• 検索結果がありません。

急成長する世界のフェアトレード市場 途上国の人々の自立を目指す消費者運動として 上国に最も厳しい影響を与えていくことになろう ていて 途上国の生産者は ある意味で言いなり ミレニアム開発目標 Millennium Development に売らされ 市場の変化によっては捨て去られる Goals MD

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "急成長する世界のフェアトレード市場 途上国の人々の自立を目指す消費者運動として 上国に最も厳しい影響を与えていくことになろう ていて 途上国の生産者は ある意味で言いなり ミレニアム開発目標 Millennium Development に売らされ 市場の変化によっては捨て去られる Goals MD"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

はじめに 「今日は一段と素敵ですね」。知人の女性がおしゃ れなニットのカーディガンを着ていたので、声を掛 けてみた。すると、「これ、教えていただいたフェア トレードショップで買ったものです」と、うれしそう な返答があり、その後ひとしきり、カーディガンの 「ものがたり」を聞かせてもらった。フェアトレード の普及に特別の期待を掛けている私としては、実に 愉快な時間を過ごすことになったのである。 「このカーディガンを編んだのは、ネパールの女性」 「フェアトレード団体がつくった職業訓練校で確か な技術を身に付けて、ていねいな仕事をしている」 「安定した収入を得られるようになったので、子ど もが学校に行けるようになった」「生産者の『誇 り』と幸福につながる買い物ができて、とてもう れしい気分」「中に着ているカットソーは、インド のオーガニックコットン。作る人にも、土壌環境 にも、肌の弱い私にも、健康的」「今や、フェア トレードは私にとっての最高のブランド」。近年、 このような人が増えてきたことを体感している。 高品質で環境負荷が低く、生産者との人間的なつ ながりも感じられる。そういう商品を求め、「もの がたり」のあるおしゃれを楽しむ。そんな層が確実 に形成されている。 もちろん、あまり欲張るとコストが高くなり過 ぎて、市場競争力に欠けるのではないかという懸 念もあるだろう。ごく一部の人が、途上国の産品 をチャリティ感覚で買っているに過ぎないという、 さめた見方をする向きもあるようだ。 しかし、フェアトレードは慈善事業でもなければ 夢物語でもない。すでに幾多の成功モデルを持つ現 実的ビジネスであり、マーケットは急成長中である。 にもかかわらず、日本ではまだまだ低い認知度にと どまっている。このままでは、日本は世界の潮流か ら取り残されてしまうのではないかと、実は大変心 配しているところである。 フェアトレ ードとは 何 か ― フェアトレ ードの ビジネスモデル フェアトレードは開発途上国の農家や零細生産 者の自立を支援するビジネスモデルである。現在 の経済システムでは「強い側」、つまり先進国側企

急成長する世界のフェアトレード市場

-途上国の人々の自立を目指す消費者運動として

拓殖大学 国際学部 教授

長坂 寿久

2 ていくおふ. Winter 2009

(2)

S p e c ia l F e a tu re

1

業が国際市場に関する情報や販路を一方的に持っ ていて、途上国の生産者は、ある意味で言いなり に売らされ、市場の変化によっては捨て去られる という運命の中にいる。市場そのものに、格差をも たらす構造が内包されているのである。このまま では貧困層が増大する一方だが、それは人道的に 見過ごせないという問題にとどまらない。貧困層 の増大は世界の安全基盤そのものを確実に脅かし ているし、この中で「先進国」だけが安逸な生活を 続けることは不可能である。途上国生産者の「自 立支援」は、世界規模の「共生支援」と言い換えて もよい、まさに全地球的な課題といえるであろう。 現下の国際金融システムの「崩壊」は、欧米経済 に大きな影響を与え、次いで日本、中国、インド 等々へ波及していき、さらに数年をかけて開発途 上国に最も厳しい影響を与えていくことになろう。 ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals = MDGs)の達成は困難になり、途上国への 援助を含む資金移転も一層滞り、開発途上国の貧 困と人権の実態は 90 年代以上に厳しいものになっ ていく恐れがある。その点で、新しい国際金融シ ステムの構築が必要であり、同様に世界貿易シス テムも途上国側が一方的に不利になることのない システムに改革されていく必要を考えさせられる。 この点で、現在の「アンフェア」トレードの構造 を見直し、生産者と買い手とが対等な関係であれ ば達成されているはずの取引を現実のものにして いくのが、フェアトレードである。 フェアトレードでは、まず生産者の安定収入保障 を優先する。人間的な生活維持を前提にした価格 設定(買い取り価格の最低額保障)と長期的契約関 係が軸になる。さらに、環境負荷を極力抑え、地域 の特性や伝統を重んじ、児童労働の排除を含めて 生産者の働く環境を健康的に保つことも、フェアト レードの重要な要件である。 生産者側には民主的に運営されるパートナー団体 (協同組合や NGO など)をつくってもらい、先進国 側の輸入団体はその団体と関係を築いていく。この 現地側団体を通してさまざまな支援が可能になる。 前払い金の支払い、技術支援、技術指導による品 質向上や新たな雇用の創出、経営支援や研修にも 力を注ぐ。また、ソーシャル・プレミアムと呼ば れる割増金を現地側団体に支払う。貯められたプ レミアムの使いみちは、現地側団体が構成員全体 で相談して決定する。学校や診療所、図書館やコ ミュニティセンター、あるいは井戸の建設、看護師 の採用、トラックの購入、インフラの改善などが 現実の使途となっている。このようにして、生産者 個人の自立に加えて、コミュニティ全体も自立して

(3)

いく。コミュニティに実力がつくと、製品の質は確 実に向上するので、コスト面だけを考えても、これ らは十分に「回収」可能な「投資」といえるだろう。 フェアトレードは、先進国側の一時的欲求に 従った輸入や現地生産という段階を脱して、人間 尊重、自立支援の総合プログラムを伴うものである。 2006 年にノーベル平和賞を受賞したバングラデ シュのムハマド・ユヌス氏は、貧しい人々に少額の 融資をして自立を支援するマイクロクレジット制度 を始めた。このような、途上国の貧困問題や環境問 題などのすべての取り組みと、フェアトレードとは つながっている。そして、そういった社会的取り組 みや、環境への配慮を、商品の重要な「付加価値」 であると考える層が、着実に広がっているのである。 輸入団体は、生産者の周囲に、時にはハイエナ のようにたかっている中間業者を排除して買い付 けをする。つまり、「国際産直」がフェアトレード のもう1つのコンセプトといえる。このことによっ て、仕入れ値が通常より高くても、国内の卸販売 価格を抑えることが可能となる。さらに前述のよう な高品質化、付加価値化などによって、国内市場 で十分に競争力を保つことができるのである。 片足を途上国生産者の自立支援に、もう片足を競 争の厳しい市場に置いているのが、フェアトレード である。このバランスをとってビジネスとして成立 させつつ、フェアトレードの目的を逸脱させない。 そこがまさに、経営の妙ということになるであろう。 フェアトレードはビジネスモデルとしてすでに 確立され、国際的なネットワーク組織や認証団体に おいて明確な基準も定められている。しかし、依然と して進化の途上にあることも事実である。そのため、 最先端ではさまざまな実験や挑戦が行なわれてい るし、定義の奥行きと幅を多様化させている部分も ある。実に魅力的な領域だといえよう。 フェアトレード―生産者から消費者へ フェアトレード商品は、生産者と結び付いた団体 によって輸入され、消費者のもとへと届けられる。 この団体が本当に「フェア」な運営をしているかど うか、理念を守っているかどうか、その認証と監視 制度を設けているのが、国際フェアトレード連盟 (International Federation for Alternative

Trade =I FAT)である。IFAT は明確なフェア トレード基準を定め、条件を満たしている団体を 認証する。消費者からすると、IFAT 会員である ということを信頼の根拠にできる。

もう1つの認証制度としてフェアトレードラベル 機構(Fairtrade Labeling Organizations International = FLO)の認証がある。FLO は商 品に対しフェアトレードであることを保証する制度 である。FLO の基準に従って生産する生産者の商 品に認証が与えられ、その商品を輸入して販売す る場合、FLO のロゴを付けて売ることができる。 フェアトレード商品を扱おうとする場合、独自の フィールドを持ち、生産者団体を組織して技術指導 を継続するのは、とても大変なことである。そこで、 スーパーなどの一般企業が扱いやすいように、この FLO の認証制度が開発された。企業やショップはラ イセンス料を支払い、生産者から直接、あるいは中 間業者を経て製品を仕入れて、FLO 認証マークを 付けて販売することができ、消費者はこのマークを 選択材料にして購入することができる。FLO は世 界の 20 カ国に支部のような関係団体を持ち、日本 にはフェアトレード・ラベル・ジャパン(Fairtrade Label Japan =FLJ)が設置されている。 3 つ目の取り扱いケースとして、IFAT の会員 ではなく、独自の理念に沿って生産者との関係を 構築しつつ、輸入して販売する団体がある。こう 4 ていくおふ. Winter 2009

(4)

S p e c ia l F e a tu re

1

販路数 店 フェアトレード専門ショップ 3,931 スーパーマーケット     112,439 販売額 金額(千ユーロ) 輸入団体 499,809 フェアトレード専門ショップ 132,463 ラベル(認証) 2,381,000 出所:FINE/DAWS (オランダ世界ショップ協会) 出所:FINE/DAWS (オランダ世界ショップ協会) 輸入団体数 2000 年 2004 年 2007 年 合計 97 200 254 販路数 2000 年 2004 年 2007 年 フェアトレード専門ショップ 2,740 2,854 3,191 スーパーマーケット 43,100 56,700 67,615 販売額(千ユーロ) 2000 年 2004 年 2007 年 輸入団体 118,900 243,300 422,225 フェアトレード専門ショップ 41,600 103,100 132,463 認証団体商品 208,900 597,000 1,553,600 小売販売額(千ユーロ) 2000 年 2004 年 2007 年 合計 260,000 660,000 1,699,000 図表 1 世界先進 3 3ヵ国のフェアトレード市場(2007年) した団体は IFAT 以外の各国のフェアトレード連 合組織に参加するか、あるいは団体自身が理念と 評価基準を明確に提示・公開することで、フェアト レード団体であることの保証を得ている。日本で は現在、フェアトレード・カンパニー(ピープル・ ツリー)とネパリ・バザーロの 2 団体が IFAT に加 盟し、他の団体は自らの理念と生産者のフェアト レード的期待にいかに応えているかを公開するこ とによって、社会的信頼を担保している。 フェアトレードの先進国側の中心的プレーヤーは、 開発途上国の生産者の自立を支援する輸入団体で ある。日本ではオルタトレード・ジャパン、第 3 世界

1: 国際的なフェアトレード連合組織:FLO(フェアトレードラベル機構)、 IFAT(国際フェアトレード連盟)、 NEWS!(欧州ワールドショップ・ネットワーク)、 EFTA(欧州フェアトレード協会)。この 4 団体は頭文字をとって FINE という非公式会合を持ち、共同で EU 本部のあるブラッセルにロビー事務所を開設している。 図表 2 欧州(EU28カ国)におけるフェアトレード市場の推移 ショップ、フェアトレード・カンパニー(ピープル・ ツリー)、ネパリ・バザーロ、ぐらするーつ、シャプラ ニール、シャンティ国際ボランティア、ピースウィ ンズ・ジャパン、パルシック、スローウォーターカ フェなどの団体がそれに当たるが、これらは NPO 法人形態もあれば株式会社や有限会社といった 企業形態をとっているものもある。こういった企 業は、今風に言えば、ソーシャルベンチャーある いは究極の CSR 企業といえるだろう。 もう1つの中心的存在が、欧米では「ワールド ショップ」と呼ばれているフェアトレードの専門 ショップである。日本でも都道府県庁所在地に、 すでにこういうショップが存在するようになった。 また、輸入団体自らの専門ショップもある。その ほか、オーガニックショップ、エコショップ、健康 食品店、日用品店などでも、フェアトレード商品を 販売するケースが増えている。オンラインショップ も活発化しているし、一般企業での取り扱いも大 きな割合を占めるようになっている。 フェアトレードの普及―世界の動向 欧米におけるフェアトレード・ビジネスの伸びに は目を見張るものがある。2001 ~ 04 年には年率 20%、2004 ~ 07 年の 4 年間には毎年 30% もの成 長を記録している。欧米では 80%以上の人々がこ の言葉を知るようになった。フェアトレードは世界 で最も高い伸びを見せている消費財部門といえる。 欧州を中心とする国際的なフェアトレード・ネッ トワーク組織 4 団体1がつくっている FINE とい う団体の協力で実施され、この10 月に発表された 「フェアトレード 2007 年、33 消費国報告」によ ると(図表1、図表2)、2 0 0 7 年の先 進 33 カ国 (EU28 カ国、米、加、豪、ニュージーランド、日)

(5)

バナナ コーヒー 生花 はちみつ 砂糖 紅茶 スイス 55% 4% 28% 16% 15%  6% 英国 5.5% 20% - - - 5% 注:スイスは生花を除き2006 年、生花は2004 年。英国はすべて2004 年、_ は不明。 出所:FLO のフェアトレ ード小 売 販 売 額 は 2 6 億 5,0 0 0 万 ユーロ(150 円換算で約 4,000 億円)とのことで、 前年比 41% 増となっている。統計がより正確にと れる欧州に限定すると、2000 年の 2 億 6,000 万 ユーロ、04 年の 6 億 6,000 万ユーロから、2007 年 には 16 億 9,900 万ユーロと、04 ~ 07 年の 4 年間 に 3 倍近い伸びを示している。 フェアトレード商品は途上国の人々が手作りす るクラフト類から発達し、現在では食品、衣料を 中心に、すでに 3,000 品目以上が開発されている。 欧米ではすでにニッチ市場以上のものになってい るのである。スイスではバナナ市場の 55%、生花 の 28%、はちみつの 16%、砂糖の 15% をフェアト レードが占め(いずれも 06 年)、英国でもコーヒー 市場の 20%、紅茶の 5%、バナナの 5.5%(いずれ も 04 年)を占めるまでになっている。(図表3) この背景には、多くの企業の力が大きく働いて いる。企業による取り扱いの急増が、市場を大き く拡大する推進力となっているのである。 英国では、生協や、マーク & スペンサー、サンズ ベリー、テスコなどの大手スーパーが、コーヒーと紅 茶のすべてをフェアトレード商品に転換し、その他多 くのフェアトレード商品を扱うようになっている。 フランスのカルフール、ドイツのレーヴェ、米国の ウォールマートをはじめとした全国的なスーパー がフェアトレード商品を日常的に扱っている。スー パーではフェアトレードの品揃え競争が起こってい る感さえある。 また、スターバックス、マクドナルド、ダンキン ドーナッツなどのカフェやレストランチェーンがこ ぞって扱うようになった。コーヒー、紅茶、砂糖 を中心としたフェアトレード食品の扱いが、レスト ラン、喫茶店、ケータリングなどの「アウト・オブ・ ホーム市場」で増えていることも報告されている。 ノボテルなど、フェアトレード製品を扱うホテル チェーンも登場した。ライアンエア、エアベルリン などの航空会社でも、提供されるコーヒーをフェア トレード製品に切り替えている。 さらに世界有数の多国籍企業である、コーヒー メーカーのネスレやバナナのドールなどもフェアト レード商品を扱うように変化している。 図表 3 スイスと英国における主なフェアトレード認証商品の市場シェア 6 ていくおふ. Winter 2009

(6)

S p e c ia l F e a tu re

1

国名 消費額 スイス   21.06 英国    11.57 デンマーク 7.27 ルクセンブルグ 6.72 フィンランド 6.56 オーストリア 6.36 アイルランド 5.40 スウェーデン 4.66 ノルウェー 3.87 ベルギー 3.31 フランス 3.31 オランダ 2.90 米国 2.43 カナダ 2.42 ドイツ 1.72 イタリア 0.66 オーストラリア 0.44 ニュージーランド 0.44 日本       0.06 出所:FLO 単位:ユーロ 生協やマークス & スペンサーなどのスーパー系 では、フェアトレードの促進に莫大な投資を行な うとともに、一部ではフェアトレードに限定した商 品ラインも作られ始めている。オーストリアの中堅 チョコレートメーカーのツオッター(Zotter)は、 すべてを「オーガニックでフェア」にすると表明し、 チョコレートの中身すべてをフェアトレード・ブラ ンドで育てたオーガニック製品にしている。ディバ イン・チョコレート(英国)やコーヒーのカフェダイ レクト(英国)なども、そうしたフェアトレード・ブラ ンドの1つである。 フェアトレード団体は、フェアトレードそれ自体 以外にも社会的影響を持っている。例えば、買い物 の際にプラスチックバッグを断る運動は、ドイツの フェアトレード団体が 30 年前に始めたものである。 途上国の人々が作ったジュート(麻)の買い物バッグ を使おうというキャンペーンは、環境問題と連結し て世界に波及していった。現在ではビジネス世界 でも大がかりに展開されるようになり、サンフランシ スコ市議会では、2007 年 3 月にリサイクルの難し いプラスチックバッグをグローサリーストアで使用 禁止とする決定をした。東京の杉並区なども、プラ スチックバッグの有料化を条例として定めている。 日本の現状と特質 フェアトレード国際市場の大きな伸びに比して、 日本の反応は依然として鈍いと言わざるをえない。 FLO による認証商品の1人当たり購入額では、日 本は最も低い国となっている(図表4)。市場規模 も認知度も「期待値」を大きく下回っているといえ るだろう。 日本のフェアトレード市場の規模や、各ショップ の実態などは、実はよく分かっていない。前述の FINE の調査でも日本は十分カバーされておらず、 市場規模は明らかにされていない。私なりに現段 階を試算したところ、恐らく2007 年で 70 億円 (150 円換算で約 4,600 万ユーロ)ほどではないか と思われる。 しかし近年、成長への予兆を強く感じるように なった。5 月のフェアトレード月間でのイベントの 図表4 フェアトレード認証商品の1人当たり消費額(2007 年)

(7)

数や参加者数が大きく増えていること、そして若 い世代を中心として、強い関心を示す層が広がっ ていることなどが、その根拠になっている。限定 的とはいえ、日本企業も次第にフェアトレード商品 を扱うようになってきた。 イオン・グループ(トップバリュー・ブランド)、 無印良品、スターバックス、タリーズ、ナチュラル・ ローソンなどがコーヒーを中心にフェアトレード商 品を扱っている。また、デバートでも、しばしば フェアトレードのイベントが行なわれている。特に バレンタインデーの季節には、チョコレートを中 心にフェアトレードイベントの開催が活発である。 ココアとチョコレートについては、チョコレボと ACE(児童労働に反対する NGO)がガーナのココ ア栽培農家とのフェアトレードプロジェクトを進め ようとしているのも楽しみなところである。 このようにフェアトレードへの関心を企業も持つ ようになっているのは、CSR の動きへの対応もあ るが、フェアトレード商品が国際的なプレミアム商 品となっている点もあると思われる。さらに、政府 の開発援助(ODA)の対象として、草の根無償技 術協力やジェトロ(日本貿易振興機構)事業でフェ アトレードを支援する動きもある。 日本のフェアトレードには、いくつかの積極的特 徴が明確に見られる。1つは、現地生産者との関 係において、各輸入団体が実に熱心かつまじめに 取り組んでいること。「世界で最も厳しい消費者」 のニーズに応えて、品質向上に必死に努め、それに 成功しつつあることである。日本のフェアトレード 団体による優れたファッション衣料は国際的な注 目を浴びている。ピープル・ツリーがヴォーグ・ ジャパンとのコラボレーションに成功しているこ とは、フェアトレード業界の中でも、画期的な前 進といえるだろう。フェアトレードのファッション ショーは、非常に感動的なものであり、ぜひご覧 いただきたいと思う。 日本の各地で、個人の熱意によって展開されて いるフェアトレードショップが地域コミュニティ再 生のために重要な役割を担っていることも、大切 なことである。そのほか、フェアトレード輸入団体 の商品と FLO の認証商品との相互乗り入れが比較 的進んでいること、従って市場が柔軟に拡大する可 能性があることも、特徴として挙げられるだろう。 フェアトレード・キャンペーン―企業の CSR として、自治体の地球的責任として 21 世紀は、世界的な格差の拡大や環境問題など、 誰もが地球的関心を持たずにはいられない時代で ある。先進国の私たちがそれらの問題を真面目に とらえ、解決策を考える。フェアトレードは、その 8 ていくおふ. Winter 2009

(8)

S p e c ia l F e a tu re

1

P R O F I L E 長坂 寿久 ( ながさか・としひさ )1942 年、神奈川県生まれ。 65 年明治大学政経学部卒業。同年ジェトロ(日本貿易振興機 構)入会。シドニー、ニューヨーク、アムステルダム駐在を務 める。99 年より拓殖大学国際学部教授(現職)。国際関係論 (NGO・NPO論)を専攻。 ダイナミックな行動の「入口」に位置している。 日本でも多くの若い世代がフェアトレードに関 心を持つようになり、学生のネットワーク組織であ るフェアトレード学生ネットワーク(FTSN)も設 立されている。生産から消費にかかわる企業の すべての経営活動が「フェア」であることを求め る消費者も増えてきた。しかし同時に、実力の ある企業こそが、「新しい消費者」=「選択者」と いうライフスタイルを提案できるともいえるだ ろう。今後は、こういった社会的責任を果たす企 業が、消費者に選ばれ、支持されていくことは明 白と思われる。 現在、最も注目されている国際キャンペーンの 1つが「フェアトレードタウン(Fair Trade Town)」 である。2001年、英国・ガースタングの町に 4,000 人に上る人々が集まり、市民や市議会にフェアト レードに関する意識向上を働きかける行動を試 みた。この運動は大きな成功を収め、ガースタン グは「世界で最初のフェアトレードタウン」という 栄誉が与えられることになった。このプロジェ クトはその後、英国のフェアトレード財団が中 心となって、基準の設定・整備を行い、欧州全 体のプロジェクトへと発展した。欧州の 1 0 カ国 (英国、オーストリア、ベルギー、フィンランド、 フランス、イタリア、オランダ、ノルウェー、スペ イン、スウェーデン)、さらには、米国、カナダ、 オ ー ストラリアに もフ ェ アトレ ードタウンが 広 がっている。 英国では、すでに 320 以上の自治体が議会決議 を経てフェアトレードタウンを宣言している。この 制度は、フェアトレード教会やシナゴーグ、フェア トレード大学などの仕組みにも展開されている。 各国の FLO や関係団体などが中心的な調整役を 果たして、自治体の活動を応援するケースが多い ようだが、実現に当たっては、各地元企業が例外 なく大きな役割を果たしている。 商品としての取り扱いだけでなく、「職場でフェ アトレードを」というキャンペーンも行なわれて いる。企業が社内で提供する飲食物をフェアト レードに切り替えようというもので、これも次第に 普通のことになってきている。議会(EU 議会も) や政府機関をはじめ、劇場や公的機関などのキャ ンティーン(食堂)ではフェアトレードを提供する のが当然という状況に移行しつつある。英国では、 英国議会、スコットランド議会、ウェールズ議会、 貿易産業省、保健省、国際開発省、財務省などが フェアトレードを採用している。特に自治体のこう いった採用の急増には目覚ましいものがある。 また、公共調達においては、環境適合性を優先 する「グリーン調達」制度に加えて、「フェアトレー ド調達」が進んでいる。ODA によるフェアトレー ド支援を強く進めている国も増えているし、EU 議 会ではフェアトレードを本格的に支援する決議を 行なった。フェアトレードを法的に保護しようとす る動きも複数の国で起こっている。 こういった世界の潮流の中で、日本社会が今後 どのような選択をしていくかが、大きな岐路となっ ていくことだろう。アジア初のフェアトレードタウ ンの名誉はどこの自治体が獲得するのか、フェア トレード推進の功労者として尊敬を集めるのはど の企業なのか、楽しみなところでもある。

参照

関連したドキュメント

従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ

我が国においては、まだ食べることができる食品が、生産、製造、販売、消費 等の各段階において日常的に廃棄され、大量の食品ロス 1 が発生している。食品

ているかというと、別のゴミ山を求めて居場所を変えるか、もしくは、路上に

以上の基準を仮に想定し得るが︑おそらくこの基準によっても︑小売市場事件は合憲と考えることができよう︒

自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から

尼崎市にて、初舞台を踏まれました。1992年、大阪の国立文楽劇場にて真打ち昇進となり、ろ

大村 その場合に、なぜ成り立たなくなったのか ということ、つまりあの図式でいうと基本的には S1 という 場

神はこのように隠れておられるので、神は隠 れていると言わない宗教はどれも正しくな