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「人工物の科学基礎論」

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Academic year: 2021

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「人工物の科学基礎論」

オーガナイザ 出口弘(東京工業大学)

1

出口 弘

(

東京工業大学

)

「社会を含む広義の人工物に対する知識の構築と運 用論」

2

村上 祐子 (立教大学) 「Person and AI(人工物と人格)」(発表は日本語)

3

寺野 隆雄

(

千葉商科大学

)

「人工物科学としての人工知能の方法論的基礎」

4

斉藤 了文(関西大学)「「価値と人工物の設計」

企画の主旨

科学哲学は歴史的に自然科学を中心にその基礎づけの議論を行ってきた。自然科学の法 則の発見と検証あるいは反証などのプロセスは科学哲学の中で様々に論じられてきた。

他方で、自然科学の法則にもとづくものの、それを利活用して人間社会に干渉する人工 物を設計・実装する知の体系としての工学については、決して十分な認識論的あるいは 方法論的議論が行われてきたとは言えない。さらに人が構築する社会についても、人と 技術の複合体としての人工物としてこれを捉えることが求められる。しかし人と技術の 複合体としての社会に対する知識の構築と運用はいかになされているか、或いはなされ るべきかについての方法論は、そもそもそれが科学的知識や工学的な知識の構築と運用 とどのような関係にあるのかを含めて、科学哲学的な視点での議論は決定的に不足して いる。

工学的システムに関する知、さらには人と技術の複合体である社会システムに対する 知を問うことは、人が作り上げたシステムに関する知を問うことででもある。そこでは、

自然科学的法則の発見・真偽の検証・反証などの科学基礎論の主題的関心だけではおさ まらない様々な方法論的な課題がある。

とりわけ人工物の設計で、人間の意図がどこかに働いているかを問うことは重要な課 題である。これはしかし、これはアリストテレスの四原因説における目的因のような大 きな意図や目的を問おうとしているのではない。人々がそれぞれに描く企図とその実現 のための技術や制度の設計、実現された技術や制度による意図せざる干渉を含めた社会 への介入。それが結果として新たな現実の地平を構築し、社会そのものとそこでの技術 的基盤、さらにその上で生活する人々の地平を変化させ、人々の役割や組織のありかた まで変化させること。この循環プロセスそのものを理解し設計するために必要なメタ的 な知としての方法論的問いかけや倫理的問いかけは、自然科学のあり方に対する基礎づ

(2)

けのための問いかけよりも広範にならざるを得ない。

近年では、社会を構成する諸システムが情報技術と不可分に結びついた形でデザイン されるようになりつつある。これは物理的な機械装置が産業革命以来、我々の社会的現 実を変容させてきたありかたとはさらに異なる変化を社会にもたらしつつある。そこで は工学的知の適用対象としての社会の範囲が人の意思決定や目的に対する干渉を企図 したものにまで広がりつつある。従来の工学的な知の構築や運用では、例えばビルや橋 梁や工場のデザインを行う際には、局所的な「目的」を設定し、設計と運用の責任を負 う人格(主体性)を対象となるシステムの外側に措定し、ステークホルダーに対する合 意形成を行うことを通じて、設計されたシステムの実現がなされてきた。しかし、人の 意思決定や目的に干渉することを企図したシステムに対しては、従来の工学的な知の構 築や運用の方法論を越えた問題を提起せざるを得ない。

主体の判断や意図を変化させることを企図した情報システムの設計は「商品のレコメ ンデーション」といった広告の領域を越えて、人の行為をレーティングしつつ様々な代 替案に対しシステムが主体の選択に影響を及ぼす設計へと向かいつつある。そこでは社 会に実装された情報システムの影響にさらされる人々との合意形成がないままにシス テムが作動し、その新たな現実に人がいつのまにか埋め込まれるという状況が生じつつ ある。情報システム(プログラム)が引き起こした事件や事故や社会問題に関する「責 任」や「倫理」のあり方は、ビルや橋梁や工場がひきおこした事件や事故や社会問題に 関する「責任」や「倫理」のあり方とどのように異なるのだろうか。

さらに人工知能やロボットなどの人工物では対象となるシステムそのものが「意図」

や「人格」を持つかのように振る舞うことが想定される。そこでは人工物を設計した主 体の企図や責任と、人工物そのものが持つ主体性との関係をどのように理解すべきなの か。そもそも人工物という他者に対して「主体性」や「人格」を想定することが可能な のか。このような問いかけが従来の主体性に関する議論の範囲を超えて、現実性を帯び てきている状況の中で、人工物に対する知の構築と運用に関する方法論的問いかけを深 化せざるを得ない。

本企画では、工学、情報科学、人工知能および社会科学での知の構築と運用を広義の 人工物の科学として捉えて、そこでの知の構築と運用についての課題を提題者各々がそ れぞれの立場から論じ、共通の基盤としての人工物の科学基礎論の構築のための討議を 深めることを目的とする。

参照

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