経験を語る談話における接続詞使用 : 「そして」
の使用について
著者 長谷川 哲子
雑誌名 Ex:エクス:言語文化論集
号 11
ページ 101‑122
発行年 2019‑03‑25
URL http://hdl.handle.net/10236/00028419
経験を語る談話における接続詞使用
―「そして」の使用について―
長谷川 哲 子
1. はじめに
本稿では、話し手が自らの経験を語る談話における接続表現1)の使用状況を考察 の対象とする。まず、経験を語る談話において話し手はどのような接続表現を使用 しているかを概観する。続いて、日本語学習者において誤用が多いとされる接続詞
「そして」がどのように使用されているかを考察する。最後に、日本語学習者への 接続詞指導における提案をプロフィシェンシーの観点から示す。
2. 接続表現とプロフィシェンシー
経験を語る談話における接続表現の使用に関しては、先に長谷川(2017a,b)に おいて、コーパス内で使用されている接続詞、接続助詞を分析対象として、その使 用状況の概観をした。本稿では接続表現の使用傾向を示したのち、接続詞のうちで 特に日本語学習者に誤用が多いとされている接続詞2)の「そして」を考察対象とす る。
本稿で話しことばにおける接続表現使用を考察対象とする理由を 2 点挙げる。
1) 以下、本稿では「接続詞」と「接続助詞」をまとめて示す際に「接続表現」と称する。
2) 本稿では接続詞の定義として、石黒(2008)の「独立した先行文脈の内容を受けなおし、後続 文脈の展開の方向性を示す表現」を採用する。
まずひとつめは、日本語学習者の接続表現使用に関する研究対象である。先行研 究では、主に質問紙による接続表現の補充や正誤判断調査、日本語学習者によるプ ロダクト(作文等)における接続表現の使用状況調査のように、書きことばを資料 とした使用状況を研究の対象としたものが多い。よって、話しことばにおける接続 表現使用に関する研究はまだ十全ではないと考えられるためである
もうひとつは、言語の習得レベルにおいて接続表現が果たす役割である。山内
(2009:117)は、言語の習得過程を、コントロールできる言語の範囲が[単語→
文→段落→複段落]というように拡張していく過程と見なしている。さらに、この 見方に基づいて、コントロールできる言語の範囲が広くなるにつれて、言語を用い てできることの範囲も広がるとしている。この見方は日本語学習者の書きことば、
話しことばの能力を把握するための一つの指標として分かりやすく適用しやすい。
書きことばにおいて、ひとまとまりとしてコントロールされている範囲は質的、ま た量的に具体的な視認や検証が行える。それに対して、話しことばはスクリプトを 通してしか視認性を得ず、どこまでがひとまとまりの範囲であるかは結果として遡 求的に把握され、即時的には接続表現や様々な言語的結束表現が聞き手にとって重 要な手がかりになる。よって、話しことばとしての発話連続における接続表現は、
その発話のまとまりの形成において一定の役割を担うと考えられるためである。
上記のうち、2 点めは近年日本語教育においても注目を浴びつつあるプロフィ シェンシー3)の観点からも重要である。本稿では、ある言語においてその話者がど んな言語行動を遂行できるかという運用能力、いわば実力をその話者のプロフィ シェンシー4)と見なす。この観点からすると、話しことばにおける能力は、どのよ 3) プロフィシェンシーは「熟達度」と訳されることもあるが、プロフィシェンシーという用語を 用いた研究書や学術論文も散見されるようになったため、本稿でも訳出せず用いる。限定され た学習範囲において学習項目がどの程度達成されたかといういわゆる到達度ではなく、「現実 生活における機能的言語能力」(鎌田他(2009))を指す。
4) プロフィシェンシーの測定には様々な手法があるが、日本語の話しことばを対象とした測 定 法 とし て、ACTFL(AmericanCouncilontheTeachingofForeignLanguages)-OPI(Oral ProficiencyInterview) がある。この測定法は名前のとおり、口頭表現のプロフィシェンシー を測るものであり、試験官がインタビュアーとなり、被験者に対してインタビュー質問への応
うな言語形式が発話上のまとまりを形成するかという言語的知識の到達度に関して ではなく、実際の言語運用において発話上のまとまりを形成しつつ言語行動がどの 程度遂行されているかという観点から評価されることになる。前件と後件を連接し て談話展開上のまとまりを形成する機能を担う接続表現の使用状況を観察すること は、言語行為の遂行の出来具合いを見るというプロフィシェンシーの観点から有用 であると考えられる。
3. 調査結果:コーパスにおける接続表現の使用状況
本稿では、調査および考察対象の話しことばコーパスとして、「わたしのちょっ と面白い話コンテスト」(第 5 回、第6回)を使用する。コーパスは、「わたしのちょっ と面白い話コンテスト」公式サイト5)上で公開されている。このコーパスを日本語 学習者の言語使用の考察対象とすることの意義は、同コンテストの web サイト6)上 で以下のように明記されている。
日本語学習者による「面白い話」は,日本語教育学・日本語学の有益な検討材料とな ります.予備的な調査の結果からすれば,日本語学習者は日本語で「面白い話」をす ることに概して積極的ですが(定延・奥村・宿利・昇地 2014),日本語での「面白い話」
の仕方を教わっていないせいか,上級者でもさまざまな間違いを犯しています.特に,
日本語の話の流れを制御する談話技法を学習者にどのように教え,習得させるかを検 討するための材料は,「面白い話」コーパスの随所に見つかるようです.
上記の引用に述べられている意義は、ひとまとまりを成す談話を指導する上で非 常に興味深い指摘である。そこで、本稿では「日本語の話の流れを制御する談話技
答とロールプレイを課すテストである。
5) http://www.speech-data.jp/chotto/
6) http://www.speech-data.jp/chotto/kihon.html
法」(上述引用部より)に接続表現が関わっているという視点から、コーパス内の 接続表現を考察対象とする。
上記コーパスでの「面白い話」とは、個人の体験を語った談話のことを指す。コー パス内には、日本語母語話者、日本語学習者の談話ファイルが収録されている7)。 日本語母語話者の収録ファイルは個人的な体験談がほぼ全てであるが、日本語学習 者の収録ファイルには個人の体験談ではないと見られるもの(自分の知っている ジョークや小咄の紹介など)が見られる。そのため、以下では日本語学習者による 収録ファイルのうち、その内容がジョークや小咄の紹介となっているファイルは考 察対象外とする。
以下に接続表現の使用状況を日本語母語話者、日本語学習者に分けて示す。計数 対象のファイル数は、日本語母語話者が 34 件、日本語学習者が 77 件8)である。使 用状況に関する調査結果として、接続表現の使用数と使用率、および出現ファイル 数と出現率それぞれの上位 10 位までを以下に示す。使用数、また使用率とは、そ れぞれ計数対象の全ファイル中に使用されている接続表現の総件数のうちに占める 当該表現の使用頻度、またその使用割合を指す。出現ファイル数、また出現率とは、
それぞれ計数対象の全ファイル中で当該表現が使用されているファイル数、またそ の割合を示す。なお、今回の考察対象とした全てのファイルにおいて、何らかの接 続表現が用いられていたことから、出現率においては、全ファイル数(それぞれ日 本語母語話者 34 件、日本語学習者 77 件)に対する割合を算出している。
まず、日本語母語話者の接続表現使用数と使用率を表 1 に、日本語学習者の接続 表現使用数と使用率を表 2 に示す。
7) ただし、第 8 回コンテスト以降、日本語母語話者・日本語学習者の区別は設けないとされている。
8) web ページ上から収集した日本語学習者によるファイル収録数(第 5 回および第6回の合計)
は 102 件であったが、話し手自身が知っているジョークや小咄の紹介であるもの(個人の経験 を語っていないもの)を除いた結果、77 件を本稿での考察対象とした。
表1 日本語母語話者の接続表現の使用数と使用率 順位 接続表現 使用数/ 19939)(使用率)
1 て(接続助詞) 960(48.2%)
2 で(接続助詞) 278(14.0%)
3 けど(接続助詞) 187(9.4%)
4 から(接続助詞) 97(4.9%)
5 たら(接続助詞) 87(4.4%)
6 ので / んで(接続助詞) 62(3.1%)
7 それで(接続詞) 56(2.8%)
8 でも(接続詞) 35(1.8%)
9 そうしたら(接続詞) 31(1.6%)
10 じゃあ / じゃ(接続詞) 29(1.5%)
表2 日本語学習者の接続表現の使用数と使用率 順位 接続表現 使用数/ 222110)(使用率)
1 て(接続助詞) 1101(49.6%)
2 で(接続助詞) 214(9.6%)
3 けど(接続助詞) 130(5.9%)
4 でも(接続詞) 100(4.5%)
5 たら(接続助詞) 93(4.2%)
6 そして(接続詞) 90(4.1%)
7 から(接続助詞) 74(3.3%)
8 ので / んで(接続助詞) 66(3.0%)
9 が(接続助詞) 53(2.4%)
10 じゃあ / じゃ(接続詞) 37(1.7%)
9) 日本語母語話者の収録ファイル 34 件中で使用された接続表現の総数。
10) 日本語学習者の収録ファイル 77 件中で使用された接続表現の総数。
上記の表 1、表 2 からは、日本語母語話者(以下、NS)、日本語学習者(以下、
JL)ともに上位 3 項目が一致していることが分かる。「て/で」「けど」はそれぞ れ順接、逆接の接続助詞として、概して多く使用される表現である。また、いずれ の表でも 5 位として共通している表現として「たら」がある。金田(2017)は関 西在住女性を対象として笑い話における言語的および非言語的特徴を考察した研究 であるが、笑い話のオチを導くための表現として、「たら」「なら」がよく使用され ているという言語的特徴を指摘している。今回の調査対象とした「面白い話」でも 談話中にオチが含まれており11)、「たら」が上位に挙がったことは、この指摘を支持 するものであると考えられる。このことは、面白い話を語るというタスク遂行に、
接続表現の使用が関連していることを示唆する。
もう一つ着目すべき点は、JL のみに接続詞「そして」の使用が見られることで ある。「そして」は NS の表には挙がっておらず、出現頻度から見ても、全ての接 続表現の使用数 1993 に対してその使用数はわずか 2 と非常に少ない。そのため、
面白い話を語るタスクにおいて、「そして」使用は JL に特徴的な傾向であると言 える。
次に、NS の接続表現出現数と出現率を表 3 に、JL の接続表現出現数と出現率 を表 4 に示す。
表 3、表 4 を比べてみると、上位は多少の異同はあるものの、出現する接続表現 やその順位はおおむね似通っている。出現ファイル数および出現率から見ても、「そ して」の使用が JL において顕著である。表 2 と表 4 において JL による「そして」
の使用数と出現ファイル数は、それぞれ 90 と 31 となっている。ただし、この値 は調査対象となった JL の各々が各自のファイル中で約 3 回ずつ「そして」を使用 していることを意味せず、「そして」の使用傾向については JL 間での個人差が大 きい可能性が残る12)。そこで、次章の考察においては「そして」の使用を個別の使 11) オチの形成に至らないファイルも見られたことから、今回の考察対象全てのファイルにオチ
が含まれているわけではない。
12) JL のファイルで使用されている「そして」の出現頻度に関して、第 5 回、第6回の計 31 ファ イルにおいて、1 ファイル中での出現頻度は 1 ~ 9 に分布している。今回は調査対象ファイル
用例にそって検討することとする。
表3 日本語母語話者の接続表現出現ファイル数と出現率 順位 接続表現 出現ファイル数/ 34(出現率)
1 けど(接続助詞) 34(100.0%)
1 て(接続助詞) 34(100.0%)
1 で(接続助詞) 34(100.0%)
4 たら(接続助詞) 27(79.4%)
5 から(接続助詞) 26(76.5%)
6 ので / んで(接続助詞) 20(58.8%)
7 でも 18(52.9%)
8 そうしたら 15(44.1%)
9 それで 14(41.2%)
9 ながら(接続助詞) 14(41.2%)
表4 日本語学習者の接続表現出現ファイル数と出現率 順位 接続表現 出現ファイル数/ 77(出現率)
1 て(接続助詞) 77(100.0%)
2 でも(接続詞) 46(59.7%)
3 けど(接続助詞) 39(50.7%)
3 たら(接続助詞) 39(50.7%)
5 で(接続助詞) 34(44.2%)
5 ので / んで(接続助詞) 34(44.2%)
7 そして(接続詞) 31(40.3%)
8 から(接続助詞) 29(37.7%)
9 が(接続助詞) 23(29.9%)
10 と(接続助詞) 18(23.4%)
10 ば(接続助詞) 18(23.4%)
数が限定されているため、出現頻度に関して JL 間の分散が大きい可能性を指摘するにとどめ る。
4. 調査結果の考察
4.1. JLによる「そして」の使用:タスク遂行の観点からの考察
経験を語る談話において、JL には「そして」の使用という特徴が見られること を前章で指摘した。「そして」については、日本語学習者による誤用が特に多いこ とが市川(2010)で言及されているが、話しことばでは「そして」はどのように 用いられているのだろうか。この点を明らかにするために、本稿では「面白い話」
を収録したコーパスを考察対象とし、その談話中で要求されているタスクを「面 白い話を語る」ことであると設定して、「そして」が多用される例を見ていく。以 下でファイルのスクリプトを示す際に記号と番号を付す(NS:日本語母語話者、
JL:日本語学習者、数字:ファイル識別番号(本稿筆者による))。面白い話の語 り手を A、その聞き手を B とする。スクリプト中の下線は本稿筆者による。
1)JL201415
01Bあー、最近ニコラ、変な夢があったと 聞いた。
02Aはーい、ありました。
03A私のいちばん変な夢は、ロシアの有名 な日本学者についてです。
04Aその、お、学者はコンラッドと、とい いま、と言います。
05Aそして、ある夜私は、うん、私は夢で コンラッド先生のアイスクリームを食 べてしまいました。
06Aそのため。
07Bだめでしょう。
08Aそのため、コンラッド先生は私に大変 怒って、私に。
09Bもちろん、僕も怒りますわそれ事前に。
10Aはい。
11Aそして私に、死ねと言って、ん、と言っ ていました。
12Aそして私を追いかける、あー、ように なりました。
13A私、そのため、私は。
14Bとくなコンラッド先生。
15Aそのときからペテルブルクの地下で隠 れたり、逃げたりしました。
16Aはい、そして、私はとても怖くなって、
うわー私は今死んでしまうと思いまし た。
17Aでも、幸いに私は逃げることができま した。
18Aでも今、コンラッド先生の顔を見るた びに、いつも怖くなってしまいました。
「そして」の多用に関して、日本語学習者の書きことばにおける現象としてはす でに金(2014)に指摘が見られる。金(2014)では、日本語学習者が「そして」
を多用する理由を、とりあえずのつなぎとして使用しているとしている。1)では 11A、12A に見られるように「そして」が連続して用いられており、前件と後件 の1文どうしの連接関係を示すというよりはもっぱら発話の連続に機能しているも のと見られる。
2)JL201414
2)においても、03A ~ 08A にかけて連続した「そして」使用が見られる。こ れらの発話は、一連の時間経過に沿った内容や時間的な継起関係を示す内容ではな く、自らの家族に関して思いついたことを思いついた順に「そして」で連接してい る。そのため、具体的な意味関係を示すための連接ではなく発話の継続を示すため に「そして」を使用していると見られる。
01Aはい、あー、私は時々、親類で、親類、
あー、のとこに行っています。
02A私の、あー、伯母の兄の妻はサンクト ペテルブルグで住んでいます。
03Aそして、に住んでいます。
04Aそして私は時々あー、彼女においしい 料理を食べさせたり。
05Aあー、あ、おう、家でおー、泊まらせ たり、あーしています。
06Aあーそして、前回、彼女の孫たちも来 ました。
07Aいちばん年下の子は、あー二歳、あー 二歳の子です。
08Aそして、彼女はとてもかわいくて、い たずらな子です。
09Aあー、わた、あー、私たちはかくれん
ぼをすることにしました。
10Aあー、でも面白いのは、彼女は隠れた り、隠れたり。
11Aあー、私たちは彼女を捜そうとしてい るときに、彼女は自分ですぐに隠れた 所から出てきました。
12A出てきてしまいました。
13Bそっか。
14Aとてもおいしかったです。
15Bあとで教えることはできたのか、お料 理を。
16Aうん、たぶんまだ若いなので、まだ、ぜ、
意味、かくれんぼの意味は全然分かり ません。
17Bでも楽しいですね。
18Aはい、とても楽しい。
3)JL201422
この例では、「そして」の多用は特に 03A ~ 06 において著しい。前後それぞれ 1 文どうしの連接に用いる接続詞として、たとえば 03A と 04A の連接自体には「そ して」による不自然さはない。04A と 05A、05A と 06A のそれぞれにおいても同 様に、1文レベルの連接として切り取ってみた場合には、「そして」の用法から逸 脱した不適切な使用であるとは言えない。しかし、これは単文の連接で終わる文章 ではなく、線状的に進行するひとまとまりを形成するべき談話内での使用である。
そのため、談話全体から見ると「そして」のみが連続して使用されることは聞き手 には不自然さをもたらすものと言える。
01Aあー私の子どもの頃、あ中学校の頃、
02Aあー私と私の友達と、んー遊園地あー で、あー遊びました。
03Aそして、あー、イギリス語みたいに、
あーぺらぺらつって言い、あー話しま した。
04Aそして私の話をあー、小学校あーの子 どもが聞こえました。
05Aあー、そしてその小学校が私たちがイ ギリス人だとい言いました。
06Aそして私たちあーこの子どもに。
07Aあー、あー、いろいろな話をイギリス のこと、あーイギリスについて、あ話 しました。
08Bなんで。
09Aあ、あー、私たちあーリッキーマーチ ンとジミフローオフィスのあー子ども
たちと、のー言いました。
10Bジミー。
11Aはい、そして私たちはイギリスから あー来ました。
12B子ども。
13Aはい、あーその話をについてその子ど もにあー、
14Aはなあー、言いまして、そしてその子 どもたちは、私を信じていました。
15Aとても楽しかったです。
16Bどこの子ども。
17Aはい。
18A私たち、あー子どもたち、で、うーん だからんー大丈夫だったです。
19B大丈夫、はい。
20Aはい。
4)JL201501
4)も比較的短い談話内で「そして」が多用されている例である。この談話は、さっ きドアを閉めるために鍵を使ったのだからその鍵を入れている財布がないはずはな く、実は自分の右手に財布を持っていた、というひと続きの出来事を面白い話とし て紹介している。この「面白い話」の山場は、21A 以降の、さっき自分でドアを 閉めた鍵が入っている財布を一生懸命探していたという箇所であるが、実は財布は 自分の右手に持っていた、というオチが「そして」で導入されており、そのまま談 話が終結する。結果的に、そのくだりが山場だったと理解することができるが、「面 白い話」を効果的に語っているかという点では物足りなさが残る。それは、22A で使用している「そして」は、前件と後件の意味的な落差や意外性を示す機能、つ 01Aはい、じゃあ、ちょっちょっと面白い
話です。
02Aまー、面白いかどうかはわかん、わか んないんですけど、とりあえず。
03Aあの、まー、たぶん、みんなが似てる ようなことが経験することもあるかも しれませんけどね。
04Aある日、まー、学校に行くとき、その、
外に出かけて、ドアをロックした。
05Aそして、
06A突然、
07Aズボンの中にあのその財布がない。
08Aあっ、財布がないんだって
09Aそして、自分の部屋に戻って探しまし た。
10A大体、まー、いつ、その、
11A一分二分三分たって、す、いつもさが、
探せない。
12Aだんだんだんだん緊張して、あー、や
ばい、どこにいっちゃったんだろう。
13Aその財布がないと、学校に行かないん だよー。
14Aえ、そして、まー、その中もお金が入 るから、とっても緊張した。
15Aそして、
16A自分に自分の教えて、まー、そー、こー こう話した。
17A落ち着いて、落ち着いて。
18Aその、出かける前の行動を思い返す。
19Aそして、出かけて、そして、ドアをロッ ク。
20Aあれ、ドアをロック。
21A私の鍵は、財布の中にいたはずー、だ よね。
22Aそして、自分の右手を見て、
23A私は、財布を持ったまま財布を十分ぐ らい探しました。
24Aはい。
まりオチの導入のような働きを持たないためであると考えられる。そのため、「面 白い話」の最も重要な部分で接続詞を効果的に使用しているとはみなされず、接続 詞使用がタスク遂行の度合いに影響する例であると見られる。
5)JL201521
01A皆さんこんにちは。
02Aえこれは、私の高校時代のことでス トーリーの主役は、親友の**という 女の子だった。
03Aそして、彼女はちょっと大雑把だった が実は優しい人だった。
04Aモルモットを飼っている彼女にとって は、
05Aなんかネズミなどは怖いものではな く、むしろ友達のような存在で、
06Aいつもモルモットやネズミに興味を 持っていた。
07Aある日、彼女は学校に来る途中で、
08Aあの、ある足に傷を受けたネズミを見 て悲しく思っていました。
09Aそしてあの、あのネズミの面倒をみろ うと、なんか心のな中で決めたが、
10Aあのネズミはなんか、**のことを嫌 がっているように見えて、
11A**が用意したものを少しも食べな かったから、
12Aえー、だんだんネズミがね、弱くなっ てきて、動けなくなった。
13Aそして**はこの状況を見ると、せめ て私はあなたのそばにいてあげたい、
最後まで、
14Aという気持ちで、ねんごろにあのネズ ミをほ葬ったが、
15A**は、あのネズミがまだ生きている のか死んでいるのかとういうことを確 認するするのを忘れたから、
16Aなんか、生き埋めにしちゃたかなと*
*は心配しました。
17Aそして翌日、なんか自責のせいか、*
*は昼寝をする時に、
18Aあの生き埋めされる可能性があるネズ ミの夢を見た。
19A夢の中で、あのネズミはナイフを持っ て**をおい追いかけて殺そうとし た。
20Aそして**ももちろん、謝りながら逃 げ始めた。
21Aすると、はっとなんかぶつけたように 大きいが音が出たから、
22Aなんか、**もびっくりして目覚めた。
23Aその瞬間に足に激しい痛みを感じた。
24Aなんと、**は本当に夢遊病で歩き出 して、そして椅子につまずいて、
25Aなんか転んだのだから。
26Aそして結局、**は病院に行って一週 間車椅子を使った。
27Aなんか骨折しましたから。
この 5)では、先の 4)とは異なり、「そして」の使用はこの「面白い話」の山 場形成を妨げているという印象は与えない。しかし、談話全体から接続詞使用を見 ると、21A の「すると」以外の接続詞はすべて「そして」である。そのため、「そ して」によって一連の時間経過に沿った談話展開であることは聞き手に理解される が、「そして」による連接が最後まで続くことにより、全体として単調な展開とい う印象をもたらす。その結果、山場の形成に必要な盛り上がりやオチといった起伏 が示されにくく、話を面白く語るという遂行の度合いには課題が残ると見られる。
6)JL201524
28Aなんかそして夢遊病で骨折するなん て、
29Aお医者さんにとっても初めての珍事 だった。
30Aそしてクラスメートの皆さんにとって も、
31Aなんかこういうことは確かにかわいそ うだったが、
32Aこらえきれず笑っちゃった。
33Aだってこれは確かに**らしいこと だった。
34Aえ、以上です。
01Aえ、みなさんこんにちは。
02Aあの**さんの後ろだったらちょっと つまんない話に聞こえるかもしれませ んが、よろしくお願いします。
03Aえー今から発表するちょっと面白い話 は、
04A実は、過去、えっと、私、過去にあっ た私の、ちょっと恥ずかしい話です。
05Aで、私がまず、また中学、あー中学生 のころ、物理いわゆる理科のその授業 が大の苦手で、
06A授業の内容なんてほとんど頭に入らな かったです。
07Aま今でも全然わからないですけど。
08Aそのときは、授業のたびに眠くて眠く てたまらな、たま、たまらなかったで す。
09Aで、そして、ついある中学校三年生の ころ
10Aあー、私は午後一限目の授業中に、すっ かり、あのー落ちてしまいました。
11Aそして、十分ほどたったのかな。
12Aいきなりあの友達に、おいおい起き てって、あのー起こされました。
13A目が覚めたらなんと先生が目の前に 立っていました。
14Aで、そのときの、そのー物理の先生は いわゆるちょっとかたい方で、
この例では、授業中に起きたことを「面白い話」として紹介する際に、その出来 事を時間の経過に沿って述べている。この話のオチに相当するのは、話の種明かし ともいうべき 31A ~ 32A の教員の発言部分であるが、その部分が「そして」で導 入されている。33A で話し手が明確に談話の終了を告げているため、話し手とし ては面白い話を完結させたと認識していることは分かるが、26A 以降に「そして」
が重なって使用されていく展開がもたらす単調さは否めず、どこで話が終わるのか 聞き手には予測しにくい談話展開であると考えられる。
ここまで、対象コーパス内で JL による「そして」使用が特徴的な例を示してきた。
先に紹介した金田(2017)では話のオチを導く表現として「たら」が使用されて いることが指摘されているが、上記の例からは、話の山場において「そして」を使 用することはオチを導くことにはならず、面白い話を語るというタスクの遂行にお いては、「そして」の使用は効果的ではないことが観察できる。
このことから、接続表現の使用がタスク遂行の度合いに影響する可能性がうかが 15Aあまり授業中も冗談言わないし、すご
くまじめな人でした。
16Aで、先生を前にして、私はあっやべー 怒られるどうしよう、と思いました。
17Aしかし、先生はただ無表情で、これ、
という手を出しました、私に向かって。
18Aどんな魔がさしたのかわかんないけ ど、私はそのとき、
19Aあー、やった、先生は怒ってないんだ。
20A先生は私を許してくれたの。
21Aゆる許してくれた。
22Aと思ってしまいました。
23Aで私も、それはその先生の優しい気持 ちにこたえなければいけないなーと 思って、
24A私も先生に向かって、これっていう手 を出しました。
25Aで、そのとき場はしんとしました。
26Aそして周りからくすくすという笑い 声、笑い声が聞こえました。
27Aでもそのときの私は、まだ全然何が あったのかわからなかったです。
28Aそして、その先生がたぶん十秒ぐらい 29Aその姿勢のまま私の目をじーと見て 30Aあの教室の前に戻りました。
31Aそして黒板の前に立って、
32Aえーではこれからフルーミングの右手 の法則について説明しまーす。
33Aはい、以上です。
われ、話す技能におけるプロフィシェンシー向上にも接続表現の効果的な使用が一 定の役割を果たすことが推測される。
4.2. スクリプトによる分析の問題点:分析のしかたに対する考察
本稿では、ここまで「面白い話」のコーパスをスクリプトによって分析してきた。
話しことばの文字化であるスクリプトを通じて、その談話を分析することは一般的 な手法であるが、今回の分析を通じて、話しことばの接続詞をスクリプトによって 分析することの問題点を以下に2点指摘しておく。ひとつめは、スクリプトによる 分析における評価に関する問題である。もうひとつは、話しことばにおける接続詞 指導に関する問題である。
4.2.1. スクリプトによる分析における評価
話しことばにおける日本語学習者の接続詞使用について分析している石黒
(2017:204)では、「話し言葉において、「そして」は「習ったので使いすぎる文法」
ということになる」との結論を示し、「そして」の多用傾向を指摘している。ある 言語形式の使用傾向を分析する際には、その出現頻度を数的に分析することは通常 であり、話しことばとして実現された談話を同時にその場で観察できない場合、そ れを文字や映像として記録したものを通じて観察することになる。そのため、本稿 でも種々の先行研究と同様に、スクリプトによる分析を行ってきたが、それと並行 して、該当ファイルの動画13)を視聴した。スクリプトを通じた分析では、「そして」
の多用傾向は容易に可視的となり、それぞれの「そして」の前件と後件、またその 連接関係を詳細に検討することができる。しかし、スクリプトの元の資料である動 画を視聴した際に、スクリプト上に現れる多用傾向がさほど気にならず、タスク遂 行の観点からもスクリプト分析の際ほどの印象低下が見られないケースが存在し た。今回の分析では、タスク遂行の度合いや印象評定などの測定は行っておらず、
こうした現象の存在を言及するにとどめるが、嶋田(2017)では、発話スクリプ 13) コーパスの web ページ上から、過去の作品の動画ファイルが閲覧可能となっている。
トによる評価に対する重要な指摘がなされている。嶋田(2017)は、書き言葉と しての文の正確さに注目しがちであること、話し言葉の表現の豊かさへの配慮に欠 ける傾向があることを示し、スクリプトを使用した分析の限界を指摘している。上 に述べた、スクリプトと動画における印象の差異はこのような限界を実感させるも のであり、日本語学習者の話すプロフィシェンシーを考察する際には、単一のモー ドによる分析だけではなく、マルチモーダルな観点の重要性を認識した分析が必要 であることがあらためてうかがわれる。
4.2.2. 話しことばのプロフィシェンシーをふまえた接続詞指導
日本語学習者に対する接続詞の指導内容については、個々の接続表現の用法や類 似表現との使い分けを記述的に提示するものがこれまでに多く見られる。
山内(2009:41)では、日本語学習者による接続詞の使用傾向を検証した結果 として、「そして」の使用において中級と上級の使用数にかなりの差があることを 指摘した上で、中級で教えるのが適切であるという結論を示している。石黒(2000、
2017)は、山内(2009)と同様に、「そして」を中級以降に指導することを提案し ている。石黒(2017:104)では、「そして」について、「用法は広いが,決定的と いう特殊なニュアンスを帯びるため,使いすぎると違和感が生じる。そのため初級 段階で教えないほうがよく,中級段階で教える場合でも使用上の注意とともに導入 する必要があると思われる。」として、「そして」の持つ用法やニュアンスの性質か ら指導項目として扱うレベルを考慮する必要性を指摘している。
指導項目についてはそれを提示する適切なレベルが重要であることは言を俟たな い。しかし、話す技能の向上には、何をいつ教えるかという提示レベルの議論に加え、
何をどのように運用すれば言語行為を遂行できるのかというプロフィシェンシーに 関する議論も同様に重視されるべきである。本稿では、接続詞の使用が特定のタス ク遂行の度合いに影響する可能性を指摘した。ある指導項目の言語的な特徴や複雑 性といった言語知識に属する側面からだけではなく、その項目をどのように使用し、
どのような言語行為を遂行するのかという観点、端的に言えば、ある言語において
「何を知っているか」ではなく「何をするのか/何ができるのか」というプロフィシェ ンシーの観点から接続詞指導を検討する方向性を本稿では提案したい。それは、接 続詞の用法と遂行するタスクのマッチングである。
前章で示したスクリプトでは、「そして」が多用される箇所を主にとりあげてきた。
「そして」の多用が日本語学習者に特徴的であり、時に不自然さや違和感を引き起 こし、結果としてタスク遂行の度合いに影響するものだとすれば、それに対してど のような指導を行うべきかという問題が生じる。実際の言語運用を可視化したスク リプトの分析においては、可視化されたがゆえに誤用の箇所を個別に特定した指摘 は容易となり、そのことは逐次的、逐語的な修正を勢いもたらしかねない。このこ とは、先に示した嶋田(2017)の指摘と合致する。しかし、どの「そして」をど んな接続詞と置き換えればいいのかというような、代替の言語形式を示す修正を与 えるフィードバックのみでは、十分なタスク遂行には至らない。たとえば、本稿で 示したスクリプトに現れる「そして」を他の接続詞で置き換えることによってのみ 修正してみようとしても適切な修正は困難であるからである。そうした逐語的な フィードバックは、スクリプト上の部分的な正確さ、つまり当該箇所の前件と後件 の連接というローカルエラーの修正には貢献するものの、それだけではタスク遂行 に十分なフィードバックとは言えない。先に長谷川・堤(2012)では、日本語学 習者の作文評価調査により、作文評価における正確さ要因について、正確さが低い 場合は作文全体の評価を下げるのに対して、正確さが高くても作文全体の評価は上 がらないことを検証した。このことを話しことばのスクリプトに敷衍するならば、
「そして」をローカルエラーとして他の接続詞に修正してみても、その談話全体の 印象が上がることにはつながらないことが推測できる。そのため、接続詞指導にお いては、その接続詞が持つ用法や機能と遂行すべきタスクとのマッチングを視野に 入れる必要性を指摘しておく。
接続詞の機能については、佐久間(2002:168)に「接続詞の文脈展開機能」として、
3 種類 14 類型の機能が挙げられている。その中で、「そして」は「話を重ねる機能」
を持ち、「前の話を繰り返し,同じ話を続ける」接続詞として分類されている。こ
の記述から、「そして」は、文脈を維持するような働きはあっても、話のオチを導 入するというむしろ文脈展開上の落差を示すような働きは担いにくいことが分か る。佐久間(2002)以降も新たな接続詞の分類が石黒(2008)などで提示されている。
個々の接続詞の用法や機能と話しことばにおけるタスクとの相互のマッチング、つ まり、どのような接続詞がどのようなタスクで用いられるかという機能面からの接 続詞研究を日本語教育の観点からも十全に進めていく必要性が示唆される。
接続詞の用法・機能とタスクとのマッチングの観点から、以下にその具体例を 示す。荻原(2006:9)では、接続詞「そこで」について、「前件は状況/場面で、
後件ではその前件で生じた状況/場面をきっかけに、改善 / 解決するための意志的 動作がくる場合」に使用されるとしている。このような用法を持つ「そこで」を日 常的に使用する例として、企業の web ページのようなジャンルで以下に挙げる用 例に類するものが散見される。
7) お料理やお洗濯など、さまざまな家事に加えてお掃除までしっかりこなすのは 大変です。そこで、目的に合わせてお掃除箇所を組み合わせた「おすすめコー ス」が登場。お掃除の手間を減らせば、時間と心に余裕が生まれるはず。
(https://www.duskin.jp/merrymaids/omakase/mm000030/)
この例では、前件は[お料理やお洗濯など、さまざまな家事に加えてお掃除まで しっかりこなすのは大変です。]、後件は[目的に合わせてお掃除箇所を組み合わせ た「おすすめコース」が登場。]であり、前件の状況を改善、解決する後件への連 接を「そこで」が担っていることになる。このような用例に準じて考えれば、たと えば、現状の問題点を指摘してその解決策を提案するプレゼンテーションを行うと いうタスクにおいては、「そこで」の使用が適合することが推測される。書きこと ばで日本語学習者が「そこで」を用いるジャンルとしては、レポートや論文がある。
書きことばで内容を説明したり自分の意見を主張したりする文章を作成する際に、
レポートや論文であれば序論部分、具体的には、テーマに関する現状やその問題点
が紹介され、それを承けてその稿の目的を導入する箇所で「そこで」が用いられる。
レポートや論文によく使われる表現やその例文をまとめた日本語教材も既に出版さ れているが、稿の目的を述べる部分では「そこで」を使用する、といったような断 片的な知識を与えるにとどまらず、問題提起を承けて稿の目的を述べるという序論 執筆のタスクには、先に示した佐久間(2000)の分類で言えば、「話を進める機能」
を担う「そこで」の使用が適切であるということを文章全体の構成を見通した上で 理解させるほうがよいと考えられる。そのため、今後は談話全体での接続詞の使用 位置、接続詞が担う機能を日本語学習者が体系的、実践的に学べる教材作成が望ま れる。
最後に、話しことばにおける言語形式とタスクのマッチングの観点から見た好例 として、日本語会話教材の石黒編著(2011)にある一例を挙げる。この教材には、「偶 然について話すための文法」というコラムがある(ibid.:10)。ここでは、偶然の 出来事を語るために、接続詞「それで」、副詞「なんと」、終助詞「ね」「よ」、文末 表現「んです(のだ)」を用いることの効用を解説している。特に「んです(のだ)」
について行を割いて説明しているが、具体的には、「のだ」に「関連づけ」という 用法があることをふまえ、偶然の出来事を話すときなどのまとまったエピソードを 語るときに使用すれば、「聞き手に「これから関連のある話が続いていくよ」とい うことを示し、話に引き込む効果があると考えられ」るという、具体的で日本語学 習者にも理解しやすい説明が与えられている。
このような具体的なタスクにもとづいた実際の運用の省察は、接続表現の多様な 用法をその用例とともに列挙して示すという指導を超えて、日本語学習者にとって は、より実践的な口頭表現能力としてのプロフィシェンシー向上に大いに貢献する ものと推測される。数多くある接続表現の個々に対してこのような知見が蓄積され ていく余地が、話しことば、書きことばともにまだ残されている段階にあると考え ている。
5. まとめ
本稿では、「わたしのちょっと面白い話コンテスト」コーパスを資料とし、接続 表現、特に接続詞「そして」の使用傾向を調査した。調査結果を通じ、明らかにし たかったのは、
① コーパス内で、JL と NS の接続表現使用にどのような違いがあるか。
② 面白い話を語るというタスク遂行において、JL の接続表現使用の問題点は何 か。また、そこからどのような示唆が得られるか。
という2点である。
上記の2点に対する本稿の見解を以下のようにまとめておく。
①’接続表現の使用や出現の傾向について JL と NS を比較すると、上位の項目 においては相互に大差は見られない。JL のみに見られる特徴として、接続 詞「そして」の使用がある。ただし、スクリプトのみによる分析には問題 点も存在する。
②’面白い話を語るというタスク遂行において、「そして」の多用は談話展開を 単調にしかねず、山場の形成やオチの導入には効果的に機能していない。こ うした問題点の改善に向けて、接続表現の形式と遂行されるタスクのマッ チングを解明し、具体的なタスクの遂行に基づいて接続表現を指導するこ との必要性が示唆される。
本稿では、限られた用例を考察対象としているため、面白い話を語る談話全般に おける接続表現の詳細な使用実態の解明や、そもそも面白い話のように個人的なエ ピソードを語るタスクにはどのような言語運用が効果的なのかといった全体的な考 察には至らなかった。そうした全体像を少しずつ解明し、さらにタスクと言語形式 のマッチングを主軸に据えた、いわば task-based とでも言うべき接続表現指導の 可能性をさぐっていくことを今後の課題としておきたい。
付記
本稿は、長谷川(2017b)の内容に大幅な加筆修正を加えたものである。当日のセッ ションや質疑応答に参加してくださった方々にあらためて深く感謝いたします。
参考文献
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長谷川哲子・堤良一(2012)「意見文の分かりやすさを決めるのは何か?―大学教員による 作文評価を通じて―」『関西学院大学日本語教育センター紀要』1.7-18.
山内博之(2009)『プロフィシェンシーから見た日本語教育文法』ひつじ書房.
「わたしのちょっと面白い話」公式サイト(http://www.speech-data.jp/chotto/)