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(1)

現代中国人若者 90 たちの就業観

―アンケート 調査から見る日本的経営との親和性の考察―

堀 内 弘 司 The Employment View of Chinese Young-generation Born after 1990 s:

How is the Affinity between Them and Japanese Enterprise s Culture?

Koji Horiuchi

Some believe that the Chinese young-generation have strong mind to get high salary job, and strong mind of privatism . These views assumed that they don

t prefer working in Japanese enterprises which have strong collectivism and salary-equalitarianism. However, China Best Employer Award 2016 and its related papers infer the Chinese young-generation born after 1990

ʼ

s have a tendency of collectivism in their working vision, and they don

ʼ

t have so strong mind to get higher and higher salary. The Chinese market has been becoming bigger and bigger, and Japanese enterprises should get excellent Chinese young employees to create new business. So this paper will examine the affinity between the Chinese young-generation born after the 1990

ʼ

s and Japanese enterprise

ʼ

s culture.

Key Words: Employment View of Chinese, Japanese Business Model, Born after the 90

90

后)

, Generation Z

1

.はじめに

2010

年に中国は日本の

GDP

を超え,

2015

年には日本の

2.5

倍を超えた。そして,沿海部におい ては

1

人当たり

GDP

1

万米ドルを超えるようになり,中間層と言われる 消費を楽しむ人たち が急増している。人口・世帯数が減少する日本市場を鑑みれば,日本企業は中国市場に対して,さら に積極的に進出すべきという論点が成り立つ。

21

世紀に入り,中国の消費者たちの消費力は先進国 に追いつけ追い越せとばかり急騰しているといえよう。日本をはじめとして「中国人旅行者の爆買 い」を当てにする事業者が先進国に増えている。

こうした

21

世紀の中国市場・消費者が望む商品・サービスを創案し提供していくには,中国の若 い人材を雇用する必要があろう。

2016

年に大学を卒業して社会人になる若者たちは

1990

年代に生ま れた世代で

90

と呼ばれる。この階層世代は,激しい文化大革命があった時代は知らない。物 心がついた頃からインターネットがあり,世界のニュースやコンテンツにも接している。インター ネットを前提とした

21

世紀型の顧客サービスや商品販売を創案する上で,これら若年層人材を採用 し,能力を発揮してもらうことが日本企業にとって必要であろう。 一人っ子政策 によって人口が 減っているという向きもあるが,実際には

90

后(

90

年代生まれ)の人口は

2.1

億人,

80

后は

2.2

対外経済貿易大学(中国・北京市)講師

(2)

人おり,

70

后の

2.1

億人に比べてそれほど出生数は減っていない。

90

后と

80

后の合計人口は

4

億人

を超え,

ASEAN

市場や北米市場,

EU

市場に肉薄する大きな市場である。さらに,この階層世代は

ニューファミリーとして世帯を築き,子どもを産み大量消費をしていく世代である。また,中国の大 学進学者は年間

800

万人とも言われ,日本の

60

万人と比べると

10

倍以上の大学進学者がいるが,

こうした高学歴者の市場も世界の中で大きい。

しかし,これまで日本の報道記事等では,中国の若者たちは「給料が高い会社が第一で,より高い 収入が得られる会社に簡単に転職」する価値観を持ち,「日本企業は,給料が安いというステレオタ イプ的なイメージを持っている」ということが語られてきた。また,「 個人主義 を第一にしたい中 国人若者たちにとって, 集団主義 で仲間意識を大事にする文化を持つ日本企業に就業することに 消極的」ということが語られてきた。

90

后の就業観がそうであれば,日本企業が優良な中国人大卒 者を採用し若い能力を発揮してもらうことは困難なこととなってしまう。

ところが,『

2016

年中国最佳雇主』1のレポート結果からは,

90

后たちの異なる就業観が見えてきた。

若者たちの就業観を概観・分析したレポートの巻頭言は,「

2016

年は 職場コミュニティ 時代の到 来」とまとめ,「同じ気持ちを持った雇用主と就業者が深い多面的な関係を望んでいる。そして,お 互いの将来を発展させるべく,信頼と将来を一緒に探索する継続を望みあう」と分析している。

90

后の若者たちは前世代とは異なり,「会社と自分の将来を一体化させて考え,会社の成長と共に自分 があり,自分と仲間が力を合せて,自分の人生を豊かなものにしたい」という人生観・就業観が示唆 されている。かつての日本の企業文化・就業観に相通ずる価値観・人生観を

90

后の若者たちが持っ ているかのように捉えられる。

本稿は,このレポートと関連資料に示された,

90

后若者たちの就業観と企業に望む企業文化・制 度の意識を,日本企業が持つ文化・制度を鑑みながら考察・試論する。なお,企業文化・制度は企業 によって異なるが,日本的経営について書かれた国内外の

150

冊近くの文献の論考を整理した『日本 的経営の論点』(飯田史彦,

1998

年,

PHP

新書)に描かれた日本企業が持つ文化・制度の内容を参 照し試論する。

2

.日本企業が持つ文化・制度の特徴

『日本的経営の論点』は,「ジャパン・アズ・ナンバーワン」や「日本脅威論」が世界的に議論され た

1960

年代から

1990

年代の日本的経営に関する国内外の論考

150

近くを整理・概観している。同 書によると,日本的経営の特徴は「三種の神器」(終身雇用・年功制・企業別組合)の他に,次のよ うな特徴がある2

①「米国企業はトップダウンに対して,日本的経営は 調整型 である(強力なリーダーシップがな い)」。日本企業では,「現場の社員たちの考えが尊重され,製品開発などのリーダー(けん引役)

も自然体で決まっていく」のに対して,「米国企業では,トップダウンで強引に物事が決まる。関 係部門同士の調整はなくて,トップの決定の命令に従う」。

1 2016年中国最佳雇主』のサイトは, http://best.zhaopin.com/ 本項3章に,このレポートの説明を記述。

2 本部分(箇条書き)は,飯田(1998年)を元に筆者の論考も交えて記述している。なお,ここに挙げた米国企業や日本企業 の特徴は,1990年代以前の論考である。

(3)

②「日本企業には 人間尊重 の精神があり,それが卓越した日本的経営の基盤となっている」が,「米 国企業では,従業員はマネジャーの命令に従うもの」である。

日本企業は「ホンダ流ワイガヤ」のように,同じ仕事(目標)に打ち込む仲間関係になる。「ホ ンダ流ワイガヤ」とは,自動車会社ホンダの経営思想・企業文化の概念のひとつで,経営者層も現 場の工員も販売員もみんなでワイワイガヤガヤと議論をしながら,企業経営や製品開発などの企業 方針を決めていく経営思想・企業文化である。

③「日本企業は 顧客志向 を第一義とした成長志向」であるのに対して,「米国企業は 総資本利 益率 を上げることを経営の第一義とする」ということである。

④「日本企業では, 会社は社員みんなのもの 」であるのに対して,「米国企業では, 会社は投資家

(株主)のもの 」ということである。予想外の利益が出れば「米国企業では,株主への 配当金 として配分される」が,「日本企業では,社員たちへの ボーナス として配分される」ことが企 業文化の根幹にある。日本企業の従業員たちは「会社の成長は,自分たちの成長」であることが,

経済的にも製品開発競争での成功においても実感するのである。

⑤「日本企業に勤める就業者は,突然のレイオフ(解雇)がなく,安心して働ける」のに対して,「米 国企業は,赤字に転落した事業部門(

Business Unit

)に配属になった就業者は,株主の決定で即座 にレイオフが起こる人事文化がある」ということである。こうした企業文化から,米国企業の就業 者たちは突然のレイオフ勧告にも備え,より良い条件の会社に常に応募を出している。こうした就 業環境(雇用の信頼関係が薄い企業)では,ある意味「会社がどうなろうと知ったことではない」

という価値観も生んでしまう。

また,企業を超えた米国的な労働者組合(ユニオン)の制度は「どこの会社で働いても給料が一 緒,労働時間も一緒」という就業観を持つ労働者を育む。それに対し,日本企業は,「社員が知恵 と努力を結集して,企業が成功」を収めれば,社員にその利益が還元されるという論理で成り立つ。

⑥「日本企業では, 一括採用 の後に,何度かの ジョブローテーション があり,昇進する者は 異なる複数部門の経験をしていく」という特徴があるが,「米国企業では,雇用契約に従った 専 門職務 をしていく」ことになる。就職した会社で,その 専門職務 で芽が出ない場合(他の同 僚が出世をする等)は,他社に転職するしかない。

それから,「日本企業は,企業内研修が充実」しているが,「米国企業は, 専門職務 ができる 人材を採用するので,自分で外部研修を受ける」のが基本である。

⑦「日本企業では, 情報の共有 が全社的にされる」のに対し,「米国企業では, トップダウン の文化がある為,トップにのみ情報が集まる」という特徴がある。なお,日本企業では,所属部門 の他に,プロジェクトチームやタスクフォース組織を設け,

1

人の社員が組織を横断する別組織に 属する形態,すなわち マトリックス組織 が見られる。こうしたプロジェクトチームのスタッフ に選ばれた

20

歳代の若手社員などは,トップとの距離が短い関係(フラットな組織)になること ができる。

こうした日本的経営の特徴は,多くの欧米企業で研究・参照されて,

1990

年代以降に

Google

社を はじめとした

IT

企業等で,欧米企業に積極的に導入されたと言われている。

(4)

2016

年中国最佳雇主』の巻頭言は,「 職場コミュニティ 時代の到来」を鍵概念として,「同じ 気持ちを持った雇用主と就業者が深い多面的な関係を望んでいる。そして,お互いの将来を発展させ るべく,信頼と将来を一緒に探索する継続を望みあう」と概観しており,筆者は上述した日本の企業 文化・就業観と相通ずるものがあるのではないかと感じた。

本稿は,このレポートに示された「

90

后の若者たちの就業観,企業に求める文化・制度」が,上 述した「日本の企業文化・制度」と相通ずるものが発見できるのか試論する。

3

.『

2016

年中国最佳雇用主』について

北京大学社会調査研究センターが中心となり,中国社会科学院や就職情報会社の智联招聘などと編 集・制作するレポートで,

2006

年に始まり

2016

年版で第

11

回目となる。

〈成果物と調査対象企業〉

調査報告の主な内容は,「中国全土

Best100

」,「中国全土

Best30

」,「大学生評価

Best10

」,「女性評

Best10

」という,

20

歳代の就業者たちが選ぶ優良企業の発表であるが,付随して,調査対象者た

ちの就業観に関する分析結果が発表される。

2016

年版の評価対象企業数は

9,740

社あり,

408

万人の若者たちが参加して評価した。

408

万人の内訳は,男女では「男性

47.28

%,女性

52.72

%」。年齢分布は「

20

歳以下

2.9

%,

21

25

42.2

%,

26

30

36.9

%,

31

35

10.3

%,

36

40

4.3

%,

41

歳以上

3.4

%」。

1986

年生まれ(

2016

年時点で

30

歳)までを,

90

后と同じ階層世代として捉えれば,

82

%が

90

后となる。

学歴分布で は「大学院

10.4

%,大学

52.3

%,大学専科(日本の専門学校)

26.7

%,高校以下

10.6

%」で,大学専科卒以上の学歴が

89.4

%である。

就業状況は「就業中

71.9

%,学生

17.2

%,待機・失業中・他

11.0

%」。所属組織の形態は,「民間 企業

56.7

%,国有企業

16.8

%,外資(香港・台湾を含む)

10.1

%,合資企業

8.6

%,政府機関

3.8

%,

非営利団体

0.6

%,その他

3.4

%」。職務分布では「一般社員

48.8

%,係長・課長レベル

23.1

%,専門 技術員

16.4

%,ミドル・マネジメント

10.6

%,トップ・マネジメント

1.0

%」。所属業界は「

IT/

通信

/

電子

/

インターネット関連

25.0

%,金融業

18.4

%,生産

/

加工

/

製造で

12.2

%,貿易

/

問屋

/

小売

/

不動産 賃貸

10.2

%,不動産開発

/

建設業

7.9

%,サービス業

6.5

%,商業サービス

3.4

%,交通

/

運輸

/

物流

/

3.0

%,エネルギー

/

鉱業

/

環境関係

2.7

%,文化

/

マスコミ

/

娯楽

/

スポーツ

2.2

%,政府

/

非政府機構

2.2

%,教育

/

工芸美術

/

博物館

2.6

%,農林水産牧畜

0.5

%,その他

4.0

%」と示されている3

収 入 分 布は「

2,000

元 以 下

4.7

%,

2,001

4,000

32.7

%,

4,001

6,000

27.2

%,

6,001

8,000

12.2

%,

8,001

10,000

7.0

%,

10,001

15,000

7.4

%,

15,001

20,000

1.9

%,

20,000

元以上

6.9

%」

である。

30

歳以下の

90

后が

82

%の調査であるが,この平均像としては,

6,000

元以下(日本円にして月収

10

万円以下)が全体の

64.6

%である。なお,

2

万元以上(日本円にして

32

万円以上)が

7

%近くおり,

15

人に

1

人くらいは

2

万元以上の収入となる。

3 ニッセイ基礎研究所の片山ゆきのレポート(2016年)も,同様の業界分布が示されている。

(5)

〈優良企業に選ばれた企業〉

2016

中国年度最佳雇主』では,まず就業者

1000

人以上で経営年数

2

年以上の企業から「中国全 土

Best100

」が選ばれ,その中から「中国全土

Best30

」,「大学生評価

Best10

」,「女性評価

Best10

が選ばれる。また,これ以外に,このプロジェクトに参加する有識者が選ぶ「最も発展する潜在能力 を持つ企業

Bes30

」などが選ばれる。

〈主な企業〉4 A. 「中国全土Best30

Tencent,②招商銀行,③BMW中国,④阿里巴巴,⑤PICC,⑥万科企業,⑦中国平安,⑧IBM中国,

MercedesBenz中国,⑩Starbucks中国,⑪中国一汽,⑫百度,⑬VOLKSWAGEN中国,⑭SF Express,⑮JD.COM京東,

WWW.360.CN,⑰北京汽車集団,⑱中国民生銀行,⑲海航集団,⑳IKEA中国,㉑A.D.SMITH,㉒中国南方航空,

㉓徳邦物流,㉔中国東方航空,㉕鳳凰網,㉖Haier,㉗新東方教育科技,㉘Hisense,㉙広汽Honda,㉚陽光城集団 B. 「大学生評価Best10

IBM中国,②国美電器,③Nestle中国,④完美世界,⑤IKEA中国,⑥万達集団,⑦Lenovo,⑧Tencent,⑨sina新浪,

CIMC中集 C. 「女性評価Best10

①阿里巴巴,②交通銀行,③Joyyoung九陽,④唯品会,⑤中国工商銀行,⑥BMW中国,⑦JD.COM京東,

Microsoft中国,⑨Starbucks中国,⑩GREE格力電器

筆者がこの企業リストを見たとき,「給与の高い会社も入っているが,必ずしも給料が高い会社ば かりでない」と感じた。筆者が勤務する北京市の大学生たちにも質問したが,彼・彼女らの印象も同 様であった。外資系企業も多いが,

Starbucks

IKEA

Nestle

などの小売・サービス業は給料が高 いわけでもない。

企業リストの中の大半は中国企業である。その中でも特に,新興のベンチャー企業である

IT

・ネッ ト通販と物流企業(

Tencent

,阿里巴巴,百度,

JD.COM

京東,

WWW.360.CN

,鳳凰網,

sina

新浪,

完美世界,唯品会,

SF Express

,徳邦物流)が名前を並べる。航空会社も,伝統的な中国国営企業よ りも,格安航空を指向する,海航集団,中国南方航空,中国東方航空がリストに並ぶ。家電メーカー

Haier

Hisense

,国美電器,

Lenovo

Joyyoung

九陽,

GREE

格力電器)も多い。歴史が浅い新興企 業が多く,とりわけ給料が高いイメージ(ステレオ・タイプ的なイメージ)がない企業が並ぶ。

4

.本稿の考察課題

これらの企業は,どのような企業特性が現代中国人若者たち就業者を惹き付けているのだろうか。

中国人若者たちの就業観に対する,これまでのステレオタイプ的なイメージは,「とにかく給料が 高い会社に就業したい」や「安定していて社宅や社会保障が手厚い,大手の国有企業に就業したい」

という希望を持つ若者が多いというものだった。

そして,中国人若者の日本企業に対する就業観のステレオタイプ的なイメージは,「日系企業は,

給料が安いから,欧米企業と比べて人気がない」,「日本企業は,中国国営企業に比べて,将来が安定 していない」というものだった。

しかし,上に示した企業リストを見ると,「高給な企業」,「安定した国営企業」から離れたイメー

4 企業名の表示は正式名でない。日本人に馴染みがある欧米企業や日本企業はそれがわかるように,本稿では書き記した。

http://best.zhaopin.com/に,このリストがある。(2017710日閲覧)

(6)

ジの企業名が並んでいる。

2016

年中国最佳雇主』の巻頭言では,「 職場コミュニティ 時代の到来」と概観し,「同じ気持 ちを持った雇用主と就業者が深い多面的な関係を望んでいる。そして,お互いの将来を発展させるべ く,信頼と将来を一緒に探索する継続を望みあう」と記された。

もし,

90

后が企業に求める価値観が,本稿の

2

章に概観した,「トップだけが全てを決めるのでな く,社員と経営者が一緒になって経営する企業文化・制度」などの日本の企業文化や就業観と相通ず るところがあるのであれば,日本企業にとって,有能な

90

后を多数雇用し,能力を発揮してもらう ことができる。

本稿は,このレポートに示された内容から,上記の課題を考察・試論する。

5

.『

2016

年中国最佳雇用主』のデータと分析・考察で示されていること

〈アンケート結果が示すこと〉

①理想的な企業

400

万人の

90

后(

85

后~

95

后)が就業先に望む企業文化・制度について,

18

の小質問の結果 が示された。(各項目にある数値は,レポートに示された,アンケート結果の重みづけの評点)

社員の尊重 福利厚生 公平原則 業績給与 企業文化 能力向上

全体 6.91 6.79 6.40 6.23 5.93 5.87

男性 6.89 6.85 6.46 6.11 5.92 5.99

女性 6.93 6.69 6.30 6.41 5.95 5.70

大学生 7.96 6.58 6.59 6.06 6.26 5.73

  健康な職場 企業の発展 人間関係 昇進機会 社員合意 合理的評価

全体 5.83 5.80 5.76 5.62 5.52 5.43

男性 5.69 5.92 5.75 5.56 5.52 5.34

女性 6.03 5.61 5.77 5.70 5.53 5.56

大学生 5.72 5.83 5.91 4.85 6.01 5.12

  昇給期待 体系的研修 快適な職場 コミュニ

ケーション 社会的使命 イノベーション

全体 5.23 5.13 4.96 4.69 4.00 3.91

男性 5.39 5.13 4.78 4.71 4.06 3.93

女性 5.00 5.14 5.22 4.66 3.91 3.88

大学生 6.74 3.66 4.91 4.01 4.22 3.83

小質問の

18

項目で上位にあるのは,「社員の尊重」,「福利厚生」,「公平原則」,「業績に応じた給 与」,「社員を引き付ける企業文化」,「個人の能力向上」である。

『新民周刊』の

2017

5

3

日記事「

Z

時代迷之奮闘観」には,

95

后の就業観の調査結果が載っ ている。

95

后の大学生たちが求める就業観の要素には,

32

%が「

10

年以内に自分が夢想する仕事を 始める」としており,「キャリアの発展機会」(

19

%),「職業の安定性」(

19

%),「友好的な就業環境」

(7)

10

%)を求めているのに対して,「より高い収入」を求めているのは

6

%でしかないことが記されて いる5

この

2

つの調査結果から見ると,

90

后の階層世代は, 公平で友好的 な職場で 仲間として尊重 されながら, 個々人が能力を向上できる環境 が提供されることを企業文化・制度に望んでいる。

それらの企業文化・制度に比べて, より高い収入 の度合いはあまり高くないと言えよう。

80

后の若者の就業観は,「より高い収入」を求め「いい収入を得られるなら,他の都市に転職する ことも厭わない」というステレオタイプ的なイメージで捉えられてきた。急激な経済発展や社会変化 の潮流の中で,「とにかく高い収入を得て,より豊かな消費をしたいと競争をしてきた。その為に高 いストレスを感じてきた」と松浦(

2008

年)は論じる6

しかし,「

90

后は前世代とは異なる人生観・就業観」を持つようだ。王(

2014

年)は,

80

后と

90

后の幼少期からの物質的な豊かさを比較した。

80

后の幼少期は,高額消費材(パソコン,冷蔵庫,

洗濯機,自動車等)を所有している家庭は少なく「物欲を満たす就業観・価値観」を求めるようになっ たが,

90

后は物心がつく前からこうした高額消費材に満たされ育ったという。

90

后は「物欲とは異 なる生きがい・就業観」を求める可能性もあろう。

また,前世代の ストレスが多い生き方 を見てきて,

90

后は異なる人生観・就業観を持つと渡 辺ら(

2013

年)は考察する。「①社会のルールと自分の利益を重ね合わせる」,「②

80

后の 唯我独尊 とは異なり, グループの中に仲間がいるという帰属感 , 緩やかなグループ主義 を持つ」,「③バ ンジージャンプのように, 飛び込んで自分を探す傾向 がある」(

pp. 3

5

)という。この渡辺ら(

2013

年)の考察は,前述した『

2016

年中国最佳雇主』の巻頭言の「 職場コミュニティ 時代の到来」に 相通ずるものがあろう。

このように捉えると,「計画経済時代の文化的な名残のある国営企業等で働いた

70

后」に,

80

たちは反駁して「会社は給料を稼ぐところ。より高い給料の会社があれば,他の都市に転職するのも 厭わない」という価値観・就業観を追い求めた。しかし,

90

后は

80

后の生き方・働き方に反駁して,

「職場に仲間意識を求める。職場の仲間との仕事を通じて,人生の価値を追い求める」という価値観・

就業観を追い求めたいという意識があるのではないであろうか。

言い換えると,

80

后は 個人主義(唯我独尊) で,飯田(

1998

年)が言うところの「米国的な 企業文化・就業観(会社は給料を稼ぐところ,より良い給料がもらえるところがあれば転職をする,

企業も人を育てるのでなく職能がある人を補充する)」という企業文化・制度を指向したが,

90

后は グループ主義 を就業観に求めており,「日本的な企業文化・就業観(ひとつのところに長く勤める,

会社は社員の潜在能力・顕在能力を研修などで発見し育む,会社の発展は自分の発展)」という企業 文化・制度を好む可能性があるのではないだろうか。

飯田(

1998

年)が概観した「日本的な企業文化・就業観」は,

Google

社等の米国企業に受け入れ られ広まったと言われるが,

Google

社の商品・サービスの創案制度や人事制度を積極的に参照して いると思われる企業名が,本稿

3

章に示した優良企業リストに並んでいると捉えられる。新興の

5 『新民周刊』の記事はhttp://www.xinminweekly.com.cn/News/Content/8778を参照。

6 松浦(2008年)によれば,調査対象の上海の80后の女性たちが「仕事に高いストレス」(27%)を感じ,「給料が低い・お 金が足りない」(14%)というプレッシャーを感じていた。

(8)

IT

・ネット通販と物流企業,格安航空を指向する航空会社,中国ならびに発展途上国が求める商品や サービスを展開する家電メーカーなどである。

上述した仮説(説明理論)が成り立てば,「日本企業は

90

后が求める就業観・人生観を充実させら れる環境を提供できる」とアピールして,有能な

90

后を惹き付け,その顕在能力・潜在能力を, グ ループ主義・集団主義 で曳き出せる,パフォーマンスの高い中国法人を創新できるのではないだろ うか。

②入社

3

年後への期待

職業技能向上 自己実現 自己完結 指導 ・ 管理者 昇進ステップ明示

全体 42 41 40 35 31

男性 39 40 37 38 27

女性 48 41 44 30 37

自己革新 専門家ポジション 自分の仕事 競争的境遇 社会に貢献

全体 20 19 18 18 8

男性 22 25 18 18 8

女性 16 8 19 17 7

「入社

3

年で,会社は自分をどこまで成長させてくれるか」という就業観について,

90

后たちは,

上記のような重みづけで考えている。「職業技能が向上していること」(

42

%),「自己実現(自分の価 値が上がっていること)」(

41

%),「自己完結(先輩の助けなしに仕事が簡潔できる)」(

40

%),「後 輩を指導する・管理する」(

35

%),「昇進ステップが明示されること」(

31

%),「自己革新ができる こと」(

20

%),「技術専門家になること」(

19

%),「自分の仕事(

Ownership

が確立される)」(

19

%),

「競争的境遇でやっていけること」(

18

%),「仕事を通じて社会に貢献できること」(

8

%)と表れてい る。

全体を通じて捉えられることは,「昇給・昇進をする為に何ができるようになれば良いのか」が明 示されて,その為に必要な「体系だった研修制度・育成計画」が明示される会社に就職して,「自分 を高めて活かしたい」ということであろう。

これも,日本的経営の企業文化と重なるものがあると感じられる。欧米的経営の企業文化では,「職 業技能」は入社前に個々人が学校などで体得するものであって,会社の研修で身につけるものではな い。

また,日本的経営では,長く働いてもらって管理者として育ってもらいたいという企業文化がある。

部門内の

OJT

や,他部門の職務をジョブローテーションの人事交流などで理解を深め,全社的な視 野で経営を洞察する人材を育てようとする企業文化がある。本稿

2

章の日本的経営の特徴の⑤に述べ たが,米国の労働者組合(ユニオン)の文化では「どこの会社で働いても給料が一緒」であり,また 雇用契約は厳格に決められた職務を行なうことで,管理職に下から昇進することもないというもので ある。「 職務技能を向上 させ, 指導・管理者 に昇進することを望む」という就業観を持つ

90

后 には,日本企業の文化・就業観に親和性があるのではないか。

日本企業が「 職業技能向上 や 指導 ・管理者への昇進することを望む

90

后」と「長期的な目

(9)

標を共有し実現」していくビジョンを構築し,アピールできれば,他企業に転職することを考えずに 長期に能力を高め発揮する人材の集合体になると考えられる。

③就業の安定性

〈転職回数〉

転職なし 13回転職 4回以上転職

男性 27 68 5

女性 38 58 4

〈現在の就業先での就業年数〉

5年以上 4年以上 13 1年未満

男性 10 15 46 29

女性 20 19 37 24

「転職なし」が女性では

4

割近くとなり男性でも

3

割近くとなっている。日本の若者の「

3

年以内 離職率は,大卒で

3

割強,短大卒・高卒で

4

割強」であるが,日本でも会社規模や業界によっては

50

%前後が離職する傾向もある。中国の

90

后たちの,離職率はまだまだ高いともいえるが,ひとつ の企業に長く働きたいという人材も少なくない7

「できればひとつの企業に長く就業したい」という意識があるのであれば,日本的経営の特徴の⑤ に示したように,米国的経営よりも日本的経営の企業文化の方が望ましいだろう。

なお,女性に特化した調査結果を示す別表からは,「入社から

5

年までは 仕事能力の向上 :

50

以上」が,「

5

年以上の者は 自己価値の実現 :

50

%以上」と,就業に求めるものがシフトしている。

「この会社に,私がいなくてはならない」という自己価値を高めたいと思うようである。渡辺ら(

2013

年)がいうところの「

80

后の 唯我独尊 とは異なり,

90

后は グループの中に仲間がいるという 帰属感 , 緩やかなグループ主義 を持つ」という価値観が当てはまりそうだ。

2

章で示した日本的経営の「⑥研修の充実」や「⑦プロジェクトやタスクフォースへの参加」を 通じて,

90

后が会社で 自己価値の発見・実現 を体感できるようにすれば,集団力の高い企業と なって,社員も企業も成長すると考えられる。米国的な「雇用契約書で決められた職務・職級の範囲 で働く」よりも,日本的な「入社後にタスクフォース参加やジョブローテーションを通じて,新たな 自己価値を発見し拡げられる」という企業文化・就業観は,

90

后が求める企業文化・就業観に近し いように捉えられる。

7 日本の若者の3年以内離職率は,厚生労働省の「新規学卒者の離職状況(平成253月卒業者)」を参照した。なお社員30 人以下の企業では大学卒の50%以上が3年以内に転職経験,サービス業の50%近くが転職経験をしている。高卒だと大学 卒よりも高い離職傾向を示している。就業先や学歴などによって,離職状況が変わるようである。 http://www.mhlw.go.jp/

stf/houdou/0000140526.html

(10)

④ベスト企業の評価要因の変化

1 2 3 4 5

2016年度 社員の尊重 社員合意の決定 契約 ・ 社会保険法準拠の雇用 個人の成長機会 就業後の昇給期待 2015年度 個人の成長機会 社員の尊重 契約 ・ 社会保険法準拠の雇用 就業後の昇給期待 社員合意の決定 2014年度 契約 ・ 社会保険法準拠の雇用 社員の尊重 就業後の昇給期待 個人の成長機会 社員合意の決定

社員の尊重 は

2014

年から

2016

年で毎年

1

位から

2

位にあるが, 社員合意の決定 という企 業文化が

2016

年では

2

位につけているのが特徴的である。

本稿

2

章の日本的経営の特徴に「①日本企業はトップダウンではなく,調整型」を示し,「④日本 企業では 会社は社員みんなのもの 」,「⑦ 情報の共有 が全社的にされる」という企業文化を示 したが,

90

后の若者たちは,「社員合意の決定がされる」企業文化を望むことから考えると,トップ ダウン型の米国的経営よりも社員の合意形成型の日本的経営の企業文化を好むと考察される8

⑤大学生の評価要因の変化

  1 2 3 4 5

2016年度 社員の尊重 就業後の昇給期待 公平の原則 福利厚生 企業文化 2015年度 社員の尊重 人間関係 公平の原則 福利厚生 企業の社会責任 2014年度 社員の尊重 人間関係 公平の原則 福利厚生 個人の成長機会 大学生の評価でも「社員の尊重」に重点が置かれている。「社内の人間関係」と「公平の原則」に も

3

年間ともに重点が置かれている。

従来のステレオタイプ的な中国人若者の就業観は,ゲゼルシャフト(利益社会)的な「給与が高い 企業」に就業したいというイメージが強かったが,ゲマインシャフト(家族的共同体)的な組織体で 就業したいという就業観なのだと考察できよう。

上述した

4

章の①②③④⑤のデータからは,「仲間意識に満ちた職場で,若い人々は仕事を覚えな がら,その組織で 欠くことのできない一員 (家族や仲間のようになる)となる。その背景には 公 平原則 があることが求められる」という就業観が思い描ける。本稿

2

章に挙げた日本の企業文化・

就業観の特徴に相通ずるものが感じられる。

⑥大学生たちの就職希望先

外資企業 国有企業 私企業 政府部門 国家機関 NGO 起業

女性 41.9 21.4 19.0 7.6 12.6 2.1 3.0 男性 31.5 22.2 21.6 9.4 9.7 0.7 4.9 非農戸籍 39.6 22.5 21.9 9.7 12.2 2.0 4.3 農業戸籍 31.3 18.8 16.3 6.4 10.3 1.1 3.8

8 なお, 法準拠の雇用契約・社会保険 2014年に1位になっているのは,「曖昧であった雇用契約や社会保険の制度に対 する意識が高まった」(北京の大学関係者の語り)とのことらしい。

(11)

大学生たちの就職希望先をみると,「

4

割の女性が外資企業を希望し,男性も

3

割が希望」となり,

国有企業や中国私企業よりも大きく超えている。

筆者が何人かの北京の大学生たちに聞くと,「中国企業は,入社する時も入社した後も,コネ(特 別な人間関係)が必要です。北京とかの大都市ではそうでもなくなっているけど,地方に行くとコネ がないものは本当に大変です。」という。こうした意識から鑑みると,「公平の原則」が満たされない 企業文化がステレオタイプ的にある「中国企業」よりも「外資企業」を志向するのかもしれない。

外資企業 国有企業 私企業 政府部門 国家機関 NGO 起業

211大学 40.3 22.7 15.8 8.7 7.1 0.8 4.6

985大学 34.4 20.6 19.2 7.0 13.4 1.7 3.6

なお,中国には

1000

以上の大学があるが,

100

校の「

211

重点大学:

21

世紀に向けて重点的に投 資していく大学」と,

39

校の「

985

工程:

211

大学の中で,中国の研究活動の質を国際レベルに挙げ るために特に選ばれた大学」がある。外資企業に就業希望するのは「

211

大学

40.3

%,

985

大学

34.4

%」である。

「中国の優秀な学生に就職してもらいたいが,なかなか希望者に出会えない。」という嘆きを,北京 にいる日本企業の経営者数名から聞いたが,

985

工程大学よりもセカンドレベルの

211

大学で勧誘活 動・採用活動をする方が,親和性が高いのかもしれない。

⑦収入分布の状況

2千元 24千元 46千元 68千元 81万元 11.5万元 1.52万元 2万元~

全体 4.7 32.7 27.2 12.2 7.0 7.4 1.9 6.9 女性 5.7 38.1 24.2 11.6 6.7 7.3 1.9 4.4 本調査

408

万人の

82

%が

30

歳以下となっているが,女性の収入は低く示されている(本資料は,

全体と女性しか出ていない)。「

4

千元以下が全体で

37.4

%に対し,女性は

43.8

%」となっており,「

6

千元以下が全体で

64.6

%に対し,女性は

68.0

%」である。学歴分布は,女性の方が大卒者が多く高 学歴であるのだが,収入状況は低めである。

また,「

2

万元~」を見ると,「全体が

6.9

%に対し,女性が

4.4

%」とある。全体は男女の平均を示 すことから換算すると,男性の

9.7

%(約

10

人に

1

人)「月収

2

万元~」で,年収

24

万元以上(日 本円で

400

万円以上の年収)であるのに対して,女性はその半分以下(

4.4

%)という割合である。

上述した⑥⑦のデータから見ると,日本企業が欧米企業のように「管理職社員に,一般工員とは格 差のある給与を支払う」ことができないのなら,男子より女子大学生に積極的に採用アプローチをか ける方が,「高給な企業に転職される」というジレンマが減少するのかもしれない。なお,上述の③ では「女性の方が転職せずひとつの会社に長くいる就業観」が示されている。

6

.むすび

6.1

 日本的経営の特徴が,中国人若者たちの就業観にマッチするのか?

2016

年中国最佳雇主』と関連資料に示された内容から,

90

后たちの就業観を上記のように考察 した。『

2016

年中国最佳雇主』の巻頭言が「

2016

年は 職場コミュニティ(職場社群) 時代の到来」

(12)

とまとめたように,

90

后たちの就業観は「

80

后の 個人主義 , 唯我独尊 とは異なり, グルー プの中に仲間がいるという帰属感 , 緩やかなグループ主義 を持つ」ものであると捉えた。そして,

90

后たちは,大学で学んだ専門(顕在能力)だけでなく,自分の中にある 潜在能力 を 仲間意 識の高い企業組織 の中で研修やさまざまなプロジェクト(仕事)を通じて発見し,人生を開花させ たい人生観・就業観を持つ傾向があるのではないかと考察した。

80

后の「いい収入を得られるなら,他の都市に転職することも厭わない」という就業観は,長く 日本企業に働いてくれないというミスマッチ(親和性が良くない)が発生する可能性があるが,

90

后の「グループの中に仲間がいるという帰属感」を持って「自己価値を見つけ高める」という就業観 であれば,日本企業にマッチする(親和性が良い)可能性が高いという考察を

4

章で行った。

特に,女性はひとつのところに長く働きたいという傾向があり,外資系企業への就業希望も高い。

男性は

10

人に

1

人は

2

万元以上(日本円で

32

万円以上)の給与をもらっているのに対して,女性 は

20

人に

1

人程度の割合であり,米国企業のように格差の激しい給与体系でない日本企業の人事制 度にもマッチしやすいように捉えられた。

本稿の「

90

后の就業観」に対する考察(仮説)の試みがずれていないとすれば,

21

世紀の大きな 市場を牽引する有能な若手人材を日本企業が獲得し,飯田(

1998

年)が整理した日本的経営・企業 文化をもって,若手人材の潜在能力・顕在能力を十二分に引き出すことができる可能性があるといえ よう。

渡邉ら(

2013

年)は,

90

后は「バンジージャンプのように, 飛び込んで自分を探す傾向 がある」

ともいう。インターネットを前提とした,あらたなビジネスモデルを模索していく上で,

90

后たち が創出するビジネスアイデアは,

20

世紀的なビジネスモデルに固執・成熟してしまった日本人経営 者には出ない画期的なものが出てくると期待できる。

6.2

 日本企業は,

90

后の

Z

世代に企業文化・制度をマッチしなければならない

しかし,日本企業は

90

后の潜在能力・顕在能力を十二分に引き出すには,企業文化・制度を変え ないといけない部分もあろう。日本企業が

90

后にマッチしないといけない,変わらないといけない 部分である。

2016

年中国最佳雇主』のレポートがあるサイトには,『

Harvard Business Review

(中国版)』のア ナリストの分析記事が掲載されている。その中で「グローバル企業の

CEO100

人へのアンケート回 答は

3

つのテーマに集中していたが,その一つに ミレニアム時代への対応 がある。 ミレニアム 時代への対応 とは即ち

90

后 のことである」と論考している。生まれた時からインターネット を駆使している階層世代を

Z

世代 と概観し捉えている9

そして,『

Harvard Business Review

(中国版)』は,世界的に急成長している

Hier

や,阿里巴巴(グ ローバル社員

4

万人,平均年齢

29

歳),

Tencent

(グローバル社員

2.7

万人強,平均年齢は

30

歳弱),

9 Z世代 は,新民周刊の「Z時代迷之奮闘観」(201753日記事),Forbes Japanの「Z世代とミレニアム世代,企業 が知っておくべき4つの違いとは」(2017116日記事)、東洋経済オンライン「Z世代について知っておくべき5つの こと、これまでとは全然違う10代の行動様式」(20151028日),WJSchroer Generations X,Y, Z and the Others を,インターネットで検索し参照した。(2017710日閲覧)。

(13)

百度(グローバル社員

5.5

万人,平均年齢

30

歳)等の中国のエクセレント・カンパニーの「

90

后の 戦力の経営的な位置づけ」と「

90

后が十二分に潜在能力・顕在能力を発揮できる就業環境の取組み」

を紹介している。

これらの企業では,

90

后たちが「 自分たちの会社 という精神をもって, 主体的な行動 をし ている」という。「管理者の命令に従う・待つのではなく, 社員たちが主体的に動く 」という企業 経営・就業観が顕在化しているという。

日本企業には「年功序列」の側面もあり,中高年社員たちが稟議制度で物事を決定する文化がある。

こうした「管理者の命令に従う・待つ」のではなく,「社員たちが主体的に動く」という就業文化・

制度を,中国の

Hier

,阿里巴巴,

Tencent

,百度などは実践し,東南アジアやアフリカ,欧米市場の ビジネスも活性化させているという。

日本のホンダも「ホンダ流ワイガヤ」で,世界に進出する為のビジネスアイデアや商品・サービス 開発を,現場の人たちと経営者が一緒になってやってきた。こうした企業文化を再考して,日本企業 は中国の現地法人で築き育むことができるであろうか。

グローバルビジネスの著名な監査会社のデロイト・トーマツの「中国市場における人事ガバナンス のあり方 日本人が誤解しがちな中国労働市場と就労観」(

2015

年)も,筆者と同様の考えを示して いる。「中国人の志向や労働市場を踏まえると,決して日本型モデルが否定されているわけではない。

つまり,人材を中長期的な視点で複数の職務を経験させ,

OJT

を通じて多様な能力を育成する。社 内人材の層を厚くしてマネジメント層を育成し,一体感のある強い組織を創る,という ヒト中心 の人材マネジメントモデルは中国においても有効と考えられる」という。

ただし,「中国人の特性を踏まえ,+αの工夫が必要となる」という。職務内容を明確にし,わかり やすい評価基準策定とフィードバック,日本人派遣者による徹底した育成,「

3

年しか派遣期間がな い駐在管理者 の 仕事意識の弊害 の影響」に気づくことなどが挙げられている。そして,山本 五十六の三つの名言を体現することを薦めている。「①やってみて,言って聞かせて,させてみて,

褒めてやらねば,人は動かじ」,「②話し合い,耳を傾け,承認し,任せてやらねば,人は育たず」,「③ やっている,姿を感謝で見守って,信頼せねば,人は実らず」の日本型モデルの人材育成・マネジメ ントの原点を省みて臨むべきだと記している。

こうしたビジョンを持つ就業環境を構築し,それを

90

后の大学生や実務経験のある転職者たちに アピールすることができれば,日本企業は中国の優秀な

90

后を多数採用して,集団力をもってビジ ネスを世界的に大きくすることができそうである。

本稿が,他の研究者ならびに中国ビジネスをする日系企業に役立つデータや考察を示したものにな れば幸いである。

参考文献

〈中国語文献〉

北京大学社会調査研究中心・智联招聘(2017年),『2016中国年度最佳雇主年度総報告』http://best.zhaopin.com/

(14)

Harvard Business Review2017年),『社群崛起,新雇主经济的演进』http://best.zhaopin.com/

新民周刊(201753日記事),「Z時代迷之奮闘観」,『新民周刊』http://www.xinminweekly.com.cn/News/Content/8778

〈日本語文献〉

飯田史彦(1998年),『日本的経営の論点―名著から探る成功原則』(PHP新書)

王静秋(2014年),「解剖中国市場 80 后と90后 学歴 ・ 所得 ・メディア接触7年の差」(Video Research Digest 2015. 3-4記事)

片山ゆき2016年),「中国の「さとり世代」―就職難で政府は躍起も,「別に…」で温度差」(ニッセイ基礎研究所2016-07-12記事)

デロイト・トーマツ(2015年),「中国市場における人事ガバナンスのあり方 日本人が誤解しがちな中国労働市場と就労観」(人 事・組織コンサルティングニュースレター Initiative Vol. 79記事)

Tokyo Panda2013年),『《80後・90後》中国ネット世代の実態』(角川SSC新書)

東洋経済(2015年),「Z世代」 について知っておくべき5つのこと これまでとは全然違う,10代の行動様式」(東洋経済ON- LINE20151028日記事) 

西村毅(2011年),「日本的経営の自己組織性に関する一考察」,『立命館大学人文科学研究所紀要2011-3 原田曜平・余蓮(2009年),『中国新人類・80後が日本経済の救世主になる!』(洋泉社)

Forbes Japan2017年),Z世代とミレニアル世代,企業が知っておくべき4つの違いとは」(Forbes Japan 2017116日記事) 

堀内弘司(2015年),『中国で生きる和僑たち そのトランスナショナルなビジネス・生活』(桜美林大学北東アジア総合研究所)

宮本文幸(2013年),「80后世代が今後の中国化粧品市場に与える影響についての考察」,『愛知大学国際問題研究所紀要(142, 2013-12

山谷剛史(2016年),「中国の若者「90后」」(ZD-Net Japan 20160412日記事) 

楊陽(2016年),「4.3人口移動・変動による消費の変化」,『変化する中国の小売業』(先週大学出版局)

渡辺達郎・流通経済研究所編(2013年),『中国流通のダイナミズム内需拡大期における内資系企業と外資系企業の競争』(白桃 書房)pp. 35

〈英語文献〉

WJSchroer, Generations X,Y, Z and the Others , http://socialmarketing.org/archives/generations-xy-z-and-the-others/

参照

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