生体高分子構造解析支援システム
遺伝子やタンパク質の研究での情報処理 未知配列の既知配列データべースに対する相同性 (homology) 検索 「この配列は何に類似しているか ? 」 → 配列の持つ機能やその進化の探索 未知配列と特定既知配列とのアライメント操作 「これらの配列はどの部分がどの程度類似しているか ? 」 → 配列上の機能部位やその欠損の特定 既知立体構造から未知立体構造の予測 「この分子は生体内でどのような形をとるのか ? 」 → 分子間相互作用の検証、創薬・治療への応用生体高分子構造解析支援システム
既知立体構造から 未知立体構造の予測 「この分子は生体内で どんな形をとるのか ? 」 分子間相互作用の検証、 創薬・治療への応用 アミノ酸残基の置換により 立体的に近い周辺領域にも 影響を与え、全体の立体構造 自体やその安定性が変化 ↓ 置換後に・・・ エネルギー計算による 構造最適化が必要生体高分子構造解析支援システム
エネルギー計算の背景(1)
☆立体構造が持つエネルギーの(経験的な)計算
(共有結合の理想値から歪み)
i k (i)
Ebonds = Σ ーー ( L (i) – L (i,0) )2
bonds 2
i k (i)
Eangles = Σ ーー ( θ(i) – θ(i,0) )2
angles 2
i V (i)
Etorsions = Σ ーー ( 1 + cos ( nω - γ) )
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☆立体構造が持つエネルギーの(経験的な)計算
(共有結合していない原子間のエネルギー)
n m Q ( n ) Q ( m ) 2原子の部分電荷の積 Eelesta = Σ Σ ーーーーーーーー atoms atoms 4πε r ( n , m ) 誘電率と原子間距離 n m A ( n , m ) C ( n , m ) Evdw = Σ Σ ( ーーーーー - ----- ) atoms atoms r ( n , m ) 12 r ( n , m ) 6 n m A ( n , m ) C ( n , m )Ehbond = Σ Σ ( ーーーーー - ----- ) ・ cos2 θ・ cos4ω
atoms atoms r ( n , m ) 12 r ( n , m ) 10
θ donnerーH・・・acceptor の角度 ω H・・・acceptorー(lone pair) の角度
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エネルギー計算の背景(2)☆分子力学
molecular mechanics
各エネルギー項の調和を取りながら、より安定な立体構造を
導出するために考案された方法。各原子の位置を少しずつ
動かしながら、
E
totalを小さくしていく
(エネルギー極小化)。
E
total= E
bonds+ E
angles+ E
torsions+ E
elesta+ E
vdw+ E
hbond状態Aから次の状態Bに変化した場合、
各エネルギー項の
A・B間の差
⊿
E(B-A)
の
各原子移動距離・方向性
の寄与を
考慮して、
E
totalを下げるための各原子の「次の一手」を決
める。
Fx =δE/δx =
⊿E(B-A)
/ ⊿ x
Fy =δE/δy =
⊿E(B-A)
/ ⊿ y
Fz =δE/δz =
⊿E(B-A)
/ ⊿ z
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エネルギー計算の背景(2)
☆分子力学
molecular mechanics
欠点:得られる安定構造は、初期構造に依存する。
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エネルギー計算の背景(3)
☆分子動力学
molecular dynamics
エネルギー障壁を越えにくい弱点を補うため、分子力学に、
力から生じる加速度など連続した時間の概念を付加。
E
total= E
bonds+ E
angles+ E
torsions+ E
elesta+ E
vdw+ E
hbond+
E
kinetics i m i v i 2 Ekinetics = Σ ーーーー ∝ T m, v 各原子の質量と速度 atoms 2 T 系の温度 最初に各原子に ランダムな速度を与え、 一定時間ごとの座標・ 速度を算出していく。→ 1000000 x 各原子の座標の変動からエネルギー項への 寄与とその時点の各作用力が算出される。 ↓ 各原子の加速度が算出される。 ↓ 次の座標と速度が算出される。生体高分子構造解析支援システム
☆具体的に何が比較できるのか?
相対的な安定性=分子内の相互作用
異なる分子、異なる立体構造、異なる環境
分子間の相互作用
酵素と基質や阻害剤、イオンとチャンネル、
ドラッグデザイン
遺伝子変異による蛋白質リガンド結合への影響
遺伝子疾患のメカニズムの解明
最近の MOE を使用した主な研究 2004 ~
HIV-1 gp41 L565M 変異と細胞融合阻害抵抗性との関連性 芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼの基質結合時のループ構造変化 * SLE患者で見られたCRPの G143S 変異による構造的変化 抗 Laminine 抗体が認識する構造的要素の抽出 基質の微小構造変化に対応する酵素構造変化の解消機構 * カテキン類の HIF プロリン水酸化酵素阻害機構の解明 * ACE 阻害薬の心筋梗塞急性期 MMP-9 阻害メカニズムの解明○ AVPR2 の Y205F 変異とリガンド結合能低下との関連性解析○ ヒト HSP60 とピロリ菌 HSP60 との免疫交叉性の立体解析○ * 生化学・林先生生体高分子構造解析支援システム
Angiotensin 変換酵素 (ACE) 阻害薬の MMP-9 阻害機構 研究の背景
Matrix MetalloProteinase-9(MMP9) と ACE はともに亜鉛プロテ
アーゼであるが、基質特異性はことなる。最近になって、心筋 梗塞の急性期にいくつかの ACE 阻害薬が MMP9 阻害活性を示すこ とが明らかになってきた。 ↓ ACE 阻害薬は直接 MMP9 の活性部位を阻害することが可能なのか . 可能な場合、その相互作用形式は、病態に合う新しい MMP9 阻害 薬の開発に役立てられるだろうか .
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(CH2)2 COO -H N (CH2)4 N O COO -NH3+Lisinopril
central C=O central NH terminal carboxy phenyl ethyl lysinyl pyrrodiline ring central carboxy Lisinopril 構造式と ACE との相互作用生体高分子構造解析支援システム
MMP8 活性中心の構造と、阻害薬との相互作用生体高分子構造解析支援システム
ACE –
lisinopril
複合体のX線解析構造
+
MMP9
活性ドメインのX線解析構造
↓
MMP9
–
lisinopril
の当てはめ初期構造
(
2種類の方向性!
)
↓
それぞれの複合体構造を最適化
S1
S1'
Lisinopril と MMP-9 活性
部位との予測相互作用形式
Lisinopril と MMP-9 活性
部位との予測相互作用形式
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アルギニンバソプレシンレセプタ 2(AVPR2) の Y205F 変異と機能消 失との関連性について
研究の背景
腎性尿崩症小児患者で AVPR2 の Y205F 変異とリガンド結合能消失 を伴う症例が見られた。 AVPR2 の Tyr205 の変異としては Y205C
の報告があるが、リガンド結合能消失ではなくレセプタの細胞膜発現 自体が消失しており、 Cys-Cys 架橋の異常によると考えられてい
る。
↓
Tyr → Phe のたった1つの hydroxy 基消失だけで、リガンドとは 結合できなくなる、という現象をうまく説明する方法はあるのか ...