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高齢者のQOLの低下を抑制するための体力科学的研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)高齢者の QOL の低下を抑制するための体力科学的研究 キーワード:中高齢者,転倒,体力,レジスタンス・トレーニング,歩行動作 行動システム専攻 浅井 英典 1. 序 論. 全身反応時間、ステッピング、長座体前屈、閉眼片脚立ち、. 高齢化が急速に進行している我が国において、様々な疾. 開眼および閉眼両脚立ちおよび生活体力( 起居能力、歩行. 病が原因で運動不足に陥り、精神的あるいは身体的活動レ. 能力、手腕作業能力、身辺作業能力)の測定を実施し、介. ベルをはじめとする Quality of life( QOL) が著しく低下した. 入的運動指導の効果を検討した。. 中高齢者が数多く存在する。. (2) 結 果. 骨粗鬆症は、最近の10年間で2倍に増え、QOL の低下を. 運動群の握力、長座体前屈および閉眼片足立ちならびに. 加速させる原因のひとつとして近年取り上げられている。一. 開眼両足立ち時の圧力中心( COP)の平均速度と移動距離. 方、体力は、加齢に伴って、確実に低下し、転倒の発生率を. に統計的に有意な変化は見られなかった。一方、膝伸展筋. 高めていることから、健康の維持や増進を目的とした中高齢. 群による等尺性脚筋力、反応開始時間、全身反応時間、ス. 者に対する運動の有効性が指摘されている。さらに高齢に. テッピングおよび閉眼両足立ち時の COP の平均速度と移動. なるにしたがって、歩行能力は明らかに低下し、体力などと. 距離の成績は、介入期間前後で有意に向上した。また、特. 共に転倒の重要な関連要因であることが指摘されている。. に等尺性脚筋力、ステッピングおよび閉眼両足立ち時の. したがって、高齢者が要介護生活に陥ることを防いだり、. COP の移動距離の介入期間前後の変化量は、対照群に比. QOL の低下を抑制するためには、体力学的観点から運動. べて有意に向上していた。運動群の歩行能力以外の生活. 指導による体力の維持・増進を意図した方法に関する研究、. 体力は介入後に有意に向上した。. および歩行中の転倒要因に関する研究が重要である。 そこで本研究においては、中高齢者を施設入所高齢者と. 運動群の介入指導前 1 ヵ月間の外出頻度、外出延べ時間、 総歩数、および 1 日あたりの平均歩数は、個人差が大きく、. 在宅中高齢者の 2 つに区分し、それぞれに対して「 定期的. いずれの項目においても介入期間前後で有意な変化は見. な運動実践の効果」と「転倒と体力および歩行動作の関連」. られなかった。. について検討を行うことを目的とし、以下に示す一連の研究 を行った。. IADL、主観的健康度、毎日の気分、人間関係、生活満足 度および主観的幸福度は、介入期間前後において両群とも 有意な変化は認められなかった。抑うつ度は介入後に運動. 1)虚弱高齢者の QOL に対する短期間の定期的な運 動指導の有効性 ケアハウスに入所している高齢者に対して、3ヵ月間にわた. 群では有意な減少が認められ、その変化量は対照群のそれ に比べて有意に大きかった。 (3) 結 論. って実施した介入的運動指導が、彼らの IADL、抑うつ度、. 施設入所高齢者に対する 3 ヵ月間という比較的短期間の. 主観的幸福度および体力などにもたらす影響について検討. 介入的運動指導の実践は、抑うつ度の改善や筋力、平衡性、. を行った。. 敏捷性といった体力要素と生活体力の向上を引き起こし、部. (1) 方 法. 分的ではあるが QOL の改善に一定の有効性を有する可能. ケアハウスに入所する虚弱高齢者を運動群(平均年齢. 性が示された。. 78.9 歳) と対照群( 平均年齢 77.0 歳) に区分し、2∼3 日/週 の頻度で 3 ヵ月間にわたって、介入的な運動指導を実施し た。指導内容は、ストレッチング、上肢および下肢への軽度. 2)施設入所高齢者の歩行動作の特徴とQOL の関連 について. の抗重力運動やラバーチューブを用いたレジスタンス・トレ. 施設入所高齢者の歩行動作様式、形態測定、体力測定、. ーニング、および座位あるいは立位での低強度のレクリエー. 質問紙調査を実施して、歩行動作に関連する要因について. ションゲームであった。. 検討することを目的とした。. 介入期間前後に、IADL、抑うつ度、主観的幸福度などに 関する調査に加えて、握力、等尺性脚筋力、反応開始時間、. (1) 方 法 ケアハウス入居高齢女性 14 名( 平均年齢 81.1 歳) と、成人.

(2) 女性 16 名( 平均年齢 20.8 歳) を対象者とした。. 5ヵ月間、2回/週の実施頻度で、1回に 1時間の運動教室. IADL、抑うつ度および主観的幸福度について調査を行っ. を介入的に実施した。RT 群では、主に体幹と下肢筋群を主. た。握力、等尺性脚筋力、長座体前屈、反応開始時間、全. 動筋とする抗重力運動を実施した。さらに自宅では、下肢筋. 身反応時間、ステッピング、閉眼片脚立ち、開眼および閉眼. 力の向上を目的とし、実施が容易なレジタンス・ トレーニング. 両脚立ちの測定と通常速度での歩行動作の分析を行った。. を実施するように指導した。AE 群には、主にリズム体操とウ . ォーキングを50∼60%VO2maxに相当する運動強度で実施し. (2) 結 果 高齢者の腰部、膝および足頸部の上下方向の変位量は、 有意に小さく( p<0.001) 、成人の変位量の 36∼49%に相当し. た。さらに日常生活で極力、ウォーキングを実践するように 指導を行った。. ていた。高齢者では、肘関節角度変化量が有意に小さく. 介入期間前後に抑うつ度および主観的幸福度などの質問. ( p<0.05) 、体幹を境にして上肢の前方へのスウィング角度が. 紙調査と形態測定、腰椎骨密度、握力、膝伸展筋力、膝屈. 有意に小さかった( p<0.05) 。歩行中の高齢者の体幹前傾角. 曲筋力、足背屈筋力、足底屈筋力、ステッピング、長座体前. 度は、成人に比べて、有意に大きかった( p<0.001) 。高齢者. 屈、開眼および閉眼両脚立ち、有酸素性作業能力の測定を. の大腿部の後方への蹴り出し角度と股関節の動作範囲は、. 介入期間前後に実施した。. 成人より有意に小さかった( p<0.01∼p<0.001)。下腿部の後. (2) 結 果. 方への蹴り出し角度、膝関節動作範囲および足関節底屈角. 介入期間前後で、腰椎骨密度はいずれの群でも有意な変. 度も有意に小さかった( p<0.01∼p<0.001) 。高齢者の進行方. 化は認められなかった。体重は AE 群においてのみ 2.3kgの. 向への制動力および推進力は、成人に比べて、有意に少な. 有意な減少が見られた。RT 群では膝伸展筋力、膝屈曲筋. かった( p<0.001) 。. 力、足底屈筋力、ステッピングに介入後にそれぞれ有意な. 高齢者において、筋力と抑うつ度、および平衡性と主観的. 改善が認められた。AE 群の握力、膝屈曲筋力、足底屈筋力. 幸福度との間には有意な相関があり、老研式活動能力指標. および長座体前屈に有意な改善が見られた。有酸素性作業. は、主観的幸福度や GDS と正および負の有意な相関が認. 能力は、両群とも介入前後で変化は見られなかった。CNT. められた。そして、老研式活動能力指標が高い者ほど歩行. 群においては、いずれの体力測定項目においても有意な変. 中の大腿部の運動範囲が広く、その移動速度も大きかった。. 化は認められなかった。. さらに GDS の高い者は、大腿部の移動速度が遅いことが示. 抑うつ度は、3 群とも介入指導による変化は認められなか. された。. ったが、RT群では主観的健康度、毎日の気分、人間関係お. ( 3) 結 論. よび生活満足度に有意な改善が見られ、AE 群は主観的健. 施設入所高齢者の歩行動作を成人と比較した時、上肢、. 康度だけが有意に向上していた。CNT 群においてはいずれ. 体幹および下肢動作と床反力の結果に有意な相違があり、. の項目でも有意な変化は見られなかった。. 転倒の危険をはらんだ歩行動作であった。このような歩行動. (3) 結 論. 作の改善を図るためには、身体活動量を増加させて IADL. これまで中高齢者に推奨されていた有酸素性運動だけで. や抑うつ度の改善を目指したり、介入的な運動指導に基づ. なく、下肢筋機能の改善を意図し、自宅においても容易に. く体力の改善が必要であることが示唆された。. 実施可能なレジスタンス・トレーニングを実施することで、筋 力や敏捷性といった一部の体力要素の向上に望ましい効果. 3)中高齢女性の体力、主観的幸福度および抑うつ 度の改善に向けたレジスタンス・トレーニング. を生みだし、主観的な健康度や生活満足度などの心理的側 面の改善にも有効であることが示された。. の有効性について 運動習慣のない中高齢女性の体力、抑うつ度および主観 的幸福度などに及ぼすレジスタンス・トレーニングの影響を. 4)長期間の運動および栄養学的介入指導が中高齢 女性の骨密度および体力に及ぼす影響について. 明らかにすることを目的とし、中高齢者が容易に実施可能な. 中高齢女性に対する 1 年間の運動指導とカルシウム摂取. レジスタンス・トレーニングと、歩行運動を主体とした有酸素. 量の増加を主目的とした栄養学的介入指導が、腰椎骨密度. 性トレーニングの効果を比較検討した。. や体力に及ぼす影響を検討することを目的とした。. (1) 方 法. (1) 方 法. レジスタンス・ トレーニング群( RT群: 平均年齢 62.1歳) 、有. 1 年間、3 回/月の実施頻度で、1 回当たり60 分間、低・ 中. 酸素性トレーニング群( AE 群: 平均年齢 59.1歳) および対照. 等度の運動強度の運動教室を開催した。またこの時、実施. 群( CNT 群: 平均年齢 60.7 歳) の 3 群に無作為に分けた。. が容易なレジスタンス・トレーニングを毎日実施するように指.

(3) 導した。. 歩行時の転倒によって消失しないためにも、その予防は一. カルシウム摂取量の増加を意図し、毎月 1 回の栄養講座と. 層重要であると思われる。特に本研究においては、施設に. 料理教室を開催した。希望者にはカルシウム補助食品を配. 入所する虚弱高齢者が、転倒の危険性の高い歩行動作を. 布した。さらに牛乳とカルシウム補助食品摂取量を毎日記録. 行っている知見を得ている。さらに在宅中高齢者では、筋力. するように指導した。. や平衡性の低下が著しく、歩行動作自体も変容していること. 介入前後に行った調査・測定は、運動習慣と食習慣に関 する生活実態調査、形態測定、腰椎骨密度、栄養素等摂取 量、握力、等尺性脚筋力、反応開始時間、全身反応時間、. が報告されていることから、転倒が発生し易い動作様式に陥 っていることが予測される。 したがって、在宅中高齢女性を過去 1 年間の転倒経験の. ステッピング、長座体前屈、閉眼片脚立ちおよび生活体力. 有無から、転倒群と非転倒群に区分し、体育科学的観点か. であった。そして、介入期間前に比べて介入後の腰椎骨密. ら、転倒に関連する要因を明らかにすることを目的とした。. 度が、+3%以上増加していた者を骨密度増加群、+3%∼- 3%. (1) 方 法. 未満の者を不変群および- 3%以上減少していた者を減少群. 在宅中高齢者 158 名( 転倒経験者 57 名 年齢 63.5 歳、未. とした。. 経験者 101名 年齢 61.9歳) を対象にし、体力測定、外乱時. (2) 結 果. 動的平衡性、歩行テスト、立位での脚の挙上、歩行動作時. カルシウム摂取量は、増加群では介入前後で有意に増加. 床反力および動作分析を実施した。. し( p<0.01) 、他の 2 群では差がなかった。1 日当たりの牛乳. 動的平衡性の測定にあたって、外乱刺激発生装置を考案. 摂取量には 3群間で有意差はなかったが、1日当たりのカル. し、前あるいは後方向にフォースプレートを移動させ、COP. シウム補助食品に由来するカルシウム摂取量は、増加群が. の移動速度および軌跡長を算出した。立位での脚の挙上で. 不変群および減少群に比べて有意に多かった( P<0.01 およ. は、5、10および 15cmに相当する高さに左足を挙上し、その. び p<0.05) 。介入前のカルシウム摂取量と介入後のカルシウ. 高さを測定した。歩行テストにおいては、通常歩行および最. ム補助食品由来の摂取量以外のカルシウム摂取量を比較. 大歩行を行い、その際の歩行速度と歩幅を測定した。歩行. すると、有意な差はなかったが、増加群では増え、減少群で. 動作撮影時に、被験者は通常歩行と通常歩行速度で、高さ. は低下する傾向が認められた。. 5、10 および 15cm の障害物を左足からまたぎ越していく歩. 介入前後で、3 群とも等尺性脚筋力は有意に向上した。反 応開始時間は、3 群とも介入前後で有意に向上し、全身反 応時間は、増加群と不変群で有意に改善していた(p<0.05. 行を行った。 (2) 結 果 転倒群の握力、膝伸展筋力、ステッピング、筋収縮時間、. および p<0.01) 。ステッピングにはいずれの群でも有意な変. 全身反応時間は、非転倒群に比べて有意に劣っていた。筋. 化は見られなかった。手腕作業能力を除いた生活体力は、. 収縮時間は、脚伸展筋群が筋力発揮を開始し、両足が離地. いずれの群でも有意に改善していた。. するまでの時間であり、筋機能の要因が強く関与している。. (3) 結 論. 転倒群においては主動筋である膝伸展筋群の筋力が小さく、. 運動指導は、いずれの群においても筋力、敏捷性および 生活体力に有意な改善をもたらしていたが、腰椎骨密度に 対して望ましい影響を与えるまでには至らなかった。また、. 筋収縮速度が遅いことから、筋機能の低下が生じていると考 えられる。 筋機能と同様に平衡性は、転倒の重要な関連要因とされ. 牛乳やその他の食品の摂取状況に変化がみられず、増加. ているが、直立静止状態でのいわゆる静的平衡性テストで. 群でカルシウム補助食品の摂取量が最も多かったことから、. は、表に示したように、両群間に差を認めなかった。つまずく. 腰椎骨密度の改善を図るためには、食物からの基本的なカ. などでバランスを崩す状況を想定して今回実施した動的平. ルシウム摂取に加えて、カルシウム補助食品の併用が有効. 衡性テストでは、COP の速度と軌跡長は、転倒群で有意に. であることが示唆された。. 大きく、刺激を受けた際の身体の動揺が大きいことが示され た。先行研究において下肢筋機能が劣っている者は、姿勢. 5)高齢者の QOL の低下を抑制するための体力科 学的研究 在宅中高齢者の多くは、施設入所高齢者に比べて、外出 頻度や時間が多く、屋内外で段差などの転倒を引き起こす. 動揺が大きいことや、下肢の筋機能の低下が平衡性の悪化 を引き起こすことなどが報告されていることから、転倒群で認 められた筋機能の低下が、動的平衡性に影響していること が推測される。. 外的要因が数多く存在する。そのため、本研究で行ってきた. さらに筋や関節などには、固有受容器が分布し、これらか. 運動の定期的な実施によって獲得されたプラスの効果を、. ら出力される深部感覚の運動感覚情報によって、身体各部.

(4) 位の相対的位置関係、関節の屈曲・伸展角度などを感知し. 実施可能なレジスタンス・トレーニングを含んだ低∼中等度. ている。高齢者ではこの感覚情報が減少し、姿勢制御能力. の運動強度であっても、比較的短期間で筋力、敏捷性およ. が低下することが指摘されている。本研究では立位での脚. び生活体力の改善を図ることは可能であった。また、このよう. の挙上において、転倒群では必要以上に足を挙上しており、. な運動の実施は、抑うつ度や主観的健康度などに対しても. 固有受容器からの深部感覚の情報に両群間で差があること. 有効であった。このことは、部分的ではあるが、QOL の改善. が伺われた。また、先行研究で指摘されているように、転倒. が図られていることを示しているものと思われる。一方、骨折. 経験者では高齢女性であるほど再転倒への恐れを感じてお. は QOL の急速な低下をもたらす。骨折を誘発し易い転倒の. り、転倒することを避けるため、非転倒群に比べ、足を高く挙. 発生率は、加齢や体力の低下に伴って増加する。本研究に. 上していたのではないかと考えられる。. おいて、過去 1 年間で転倒経験を有する者と転倒経験を有. 転倒群の立脚期所要時間は、いずれの歩行課題におい. しない者では、下肢筋力、敏捷性および動的平衡性に有意. ても有意に長かった。歩行速度と立脚期所要時間には. な差が認められたことからも、運動の実践による体力の向上. r=- 0.76 以上の高い相関があり、この時間が延長すれば、歩. は、転倒予防上も有効な対策であると思われる。. 行速度は遅くなると考えられる。転倒群の腰部の上下方向. 転倒による骨折を予防するにあたって、骨密度の改善が. の変位量は、通常歩行では、両群間に差はなかったが、障. 必要であることには、議論の余地はないが、特に中高齢女. 害歩行時には、転倒群の方が有意に大きかった。転倒群の. 性において運動の実践だけによって骨密度の改善を図るこ. 歩行速度が遅いことを考えあわせると、腰部を過剰に高く持. とは、難しい状況にあると思われる。したがって、運動の定期. ち上げてまたぎ越しを行う際、姿勢が不安定になり、転倒の. 的な実践に加えて、カルシウム摂取量の増加を目的とした. 危険性が高まっていると考えられる。. 栄養学的な対策を講ずることによって、体力と骨密度の改善. 転倒群の肘関節の変化量が、いずれの歩行でも有意に小. を併せて目指すことが重要である。. さかった。上肢の前方向へのスウィング角度は、いずれの歩. さらに転倒予防のためには、前述のように体力の向上を図. 行課題でも有意に小さく、後方へのスウィング角度は両群間. ることが重要であるが、歩行中の転倒が最も多いことから、歩. で差はなかった。これらのことは、前述した施設入所高齢者. 行動作自体の改善を目指すことも極めて重要である。施設. の上肢の動作と極めてよく類似していた。非転倒群では上. に入所する虚弱高齢者の上肢、体幹および下肢の動作は、. 肢の動きに応じて肘関節を屈曲あるいは伸展させ、上肢の. 転倒の危険性を内在していることが本研究において明らか. 前後方向へのスウィングを容易にしていると思われる。肘の. になった。さらに、転倒経験がある在宅中高齢者では、歩行. 角度変化量や前方上腕垂直角度は、上肢の運動速度と有. 時の上肢の動作様式が、施設入所高齢者のそれと類似して. 意な正の相関があったことから、歩行速度にも影響すると思. おり、下肢だけでなく上肢の動作に対する指導の重要性が. われる。一方、転倒群では上肢を伸展したままスウィングし、. 示唆された。また、日常の歩行運動においては、段差などの. 体幹を境にして前方へのスウィング角度が小さい動作様式. 障害物をまたぎ越しているが、転倒経験者では、障害物に. であった。したがって、これらのことが上肢の運動速度を低. 対して過剰に脚を挙上する動作様式が原因となり、転倒し. 下させ、歩行速度の低下に繋がっているものと思われる。. やすい不安定な姿勢を取っていることが認められた。これに. 障害歩行時の左足関節の底屈角度は、フォースプレート. 加えて下肢も、転倒を誘発しやすい動作を行っていることか. に着地する際に現れていた。非転倒群では障害高が増して. ら、個人個人の下肢筋群の筋機能、関節可動範囲、障害歴. も底屈角度は同じで、着地時の衝撃を緩衝するために足関. などを考慮しながら、歩行指導を含めた運動指導を行い、転. 節を底屈させていたと思われる。一方、転倒群では足関節. 倒の予防とQOL の改善を図っていく必要性が示唆された。. の底屈角度が有意に小さく、着地時の衝撃を非転倒群ほど 緩衝していないことが伺われる。 またぎ越し時の後ろ脚では、非転倒群では障害物との接 触を防ぐために、右足関節を底屈させていたのに対して転 倒群では、底屈角度が小さいため、障害物に接触し易い動 作になっていたものと思われる。 2. まとめ 本研究は、運動習慣がない中高齢者に対する定期的な運 動指導の効果について検討を行った。日常生活で容易に.

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