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Microsoft Word - H22卒試・精神科..

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平成 22 年度 精神科 卒業試験

全員で分担したのでちょっと形式がばらばらです。間違いに気付かれた方は、カツレン、カドクラ、カ マタ、カワサキ、カワノの誰かまでお知らせください。 1. がん患者の治療に関する以下の記述について正しいものを 2 つ選べ a うつ病を合併した場合は、精神科薬物療法はせずに精神療法で治療すべきである b 抗不安薬を使う際、傾眠、呼吸抑制、脱抑制、せん妄に注意する c 夜間せん妄に対する薬物療法の第一選択は睡眠薬の投与である d せん妄の原因として、高カルシウム血症があることが知られている e 入院中に夜間、突然つじつまの合わない言動がみられたら、認知症の急性発症を考慮する 解答 b, d 2. うつ病でみられる妄想としては典型的ではないものを 2 つ選べ a 罪業妄想 b 誇大妄想 c 貧困妄想 d 心気妄想 e 被害妄想 解答 b, e 解説 患者は、自己の能力、身体、生命、財産などに対して劣等感に捕われ、異常に低い評価しか下さな くなります。自分を意味のない存在だと決めつけ、発展すれば訂正不能の微小妄想にたどり着きます。 具体的には、「自分の失敗のせいで皆に迷惑をかけてすまない」という罪業妄想、「このままでは破産し て、一家が路頭に迷う」という貧困妄想、「回復できないほど重大な病気に罹っている」という心気妄想 が挙げられます。もちろん患者には大きな失敗や経済的な困窮があるわけではなく、現実を把握する認 知能力が大きく歪んでいるために生じます。 3. パニック障害でしばしばみられる症状として正しいものを 2 つ選べ a フラッシュバック b 予期不安 c 解離 d 精神運動興奮 e 広場恐怖 解答 b, e

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2 解説 理由もなく突然に生じる急激な不安の高まりをパニック発作とよびますが、本症はこの反復を主症 状とする病態です。つまり、周囲の状況とは全く無関係に、思いがけなく、猛烈な不安が患者を襲いま す。この猛烈な不安は、患者に動悸、発汗、震え、息苦しさ、めまい、胸腹部の不快感などの身体症状 を引き起こし、患者は「今にも死んでしまうのではないか」「発狂してしまいそうだ」と感じ、周囲の人々 に助けを求めます(実際に多くは救急車で来院します)。しかし、もともと器質的な異常があるわけでは ないので、この発作は通常数分間しか持続せず、救急車が病院に到着するころにはすでに治っています。 ところが、しばらくすると、同様の発作がまた起こり、何度となく反復します。患者は、どのような状 況になると発作が起こるか全く想像がつかないので、常に発作の再発を恐れるようになります。これを 予期不安とよびます。そして、予期不安が強まるにつれ、ついに広場恐怖に発展します。広場恐怖とは、 いざという時に逃げ出せない状況や誰も助けてもらえない状況に身を置くことを頑なに恐れることで、 結果的に、デパートなどの人ごみに行けない、飛行機、電車、バス、エレベータなどに乗れない、橋や トンネルを通過できない、誰かが隣にいないと過ごすことができないなどの症状を呈します。そして最 悪の場合には、自宅から一歩も出られないという事態に陥ります。本症は青年早期に多く、広場恐怖を 伴うケースはやや女性に多い傾向があります。 4. 次のうち器質的精神障害に分類されるものを 2 つ選べ a コルサコフ症候群 b 肝性脳症 c 外傷後ストレス障害 d 持続性身体表現性疼痛障害 e アルコール依存症 解答 a、b 解説 コルサコフ症候群、肝性脳症 コルサコフ症候群は、主としてアルコール依存症に由来する栄養失調が原因となる。ビタミン B1 欠乏による脳の不可逆的機能障害で、見当識障害、健忘、作話がみられる。大脳の萎縮を伴うこと もある。アルコール依存症は器質性精神障害に分類されない。 5. 統合失調症について正しいものを 2 つ選べ a 有病率は 0.5〜2%である b 統合失調症とうつ病は合併しない c 自殺のリスクは低い d 治療には多種の抗精神病薬を併用することが望ましい e 病的体験の内容は国や文化圏の影響をうけることがある

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3 解答 a、e 6. アルコール、及びアルコール依存症について正しいものを 2 つ選べ a アルコールがもたらすのは精神依存のみである b アルコール依存症は、うつ病との合併が多い c アルコールの乱用・依存では、不可逆性の認知機能低下を来すことはない d アルコール依存症は病織を持ちやすいので治療導入は容易といえる e アルコール離脱症状には、振戦、自律神経症状、幻覚、けいれん発作などが ある 解答 b、e 解説 a 精神依存、身体依存を共に起こす。 c コルサコフ症候群は不可逆性の認知機能低下。 7.アルツハイマー型認知症について誤っているものを1つ選べ a.全認知症の約半数を占め、もっとも頻度が高い b.認知機能検査では記憶の遅延再生障害が特徴的である c.幻覚・妄想は最晩期の寝たきりになってからみられることが多い d.危険因子として Apolipoprotein 遺伝子多型である e.患者数の増加は平均余命の延長と関連がある 解答 c 解説 a.85 歳以上の4人に1人は認知症を有し、その原因疾患の第1位が alzheimer 型認知症で、次いで血管 性認知症が多いです。 b.新しい情報を学習したり、以前に学習した情報を想起する能力の障害。長谷川式簡易知能評価スケール でいうと「桜・猫・電車を復唱・記憶してもらい、後で聞く」が記銘・再生の項目。最近の記憶の障害 が特徴的です。 c.記憶力・判断力のびまん性漸進性低下→物盗られ妄想、記憶の欠陥をつくろうために作話、巣症状(失 語失認失行)、夜間不穏、徘徊→寝たきり。 d.year note「Alzheimer 病」を確認しておいてください。 e.従来日本では血管性認知症が多かったが、近年アルツハイマー型認知症の比率が高くなった。成因につ いては素因、加齢に伴う諸要因などが関与していると考えられる。(「現代臨床精神医学」p.155)

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4 8.認知行動療法について正しいものを2つ選べ a.認知症やせん妄に有効である b.保険診療として認められている c.集団療法としての有効性はない d.性格の矯正を主目的とした治療である e.行動記録表を作成し活用する 解答 b, e ポイント:認知療法あるいは認知行動療法は、うつ病患者によくみられる考え方の偏りを矯正すること によって、うつ病を改善するものとして最近注目されている。人間の感情や行動は外的出来事そのもの によって引き起こされるのではなく、その人がその出来事をどの様に認知するかによって異なってくる。 認知の歪みを自覚させ、不適応状態や精神障害を改善できるもの。 解説 a.うつ病、強迫性障害、パニック障害などに試みられています。 b.保険診療です。 c.有効です。 d.認知の矯正が目的です。 e.具体的な手法はいろいろあるが、方法の一つに思考・感情の記録法があります。 9.60歳の女性。子宮がんで婦人科に入院中。精神障害の既往はない。がん性疼痛のコントロールの 為にオピオイドであるオキシコドンが投与され、オキシコドンの副作用である吐き気や便秘の為に、制 吐薬であるプロクロルペラジン(フェノチアジン系の薬剤)と、酸化マグネシウム(腸内に水分を引き 寄せる緩下剤)、センノシド(大腸刺激性の緩下剤)が投与された。その後、精神状態が不安定だという ことで、精神科に併診となった。病棟看護師によると、夜間は睡眠薬で休むことができているし、食事 もとることができるということであったが、日中しばしば廊下を目的もなく行ったり来たりしていると のことだった。診察している間、貧乏ゆすりが見られ、意味もなく立ち上がったり、足踏みをしたりす ることが見られた。見当識障害や健忘症状はなかったが、焦燥感がうかがわれ、「体が落ち着かない」と、 辛そうに訴えていた。この患者への治療方針として正しいものはどれか。1つ選べ。 a.せん妄が疑われるので抗精神病薬を投与する b.うつ病なので抗うつ薬を投与する c.オピオイドを中止する d.制吐薬を中止する e.緩下剤を中止する 解答 d 解説 診断:プロクロルペラジンの副作用によるアカシジア

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5 a. 臨床像がせん妄ではありません。 b. 睡眠・食事が大丈夫なので、うつ病のエピソードではありません。 c. オキシコドンの副作用は便秘、吐き気、眠気、排尿障害。 d. プロクロルペラジン(フェノチアジン系の薬剤)は抗精神病薬で、その D2 遮断作用により中枢性制 吐薬としても使われます。その副作用は、錐体外路症状(急性ジストニー、parkinsonism、アカシ ジア、遅発性ジスキネジア)。 e. 下剤の副作用は下痢、吐き気、嘔吐、腹痛などの胃腸症状。 10. 42 歳の女性。26 歳時に特に誘引なく不眠、不安感、興味、喜びの減退などをみとめ、精神科クリ ニックで治療をうけた。3 年後に通院は中断した。35 歳の時、夫の会社の倒産、子供の受験を機に易疲 労感、抑うつ気分などが出現したが自然軽快した。42 歳時、仕事で忙しい日々を送っていたが、徐々に 多弁で落ち着きのない状態が見られるようになった、「今の私なら何でもできるの」と語り、無理な仕事 をどんどん引き受けるようになった。睡眠時間が少ないのにも関わらず、疲れを感じない様子であった。 私生活では外出先や通販で一度に数十万もの買い物を繰り返し、注意をした夫に攻撃的となる様子が見 られた。心配した家族に連れられ精神科受診となった。 この症例で最も可能性の高い診断名と使用する薬剤として最も適切なものを1 つ選べ a うつ病―パロキセチン b 統合失調症―ロラゼパム c 統合失調症―リスペリドン d 躁うつ病―ロラゼパム e 躁うつ病―炭酸リチウム 解答e 解説 抑うつ気分などの後から、活動性の亢進、気分の高揚、易刺激性などが見られることから躁うつ 病が最も考えられる。104D58 の患者さんも病的なほどのお買いものをしています。 11. 17 歳の女性。4 カ月前に、友人から「少し太った?」と尋ねられたことをきっかけに、ダイエット を始めるようになった。はじめのうちは昼食の弁当を残す程度であったが、次第に三食とも少量しか食 べなくなり、52kg あった体重が 36kg まで減少した(身長 158cm)。家族が食べるように促しても「まだ 太っているから」と強く拒み、痩せるために毎日 2 時間以上ジョギングしている。過食・嘔吐はおこな っていない。 この症例に認められる所見として可能性の低いものを2 つ選べ

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6 a 高血圧 b トランスアミナーゼ上昇 c 低体温 d T3 上昇 e 徐脈 解答 a,d 解説 極度の痩せがあるにもかかわらず「まだ太っているから」と話す彼女にはおそらくボディイメー ジの障害があると思われる。病識に欠け、ジョギングをするなど案外、活動的であるのもこの疾患の特 徴とされている。神経性食思不振症でみられないものを選ぶとa,d になる。 12. 58 歳の女性。三叉神経痛に対しカルバマゼピンを投与されたところスティーブンスジョンソン症候 群を発症したため、皮膚科入院となった。入院後ステロイドパルス療法を施行。開始後 3 日目に“息子 が来ている”、“警察に行かなくては”などとつじつまの合わない言動が出現。病室を徘徊し、他の患者 のベッドを覗いて回るなどしたため、精神科併診となった。 この症例にまず考慮すべき治療として、適切なものを2 つ選べ a 認知行動療法の開始 b 抗精神病薬の投与 c 修正型電気けいれん療法 d ステロイドの漸減中止 e 退院し自宅療養に切り替える 解答 b,d 解説 ステロイドによる精神症状が認められる。特にパルス療法では急性精神病状態を呈することがある。 ステロイドを中止すると軽快することが多い。治療困難な場合は対症的に抗精神病薬を投与する。 13. 43 歳の男性。抑うつ気分・意欲低下、および出社困難を主訴に妻とともに来院。病歴を確認すると、 不眠や仕事の憂さ晴らしのために多量の飲酒が習慣化しつつあり、時に人が変わったように妻に対して 怒鳴ったり粗暴行為に及ぶ事があるという。いつも翌朝にはおちついているらしいが、飲酒時の記憶は 欠如しているという。 この症例の診断・検査・治療に関する記述で最も適切なものを1 つ選べ a. 人格変化については多重人格障害を疑う b. アルコール依存症であり、気分障害は並存していない c. さらに飲酒歴の詳細な聴取が必要である d. 薬物療法を優先し直ちに嫌酒薬を開始する e. 長谷川式簡易認知症スケールを施行する 解答 c

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解説 抑うつ気分・意欲低下、出社困難から気分障害が背景にあり、多量の飲酒をしていることから早期 のアルコール依存症が考えられる。診断は、問診が重要であり、CAGE 質問票が有名。

C: Cut down (酒減らしたほうがいいと思ってる?) A: Annoyed by criticism (誰かに注意されたことある?) G: Guilty about drinking (悪いと思ってる?)

E: Eye- opener drinks (寝起きの一杯やったことある?)

14. 79 歳の女性。数年前から、物忘れがあり同じことを繰り返し尋ねるようになった。最近、玄関や 2 階に人がいるといって探すようになった。なかなか寝付けなくなり、トイレの場所を間違えて失禁する ようになった。また、夫に向かって「主人はどこに行ったんだろう。あなたは違う」と言うようになっ た。 最も可能性の高い診断を1 つ選べ a. 統合失調症 b. うつ病 c. レビー小体型認知症 d. 前頭側頭型認知症 (ピック病) e. アルツハイマー型認知症 解答c 解説 アルツハイマーっぽい。よってアルツハイマー型かレビー小体型か。 レビー小体型は、①vivid な幻視がある②動揺性の認知障害である③抗精神病薬に対する感受性が高い、 という点がアルツハイマー型と異なる。「人がいるといって探すようになった」ことから、幻視があると 考え、レビー小体型を考える。ただ、レビー小体型≒パーキンソニズムが有名であり、そのような記述 がないため選びにくい。 15. 20 歳の男性、会社員。10 月初め頃から、「周囲の人が私を監視している。そのせいで仕事を辞めさせ られる」「職場の人がみんな自分の悪口を言っている」などの訴えが出現した。11 月に入り自室に閉じこ もりがちとなり独語・空笑が出現した。11 月末には自室内で「うるさい!ばか!」など大声で怒鳴り、 興奮して壁を叩き続ける事が続いたため、両親に付き添われ当院受診となった。血液検査、頭部CT、脳 波検査などでは異常を認めず、違法薬物を含め物質乱用歴はない。 この患者に認められる可能性の高い症状はどれか。2 つ選べ a. 幻覚・妄想 b. 確認強迫 c. 観念奔逸 d. 連合弛緩 e. 前向性健忘

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8 解答 a, d 解説 統合失調症。幻覚・妄想などの陽性症状があり妄想型と考えられる。統合失調症の症状を確認して 下さい。ちなみに b. はそのままで強迫性障害、c. は躁病、e. は器質的障害を契機にそれ以降の記憶が ない(追想が出来ない)こと。 16. 45 歳の女性。真面目で几帳面な性格で、頼まれると断れない。1 年程前から夫の単身赴任、子供の受 験、義父の介護などの心労が重なっていた。半年前から不眠、食欲低下が始まり、数か月前から家事や 外出がおっくうで、家事が滞るようになった。2 週間前から「自分はいないほうがいい」と家族に言い、 泣くことが多くなった。不安が強く独りになるのを怖がるようになった。夫に勧められて来院した。 最初にどのような精神療法を行うべきか、1つ選べ a. 母親として妻としての役割をきちんと果たすように励ましの言葉をかける b. 不安や抑うつ気分について共感を示す c. 暴露療法によって不安に対する抵抗性を強化する d. 集団認知療法を行う e. 精神分析療法によって性格傾向についての洞察を深める 解答 b 17.75 歳の男性。昨夜、興奮状態になったため家族に連れられて来院した。 現病歴:70 歳頃からもの忘れが目立つようになり、その後徐々に進行した。最近では何度も同じ事を尋 ね、日時はわからず、食事をしたことを忘れることもあった。運動機能に大きな問題はなかったため一 人で外出することがあったが、これまでに迷子になり帰宅できないことが何度もあった。昨日37 度台の 発熱があったため一日中臥床し昼寝もしていた。午後9 時頃入眠したが、午前 2 時ごろ覚醒し、「変なと ころに連れてこられた。家に帰る」と叫び、家から飛び出そうとした。家族が自宅であることを繰り返 し説明したが、聞き入れる様子は全くなかった。朝方になると眠気が強くなり入眠し、午前10 時過ぎに 覚醒したが、覚醒後はいつもと変わらない様子だった。 既往歴:特記すべきことなし 現症:167cm、58kg、体温 36.7℃、脈拍 78/分・整。血圧 130/78mmHg。表情は穏やかで、問診にも穏 やかに応じる。昨夜のことを家族にも説明されるが、本人は全く覚えてないと話す。昨日風邪気味で日 中臥床していたことも、本人は覚えていない。神経学的異常所見は認められない。 検査所見:一般尿、血液および血清生化学所見に特記すべきことはない。 問1. 症状(1)-(5)の組み合わせとして、この患者に見られるであろう組み合わせを1つ選べ (1) 脱抑制 (2) せん妄 (3) 失見当 (4) 感情失禁 (5) 不定愁訴 a (1)(2) b (1)(5) c (2)(3) d (3)(4) e (4)(5)

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9 正解:c (2)(3) ・もの忘れが目立つようになった、何度も同じ事を尋ねる、食事をしたことを忘れる、本人は全く覚え ていない →記銘障害(前向健忘:たとえば、加齢による記銘力の衰え(良性健忘)においては「どこかに財布 をしまったけれども、それがどこだか思い出せない」などのように、エピソードの一部分に障害が 生じます。他方、本症ではエピソードが記憶から丸ごと欠落してしまうので、患者は「財布をしま ったこと」自体を思い出せず、財布が盗まれたなどと騒ぎ立てる(物取られ妄想)といった行動が みられるようになります) ・日時はわからず、迷子になり帰宅できない、「変なところに連れてこられた」 →見当識障害:時間の観念が失われ、現在の日時を正確に答えられない状態。また、空間の認知も苦 手になり、自分の居場所もわからなくなり、しばしば迷子になる) 以上のことから、Alzheimer 病が最も疑われます。 ・表情は穏やかで、問診にも穏やかに応じる →Alzheimer 病では即時性記憶は障害されにくいために患者は他人の話をよく理解し、まとまりのあ る受け答えをすることができます。 Alzheimer 病は痴呆とそれに伴う認知機能障害が極めて緩徐に進行するのが特徴(中核症状)で、経過 中に、せん妄、幻覚、妄想、抑うつ、不安、焦燥感、徘徊、暴行などのさまざまな症状が出現します(周 辺症状)。 問2. この患者の頭部CT 画像で最も可能性の高いものはどれか。1つ選べ 正解:a

Alzheimer 病においては CT や MRI で大脳の全般的委縮がみられ、それに対応して Sylvius 裂や脳室の 拡大所見が得られます。ただし、初期には委縮の程度が弱いので画像だけでは確定診断に至るのは困難 です。 問3. この患者のSPECT 画像で最も可能性の高いものはどれか。1つ選べ a 血腫像に一致した血流の欠損 b 基底核を中心とした血流の低下 c 前頭葉と側頭葉の血流の低下 d 側頭葉と頭頂葉の血流の低下 e 頭頂葉と前頭葉の血流の低下 正解:d 大脳の機能を評価できるSPECT や PET では、初期には頭頂葉・側頭葉の血流や代謝が低下し、やがて 前頭葉に広がるというパターンが一般的ですが、例外はいくらでもあります。

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10 18. 41 歳の女性。20 歳代に幻覚・妄想状態で発症。自宅近隣の精神科病院に長年通院していた が、これまでも 4 回の入院治療を受けている。入院すると症状は速やかに消退するのだが、自宅で は「頭の動きが鈍くなる」という理由で服薬を怠り、症状再燃を繰り返していた。半年ほど前から 通院を拒否し、「隣家の連中が私たちの殺害計画を立てている」、「変な電波を飛ばして、自分を 操ってくる」などと発言するようになった。対話形式の独語があり、幻聴・妄想が活発な様子であ った。ある日、布切れに灯油をしみ込ませ火をつけたものを隣家めがけて投げ込んだ為、110 番通 報された。警察では、精神障害の疑いがあり精神科の診察が必要と判断され、夜間に精神科専門医 療施設に移送された。精神保健指定医 1 名の診察により、入院加療が適当という判断が下され、本 人と両親に説明がなされた。 問1. この症例の入院形態(精神保健福祉法)として最も適切なものを 1 つ選べ a 措置入院 b 任意入院 c 応急入院 d 緊急措置入院 e 医療保険入院 問2. 「変な電波を飛ばして、自分を操ってくる」という訴えは何にもとづく症状か。1 つ選べ a 転換症状 b 解離症状 c 自我障害 d 思考奔逸 e 心気妄想 問3. この症例に必要な治療・支援として優先度の高いものを 2 つ選べ a グループホームへの入所支援 b 修正型電気刺激療法 c 精神科リハビリテーションの導入 d 心理教育 e 就労支援 問4. 我が国における精神科救急の現状について誤っているものを 1 つ選べ a 自傷・他害患者の移送は、原則として救急車が行う b 1 次、2 次、3 次救急の概念がある c 精神科救急では、個室の需要が高い d 精神科救急情報センター・救急応需体制は、全国一律とはいえず地域差があ る e 都市部では、輪番体制で精神科救急システムを構築しているところがある

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11 解答、解説 問.1 d 緊急措置入院 精神保健福祉法に基づく入院形態は以下の 5 形態がある、下にいくほど強制力が強い ・任意入院:本人の同意に基づく ・医療保護入院:本人の同意が得られない場合、保護者の同意と 1 人の指定医の診察により入院 ・応急入院:本人の同意、保護者の同意が共に得られない場合、1 人の指定医の診察により 72 時間 以内の入院が可能 ・措置入院:自傷他害のおそれがある者について、2 人以上の指定医の診察により強制的に入院 ・緊急措置入院:自傷他害のおそれがある者について、1 人の指定医の診察で 72 時間以内の入院が 可能 問2. c 自我障害 a 転換症状とは体の病気でないのに、体の病気のような症状がが出ること。 b 解離症状とは自分が誰か理解不能であったり、複数の自己を持ったりする症状。 d 思考奔逸(しこうほんいつ)とは、考えが絶え間なく出てくる、躁病の症状。 e 心気妄想とは、医学的に病気とは考えられないのに、心身の不調にとらわれていると強固に思い 込んでいること。 問3. c、d 精神科リハビリテーションの導入、心理教育 問4. a 自傷・他害患者の移送は、原則として救急車が行う 19.40歳の女性、主婦。3か月前から、疲れて家事をするのもおっくうになってきた。家族が家事 を手伝ってくれるようになったが、「家族に迷惑をかけている」と思い込み、時に取り乱して泣きわめく ことさえあった。2週間前より、倦怠感がさらに強まり、不眠や動悸もたびたび出現するようになった ため、心療内科を受診した。その際に身体疾患が疑われ、検査が行われた。検査結果:TSH 21.5 μU/ml (正常値0.24-3.35)、free T3 1.50 pg/ml(正常値 2.25-4.13)、free T4 40.40 pg/ml(正常値 0.80-1.43)、 抗サイログロブリン抗体陽性、抗マイクロゾーム抗体陽性 問1本症例でみられる精神面での状態像はどれか。1 つ選べ a.抑うつ状態 b.せん妄状態 c.躁状態 d.欠陥状態 e 幻覚妄想状態.

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12 問2本症例で最も妥当と考えられる診断はどれか。1 つ選べ a.橋本病 b.クッシング病 c.アジソン病 d.川崎病 e.ウィルソン病 問3本症例に他に認める症状として妥当なものはどれか。2つ選べ a.浮腫 b.結膜周囲の色素沈着 c.前頸部腫脹 d.中心性肥満 e.蝶形紅斑 問4本症例の治療として不適切なものはどれか。2つ選べ a.レボチロシンの投与 b.炭酸リチウムの投与 c.チアマゾールの投与 d.睡眠導入剤の投与 e.精神療法 臨床像、検査所見(TSH 低値、fT4 高値、自己抗体)より、橋本病からの無痛性甲状腺炎と分かります。 治療はレボチロキシンナトリウム(チラージン)。チアマゾールは抗甲状腺薬で、炭酸リチウムは躁病に 適応なので違います。 答え:a 、 a 、 a,c 、 b,c 20. 36 歳の男性が胃部不快感を主訴に内科外来を受診した。他に、易疲労感、不眠、慢性の頭重感、体 重減少、発作性の胸苦感と発作様症状時に離人感がある。家族歴では、兄に双極性障害による治療歴が ある。諸検査を実施されたが、血液・生化学的検査、心電図検査、上部内視鏡では異常を認めなかった。 問1.プライマリケア医のその後の対応として不適切なものを 1 つ選べ a 患者の生活状況等について詳しい問診を行う b 精神症状に関するスクリーニングを行う c さらに身体疾患を疑い検索を進める d すぐに抗うつ薬を処方する e 抑うつ気分や意欲の低下について患者に尋ねてみる

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13 問 2.この男性が、さらなる内科的精査の結果、明らかな身体疾患は認められず、精神科に紹介された。 もっとも可能性の高い病態、あるいは診断は何か。2 つ選べ a 何らかの心的負担が身体症状を惹起している b 統合失調感情障害である c 遺伝性の精神神経疾患である d 心身症である e うつ病エピソードが潜んでいる 問3. さらに検査を実施する場合、必要性の高いものを 1 つ選べ a 頭部 MRI 検査 b 下部消化管検査 c 心電図の再検査 d デキサメタゾン負荷試験 e 頭部 SPECT 検査 問4. この患者の病歴をさらに詳しく尋ねたところ、過去に軽躁エピソードの存在が明らかになった。こ の患者に使用すべきでない向精神病を1つ選べ a 炭酸リチウム b 三環系抗うつ病薬 c 睡眠導入剤 d バルプロ酸ナトリウム e カルバマゼピン 解答 問1 d 問 2 a,e 問 3 a 問 4 b 解説 リード文だけから診断を予想するは難しいが、最後には双極性障害の設問とわかる。それを念頭に 選択肢を解答していくことが現実的な気がする。問 3 はおそらく脳器質性疾患を除外することが狙い。 内科的精査では発見しにくい。SPECT は施行するなら MRI の次か。問 4 は双極性障害のうつ病相には 抗うつ薬はあまり用いない。(ちなみに三環系は副作用が強く、うつ病に対する一般的な第一選択はSSRI あるいはSNRI。) 21. 次の問いに対して、それぞれ自由記述で説明せよ。説明は文章で行うこと。箇条書きに頼った説明は 減点対象となる。図表は補助的に用いる場合には活用してもよい。 21-1) 精神科以外の診療科で身体疾患をもつ患者を診察する際には、患者の心理や精神状態にどの ような点に配慮し、診療に当たるべきなのか

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14 解答 しばしば、疾病は人に不安や恐れをいだかせる。医師は、そのことを慮り、受容的、共感的で思いや りをもった対応をしなければならない。そして傾聴をもって患者の状況を把握する。その際、医師は、 ただ語られた言葉や単語だけではなく、患者の態度やしぐさ、表情などからその感情や真意を汲み取る ように心がける必要がある。 身体疾患、特に慢性疾患や進行性の疾患、難治性の疾患には精神疾患がしばしば合併する。そのこと を念頭におき、患者の表出に精神病理性がないかどうかを注意深く観察する必要がある。また、見落と しのないように、簡便な精神症状のスクリーニングをプライマリ・ケアにおいて実施することも推奨さ れる。精神疾患の合併が、身体症状に関わる患者の自覚症状を変容させることがある。また、身体疾患 の予後や身体的合併症の経過に影響を与えることがあるので、患者の心理状態の把握や精神症状の把握 はことさら重要である。 身体疾患の罹患の背景に、社会的・環境的要因や、生活上の問題が関わっていることがある。あるい は、こういった要因が、身体疾患の経過に影響を及ぼす可能性がある。また、身体疾患でもたらされた 障害により患者の生活に大きな支障がもたらされることがある。このことから、医師は、疾病そのもの にだけ集中することのないように、患者の背景や、疾病と社会・環境・生活との相互作用にも関心をも ち、患者の心理状態や精神症状に常に注意を向けなければならない。 21-2) 認知症とせん妄の違いと鑑別診断について述べよ 解答 認知症は、アルツハイマー型認知症や、レビー小体型認知症、あるいは血管性認知症に代表される精 神神経疾患の一つの疾病単位であり、一般に慢性進行性で、不可逆的な大脳病理を有する。症状は、記 憶障害と認知機能障害が主であり、経過に従い慢性進行性に全般的な能力の低下がもたらされる。人格 の変化がみられたり、周辺症状として抑うつ症状や病的体験が出現することがあるが、原因疾患により 経過は多様である。 これに対して、せん妄は意識障害の一種であり、通常は急性一過性(まれに慢性のものもあるが)で、 可逆性の病態である。一般にせん妄の誘因を除去することで、症状は軽快する。症状は、意識障害を基 盤としていることから、見当識障害や注意・集中困難、精神運動興奮、視覚性の幻覚などがみられ、一 般に症状には浮動性、あるいは動揺性がある。せん妄には特異的な大脳病理があるわけではなく、せん 妄を誘発する因子も、全身性の疾患から中枢神経系の疾患、あるいは依存性薬物からの離脱、手術後、 熱傷後、低栄養や極度の脱水などによる衰弱、感覚遮断などさまざまである。 両者の鑑別のためには、意識障害の確認を含めた詳細な精神医学・神経学的診察、画像・脳波検査な どによる中枢神経系の精査、症状の動揺性、あるいは可逆性の確認を行う。これにより鑑別は可能であ るが、全身状態と身体基礎疾患の評価、患者の置かれている環境の確認、投与されている薬物の精査な どを行い、せん妄の危険因子をさらに検討し、除去していくことが必要で、治療経過により鑑別が確認 される。

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15 21-3) 精神保健福祉法に定める入院の種類とその内容について述べよ 解答 精神保健福祉法において、精神科病床入院の手続きが規定されている。これは、患者が患者の人権を 保護しながら適切な精神科治療を受けることを可能にするためのものである。入院の形態としては、任 意入院、医療保護入院、措置入院、応急入院などの種類がある。 入院に際しては、まず、患者の自由な意思と同意による入院を考慮すべきであり、患者の同意による 自由な意思での入院を任意入院という。この入院に際して精神保健指定医による判断は必要とせず、ま た本人が退院を要求すればいつでも退院できるが、精神保健指定医によって入院の継続が必要であると 判断された場合 72 時間に限り退院を制限することができる。 治療の必要性が極めて高い精神状態であるのにもかかわらず患者の病識が乏しい場合、また病識が欠 如しているために治療の継続がどうしても困難な場合などに、非同意の入院治療を行うことがある。医 療保護入院は、患者が判断能力を欠き、病識を欠如していて入院治療に関する同意を得られない場合に 行われるもので、精神保健指定医 1 名の判断と法に定められた保護者の同意によって行われる。 さらに、患者に切迫した自傷・他害の恐れがあり、安全の確保を含め迅速な入院治療が必要な場合に は、措置入院が行われる。これには、患者、保護者の同意は不要である。措置入院は、警察官、一般市 民、検察官、あるいは診療施設長などの通報により患者が精神保健指定医 2 名の診察を受け、精神保健 指定医 2 名がともに必要性を判断した場合に入院が決定される。措置入院においては、退院に際してや はり精神保健指定医 1 名の判断が必要となる。なお、精神保健指定医が 1 名であっても、緊急性が高い 場合には、72 時間以内に限り緊急措置入院を行うことができる。 また、身元不明者などの場合に、直ちに入院させなければいけない状況がある場合に、精神保健指定 医 1 名の判断で 72 時間まで応急入院を行うことができる。

参照

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