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大学運動部員の競技・日常場面におけるストレスコーピング過程 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)大学運動部員の競技・日常場面におけるストレスコーピング過程 キーワード:ストレス認知モデル,トランスアクションモデル,環境要因,認知的評価. 所属. 行動システム専攻. 氏名. 阪田 俊輔. 1.背景 1)運動・スポーツへの期待 大学生活において,健康問題や就学問題,就職問題な ど, 「ストレス」が原因の一つとして考えられる問題は多 い.このような問題について,対処する能力の習得を促 すことは,大学の急務として考えられている.. Figure1 Lazarus & Folkman (1984)のストレス認知モデル. ストレスに対処する行動であるストレスコーピングは, 「ストレス対処スキル」としてライフスキル. また,本研究では, 「競技」と「日常」で発揮されるス. (WHO,1997)の一つに定義されている.このライフスキ. キルは異なるという点について,Lazarus & Folkman. ルは日常生活での問題に効果的に対処するスキルとされ. (1984)のトランスアクションモデル(Figure2)で説明を. ており,大学生においては運動・スポーツがライフスキ. 試みている.このモデルは,個人内の要因であるコミッ. ルの習得・上達に効果を持つことが期待されている.つ. トメントや価値観,外的な環境の要因である社会的な支. まり,運動・スポーツで発揮されたスキルが日常でも同. 援や圧力が先行要因として相互に関係することによって,. 様に発揮されることが期待されている。. その後の認知的評価及びストレスコーピングが決定され. しかし,この期待には問題点がある.それは「競技」. るとするモデルである.先行要因を含め過程として行動. で発揮されるスキルと「日常」で発揮されるスキルを区. をスキル発揮として見た場合,そのスキルは異なると言. 別していない点である.運動・スポーツつまり「競技」. える.. の場は,周りとのコミュニケーションや自身の心身のコ ントロールが必要とされ,そのためにスキルを使用する 場面が多い.しかしそこで使用されるスキルは,「競技」 という「日常」と状況の異なる場面においてのみ発揮さ れる「競技社会スキル」 「競技心理スキル」であり,「日 常」で用いられる「ライフスキル」と同一ではない.つ まり「競技」と「日常」で発揮されるスキルは類似して いても異なるものであり, 「競技」あるいは「日常」で習. Figure2 Lazarus & Folkman (1984)のトランスアクションモデル. 得・上達されたスキルが,必ずしも「日常」あるいは「競 技」でのスキルの習得・上達をもたらすとは限らないと. 3)仮説と目的. いう考え方をするべきなのである.その影響関係を明ら. 本研究では,先行要因としてあまり考察されない環境. かにするためには, 「競技」と「日常」を区別し測定を行. 要因について, 「集団」 , 「責任」 , 「ソーシャルサポート」 ,. う必要がある.. 「競争」という 4 因子を設定した.そして,それらが認 知的評価とそれに続くストレスコーピング行動に影響す. 2)ストレスコーピング研究について ストレスコーピングについて,多くの研究は Lazarus & Folkman(1984)のストレス認知モデル(Figure1)を採. るという仮説を立て,その仮説を検証するとともに,競 技場面と日常場面でのストレスコーピング過程を比較す ることを目的とした.. 用している.このモデルにおいて,ストレスコーピング は最終的な行動のみではなく,それに影響を及ぼす過程 全体を見るべきであると説明されている.. 2.方法 1)調査対象.

(2) 九州,中国,近畿地方で,課外活動としてスポーツ活 動に従事する学生 452 名(男性 305 名,女性 147 名;平 均年齢 20.2 歳,SD=1.50). 5)ストレスコーピング 尾関(1993)により作成されたコーピング尺度を用いた. 尺度構成は「問題焦点型」5 項目, 「情動焦点型」3 項目, 「回避・逃避型」6 項目であった. 「1)(ストレッサー)の. 2)調査期間 2011 年 10 月から 2012 年 1 月. ような場面に遭遇した際,あなたはどのように行動して いますか」という質問に対して 1.全くしないから 4. いつもする,の 4 件法で回答を求めた.. 3)調査方法 質問紙調査を行った.質問紙はストレッサーごとに A,B に分けランダムに配布した.また,ストレッサーに. 4.結果と考察 1)競技場面及び日常場面の環境要因の比較. ついて「全く経験していない」と回答したもの(ストレッ. ストレッサーごとに,競技場面と日常場面と間の環境. サー得点が 4 未満)を分析対象から外した.その結果分析. 要因評価に違いがあるのかを,対応のある t 検定を用い. 対象は A 97 名,B232 名となった.. て検討した(Table1.2).その結果,各ストレッサーの環 境要因について,競技場面の方が日常場面に比べて有意. 3.質問項目. に高い得点を示した.これは,対象者のコミットメント. 1)フェイスシート. が影響していることが考えられる.コミットメントにつ. 氏名,大学名,年齢,性別,所属団体,競技歴につい て回答を求めた.. いて加藤・石井(1999,2003)は,コミットメントが高い 運動選手ほどストレッサーの嫌悪感,ストレス反応が高 く認知されると報告している.環境要因についても同様. 2)ストレッサー. に高く認知されたと考えられる.. 岡ら(1998)により作成されたストレッサー尺度より, 人間関係に関するもの 3 項目,競技成績に関するもの 3 項目を用いた. また, 人間関係に関するものを質問紙 A, 成績に関するものを質問紙 B とした. 「これまでであな たは下記のような場面をどのような頻度で経験しました か」という質問に対して 1.全く経験しない~4.とても 頻繁に経験する,の 4 件法で回答を求めた.. Table 1 人間関係における環境要因の平均値の比較 t値 競技場面 日常場面 4.32 3.93 2.60 * 集団 4.15 3.86 1.93 † 責任 4.49 4.33 1.24 ソーシャル 4.13 3.49 3.94 *** 競争 n =97, *** p .<001, ** p <.01, * p <.05, † p <.10. 3)認知的評価 渋倉ら(2008)により作成された高校運動部員用認知的 評価尺度を用いた.尺度構成は「挑戦」3 項目, 「コント ロール感」3 項目, 「脅威」3 項目であった.「1)(ストレ ッサー)のような場面に遭遇した際,あなたはどのように 考えていますか」という質問に対し,1.全くそのよう に思わないから 4.非常にそのように思う,の 4 件法で. Table 2 成績における環境要因の平均値の比較 t値 競技場面 日常場面 3.55 3.53 0.13 集団 4.09 3.90 1.98 * 責任 4.78 4.44 3.29 ** ソーシャル 4.04 3.85 1.72 † 競争 n =232, *** p .<001, ** p <.01, * p <.05, † p <.10. 回答を求めた. 2)競技場面と日常場面のストレスコーピング行動の類 4)環境要因. 似性. 予備調査により作成した尺度を用いた. 尺度構成は 「集. 各ストレッサーにおける競技・日常場面のストレスコ. 団」 ,「責任」 , 「ソーシャルサポート」, 「競争」について. ーピングの相関分析を行った(Table3.4).その結果,両. 各 2 項目であった.また,本研究では「1)(ストレッサー). ストレッサーにおいて,問題焦点型同士,情動焦点型同. のような場面に遭遇した際,あなたはどのように考えて. 士,回避・逃避型同士に強い相関が見られた.このこと. いますか」という質問に対し,1 全くそのように思わな. から競技・日常場面のストレスコーピング行動は類似性. いから 4.非常にそのように思う,の 4 件法で回答を求. を持っていることが確認された.. めた..

(3) Table 3 人間関係における競技・日常場面間のストレスコーピングの相関 日常場面 問題焦点 情動焦点 回避・逃避. 競技場面. 問題焦点. 0.81 **. 0.59 **. 0.05. 情動焦点. 0.61 **. 0.73 **. 0.18. 0.12. 0.27 **. 0.82 **. 回避・逃避. 環境要因. 認知的評価. .23. コントロー ル感. 集団. 問題 .24**. .18 *. .20 †. n =97, ** p <.01. ストレスコーピング. .18. 責任. .48***. .23 .32***. ソーシャル サポート. .17†. .19. 挑戦. 情動. .44***. .16† .27*. -.17† .15. 競争. Table 4 成績における競技・日常場面間のストレスコーピングの相関 日常場面 問題焦点 情動焦点 回避・逃避. 競技場面. 問題焦点. 0.59 **. 0.40 **. 0.20 **. 情動焦点. 0.37 **. 0.70 **. 0.41 **. 0.06. 0.24 **. 0.62 **. 回避・逃避. n =232, ** p <.01. ※1 有意なパスのみ表示 ※2 ~.29, ※3 正の影響,. ーピング過程の下位尺度について相関分析を行った.そ. Figure3 人間関係・競技場面の分析結果 環境要因. 認知的評価. り,環境要因→認知的評価→ストレスコーピングの関係 を持っていることが予測できた.さらに特筆すべき点と. ストレスコーピング. .19. 集団. 責任. .19. 挑戦. .23**. .51***. .19. .30**. .23**. 問題 -.15*. .31**. ソーシャル サポート. .23. コントロー ル感. .19†. 情動. .40***. .43***. の結果,環境要因と認知的評価,認知的評価とストレス コーピングに総じて中程度の相関が見られた.これによ. 回避・逃避 ***p<.001, **p<.01, *p<.05, † p<.10 GFI=.927, CFI=.921, RMSEA=.089. .30~ 負の影響. 3)下位尺度間の相関 各ストレッサーにおける競技・日常場面のストレスコ. .07. 脅威. -.28**. .32. 競争. .07. 脅威. ※1 有意なパスのみ表示 ※2 ~.29, ※3 正の影響,. 回避・逃避 ***p<.001, **p<.01, *p<.05, † p<.10 GFI=.957, CFI=.997, RMSEA=.021. .30~ 負の影響. Figure4 人間関係・日常場面の分析結果. して, 各場面における問題焦点型と情動焦点型について, 中程度の相関が見られている.これは,ひとつのストレ ッサーに対し,複数のストレスコーピング行動を行って いることを示していると考えられる.渋倉・森(2002)は, 高校運動部員を対象にして,問題焦点型のコーピングを. 環境要因. 「問題・情動焦点タイプ」という分類を行っていることか. 集団. 問題 .13*. .22***. .20***. 責任. .16. コントロー ル感. -.17*** -.20***. .11 .36*** .27***. .16*. 競争. .07. 挑戦. 情動. .20**. .25***. ソーシャル サポート. ら,大学運動部員においても同様のタイプが存在してい ると考えることが出来る.. ストレスコーピング. .08. 行って建設的に問題との関係に取り組みつつ,情動焦点 型のコーピングを行い自分の情緒の安定にも取り組む. 認知的評価. .13 .12*. ※1 有意なパスのみ表示 ※2 ~.29, ※3 正の影響,. .08. -.28***. 脅威. .31***. .30~ 負の影響. 回避・逃避. ***p<.001, **p<.01, *p<.05, † p<.10 GFI=.955, CFI=.915, RMSEA=.090. 4)ストレスコーピング過程モデルの検証 各ストレッサーにおける競技・日常場面の 4 場面ごと. Figure5 成績関連・競技場面の分析結果. に共分散構造分析を行った(Figure3-6).全てのモデル適 合度は十分な値を示していた. 全ての場面において「挑戦」→「問題焦点型」及び「日. 環境要因. 認知的評価. 集団. コーピングに影響力を持っていた.これらの結果は先行 研究(渋倉・森,2002,2004;渋倉ら,2008)を支持して サポート」が人間関係ストレッサーの競技場面を除く全 ての場面で共通していた.場面によっては「責任」もし くは「集団」も影響力を持っていた.. 問題. .19** .35***. .22**. 責任. .08 .17** .18**. ソーシャル サポート. .16 .27***. 挑戦. .15* .24. 競争. 脅威. ※1 有意なパスのみ表示 ※2 ~.29, ※3 正の影響,. Figure10. .30~ 負の影響. 情動. .12*. .40*** .23***. いる. 「挑戦」に影響する環境要因としては「ソーシャル. .28. コントロー ル感. -.13†. 常焦点型」という関係が共通していた.また,成績関連 ストレッサーの両場面においては「コントロール感」が. ストレスコーピング. .09. .16*. -.25*** .20** .06 .28***. 回避・逃避. ***p<.001, **p<.01, *p<.05, † p<.10 GFI=.962, CFI=.956, RMSEA=.083. 成績関連・日常場面の分析結果.

(4) また「コントロール感」について,成績関連ストレッ サーの競技場面では「責任」が,日常場面では「競争」 が影響力を持っていた.. 部活動ストレッサーに対する認知的評価尺度の再構成, 体育学研究,53,147-158 渋倉崇行,森 恭(2004) 高校運動部員の心理的ストレス. 「回避・逃避型」についても場面により影響の仕方が 変化していた.. 過程に関する検討,体育学研究,49,535-545 渋倉崇行,森 恭(2002) 高校運動部員の部活動ストレッ. 以上のことから,ストレッサー及び場面毎に,環境要 因→認知的評価→ストレスコーピングの過程に違いが見 られた.これは,競技と日常の場面が持つ特性の違いに. サーに対するコーピング採用とストレス反応との関連, スポーツ心理学研究,29(2),19-30 WHO(1997) WHO ライフスキル教育プログラム,川畑 徹朗 (翻訳),高石 昌弘 (翻訳),西岡 伸紀 (翻訳),石. よるものと考察できる.. 川 哲也 (翻訳),JKYB 研究会 (翻訳),大修館書店 5.まとめ 本研究の結果から,環境要因がその後のストレスコー ピング過程に影響するという仮説モデルは支持された. この結果は, 「競技」で習得されたスキルを「日常」に効 率的に般化させる方法について検討している研究者ある いは指導者にとって,重要な知見であると言える.例え ば,場面間で共通していた環境要因について,その要因 を感じやすい環境を作ることで,競技から日常へのスキ ル間の影響は促進されるという仮説を新たに立てること ができる. 今後はトランスアクションモデルとして個人要因につ いても考慮しつつ,ストレスコーピングの競技・日常間 のスキル発揮過程について詳しく調べる必要がある. また,ライフスキル全体においても,本研究の結果が あてはまるのかについても検討する必要がある. 6.主要引用文献 加藤 久,石井源信(2003),中学生サッカー選手の日常 的な心理的ストレス反応に関する研究,スポーツ心理 学研究,30(2),9-26 加藤 久,石井源信(1999),中学生サッカー選手の日常・ 競技ストレッサーに関する研究,スポーツ心理学研究, 26(1),29-45 Lazarus,R.S.,Folkman,S. (1984) Stress,Appraisal, and Coping:ストレスの心理学―認知的評価と対処の 研究,本明. 寛,春木. 豊,織田正美,池澤徹也(監. 訳)(1991),実務教育出版 岡 浩一郎,竹中晃二,松尾直子,堤 俊彦(1998),大 学生アスリートの日常・競技ストレッサー尺度の開発 およびストレッサーの評価とメンタルヘルスの関係, 体育学研究,43,254-259 尾関友香子(1993) 大学生用ストレス自己評価尺度の改 定:トランスアクショナルな分析に向けて,久留米大 学大学院比較文化研究科年報,1,95-114 渋倉崇行,西田 保,佐々木万丈(2008) 高校運動部員の.

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参照

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