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中古マンション価格とマンション維持管理に関する考察
政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU11026 横手 昌幸
第1章 はじめに
一つの建物を多くの者で区分所有するマンションにお いては、各区分所有者のマンション生活に対する意識の 違いから生じるマナー違反などによるトラブル、多様な価 値観をもった区分所有者の間の意見調整、大規模修繕の 実施など様々な専門的問題が存在し、その内容は法律・
建築・会計など多岐に亘る。
しかしながら、老朽化したマンションにおいては、高齢 化や賃貸化が進行していき、役員のなり手不足やマンシ ョン管理への無関心もあり、こうした専門的な業務に区分 所有者のみでは対応できず、管理の機能不全に陥る管 理組合の増加が懸念されている。
本稿では、マンション管理組合が円滑に機能しない要 因を経済学的に分析するとともに、実証分析において、
ヘドニックアプローチなどを用いて、マンションの維持管 理の質が中古マンション価格に与える影響を分析する。
その上で、マンション管理組合が抱える問題に対して、改 善策の提案を行う。
第 2 章 マンション管理について
第 2-1節 区分所有法及び標準管理規約について マンションは、敷地及びその上にある構造上一体となっ た建物を多数の者で区分所有する形態をとるが、区分所 有者が排他的に使用・収益できる専有部分と、区分所有 者全員で所有・管理する共用部分とに分かれる。
利害関係のある当事者の数が多いと、全員の調整に費 用がかかるため、効率的な契約に到達することは困難な ものとなる。このような取引費用の問題から、マンションに ついては一定の多数決ルールに従って円滑な意思決定 ができるように民法の特別法として区分所有法が制定され ている。
福井(2012)は、取引費用を最大限極小化せよというコ ースの定理をマンションに関する法制に当てはめるなら ば、区分所有法や円滑化法は、新築当初の区分所有関 係発生時に区分所有者が「決め忘れたこと」についての 当事者の意思を補完するルールとして位置づけ、強行規 定を極力排除した一種の意思推定規定による「標準書式」
として通用するようにしておくのが適切であると指摘して いる。
また、国が定めている標準管理規約は、区分所有者間 の私的交渉の結果策定されるマンション生活の基本的ル ールである管理規約に対して、参考書式として、その策定 費用が迅速かつ安価になるよう、区分所有法と同様に取 取引費用の軽減に資するものであると言える。
第 2-2 節 マンション管理組合の運営について ほとんどのマンションにおいて、管理組合の総会で決 定した事項の執行機関として理事会を設置している。標 準管理規約においては、理事会の構成員である役員は 区分所有者の中から選任され、役員の中から理事長を互 選する。理事長は区分所有法上の管理者となる。
管理者としての業務は多岐にわたり、その内容も滞納 者への対応や大規模修繕の実施など、専門的な知識を 要する。当然のことながら、マンションの規模が大きくなれ ばそれに応じて業務も多くなり、場合によっては他の区分 所有者との軋轢を生むこともあるなど、管理者になること は時間的、精神的にも相当な犠牲を伴う。
以上のように、マンション管理組合の運営において、管 理者の負担は重く、一方で、役員のなり手不足など、各区 分所有者の協力が十分に得られないケースも多い。これ は、マンション管理が区分所有者にとって公共財であるこ とが原因の一つであると考えられる。公共財と考える理由 は、共用部分の利用には基本的に競合性はなく、また、
マンション管理に協力しなくても、共用部分の利用が制限 されないためである。
公共財を私的財からの自発的な供給に任せる場合、フ リーライダーが発生することが知られている。各区分所有 者は他の区分所有者のマンション管理への私的財の供 給量を見ながら自己の供給量を決定するため、ナッシュ 均衡においては最適な水準よりも過小なものとなる。
さらには、マンションの管理には専門的な知識が必要 で、多くの区分所有者はそうした知識を備えておらず、問 題が発生したときに対応できない可能性があり、こういっ た面でも供給水準が低下してしまうことが考えられる。
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このように、マンション管理は公共財であるが故、その水準が最適なものより過少となる性質があり、通常マンション 管理の専門家でない一般の区分所有者が主体となって 運営することで、さらに供給水準が低下してしまうことを示 した。こうした状況は、最悪の場合、マンション管理の機能 不全となり、共有地の悲劇に例えられるようなマンションの スラム化を引き起こし、当該マンションの居住者だけでな く、周辺環境に対しても影響を与えてしまうことになる。
第 3 章 マンション維持管理に関する実証分析 第 3-1 節 管理費及び修繕積立金の滞納等が及ぼす 中古マンションの維持管理への影響
不動産競売が申立てられる場合、債務者は金銭的に窮 していることから管理費や修繕積立金を滞納していること が多い。修繕積立金が不足すると必要な修繕工事が実施 できず、マンション全体の資産価値に影響をもたらすこと が考えられる。
また、管理費等の滞納状況は売買時の重要事項説明 で説明することが必要とされており、こうした滞納状況が 明らかとなることで、消費者はマンション内のコミュニティ の質や将来の修繕工事に不安を覚え、付け値を下げて いる可能性も考えられる。
これらを踏まえ、管理費及び修繕積立金の滞納等が及 ぼすマンション価格への影響について検証する。
第 3-1-1 項 データ内容及び推計モデル
計測データは首都圏1都3県(東京都、神奈川県、埼玉 県、千葉県)にて、平成21年4月から平成23年9月までに 取引のあった中古マンションを対象とし、以下のように推 計モデルを設定した。
<推計モデル式>
ln HP = 𝛼
1+ ∑ 𝛼
2𝑖𝐷𝑎𝑢𝑐
𝑖+ ∑ 𝛼
3𝑖𝐷𝑎𝑢𝑐_𝑓𝑟𝑒𝑞
𝑖+ ∑ 𝛼
4𝑋
𝑖+ 𝜖
𝑖 𝑖
𝑖
HP は住宅価格、Dauc は競売申立てダミーでマンション 内の他の部屋で競売申立てがある場合に1をとるダミー変 数で、Dauc_freq は競売件数の割合がマンション総戸数の 5%以上となっている場合に1をとるダミー変数である。ま た、Xはその他のコントロール変数である。
第 3-1-2 項 分析結果と考察 分析結果は次のとおりである。
競売申立てダミー及び高競売申立てダミーの符号が負 であることが1%水準で統計的に有意な値として示された。
競売申立てがマンション内であった場合 2.5%程度、競売 件数が総戸数の5%以上の場合、6.0%程度価格が下落 する結果となった。これは、仮説で述べたとおり、不動産 競売の差押え対象者が金銭的に窮しているため、管理費 等を滞納している可能性が高く、こうした滞納の発生が中 古マンション価格に影響を与えているものと考えられる。
第 3-2 節 大規模修繕と中古マンション価格に関する 分析
第 3-2-1 項 検証する仮説及び推計モデル
管理組合の業務は多岐にわたり、管理費等の滞納へ の対応だけでなく、大規模修繕の実施も業務の重要な一 つである。そこで本節では、大規模修繕がマンション価格 に与える影響を分析するため、仮説1で用いた築年数に ついて、ダミー変数に変換し、非線形で分析する。これは、
築年数による価格の下落は線形で落ちていくものではな く、大規模修繕を実施すれば、価格の下落のスピードも変 わってくると考えたためである。
さらに、修繕積立金の滞納により、大規模修繕への影 響を分析するため、競売申立てダミーと築年数の交差項 を用いる。なお、データ内容は仮説1と同様であり、以下 のようにモデルを設定した。
<推計モデル式>
ln HP = 𝛼
1+ ∑ 𝛼
𝑖 2𝑖𝐷
𝐴𝐺𝐸𝑖+ ∑ 𝛼
𝑖 3𝑖𝐷𝑎𝑢𝑐
𝑖∗ 𝐴𝐺𝐸
𝑖+ ∑ 𝛼
𝑖 4𝑋
𝑖+ 𝜖
HP は住宅価格、DAGE
は築年数ダミー、Dauc
は競売申立 てダミー、AGE は築年数である。第 3-2-2 項 分析結果と考察
分析結果及び築年数をダミー変数に変換した下落率の 推移のグラフは次のとおりである。
ln価格 係数 標準誤差 係数 標準誤差
定数項 5.4350 0.3885 *** 5.4393 0.3884 ***
ln面積 0.7918 0.0128 *** 0.7910 0.0128 ***
築年数 -0.0260 0.0007 *** -0.0261 0.0007 ***
ln専有階 0.0434 0.0034 *** 0.0434 0.0034 ***
lnバス -0.1154 0.0049 *** -0.1151 0.0049 ***
ln徒歩 -0.0743 0.0047 *** -0.0737 0.0047 ***
ln東京駅からの所要時間 -0.0957 0.0157 *** -0.0957 0.0157 ***
lnマンション階数 0.0062 0.0077 0.0066 0.0077 lnマンション総戸数 -0.0058 0.0039 -0.0069 0.0039 * 大手事業者ダミー 0.0648 0.0055 *** 0.0647 0.0055 ***
競売申立マンションダミー -0.0248 0.0062 *** -0.0209 0.0064 ***
高競売申立ダミー -0.0391 0.0171 **
市区町村ダミー 年ダミー 鉄道ダミー
観測数 11909 11909
修正済決定係数 0.6681 0.6682
※ ***、**、*はそれぞれ1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示している。
(1) (2)
yes yes
-
yes yes
yes yes
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築年数による価格の下落は一定ではなく、11 年目以降から横ばいに推移している。これは、マンションの大規模 修繕の周期は概ね 12 年程度で一巡するため、この修繕 の効果が資産価値に影響を与えているものと考えられる。
また、競売ダミーと築年数の交差項も有意に負の結果と なった。これは、修繕積立金の滞納により必要な資金の 確保ができず、大規模修繕の規模が縮小していることが 考えられ、修繕積立金が適切に積み立てられていないと マンション全体の資産価値も下落してしまう結果となる。
第 3-3 節 マンション評価と中古マンション価格に関す る実証分析
第 3-3-1 項 検証する仮説及び推計モデル
これまでの分析で、管理費の滞納等及び大規模修繕 の実施が、中古マンション価格に影響を与えることが確認 できた。
次に、「マンションは管理で買え」とよく言われており、
マンションの維持管理はマンション価格に影響を与えるも のと考えられている。しかし、実際に消費者が維持管理の 質にプレミアムをつけているかを分析している研究は見
当たらない。そこで、インターネットサイトの評価を用い、
マンションの維持管理の評価が高い場合、価格も上昇し ているか検証することとする。
当該サイトで高く評価されているマンションについて、
価格が上昇していれば、消費者が維持管理にプレミアム をつけている可能性があることが確認できると考えている。
また、推計モデルは以下のように設定した。
<推計モデル式>
ln HP = 𝛼
1+ ∑ 𝛼
2𝑖𝐷𝑒𝑣𝑎
𝑖+ ∑ 𝛼
3𝑖𝑖 𝑖
𝑋
𝑖+ 𝜀
HP は住宅価格である。D
eva
はマンション評価ダミーであ る。評価項目は拠点性、住環境、居住性、維持管理の4つ で、それぞれ5点満点の評価であるが、4点以上の評価と なっている場合に1をとるダミー変数としている。第 3-3-4 項 分析結果と考察 分析結果は以下のとおりである。
評価ダミーは全て正の符号で統計的に有意な結果とな った。維持管理ダミーは約 4.7%、住宅価格が上昇する結 果となっている。
これは、消費者がマンションを購入する際に、マンショ ン評価ナビの評価を参考にした可能性と、仲介事業者か らの説明や現地での確認により得られた消費者自身のマ ンションに対する評価とマンション評価ナビの評価が相関 していたことなどが考えられ、消費者はマンションの維持 管理について、住宅価格の中でプレミアムをつけている 可能性があることが確認できた。
なお、維持管理の評価は管理費や修繕積立金の単価 が高いと点数も高くなる。管理費等の金額が高いマンショ ンは共用部分のグレードが高い傾向があるため、こうした 影響がプレミアムとなっている可能性がある。
ln価格 係数 標準誤差 係数 標準誤差
定数項 4.9163 0.2004 *** 5.3150 0.4576 ***
ln面積 0.8772 0.0055 *** 0.8269 0.0128 ***
ln専有階 0.0547 0.0017 *** 0.0420 0.0034 ***
lnバス -0.1334 0.0025 *** -0.1220 0.0049 ***
ln徒歩 -0.0910 0.0023 *** -0.0806 0.0047 ***
ln東京駅からの所要時間 -0.1089 0.0077 *** -0.1062 0.0156 ***
lnマンション階数 0.0110 0.0038 *** 0.0070 0.0076 lnマンション総戸数 -0.0048 0.0018 *** 0.0010 0.0038 築1年目 -0.0103 0.0034 *** -0.0183 0.2487 築2年目 -0.0137 0.0053 *** -0.0892 0.2460
築3年目 -0.0111 0.0136 -0.0781 0.2455
築4年目 -0.1145 0.0138 *** -0.1797 0.2455 築5年目 -0.1700 0.0138 *** -0.2391 0.2456 築6年目 -0.1554 0.0139 *** -0.2245 0.2456 築7年目 -0.1495 0.0139 *** -0.2205 0.2456 築8年目 -0.1941 0.0139 *** -0.2609 0.2456 築9年目 -0.2705 0.0139 *** -0.3293 0.2456 築10年目 -0.3178 0.0136 *** -0.3820 0.2456 築11年目 -0.3450 0.0135 *** -0.4096 0.2456 * 築12年目 -0.3087 0.0141 *** -0.3726 0.2456 築13年目 -0.3060 0.0144 *** -0.3690 0.2457 築14年目 -0.2992 0.0149 *** -0.3620 0.2457 築15年目 -0.3080 0.0152 *** -0.3712 0.2457 築16年目 -0.3013 0.0183 *** -0.3675 0.2462 築17年目 -0.3747 0.0368 *** -0.4450 0.2499 *
競売申立ダミー 0.0002 0.0150
競売申立ダミー×築年数 -0.0030 0.0016 *
市区町村ダミー 年ダミー 鉄道ダミー
観測数 修正済決定係数
※ ***、**、*はそれぞれ1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示している。
(1) (2)
yes yes
-
-
yes yes
yes yes
ln価格 係数 標準誤差 係数 標準誤差
定数項 4.7628 0.2931 *** 4.7093 0.2402 ***
ln面積 0.9194 0.0196 *** 0.9129 0.0198 ***
築年数 -0.0126 0.0027 *** -0.0149 0.0027 ***
ln専有階 0.0540 0.0054 *** 0.0575 0.0054 ***
lnバス -0.0691 0.0315 ** -0.0933 0.0317 ***
ln徒歩 -0.0231 0.0147 -0.0508 0.0142 ***
ln鉄道時間 -0.0346 0.0288 -0.0483 0.0289 * ln階数 0.0344 0.0170 ** 0.0444 0.0167 ***
ln総戸数 -0.0361 0.0099 *** -0.0184 0.0095 * 拠点性ダミー 0.0316 0.0165 *
住環境ダミー 0.0980 0.0209 ***
居住性ダミー 0.0893 0.0254 ***
維持管理ダミー 0.0465 0.0179 ***
市区町村ダミー 年ダミー 鉄道ダミー
観測数 = 2695 2695
修正済決定係数 = 0.5948 0.5851
※ ***、**、*はそれぞれ1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示している。
yes yes
yes yes
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yes yes
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維持管理ダミー 係数 標準誤差
定数項 7.3837 2.3308 ***
ln単価(価格/面積) -0.2292 0.2576
ln面積 0.1594 0.3303
ln築年数 -0.0994 0.0585 * ln徒歩 -1.0626 0.1555 ***
ln東京駅からの距離 -1.2000 0.1780 ***
ln総戸数 -0.8755 0.1109 ***
ln築年数×ln総戸数 -0.0611 0.0364 *
大手事業者 0.2664 0.2002
都心5区 5.1095 1.0505 ***
東京23区(都心5区以外) 4.0219 1.0388 ***
観測数 = 2695
修正済決定係数 = 0.2944
※ ***、**、*はそれぞれ1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示している。
また、このサイトの評価は法定の調査ではないため、マ ンションによっては調査に非協力的である場合があるた めか、維持管理に関する評価項目全てを調査できずに評 価しているものもあり、今後、消費者が維持管理のどうい った項目にプレミアムをつけているか詳細に分析する必 要がある。
第 3-4 節 維持管理の評価が高いマンションのプロビ ット分析
第 3-4-1 項 検証する仮説及び推計モデル
維持管理に影響を与える項目を分析するため、前節で 用いた維持管理ダミーを被説明変数としてプロビット分析 する。
着目する項目は、フリーライダーや取引費用の影響で ある。第2章で述べたように、フリーライダーが発生すると、
最適な供給水準よりも過少供給となり、供給量は区分所有 者が多いほど過少となってしまう。また、区分所有者数が 多いと、意見調整のための取引費用も増加することになる。
さらに、フリーライダーなどの問題は、年数が経過するほ ど顕在化することが考えられる。
そこで、マンションの規模が大きい場合、維持管理に影 響をもたらすか、また、その影響は年数が経過するほど顕 在化していくのか検証することとする。なお、データセット は仮説3で使用したものを用いる。
<推計モデル式>
𝐷 𝑃𝑀 = 𝛼 1 + ∑ 𝛼 2𝑖 𝑇𝑈 𝑖 + ∑ 𝛼 3𝑖
𝑖 𝑖
𝐴𝐺𝐸 𝑖 + ∑ 𝛼 4𝑖
𝑖
𝑋 𝑖 + 𝜀
D
PM
は仮説3で用いた維持管理ダミーで、TU は総戸数で、AGE は築年数である。
第 3-4-2 項 分析結果と考察 分析結果は以下のとおりである。
総戸数について、負の符号で1%水準で統計的に有意 な結果となった。これは前述したように、マンション管理に はフリーライダーや取引費用という問題が発生するため、
戸数が多い場合、よりその影響が大きくなっている。
さらに、築年数も、負の符号で 1%水準で統計的に有意 な結果となった。フリーライダーなどによるマンション管理 への影響は築年数が経過するほど顕在化してくるものと 考えられる。
第4章 まとめと政策提言
マンション管理組合の業務は管理費や修繕積立金の 管理や大規模修繕の実施等、様々なものがあり、それら が適切に執行されていない場合、マンションの資産価値 に影響を与えることを分析した。資産価値の下落の影響 は区分所有者全員に跳ね返ってくるものであり、管理組 合を運営する理事長の責任は非常に重たい。
また、マンション管理は区分所有者にとって公共財であ るが故、フリーライダーが発生することや、意見調整のた めの取引費用の問題から、マンションの戸数が多くなるほ ど管理水準が低下する傾向が強いことを示した。
以上のように、一般の区分所有者が管理者となって運営 していく現行の方式では、管理が円滑に進まない可能性 が高いことが明らかになった。
こういった問題に対処するためには、福井(2008)などが 指摘しているように、取引費用の低減、全体としての効率 的な維持管理の実現、財産価値の保全を目的とした、マ ンションの管理の専門家の活用が必要であると考える。
しかし、国が定めている標準管理規約は、役員の資格 要件を区分所有者に限定しており、外部の専門家を役員 とすることは想定されていないため、専門家を活用するた めの選択肢を追加するべきである。
さらに、管理者の恣意的な管理が行われることのないよ う、適切なガバナンスの構築が必要であり、管理者の業務 をチェックする監事についても、外部の専門家を活用して いくことが望ましい。
また、今後の課題として、本研究では、データの制約か ら築 17 年目までのマンションを分析対象としたが、より築 年数を経過したマンションの方が、維持管理に支障が出 ている可能性が高いことが考えられる。とくに老朽化マン ションでは、建替えをするか改修をするか区分所有者の 意見がまとまらず、マンションに対する設備投資が凍結し た結果、周辺に悪影響を与えてしまうケースもあり、老朽 化マンションも含めて定量的に分析していく必要がある。