免震ゴム支承の水平2方向復元力特性に関する 実験的検討と復元力モデルの比較
五十嵐 晃
1・党 紀
2・村越 雄太
3・伊東 俊彦
41正会員 京都大学大学院工学研究科 社会基盤工学専攻 准教授(〒615-8540京都市西京区京都大学桂)
E-mail: [email protected]
2正会員 京都大学大学院工学研究科 社会基盤工学専攻 特定研究員(〒615-8540京都市西京区京都大学桂)
E-mail: [email protected]
3学生会員 京都大学大学院工学研究科 社会基盤工学専攻修士課程(〒615-8540京都市西京区京都大学桂)
E-mail: [email protected]
4正会員 (株)奥村組東日本支社(〒108-8381 東京都港区芝5-6-1) E-mail: [email protected]
本研究では,一定鉛直荷重と水平2方向載荷を受ける高減衰ゴム免震支承の水平1方向および水平2方 向載荷実験を行った.実験では,高減衰ゴム支承(HDR−S)の試験体を用い、水平1方向および2方向の 静的,仮動的載荷を実施し,水平2方向載荷された免震支承の復元力履歴および地震応答を得た.さらに,
適切に免震支承の2方向復元力特性を求められる数値手法を検討するため,バイリニアモデル,MSSモデ
ル,Park-Wenモデルを用い,解析パラメータを1方向静的載荷結果により同定し,静的および動的解析を
行い,実験結果との比較により,これらの解析手法の適用性を検討した.
Key Words : Elastomeric bearing, high damping rubber bearing, HDR-S, pseudodynamic test, bi- directional loading, seismic response
1. はじめに
大地震時の安全性および震後の交通機能の確保のため,
数回の大地震に耐え,大地震が発生しても補修ないし直 ちに通行できる地震性能を持つ橋梁が求められている.
その中でも,免震支承を導入した免震橋は,水平力の分 散,長周期化および高減衰化により地震作用の影響を低 減し,地震応答による応答変形は支承部に集中させるこ とで他の構造部材の大変形とそれに伴う損傷が制御され ることから,大地震直後に道路橋や鉄道橋として機能す る性能を高い信頼性で保持する橋梁構造であると考えら れる.実際,1995年兵庫県南部地震においてRC橋や鋼 橋の大きな損傷が生じたことと比較すると,例えば 2011年東北太平洋沖地震においては,新たな課題が指 摘されてはいるものの,免震橋の損傷は比較的軽微なも のに留まったと言える.また,既存橋梁の耐震補強の手 段として,下部構造の橋脚および基礎の大規模の補強を 避け,橋梁に作用する地震荷重を軽減する方法として,
免震化による補強も広く用いられている.
現在,減衰性能を持たせたゴム支承として用いられて いる免震ゴム支承としては,鉛プラグ入り積層ゴム支承
(LRB) と,高減衰ゴム支承の2つの系統が主流である.
一般に,高減衰ゴム支承は,載荷される面圧の増加によ り等価剛性が低下し等価減衰がやや上昇する一方で,最 大ひずみの増加に伴い,等価剛性と等価減衰が共に減少 するなどの特性がある.免震橋は,免震支承の変形性能 と履歴減衰性能に依存した構造物であり,その地震時性 能および地震後の使用性能を満足するために,免震支承 の復元力―せん断変形履歴特性を把握し,適切に反映さ れた設計法を用いることが必要である.
現行の道路橋示方書における橋の免震設計においては,
免震支承の復元力特性をバイリニアモデルあるいは等価 線形化法などでモデル化し,橋軸方向と橋軸直交方向に おいてそれぞれ1方向の非線形復元力モデルを適用する 手法が採用されている.例えば,免震ゴム支承にサイド ブロックを設置することで支承の橋軸直交方向の変形を 制限した一般橋の場合,支承に橋軸方向の1方向の復元 力モデルを用いた手法で設計することは合理的である.
土木学会 第32回地震工学研究発表会講演論文集(2012年10月)
しかしながら,例えば曲線橋で2方向免震が適用された 場合などでは,橋の地震応答が,卓越する主軸方向(橋 軸方向または橋軸直角方向)の応答により評価できる前 提が成立せず,支承についても水平任意方向の変形およ び復元力特性を考慮した設計が必要となる.
ゴム支承の復元力特性を検討するための載荷実験方法 として,準静的または動的な繰返し載荷試験やハイブリ ッド実験が挙げられる.一般的な水平1方向載荷実験に 基づく検討に比べて少数ではあるが,こうした実験にお いて一定面圧下における水平2方向の載荷を適用し水平 面内の2次元的な復元力特性や限界値を検討した研究は 過去においても行われている.中でも山本ら1)は,実大 高減衰ゴム支承(HDR) の水平2方向載荷実験を行い,水 平2方向に同時に載荷された場合の免震ゴム支承の復元 力履歴曲線は,一方向載荷の場合と大きく異なることを 示している.
その一方で,ゴム材料の構成則やレオロジー的な非線 形力学モデルなどに基づきゴム支承の2次元的復元力特 性の数値モデルを提案した研究として,阿部ら5),菊池 ら6),Grantら7)が挙げられるが,これらのモデルは含ま れる同定が必要なモデルパラメータの数が比較的多く,
定式化も相対的に複雑な式で表現されている.定式化の 複雑さや実務的設計計算への適応の容易さの尺度におい て,道路橋示法書等で想定する計算で一般的に用いられ る水平1方向のバイリニアモデルを2つの方向に独立に 適用するモデルと上述の詳細モデルの間に,また別の考 え方の水平2方向モデルが提案されているが,これらの モデル化手法を横断的に比較する形で,設計計算への適 用性,ゴム支承の実挙動の表現精度の両者の観点から総 合的な検討や位置付けは明確化されているわけではない.
そこで本研究では,水平2方向に載荷された高減衰ゴ ム支承の復元力特性モデルとして代表的なマルチせん断 ばね(MSS)モデル,Parrkらのモデルに着目し,従来 のバイリニアモデル非線形解析などの解析手法を用いた 解析結果および実験結果の比較より,これらの解析手法 の水平2方向に載荷される免震支承の地震応答解析にお
ける適用性を検討したものである.復元力特性を比較す る条件として,レベル2地震に対する照査を想定してひ ずみ250%のレベルの水平2方向面内における変位軌跡 を設定した場合と,免震橋梁を想定した簡易モデルに基 づく2方向地震応答を考え,それぞれゴム支承試験体に 対する2方向準静的載荷試験と仮動的実験(ハイブリッ ド実験)を実施することで得られた結果と各モデルに基 づく動的解析の結果の比較を行った.
2. 実験計画
(1) 実験供試体
本研究では,高減衰ゴム(HDR-S)を使用した免震ゴ ム支承試験体2基を用いた.試験体の寸法図を図−1に,
実物のイメージを写真−1に示す.各ゴム層の平面寸法は 160mm×160mm,1層のゴム層厚10mm,全4層でゴム総厚 は40mmとなる.また,せん断弾性係数はG10 (1.0N/mm2) で,1次形状係数,2次形状係数はともに4.0である.こ れらの試験体の諸元を表−1にまとめて示す.
(2) 実験装置
本研究では,図–2に示す3次元載荷システムを用い,
1方向実験,2方向実験およびハイブリッド実験を実施 した.同図に示すように,この載荷システムは,鉛直方 向5本,水平方向4本,計9本の電気油圧サーボ式アクチ ュエータを用い,水平2軸,鉛直軸および3軸回転,合計 6自由度の載荷が可能である.X,Y,Zの各軸の方向を 図-2に示すように定義するものとして,水平X,Y軸方 向のアクチュエータは,最大荷重±10tf,ストローク
±100mmで,鉛直のZ軸方向のアクチュエータは圧縮側 最大荷重30tf,引張側最大荷重15tf,ストロークは
±100mmとなっている.
3次元的な試験体の載荷においては,X,Y,Z軸各々 のアクチュエータ3本の荷重および変位をPCに読み込み,
試験体の3次元変形とともに,アクチュエータの傾斜角
2@55=110
2@55=110
160 170
170 160
Cover Steel Plate 19mmx2 Inner Steel Plate 2.3mmx3 HDR t=10x4=40
Cover Ruber 2mmx2
88.9
(a) 平面図 (b) 断面図
図–1 ゴム支承(HDR-S)試験体 写真−1 ゴム支承試験体外観
による変位と荷重の誤差を補正している12), 13).
(3) 実験計画
本研究では,上述の高減衰ゴム支承試験体に対して,
一定面圧6 MPaの条件での水平1方向,2方向の静的載荷 およびハイブリッド載荷実験,計4種類の実験を行った.
高減衰ゴム支承試験体の復元力履歴に対する影響が少な くゴム体に著しい損傷が生じないと見なされる載荷振幅,
回数の範囲内で,各試験体に対して複数項目の載荷を行 うものとした.
各試験体に対して実施した実験を表–2にまとめて示す.
試験体1に対しては,まず最大振幅70mm(せん断ひず み175%)までの漸増繰り返し両振り1方向静的載荷を 行い,次に兵庫県南部地震JR鷹取駅記録(観測波)を入 力として用いた水平2方向載荷ハイブリッド実験,およ びX(NS成分入力)およびY方向(EW成分入力)を個 別に用いた水平1方向載荷ハイブリッド実験を実施し,
最後に,半径90mm(せん断ひずみ225%)の円形変位軌 跡を描く水平2方向載荷を行う.試験体2に対しては,
せん断ひずみ175%までの両振り漸増1方向載荷の後,最 大せん断ひずみが175%に相当する大きさの正方形変位 軌跡2方向載荷を行い,最後に,JMA神戸記録(観測波)
を用いた水平2方向および1方向載荷ハイブリッド実験 を実施する.
各種類の実験の載荷方法を以下に述べる.
(4) 静的載荷実験
a) 水平1方向静的載荷実験
任意の水平方向に一方向直線載荷された場合の復元力 特性を調べるため,表-2の実験番号欄に示す順に,試験 体のX方向,Y方向の直交2方向の1方向載荷実験,およ び斜め45°方向での1方向載荷を行う.最後に,これら の複数回の載荷が試験体の復元力履歴特性に与える影響 を調べるため,2度目のX方向の1方向載荷を行った.各 水平1方向載荷では,載荷軸において,振幅がせん断ひ ずみ25%,50%,100%,150%,175%となるように,変 位10mm,20mm,40mm,60mm,70mmの両振り載荷を1 サイクルごとに実施した.
b) 水平2方向静的載荷実験
水平2方向載荷実験では円形および正方形の変位径路 を用い,2パターンの載荷を行った.
x y z
図-2 3次元載荷システム
表-1 供試体諸元
超高減衰ゴム支承
平面寸法(mm) 160×160
せん断弾性係数(MPa) 1.0
ゴム層数 4
1層のゴム層厚(mm) 10 内部鋼板数 3 内部鋼板厚(mm) 2.3
1次形状係数 4 2次形状係数 4
試験体1 試験体2
実験
①
水平1方向静的載荷: 1.X方向(1回目)
2.Y方向 3.斜め方向 4.X方向(2回目)
水平1方向静的載荷 1.X方向(1回目)
2. Y方向 3.斜め方向 4.X方向(2回目)
実験
②
仮動的実験(JRT) 1.NS方向実験 2.EW方向実験 3.水平2方向実験
水平2方向静的載荷
(正方形)
実験
③
水平2方向静的載荷
(円形)
仮動的実験(JMA) 1. NS方向実験 2. EW方向実験 3.水平2方向実験
円形経路載荷では,まず,X方向に90mm(せん断ひ ずみ225%)まで載荷し,その後,原点からの経路半径 を一定に維持しながら,反時計回りに3周の水平2方向円 形載荷を行い,最後にX軸上で原点に戻るように載荷し た.
正方形経路載荷では,まず,X方向に50.5mmまで載荷 し,次に,Y方向に50.5mmの変位まで載荷する.このと き,X,Y方向軸への試験体の投影最大変形はともにせ ん断124%となるが,正方形軌跡の頂点での斜め45°方 向において,最大値のせん断175%となる.同じ軌跡で 反時計回りに2周の載荷を行い,最後にX軸上で原点に 戻るよう載荷を行った.
(4) 仮動的実験(ハイブリッド実験)
本研究で行う仮動的実験(ハイブリッド実験)で用い られた想定構造系モデルは,単純化のため1つの集中質 点で表された免震橋の上部構造質量が支承部で支持され た形の1質点−ばね系にモデル化した.支承の変形が構造 系の動的応答の評価において支配的であり,橋脚を含む 下部構造の変形は充分に小さく,無視できると仮定して いる.1方向静的繰り返し実験で得られたせん断ひずみ 175%時の等価剛性と,以下に示す相似率および上部構 造の重量から求めた橋梁モデルの固有周期は,1.97秒と なっている.相似率は,S=5すなわち実大構造物が試験 体の5倍の大きさを持つことを想定している.上部構造 の質量は,免震積層ゴム支承の一定面圧(6MPa)に相 当する軸力が153kNとなることから,実物モデルの上部 工重量を392tfと仮定した.
仮動的実験における時間数値積分では,地震波の時間
刻み =0.01secを用いた.静的実験で得られた免震支承
の初期剛性に相似率5を乗じた想定初期剛性から算出し た予測子変位を5分の1に縮小して試験体に載荷し,計測 荷重値に25を乗じた復元力値を用いた修正計算により当 該ステップ応答を得る.この手順を繰り返すことで,構 造系の対象時間に渡る応答時刻歴を求める.
また,仮動的実験における地震入力として,1995年兵 庫県南部地震のJR鷹取駅記録(以下,JRTと表記)およ び神戸海洋気象台記録(以下,JMAと表記)を用いた.
2方向実験では両試験体ともに,NS方向の地震波をX方 向に,EW方向の地震波をY方向への入力とした.
3. 実験結果と観察
(1) 水平1方向載荷実験の結果
水平1方向静的載荷実験で得られた復元力-変位履歴 曲線を図-3に示す.試験体に対して,1. X方向載荷;2.
Y方向載荷;3.斜め45度方向載荷;4.X方向載荷の順 に,4種の載荷を行った.
第1回のX方向載荷では,同図(a)に示すように,その 後の載荷結果より復元力がやや大きい履歴ループとなっ ている.本実験では製造後の予備載荷が行われていない 試験体を使用していることもあり,このような履歴は処 女載荷時のゴムのMullins効果によるものと解釈される.
さらに同図に示すように,初めにX方向に載荷し,次い でY方向に載荷した場合は,Y方向における履歴曲線に 大きな初期剛性は見られず,安定的な履歴形状を示して いる.水平2方向載荷時では,ある1方向に載荷した場合,
その直交方向においてもMullins効果が生じ処女載荷の特 徴が見られなくなることを示している.
試験体1と試験体2を用いた実験で得られた等価剛性 と等価減衰定数 をそれぞれ図-4に示す.各試験体 とも等価剛性 ,等価減衰定数 の違いはほとんど 見られない.
(2) 水平2方向載荷実験
水平2方向の円形経路載荷および正方形経路載荷で得 られた復元力履歴をそれぞれ図-5と図-6に示す.図中 では,水平2方向載荷実験の結果に加えて,上述の2回 目のX方向載荷の結果を破線で併せて示している.
図に示すように,円形経路載荷で得られた復元力履歴 ループは全体に丸みを帯びた形状になり,ゼロ変位での 切片荷重が1方向載荷に比べ2倍以上となっている.なお,
復元力履歴ループ上に多少の荷重の変動が見られるのは,
円形載荷時に微小の2方向変位ごとに載荷を一時停止し ているため,停止時の復元力緩和に伴う荷重低下があっ たためである.
正方形経路載荷では,X,Yの両方向の復元力履歴ル ープにおいて,最大変位を保ったまま荷重が低下してい る.これは, X方向に載荷し変位を与えた後,X方向の 変位を維持したままY方向への変位を与えるため,X方 向における荷重成分が変化し低下しているものである.
また,図-5に示すように,水平2方向載荷による復元 力履歴ループは,初期のサイクルでは1方向載荷時の結 果とほぼ重なるが,その後のサイクルの復元力履歴ルー プでは,荷重値が大きく,包絡した面積で表される吸収 エネルギーも大きい.
以上のように,水平2方向載荷の場合,高減衰ゴム支 承の復元力履歴ループの形状は,一方向載荷の場合と違 なる特徴が現れる.円形軌跡のケースと正方形軌跡の間 でも異なる特性が見られるものの,これは,水平2方向 載荷の場合,X,Y方向および合成ひずみが1方向載荷時 より大きくまた軌跡形状により異なることや,大変形時 に生じるハードニングの発現に影響していることも関係 していると推測される.
t
(a)等価剛性 (b)等価減衰
図-4 水平1方向載荷実験の結果
(a)X方向(1回目)とY方向載荷 (b)斜め45度方向とX方向(2回目)載荷 図-3 試験体1の水平1方向載荷実験結果
(a) X方向 (b) Y方向
図-5 水平2方向円形軌跡載荷実験の結果
(a)X方向 (b) Y方向
図-6 水平2方向四方形載荷実験の結果 -80
-60 -40 -20 0 20 40 60 80
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80
Force(kN)
Disp.(mm)
1.X方 向
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80
Force(kN)
Disp.(mm)
3.斜め方向 4.X方向
0 0.5 1 1.5 2
0 50 100 150 200
等価剛性Keq (kN/mm)
せん断ひずみ(%) 試験体1
試験体2 0
10 20 30
0 50 100 150 200
等価減衰heq (%)
せん断ひずみ(%) 試験体1 試験体2
-90 -60 -30 0 30 60 90
-100 -75 -50 -25 0 25 50 75 100
Fx(kN)
Dx(mm)
円形載荷 1方向…
-90 -60 -30 0 30 60 90
-100 -75 -50 -25 0 25 50 75 100
Fy(kN)
Dy(mm)
円形載荷 1方向…
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80
-100 -75 -50 -25 0 25 50 75 100
Fx(kN)
Dx(mm)
四方形載荷 1方向載荷
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80
-100 -75 -50 -25 0 25 50 75 100
Fy(kN)
Dy(mm)
四方形載荷 1方向載荷
山本ら1)は,高減衰ゴム支承の復元力の方向が支承中 心点の向きからずれることによりねじれモーメントが発 生し,支承にねじれ変形が生じることを指摘している.
このような現象は,写真-2に示される試験体の様子から も確認できる.
(3) 仮動的実験
水平1方向仮動的実験および2方向仮動的実験から得ら れた復元力履歴曲線を比較したものを,図-7および図-8 に示す.これらの実験結果においては,支承の応答は水 平2方向載荷の場合のものが1方向載荷の場合よりも小さ いことが観察される.JRT入力の場合,支承の最大せん 断変形は175%(70mm)を超えているのに対し,JMA入力 を用いた場合は100%以下である.また,JRT入力を用い た場合1方向載荷と2方向載荷の最大応答変位の差が大き く,NS方向とEW方向ではそれぞれ13%と24%の差が見 られるのに対し,JMA入力を用いた場合はこの相違が 6%であった.これは,JMA入力の場合応答変形が小さ く非線形化の度合いが相対的に低いことが,1方向載荷 と2方向載荷の差が小さい結果となっていることが考え られる.逆にJRT入力の実験結果において復元力履歴の 相違がやや大きいのは,地震波JRTを用いた実験では,
支承の応答変位が大きく,復元力のハードニングを始め とするゴム支承の非線形挙動の影響が大きいことに起因 していると考えられる.
1方向仮動的実験の場合,図中の破線で示すように,1
(a)NS方向結果 (b) EW方向結果
図-8 地震波JMAを用いた水平1方向および2方向載荷仮動的実験の結果 (b) EW方向結果 (a) NS方向結果
図-7 地震波JRTを用いた水平1方向および2方向載荷仮動的実験の結果 -80
-60 -40 -20 0 20 40 60 80
-100 -75 -50 -25 0 25 50 75 100
Fx(kN)
Dx(mm)
2D NS 1D NS
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80
-100 -75 -50 -25 0 25 50 75 100
Fx(kN)
Dx(mm)
2D NS 1D NS 写真-2 水平2方向円形経路載荷中の試験体
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80
-100 -75 -50 -25 0 25 50 75 100
Fy(kN)
Dy(mm)
2D EW 1D EW -80
-60 -40 -20 0 20 40 60 80
-100 -75 -50 -25 0 25 50 75 100
Fy(kN)
Dy(mm)
2D EW 1D EW
方向静的載荷時の結果と似た復元力履歴ループとなって いる.2方向仮動的実験の結果は,水平2方向円形経路 載荷や正方形経路載荷の場合のような特異な履歴ループ 形状とはなっていないものの,1方向仮動的実験に比べ てせん断ひずみの小さい領域では荷重がやや大きな値と なっているという特徴は,静的載荷実験での傾向と共通 する点である.水平2方向載荷の場合, 2方向にせん断 ひずみが生じることから,応答変位は1方向載荷の場合 より小さいにも関わらず,合成せん断ひずみは1方向載 荷時と同様のレベルに達している等の状況が推測される.
4. 対象とする復元力モデル
本研究で対象とする積層ゴム支承の2方向復元力特性 を表現する3種類の数値モデルの概要に関して述べる.
対象とする復元力モデルは,①1方向のバイリニアモデ ルを各方向に適用したもの②Multi Shear Springモデル
(MSSモデル)③Park-Wenモデルである.①は,現在 の道路橋の照査で用いられているモデル化に対応するも のと見なされ,②は現在まで広く知られており,2方向 復元力モデルを必要とする場合にはしばしば用いられて いるモデルである.③は簡便な2方向モデルとして単純 な方程式で表現できるよう提案されているモデルである.
これらは全て基本的にバイリニア型の復元力特性を表現 する事ができるモデルであるが,2方向の復元力特性の 相関は②および③では考慮しているのに対し,①では考 慮されていない.
(1) バイリニアモデル
道路橋示方書では,高減衰ゴム支承の動的照査におい て,図-9に示すようなバイリニアモデルを用いる解析方 法を記述している.ただし,支承の剛性 は,それぞれ 弾性域における初期剛性 および塑性域における2次剛 性 となる.振動解析における免震支承の復元力は,
下記の式(1)および式(2),(3)で与えられるK1, K2を用いて 変位復元力関係を与える.
∆ (1)
/ (2)
(3)
ここに, および はそれぞれ計算ステップnおよび n+1における復元力,∆ はステップn+1における変位増 分, , はそれぞれ降伏荷重および降伏変位, は2 次剛性比である.
図-9 バイリニアモデルの概要
バイリニア復元力履歴を計算する場合,降伏変位,降 伏荷重および2次剛性比の3つのパラメータを定める必 要がある.高減衰免震ゴムには,初期載荷からのMullins 効果,大ひずみ領域におけるハードニング効果などを有 し,パラメータのひずみおよび履歴依存性を考慮した係 数を導入すると,解析の結果はより精確になる.
本研究の各試験体に対する載荷では,あらかじめ,
175%ひずみまで一回静的載荷を行ってから地震応答を 得る仮動的実験を実施したため,Mullins効果が地震応答 に与える影響は少ないと思われる.
なお後述のように,円形載荷実験を除いては,各実験 で載荷された最大せん断ひずみは試験体に回復できない 変状を与えないと考えられる175%以下に制限している.
そこで本研究では,簡便のためこれらの効果を無視し,
バイリニアモデルにおける履歴パラメータを一定値とし ている.パラメータ , および の値は,1方向静的 繰返し載荷実験で得られた復元力履歴を用い,実験と解 析で得られた履歴曲線の残差が最小となるように,フィ ッティング計算によって定めている.
(2) MSSモデル
構造物や免震支承が水平面内に2方向荷重を受ける場 合の非線形解析では,MSSモデルがしばしば用いられて いる2).MSSモデル,すなわちマルチせん断ばねモデル は,図−10に示すように,水平面内にn本のせん断ばねを 等角度間隔で配置し,水平2方向復元力履歴をこのn本ば ねの合成作用により計算するものである.
各ばねのばね力-変形における復元力履歴関係として,
バイリニアモデル,菊地モデルや山本モデルを用いる場 合の検討も行われているが,現在までのところ楕円形水 平2方向静的載荷の実験結果との比較に限定されており,
他の載荷軌跡パターンで水平2方向載荷する場合や,地 震応答の場合については未検討である.本研究では,実 務的観点から,MSSモデルの各ばねに,最も単純なバイ リニアモデルを適用した場合のみを検討対象とする.
K
2K
1F0
0F
図−10 MSSモデルの概要
MSSモデルの適用に当たっては,まず水平2方向変位 ( , )から各ばねのせん断変形を求める.例えば,X軸 から角度 に配置した 番ばねの水平せん断変位 は下 記の式で算出する.
(4)
ただし,各ばねを図−10のように同角度間隔Δ で配置す る場合は
1 Δ (5)
となる.
各ばねの変形 が与えられれば,各ばねのバイリニア モデルからばね力 を算出できる.各ばね力fiより,水 平2方向復元力成分Fx, Fyが次式により得られる.
∑ (6)
各ばねのパラメータ , , , および を与える ことでバイリニアばね力−ばね変形関係が図-11(a)に示す ように定められ,このばねを8本配置したMSSモデルに おいて,水平1方向変位を与えた場合の水平復元力−水 平変位関係は図-11(b)のようになる.図に示すように,
水平1方向変位の場合には,バイリニアMSSモデルで算 出される復元力-せん断変形関係は,やや滑らかなバイ リニア履歴曲線となる.本研究では,MSSモデルの各ば ねのパラメータは,水平1方向載荷時のゴム支承の倍リ ニアガタ履歴復元力特性で定められる , および が,
両者で同じとなるように設定する.2次剛性比について は,1方向変位時の2次剛性比 をそのままばねの2次剛 性比として用いるが,各ばねの降伏点は下記の関係を用 いて設定する.
∑ cos / ∑|cos | (7)
/ ∑|cos | (8)
(3) Park-Wenモデル
2方向の相互作用を考慮できるモデルとして,Parkら が提案したモデル3)は,多自由度のばねや分割の手順を 経ずに,2方向でのバイリニア型の非線形履歴特性を表 現することができる.このモデルは1方向復元力履歴特
性を表すBouc-Wenモデル4)を2方向に拡張したモデルとな っている.Bouc-Wenモデルによる復元力は式(9),(10)で 表される.
α 1 α (8)
A (9)
ここに, は時間
t
における復元力,αは2次剛性比,, はそれぞれ
t
における変位および変位増分,, はそれぞれ履歴変位(長さの単位を持ち,変位 の履歴に依存する)およびその時間的増分である.
なお,履歴パラメータ は常時は1とする. (=0.041) は履歴形状を規定するパラメータである.
Parkらは,このモデルを2方向加振を受け2方向に応答
する構造物の復元力履歴特性を表現できるよう拡張する ため,次式で表す方法を提案した.
α 1 α (10)
た だ し , , は 復 元 力 ベ ク ト ル , , は変位ベクトルである. , は履歴変 位ベクトルであり,下記のように計算される.
A
(11)
A
(12)
X Y
Spring Spring
Spring
Fixed Base
0
0 1
1
(a)せん断ばねの復元力履歴
(b)MSSモデル全体の復元力履歴
図−11 MSSモデルの復元力特性
0
0 1
1
例として,Park-Wenモデルに対して図−12(a)に示す変位 履歴を入力した場合の復元力-変位履歴関係を計算した 結果を,図-12(b)に示す.
5. 復元力モデルの検証
(1) 任意水平1方向載荷時の等方性
水平1方向載荷実験の結果より,一定鉛直荷重下での 任意水平方向への直線1方向載荷に対しては,Mullins効 果の影響を除き,高減衰ゴム支承の力学挙動は等方性を 持つことを示していると考えられる.従って,水平任意 方向における免震支承の降伏荷重を示す降伏曲面は半径
の円形になると仮定できる.
これに対し, X方向とY方向(それぞれ,例えば橋軸 方向および橋軸直角方向と想定する)に独立な2つのバ イリニアモデルを組み合わせたモデルでは,各方向にお ける降伏荷重を表示した降伏曲線は,幅 の正方形と なり,この等方性を満たしていない.また,橋軸方向お よび橋軸直交方向の履歴曲線は,免震支承の1方向載荷 時の復元力特性に等しくなるが,斜め45°方向の復元力
の降伏強度は√2F0となり,過大に見積もることになる.
一方,Park-Wenモデルは,等方性を持っており,降伏
曲面は半径 の円形である.MSSモデルは近似的な等方 性を持ち,降伏曲面は, 本ばねを持つ場合,正 角形 となり,半径 の円を近似的に表現したものとなる.
(2) 水平2方向静的載荷時の履歴曲線
水平2方向円形軌跡および正方形軌跡静的載荷の条件 を仮定したゴム支承の復元力履歴曲線を,バイリニアモ デル,MSSモデルおよびPark-Wenモデルで算出し,その 結果を実験結果と比較したものを図-13,図-14に示す.
前述のように,水平2方向載荷の場合,水平1方向載荷 の場合よりも大きな復元力を持つ履歴ループとなる.水 平2方向の相互作用を考慮していないバイリニアモデル の他,MSSモデルおよびPark-Wenモデルでも実験で見ら れる水平2方向載荷による復元力の増大を再現できてい ない.
表-3に,各復元力モデルによる算出結果の,実験結果 と比較した寄与率を示す.各モデルの解析結果では,円 形軌跡載荷において,ほぼ同様な寄与率0.7が得られ,
水平1方向載荷実験の条件に基づく算出結果の寄与率 0.97を大幅に下回っている.正方形軌跡載荷の場合,
MSSモデルとPark-Wenモデルによる寄与率は,バイリニ アモデルと比較してやや大きいが,0.9を下回っている.
なお,正方形軌跡載荷時の寄与率が円形軌跡載荷時と比 較して大きいのは載荷径路の影響が含まれている可能性 があるものの,最大せん断ひずみの大きさが異なるとい う相違もあり,ハードニングが生じるレベルのひずみの 影響は円形載荷時の方が顕著であることがより支配的で ある可能性もある.
以上のように,3つの復元力モデルは,いずれもゴム 支承の大変形領域における復元力特性を考慮したもので はないため,175%を超えてハードニング現象が起こる ようなせん断ひずみ領域においては,いずれのモデルで も水平2方向載荷におけるゴム支承の復元力履歴の高い 精度での再現は困難と考えられる.
-60 -40 -20 0 20 40 60
0 1 2 3 4 5
時間[s]
変位[mm]
-50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50
-50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50
変位[mm]
復元力[kN]
1
(a) 入力波形
(b) 復元力-変位履歴曲線
図−12 Park-Wenモデルの復元力-変位履歴曲線
表-3 各手法の水平2方向静的解析結果(寄与率) 載荷方法
円形載荷 正方形載荷 X方
向
Y方向 X方向 Y方向 バイリニア 0.749 0.698 0.707 0.689 MSSモデル 0.751 0.706 0.847 0.858 Parkらのモデル 0.753 0.699 0.881 0.890
(3) 地震応答 a)水平1方向応答
バイリニアモデル,MSSモデルおよびPark-Wenモデル を用いた動的解析結果と,水平1方向仮動的実験で得ら れた復元力履歴を比較したものを図-15,図-16に示す.
1方向地震入力に対する応答に関しては,3種類の解析手 法はほぼ同様の結果を与えている.これらの動的解析で 得られた応答変位は,いずれも1方向実験で得られた結 果と大きな差は見られない.表-4には,各復元力モデル で得られた最大応答変位の,実験で得られた値に対する 比で表示した応答比を示す.実験結果と比較して,最大 応答変位については,各復元力モデルでの動的解析の結
果はほぼ同一である.ただし,残留変位に関しては,す べての復元力モデルにおいて残留変位が著しく小さい結 果となっているのに対し,仮動的実験で得られた残留変 位は,無視できない大きさとなっている.
各復元力モデルを用いた動的解析で得られた履歴復元 力は,ハードニングが顕著となる200% (80mm) 付近では 復元力をやや小さく評価しているのに対し, JMA入力 のケースのように応答変形量が小さい場合には,逆に復 元力を過大に評価している.最大応答変形に依存した復 元力特性を与える修正バイリニアモデルを用いることで この問題を改善できると考えられるが,ここでは検討し ていない.
b)水平2方向応答
水平2方向の地震動を入力として動的解析を行って得 られたゴム支承の履歴復元力の算出結果と,仮動的実験 による結果を比較したものを図-15,図-16に示す.バイ リニアモデルによる解析は,1方向ずつ独立に地震動加 速度入力を行い解析を行う方法であり,2方向の相互作 用が考慮されていないため,前節と同じ解析結果である.
2方向相関を考慮したモデルであるMSSモデルおよび
Park-Wenモデルに基づく解析結果と,2方向相関を考慮
(a)X方向 (b) Y方向
図-14 水平2方向四方形載荷実験と解析の比較
(a) X方向 (b) Y方向
図-13 水平2方向円形載荷実験と解析の比較 -100
-75 -50 -25 0 25 50 75 100
-100 -75 -50 -25 0 25 50 75 100
荷重(kN)
変位(mm)
X方向
実験
バイリニアモデル MSSモデル
Park-Wenモデル -100
-75 -50 -25 0 25 50 75 100
-100 -75 -50 -25 0 25 50 75 100
荷重(kN)
変位(mm)
Y方向
実験
バイリニアモデル
MSSモデル
Park-Wenモデル
-100 -75 -50 -25 0 25 50 75 100
-100 -75 -50 -25 0 25 50 75 100
荷重(kN)
変位(mm)
X方向
実験
バイリニアモデル
MSSモデル
Park-Wenモデル -100
-75 -50 -25 0 25 50 75 100
-100 -75 -50 -25 0 25 50 75 100
荷重(kN)
変位(mm)
Y方向
実験
バイリニアモデル MSSモデル Park-Wenモデル
表-4 水平1方向載荷時の最大応答比(解析/実験)
地震波 JRT JMA
X方向 Y方向 X方向 Y方向 バイリニア 1.01 0.85 0.81 1.21 MSSモデル 1.01 0.83 0.81 1.22 Parkらのモデル 1.00 0.83 0.78 1.19
表-2 各試験体に対する実験計画
していないバイリニアモデルによる結果の間には,顕著 な差は見られない.3つの復元力モデルともに, 2方向 載荷実験における支承の履歴復元力曲線の特性を表現し ていないが,最大応答変位に関しては実験値との違いは 小さく,評価としては概ね妥当である.
各解析手法と水平2方向ハイブリッド実験で得られた 最大応答変位の比をまとめた結果を表-5に示す.最大 応答変位については,復元力モデルごとに実験結果との 差の程度が異なるが,全般的に解析で得られた応答変位 は,実験より大きい傾向にある.
Park-Wenモデルを用いた解析結果は,他の復元力モデ ルよりも誤差は小さい.バイリニアモデルとPark-Wenモ デルによる解析で得られた平均の応答比( )は1.01すなわ ち実験との差は平均して1%大きい程度である.これに
対してMSSモデルによる解析結果では,平均すると実験 結果より14%大きい結果となっており,逆に水平2方向 相関を考慮していないバイリニアモデル(同7%)より も誤差が大きい結果となった.
ばらつきを示す標準偏差 は,Park-Wenモデルが最小 であるものの15%の変動であり,各復元力モデルを用い た得られた応答変位の解のばらつきは大きいことが分か る.
NS成分,EW成分の変位を合成することで得られた変 位応答オービットを図-17に示す.復元力モデルを用い た解析結果はいずれも両入力の場合ともに,最大合成変 位は過大評価となっているものの,得られたオービット 形状は概ね一致している.
解析結果より得られた最大荷重と実験での値の比であ る最大荷重比を,表-6に示す.右の 欄に示された最 大荷重の平均値から分かるように,解析による荷重値は 実験より大きい.特に,応答の小さいJMA入力では,各 解析結果が実験結果より16~36%大きい.これは,前述 の通り本研究では復元力モデル設定の単純化のため,モ デルパラメータを175%時のせん断ひずみが生じる復元
(a)NS方向結果 (b) EW方向結果
図-16 水平1方向および2方向載荷仮動的実験と解析の比較(JMA入力)
(a) NS方向結果 (b) EW方向結果
図-15 水平2方向載荷仮動的実験と解析の比較(JRT入力)
-80 -40 0 40 80
-120 -80 -40 0 40 80 120
荷重(kN)
変位(mm)
NS成分
実験
バイリニアモデル MSSモデル Park-Wenモデル
-80 -40 0 40 80
-120 -80 -40 0 40 80 120
荷重(kN)
変位(mm)
EW成分
実験
バイリニアモデル MSSモデル Park-Wenモデル
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40
荷重(kN)
変位(mm)
NS成分
実験
バイリニアモデル MSSモデル Park-Wenモデル
1
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40
荷重(kN)
変位(mm)
EW成分
実験
バイリニアモデル
MSSモデル
Park-Wenモデル
表-5 水平2方向載荷時の最大応答比(解析/実験)
解析手法 JRT JMA
NS EW NS EW
バイリニア 1.16 1.11 0.86 1.14 1.07 0.14 MSS 1.38 1.26 0.77 1.15 1.14 0.26 Park-Wen 1.15 1.04 0.80 1.06 1.01 0.15
力履歴サイクルにより同定し,一定値として解析してい る.したがって,復元力履歴特性のひずみ依存性を考慮 していないため,小せん断ひずみ領域の結果は,実験と 相違が生じる結果となったものである.
各復元力モデルによる最大荷重の再現性は,Park-Wen モデルが最も良好であり,平均の最大荷重比は1.05で実 験より5%大きい程度である.次いでMSSモデル,バイ リニアモデルの順で,最大荷重比はそれぞれ1.1,1.23と やや大きくなり,荷重を過大に評価している.ひずみ依 存性を考慮した解析手法を用いることで,精度の改善が 期待できると見込まれる.一方で,ばらつきは最も良い 結果となったPark-Wenモデルでも =17%程度である.
6. 結論
本研究では,水平2方向地震動を受ける高減衰ゴム支 承を対象として,水平各方向への直線載荷実験,水平2 方向円形経路および正方形経路載荷実験,水平1方向お よび2方向仮動的実験を行い,2方向載荷時におけるゴム 支承の復元力履歴特性を検討した.バイリニアモデル,
バイリニア型MSSモデル,Park-Wenモデルの3種類の復 元力モデルに着目し,水平2方向載荷された免震ゴム支 承の挙動に対して,実験結果と比較することでこれらの 復元力モデルにより得られる特性を検討した.その結果 得られた知見をまとめれば,以下の通りである.
1) 水平2方向載荷された高減衰ゴム支承は,水平2方
向載荷の場合1方向載荷時に比べ,より早期に多く のエネルギーを吸収する.これは,2方向載荷時の 合成変位が各々の1方向の変位よりも大きいレベル に達し,ハードニング現象等を含む非線形挙動が顕 著になるためであると考えられる.その結果,応答 変位が1方向載荷時より10~20%小さくなる.
2) 水平1方向仮動的実験では,3種類の復元力モデル による解析結果の差は顕著には見られなかった.応 答変位に関しては,いずれの復元力モデルでも実験 値の評価として概ね妥当であった.
3) 水平2方向ハイブリッド実験では,応答変位に関し ては,バイリニアモデルによる評価は概ね一致し,
また Park-Wenモデルの精度が最も高かった.逆に,
MSSモデルによる応答変位予測は最も精度が低く,
実験結果よりも最大応答変位を過大に予測する結果 となった.
4) 水平1方向と2方向のハイブリッド実験では,無視 できない大きさの残留変位が生じたが,本研究で用 いたバイリニアタイプの各解析モデルによる応答解 析では,残留変位を実験結果より小さく予測してい る.
5) 水平2方向に載荷された高減衰ゴム支承の復元力履 歴特性は,ひずみ依存性が現れ,解析モデルによる 結果は実験値より大きくなる.
謝辞:本研究の実施にあたり,試験体の準備に多大なご 助力をいただいた東海ゴム工業(株)の関係各位に謝意を 表する.
参考文献
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表-6 水平2方向載荷時の最大荷重比(解析/実験)
解析手法 JRT JMA
NS EW NS EW
バイリニア 0.87 1.38 1.36 1.33 1.23 0.24 MSS 0.85 1.11 1.24 1.21 1.10 0.18 Park-Wen 0.80 1.05 1.16 1.17 1.05 0.17
(a) JRT入力 (b) JMA入力
図-17 水平2方向地震応答変位オービットの比較 -120
-90 -60 -30 0 30 60 90 120
-120 -90 -60 -30 0 30 60 90 120
EW成分変位(mm)
NS成分変位(mm) 実験
Parkらのモデル MSSモデル バイリニアモデル
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40
EW成分変位(mm)
NS成分変位(mm) 実験
バイリニアモデル MSSモデル Park-Wenモデル
告集,第638号,2009年
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EXPERIMENTAL STUDY ON BIDIRECTIONAL RESTORING FORCE OF RUBBER BEARINGS UNDER BIDIRECTIONAL LOADING AND COMPARISON
OF HYSTERETIC MODELS
Akira IGARASHI, Ji DANG, Yuta MURAKOSHI, Toshihiko ITO
Although structural responses can result in some failures as a the consequence of three-dimensional re- sponse such as coupled bi-directional inelastic response effects, currentseismic performance design ap- proaches for isolated bridges only stipulated requirements and analysis methodsfrom past experimentalresultsof elastomeric bearings subjected to uni-directional loading under constant vertical pressure. This study discusses hysteretic and seismic response behaviour of high damping rubber (HDR) bearings under multi-directional loading histories and earthquake excitations, and the validity of several easy-to-implement nonlinear numericalmodels, such as bi-linear hysteretic SDOF model and Multiple- Shearing-Spring (MSS) model.Square shape laminated rubber bearing specimens made of HDR-S which is a type of HDR are used in uni- and bi-directional quasi-static loading tests as well as hybrid simulation (pseudo-dynamic) tests. The validity of these major nonlinear dynamic analysis models in simulating the seismic response of rubber bearings with hysteretic damping is alsoevaluatedby comparing the results of tests with that of simulations.