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自閉症と他者 三島瑞穂

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Academic year: 2021

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自閉症と他者

三島瑞穂

宇部フロンティア大学 人間社会学部

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会性、コミュニケーション、想像力の障害 と常同性を持つことから、他者理解の障害、あるいは他者との関係性の障害と解釈さ れることが多く、その支援では定型発達の者に合わせた社会的スキルの獲得に焦点が 当てられる。自閉症児にとって他者がどのように成立しうるのか、自己意識がどのよ うな状態か、が鑑みられることは少ない。そのベースには、自己理解を通して他者を 理解し、他者の理解を通して自己理解を深めるといった対称性の暗黙の裡の想定があ るが、この対称性の成立は仮想に過ぎない。自己と他者、またその関係があたかも自 明であるかのように捉えることが自閉症理解の困難さをもたらすひとつの要因となっ ていると考えられる。

本ワークショップでは、まず酒木の治療事例から、自閉症児が主体性を獲得する過 程と他者の存在の役割を紹介し、次に自閉症児・者における他者の存在と役割につい ての郡司による理論的なモデル化を紹介して、治療事例と理論的モデルをもとに自閉 症における他者の存在と役割について議論する。以下、二人の提題者の視点を紹介す る。

発達障害児の治療の実践家である酒木は「自閉症児は自己ならざる事態にあり、そ れ故、他者との関係が成立しない」という自閉症論を展開した。そして、自己と他者 が向き合うにあたり、他者に対する適応の仕方を覚えさせるよりも、まず自己の身体 のイメージの成立が不可欠であることに着眼して治療を行ってきた。ワークショップ 前半では、この治療方法を通して重度の自閉症児が主体性と言葉を獲得した事例を紹 介する。

理論生物学者である郡司幸夫は人の知覚・認知システムを世界の否定を司る双対構 造と、双対構造自体を否認する脳内他者の介入によってモデル化を行っている。双対 構造自体は認知機能としての否定によって、一方、脳内の他者は、この構造を否認す ることで、モデルを成立させる。脳内他者を備えた知覚・認知システムは、局所的に 世界の分類(認知)を実現することを可能とする。郡司は双対構造の否認の程度の弱 い形態として自閉症圏を位置づけ、自閉症を世界とそれを表象する空間との相互作用 でモデル化されるとする。

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