平成28年度専門部研修
報告書(概要)
1 研修の目的
昨年発生した熊本地震など近年の自然災害を考えると、共助における地域コミュニティの 醸成と、いざという時に備えた共助体制は大変重要であり、自治会及び自主防災会の役割は 益々大きくなっている。今回は、人口25万人余、自主防災組織率ほぼ100%である富士市 を研修先とし、自主防災活動について伺い、今後の自治会活動の課題解決の一助とすること を目的とする。
2 研修のテーマ
『富士市の特色ある自主防災活動について』
3 研修概要
①視察日時 平成29年1月25日(水)13:30~15:30 ②参加人数 40人
③会 場 富士市消防防災庁舎(静岡県富士市)
④内 容 富士市防災危機管理課職員、富士市地域防災指導員会会長による 講演及び質疑応答
4 講演及び質疑応答の概要
Ⅰ 富士市における防災の取組の概要について
(富士市総務部防災危機管理課 防災担当主幹 市川 澄 様)
富士市は静岡県東部に位置し、人口約25万人、世帯数は約10万世帯です。南に駿河湾、 北に富士山を望み、西に富士川が流れる自然豊かな地域です。製紙業を中心に様々な産業が 盛んです。
富士市で想定される自然災害の中でも、南海トラフ巨大地震が発生すると甚大な被害をも たらすと想定されています。最悪の場合には、死者 140名、重軽傷者2,860名、避難所では 地震発生 1週間後に富士市民の約1割が生活することになります。この想定に基づき、各避 難所で備蓄品を整備しています。また、市内に53ヶ所の避難所を指定し、区(自治会)ごと に避難先を振り分け、一部の避難所では医療救護活動を行う医療救護所を開設する予定です。 大災害発生時には地域の方の協力も重要で、負傷者の搬送を地域の方にお願いしています。 さらに、平常時から木造住宅の耐震対策や家電家具の耐震固定も推進しています。
市内には自主防災組織が 388 あり、結成率は 99.0%です。この地域は、昭和 50年代から 東海地震発生の可能性があると言われているため、自主防災組織の結成についても意識が強 く、静岡県の支援を受けて自主防災組織の組織化が始まりました。市から自主防災組織への 支援策としては、2種類の補助金制度(自主防災組織運営補助金と器材購入費補助金)があ ります。また、自主防災会会長向け研修会も開催しています。さらに、各自主防災組織への 訓練のアドバイスや支援を行う地域防災指導員制度があります。
富士市で行われている訓練についてですが、そのひとつにDIG(Disaster:災害、I magination:想像、Game:ゲーム)があります。DIGには防災意識の掘り起しや災害理解 といった狙いがあります。市では、DIGの進め方を学ぶ「DIGマスター養成講座」の実 施やDIG用の地図の無償提供を行い、自主防災会の活動を支援しています。最後に自主防 災会が行う防災訓練についてですが、主に4回あり、6月土砂災害防災訓練、9月総合防災訓 練、12月地域防災訓練、3月津波対策訓練があります。
Ⅱ 富士市自主防災会の取組について
(富士市地域防災指導員会 会長 高澤 勝彦 様)
富士駅南地区は富士駅の南に位置し、東海道新幹線と東海道線に囲まれた人口12,000人、 世帯数5,100世帯の地区です。駅南地区では、平成19年にまちづくり協議会に「防災部会」 を組織し、避難所運営のマニュアルを作成しました。その後、平成20年に初めて避難所運営 訓練を開催しました。これがベースとなって、毎年訓練を開催しています。同じ駅南地区で も自治会ごとに状況が違います。集合住宅1棟で組織している自治会や戸建住宅で構成され ている自治会など様々です。そのため、自主防災マニュアルは自主防災会ごとに作成し、避 難所運営マニュアルは駅南地区共通のものとなっています。
平成26年に国の地区防災計画のモデル地区に選定されました。地区防災計画とは、一定の 区域の居住者又は事業者が自発的に行う防災活動に関する計画で東日本大震災を契機に平成 25年の災害対策基本法で新たに創設されたものです。国から派遣されたアドバイザーの支援 を受けて、翌27年に地区防災計画が完成しました。この計画では、地区に関する現状を整理 するとともに、組織の見直し、避難所運営、地区の防災活動、企業・団体との連携について 検討しました。
避難所運営は7つの班(本部総務班、被災者管理班、生活支援班、情報班、施設管理班、 物資・食料班、保健・衛生班)がそれぞれの役割を果たし運営します。構成図は右のとおり です。平成28年度には「生活支援班」を新設しました。また、避難所運営に区長を外すこと、 学校職員を加えることもポイントです。
実際の訓練では、班ごとに3種類の訓練を行います。実際に災害が発生した場合には、大 勢の住民がいろいろなことを出来るようになる必要があるからです。訓練項目の中に市民ト リアージ(=専門的な医療知識がなくてもできるトリアージ)訓練があるのも特徴的だと思 います。また、避難所運営と同時に、各自主防災会でも訓練を実施しています。避難所運営 と各区の防災訓練が両立できて、はじめて災害に対応することができると思います。今後も 訓練を並行して行い、より実践に近い形での訓練を積み重ね、災害に備えましょう。
Ⅲ 質疑応答
熊谷市)富士市の自主防災組織の組織率が非常に高い(99.0%)要因は?
富士市)県内では大規模地震対策特別措置法を根拠に30年以上自主防災組織結成の取組を続 けていることがその要因だと思う。また、民間企業も巻き込んでのきめ細かい啓発や 地域防災指導員制度も高い組織率となっている要因の一つだと思う。
熊谷市)自治会長と自主防災会長を分けている理由は?
富士市)自治会長はもともと仕事量が多い。防災のことは防災専門の人がその役を担った方 が、統制がとれると考えた。ただし、自治会長が防災に全く関わらないわけではない。 熊谷市)避難所運営訓練で実施する「市民トリアージ」について詳しく教えてほしい。
富士市)「市民トリアージ」とは、医療の専門知識がない市民が負傷者の重症度をフローチャ ートに沿って判断していくもの。富士市には健康推進員という制度があり、「市民ト リアージ」の訓練では中心的な役割を担っている。
熊谷市)避難所運営訓練の中の公衆電話訓練について詳しく教えてほしい。
富士市)訓練では、特設公衆電話(発信だけできる電話)を使用する。普段は学校の事務室・ 職員室にあり、災害時にジャックをつないで使用するもので、実際に自宅や災害用伝 言ダイヤル171にかける訓練を行っている。現在、避難所となる体育館付近に端子箱 を順次移設中である。
熊谷市)帰宅困難者への対応はどのように取組まれているのか?