鋼橋における点検・調査・
健全度評価について
山口恒太
パシフィックコンサルタンツ㈱
第 27 回 鋼構 造基礎 講座 鋼 橋 に お け る 点検・調 査 ・健全 度評 価
平成26
年12
月18
日 パシフィックコンサルタンツ株式会社 山口恒太1.
道路インフラ(橋梁)の現状2.
道路の維持修繕に関する省令・告示の制定3.
定期点検要領4.
橋梁定期点検要領概説5.
鋼部材の損傷6.
コンクリート部材の損傷(RC
床版)7.
その他の損傷8.
一般的な構造と主な着目点9.
健全度評価10.
まとめ1. 道路 イン フラ ( 橋 梁)の 現状: 道路延 長と橋梁数
第44回基本政策部会配布資料 (http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/road01_sg_000172.html)日本では全橋梁数 約
70
万橋のうち、 都道府県道、市町 村道が約62
万橋 (全体の90
%)を占 める。1. 道路 イン フラ ( 橋 梁) の現状 :橋齢分 布
第44回基本政策部会配布資料 (http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/road01_sg_000172.html)10
年後には供用年 数が50
年以上とな る橋梁が全体の43
%以上となる。出典:平成23年道路統計年報(15m以上の道路橋)
1. 道路 イン フラ ( 橋 梁)の 現状: 橋種( 15m 以 上の道路 橋) 2. 道路 の維 持修 繕に 関す る 省 令 ・ 告 示 の 制 定 3. 定期 点検 要領 •
トンネル、橋等の点検は近接目視により5 年に1回の頻 度
を基本とし、 その健全性 につ いて は4段 階
に区分することになります。•
そのため、地方公共団体における円滑な点検の実施のための技術 的助言として、省令及び告示の規定に基づいた、具体的な点検方法、 主な変状の着目箇所、判定事例写真等を示した定期点検要領を策 定htt p :/ /w w w .m lit .g o .jp /r e p o rt /p re ss /r o ad 0 1 _h h _0004 29. ht ml
4. 道路 橋定 期点 検要 領概 説
通常点検 中間点検 特定点検 異常時点検点検計画 近接目視等の実施 損傷状況の把握 損傷程度の評価
損傷状況の把握 健全性の診断 ・部材単位(Ⅰ~Ⅳ) ・橋単位(Ⅰ~Ⅳ)
緊急対応 詳細調査 追跡調査 対策区分の再判定 健全度の再診断 等 維持・補修等の計画 (ライフサイクルコスト最小化等) 維持
定期点検 維持維持 記録 対策区分の再判定 健全度の再診断 等
凡例 主要導線を示す 記録の一元管理 に関する流れを 示す
橋梁管理 カルテ データベース
選別 選別 反映 選別
定期点検結果の記録
記録
点検記録の 一元管理 記録
定期点検は,道路橋の各部材の状 態を把握,診断し,当該道路橋に必 要な措置を特定するために必要な情 報を得るためのものであり,安全で 滑な交通の確保,沿道や第三者への 被害の防止を図るため等の橋梁に る維持管理を適切に行うために必要 な情報を得ることを目的に実施する。 定期点検では,損傷状況の把握及 び対策区分の判定を行い,これら 基づき部材単位での健全性の診断 及び道路橋毎の健全性の診断を行 い,これらの結果の記録を行う。
(1)鋼材 ・腐食 ・亀裂 ・破断 ・その他
損傷の種類と部位
5. 鋼部 材の 損傷 ( 1 )
定期点検要領の「損傷」をチェックするのでは なく、現地で橋梁をしっかりと診察する。 10破断亀裂
5. 鋼部 材の 損傷 (2)
11•
亀裂•
腐食荷重(疲労)塩害(飛来塩分、路面凍結防止剤 漏水 構造的欠陥 (疲労に弱い構造、滞水しやすい構造等)
5. 鋼部 材の 損傷 ( 3 )
損傷の要因損傷 原因把握は、他の損傷発見の助けとなると同時に損傷の評価の 基礎となる。 12疲労亀裂が生じやすい橋梁 ・大型交通量が多い橋梁。 ・鋼床版 ・斜橋
亀裂 □ソールプレート前面の溶接部 □対傾構が取り付けられた垂直補剛材の上フランジ付近 の溶接部 □主桁ウェブの面外ガセットプレート □鋼床版(溶接部とリブ交差部に注意) □鋼製橋脚隅角部
疲労亀裂が生じやすい部位(点検の着目部位)
5. 鋼部 材の 損傷 ( 4 )
13
鋼橋(鋼鈑桁橋)における代表的な亀裂
5. 鋼部 材の 損傷 ( 5 )
出典:2013年9月11日第6回CAESAR講演会2014/12/8出典:鋼上部工の損傷事例 www.mlit.go.jp/road/sisaku/yobohozen/yobo3_1_1.pdf
5. 鋼部 材の 損傷 ( 6 )
部位:主桁ウェブの横桁下フラン時溶接部 155. 鋼部 材の 損傷 ( 7 )
下フランジの変形ウェブと下フランジ溶接部の亀裂 下フランジの亀裂
※詳細調査として、磁粉探傷試験(MT)を実施した
部位:ソールプレート溶接部 部位:垂直補剛材の代表的な亀裂
5. 鋼部 材の 損傷 ( 8 )
主桁と横桁の接合部の主な亀裂 ・溶接線に近接して、塗 膜のわれを確認する。 ・詳細調査を実施して正確 な亀裂長を確認して評 行うのが望ましい。•
腐食しやすい箇所: □桁端部
(支承周り、端横桁、端対傾構) 伸縮装置からの漏水の影響 □継手 部
(添接板、ボルト等)塗装不良 □排水 装置
及びその近傍 □アーチやトラスの格点 部
水が溜まりやすい □箱桁や鋼製橋脚の内部
結露等で滞水している場合腐食 5. 鋼部 材の 損傷 ( 9 )
腐食の影響5. 鋼部 材の 損傷 ( 10 )
・「損傷の深さ」及び「損傷の面積」を確認する。・ウェブなどの力を伝達する部位に腐食が生じ て孔食が発生していないかチェック
フランジの断面が欠損したような状況では 橋梁の耐荷力に大きな影響がある。 19
5. 鋼部 材の 損傷 ( 11 )
横桁の腐食(孔食)横桁の腐食(孔食) 鋼製橋脚の地際部の著しい腐食 橋脚の耐荷力に大きな影響がある。
5. 鋼部 材の 損傷 ( 12 )
・点検報告されないと、5 年間放置される ・耐荷性、耐久性に関係 する損傷かF11Tを用いたボルト (昭和40~50年代の鋼橋)
その他(ボルト脱落) ボルトの頭に「F11T」 という表示有。F11T
添設部の異状:橋梁の耐荷力に大きな影響がある。
5. 鋼 部材の 損傷 ( 13 )
F11Tボルトであったら、テストハンマーによる たたき点検を実施する。床版ひびわれ
荷重 漏水による耐力低下、機能低下
構造的欠陥 (古い橋梁では問題がある構造となってい る等)
6. コ ン ク リ ー ト 部材 の損 傷( 1 )
損傷の要因損傷 236. コン ク リ ート 部材 の損 傷( 2 ) RC
床版の損傷 程度の評価 ・RC床版の劣化 速度は、水が存 在すると速くなる 。これは、路面の ひびわれから浸 透した水がひびわ れ面のすり磨きを 助長し、急速にひ びわれ幅を大きく するためである。 出典:橋梁定期点検要領(平成26年6月)損傷ランクe抜け落ち
6. コ ン ク リ ー ト 部材 の損 傷( 3 ) RC
床版の損傷程度の評価・橋梁の竣工年から、設計示方書を確認 (S43年以前であれば要チェック) ・漏水、遊離石灰が析出しているかチェック ・床版防水の設置の有無(補修履歴)(
1
)その他 ・支承の機能障害 (本体の損傷、沓座モルタルの損傷、アンカーボルトの損傷) ・その他7. その 他の 損傷 ( 1 )
支承漏水による耐力低下、機能低下損傷の要因損傷定期点検要領の「損傷」をチェックするのでは なく、現地で橋梁をしっかりと診察する。 26
支承沈下の事例
7. その 他の 損 傷 ( 2 )
沓座モルタルの破損ローラの逸脱 アンカーボルトのゆるみ 27
支承沈下時の点検項目
7. その 他の 損傷 ( 3 )
・水周り、支承周りをチェック (排水枡⇒排水管、 伸縮装置⇒支承) ・狭隘な空間:高湿度、塵埃 の堆積などにより、腐食環 境が厳しい 287. その 他の 損 傷 ( 4 )
橋梁本体の外、付属物(照明、標識、防護柵) にも損傷が発生している可能性がある。 橋梁点検時に見落としがないようにする。亀裂 風の強い箇所に架橋された橋梁は注意照明柱基部の亀裂8.
一般的な構造と主な着目点の一例 点検前に点検のポイントを整理する。 この橋ではどこは絶対に確認しなければならないか等。 出典:道路橋定期点検要領(平成26年6月)Ⅰ
:健全(構造物の機能に支障が生じていない)Ⅱ
:予防保全段階(監視や対策を行なうことが望ましい)Ⅲ
:早期措置段階(早期に監視や対策を行なう必要がある)Ⅳ
:緊急措置段階(緊急に措置を講ずべき状態)判定区分 記録 記録、追跡調査、補修検 記録・追跡調査、補修検討 緊急対策、記録