若年無業者のライフストーリーと重要な他者との関係に関するナラティヴ研究 [ PDF
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(2) ①ライフストーリーについて,②重要な他者との関係につ. T2U'()*+,-,. いて質問した。. 1Ulmnopqlmnrs 不登校傾向や不登校の経験者は 4 名で,高校までの不登. T4UbcIde?面接はいつでも中断できることを説明し た。面接中に興奮気味になったEは 40 分で面接を終えた。. 校経験者が 2 名(L群のBとC) ,大学生入学後が 2 名(H. 面接後日,筆者が面接内容をまとめたレビューシートを郵. 群のHとI)であったことから,高校までの不登校傾向が. 送し,筆者の理解が誤っていないかを確認した。面接後の. 大学入学後の不登校傾向よりも,アイデンティティ未形成. 生活や健康などへの影響についても確認をした。. と関連することが考えられた。E以外の 9 名が不登校ある. T5UPQ&YZ[?参与者に特徴的であった語りの内容に. いは中退や留年を経験していたことから,若年無業者は挫. ついて検討した。その際,MEIS の平均値から参与者を高. 折や躓きを経験しており,そこから立ち直りに時間がかか. 群(H 群)と低群(L 群)とに分けて検討を加えた。. っている可能性が高いことがうかがえた。. 3Efg.hi. 2Utuvw67x[R 将来希望する働き方については,具体的な職種をあげた. T1UA(BC9:9:jk 参与者の属性などの情報を Table1,MEIS 得点を Table2. 者が 9 名, 「特にない」が 1 名(L 群の C)だった。Cと同. に示す。大学生の平均値(谷,2001)より 17.2 点低かった. じく MEIS がL群であるB,G,Jは具体的な希望職種を. ことから,若年無業者はアイデンティティ未形成(小此木,. 語っていた。職業を決定することとアイデンティティとの. 2000)という傾向を支持したといえる。しかし,下位因子. 関連について示唆されている(下山,1986 など)が,就き. では,他者からみられているであろう自分自身が,本来の. たい希望の職業をもつことは,実際の行動レベルで職業を. 自分自身と一致しているという感覚である「対他的同一性」. 決定することの前段階であるためアイデンティティ形成と. のみ先行研究(谷,2001)と比べて 0.9 点高かった。自信. 関連しない可能性が考えられた。. のない自分は,他者からも良くみられていないという否定. T3U/012%.&34. 的な意味での一致の可能性があるかもしれない。. 1U/012%&y9z-,. Table 1 参与者の情報 性別 年齢 A 男性 20! B 男性 20!. C 男性 20! D 男性 30! E 男性 30!. f 女性 30! G 男性 30! H 男性 30! I 男性 30!. J 男性 30!. 家族構成と現在 通院 の居住形態 祖母,父,母, 専門学校 無職:8∼9ヶ月 8∼9ヶ月 なし 弟。現在全員と なし 中退 同居 通院中: 父は幼少時他 アスペル 中学卒業 無職:約6年 なし 界。母。現在母 ガー障が 約6年 と叔父と同居 い・うつ 病 父,母,弟。弟 アルバイト 高校中退 無職:約9ヶ月 約2年 は通院中。現在 なし 半年 全員と同居 祖母,父,母, 通院中: 大学中退 無職:約5年 なし 約5年 妹。現在は家族 うつ病 全員同居 皮膚科通 父,母,妹。現 院中:ア 大学卒業 無職:約7年 なし 約7年 在父,母と同居 トピー性 皮膚炎 アルバイト 父,母,兄。現 5∼6年。正 短大中退 無職:約2年 なし 約2年 社員経験あ 在全員と同居 り。 月に8∼10日W機 アルバイト 父,母,弟。現 大学卒業 関(謝金あり): 約4年 なし 在弟と同居 3年。 4ヶ月 通院中: 週に3∼4日W機関 アルバイト 父,母,兄。現 対人恐怖 大学卒業 (謝金あり): 約3年 在父,母と同居 症,うつ 約3ヶ月 3ヶ月 病 アルバイト 週に3日仕分けア 父,母,妹。現 なし 大学卒業 約1年半 →正社員約 在父,母と同居 ルバイト:6ヶ月 7年半。 15歳の時父が再 継続的アル 婚。父,義母, 高校中退 通院中: 後大検取 無職:約10年 約10年 バイト経験 妹,義妹と義 うつ病 あり 得 弟。現在は一人 暮らし 学歴. 現在の状態と その期間. 最長の 無業経験. 継続的な 雇用経験. (谷、2001). ったが,MEIS のH群・L群ごとにみると,H群は平均カ ,L 群は 2.50(SD=1.29)と, テゴリー4.00(SD=2.28) 大事に思う人が多いとアイデンティティが形成されている 傾向であった。家族があがらなかったのは 3 名(H 群の A と I, L 群の J) , 友人があがらなかったのは3 名 (H 群の I , L 群の B と E)であった。家族,友人どちらもあがらなか ったのは 1 名(H 群の I)であった。大事に思う人が誰であ るかではなく,大事に思える人が多くいることとアイデン ティティ形成とが関連していることが示唆された。 2U/012%.&34{ 重要な他者との関係については語りが少ないことが特徴 的であった。大事に思う理由について語ったのは 6 名(H 群では D と f,H,I ,L 群では B と J)で,自分を理解し てくれることや相手への感謝の気持ちが語られた。重要な 他者との関係性や大事に思う理由を語ることとアイデンテ ィティ形成とは関連が見出せなかった。. Table 2 参与者のMEIS得点と平均値 斉一性 対自的 対他的 心理社会的 合計得点 H・L ・連続性 同一性 同一性 同一性 群 A H群 35 14 23 17 89 B L群 12 14 27 12 65 C L群 10 6 14 12 42 D H群 20 14 29 16 79 E H群 18 32 23 9 82 f H群 25 6 20 21 72 G L群 23 8 11 11 53 H H群 25 22 27 21 95 I H群 24 13 15 23 75 J L群 15 13 16 15 59 Me (SD ) 20.7(7.0) 14.2(7.4) 20.5(5.9) 15.7(4.5) 71.1(15.6) Me (SD). 重要な他者の平均カテゴリー数は 3.40(SD=2.01)であ. 3U|&2&}~34 B(L 群)以外,コミュニケーションが苦手であるという 内容が語られ,若年無業者はコミュニケーションが苦手と いう先行研究(厚生労働省,2007 など)を支持する結果で あった。そのうち,深刻なコミュニケーションの苦手さが うかがえたのは, H 群の E と H, L 群の J の 3 名であった。. 24.4(6.8) 19.8(6.7) 19.6(5.4) 21.4(5.1) 85.3(18.0). 2.
(3) E と H の二人はアイデンティティ形成度が高い群であるこ. テゴリーを生成した。生成した上位カテゴリーと下位カテ. とから,コミュニケーションの苦手さとアイデンティティ. ゴリーの構成図を Figure1 に示す。. が未形成であることは必ずしも関連しないのだろう。. 【 若年無業者の語りの分析カテゴリー 】 (203). 4Utu&vw&~.&34. 「聞き手との関係性」 (107). 小数の人との深い関係を希望したのは 4 名(H 群の D と. 「語りの非一貫性・不正確さ」 (63). 「他者とのやりとり・視点」 (33). 「聞き手への確認・説明」 (50). 「因果・評価の非一貫性」 (23). 「他者の視点に立った語り」 (18). 「感情の表出」 (26). 「時間の非一貫性」 (15). 「他者とのやりとりを含む語り」 (15). 関係を希望したのは,3 名(H 群の D,E,I)であった。. 「話し手と聞き手とのずれ」 (18). 「主題の非一貫性」 (14). アイデンティティ形成が高いと,特定の人と深い関係を持. 「聞き手への質問・自発的語り」 (13). 「説明や情報の不正確さ」 (11). f,H,I) ,多数の人との広い関係を希望したのは 2 名(L 群の G と J)であった。また,支え合いたいなど相互的な. ちたいと思う傾向が,アイデンティティが未形成であると,. Figure 1 若年無業者の語りの分析カテゴリー. *()内は数をエピソード数を示す. 不特定の人とまず関係を広げていく経験が必要であること. 4Efg.hi. が推測された。また,相互的な関係を希望したのはアイデ. (1)!"#$%&LM&PQy9z-,. ンティティ形成が高い群であったことから,相互的な視点. 1)•Ž[Y.&34{•. を持って関係を築いていく考え方がアイデンティティ形成. 聞き手への意識や聞き手との相互作用的な要素がみられ. の高さの指標である可能性が考えられた。. る語りを「聞き手との関係性」 (合計エピソード数 107)カ テゴリーとした。 ①•Ž[Y•&‘’“”••. •E<= 2?!"#$%&LM5€H•‚8'9:;PQ. 丁寧に確認しながら話を進め,聞き手に理解してもらお. 1EHI 語りの構造と聞き手と語り手の相互性に着目し,分析カ. うとする姿勢がうかがえたが,話の内容に同意してもらえ. テゴリーを生成して若年無業者の語りの特徴を明らかにし,. ないと不安で話が進めないという自信のなさもうかがえた。. その分析カテゴリーを用いて若年無業者の個人の理解を試. ②•–—&˜ˆ•. みる。. 全体的には感情表出は豊かである傾向であったが,その. 2ERS. 場にふさわしい感情を表していないと思われる語りもみら. T1U<=VW%/T2UYZ[/T3UNO /T4UbcIde?. れ,表出された感情を共有しにくいこともあった。また,A. 研究 1 と同じ. と E は過去の経験を思い出して感情が蘇り興奮や混乱がみ. T5UPQ&YZ[?先行研究の理論的枠組みに依拠したト. られたことから,繊細で感情の統制の難しさがうかがえた。. ップダウン的視点はありながらも,順次ボトムアップに上. ③•™•Y.Ž[Y.&š›•. 位概念のカテゴリーに集約していくという構成である。. ナラティヴは語り手と聞き手との間の共同生成性や即興. 3EPQƒ„. 性の要因を必然的に伴い,相互作用的な側面がある(Cohler. T1UStep1?…†I1LM&‡ˆ. &Cole,1996)ことから,自己完結的な語りが多い場合,. トランスクリプトから参与者に特徴と思われる語りにつ. 聞き手と相互作用的に話が進まないため,人との関係づく. いて,会話の文脈や語りの特徴を損なわないように抽出し. りの困難さ一因になることが考えられる。. た。参与者 2 人以上に共通する特徴的な語りを基準として. ④•Ž[Y•&œF“•žILM•. 抽出した。松嶋(2001)の文体分析を参考に,一つの語り. 聞き手からの回答を期待した質問や,聞き手に理解して. の最小の文脈を 1 つのエピソードとして数えた。. もらいたいという積極的な語りからは人とつながりたい気. T2UStep2?‰Šy9z-,&‹k. 持ちが読み取れた。若年無業者は人と接することに苦手意. Step1 で抽出したエピソードから下位カテゴリーを生成. 識があるという指摘(白井,2005)があるものの,人との. した。カテゴリーの生成やエピソードの選定については筆. つながりは求めている者も多いことが考えられた。. 者と臨床心理学を専攻とする大学院生 1 名との協議の上で. 2) •LM&Ÿ ¡{“l¢‘£•. 行った。基準はエピソード数の合計が 10 以上をカテゴリー. 話し手の語りの曖昧さやわかりにくさなどの要素がみら. として採用し,10 の下位カテゴリーを生成した。. れる語りを「語りの非一貫性・不正確さ」 (合計エピソード. T3UStep3?ŒŠy9z-,&‹k. 数 63)カテゴリーとした。. 筆者と臨床心理学を専攻とする大学院生 1 名との協議の. ①•¤g“¥¦&Ÿ ¡{•. 上で,下位カテゴリーから共通特性を見出し 3 つの上位カ. 出来事は因果的な結びつきが欠けたまま羅列されると,. 3.
(4) 意味を見出すことが困難になる (Krantz,1998) 。 そのため,. いたが,後から「結構上司は昨日と今日で言っていること. 出来事に対する因果が語りの中で対応していない,出来事. が違う」 , 「上司は直感人間だから振り回される」と述べて. に対する評価が一定しない場合,自己が不安定で混乱して. おり,上司へ対する評価が揺らいでいた。このような特徴. いることがうかがえた。. から,アイデンティティ形成は高群であったものの,自己. ②•§¨&Ÿ ¡{•. の混乱もうかがえた。また,Iは「語り手と聞き手とのず. 時系列は語りの基本的属性である(Bruner,1999) 。時. れ」についてもエピソード数 8 と多いことが特徴的であっ. 系列が一貫した語りでない場合,聞き手は語り手のストー. た。I は聞き手が確認したことがずれている場合, 「そうい. リーの流れが理解しにくい。出来事を自身の世界だけで捉. うのもあります」と語り方は肯定であっても,文脈では否. えて,社会的に自己を位置づける難しさが推察された。. 定することがあった。そのため,対他者的に話すことに難. ③•©G&Ÿ ¡{•. しさがみられ, 「コミュニケーションにコンプレックスがあ. ある主題から急に違う話題になったり,その主題にある. る」という語りの内容と一致した,人との関係のとりづら. 程度のまとまりや結論や答えなどが聞き手と共有される前. さの一因であることが推察された。. に,別の話題に移っていく様子がみられた。主題が一貫し. また,重要な他者に両親があがらなかったものの, 「他者. ていなかったり主題が不明であると,語り手と聞き手の間. の視点に立った語り」では,父親や母親の気持ちについて. で話が共有できないが,それに気づいていないことから,. 語っていること, 「聞き手への確認・説明」も多いことから,. 自己を客観的にみることができない様子がよみとれた。. 他者の気持ちや立場に共感でき,聞き手に対しても理解し. ④•”•q—ª&l¢‘£•. てもらいたい,かかわりたいという意識が感じられた。. 説明不足であったり,情報を正確に把握できていないこ. !"#$%&'() *. とが推察され,このような語りが多いと聞き手から誤解を. LM1%G:1:T UV9:. 招きやすいことが懸念される。 3) •2%&«¬“qM.M• 語りの中での登場人物の視点からの語りや,その人物と のやり取りの再現などの要素がみられる語りを「他者の視 点・やりとり」 (合計エピソード数 33)カテゴリーとした。. +,%-.. LM%NOPQRS 9:. /0#1!"#1% 23. )*G,H%IJ &K. !"#$%45(6 789: ;<( =>%?@A B. EF%?@AB. ①•2%&«¬5-®‚LM•. WX. CD%?@AB. 他者の視点や他者の気持ちをくみとっていることがうか がえ,コミュニケーションが苦手(厚生労働省,2007)と. Figure 2 "#$%&I'()*+,-./012345.6. いう先行研究とは異なる示唆も得られたといえる。 ②•2%.&qM.M¯°±LM•. ⅣE¹ºhi. 他者と語り手との会話などのやりとりを端的,まるで自. 本研究では,中核的な若年無業者のライフストーリーや. 分の体験ではないような語り方であったことから,いきい. 重要な他者との関係に関する特徴を探索的に明らかにした。. きと語る難しさがうかがえた。ライフストーリーの最も重. また,若年無業者の語りには「聞き手との関係性」 , 「語り. 要な特質のひとつは,過去の出来事が今ここでの場をとお. の構造の非一貫性・不正確さ」 , 「他者の視点・やりとり」. して語られることでリアリティある過去の出来事がつくら. という 3 つの特徴があり,特徴を把握するための分析カテ. れることである(桜井,2006) 。他者とのやりとりをリアリ. ゴリーを生成した。そのカテゴリーを用い,語りの特徴が. ティある出来事として語ることができるような場を積み重. 若年無業者の理解を多面的にする可能性が示唆された。. ねることが必要と思われる。. 今後の課題としては,サンプルに偏りがあり,フリータ. TXUPQy9z-,¯²³‚!"#$%&´µc¶&·¸]. ーや就労者と循環する可能性が高い無業期間 6 ヶ月未満の. 分析カテゴリーごとのエピソード数の平均値からプロフ. 周辺的な若年無業者との共通点や相違点などの検討が必要. ィール図を作成した。特徴的なプロフィールであった I を. である。また,健康面の配慮から面接時間を統一できない. ここでとりあげる。Figure2 に平均値と I のプロフィールを. ため,抽出したエピソード数に幅がある。エピソード数や. 示す。I は「因果・評価の非一貫性」がエピソード数 10 と. 分析カテゴリーの妥当性を高めて仮説モデルを精緻化し,. 多いことが特徴であった。I は,正社員として働いていた飲. 実践場面で若年無業者の理解および支援につなげていくこ. 食店の上司について最初は「忍耐強い」と肯定的に語って. とも今後の課題であるだろう。. 4.
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