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大涌谷から放出される火山ガスについて

○代田 寧

1

、十河孝夫

2

、秀平敦子

2

、本間直樹

1

、濱田紀之

3

、大場 武

4 (1 温泉地学研究所、2 環境科学センター、3 災害対策課、4 東海大学)

1.はじめに

箱根山では、2015 年 4 月下旬から地震が多発し、山体が膨張する地殻変動が観測され、さらに小 規模な水蒸気噴火が発生するなど、非常に火山活動が活発化しました。この活動では、温泉造成のた めの蒸気井が地下の圧力上昇により制御不能(暴噴状態という)になるとともに、新たな火口や噴気 孔も形成されました。これら蒸気井や噴気孔などから二酸化硫黄などの有毒な火山性ガスが放出され ており、風向きなどによっては大涌谷園地一帯などにおいて高濃度になる場合があります。 当所では、2016 年 7 月から環境科学センターと共同で大涌谷の蒸気井等から放出される火山ガス の採取・分析をおこなっています。ここでは、その結果について報告するとともに、火山活動の程度 により変化すると考えられる火山ガス中の化学組成(二酸化硫黄と硫化水素の比率など)から、箱根 山の活動状況の推移について推察します。

2.火山ガスとは

火山の地下深部にはマグマがあり、火山ガスはそのマグマから脱ガスした揮発性成分に由来します。 揮発性成分には、水蒸気(H2O)、塩化水素(HCl)、二酸化硫黄(SO2)、硫化水素(H2S)、二酸化炭 素(CO2)、ヘリウム(He)、水素(H2)などの多くの成分が含まれ、この火山ガスが地下の亀裂など を通過し地表に現れたものが噴気です。活発な火山では HCl や SO2が多く含まれます。箱根山は熱 水系が発達しており、自然噴気の場合は地表まで上昇する過程で地下水等と反応することにより、水 に溶けやすい HCl や SO2はほとんど含まれません。一方、地下深く掘削している蒸気井の場合は、 地下水等との反応が少なく、HCl や SO2も含まれています。また、火山ガスの組成は活動状況により 変化することが知られています。例えば、SO2とH2S には以下のような関係があり、高温になる(活 動が活発化する)と左辺へ反応が進むためSO2の比率 が高くなり、活動が低下すると逆にH2S の比率が高く なります。箱根火山が 2001 年に活発化した際にも、 時間の経過(活動の低下)とともにSO2/H2S 比が減少 する変化が観測されました(大場ほか、2008)。

3.火山ガスの採取・分析方法

火山ガスの採取・分析は、一般に用いられている Ozawa(1968)の方法に準じておこないました。これ は、蒸気井のガス放出口にチタンパイプを差し込み、 アルカリ溶液などに火山ガスを吸収させ、実験室に持 ち帰って化学分析する方法です。分析した成分は、毒 性が強く放出濃度も高いと考えられるHCl、SO2、H2S の3 成分です。温泉造成用水の投入前(火山ガスがそ のまま放出されている状態)に3 回、投入後に 4 回ガ スの採取・分析をおこなっています。また、比較のた

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おいても同様の方法でガスの採取・分析を1 回おこないました。

4.結果とまとめ

HCl、SO2、H2S の 3 成分の比率 を棒グラフにして図1に示しました。 結果を整理してまとめると以下のと おりです。 ① 温泉造成用水投入前の測定結果 から、HCl の明らかな低下が見ら れ、またSO2/H2S 比も低下してお り、活動度は低下傾向にあるとい えます。しかしながら、大場ほか (2008)による平常時の値よりは 依然として高く、まだ活動前の状 態には戻っていないと考えられ ます。 ② 温泉造成用水の投入後の測定結 果から、SO2/H2S 比が経時的に低 下していることがわかります。こ れは、温泉造成時の条件がほぼ一定であることなどの条件付きではあると思いますが、活動が次第 に低下していることを反映している可能性があります。 ③ 温泉造成用水の投入前後における結果を比較すると、蒸気井から放出されるHCl は造成用水の投 入によりほぼ100%除去されています。また、同日に投入前後でガス採取をおこなった 2017 年 2 月28 日の結果では、SO2は80%程度低減していると考えられます。これらのことから、温泉造成 には、一定程度の放出ガス低減効果があることが示されました。しかしながら、温泉造成再開後も 園地内ではしばしば高濃度のSO2が観測されており、新たに形成された火口や噴気孔もSO2の発生 源になっているものと考えられます。 ④ 2015 年の活動で新たに形成された自然噴気孔において同様にガス採取した結果、やはり SO2が含 まれていることがわかりました。SO2/H2S 比でみると、温泉造成用水投入後の蒸気井から放出され る比率とほぼ同じでした。今回は1 箇所の噴気孔しか測定していませんが、実際には複数の噴気孔 が新たに形成されており、これらの噴気孔が主要なSO2の発生源となっている可能性が高いと考え られます。 謝辞 火山ガスの採取にあたり、箱根温泉供給(株)ならびに箱根町総務防災課にご協力いただきました。 ここに記して深く感謝申し上げます。 参考文献 大場 武・代田 寧・澤 毅・平 徳泰・撹上勇介(2008)箱根カルデラ中央火口丘大涌谷地熱地帯 における火山ガス組成の時間変化,温地研報告,40,1-10. ※ 温地研報告は、当所のホームページより閲覧(ダウンロード)できます。 図1 HCl、SO2、H2S の 3 成分の比率 造成用水投入前 造成用水投入後 自然噴気孔

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箱根湯本、塔之沢に湧出する温泉の現状と経年変化

○菊川城司(温泉地学研究所)

1.はじめに 温泉地学研究所では、箱根温泉で枯渇化が問題となった 1960 年代から様々な調査を行ってきました。 特に箱根湯本温泉、塔之沢温泉(以下、併せて箱根湯本地区と呼びます)では、1970 年、1980 年、1990 年、2006 年に一斉調査を行っており、温泉成分のモニタリングデータが最も多く蓄積された地域です。 2015 年にも一斉調査を実施しましたので、その結果と過去からの経年変化について報告します。 2.現状 調査結果から主要項目の平均値、最小値、最大値を表1に示しました。泉温と揚湯量の最小値を示 したのは同一の源泉ですが、この源泉は未利用でメンテナンス等も実施していないため、水止めの不 良により地下水が混入して温度が低下しているものと考えられます。それ以外の調査源泉はすべて療 養泉の基準を満たしていました。また、pH が 8.5 以上のアルカリ性の温泉は箱根湯本地区全体の 75% 以上を占めています。 箱根湯本地区の泉質分布図 を図1に示しました。図中に は、菊川・板寺(2008)によ る箱根湯本地区温泉のグルー プ分類も併せて表示してあり ます。箱根湯本地区の泉質分 布は特徴的で、湯坂山南側に 沿って須雲川中流域に分布す る源泉(湯坂山グループ)は 食塩を多く含み、須雲川下流 から早川との合流地点付近に 分布する源泉(古期外輪山グ ループ)は食塩のほかに石膏 成分も比較的多く含みます。 塔之沢や箱根湯本温泉発祥の 地である湯場エリアに分布す る源泉(塔之沢・湯場グルー プ)は、食塩と石膏を主成分としますが成分総量は少なめで、須雲川上流部の源泉(畑宿・須雲川グ ループ)は、陰イオンに占める炭酸水素イオンの割合が高く成分量が比較的少ないのが特徴です。 図 1 2015 年の調査に基づいた箱根湯本地区の泉質分布図。マークの色は 菊川・板寺(2008)によるグループ分類、マークの形は泉質を表す。 表1 2015 年調査における主要成分などの平均値、最小値、最大値 温度 揚湯量 電気伝導率 ナトリウムイオン カルシウムイオン 塩化物イオン 硫酸イオン 炭酸水素イオン メタケイ酸 メタホウ酸 ℃ L/min μS/cm mg/L mg/L mg/L mg/L mg/L mg/L mg/L 平均値 52.0 64 8.8 1208 207 39.9 279 127 55.2 74.5 15.7 最小値 18.5 1 7.7 150 17.0 0.98 9.11 5.54 22.6 33.1 0.23 最大値 82.7 338 9.8 5750 934 388 1801 752 231 154 77.0 pH

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3.経年変化 過去 4 回を含めた 5 回の一斉調査全 てでデータが得られている 36 ヶ所の 源泉について、主な項目の平均値の経 年変化を図2に示しました。最初の調 査である 1970 年と今回の調査である 2015 年の平均値を比較すると、泉温は 2.9℃低下し、揚湯量は 19L/min 減少し ています。また、箱根湯本温泉の主要 成分であるナトリウムイオンでは 74mg/L、塩化物イオンでは 135mg/L の 減少が認められ、さらにはカルシウム イオン、硫酸イオンにも減少傾向が認 められます。これに対して炭酸水素イ オンは僅かではあるが増加しており、 温泉水の冷水化や浅層地下水の混入が 懸念されます。しかし、長期的なトレ ンドに注目すると、1970 年から 1990 年までの間と比較して、1990 年以降は各データの減少傾向が緩 やかになっています。この理由としては、県の実施してきた温泉保護対策の効果によって、温泉の枯 渇化にある程度の歯止めがかかっている可能性が考えられます。今後も継続的なモニタリングの実施 を行って、推移を注目しておく必要があります。 昭和 40 年代までに掘削、利用が開始されている源泉を対象として、箱根湯本地区における各泉質の 占める割合を図3に示しました。1970 年から 1980 年にかけて、単純温泉及びアルカリ性単純温泉の 占める割合が急激に増加しており、この期間に箱根湯本地区の温泉の溶存成分が大きく減少したこと が判ります。この傾向は、先に図で示した温度や成分などの長期的なトレンドとも調和的です。また、 古期外輪山グループの特徴的な泉質であるナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉の占める割合 は、1970 年から 2006 年まで減少傾向が認められます。湯坂山グループの特徴的な泉質であるナトリ ウム-塩化物泉の割合は、1970 年から 1980 年にかけて一旦減少したものの、その後は回復していま す。このことから、湯坂山グループの源泉よりも、古期外輪山グループの源泉のほうが、より枯渇化 が進行した状況にあるということがうかがえます。 図2 主要項目平均値の経年変化。すべての調査で対象と なった36 源泉を対象としている。 図3 泉質占有率の経年変化。 20 30 40 50 60 1970 1980 1990 2000 2010 泉温 ℃ 年 0 20 40 60 80 100 1970 1980 1990 2000 2010 揚湯 量 L /mi n 年 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 1970 1980 1990 2000 2010 pH 年 0 200 400 600 800 1000 1200 1970 1980 1990 2000 2010 電気 伝導 度 μ S / cm 年 0 50 100 150 200 250 300 1970 1980 1990 2000 2010 陽イオン m g/L 年 ナトリウムイオン カルシウムイオン カリウムイオン 0 50 100 150 200 250 300 350 1970 1980 1990 2000 2010 陰イオ ン m g/L 年 塩化物イオン 硫酸イオン 炭酸水素イオン

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伊豆半島の付け根で何が起こっている!?

~最近の研究で分かってきた地震像~

○本多 亮・行竹洋平・道家涼介・原田昌武

1.はじめに 神奈川県周辺はフィリピン海プレートが本州側のプレートに衝突しながら沈み込んでいる場所で、 およそ70~100 年に一度程度は地震による被害をこうむる地域であるといえます。こういった地震が なぜ、どのように発生するのか、といったことを考えるためには、神奈川県西部を含む伊豆衝突帯で、 プレートがどのように運動しているか、そしてどのような力がこの地域に作用しているのか、といっ たことを知る必要があります。温泉地学研究所では、伊豆衝突帯の地震像を明らかにするために様々 な研究を行っていますが、本報告では伊豆衝突帯周辺のプレート運動や構造、地震像について、これ までわかってきたことを紹介いたします。 2.伊豆衝突帯で発生する地震像と地殻変動 神奈川県西部において、もっとも地震の活動度が高い領域は丹沢山地周辺です。この地域の震源分布を 詳しく調べると、東経 139 度付近を境に東西のグループに分かれていることがわかります(図1)。東側では 1923 年の大正関東地震と似たような滑りかたをする地震が多いのに対して、西側ではさまざまな種類の地震 が発生することがわかりました。このことから、丹沢地域の東側で発生する地震は、フィリピン海プレートの沈 み込みに関係する地震であるのに対して、西側で発生する地震は陸のプレートとの衝突の影響を強く受け ていることが考えられます。 図2には GNSS の解析から得られた伊豆衝突帯における地殻変動から推定した最大せん断歪の分 布を示します。この図からは北伊豆断層付近を西端とする幅20 ㎞ほどの「せん断帯」(図で黄色に見 える部分)が形成されていることがわかります。 3.新しい衝突帯のモデル構築に向けて 80 年代後半以降、この地域のプレート運動と地震の関係についての多くの議論がなされてきました。 その中に、真鶴半島付近から山北にかけて南北方向にプレートの裂け目があるとする西相模湾断裂と いう考え方があり、神奈川県の地震の被害想定などでも参考とされています。上で述べたような地殻 変動の観測や地震活動の解析から、西相模湾断裂が存在するとされる場所よりももう少し西側、丹那 断層付近を境界として、東西でプレートの運動の様子が変わっていることがわかってきました。また、 この断層を丹沢まで延長していくと、そこを境界として東西で地震の発生の様子が異なることもわか ってきました。こういったことを考えあわせていくことで、新たなプレート運動のモデルが構築でき るのではないかと考えられます。いまはまだ、モデルの完成までにいたっていませんが、おおよそ図 3に示すようなモデルが良いのではないかと考えているところです。今後、さらにデータを集め、解 析を進めて、モデルを更新していく予定です。

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プレート境界型 の地震 図1 伊豆衝突帯の震源分布とメカニズム解。 青の点線で示した位置よりも東側で、プレート 境界型の地震が卓越する。 図2.GNSS データから推定した、定常的な 地殻変動による最大せん断歪。 図3 伊豆衝突帯におけるプレート運動のモデル

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自然災害と恵み

○里村幹夫(温泉地学研究所)

日本は自然災害の多い国です。ありがたくない話ですが、地震、津波、火山、台風、集中豪雨など に見舞われる頻度は、いずれも世界でトップクラスの災害大国です。しかし、風光明媚で、水も豊富 にあり、自然に恵まれた国でもあります。このような自然災害が多いということと自然に恵まれてい るということは表裏一体をなすものです。ただ、自然災害が多いと悲嘆にくれるだけでなく、災害と 自然からもたらされる恵みとの関係について考えてみようと思います。 1.人口密度と自然災害被災可能性 図1は世界の人口密度の分布を、図2は自然災害に遭いやすさの国別分布を表しています。これを 見ると東アジア、東南アジア、南アジアに人口が密集していることがわかります。図1は地域ごと、 図2は国ごとになっているのでわかりにくいのですが、日本や東南アジア、中米等、自然災害に遭い やすい国に人口密度の高いところが多いことがわかります。これは、人口密度が高いために自然災害 自然災害に遭いやすいのではなく、自然災害に遭いやすいところが自然からの恵みも多く、結果的に 人口密度が高くなっているのです。つまり人が住みやすいところが自然災害に遭いやすいのです。 災害と恵みの関係について、わかりやすい火山から始め、気象、地震の順で考えてみましょう。 図1 世界の人口密度分布 図2 自然災害に遭いやすい国(元資料:国連大学(2011))

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2.火山災害と恵み 災害と恵みを結びつけて考えやすいのは火山でしょう。一昨年の箱根火山が活発化したときを思い 起こすまでもなく、火山活動の活発化は、人的にも経済的にも大きな被害をもたらします。 しかし、火山はとても大きな恵みを与えてくれています。箱根火山は、大涌谷や芦ノ湖などの素晴 らしい景観を生み出すとともに、温泉を湧出させ、毎年 2000 万人もの観光客を集めています。これは、 箱根が火山であるからです。 日本には 33 の国立公園があります。このうち、21 か所(利尻礼文サロベツ、知床、阿寒、大雪山、 支笏洞爺、十和田八幡平、磐梯朝日、日光、尾瀬、上信越高原、妙高戸隠連山、小笠原、富士箱根伊 豆、中部山岳、白山、大山隠岐、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島)が火山景観 です。環境省の秩父多摩甲斐国立公園(図3の 14)の説明には、「火山が1つも含まれていないとい う、火山国日本には珍しい特徴も持っています」と火山がない国立公園であるとわざわざ断っている くらいです。 図3 日本の国立公園(元図は環境省による)。赤丸のついた 21 か所が火山景観をもと にした国立公園である。 景観とともに火山の恵みと言えるのは温泉です。箱根を例に挙げるまでもなく、火山と温泉は密接 に関係しています(図4)。また、火山の熱は発電に利用されているところもあります。 火山からの恵みの水には、温泉だけではなく湧水もあります。箱根の芦ノ湖の水も主に中央火口丘 の山麓の湧水です。富士山の伏流水は、白糸の滝、柿田川、三島の楽寿園、忍野八海などを生み出し ており、これらは有名な観光資源になっています。有名でなくても、火山からの湧水が普段から飲み 水など生活用水として使われていたり、ミネラルウォーターとして販売されている例も多くあります。 火山噴火に伴う噴出物は、人命を奪うだけでなく洪水の原因になったり農作物に被害を及ぼしたり することがありますが、長期的に見ると腐葉土となって農作物を育んでいます。特に火山灰は水はけ がよいという特徴があり、水はけがよい土地を好む農作物(ネギ、ダイコン、キャベツなど)を作る のには絶好の場所になっています。関東各地の近郊農業はまさにこの特徴を利用しています。

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図4 日本の火山分布と温泉分布 日本温泉協会出版「温泉」より大山正雄作図引用(温地研 HP) 3.気象災害と恵み 図5に世界の降水量分布図を示します。図 1 の人口密度と比較してみると、南アメリカ等の一部を 除くと、降水量の多いところと人口密度の高いところはよく一致していることがわかります。特に東 アジア、東南アジア、南アジアは、人を養う能力の高い米作に適した環境であるため、人口密度が多 くなっています。 降雨が多いということは、台風や洪水等の災害も多いということでもあります。実際、東アジアは 台風、南アジアはサイクロン、北アメリカはハリケーンにしばしば襲われています。しかしこれらの 結果として水資源が豊富になり、豊かな土が作られ、農作物がよく育つため、多くの人口が養われて います。

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4.地震災害と恵み 火山や気象の恵みに比べると、地震の恵みはわかりにくいですが、地震も我々の生活に貢献してい ます。 地震は断層が動くことにより起こります。この断層は山の中に直線的な谷を作り、山の麓に平地を 作ります。その典型は近畿地方に見ることができます(図6)。大和朝廷の発祥の地である奈良盆地も 京都盆地も、そして大阪平野も断層が作った平地です。ここ小田原のある足柄平野も国府津・松田断 層という活発な断層が作った平野ということができます。 図6 近畿地方の地形と活断層 山の中に作られた直線的な谷は、古来より交通路として利用されてきました。日本の多くの鉄道、 高速道路はこの谷を利用しています。断層による谷がなければ、太平洋側から日本海側への陸路での 移動は困難だったはずです。 また地震は、平野の近くに険しい山があるという風光明媚な地形を作り、断層崖からは名水が湧き ます。灘や伏見の酒は、まさに断層崖からの湧水をもとに作られている酒です。 相模湾は断層によってできた深い海で、浅海から深海までの様々な魚が獲れるのも地震の恵みと考 えていいでしょう。 津波にも恵みはあります。浜名湖はもともと陸に囲まれた湖でしたが、津波により堤防が切られ、 海水が湖に流れ込みました。おかげでウナギやアサリ、カキという名産が生まれました。また伊豆大 島の波浮の港は、もともとは火口の丸い凹地だったものが津波により素晴らしい港になったものです。 5.なぜ災害と恵みを結び付けて考えるか 最初に書いたように、日本は自然災害の多い国です。したがって、防災・減災を考えることはとて も重要です。しかし、防災には暗いイメージがあり、特に若い人に人気がありません。防災を考える には、暗い災害だけではなく、明るい恵みと合わせて自然について学ぶことが重要です。 さらに、災害を受けた人は、自分たちはなぜこのような理不尽な目に合わないといけなかったのか と考えがちです。しかし、普段はそれと裏腹な恵みを同じ自然から享受して暮らしているのです。た だ自然を恨むだけでは被災から立ち直れません。自然の恵みに対する感謝の心も必要です。といって も、被災した直後の人にこの話をするのは、より心を傷つける恐れもありますので、気をつけるべき です。 参考になるホームページ等 ・小山眞人「地震とともに生きる」『地震防災』(里村幹夫編著)学術図書出版 ・原田賢一「自然災害と恵みの循環」http://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no48/04.html

・NHK for school 「自然と恵み」http://www2.nhk.or.jp/school/movie/outline.cgi?das_id=D0005110149_00000

参照

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