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Academic year: 2021

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(1)

近世徳島藩山村社会の家と女性 一名西郡上山村上分の場合一 教科・領域教育専攻

社会系コース 門田万寿美

はじめに

近世社会の構造上、女性はどこにどのように 位置づけられるのか、

1980

年代に入り「暗黒j

だけでない近世女性の存在が示された。近年ジ ェンダーアプローチからの歴史学の見直しゃ個 々の女性のライフサイクルと公権力との関わり など、新しい研究段階へと進みつつある女性史 は、歴史学の中で市民権を得たと言えるだろう。

本研究は、全国的な先行研究を念頭におきな がら、近世徳島藩の百姓女性の公的把握と村や 家の中での実態を、一次史料に即して具体的に 検討することを目的としている。

第 1章 文 化 期 棟 付 帳 に み る 女 性 相 続 1藩政の百姓女性把握

徳島藩では、

1 7

世紀にも百姓の家の後家は中 継相続をしており、藩も実質的にそれを認めて

し、る。

棟付帳作成の際、隠しゃ不正が多く、また女 性名を煽る者もあり、藩は棟付!援に女性を含む すべての人を記載せざるを得なくなった。しか し、その付けられ方は性別によって区別されて いる。また、棟付作成時の基本となる「蝦証文

J

や「居証文jの取り方は、やはり男性と女性で は違いがある。

女性という観点で見ると、藩の相続把握は

f

壁 書

J

の方針を踏襲しており、棟付作成の目的は 夫負人の確定という初期の方針を失つてはいな 10

2  r

上山村上分文化期棟付帳j にみる女性相続

指 導 教 官 町 田 哲

この節は、「名西郡上山村上分文化期棟付帳j

を 素 材 に 女 性 相 続 に つ い て 分 析

L

た結果でさ る。女性名筆頭入、後家の家とも暮らしの厳し さが感じられ、家族との離男IJ・死別で筆頭人に ならざるを得なかった状況である。

一方、中継としての女性相続人の数は多く、

この意味での女性の役割は大きい。しかし男性 筆頭人の娘への相続の形と、後家の娘への形は 棟付の付け方が異なる。実際の棟付でも、後家 相続を認めた「壁書jの趣旨が反映されている

と考えられる。

養女は特に近隣や親戚内から取っている場合 が多く、中継相続の観が強い。証文・棟付とも、

男性養子とは異なる付けられ方である。

3

養子に出される惣領

上山村上分では、惣領、長子であっても養 子に出されることもあり、その数は養子総数の

2

割に達するD 村の相続形態は、多彩で柔軟で ある。

まとめ

藩は、近世後期の社会の変動に対処するため、

女性相続をどのような形でも認めている。事実、

上山村上分では、さまざまな女性の中継相続が みられ、惣領を養子に出すことも養女相続も希 とは言えない。しかし、藩は公的な帳簿記載や 証文については、藩政初期の根本原理を貫こう

としており、記載方法にその意向が表れているO

2

章上山村上分の女性と村社会 1上山村上分の「父不知j

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(2)

「父の分からない子jが証文なしで母の家督 を相続し、村でもそれを認めている。「父不知j

の父は村人であり、「父不知j とは棟付上の記 載形式である。

2  r

粟飯原家文書j内 縁 出 入 り (

1  ) 

内縁関係出入りにおける村役人の内済は、男 性側に優位に働いている。人間関係の秩序維持 のため男女の関係を絶ち、できた子は「父不知j

にする傾向が強い。

3  r

粟飯原家文書j内縁出入り

(2)

村役人は、「家j の存続のため、内縁関係を 既成事実として認めることもある。その内済は、

村内完結型で弾力性がある。

4

村役人の論理

村の出入りを担うのは、庄屋とその補佐役の 五人組である。上山村上分は、行政区分として

4

つの谷に分かれており、その谷ごとに五人組 が存在し受持地域を管轄していた。

村役人は、厳しく道徳を説き社会秩序の回復 をねらうが、時には現実的な対応も迫られてい た。近世後期の村の実状は、風俗の乱れや散田 の増加などでたいへん厳しい。

まとめ

上分の女性は、公的役は担っていない。しか し、女性にとって家の中継相続人としての役割 は大きい。結婚、出産、相続と続く村の女性の ライフサイクルの中で、行動的に大胆に自分の 位置を決めていく女性の姿が見える。

村役人は、弛緩していく村社会の現実の中で、

村人の行動を冷静に判断し、村内で完結させる ことを目的としている。

第 3

章庄屋の家の人々

1

粟飯原家の危機

代々上分の庄屋を勤めてきた粟飯原家には、

家存続の危機が

2

度あった。その危機を粟飯原

家系図と棟付帳から検証し、同族団の協力によ って近世を生き抜いた庄屋当主の家の姿を検討 する。

2  r

伊 輪j という存在

公的立場がなかった上分の女性の中で、「墓 誌下書きjが残され庄屋の妻として顕彰された

「伊輪Jの存在は特筆すべき例である。庄屋の 家の存続に生きた「伊輪jの生き方を考察する。

3

庄屋の家を取り巻く人々

荒廃する社会の波は、庄屋本家周辺の上層農 民の男性にも及んでいる。これらの男性と「家j

存続を支えた女性の存在を検討する。

まとめ

庄屋の家と本家周辺の家は、同族団の結束や 女性の存在によって成り立ってきたといえるだ ろう。

おわりに

藩の正式な女性把握は「嫁入りjだけであり、

女性相続はあくまで中継ぎの認識でしかない。

棟付改めの趣旨は、「夫負人確定J の意味合い を失つてはいない。しかし、村の実質的な家の 相続は多種多様で数も多く、家の確保を考えれ ば、藩は女性相続をどのような形でも認める必 要があった。

村の女性は、公的役は担わないが、家の相続 には大きな役割を果たしている。また女性は、

内縁という形ではあるが、家の制約から解き放 たれる力も持っていた。さらに、近世後期の荒 廃する村の中で、家にとって女性は欠かせない 存在になっていた。

しかし、「父不知jや村の女性の実際の姿が、

どこまで判明したかは疑問が残る。今後の課題 は、多く残されている。

付論「後藤家文書j 内縁出入りにみる女性

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参照

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