録に観点別学習状況を記録して いる」「通信簿に観点別学習状況を記録している」の回答は共に6.6%となっている。 一方で「指導計画やシラバスに観点別の評価規準などを設けている」との回答が,公 立で56.0%,私立で21.3%となっている。. 【図3:内規における「観点別学習状況の評価の実施についての指示」の規定の有無】. ③評価資料の範囲に関する規定の有無 学習評価を実施する際に,評価目的に合わせて評価のための資料を入手することが 必要になる。この項目は,どのような資料を評価資料とするかについての規定が設定 されているかどうかについて尋ねたものである。結果は,全体の84.0%で規定を設け ているとの回答となった。 自由記述の内容からは,次のような評価資料の例が見られる。 ・定期試験,実技試験,課題,実験,実習などのように具体的に示している例 ・定期試験と平常点によるとし,平常点とは小テスト,課題,レポート,実験, 実技,出席時数,学習態度といったように示している例 ・定期考査と平常点の割合を数値で示している例 ・シラバスに明記しているとする例. 【図4:内規における「成績評価に用いる評価資料の範囲 (定期考査,提出物,実技,授業中の態度等)」の規定の有無】. - 7 -.
(13) ④成績評価の目安の設定の有無 この項目は,成績の評価を行う場合,平均点を設定するなどの目安を設定している かどうかについて尋ねたものである。回答は,公立で69.0%,私立で80.2%の学校が, 設定有の結果となった。設定有の場合の自由記述欄を見ると,次のような例が見られ た。 ・平均点を固定して示す例として,60点,65点として示す例が見られる。 ・平均点に幅を持たせた示し方には,45~55点,50~60点,55~65点,58~65点, 55~70点,60~65点,60~70点などが見られる。また,65±5点との示し方も 見られる。 ・同様の内容を10点法,5点法で示しているものもある。 これらのことから,内規において目安となる数値を平均として示し,分布の偏りを 小さくするための工夫を行っている学校が多いことが分かる。. 【図5:内規における「成績評価の目安(例:平均が60点になるように作問するなど)の設定」の規定の有無】. ⑤評価の基準(分割点)についての規定の有無 この項目は評価を行う際の学習状況の判断の基準を,あらかじめ内規に示している かどうかを尋ねたものである。 回答は,規定有が公立で62.3%,私立で72.5%となった。具体的な基準については, 自由記述欄の回答によると,おおむね次のような例が見られた。 ・評定5については,80~100,85~100,75~100,72~100とした回答が見られ る。 ・評定3については,50~69,40~64,45~64,45~59,50~64,40~59,45~ 69,55~69,43~64の範囲とする回答が見られる。 ・評定1については,24,25,29,39,34,20,19,14以下を範囲とする回答が 見られる。 これらの記述から,評定段階の分割点については各学校によって少しずつ異なって いることが分かる。. - 8 -.
(14) 【図6:内規における「評価の基準(分割点)について (例:評定5=90/100以上,評定4=89/100~75/100などの達成状況の目安)」の規定の有無】. ⑥各評価結果の割合についての規定の有無 この項目で尋ねている各評価結果の割合とは,例えば評定の5,4,3,2,1に あてる生徒数の割合のことであり,この割合の目安をあらかじめ設けて,これに従っ て評価が行われているとするならば,評価方法としては集団に準拠した評価がとられ ていることを示している。結果は,規定が有とする学校が30%となった。 また,自由記述欄によると次のような回答が見られた。 <評定5>. <評定4>. <評定3>. <評定2>. <評定1>. 10~20%. 30~40%. 30~40%,. 0~20%(評定2・1). 10~15%. 20~30%. 40~45%,. 0~20%(評定2・1). 5~15%. 20~25%. 40~60%. 0~20%(評定2・1). 7~15%. 24~30%. 38~45%. 10~24%. 20%程度. 40%程度. 40%程度. 若干名. 20%. 30%. 40%. 7~10%. 10%. この記述から,各評定段階の割合の示し方は,一定の幅を持たせたものと,固定し たものがあることが分かる。. 【図7:内規における「各評価結果の割合について (例:評定5は全体の生徒数の○%程度,評定4は△%とするなどの,各評価結果の割合や分布の目安)」の規定の有無】. - 9 -.
(15) ⑦学期ごとの評価結果の示し方についての規定の有無 この項目は,学期ごとの評価結果の示し方についての規定の有無について尋ねたも のである。指導要録における評定の示し方は5,4,3,2,1となっているが,学 期ごとに評価結果を示す場合,この5段階以外の方法を用いている場合も想定される。 回答は,規定有の回答が96.5%となった。 自由記述の内容を見ると,学期の評価結果の示し方は5点法,10点法,100点法が ほとんどであった。. 【図8:内規における「学期ごとの評価結果の表示について (例:100点法,10点法,5点法など)」の規定の有無】. - 10 -.
(16) 2. 評価の妥当性や信頼性を高めるための工夫について. この項目は,学校内での評価の妥当性や信頼性を高めるための工夫について,複数の選 択肢を用意して尋ねたものである。ここでは,評価の妥当性や信頼性の意味については特 に説明せずに,回答を求めた。アは,同一科目の担当者間で評価方法等について協議を行 っているかどうかという内容である。例えば,ペーパーテストやワークシート,レポート, 観察等の評価方法の用い方について協議を行うことによって,評価の妥当性,信頼性を高 めようとする工夫である。イは,同一科目を複数の教員が担当する場合などに,考査問題 を共通化する工夫である。ウは,定期考査問題を作成する際に,難易度を調整するため, 平均点を目安として設定する工夫である。エは,生徒の目標の達成状況を評価規準として 示し,学習状況を判断する際に活用することである。オは,評価結果について担当者間で 協議を行い,評価の妥当性や信頼性を高める工夫である。なお,この項目は複数回答を許 容している。 結果は,ア→オ→イ→ウ→エの順で高い割合となった。この結果によると,評価を行う に当たって,評価方法や評価結果についての協議がよく行われていることが分かる。しか し一方で,評価規準の活用は約30%にとどまっている。公立と私立の比較では,ウに関し てのみ,公立よりも私立の回答割合が大きい。 一般に評価の妥当性,信頼性を高めるためには,①指導の目標,内容に適合した評価方 法を用いること,②目標の実現状況を判断する根拠をより合理的なものにすること,③こ れらの取り組みに資するよう評価規準を活用すること等の取組が考えられる。①について は,評価の対象となる目標と内容が整理され,それらを評価するのに最適な評価方法が準 備されることが必要である。例えば,何らかの知識を問う場合でも,単純な事実的知識の 習得状況を評価することと,概念的な知識を評価することとでは,評価方法は異なると考 えられる。②については,生徒の学習状況を判断する際に,例えばなぜそれを「十分満足」 とか「おおむね満足」のように判断するのか根拠が必要である。このことを行うためには, ③の評価規準の活用が必要である。. - 11 -.
(17) 【図9:評価の妥当性や信頼性を高める工夫について】. - 12 -.
(18) 3. シラバスへの評価の記載について. シラバスとは,各教科・科目等の授業の進め方,評価の方法,学習の仕方等について記 した計画書のことである。高等学校においては,科目を選択して履修する場合が多いこと から,多くの学校でシラバスが作成され用いられている。 この項目は,シラバスの作成状況,評価についての記載状況,そして記載している場合 は,その内容について尋ねたものである。回答は以下のような結果となった。. (1)シラバスの作成・配布状況について 公立で87.8%,私立で63.6%となり,多くの学校で作成・配布されていることが分か る。. 【図10:シラバスを作成し生徒に配布していますか】. (2)シラバスへの評価の記載状況について 記載しているとの回答は公立で81.8%,私立で41.4%となった。. 【図11:シラバスへの評価の記載について】. - 13 -.
(19) (3)評価に関する記載事項について この項目は,評価についてシラバスにどのような内容を記載しているかについて尋ね たものである。 結果は,アの評価方法や種類が最も多く,次いで評価の時期や評価の判断基準,勉強 の仕方となった。. 【図12:シラバスへの記載事項について】. - 14 -.
(20) 4. 観点別学習状況の評価の取り組みについて. 以下の項目では,観点別学習状況の評価の実施の有無及び実施している場合の内容,実 施していない場合の状況等について尋ねている。. (1)観点別学習状況の評価の実施状況について この項目では,観点別学習状況の評価の実施状況について,すべての教科・科目で実 施,一部の教科・科目で実施,実施していない,との選択肢を設けて尋ねた。 結果は,すべての教科・科目で実施しているとの回答が31.3%,一部の教科・科目で 実施しているとの回答が12.5%となり,これらを合わせると43.8%となった。実施して いるとする回答は公立が私立に比べて多い。. 【図13:観点別学習状況の評価の実施状況について】 ※観点別学習状況の評価とは,設定した評価の観点ごとに学習状況を評価する方法のこと. - 15 -.
(21) (2)観点別学習状況の評価を実施している学校の取組 ①各科目の評価の観点の設定について この項目は,観点別学習状況の評価を実施している学校について,評価の観点の設 定について尋ねたものである。 指導要録の改訂通知に記されている評価の観点と同一にしているとの回答が41. 9%,学校で独自に設定しているとの回答が47.7%となった。. 【図14:各科目の評価の観点はどのように設定していますか】. - 16 -.
(22) ②観点別学習状況の評価の結果の表示について この項目は,観点別学習状況の評価の結果の表示方法を尋ねたものである。結果を 見ると,評価結果の表示方法までは定めていないとする回答が多い。表示している場 合については,アのA,B,Cで表示する方法が最も多く,次いでエの100点法とな った。エの方法の場合,評価結果を素点として整理集計する方法がとられていること が推測される。. 【図15:観点別学習状況の評価はどのように表示していますか】. - 17 -.
(23) ③観点別学習状況を評定に総括する方法について この項目は,観点別学習状況を評定に総括する方法について,選択肢を設けて尋ね たものである。結果を見ると,アの校内でルールを明確にしているとの回答は,全体 で11.5%,イの各教科・科目ごとに行っているとの回答は75.2%となった。小・中学 校において総括の方法は,各学校で共通の方法を決めている場合が多いと想定される が,高等学校の場合,教科・科目ごとに設定されている場合が多いことが分かる。. 【図16:観点別学習状況を評定に総括する方法はどのように実施していますか】. (3)観点別学習状況の評価を実施していない場合の状況について この項目は,観点別学習状況の評価を実施していないと回答した学校について,学校内 の状況や意見等を尋ねたものである。自由記述欄には次のように様々な例が見られた。 今後の検討課題/多大な時間と労力を要し,実施が困難/評価の観点を考慮して評 価を行っている/提出物や小テストなど評価方法を工夫して,観点別評価の代替と なる取り組みを実施/あまり意義と必要性を感じない/形成的な評価を充実するこ との方が重要。各観点ごとの評価を行ったり,総括を行ったりすることの作業の増 大,観点別学習状況の効果に対する見通しがない. - 18 -.
(24) 5. 評価についての生徒,保護者への周知の状況. (1)生徒,保護者への周知の状況 評価について,生徒や保護者に周知を図ることは,評価に対する信頼性を高め,学習の 改善に果たす評価の役割を高める上でも有効な方法である。この項目では,生徒,保護者 への周知の内容について,①評価の方法,②評価の基準(分割点など),③各評価結果の 割合,④通知表の見方について,⑤評価結果と事後の学習や指導との関連の5項目につい て尋ねた。 まず,生徒への周知についての結果は,①の評価方法が全体で76.6%,②の評価の判断 基準は34.8%となった。③は各評価結果の割合を示すもので9.6%となった。保護者への 周知の状況についてもほぼ同様の傾向となった。 ○生徒への周知の状況. 【図17:評価についての生徒への周知の状況について】. - 19 -.
(25) ○保護者への周知の状況. 【図18:評価についての保護者への周知の状況について】. - 20 -.
(26) (2) (1)の項目以外の生徒への周知の状況について (1)の項目(①,②,③,④,⑤)以外の周知・説明の状況について,自由記述の内 容として以下のような記載があった。 ア. 生徒への周知・説明の状況 評価及び出席と単位認定/評価点の度数分布,平均点等/進級・卒業の規定/成. 績不振の場合の対応/考査の欠席や不正行為の対応,評価の条件となる出席時数/ 単位修得の規定/三者面談等による説明/技能審査の取得資格に係る単位認定規定 /生徒による授業評価の結果と分析/評価方法は口頭で説明/原級留置の規定/提 出物が評価材料となることの説明/平常点の割合/学校内外における学修の単位認 定/評価の度数分布表など. イ. 保護者への周知・説明の状況 保護者との面談で周知/度数分布,平均点等/進級,卒業の規定/考査欠席の場. 合や成績不振の場合の対応/各教科・科目の得点分布状況/評価の前提条件として の出欠席の規定/入学時の保護者懇談会で周知/成績不良者の保護者への文書送付 /「生徒による授業評価」の結果と分析,学習上のアドバイスなど. - 21 -.
(27) 6. 校内における学習の評価に関する現状,課題,意見等(自由記述). - 22 -.
(28) - 23 -.
(29) - 24 -.
(30) Ⅲ 1. 資料 アンケート実施関係資料. ①アンケート依頼状. - 25 -.
(31) ②アンケート用紙. - 26 -.
(32) - 27 -.
(33) - 28 -.
(34) - 29 -.
(35) - 30 -.
(36) - 31 -.
(37) 2. 通知表の調査結果と例. ここでは,高等学校からの調査用紙の返送の際,提供を求めた各校の通知表について, その傾向を整理する。. (1)調査の概要 ①通知表の回収状況 通知表の回収状況は次の通りであった。 全国の国立を除く 公立高等学校. 全国の私立高等学校. 合計. (全日制普通科). (全日制普通科) 調査依頼校. 340校. 162校. 502校. 通知表提供校. 186校. 70校. 256校. 回収率. 54.7%. 43.2%. 51.0%. ②通知表の記入欄について 提供された通知表の記入欄を整理すると,次のようになる。. a)各科目について,観点別評価 の段階点の記入欄がある b)「総合的な学習の時間」につ いての所見欄等がある. 全国の国立を除く公立高等学校. 全国の私立高等学校. (全日制普通科). (全日制普通科). 8校. 0校. 8校. (4.3%). (0%). (3.1%). 29校. 3校. 31校. (15.6%). (4.3%). (12.1%). - 32 -. 合計.
(38) (2)通知表の例 ①最も多く見られたタイプの通知表 ここでは,まず最も多く見られたタイプの通知表を紹介する。資料1は,1学期末 と2学期末に5段階の総括的な評価がなされ,3学期末に学年末の5段階評定がなさ れている。. 【資料1:通知表の例①】 資料2は,1学期末と2学期末に100点満点の点数が示され,3学期末に100点満点の点 数と学年末の5段階評定がなされている。. 【資料2:通知表の例②】. - 33 -.
(39) 資料3は,1学期末と2学期末に評価として100点満点の点数と5段階評定が示され, 3学期末に100点満点の点数と学年末の5段階評定がなされている。. 【資料3:通知表の例③】 提供された高等学校の通知表のうち,95%以上が資料1~3に示したような,観点別評 価の記入欄の設けられていないものであった。. - 34 -.
(40) ②観点別評価の記入欄のある通知表 観点別評価の結果を記入する欄のある通知表として,以下に3例紹介する。資料4 と資料5は,一つの学校において,評定などを示した通知表とあわせて,観点別評価 についての通知表も作成している例である。. 【資料4:観点別評価の記入欄のある通知表①】. - 35 -.
(41) 【資料5:観点別評価の記入欄のある通知表②】. - 36 -.
(42) 資料6は,観点別評価の結果を記入する欄と評定結果の記入欄が並記されている例であ る。. 【資料6:観点別評価の記入欄のある通知表②】. - 37 -.
(43) ③「総合的な学習の時間」について所見等の記入欄のある通知表 「総合的な学習の時間」について指導要録には,「各学校が定めた総合的な学習の 時間の目標,内容に基づいて各学校が設定した評価の観点を踏まえて,生徒の学習状 況に顕著な事項がある場合などにその特徴を記入するなど,生徒にどのような力が身 についたかを文章で記述する」(1)ことになっている。これを踏まえて,資料1・4・ 5・6のように,通知表に所見欄を設けている高等学校は,全体12%程度であった。 また,資料3のように評価を記号などで示す形式の通知表も見られた。しかし,「総 合的な学習の時間」の評価を記入する欄自体が存在しない通知表も多く見られた。 資料7は,「総合的な学習の時間」について観点別評価の記入欄を設けている例で あり,このような例は,この1例であった。. 【資料7:「総合的な学習の時間」の観点別評価欄及び所見欄のある通知表】. 【注】 (1)平成13年4月27日「小学校児童指導要録,中学校生徒指導要録,高等学校生徒指導要 録,中等教育学校生徒指導要録並びに盲学校,聾学校及び養護学校の小学部児童指導要 録,中等部生徒指導要録及び高等部生徒指導要録の改善等について(通知)」. - 38 -.
(44) 第2部 高等学校における学習評価の実施上の課題に関する調査 ~中堅教員(教務主任等)666人からのアンケートより~ (国立教育政策研究所教育課程研究センター基礎研究部総括研究官. Ⅰ. 二井. 正浩). 問題の所在,調査の目的・方法. 1. 問題の所在,調査の目的. 41. 2. 調査の対象,及び調査事項. 43. 3. 「目標に準拠した評価および観点別評価」の実施上の課題の整理. 46. Ⅱ. 課題全般に関する結果. 1. 各課題(Ⅰ~Ⅹ)について指摘した教員の割合. 48. 2. 各課題(Ⅰ~Ⅹ)の年度別比較. 49. 3. 各課題(Ⅰ~Ⅹ)の学科等別比較. 50. 4. 課題全般についての分析. 51. Ⅲ. 各課題に関する結果. 1. 「Ⅰ評価技術の問題」について. 52. 2. 「Ⅱ教員の意識や学校体制の問題」について. 58. 3. 「Ⅲ授業計画・評価計画・評価規準等の作成と活用の問題」について. 64. 4. 「Ⅳ主観的または客観性や信頼性の問題」について. 70. 5. 「Ⅴ評価に手間がかかる」について. 75. 6. 「Ⅵ保護者や生徒の反応や対応の問題」について. 80. 7. 「Ⅶ生徒の学力差・状況等による対応の難しさ」について. 85. 8. 「Ⅷ入試や就職に向かない」について. 90. 9. 「Ⅸ評価の活用ができていない」について. 95. 10. 「Ⅹその他」について. Ⅳ. 集計データ. 100 103.
(45)
(46) Ⅰ 1. 問題の所在,調査の目的・方法 問題の所在,調査の目的. 平成22年3月の中央教育審議会『児童生徒の学習評価の在り方について(報告)』では, 高等学校における学習評価の課題について「指導計画やシラバスに観点別の評価規準など を設けている教師は約46%であり,十分な状況とは言えないと考えられる。(中略)いわ ゆる4観点の評価は実践の蓄積があり,定着してきていると感じている教師は約41%にと どまるなど,現在の学習評価の考え方に基づく実践について小・中学校ほど十分な定着は (1) 見られない」 と指摘している。この指摘は,平成21年度文部科学省委託調査報告書『学 (2). 習指導と学習評価に対する意識調査』 (平成22年1月,財団法人・日本システム開発研 究所)に基づいたものであり,この調査は資料1に見られるように,高等学校において「観 点別学習状況の評価及び評定を目標に準拠した評価で実施すること(以後,本稿では,こ れを「目標に準拠した評価および観点別評価」と略称する)」が十分に浸透していない状 況を明らかにしている。. 【資料1:学習指導と学習評価に対する意識調査(一部)】. (3). また,このことは,本報告書の第1部で示した高等学校へのアンケート調査結果(資料 2・3)とも一致した傾向になっている。. - 41 -.
(47) 【資料2:内規における「観点別学習状況の評価の実施についての指示」の規定の有無】. 【資料3:観点別学習状況の評価の実施状況について】 では,一体なぜ,高等学校では「目標に準拠した評価および観点別評価」がなかなか浸 透しないのだろうか。本調査では,高等学校における「目標に準拠した評価および観点別 評価」の課題や問題の原因に関する情報を,現場の教員から収集し,できるだけ教員の意 識に即して分析することを目指した。そのため,調査者側が問いと選択肢を予め用意する プリコード回答形式ではなく,教員が自由に回答できる自由記述形式のアンケートを分析 し,考察した。より実態に即して「目標に準拠した評価および観点別評価」が十分に浸透 していない原因を明らかにすることこそが,状況の改善への具体的な処方箋を考える上で, 大切な手がかりを得ることになると考えたからである。. - 42 -.
(48) 2. 調査の対象,および調査事項. 2.1. 調査対象 本調査は,独立行政法人教員研修センターにおいて,二井正浩が平成18年度から担当. している講義(講義題:「学習指導」または「学習指導と評価」)の,平成21年度まで の7回分の受講生への自由記述形式のアンケートを分析対象(4)とする。この講義はいず れも「教職員等中央研修・中堅教員研修」の一部であり,この研修には,「今後,管理 運営,教育実践において,各地域の中核として活躍が期待され,おおむね35歳以上かつ 教職経験10年以上の者(5)」が参加している。二井は主に高等学校教員を中心とした受講 生を対象として5月と12月にそれぞれ講義を担当してきたが,受講生の多くは教務主任, またはそれに準じる教員,つまり各学校で教育課程や学習評価の改善の中心的な役割を 果たすべき教員である。 a)調査の時期と人数 5月実施. 12月実施. 平成18(2006)年. 58 名. 平成19(2007)年. 152 名. 56 名. 平成20(2008)年. 148 名. 53 名. 平成21(2009)年. 152 名. 47 名. 合. 計. ※ 12月の研修の受講者は, 特に教務主任に限定されて いる。 ※ 青少年交流の家・教育委 員会等からの受講者は調査 対象からはずした(6)。. 666 名. b)調査対象教員の勤務校の所属 国. 立. 9 校. 都道府県立. 628 校. 市(区)立. 19 校. 私. 10 校. 立. c)調査対象教員の勤務校の課程 全. 日. 制. 646 校. 定. 時. 制. 97 校 ※. 通. 信. 制. 18 校. 調査対象教員は666名であるが,複数の課 程を置く学校があるため,左のような集計 値となっている。. d)調査対象教員の勤務校の学科等 普. 通. 科. 465 校. 専. 門. 学. 科. 308 校. 総. 合. 学. 科. 51 校. 特別支援学校. 35 校. - 43 -. ※ 調査対象教員は666名であるが,複数の学 科等を置く学校があるため,左のような集 計値となっている。 ※ 特別支援学校については,高等部を担当す る受講者を対象とした。.
(49) 2.2. 調査内容. 二井は,教員研修センターでの講義に利用するため,受講生を対象に講義前に資料4に 示すような自由記述形式のアンケートを行なっている。本調査では,この回答から,観点 別学習状況の評価及び評定を“目標に準拠した評価”で行う際に生じる課題や問題につい ての記述を抽出し,データとして活用する。 なお,回答者の学科・課程等の属性については,分析のために受講番号を受講者名簿の 情報と照合してデータに加えた。ちなみに,回収状況は100%であった。. 【「学習指導(高等学校)」協議準備シート】 Ⅰ. 協議題. 勤務校では,観点別学習状況の評価及び評定を“目標に準拠した評価”で行う際 に,どのような学習指導や評価上の課題や問題が生じるか(または,生じると考え られるか)。そして,それらを解決するにはどうしたらよいか。. Ⅱ. 勤務校での課題(問題点を具体的に3点以上). ①. ②. ③. ※○月○日までに主事に提出してください。 (. )班 受講番号(. ). 名前(. 【資料4:アンケート用紙】. - 44 -. ).
(50) 2.3. 集計方法等. 受講生から回収したアンケート(資料4)は以下の①~⑤の手順に従って集計した。 ①. 受講番号をもとに,回収したアンケートと回答した受講生の属性(勤務校の所属, 課程,学科等)を照合した上で,「“目標に準拠した評価”で行う際に,どのような 学習指導や評価上の課題や問題が生じるか(生じると考えられるか)」という問いに 答えている部分を表計算ソフトに入力する。その際,データの公表を前提に,長すぎ る回答や学校が特定できる回答などは,趣旨が変わらない程度に集計者(二井)が表 現を整理する。なお,アンケート自体は,課題とその解決案についての回答を求めて いるが,今回の分析では,高等学校での課題や問題の実態を調査することが目的であ るため,解決案については入力(分析)の対象としない。. ②. アンケートの回答から2割程度を無作為に抽出し,「目標に準拠した評価および観 点別評価」が十分に浸透していないことについての原因を順次書き出し,それらをK J方式を用いていくつかの項目に分類し,大項目・中項目・小項目に系統立てて整理 する。. ③. 受講生全員の回答について,②で整理した項目のどれに当てはまるか検討し,分類 した結果を表計算ソフトに入力する。(受講生の回答記述は,複数の項目にあてはま るものが多いが,その場合はそれぞれの項目にあてはまるものとして分類する。). ④. 分類したデータを項目別に集計する。(その際,集計結果が全体の5%を下回る中 項目については,「その他」の下位項目として位置付ける。). ⑤. 集計結果を表や図に整理し,分析・考察する。. なお,項目の設定や回答の判定・集計は集計者(二井)が行ったが,客観性を担保する ために,③の集計データは巻末に資料としてすべて提示する。その他の留意点は以下のと おりである。 ・集計は複数回答を可としたものとなっている。 ・アンケートの回答には,評価における「規準」と「基準」が用いられていたが,混 用されている場合も多く,内容を吟味しながら,基本的には「規準」の語にまとめ た。 ・教員の意見を引用する際,趣旨が伝わりやすくするために,原文をなるべく生かし ながら内容が変わらない程度に分析者(二井)が表現を整理した場合がある。 ・中項目の「その他」については,1%を下回る場合,以下の報告での分析を省略し た。 ・アンケートの集計および分析は,二井が行った。アンケート結果の計算およびグラ フ化については株式会社アクロス(東京都千代田区岩本町3-7-2-402)が作業した。. - 45 -.
(51) 3. 「目標に準拠した評価および観点別評価」の実施上の課題の整理. 2割程度の受講生からの回答をもとに,「目標に準拠した評価および観点別評価」が十 分に浸透していない原因を順次書き出し,それらをKJ方式を用いて大・中・小の項目に 系統立て,実施上の課題を整理した。 この整理をもとに,全体(666人)の回答を分類した。その結果「目標に準拠した評価 および観点別評価」を実施する際の課題は,下の表1のⅠ~Ⅹのように,大きく10項目に 分類され,さらにその内容に応じて中項目と小項目が設定できた。 なお,集計の結果,全体(666人)のうち5%未満の教員によって指摘されている課題 については,その課題に関連する大項目内の中項目「その他」の中に位置付けた。(大項 目ⅠからⅨまでの課題に関連づけられないものものは,大項目「Ⅹその他」に分類した。) 【表1:「目標に準拠した評価および観点別評価」を実施する際の課題】 大項目 Ⅰ評価技術の問題. 中項目. 小項目. aペーパーテスト ①ペーパーテストに頼ってしまう で評価する問 ※ 題 ②ペーパーテストで四観点 を評価する技術の問題 b関心・意欲・態度についての評価技術の問題 c四観点全般についての評価技術の問題 d観点を評定に総括することが難しい eその他. ①思考・判断についての評価技術の問題 ②技能・表現についての評価技術の問題 ③知識・理解についての評価技術の問題 ④自己評価との関連等. Ⅱ 教 員 の 意 識 や 学 校 a教員間・教科間等の連絡・連携・調整が難しい の体制の問題 b教員の経験や指導力・個性の差が表面化する c教員の意識や理解の問題 d学校体制・研修体制の不備等 e要録や通知表・調査書の書式が観点別に対応していない fその他 Ⅲ授業計画・評価計画 a評価規準が適切につくれない ・評価規準等の作成 と活用の問題 b授業計画・評価計画が適切につくれない c授業計画・評価計画・評価規準はあってもうまく運用されない d観点別評価に値する授業(授業計画)になっていない. - 46 -.
(52) eその他 Ⅳ 主 観 的 ま た は 客 観 a客観性や信頼性に不安がある 性や信頼性の問題 bその他 ①ペーパーテストの方が客観的信頼がある ②成績が高めになる・成績が偏る Ⅴ 評 価 に 手 間 が か か a教員の負担(時間)が増える る b評価のための授業になる(授業中の評価の難しさ) c授業の進度が遅くなる dその他. ①労力に見合った成果が望めない ②生徒と接する時間が削られる. Ⅵ 保 護 者 や 生 徒 の 反 a保護者や生徒への説明の不足・困難さ 応や対応の問題 b保護者や生徒の理解不足・不適切な受け止め方 cその他. ①保護者や生徒への説明と異なる評価になっている. Ⅶ生徒の学力差・状況 a学力の違うクラス(習熟度別クラス等)での評価の問題 等による対応の難 しさ b生徒間(同じ授業において)の学力差の大きさの問題 c異なる学系・類型・コース・学科での評価の問題 dその他. ①毎年入学する生徒の学力状況が変化して対応しにくい ②基礎学力の身についていない生徒が多く,実施しにくい ③不登校や長期欠席等の生徒への対応. Ⅷ 入 試 や 就 職 に 向 か a 進 学 資 料 ・ 就 職 ①進学資料・就職資料として使いにくい(対外的) ない 資料等として 使いにくい ②進学資料・就職資料として使いにくい(校内的) b目標に準拠した評価および観点別評価は入試学力の育成と齟齬がある cその他 Ⅸ 評 価 の 活 用 が で き a評価を生徒の指導に生かせていない ていない b評価を指導の改善に生かせていない cその他 Ⅹその他 ※国語は五観点であるが,本調査では「四観点」の表記で統一した。. 次章からは,この整理に基づいて具体的な分析・考察を行う。. - 47 -.
(53) Ⅱ 1. 課題全般に関する結果 各課題(Ⅰ~Ⅹ)について指摘した教員の割合. 【図1:各課題について指摘した教員の割合】. - 48 -.
(54) 2. 各課題(Ⅰ~Ⅹ)の年度別比較. 【図2:各課題について指摘した教員の年度ごとの割合】. - 49 -.
(55) 3. 各課題(Ⅰ~Ⅹ)の学科等別比較. 【図3:各課題について指摘した教員の学科等ごとの割合】. - 50 -.
(56) 4. 課題全般についての分析. 4.1. 状況. 図1を見ると, 「目標に準拠した評価および観点別評価」の実施についての課題として, 「Ⅰ評価技術の問題」が484人・72.7%の教員から指摘され,最も割合が多い。その他, 過半数を超える教員が指摘した課題として「Ⅱ教員の意識や学校の体制の問題」が425人 ・63.8%,「Ⅲ授業計画・評価計画・評価規準等の作成と活用の問題」が344人・51,7%と なっている。次いで,「Ⅳ主観的または客観性や信頼性の問題」が267人・40.1%,「Ⅴ評 価に手間がかかる」が261人・39.2%,「Ⅵ保護者や生徒の反応や対応の問題」が229人・ 34.4%,「Ⅶ生徒の学力差・状況等による対応の難しさ」が137人・20.6%,「Ⅷ入試や就 職に向かない」が123人・18.5%,「Ⅸ評価の活用ができていない」が118人・17.7%,最 後に「Ⅹその他」が19人・2.9%となっている。 図2を見ると,「Ⅰ評価技術の問題」「Ⅱ教員の意識や学校の体制の問題」「Ⅲ授業計画 ・評価計画・評価規準等の作成と活用の問題」「Ⅳ主観的または客観性や信頼性の問題」「Ⅴ 評価に手間がかかる」といった回答数の上位の課題については,2007年度以降,割合が増 加する傾向が見られる。 図3を見ると,「Ⅰ評価技術の問題」「Ⅳ主観的または客観性や信頼性の問題」「Ⅴ評価 に手間がかかる」「Ⅵ保護者や生徒の反応や対応の問題」については,普通科・専門学科 ・総合学科に対して,特別支援学校では割合が低い。また,「Ⅲ授業計画・評価計画・評価 規準等の作成と活用の問題」については,特別支援学校の割合が高い。 4.2. 考察. この調査に用いたアンケートは,各教員の課題意識について回答を求めるものであった。 それ故,この結果は,教員の各課題に対する意識について量的に示すものである。従って, この順位が必ずしも各課題そのものの重要度を示す指標ではないことに留意しておかなけ ればならない。例えば,「Ⅰ評価技術の問題」「Ⅱ教員の意識や学校の体制の問題」「Ⅲ授 業計画・評価計画・評価規準等の作成と活用の問題」といった回答数の上位のものは,教員 の日々の実践に直接関わることであり,教員の課題意識は必然的に高くなりがちである。 一方,「Ⅷ入試や就職に向かない」や「Ⅸ評価の活用ができていない」といった回答数の 下位のものは,日々の実践のその先に位置している問題である。割合が低いからといって, これらの課題が重要度の低いものと断ずることはできない。 しかし同時に,この教員の意識こそが高等学校で「目標に準拠した評価および観点別評 価」が十分に浸透しない原因にもなっている。従って,この結果は「目標に準拠した評価 および観点別評価」の実施を推進する際の障害となる課題としての深刻さの度合いを反映 しているものといえる。. - 51 -.
(57) Ⅲ. 各課題に関する結果. 1. 「Ⅰ評価技術の問題」(666人中484名,72.7%の指摘)について. 1.1. 「Ⅰ評価技術の問題」の内訳とそれぞれについて指摘した教員の割合. 【図Ⅰ-1:「Ⅰ評価技術の問題」の内訳とそれぞれについて指摘した教員の割合】. - 52 -.
(58) 1.2. 「Ⅰ評価技術の問題」の内訳の年度ごとの比較. 【図Ⅰ-2:「Ⅰ評価技術の問題」の内訳と年度ごとの割合】. - 53 -.
(59) 1.3. 「Ⅰ評価技術の問題」の内訳の学科等ごとの比較. 【図Ⅰ-3:「Ⅰ評価技術の問題」の内訳と学科等ごとの割合】. - 54 -.
(60) 1.4 1.4.1. 「Ⅰ評価技術の問題」についての分析 状況. 「Ⅰ評価技術の問題」については,666人中484名,72.7%の教員が指摘しており,大項 目の中では,最も高い割合を示している。図Ⅰ-1は,その内訳であり,このうち,「a ペーパーテストで評価する問題」については,204人,30.6%の教員が指摘している。こ れは,さらに「a-①ペーパーテストに頼ってしまう」,「a-②ペーパーテストで四観 点を評価する技術の問題」といった2つの問題に大別され,それぞれ132人・19.8%,109人 ・16.4%の教員が指摘している。(両方の指摘をしている教員もいるので,合計は「aペ ーパーテストで評価する問題」よりも多い。)教員の代表的な意見 (7)を挙げると,a-① については「本校は進学を希望する生徒が多い学校であるがために,ペーパーテストによ る“知識・理解”の評価が中心になりがちで偏りがある(№327:「Ⅳ集計データ」の回答 者番号,以下同様)」「ペーパーテストの結果に基づいて相対評価によって評定をつける ことから脱却できていない(№371)」「観点別学習状況の評価を取り入れると時間がかか るので,ペーパーテストの結果を重視する傾向がある(№426)」「ペーパーテスト以外の データはグレーな要素を含んでいるという意識がぬぐいきれない(№588)」などがある。 a-②については「4つの観点をバランスよく評価することのできる定期考査問題の作成 に苦慮しおり,どうしても“知識・理解”“技能・表現”の問題に偏ったものになることが 多い(№23)」「“関心・意欲・態度”“思考・判断”“技能・表現”が評価できるようなテスト になっていない(№26)」「出題意図,すなわち4つのうちのどの観点の何を評価するため に作問しているのかを明確にしなければいけないと考えると作問作業が大変である(№ 452)」「4つの観点を生かした試験を作るのが非常に難しい(№543)」などがある。これ を見ると,教員には,定期試験等で行うペーパーテストこそが簡易でより客観的であり, 入試で問われる学力に近いものでもあり,評価方法として便宜上他に代え難いものだとい った意識が根強いことや,ペーパーテストでそれぞれの観点を適切に評価できるような作 問が難しいといった意識が強いことが分かる。 「b関心・意欲・態度についての評価技術の問題」については,200人,30.0%の教員が 指摘している。教員の代表的な意見を挙げると,「“関心・意欲・態度”などの観点につい てはその成果をテスト等で確かめたり,数値化するのは容易ではない(№459)」「“関心・ 意欲・態度”の評価については教師の主観的評価になりやすい(№90)」 「“関心・意欲・態度” を課題の提出状況等をもとに行っている.これが妥当な評価方法かどうか疑問(№143)」 「“関心・意欲・態度”の観点の中で,従来の平常点や出席点を評価しようとするが,主旨 からいって適切といえるか疑問(№243)」「授業中の挙手や発言の多さなどで評価されが ち(№341)」「目立たない生徒や自己表現が下手な生徒の内に秘めた意欲・関心を見抜く のは困難(№49)」「記述式のワークシートにより観点別の評価をするとき,生徒の文章表 現力などがそのままワークシートに現れ,特に“関心・意欲・態度”などは適切な評価がで きない(№466)」「“関心・意欲・態度”の評価については,個々の教員の評価に対する意識 や力量によって,評価に大きな格差を生じる(№382)」などがある。これを見ると,教員 には,“関心・意欲・態度”は評価すること自体が難しく,ペーパーテストで問うことも難 しいし,個々の生徒の性格や表現力や文章力の違いもあってワークシートなどで評価する のも適切とは言えないという意識,さらに,授業態度や提出物の状況,出席状況で評価す. - 55 -.
(61) るのは本質的でなく的外れなのではないかといった意識があることが分かる。 「c四観点全般についての評価技術の問題」については,178人,26.7%の教員が指摘 している。教員の代表的な意見を挙げると,「週2時間の授業しかない生徒も存在する中 で,一人の教員が多人数の生徒を観点別に評価していくことに困難が伴う(№135)」「一 斉授業においては,生徒個々の到達段階をその都度確認していくことが難しくなる(№ 140)」「一人で40人をしっかりと観察し,4観点に基づく評価を毎時間行うことは困難(№ 234)」「評価のスパンが長くなると,学習が不十分であり目標を十分に達成できていない 生徒に対しても学習を進めてしまい,その生徒のどの部分が不十分であるか,分かりづら くなる.また,評価のスパンを短くし,綿密な評価を行おうとすると多くの評価資料を収 集しながら授業をしなくてはならなくなり,評価に多くの労力が取られてしまう(№182)」 などがある。これを見ると,教員には,教科担任制の制約や一斉授業の形態に起因する難 しさや,評価のスパンの扱い方の難しさいった意識があることが分かる。 「d観点を評定に総括することが難しい」については,141人,21.2%の教員が指摘し ている。教員の代表的な意見を挙げると,「観点ごとに評価の回数が異なり,それらを同 等にみなすことがよいか判断に迷う(№5)」「(評定に総括する際の)観点のバランス,必 然性に客観的意味付けができない(№64)」「学習内容に応じた評価規準間の重み付けの判 断が難しい(№391)」「観点別評価をしても,最終的に1つの評価(たとえば1~5の5 段階評価など)にまとめるのなら,観点別評価の利点が生かされず,それどころか弊害も 生じる(№387)」「評価項目ごとに評価したものを総合した結果が,実態と異なる印象が ある(№39)」「まじめに努力している生徒の評価は高くなるが,実力に伴ったものである か疑問(№81)」「テストでは良い点を採ったが,学習態度等を総合すると評価が下がり, 生徒が納得できないものになることがある(№162)」「各観点別に点数化して総合評定を 出しているが,5段階で5がつきにくく,3が多くなる傾向がある(№143)」「単元ごと の評価を学期ごとの評定にどうつなげていくかについて,煩雑にならず,誰が見ても納得 できるような方法が固まっていない(№295)」「教務規定と,目標に準拠した観点別評価 との整合性をどう保てばよいのか(№383)」などがある。これを見ると,教員には,各観 点を評定に総括する際の重み付けや意味付けへの戸惑い,ペーパーテストの結果と評定の 間に齟齬が生じる恐れ,校内の規定等との整合性の懸念といった意識があることが分かる。 「eその他」については,77人,11.6%の教員が指摘している。これは,さらに「e- ①思考・判断についての評価技術の問題」「e-②技能・表現についての評価技術の問題」 「e-③知識・理解についての評価技術の問題」「e-④自己評価との関連等」といった 4つの問題に大別され,それぞれ27人・4.1%,32人・4.8%,9人・1.4%,29人・4.4% の教員が指摘している。(複数の指摘をしている教員もいるので,合計は「eその他」よ りも多い。)教員の代表的な意見を挙げると,e-①については「“思考・判断”の評価材 料をうまく作ることができない(№80)」「じっくりと思考して問題点,疑問点を解決する 能力をどのように評価すればよいのか(№98)」など,e-②については「“技能・表現” という観点は個人一人一人に応じて評価していくことが難しい(№166)」「“技能・表現” について,資料の収集は図書館やコンピュータの利用が考えられるが,図書館は蔵書も満 足の行くものではなく,校内のコンピュータも生徒が十分に利用できる環境は整備されて いない(№315)」など,e-③については「芸術や体育など,現在,筆記テストを実施し. - 56 -.
(62) ていない教科・科目における“知識・理解”の評価方法の検討(№258)」など,e-④につ いては「自分に対して大変厳しく評価する生徒もいれば,とても甘く評価する生徒もいる. その評価をそのまま反映することができるのか(№358)」「生徒の自己評価が教員の評価 と大きくかけ離れているケースが多い(№663)」などがある。これを見ると,教員は,“思 考・判断”“技能・表現”“知識・理解”にもそれぞれ評価に難しさを感じていたり,自己評 価の活用の仕方に迷っていたりしていることが分かる。 図Ⅰ-2を見ると,「aペーパーテストで評価する問題」「b関心・意欲・態度について の評価技術の問題」「eその他」といった課題については,年々割合が増加する傾向が見 られる。(ただし「aペーパーテストで評価する問題」は,2007年度より増加。) 図Ⅰ-3を見ると,「aペーパーテストで評価する問題」「b関心・意欲・態度について の評価技術の問題」「d観点を評定に総括することが難しい」については,普通科・専門 学科・総合学科に対して,特別支援学校では圧倒的に割合が比較的に低い。一方,「c四 観点全般についての評価技術の問題」については,特別支援学校の割合が比較的に高い。 1.4.2. 考察. 「aペーパーテストで評価する問題」は,高等学校の教員には,伝統的に中間テスト, 期末テストといったペーパーテストで評価・評定を行おうとする意識が強いことに由来し ていると考えられる。ただ,現実には,四つの観点を適切にペーパーテストで測るのは難 しい。一般に,ペーパーテストは「知識・理解」については問いやすいが,その他の観点 を測るには相応の作問技術が求められる。「これで思考が問えるのか」「これで関心が測 れるのか」などと生徒や保護者などから疑念が呈せされるおそれのあるような問題では, 評価の妥当性や信頼性の根本が崩れる。ペーパーテストで各観点をきちんと評価できる技 術があるのなら良いが,そうでなければ,無理をしてペーパーテストですべての観点を測 ろうとする必要は無いのではないか。ペーパーテストで測れることを測れば良いのではな いか。測り難い観点については別の方法を考えても良いのではないか。 「b関心・意欲・態度についての評価技術の問題」については,確かに,漠然と生徒の「関 心・意欲・態度」を評価するのは難しい。評価とは指導した成果を確認する作業である。 まず,「関心・意欲・態度」を高めるためにどこでどのような指導をしたかが明確になっ ているだろうか。これが明確でなければ,評価の方法など考えることはできない。指導と セットで考える(8)ことで,方法も見いだせるのではないか。これについては, 「eその他」 で指摘されている他の観点や評価の手法においても同様の事情が考えられる。「c四観点 全般についての評価技術の問題」についても,同様の事情が考えられる。指導していない ことを評価することはできない。授業計画に基づいて評価計画を適切に無理のないように 設計する(9)ことから始めるべきではないか。 「d観点を評定に総括することが難しい」については,たとえ難しくとも,評定をしな ければならない現実がある。観点別評価は,生徒に何が達成され,何がされていないかを 具体的に明らかにできる分析的評価の性格を持つが,それを総括した評定は,そのような 情報を失っている。それでも評定を行う以上,教員は,生徒を伸ばすという教育的な配慮 と責任のもとで,四つの観点を適切に総括するための哲学を持たねばならないだろう。そ して,それには教員の教育観や学校・生徒の実態が反映する。その意味で,評定への総括 は,画一的なものにはなりにくいであろうし,そのような性格のものでもないであろう。. - 57 -.
(63) 2. 「Ⅱ教員の意識や学校体制の問題」 (666人中425名,63.8%の指摘)について. 2.1. 「Ⅱ教員の意識や学校体制の問題」の内訳とそれぞれについて指摘した教員の割合. 【図Ⅱ-1:「Ⅱ教員の意識や学校体制の問題」の内訳と それぞれについて指摘した教員の割合】. - 58 -.
(64) 2.2. 「Ⅱ教員の意識や学校体制の問題」の内訳の年度ごとの比較. 【図Ⅱ-2:「Ⅱ教員の意識や学校体制の問題」の内訳と年度ごとの割合】. - 59 -.
(65) 2.3. 「Ⅱ教員の意識や学校体制の問題」の内訳の学科等ごとの比較. 【図Ⅱ-3:「Ⅱ教員の意識や学校体制の問題」の内訳と学科等ごとの割合】. - 60 -.
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